(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記X線管上の前記エミッタと前記アノード間のフォーカシング磁気多重極に適用されるフォーカシング信号を前記TCUの少なくとも1つのフォーカスドライバから発生させる段階と、
前記フォーカシング磁気多重極を用いて前記アノード上の前記焦点の区域を狭める段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記ステアリング磁気多重極は、ステアリングヨークを有し、少なくとも2つの均等に配分された極突起が、該ステアリングヨークから延び、かつ該ステアリングヨークの中心軸に向いた方位を有し、該少なくとも2つの極突起の各々が、ステアリング磁場を生成するために各ステアリング電磁コイルに電流を供給する前記少なくとも1つのステアリングドライバに作動可能に結合されたステアリング電磁コイルを有することを特徴とする請求項9に記載のX線システム。
前記ステアリング磁気多重極は、前記焦点の2次元(2D)ステアリングを提供するステアリング磁気二重極の2つのセットを含み、該ステアリング磁気二重極の第1のセットが、前記電子ビームの両側に2つの極を含み、該ステアリング磁気二重極の第2のセットが、該電子ビームの他の両側に別の2つの極を含み、該ステアリング磁気二重極の該第1のセットの該2つの極の間からの磁束の第1の経路が、該ステアリング磁気二重極の該第2のセットの該2つの極の間からの磁束の第2の経路に対して角度を成しており、
前記少なくとも1つのステアリングドライバは、前記2つの極への前記ステアリング信号を発生させるように構成された少なくとも1つの第1軸ドライバと、前記他の2つの極への該ステアリング信号を発生させるように構成された少なくとも1つの第2軸ドライバとを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のX線システム。
前記X線管は、前記アノードの焦点軌道上の前記電子ビームを狭めるフォーカシング磁場をフォーカシング信号から生成するように構成されたフォーカシング磁気多重極を前記カソードと前記ステアリング磁気多重極の間に更に含み、
前記TCUは、前記フォーカシング信号を発生させるように構成された少なくとも1つのフォーカスドライバを更に含む
ことを特徴とする請求項9に記載のX線システム。
前記TCUは、サイズ補正値を前記フォーカシング信号に変換するように更に構成され、該サイズ補正値は、前記偏向主要光線と指定基準位置での前記主要光線との間のX線強度差を表し、該サイズ補正値は、管電圧及び管電流組合せに対する該指定偏向位置に関連付けられることを特徴とする請求項12に記載のX線システム。
前記X線管のためのフォーカシング磁気多重極の少なくとも1つのフォーカシングコイルに対するフォーカシング信号を発生させるように構成された少なくとも1つのフォーカスドライバ、
を更に含み、
前記メモリは、
前記少なくとも1つのフォーカスドライバの電流値を表すフォーカシング位置較正データを格納し、かつ
前記管電圧及び管電流組合せに対する前記X線管に対して指定された焦点サイズを発生させるための電流値を表す管較正データを格納する、
ように更に構成され、
前記プロセッサは、
前記管電圧及び管電流組合せに対する前記偏向主要光線と指定基準位置での前記主要光線との間のX線強度差を表すサイズ補正値を発生させ、かつ
前記サイズ補正値と管較正データとフォーカスドライバ較正データとを組み合わせる、 ように更に構成される、
ことを特徴とする請求項17に記載のTCU。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のいずれかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において以下の説明に示す又は以下の図面内に例示する構成要素の構成及び配置の詳細に限定されないことは理解されるものとする。本発明は、他の実施形態が可能であり、異なる態様に実施又は実行することができる。流れ図及び処理に付与している番号は、段階及び作動を示すのに明瞭化のために提供するものであり、必ずしも特定の順序又は順番を示すわけではない。別途定めない限り、「又は」という語句は、代替物(例えば、離接演算子又は排他的OR)又は代替物の組合せ(例えば、接続演算子及び/又は論理OR又はブールOR)の選択を意味することができる。
【0030】
本発明は、一般的に焦点位置(又は主要光線位置)又は焦点サイズ(又は主要光線強度又はX線ビームエネルギ分布)の電子的較正に関し、より具体的にはコンピュータ断層撮像(CT)システムのような回転X線システムにおける焦点位置及び焦点サイズの電子的較正のための異なる方法及び構成要素に関する。例示的実施形態は、放射線撮像器上でのX線管の主要光線の異なる偏向位置に対して主要光線位置及びX線ビーム強度(すなわち、焦点寸法)を電子的に較正するためのX線管、管制御ユニット(TCU)、システム制御ユニット、及び放射線撮像器(例えば、X線撮像器又はX線検出器)のようなX線システム内の構成要素及び特徴要素を示している。
【0031】
ここで、本発明の例示的実施形態の異なる態様を説明するために図面を参照する。これらの図面がそのような例示的実施形態の模式的かつ概略的な表現であり、本発明の限定ではなく、必ずしも正確な縮尺で作図されたものでもないことは理解されるものとする。一部の図面では、概念又は原理を視覚的に例示するために特徴を誇張している。
【0032】
例示的X線管
図1は、回転可能円盤状アノード122を有する例示的回転式又は回転アノードタイプX線管100のブロック図である。X線管100は、ハウジング102とハウジング102内のX線インサート110とを含む。ハウジング102はインサート110を封入する。ハウジング102とインサート110の間の空間又は空洞を冷却剤又は空気で満たすことができる。インサート110とも呼ぶ真空筐体内にカソード112及びアノードアセンブリ120が位置決めされる。アノードアセンブリ120は、アノード122と、軸受アセンブリ130と、軸受アセンブリ130に機械的に結合された回転子128とを含む。アノード122は、カソード112から離間され、かつカソード112に対向するように配置される。アノード122とカソード112は、アノード122とカソード112の間への高電圧電位の印加を可能にする電気回路内で接続される。カソード112は、適切な電源(図示せず)に接続された電子エミッタ116(放出源)を含む。
【0033】
図1に開示すように、例示的X線管100の作動の前に、インサート110が排気されて真空を提供する。インサート110は真空を封入する。次いで、例示的X線管100の作動中に、カソード112の電子エミッタ116を通して電流が流され、熱電子放出によって電子「e」が放出される。アノード122とカソード112の間への高電圧差の印加は、次いで、電子「e」をカソード電子エミッタからアノード122上に位置決めされた焦点軌道124上の焦点に向けて加速させる。焦点軌道124は、例えば、タングステン(W)及びレニウム(Re)又は高い原子(「高Z」)番号を有する他の材料で構成することができる。電子「e」は、加速する時に相当量の運動エネルギを獲得し、回転焦点軌道210に衝突する時にこの運動エネルギの一部がX線「x」に変換される。
【0034】
焦点軌道124は、放出X線「x」がX線管窓104に対して可視であるような方位を有する。X線管窓104はベリリウム(Be)のようなX線透過材料を含み、従って、焦点軌道124から放出されたX線「x」は、意図する物体(図示せず)に、次いで、検出器に衝突してX線画像(図示せず)を生成するようにX線管窓104を通過する。
図1は、ハウジング102上に単一窓104(例えば、ガラスインサートのガラス、ベリリウム、又はアルミニウムを放射線が通過することを可能にするガラスインサートを有する)を示している。他の例では、インサート110(例えば、金属インサート)とハウジング102の両方の上に別個の窓を含めることができ、又はインサート110の上だけに窓を含めることができる。
【0035】
X放射線(X線から構成される)は、電磁放射線の一形態を指す。殆どのX線は、30ペタヘルツから30エクサヘルツまで(3×10
16ヘルツ[Hz]から3×10
19Hzまで)の範囲の周波数及び100電子ボルト(eV)から100キロ電子ボルト(eV)の範囲のエネルギに対応する0.01ナノメートルから10ナノメートル(nm)の範囲にわたる波長を有する。
【0036】
電子「e」が焦点軌道に衝突すると、電子「e」の有意な運動エネルギ量が熱として焦点軌道124に伝達される。焦点軌道124上の特定の焦点における熱を低減するために、円盤状アノードターゲットは、典型的には回転子128と固定子106とを含む誘導電動機を用いて高速で回転される。誘導電動機は、トルクをもたらすのに必要とされる回転子128内の電流が、固定子の巻線を通って流れる電流によって達成される磁場からの電磁誘導によって得られる交流(AC)電気モータである。次いで、回転子128は、アノード122に機械的に結合された軸受アセンブリ130のハブを回転させ、この回転がアノード122を回転させる。他の例(図示せず)では、X線管は固定軌道を使用する。
【0037】
X線は、X線管から放出された後に、意図する物体(例えば、患者又は無生物物体)に、次いで、放射線検出器に衝突するか又はこれらを透過し、X線画像が生成される。放射線検出器は、ピクセル検出器要素のマトリクス又はアレイを含む。ピクセル検出器要素(例えば、X線検出器要素又は検出器要素)は、X線光子を電荷に変換するマトリクス又はアレイ内の要素を指す。検出器要素は、直接検出機構においてX線光子を電荷(電子−正孔の対)に直接に変換することができる導光体材料を含むことができる。適切な導光体材料は、ヨウ化水銀(HgI
2)、ヨウ化鉛(PbI
2)、ヨウ化ビスマス(BiI
3)、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)、又はアモルファスセレン(a−Se)を含み、これらに限定されない。一部の実施形態において、検出器要素は、X線光子を光に変換するシンチレータ材料と、光を電荷に変換するためにシンチレータ材料に結合された感光要素とを含むことができる(すなわち、間接的検出機構)。適切なシンチレータ材料は、酸硫化ガドリニウム(Gd
2O
2S:Tb)、タングステン酸カドミウム(CdWO
4)、(ゲルマニウム酸ビスマス(Bi
4Ge
3O
12又はBGO)、ヨウ化セシウム(CsI)、又はヨウ化セシウムタリウム(CsI:Tl)を含み、これらに限定されない。適切な感光要素は、フォトダイオード、フォトゲート、又はフォトトランジスタを含むことができる。ピクセル検出器要素に対する他の回路を使用することができる。
【0038】
例示的ガントリー
X線管及び放射線検出器は、コンピュータ断層撮像(CT)スキャナのような回転式X線システム内に含めることができる。コンピュータ断層撮像(CT)は、1回の走査作動(「走査」)中に一部の投影画像(「レントゲン投影像」)を収集することによる物体の内部構造の撮像を含み、医療分野において人体の選択部分の内部構造を詳察するために広く使用されている。一般的に、物体の一部の2次元投影像が生成され、これらの投影像から異なる断層画像再構成法を用いて物体の3次元表現が構成される。この3次元画像から、物体を通る従来のCTスライス画像(例えば、ガントリー回転毎に16枚又は64枚のスライス画像)を生成することができる。一般的に2次元投影像は、「点源」(例えば、X線管)からの放射線をその一部を自体のサイズ、密度、及び原子組成に基づいて吸収することになる物体に透過させ、吸収されなかった放射線をピクセル検出器(単純に「ピクセル」と呼ぶ)のアレイを含む2次元撮像デバイス又は撮像器(すなわち、放射線撮像器又は放射線検出器)上に収集することによって生成される。そのようなCTシステムを
図2に示している。
【0039】
図2は、回転X線システム(又は回転式X線システム)の部分露出回転アセンブリ(又はガントリーアセンブリ)200又はガントリーを示している。ガントリーは、回転可能ガントリーフレーム202を支持する固定ガントリーフレーム204を含む。回転可能ガントリーは、X線管210と、コリメータ230と、放射線検出器又は撮像器240とを支持することができる。これに代えてコリメータは、X線管に直接に結合することができる。更に、ガントリーは、回転構成要素及びフレームをユーザから遮蔽し、更に、体裁上の覆いを与える。回転可能ガントリーフレームは、そのガントリー開口208内にある軸の中心(すなわち、中心軸)の周りに高速回転する環状形状(すなわち、リング形状)を含むことができる。回転可能ガントリーフレーム上に位置決めされる構成要素に対する遠心力(又はガントリー力)は、重力(g力、G、又はG荷重)又はg力の倍数(例えば、g力の20倍)よりも大きい可能性がある強い力を受ける可能性がある。図示していない他の例では、回転可能ガントリーフレームは、Cアームスキャナでの180°又はそれよりも大きい回転のような1回転よりも小さく回転することができる。
【0040】
X線管機械的位置合わせ
従来、上述のように、X線管の主要光線が、X線管の移動に基づいて検出器上の指定場所(例えば、検出器上の中心点)に集中するように、X線管は、ガントリー及びコリメータと機械的に位置合わせされる。X線管の位置合わせは、画像品質、良好な精度、及び高い分解能を確実にするのに使用される。特に、X線管を再配置する主要光線のより高い精度のための1又は複数の機械的位置合わせの調節は、時間を消費し、煩わしく、イテレート的である場合があり、位置合わせの品質は、機械的位置合わせを実施する技術者の技能に大きく依存する可能性がある。一部の機械的位置合わせ処理では、主要光線は、X線管及びコリメータを移動することによって位置合わせされる。
【0041】
図3は、X線管装着ブラケット228を通して回転可能ガントリーフレーム202に装着されたX線管210及びコリメータ230の拡大図を示している。説明目的で、
図3は、ガントリーの軸中心から半径方向(例えば、
図3の垂直方向)にy軸を有し、x軸がガントリーの軸中心の周りの周方向(
図3の水平方向)にあり、かつy軸に直交し、z軸が軸線方向にxy平面に直交する直交座標系を提供している。ガントリーの回転はxy平面内で行われる。X線管装着ブラケットは、xz平面内でX線管の2次元(2D)調節を提供する。x軸調節ナット、ボルト、ターレット、又はノブ212は、x軸調節ナット回転216に基づいてX線管のx軸調節を提供する。x軸インジケータ又はダイヤル222は、測微タイプ測定によって回転可能ガントリーフレーム202又はコリメータ230に対するX線のx方向位置の変化を示すことができる。同様に、z軸調節ナット、ボルト、ターレット、又はノブ214は、z軸調節ナット回転218に基づいてX線管のz軸調節を提供する。z軸インジケータ又はダイヤル224は、測微タイプ精度で回転可能ガントリーフレーム202又はコリメータ230に対するX線のz方向位置の変化を示すことができる。
【0042】
回転可能ガントリーフレーム202に対して位置合わせされたX線管210では、点源(例えば、X線管)と2次元撮像器(例えば、X線検出器240)の中心とは、投影軸と呼ぶ場合がある共通軸(すなわち、y軸)上に位置付けられる。点源の放射線(例えば、X線)は、点源に頂点を有し、撮像デバイスに底面を有する正円錐、楕円錐、又は四角錐によって定められる空間容積内で撮像データに向けて射出し、主要光線は、x放射線の中心点を表す頂点から射出する。
【0043】
図4及び
図5は、主要X線ビーム352に対するX線検出器の幾何学的中心点242を示すガントリーアセンブリを示している。
図6は、X線検出器上で主要光線の場所を決定するのに使用される物体の物体特徴部292(又は幻影)を示している。最初にX線管210が回転可能ガントリーフレーム202上に設けられた時に、図示のように、通常、主要光線は、X線検出器の幾何学的中心点(又は他の指定撮像器場所)と不整合状態にある。位置合わせ処理は、主要光線を指定許容範囲内のX線検出器の幾何学的中心点に移動する。
【0044】
従来、位置合わせ処理は完全に機械的であり、この機械的位置合わせは、X線管210を回転可能ガントリーフレーム202に対して移動し、それによって主要光線352は、指定許容範囲内のX線検出器の幾何学中心点242に位置付けられる。大まかな機械的位置合わせ(例えば、±0.5ミリメートル[mm]から±0.1ミリメートル[mm]の範囲)は、X線管装着ブラケット228又はX線管210の適正な取り付けによって達成することができ、細密な機械的位置合わせは、画像又はデータを取得し、管又はコリメータの向きを調節ツール(例えば、レンチ又は調節ナット、ボルト、ターレット、又はノブ212及び214)と測定デバイス(例えば、インジケータ又はダイヤル222及び224又は測微計)とを用いて機械的に調節するイテレートに基づく場合がある。
【0045】
高分解能画像に対しては、サブミリメートル範囲からマイクロメートルに至るまで細かい細密調節を必要とする可能性がある。主要光線352の正しい位置決め(X線管位置を表す)を達成するために、一連の画像が取得され、主要光線が決定される。次いで、X線管が調節され、別の一連の画像が取得されて位置が決定される。主要光線又はX線管が調節され、要件を満たす位置合わせが提供されるまでこのシーケンスが繰り返される。
【0046】
図7は、主要X線ビームを指定撮像器場所に位置合わせするX線管の機械的位置合わせ600の例示的流れ図を示している。ユーザ(例えば、オペレータ又は技術者)がガントリーカバーを取り外し602、それによって回転可能ガントリーフレームが露出する。撮像器又は検出器が、通常は位置合わせ物体又は幻影を用いてX線管からのX線に露出される604。X線検出器の画像がX線検出器又はシステム制御ユニット内のプロセッサによって処理され606、検出器上の主要X線ビーム位置が生成され、そこから指定撮像器場所(例えば、X線検出器の幾何学的中心点)からの主要光線の距離を表すオフセットが決定される608。このオフセットは、xz平面内の2D距離を表すことができる(すなわち、x軸成分とz軸成分を有する)。オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲(例えば、<50〜200ミクロン(μm又はマイクロメートル))にあるか否かをユーザ(又は自動化処理又はロボット)が決定する610。オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲にない場合に、X線管は、x方向、z方向、又はこれらの両方に調節ツール(例えば、ナット、ボルト、ターレット、ノブ、又はレンチ)と測定デバイス(例えば、インジケータ、ダイヤル、又は測微計)とを用いてオフセット分だけ調節される612。検出器は、再度X線に露出され604、オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入るまで処理は繰り返される。オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入った状態で、ユーザは、ファスナ(図示せず、例えば、ネジ、ナット、ボルト、ターレット、又はノブ)を用いてX線管位置を固定し、ガントリーカバーを元の所に戻す616。細密な機械的位置合わせの高い精度に起因して、X線管又はコリメータのイテレート調節は、完了するのに1/2時間から1時間を消費する可能性がある。細密な機械的位置合わせを実施する時間は、受容可能な許容範囲又は精度が小さくなる程長くなる可能性がある。
【0047】
X線管電子的位置合わせ
細密位置合わせに向けて電子的位置合わせを使用することによって手動調節処理におけるイテレート段階を排除することができ、それによってX線管をガントリーアセンブリに対して較正する際の時間を節約することができる。大まかな機械的位置合わせは、先に解説したように比較的容易に比較的短い所要時間に実施することができ、その後のイテレート細密位置合わせ処理は、電子的位置合わせ処理(すなわち、磁気コイルに流れる電流及び得られるX線管内の電子ビームに対する磁力の調節)によって実施することができ、それによって時間とコストとが節約される。
【0048】
図8は、X線管410と、管制御ユニット(TCU)440と、X線検出器420又は撮像器と、システム制御ユニット430とを含む電子的位置合わせに向けて使用することができるX線システム400を示している。TCUは、X線管とは別個の構成要素とすることができる。別の例(図示せず)では、TCUはX線管に統合される。高電圧管発電機(図示せず)は、管電圧(例えば、キロボルト[kV])と、管電流(例えば、ミリアンペア[mA])と、露出持続時間(例えば、秒[s])とを供給することができる。その結果、X線管410は、アノードターゲットと衝突して主要光線を有するX線ビーム412を生成する電子ビームを放出する。X線検出器420は、X線を検出して主要光線位置情報を含む画像データ422を生成し、このデータはシステム制御ユニット430に送られる。システム制御ユニット430は、指定撮像器場所(例えば、X線検出器の幾何学的中心点)に対する主要光線のオフセットを含むことができる位置情報432を生成し、この情報をTCU440に送ることができる。TCU440は、X線管内の制御ステアリング磁気機器及びフォーカシング磁気機器への信号のような制御信号416を供給することができる。一部の例では、X線管は、フィードバックのようなデータをTCUに供給することができる。別の例(図示せず)では、TCUは、管発電機に結合することができ、管電圧、管電流、及び露出持続時間の制御を提供することができる。
【0049】
図22を用いてより詳細に説明するように、焦点偏向パターン上に重ね合わされる一定オフセットを発生させるために、X線管の磁気ステアリング機構及びTCU電子機器を使用することができる。偏向パターン(又はステアリングパターン)は、画像分解能又は画像SN比を改善するために焦点をそこまでステアリングする一連の場所である。磁気ステアリング機構のステアリングコイルに追加の一定電流オフセットを印加することにより、電子ビームをX線検出器の2D平面内の場所に静的に誘導することができ、それによってx管のX線ビームとX線システムのコリメータ又はX線検出器との電子的位置合わせが可能になる。
【0050】
一例では、磁石対の群の向きは、X線管内の電子ビームに対して実質的に垂直なX方向とY方向とに定められる。ステアリングコイルを通る電流は、互いに対して垂直なものとすることができる2つの磁場を発生させる。磁場の強度は、ステアリングコイル上の巻線の本数とステアリングコイルを通して駆動される電流とによって制御することができる。磁場の着目領域の範囲内の磁気ビームの偏向は線形であると考えることができ、偏向量は磁場強度に関連する。x軸とy軸とに沿う磁場は互いに重なるので、それぞれの電流をコイルに印加することによって電子ビームを2Dxy平面内の場所に誘導することができる。特定の印加電流は、望ましい偏向を達成するのに必要な磁場を発生させる。ステアリングコイルの垂直配置は、ステアリングコイルへの電流の計算を単純化することができるが、磁場は重なることができるベクトルであるので、ステアリングコイルの非垂直配置を使用することができる。一例では、ステアリングコイルは、偏向平面内で異なる角度に向けることができ、又は第3の軸(例えば、z軸)に沿う複数の連続コイルに分割することができ、電子ビームの経路に沿って複数の段階で偏向が得られる。更に、ステアリング磁石のアレイを形成するために更に多くの磁石対を追加することができ、従って、磁場のベクトル和が、オフセット及び場所に対して望ましいステアリング磁場を生成する。
【0051】
電子ビームはエミッタとアノードの間の距離の増大と共に発散する傾向を有するので、エミッタからアノードまでのビーム経路に沿って電子ビームをフォーカシング又は再フォーカスするためにフォーカシング磁気機器を使用することができる。X線管に偏向機構(又はステアリング磁気機器)を追加することによってエミッタとアノードの間の距離は増大し、焦点サイズの拡大がもたらされる。電子ビームの発散は、焦点のデフォーカシング(例えば、低下する画像分解能)として観察することができ、従って、ビームをアノード上の小区域内にフォーカスすることによって電子ビームの拡大又は発散を打ち消すために、電子的なフォーカシング又は再フォーカシング機構を使用することができる。
【0052】
図9は、電子的位置合わせ、より具体的には電子的主要光線位置合わせ又は電子的焦点位置合わせに使用することができるステアリング磁気機器330とフォーカシング磁気機器340及び342との両方を含む例示的X線管アセンブリ302を示している。焦点324(
図10C)をアノード322の焦点軌道323上で移動する段階を含む電子的主要光線位置合わせを電子的焦点位置合わせと呼ぶ場合もある。電子的焦点位置合わせは、焦点を撮像システム(すなわち、X線撮像器又はX線検出器)に位置合わせするためにX線管磁気機器のステアリングコイル330及びTCU電子機器440(
図8)を使用する。
【0053】
X線管アセンブリ302は、カソードアセンブリ310と、ドリフト領域314と、アノードアセンブリ320とを含む。カソードアセンブリ310は、ドリフト領域を通過する中心線316を有する電子ビームを生成するエミッタアセンブリ312を含む。ドリフト領域314は、インサート壁309によって形成された真空外被(X線管の狭路内にある)の外側にあるとすることができるフォーカシング磁気機器340及び342によって囲まれる。X線管は、ドリフト領域がフォーカシング磁気機器及びステアリング磁気機器を含む場合は長い投射長を有すると考えることができる。電子ビームは、遮蔽構成要素、電子遮蔽、又は電子コントローラの開口329を通過してアノードターゲット又はアノード322に衝突し、主要X線ビーム352を有するx放射線350を生成する。アノード上で電子ビームが衝突する瞬間的区域を焦点と呼び、回転式アノード上で電子ビームが衝突する区域を焦点軌道323と呼ぶ。X線は、窓308を通ってX線管を射出することができる。
【0054】
図示のように、フォーカシング磁気機器は、第1のフォーカシング磁気四重極340(又はカソードフォーカシング磁気四重極)と第2のフォーカシング磁気四重極342(又はアノードフォーカシング磁気四重極)とを含み、
図10A〜
図10Bに示すように、ステアリング磁気機器は、コア330上に2つのステアリング磁気二重極を含む。
図10A〜
図10Cは、X線管300内の電子ビームのフォーカシング及びステアリングの異なる図を示している。電子源390から電子が放出され、アノードターゲット322に向けて加速される。電子ビームは、ビーム内の電子の間に反発力を有する負荷電粒子を含み、この反発力は、電子が電子源390(例えば、カソードアセンブリのエミッタ)からアノード322に進行する時に電子ビームを発散させるか又は電子ビームの断面積(すなわち、xy平面内の)を拡大(すなわち、デフォーカス)させる。それによってビームの電子密度は通過中にビームを拡張し、この拡張は有意である可能性がある。その結果、焦点面積は、電子源における電子ビームの断面積よりも大きい可能性がある。電子ビームのこの拡大又は拡張を電子ビームブルーム、電子ブルーム、又は焦点ブルームと呼ぶ場合があり、このブルームは、電子の速度が遅い(すなわち、管電圧が低い)、電子密度が大きい(すなわち、管電流が大きい)、又は電子源とアノードターゲットの間の距離が大きい程大きい可能性がある。大きい焦点は、小さい焦点とは相対的にX線エネルギを大きい物理区域にわたって分散させ、それによってX線画像の分解能を低下させる可能性がある。ドリフト領域内でステアリング磁気機器を追加するのに使用される追加空間は、焦点ブルーミング(すなわち、ビームの空間電荷効果に起因する焦点サイズの成長)に対する傾向を増大させる可能性がある。
【0055】
図10A〜
図10Cは、電子ブルーム(すなわち、デフォーカシング)、フォーカシング、及びステアリングを有する電子ビーム318を示している。電子ビームは、上方(
図10A〜
図10Cに示すように)及び左(
図10B及び
図10Cに示すように)にステアリングされている中心線317を有する。拡大した焦点又はぼけた焦点(すなわち、電子ブルーミング又は焦点ブルーミング325を有する電子ビーム断面)をもたらす可能性があるフォーカシングなしの電子ブルーム投影319も例示している。図示のように、電子ビームの中心線317は、フォーカシング又はデフォーカシングと共に実質的に変化しない可能性がある。電子ビームは、アノードに向う途中でフォーカシング磁気機器によってアノード上の小区域上にフォーカスされる。フォーカシング磁気機器は、電子ビームを少なくとも1つの方向に圧縮することによって焦点ブルーミングを縮小する。例えば、第1のフォーカシング磁気四重極340は、第1の方向(例えば、y軸)に電子ビームをフォーカスするための第1のフォーカシング磁気四重極勾配を与え、第1の方向に直交する第2の方向に電子ビームをデフォーカスする(すなわち、平坦な楕円として示す第1のフォーカスの後の電子ビーム断面326)ように構成される。第2のフォーカシング磁気四重極342は、第2の方向(例えば、x軸)に電子ビームをフォーカスするための第2のフォーカシング磁気四重極勾配を与え、第1の方向(例えば、y軸)に電子ビームをデフォーカスする(すなわち、第2のフォーカスの後の電子ビーム断面327)ように構成される。第1のフォーカシング磁気四重極と第2のフォーカシング磁気四重極との組合せは、電子ビーム318の焦点324の第1の方向と第2の方向の両方に正味のフォーカシング効果を与える。正味のフォーカシング効果は、X線撮像器306上に入射する主要X線ビーム358を有する高強度X線ビーム359を生成する。狭い焦点に対する高い強度を示すために、X線ビームを細いビームとして示している。実際のX線ビームは、主要X線ビーム358から遠くに離れる程低い強度のX線を有する円錐形状を有する可能性がある。
【0056】
ステアリング磁気機器は、コア上330に2つのステアリング磁気二重極を含む。2つのステアリング磁気二重極330は、アノードのターゲット面又は焦点軌道(xy平面内の)上で電子ビームの焦点をシフトさせるために電子ビームを偏向するように構成され、これは、次に、主要X線ビーム358を有する発生X線ビーム359を移動する。一方のステアリング磁気二重極は、焦点をx軸に移動し(x軸に沿って移動する主要光線をもたらす)、他方のステアリング磁気二重極は、焦点をy軸に移動する(z軸に沿って移動する主要光線をもたらす)。
【0057】
その全体が引用によって組み込まれている「平面エミッタと磁気フォーカシング及びステアリング構成要素とを有するX線管(X−Ray Tube Having Planar Emitter and Magnetic Focusing and Steering Components)」という名称の米国特許出願第14/660,584号明細書(又は米国特許出願公開第2015/0187536号明細書)は、磁気フォーカシング及びステアリング構成要素の例を開示している。
【0058】
図11は、各々が対応するコイル366を含む4つの極突起364を有する磁気ヨーク362を有する磁石システム360を示している。コイル366は、エナメル磁石ワイヤ(すなわち、変圧器ワイヤ)のような電気絶縁シースを有する導電材料(例えば、銅又はアルミニウム)を含む極突起コアの周りのワイヤ、巻線、又は巻回で形成することができる。コイルを通る電流は、極突起から放出される磁場を生成する。
【0059】
図示のコア(又はヨーク)362は実質的に円形又は環状の形状を有し、コアが少なくとも部分的に電子ビームを取り囲む(例えば、ドリフト領域内で)限り、コア(又はヨーク)部分の各々を四角形、楕円形(すなわち、長円形)、又は半円形の形状のような異なる形状を有するように構成することができることは認められるであろう。極突起364は、コアの内部から延び、互いに対で対向又は対面する突起を含むことができる(例えば、コイル366Aの極突起とコイル366Cの極突起とが互いに対向又は対面し、コイル366Bの極突起とコイル366Dの極突起とが互いに対向又は対面する)。
【0060】
ヨーク362及び極突起364は、強磁性材料又はフェリ磁性材料を含むことができる。強磁性材料及びフェリ磁性材料は、自発磁化を示すことができる材料である。より具体的には、材料は、その磁気イオンの全てが正味の磁化に正の寄与を追加する場合に「強磁性」である。磁気イオンのうちの一部が正味の磁化から低減する場合(磁気イオンが部分的に反位置合わせされた場合)には、材料は「フェリ磁性」である。フェリ磁性材料は、反強磁性の場合のように対向する磁気モーメントを有する原子の集団を有するものである。しかし、フェリ磁性材料では対向モーメントは不均等であり、自発磁化が残る。強磁性は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、これらの合金、及び希土類金属の一部の合金のような一部の物質において発生する。例えば、強磁性の化合物又は材料は、マンガンビスマス(MnBi)、マンガンアンチモン(MnSb)、二酸化クロム(CrO
2)又は酸化クロム(IV)、マンガンヒ素(MnAs)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、及び酸化ユーロピウム(EuO)を含む。フェリ磁性の化合物又は材料は、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)又は酸化第二鉄、酸化鉄(II、III)(FeOFe
2O
3又はFe
3O
4)、酸化ニッケル−酸化鉄(III)(NiOFe
2O
3)、酸化銅−酸化鉄(III)(CuOFe
2O
3)、酸化マグネシウム−酸化鉄(III)(MgOFe
2O
3)、酸化マンガン−酸化鉄(III)(MnOFe
2O
3)、及びイットリウム鉄ガーネット(Y
3Fe
5O
12)を含む。本明細書に使用する場合に、説明における簡素化に向けて「強磁性」材料は、自発磁化を示すことができる材料(すなわち、強磁性又はフェリ磁性のいずれかの材料)を指す。
【0061】
例えば、ヨーク362及び極突起364は、固体金属コア(例えば、シリコンスチールコア)、粉末金属コア(例えば、カルボニル鉄コア)、及びフェライト又はセラミックのコアのような異なる材料を含むことができる。固体金属コアは、「軟」(焼き鈍し)鉄、「硬化」鉄、積層シリコンスチール、特殊合金(ミューメタル、パーマロイ、及びスーパーマロイのような磁気コア用途特定の合金)、及びガラス質金属(例えば、非結晶又はガラス質のアモルファス金属合金[例えば、Metglas])を含むことができる。
【0062】
図11に示す磁石システム360の4つの極364は、四重極(例えば、フォーカシングに使用される)として構成するか又は二重極の対(例えば、ステアリングに使用される)として構成することができる。四重極構成では、4つの極のコイルは互いに直列で電気結合され、それを電源に結合することができる。二重極構成では、2つの対向する極のコイルは互いに直列に電気結合され、それを電源に結合することができる。2つの二重極が同じヨーク上に設けられる場合に、各二重極を別個の電源に結合することができる。
【0063】
図12は、各々が対応するコイル366を含む2つの極突起364を有する磁気ヨーク372を有する磁石システム370を示している。
図12に示す磁石システム370の2つの極は、二重極(例えば、ステアリングに使用される)として構成することができる。
【0064】
図13Aは、四重極として構成されたヨーク362を有する第1のフォーカシング磁石340(例えば、カソード側フォーカシング磁気四重極340)を示しており、
図13Bは、同じく四重極(例えば、アノード側フォーカシング磁気四重極342)として構成されたヨーク362を有する第2のフォーカシング磁石342を示している。各四重極は、勾配を有する磁場を発生させ、磁場強度は、磁場の範囲で異なる。勾配は、四重極磁場が電子ビームを第1の方向(例えば、y軸)にフォーカスし、第1の方向に対して垂直な第2の方向(例えば、x軸)にデフォーカスするようなものである。2つの四重極は、これらのそれぞれの磁場勾配が互いに対して約90度回転されるように配置することができる。
図13Aには第1のフォーカシング磁気四重極340によって発生された第1の磁場346を示しており、
図13Bには第2のフォーカシング磁気四重極342によって発生された第2の磁場348を示している。第1のフォーカシング磁気四重極340は、電子ビームの長さ方向(例えば、y軸)にフォーカスし、幅方向(例えば、x軸)にデフォーカスする。次いで、電子ビームは、その後の第2のフォーカシング磁気四重極342によって幅方向(例えば、x軸)にフォーカスされ、長さ方向(例えば、y軸)にデフォーカスされる。2つの連続して位置決めされた磁気四重極は、組合せで焦点の両方の方向の正味のフォーカシング効果を確実にする。
【0065】
図14は、2つの二重極コイルセットを有するように構成されたヨーク362を有するステアリング磁石330を示している。第1の二重極コイル(y軸二重極コイル)セット366A及び366Cは、1つの方向(例えば、y軸)に均一又は層状の磁場338を発生させ、第2の二重極コイル(x軸二重極コイル)セット366B及び366Dは、別の方向(例えば、x軸)に均一又は層状の磁場336を発生させる。ステアリング磁石は、電子ビームの2Dステアリング(例えば、xy平面における)を可能にし、焦点の位置変化(例えば、xy平面における)と主要光線の位置変化(例えば、xz平面における)とをもたらす。極突起の間の均一又は層状の磁場は、電子ビームがステアリング磁場(例えば、xy平面内の)を横断する区域内に均一な磁場を与え、従って、電子ビーム内の電子は類似の偏向量を受け、それによって実質的な幾何学的歪曲なく焦点形状を維持することができる。直交磁場(すなわち、1つの二重極極突起セットが別の二重極極突起セットに対して垂直)を使用することで、磁気ベクトル計算を単純化することができるが、非直交磁場を使用することもできる。
【0066】
図15A〜
図15Bは、巻線又はコイル152(例えば、単一コイル)を有するソレノイド電磁石150(例えば、円筒形コア151を有する)を示している。例示を容易にするために磁気コア151を示すが、ソレノイド電磁石は磁気コアを必要としない場合があり、類似の磁場が、ソレノイド電磁石150のコイル152の内部(開放中心容積を有する)に依然として存在する。ソレノイド電磁石に関しては、磁気コアを有する場合又は持たない場合に同じ原理が適用される。ソレノイド磁石コア151の内部(又はコイル52の内部)の磁束160は、S極156からN極154まで実質的に均一であるが、ソレノイド磁石150の外部(例えば、周辺部)の磁束162は同様ではなく、N極154からS極156に変化する。電子ビームステアリングにソレノイド電磁石が使用される場合に、電子ビーム168が受ける磁場162は非常に不均一である。不均一性の量は、電子ビームとソレノイドの間の距離と共に増加し、従って、電子ビームの底部にある(ソレノイドに近い)電子は、ビームの上部における(ソレノイドから遠い)電子とは異なる偏向量を受ける。この偏向差は、焦点の形状及びサイズを変化させ、極端な場合に、電子ビームの上部と底部とを互いに交差させる可能性がある。磁場が不均一であるだけではなく、更に電子ビーム内の異なる点での磁場が異なるベクトル方向を有し(例えば、全てが垂直又は水平であるわけではない)、従って、電子ビーム内の電子に対する力の方向は電子ビーム内の位置(xy平面内の)に基づいて変化するだけではなく、磁場の横断(z軸の)中にも変化する。更に、磁場(ソレノイドからの)は、極からの距離が大きい(例えば、ソレノイドと電子ビームの間にインサート壁を含むことができるソレノイドの極端部から離れた電子ビーム)程小さい力を有する。例えば、ソレノイドの極端部(例えば、N極154)から離れた半径r158の距離場所の磁力は、ソレノイドの極端部における磁力よりも10倍小さい可能性がある。ソレノイド電磁石によって生成される変化する磁力及び磁気ベクトルに起因して電子ビームを通して大きさと方向の両方において一貫性のない偏向が与えられると、ソレノイドタイプ電磁機器は、ステアリングに使用される電子ビームの微細偏向制御に対して問題を呈する。ステアリングに向けてソレノイド電磁石を用いて発生させる焦点は、形状及びサイズの重大な歪曲に悩まされる可能性がある。焦点の形状又はサイズの変化(すなわち、拡大サイズ)は、画像品質及び分解能に悪影響を及ぼす場合があり、従って、そのような焦点を生成するX線システムは、微細構造を検出するのに制限を受ける可能性がある。更に、フォーカシングなしでは、ソレノイド電磁石からの不均一磁場の問題は、焦点ブルーミングを引き起こす電子間の反発力と共に、得られる画像が使用可能な分解能を持たない程大きい焦点を生成する可能性がある。
【0067】
再度
図14を参照して、電子ビームの両側にある極突起で電子ビームを取り囲む磁気コアは、均一な磁場を生成することができ、従って、電子ビーム内の電子は類似の磁場及び偏向を受け、焦点位置の微細制御を可能にする。焦点のサイズの微細制御は、上述のフォーカシング磁気機器によって提供することができる。先に解説したように、二重極の間の磁場は、線形で電子ビームの進行方向に対して垂直なものとすることができ、従って、電子は、実質的に同じ方向に類似の偏向量を受ける。
【0068】
図9〜
図10C、
図13A〜
図14、及び
図16〜
図17ではフォーカシング磁気機器340及び342及びステアリング磁気機器330に対して4極磁石システムを示すが、少なくとも2つの極を有する磁気多重極の他の構成を使用することができる。4極磁石システムでは、コイルを四重極又は二重極対として構成することができる。2極磁石システムでは、コイルを二重極として構成することができる。フォーカシング又はステアリングに使用される磁石システムは複数の極(例えば、2つ、4つ、6つ、又は8つ)を有することができ、異なる構成(例えば、二重極、四重極、六重極、又は八重極)を有することができる。
【0069】
図16A〜
図16Bは、X線管に対して微細電子的主要光線位置合わせ又は微細電子的焦点位置合わせを提供することができるTCUによって制御されるX線管300内に組み込まれた電子ビームステアリング機構330を示している。電子がアノード322に衝突すると、X線が放出される。電子衝突の場所はX線検出器306上に投影され、従って、衝突場所の変化は、X線検出器306上の主要X線ビームの場所を変化させる。従って、電子ビームの静的偏向により、検出器上の主要X線ビームの場所を変化させることができる。ステアリング磁気機器330は、主要X線ビームの場所を画像軸に位置合わせするために使用される。X線軸(又は主要X線ビーム)と撮像軸との不整合は、画像のぼけ及び幾何学的歪曲をもたらし、それによって画像品質及び画像の状態診断値を劣化させる可能性がある。
【0070】
例えば、ステアリング磁石330のコイルに印加される信号(例えば、電流)に基づくアノード322上の焦点の変化に起因して、電子ビーム内心線316を異なる位置に調節することができ、異なる主要光線352、354、355、356、及び357位置をもたらす。主要光線354、355、356、又は357位置は、偏向された電子ビームからもたらされる。アノード322のターゲット上の電子衝突の場所を移動することにより、X線検出器306上の主要光線の場所が変化する。上方(例えば、y軸)にステアリングされた電子ビームは、下方(例えば、z軸)にステアリングされた主要X線ビーム354をもたらし、下方(例えば、y軸)にステアリングされた電子ビームは、上方(例えば、z軸)にステアリングされた主要X線ビーム355をもたらす。左(例えば、x軸)にステアリングされた電子ビームは、左(例えば、x軸)にステアリングされた主要X線ビーム356をもたらし、右(例えば、x軸)にステアリングされた電子ビームは、右(例えば、x軸)にステアリングされた主要X線ビーム357をもたらす。ステアリング磁石330のコイルに印加される信号がない場合の主要X線ビーム352を非ステアリング主要X線ビーム又はオフセットなし主要X線ビームと呼ぶ。
【0071】
図17は、エミッタアセンブリ382と、フォーカシング磁石340及び342と、ステアリング磁石330と、アノード322とを示す
図9に示すX線管アセンブリと類似の構成を有するX線管構成要素の斜視図を示している。
図17の構成要素は、X線管に対して電子的主要光線位置合わせ又は微細電子的焦点位置合わせを提供することができる。エミッタアセンブリ382は、平面エミッタ392と共に示している。その全体が引用によって組み込まれている「調整可能な放出特性を有する平面エミッタを有するX線管(X−Ray Tube Having Planar Emitter with Tunable Emission Characteristics)」という名称の米国特許出願第14/660,607号明細書(又は米国特許出願公開第2015/0187530号明細書)は、例示的平面エミッタを開示している。
【0072】
図18A〜
図18Bは、2つのステアリング磁石コア330及び332を含むX線管アセンブリを示している。一例では、第1のステアリング磁石330は、第1のステアリング磁場を与えることができ、第2のステアリング磁石332は、第2のステアリング磁力(例えば、超微細調節又はステアリング)を与えることができる。
図18Bは、コイルエミッタ394を有するエミッタアセンブリ384を示している。平面エミッタ又はコイルエミッタは、図示又は説明する様々なフォーカシング磁気機器及びステアリング磁気機器と共に使用することができる。
【0073】
図19は、エミッタアセンブリ384と、2つの二重極ステアリングコイルを有するステアリングコア330と、アノード322とを示すX線管構成要素の斜視図を示している。ステアリングコア330は、2Dステアリングを提供することができる。
【0074】
図20は、エミッタアセンブリ384と、二重極ステアリングコイル334を有するステアリングコイルと、アノード322とを示すX線管構成要素の斜視図を示している。ステアリングコイル334は、1次元(1D)ステアリングを提供することができる(例えば、y軸に沿って)。
【0075】
図21は、エミッタアセンブリ382と、アノード322と、フォーカシング磁石340と、フォーカシングコイルとステアリングコイルとを各々が含む極突起を有するコアを含む第2のフォーカシング磁石344とを示すX線管構成要素の斜視図を示している。第2のコアアセンブリ344は、フォーカシング及びステアリングの両方を提供するように構成される。フォーカシング及びステアリングからの磁場ベクトルは、互いに重ねることができる。一例では、フォーカシングコイルとステアリングコイルとは異なる電源又はドライバ回路を使用することができる。
【0076】
ステアリング磁気機器は、X線撮像器306に対して主光線の場所を変化させるために使用することができる。主光線は、走査(例えば、CT走査)又はX線露出中の指定時間におけるX線撮像器306に対する物体の場所及び向きに基づいて変化するか又は切り換わることができる。X線システムは、
図22に示すような主光線ビーム偏向パターン500(又は焦点偏向パターン)を使用することができる。偏向点の個数及び偏向点の位置は、特定の偏向パターン(又はステアリングパターン)に依存する。異なる偏向点がステアリングされる順序は、撮像要件に依存する可能性がある。特定のX線システム又は取得される画像のタイプ(例えば、患者の特定の解剖学的構造)のための偏向パターンを使用することができる。各偏向位置は、ステアリング範囲503内の指定撮像器場所(例えば、X線撮像器の幾何学的中心点8)に対して向けることができる。ステアリング範囲503は、X線撮像器306の露出区域よりも大きいか、それに等しいか、それよりも小さいか、又はそれとは異なる形状とすることができる。
図22に示す偏向パターン500は、非偏向中心点8を有する8つの偏向点1〜8を含む。画像取得において、X線システムは、数点の間で切り換わることしかできず、又は偏向点(例えば、8つの点)のあらゆる組合せにわたって切り換わることができる。順番及び場所は、撮像目的に基づくことができる。例えば、目的が水平方向の分解能を高めることである場合に、X線システムは、点8と7、8と6、又は5と8の間で切り換わることができる。ステアリングパターンに関する順序及び場所は、システム製造業者又は撮像物理学者が決定することができる。
【0077】
電子的主要光線位置合わせ(又は電子的焦点位置合わせ)では、主光線位置又はステアリングされる光線ビーム位置に一定オフセット値を追加することができる。
図23は、主要X線ビームを指定撮像器場所に位置合わせするX線管の電子的主要光線位置合わせ620の例示的流れ図を示している。最初に比較的大まかな機械的位置合わせを実施することができる600。一例では、大まかな機械的位置合わせは0.5mmよりも細かい(<0.5mm)。別の例では、大まかな機械的位置合わせは<0.1mmである。大まかな機械的位置合わせは、30分よりも短いもの(例えば、15分)とすることができる。残存オフセット(受容可能な許容範囲までの)は、X線管内のステアリング磁気機器(例えば、電子ビームをステアリングすること)によって調節することができる。電子的主要光線位置合わせは、機械的位置合わせよりも遥かに細かく正確な調節を可能にし、その上により短い時間フレーム内で調節することができる。電子的微調節処理は、測定とツールとによって達成される機械的微調節と比較してデジタルオフセット値を変化させることによって実施することができる。
【0078】
再度流れ
図620を参照して、通常は物体又は幻影を用いて撮像器又は検出器がX線管からのX線に露出される624。X線検出器の画像がX線検出器又はシステム制御ユニット内のプロセッサによって処理され626、プロセッサは、指定撮像器場所(例えば、X線検出器幾の何学的中心点)からの撮像器上の主光線の距離を表すオフセット(又はオフセット値)を計算する628。一例では、オフセットは、xy平面内の焦点の2D距離(すなわち、x軸成分とy軸成分を有する)、又はxz平面内の主光線の2D距離(すなわち、x軸成分とz軸成分を有する)を表している。別の例では、オフセットは、x軸又はy軸に沿った焦点の1D距離、又はx軸又はz軸に沿った主光線の1D距離を表している。プロセッサは、オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲にあるか否か(例えば、オフセットを有する主光線が受容可能な許容範囲又は精度の範囲にあるか否か)を決定する630。一例では、オフセット値は、<25μm(完全位置合わせから)の受容可能な許容範囲又は精度を有することができる。別の例では、オフセット値は、<200μm(完全位置合わせから)の受容可能な許容範囲又は精度を有することができる。位置合わせの精度は、焦点サイズ、撮像器ピクセルサイズ、望ましい時間的分解能、及びX線システムに対する画像品質要件に依存する可能性がある。例えば、CT撮像では、主要X線ビームを1/4検出器ピクセルサイズだけシフトさせることにより、エイリアシングを回避し、時間的分解能を高めることができる。ピクセルエイリアシングは、あるピクセルがその隣接ピクセルに向けられた光又はX線を検出する時に発生する可能性がある。そのような場合に、微細電子的位置合わせは、精度を1/4ピクセルに設定することができ、1/4ピクセルまで細かく位置合わせすることができる。検出器ピクセルサイズが100μmである場合に、プロセッサは、撮像器のピクセルを位置合わせして25μmだけ片側にシフトさせるためのオフセットを計算する。従って、微細位置合わせの精度は、少なくとも25μmとすることができる。指定精度に対する位置合わせを決定するための少なくとも1つの機構を以下に提供する。
【0079】
再度流れ
図620を参照して、オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲にない場合に、既存のオフセット(いずれかが存在する場合)にオフセットが追加される632。ステアリング磁気機器がオフセット分だけ焦点を調節し、検出器が、適用されたオフセットを含む主光線で露出され634、処理は、オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入るまで繰り返される。一例では、TCUから発生されたステアリング信号を用いてオフセットをステアリング磁気機器に適用することができる。オフセットが受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入った状態で、オフセットを保存することができる636。オフセットは、X線管に付属のTCU内に保存することができる。一例では、管電圧と管電流との各組合せに対して異なるオフセットを計算することができる。オフセットは、温度又は焦点サイズのようなX線管、焦点、又はステアリング機構の他の特性に基づいて計算することができる。温度増大と共に、焦点及び得られる主光線は、熱ドリフトとして公知であるオフセットを起こす可能性がある。温度は、温度センサによって測定するか又は他のパラメータ(例えば、管電圧、管電流、露出実行時間、及び休止時間)に基づいて計算することができる。別の例では、電子的位置合わせは、機械的不整合のみならず熱ドリフトに関しても調節を行うように拡張することができる。オフセットは、特定の管電圧、特定の管電流、特定の管温度、又は焦点又はステアリングの他の変化する特性又はパラメータの組合せに対して計算することができる。
【0080】
X線管又はTCUがシステムの撮像器又は検出器と結合される場合に、測定値を調節システム(例えば、デジタル調節システム)に直接にフィードバックすることができるので、電子的位置合わせ又は電子的調節は、自動位置合わせを提供することができる。電子的位置合わせは、X線管の既存のビームステアリング又はビーム偏向機構を利用して焦点を2D空間内で調節することができる。
【0081】
位置合わせ処理の電子的位置合わせ部分では、ガントリーカバーを取り外す必要はなく、又は更に別の機械的調節は、初期に与えられた状態で必要としない場合がある。微調整位置合わせは、X線内でステアリング磁気機器を用いて電子ビームを移動し、画像が評価され、電子ビームは、決定論的又はイテレート的な調節サイクルのいずれかで調節される。
【0082】
図24は、管制御ユニット(TCU)440をシステム制御ユニット430と通信される位置制御信号、ステータス信号、又はエラー信号432と共に例示している。TCUは、特定のX線管に対して構成することができる。TCUは、フォーカス電源446と、フォーカスドライバ460と、ステアリング電源442と、ステアリングドライバ450と、制御モジュール470とを含む。フォーカス電源446は、フォーカスドライバ460に電力448を供給し、他の構成要素(例えば、制御モジュール470)に電力447を供給することができる。ステアリング電源442は、ステアリングドライバ450に電力444を供給し、他の構成要素(例えば、制御モジュール470)に電力443を供給することができる。
【0083】
フォーカスドライバは、フォーカシング磁気機器(
図9及び
図17の340又は342、
図21の344)のコイルに対するフォーカシング信号(例えば、電流)を供給する。フォーカスドライバは、少なくとも1つのフォーカスドライバを含むことができる。
図24に示すTCUでは、フォーカスドライバ460は、第1のフォーカスドライバ462と第2のフォーカスドライバ466とを含むことができる。第1のフォーカスドライバ462は、第1のフォーカシング磁石(
図9、
図17、及び
図21の340)のコイルにフォーカシング信号(例えば、電流)を供給することができ、第2のフォーカスドライバ466は、第2のフォーカシング磁石(
図9及び
図17の342、
図21の344)のコイルにフォーカシング信号(例えば、電流)を供給することができる。各フォーカスドライバ462又は466は、制御モジュール470から強度値464又は468を受信し、エラー信号463又は467(又はハンドシェーキング信号)を制御モジュール470に供給することができる。
【0084】
ステアリングドライバは、少なくとも1つのステアリングドライバを含むことができる。
図24に示すTCUでは、ステアリングドライバ460は、x位置ドライバ452とy位置ドライバ456とを含むことができる。x位置ドライバ452は、ステアリング磁石(
図9、
図17、
図18A〜
図18B、
図19の330、
図20の334、
図21の344[45°回転された場合])のx軸二重極コイル(
図14の366B及び366D)にステアリング信号(例えば、電流)を供給することができ、y位置ドライバ456は、ステアリング磁石(
図9、
図17、
図18A〜
図18B、
図19の330、
図21の344[45°回転された場合])のy軸二重極コイル(
図14の366A及び366C)にステアリング信号(例えば、電流)を供給することができる。各ステアリングドライバ452又は456は、制御モジュール470から位置値454又は458を受信し、エラー信号453又は457(又はハンドシェーキング信号)を制御モジュール470に供給することができる。
【0085】
制御モジュール470は、プロセッサ472とデータストレージ480とを含むことができる。プロセッサは、メモリ473と、中央演算処理装置(CPU)、コントローラ、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は他のプログラム可能構成要素とを含むことができる。メモリ473は、プログラム実行に向けてプロセッサ又は制御モジュールを初期化するためのブートローダー474と、アプリコード476と、データストレージ478とを含む。データ480(例えば、表)は、不揮発性メモリ(例えば、不揮発性ランダムアクセスメモリ[NVRAM]又はフラッシュメモリ)又は揮発性メモリ(例えば、静的ランダムアクセスメモリ[SRAM]又は動的ランダムアクセスメモリ[DRAM])上に存在することができる。データ480に対するメモリは、プロセッサ472のメモリ473内又は外部メモリチップ上に存在することができる。データは、ステアリングドライバ較正データ482と、フォーカスドライバ較正データ484と、ステアリング位置較正データ486と、オフセット値488と、微調節値(又はユーザ調節値)490と、管較正496とを含むことができる。ステアリングドライバ較正データ482は、ステアリングドライバ回路(例えば、ステアリングドライバ基板)に基づいて調節を提供する。フォーカスドライバ較正データ484は、フォーカスドライバ回路又はフォーカスドライバ回路(例えば、フォーカスドライバ基板)に基づいて調節を提供する。ステアリング位置較正データ486は、偏向パターン又はステアリングパターン(
図22に示すような)に関する位置データを含むことができる。オフセットデータ488は、先に解説したように、電子的主要X線ビーム位置合わせ又は焦点位置合わせ中に発生される計算値を含むことができる。微調節値(又はユーザ調節値)490は、ステアリングにおける追加調節又はユーザ調節(例えば、位置補正値)又はフォーカシングにおける追加調節又はユーザ調節(例えば、サイズ補正値)を含むことができる。ユーザ調節値は、データのセクションとすることができ、ユーザ制御が利用又は変更することができる。ユーザ調節値に対する変更は小幅又は軽微であり、十分にX線管の安全性パラメータの範囲にあるとすることができる。管較正は、X線管特定のX線管データとすることができ、X線管の製造中に決定又は生成することができる。データは、X線管から複写することができ(例えば、最初に又は各始動時に)、又は他にX線管に対するTCUに供給(ダウンロード)することができる。データは、管電圧(例えば、kV)、管電流(例えば、mA)、焦点サイズ、温度、又はX線管又は磁気機器の他の関連パラメータの各組合せに対して格納することができる。
【0086】
制御モジュール470は、データからフォーカシングパラメータを抽出するか又は入力に基づいてフォーカシングパラメータを計算することができる。フォーカシングデータ又は値が決定された状態で、フォーカシングデータはフォーカスドライバ460に送られる。システム制御ユニット430は、それがTCUのドライバ出力を起動する準備が整ったことを示す信号をTCUに送ることができる。信号を起動する準備が整ったことに応答して、TCUは、X線管及びTCUがX線露出に向けて準備が整ったことをシステム制御ユニットに通信する。処理中にいずれかのエラーが発生した場合に、これらのエラーをシステム制御ユニットに送信し戻すことができる。
【0087】
ステアリングの速度及び応答性を高めるために、位置変化を個別の線によってTCUに送信することができる。これに加えて又はこれに代えて、これらの位置情報又はステアリング情報は、十分に高速な通信インタフェースを通して送信することができる。別の例では、図示のように、位置情報又はステアリング情報をTCUに送ることができ、TCUは、位置及びステアリング変化を制御する。
【0088】
一例では、X線システムの始動時に、TCU440は、X線管に対する出力信号を発生させるためにメモリから異なる表又はデータを検索して取得し、これらのデータを組み合わせることができる。この設定中に、異なるデータ(例えば、管較正データ496)が、指定ドライバ450、452、456、460、462、又は466に対する較正データと組み合わされる。ステアリングデータに関しては、微調節値490(又は微細較正データ)が指定ドライバに対する最終ステアリングデータ内に追加及び融合される前にステアリングデータ結果をオフセットデータ分だけオフセットすることができる。最終的なフォーカシングデータ又はステアリングデータはメモリ473に格納し、フォーカシング又はステアリングの制御信号(
図8の416)を発生させるためのアプリコードの実行中に使用することができる。最終的なフォーカシング又はステアリングデータは、X線システム又はTCUが始動する度又はデータ内の値が更新又は修正される度に再発生させることができる。
【0089】
図25Aは、フォーカスデータ494の発生又は組合せを示している。管較正データ496は、フォーカスデータ494を発生させるためにフォーカスドライバ較正データ484を用いて部分的にイテレートされる。一例では、微調節値490が利用可能であるか又はフォーカシングに使用される場合に、フォーカスデータ494を発生させるためにフォーカスドライバ較正データ484を用いて部分的イテレートを行う前に微調節値490(例えば、サイズ補正値)が管較正496と組み合わされる。
【0090】
図25Bは、ステアリングデータの発生又は組合せを示している。オフセット値488(例えば、管電圧及び管電流に関する)がステアリング位置較正データ486の各位置に追加され、ステアリングデータ492を発生させるためにステアリングドライバ較正データ482を用いて部分的にイテレートされる。一例では、微調節値490が利用可能であるか又はステアリングに使用される場合に、ステアリングデータ492を発生させるためにステアリングドライバ較正データ482を用いて部分的イテレートを行う前に微調節値490(例えば、サイズ補正値)がオフセット値488とステアリング位置較正データ486の各位置とに追加される。
【0091】
再度
図24を参照して、始動時にメモリ内のデータから組合せフォーカスデータ(例えば、フォーカス表)又は組合せステアリングデータ(例えば、ステアリング表)を生成することができ、これらの組合せデータは、プロセッサ472のメモリ473のデータストレージ478に存在することができる。システム制御ユニット430は、X線システムの異なる構成要素と相互接続し、これらの構成要素を制御するのに使用されるX線システムの制御ユニットとすることができる。例えば、CT走査に対するためのシステム制御ユニットは、走査を設定するための情報をTCU440に送ることができる。フォーカシングパラメータは、焦点サイズ、管電圧、又は管電流のような実行される走査のタイプに依存する可能性がある。
【0092】
図8に示すようにTCU440からX線管410を分離することによってX線管とTCUとを交換可能にすることが可能になり、従って、X線管又はTCUが入れ替わった場合に、較正に向けていかなる追加のデータも用いずにX線管較正データ496(
図24及び
図25A)をTCUにアップロードすることができる。データ480又は478は、X線管又はTCU上に格納するか又はX線管とTCUとの間で交換することができる。
【0093】
再度
図22を参照して、1’〜8’で表すように、偏向パターン又はステアリングパターン500にオフセット値を適用することができる。オフセットは、物理的構造(例えば、X線管)、X線管の機械的特性、又は偏向位置(例えば、撮像器の縁部)によって制限することができる。例えば、許される偏向量は、管の軌道幅と狭路サイズ(例えば、ドリフト領域内の)とによって決定することができる。TCUドライバ設計は、位置又はステアリング変化(例えば、オフセット又は偏向位置)を発生させることができる速度を決定することができる。一例では、TCUは、主要X線ビームをX線撮像器上の位置に30マイクロ秒よりも短い(≦30μs)間にステアリングすることができる。より小さい偏向を必要とする場合に、位置を変化させる速度をより高速にすることができる。位置又はステアリング変化に対する速度は、ドライバ電圧及び必要とされる偏向量によって決定することができる。TCUは、ドライバ強度に基づいて偏向量を制限することができる。一例では、ドライバ強度は、TCU設計に対して調節又は選択することができる。
【0094】
図26は、オフセットのない主要X線ビーム508を取り囲む垂直オフセット範囲(限度)504と水平オフセット範囲(限度)506とを有するオフセット領域502を示している。一例では、オフセット範囲は1mmよりも小さいとすることができる。オフセットを有する主要X線ビーム510は、オフセット範囲で発生することができる。物理的構造又は偏向位置に基づいて、オフセットのない主要X線ビームのいかなる側の垂直オフセット範囲又は水平オフセット範囲も対称ではないとすることができ、又は互いに異なるとすることができる。
【0095】
フォーカシング磁気機器と、フォーカスドライバ電流と、ターゲット材料と、X線管電力(例えば、管電圧及び管電流)とによって決定することができるフォーカシングは、焦点サイズを制限することができる。X線ターゲット(アノード上の)は、損傷が発生する前に熱密度のある一定の量に耐えることができる。一般論として、より大きい焦点にはより高い電力を利用することができる。
【0096】
機械的管位置合わせと電子的管位置合わせの両方に対して、幻影(例えば、位置合わせ幻影又は分解能幻影)と呼ぶ基準物体を使用することができる。位置合わせは、回転と固定(非回転)の両方のX線システムに対して決定することができる。静止位置にあるX線システムに対して初期位置合わせを実施する方が簡単である可能性がある。デジタルX線システム又はマンモグラフィシステムのような静止X線システム又は静止位置にある回転式X線システムでは、位置合わせ幻影は、X線検出器の中心に位置決めされたボール、ピン、又は長い円柱とすることができる。時にピン、ボール、又は円柱は、X線幻影内の画像品質に関する他の特徴と組合せせられる。しかし、ピン、ボール、又は円柱の機能性は同様である。幻影のタイプに関係なく、幻影の目的は、X線システムの主要X線ビームをX線指定撮像器場所(例えば、X線撮像器の中心)に位置合わせすることである。X線撮像器は、フィルム又は電子的検出器を含むことができる。多くの場合に、他の構成要素(例えば、コリメータ又はレーザ十字線)を主要X線ビーム及び撮像器に位置合わせすることができる。例えば、患者設定においてX線撮像器を撮像される患者の解剖学的構造に位置合わせするためにレーザ十字線が多くの場合に使用される。完全に位置合わせされたX線システムでは、ピンは主要X線ビームの直下に設けられ、幻影は、画像内に円形又は丸形のスポットを生成する。スポットが撮像器の中心にない場合に、別の段階は、幻影又はX線源が撮像器に位置合わせするまで幻影又はX線源をシフトさせることとすることができる。
【0097】
幻影がX線源と不整合状態にある場合に、直径と直交する直径の比とは異なる可能性がある。慎重な精査が、スポット又は円の密度が均一ではなく、スポットの各側に異なるコントラストレベルを有することを示すことができる。実際の幻影直径からの歪曲又は偏差の量は、主要X線ビームからのオフセットに対する直接的な幾何学的関係を有することができる。正確なオフセット量は、拡大率、ビーム角、及びX線システムに関する他のファクタに依存する可能性がある。
【0098】
画像の歪曲又は偏差は、視覚的に検出することができるか又は画像内で異なるコンピュータアプリケーション又はコンピュータプログラムを用いて測定することができる。オフセットを決定するために画像内の歪曲を測定する際の自動化により、電子的主要X線ビーム位置合わせ処理は、主要X線ビームを指定撮像器場所に位置合わせする最終オフセット値を僅か数分又はそれよりも短い間に生成することができる。
【0099】
図27A〜
図27Bは、X線源の場所の差による画像寸法の変化を示している。
図27Aは、X線源520に位置合わせされた幻影をX線源524が幻影526に位置合わせされた場合に発生する位置合わせされたX線ビーム532と共に示している。
図27Bは、X線源522に対して不整合の幻影をX線源524が幻影526に対して不整合の場合に発生する不整合X線ビーム534と共に示している。位置合わせされたX線ビーム532の画像寸法536(すなわち、位置合わせされた幻影投影幅)は、不整合X線ビーム534の画像寸法538(すなわち、不整合幻影投影幅)よりも小さい。
【0100】
静止X線システム又は静止位置にある回転式X線システムでは、幻影は、検出器の公称中心に位置決めされ、画像が取得される。幻影は、それが撮像器の中心に位置決めされるまで移動することができる。幻影が中心に定められた状態で、X線源の位置は、機械的位置合わせ処理又は説明する電子的位置合わせ処理のいずれかによって調節することができる。画像が取得され、歪曲が測定され、オフセットが計算され、X線源の電子的調節又は機械的位置合わせが行われる。オフセット調節が施された構成は、別の画像を用いて検証することができる。幻影と撮像器及び主要X線ビームとの位置合わせは互いに影響を及ぼし合う場合があり、従って、幻影の位置及び主要X線ビームの調節は、3つの構成要素(すなわち、幻影、撮像器、及び主要X線ビーム)の間の正しい位置合わせが得られるまでイテレートすることができる。
【0101】
図28は、リング特徴部572とリング内にある中心点574とを含む中心点を有するリング幻影の例570を示している。リング幻影570は位置合わせに対して使用することができ、追加情報を提供することができる。中心点(スポット)574は、小さい直径を有する比較的平坦なものとすることができ(歪曲効果は高さと共に低下することで)、それによって幻影と撮像器との位置合わせを可能にすることができる。リング特徴部はそれよりも厚く又は高く、リング幻影がX線源(例えば、X線管)と適正な位置合わせ状態にない時に形状の歪曲又は偏差をもたらす。リング幻影は、一部の他の幻影よりも少ないイテレート位置合わせ段階のみを必要とする可能性がある。
【0102】
回転式X線システム(例えば、CTシステム)では、検出器及びX線システムの中心軸に対するX線ビームの不整合は、ストリークアーチファクトのような画像アーチファクトをもたらす可能性がある。ストリークアーチファクトは不整合が大きい程有意になるので、画像品質は、不整合量に依存して低下する可能性がある。位置合わせ中に、ピン又はボールを中心に有する幻影がX線システムのカウチ又はテーブルの上(X線システムの中心軸の近く)に位置決めされ、従って、ピン又はボールは、回転式X線システムの回転軸に中心が定められる。幻影の配置は、走査と画像内のアーチファクト及び幻影の幾何学的サイズとによって検証することができる。幻影が正しく中心に定められていない場合に、画像は歪曲を示す可能性がある。静止画像が撮影される(ガントリーが回転しない)場合に、測定は、静止X線システムと同様とすることができ、主要X線ビームを回転X線システムために使用される検出器アレイに位置合わせされる。多くの場合に、アーチファクトを最小にして画像品質を高めるために、1/4ピクセルサイズ程度の小さいオフセットを使用することができる。
【0103】
主要X線ビームが撮像器に対して位置合わせされ、それによって画像の分解能を改善する別の方法は、線対幻影を使用するものである。ある一定の分離が検出不能である場合に、位置合わせは正しくない場合があり、X線管又は主要X線ビームを調節する必要がある可能性がある。調節は、線対が区別可能又は視認可能になるまで行うことができる。
図29A〜
図29Bは、位置合わせ又は分解能の決定に使用される異なるサイズの線状幻影の例を示している。
図29Aは、3つの小さい直方体形線状幻影540A〜540Cを示している。
図29Bは、3つの大きい直方体形線状幻影550A〜550Cを示している。直方体の端部(又は2つの面)は、正方形形状を有することができ、正方形の各辺は、これらの線幻影の間の間隔544又は554と実質的に類似な長さ542又は552を有することができる。幻影デバイスは、異なるレベル又は程度の位置合わせ又は分解能に対して異なるサイズの線形幻影を含むことができる。
【0104】
図29C〜
図29Eは、
図24A〜
図24Bに示す線状幻影からもたらされる可能性がある異なる画像を示しており、これらの画像は、主要X線ビームに対する撮像器の位置合わせの精度に基づくとすることができる。
図29Cは、主要X線ビームに対する撮像器の正しい位置合わせの結果とすることができる明瞭な個別の線状幻影画像560A〜560Cを示している。
図29Dは、主要X線ビームに対する撮像器の僅かな不整合の結果とすることができる密集した線状幻影画像562A〜562Cを示している。
図29Eは、主要X線ビームに対する撮像器の不整合の結果とすることができるぼけた線状幻影画像564を示している。
【0105】
X線管の主要X線ビーム(又はX線システムの中心軸)に対して撮像器を位置合わせするために他の機構及び幻影も使用することができる。
【0106】
放射線撮像器に対してX線管の主要X線ビームを位置合わせする方法
図30に示す流れ図は、管制御ユニット(TCU)を用いて放射線検出器に対してX線管の主要光線を位置合わせする方法700を示している。本方法は、段階710にあるように、X線管内のエミッタから電子を放出する段階を含む。段階720にあるように、電子がX線管のアノードの焦点上に衝突することから主要光線を有するX線を発生させる段階が続く。本方法の次の段階は、段階730にあるように、指定撮像器場所からの主要光線の距離を表すオフセット値をTCUで受信する段階を含む。本方法は、段階740にあるように、エミッタとX線管上のアノードの間にあるステアリング磁気多重極に適用されるオフセット値に基づいてTCUの少なくとも1つのステアリングドライバからステアリング信号を発生させる段階を更に含むことができる。本方法の次の段階は、段階750にあるように、ステアリング磁気多重極を用いて焦点をアノード上で移動して主要光線を指定撮像器場所に対して位置合わせする段階を含むことができる。ステアリング磁気多重極の少なくとも2つの極は、電子の経路の両側にある。
【0107】
本明細書で説明する電子的焦点位置合わせ(又は主要光線位置合わせ)技術は、オフセットを指定方向に調節するための位置又は値を管制御ユニット(TCU)に供給することによってX線管の主要X線ビームを撮像器に対して位置合わせすることができる。オフセットの調節は依然としてイテレート処理である可能性があるが、調節の速度、正確性、及び精度を高めることができる。電子的位置合わせを含む位置合わせの正確性及び精度は、偏向量が電子的分解能によって決定することによって高めることができる。それとは対照的に、機械的調節は、使用される測定デバイスと管を正確に移動する技術者の機能とに制限される。多くの場合に、1つの方向の機械的調節は、別の方向の小さい並進運動又は回転運動をもたらす場合があり、それによって機械的位置合わせが低質化するか又は無効になる可能性がある。電子的位置合わせにおける正確性及び精度は、測定システムと電子機器に元来備わっている分解能とによって決定することができ、保守点検技術者よりも遥かに正確である。機械的調節は、大まかな機械的調節の後では必要とされないので、処理を自動化することができ、X線管への機械的出入り及び管制御を必要としないことが可能であるので、保守点検技術者によらずに又はX線システムの部分分解なしで処理を実施することができる。電子的位置合わせは、資格を有するオペレータが現場で実施することができる。例えば、オペレータは、X線システム内に試験幻影を配置し、自動位置合わせ手順を実行することができ、それによって管を位置合わせするか又は管位置合わせを検査するための技術者への保守点検呼び出しを排除することができる。位置合わせ検査及びX線システム性能の検証はいかなる時点でも実施することができ、必要とされる調節を保守点検技術者の介入なく行うことができる。これに加えて、X線システムの保護カバーを取り外す必要性をなくすことができる。一例では、較正又は位置合わせの合計時間を1/2〜1時間から数分にまで短縮することができる。
【0108】
静的オフセット調節に加えて、電子的位置合わせは、力及び熱膨張又は熱収縮に起因するX線管に対する動的変化を調節するための機構も与える。更に、本説明の電子的位置合わせは、従来のステアリング機構及びステアリング処理からの課題も解消する。従来のステアリング機構に関連付けられた課題は、管電流と管電圧との異なる組合せ範囲にわたって焦点ブルーミングをもたらす偏向と、ドリフト領域内に追加される偏向機構に起因するX線管の狭路(すなわち、ドリフト領域内)の適用的な長さに起因する焦点サイズの増大とを含む。従来のステアリング機構に関連付けられた他の課題は、焦点の幾何学的歪曲をもたらす可能性がある片側磁気機器を含む。本説明の追加の機構(例えば、電子ビームの両側にあるフォーカシング磁気機器及び磁気極)は、ブルーミングを回避し、焦点のサイズ及び位置を正確に制御することができる。
【0109】
ステアリング機構又は偏向機構を使用する電子的焦点位置合わせ(又は主要光線位置合わせ)技術は、焦点を位置合わせ状態に保つために静的又は動的オフセットを重ねることによって画像分解能を高めるために使用することができ、それによって画像品質を最適化し、幾何学的歪曲を低減することができる。ステアリング機構又は偏向機構と列を構成するフォーカシング機構は、焦点ブルーミングを縮小又は排除するという追加の利点を有することができる。焦点ブルーミングは、管電流の増大(すなわち、より高い電子密度又はより高い電流密度)と管電圧の低下(すなわち、より低い電子速度)とに起因して発生する可能性がある。追加のフォーカシング機構を有することにより、ブルーミングを制御、縮小、又は最小にすることができる。
【0110】
焦点サイズ及び位置の電子的較正
X線管のステアリング磁気機器及びフォーカシング磁気機器は、TCUと共に、焦点位置(又は主要光線位置)の電子的較正又は焦点サイズ(焦点寸法、主要光線強度、又はX線ビームエネルギ分布)の電子的較正を提供することができる。X線管では、焦点サイズは、管電圧及び管電流の設定によって部分的に定めることができる。焦点サイズは、異なる管電圧及び管電流における電子ビーム空間電荷効果に起因して変化する可能性がある。上述のように、管電圧又は管電流を変化させることにより、焦点ブルーミングがもたらされる可能性がある。本説明のステアリング磁気機器又はフォーカシング磁気機器を使用することで、焦点ブルーミングを回避するために焦点サイズを管電圧及び管電流のダイナミックレンジにわたって均一なサイズに調節することができ、それによって管電圧と管電流との異なる組合せに対して画像品質を改善することができる。
【0111】
従来、偏向(偏向位置を発生させるのに使用される)は、管作動パラメータ(例えば、特定の管電圧及び管電流)のセットを用いて生成される。偏向は、特定の管作動パラメータにおいてしか正確ではない可能性がある。他の位置では、偏向は、焦点の場所に対して変化する可能性がある。
【0112】
異なるタイプのX線システム(例えば、異なる製造業者からのもの)において多くのX線管が使用される可能性がある。一般的にX線管の較正中に、偏向距離及び焦点サイズを較正するのに平坦な検出器が使用される。しかし、回転X線システムに使用されるX線検出器240は円形ガントリー上に装着され、
図2及び
図4〜
図6に示すように内因的に弧形のもの又は湾曲したものである。
図31A〜
図31Cに示すように、X線検出器における湾曲形状は、平坦検出器と比較した場合に距離差をもたらす可能性がある。ガントリー直径及びX線管からのX線検出器の距離のようなガントリー寸法は、多くの場合にX線管製造業者に対して不明であり、又は較正処理(ガントリーにおける)の間に再現することが困難又は高価である可能性があるので、平坦X線検出器を使用する較正は、回転X線システムの湾曲検出器に適用される場合はある程度の歪曲又は誤差を有する可能性がある。X線管のフォーカシング機構及びステアリング機構は、TCUと共に、平坦検出器対回転式X線システム上の湾曲検出器に関する較正差に起因して存在する開口誤差を補正するために、又は特定の用途に対して撮像結果を最適化するようにステアリング又はフォーカシングを調節するために使用することができる。
【0113】
図31Aは、平坦X線検出器306上の偏向主要X線ビーム918と湾曲X線検出器上の偏向主要X線ビーム918との間の偏向範囲(すなわち、平坦X線検出器主要X線ビーム偏向範囲910と湾曲X線検出器主要X線ビーム偏向範囲912)における誤差(すなわち、2次誤差)を示している。2次誤差は、平坦検出器と回転可能ガントリー上で通常は湾曲している検出器の間の焦点のサイズ又は位置の差である。平坦X線検出器上の主要X線ビーム偏向範囲と湾曲X線検出器上の主要X線ビーム偏向範囲の間の誤差914の半分を検出器の各側に示している。特定のユーザによって使用される検出器の曲率は、通常は事前に(すなわち、較正の前に)利用可能ではないので、焦点サイズ及び偏向は2次誤差を有する可能性がある。焦点サイズ及び偏向誤差の不整合は、画像品質及び画像SN比に対して悪影響を有する可能性がある。
【0114】
図31Bは、検出器の曲率によって導入される位置誤差の例924を示している。位置誤差924は、平坦X線検出器306上の偏向主要X線ビーム928と指定基準位置916(例えば、X線検出器の幾何学的中心点)における主要X線ビームの間の距離920と、湾曲X線検出器906上の偏向主要X線ビーム928と指定基準位置916における主要X線ビームの間の距離922の間の差である。
【0115】
図31Cは、検出器の曲率によって導入されるサイズ誤差の例を示している。偏向主要X線ビーム928を指定された強度レベル又は電力レベルのX線を表すX線ビーム外形934と共に示している。X線ビーム外形934は、焦点サイズの変化を示すことができる。指定強度を有する平坦X線検出器主要X線ビームサイズ930(平坦X線検出器に印加される焦点サイズを表す)は、この指定強度を有する湾曲X線検出器主要X線ビームサイズ932(湾曲X線検出器に印加される焦点サイズを表す)と異なるサイズを有する可能性がある。
【0116】
先に解説したように、位置のシフト及び焦点サイズの変化は画像品質に対して悪影響を有する。電磁偏向は、X線管の作動パラメータの各々に対する各位置の微細較正を可能にする。一例において、再度
図8を参照して、X線管410と、X線検出器420と、システム制御ユニット430と、TCUとは、較正に向けて管又はTCUを製造業者に戻す必要ではなく、更に保守点検技術者の介入なく各主要光線位置又は焦点を自動的に較正するために使用することができる閉ループシステムを形成する。X線管410は、TCU440との組合せで、付属のシステム制御ユニットシステム430が、焦点位置(又は主要光線位置)又は焦点サイズ(又は主要光線強度又はX線ビームエネルギ分布)のような異なる管作動パラメータに対して各位置を調節及び較正することを可能にし、これを撮像チェーン内への撮像誤差(例えば、2次誤差)の導入を回避、低減、又は最小にするために使用することができる。一例では、較正の調節は、較正を実施するための技術者への保守点検呼び出しの必要なくシステムレベルでもたらすことができる。その結果、オペレータは、毎日、毎月、四半期毎、半年毎、又は一年毎の品質確認手順に従って較正を検証し、技術保守点検呼び出しの必要なく撮像チェーンを再較正することができる。別の例では、較正の検証は、数分以内又はそれよりも短い時間内に技術者の介入なく実施することができる。
【0117】
図32は、2次誤差を補正するために使用することができる様々なステアリング位置(例えば、焦点偏向パターン)に関するX線管の焦点位置(又は主要X線ビーム位置)の電子的調節800の流れ図を示している。比較的大まかな機械的位置合わせを実施することができる600。次いで、X線管の電子的主要光線位置合わせを実施することができる620。撮像器又は検出器がX線管からのX線に偏向位置で露出される804。露出は、位置合わせ物体又は幻影を用いて実施することができる。X線検出器の画像がX線検出器又はシステム制御ユニット内のプロセッサによって処理され806、プロセッサが、指定偏向位置(すなわち、位置補正を加えた又は加えていないターゲット偏向主要光線位置)からの偏向主要光線(すなわち、実際の偏向主要光線位置)の距離を表す位置補正(又は位置補正値又は位置調節)を計算する808。一例では、位置補正は2D距離を表している。別の例では、位置補正は1D距離を表している。プロセッサが、偏向主要光線位置(位置補正あり又はなしの)が受容可能な許容範囲又は精度の範囲にあるか否かを決定する810。一例では、位置補正は、主要光線位置の各々に対して使用されるオフセット値よりも小さい受容可能な許容範囲又は精度を有することができる。例えば、オフセット値が<25μm(完全位置合わせから)の受容可能な許容範囲又は精度を有することができる場合に、位置補正は、<5μm(完全位置合わせから)の受容可能な許容範囲又は精度を有することができる。
【0118】
位置補正が受容可能な許容範囲又は精度の範囲にない場合に、位置補正がステアリング位置値(例えば、偏向位置を発生させるのに使用される)及び既存の位置補正(いずれかが存在する場合は)に追加される812。ステアリング磁気機器が、位置補正を含む調節又は補正されたステアリング位置値によって焦点を調節し、検出器が調節された偏向主要光線で露出され814、処理は、位置補正が偏向位置に関して受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入るまで繰り返される。一例では、位置補正をTCUから発生されたステアリング信号を用いてステアリング磁気機器に適用することができる。位置補正が受容可能な許容範囲又は精度の範囲に入った状態で、この位置補正を微調節値として保存することができる816。位置補正は、X線管に付属のTCU内に保存することができる。一例では、管電圧と管電流との各組合せに対して異なる位置補正を計算することができる。再度
図22を参照して、偏向位置は、許容可能又は受容可能なステアリング範囲503内の位置で位置補正を用いて較正することができる。
【0119】
別の例では、管電圧と管電流との各組合せに対する各偏向位置又はステアリング位置(偏向パターン内の)を用いて異なる位置補正を計算することができる。
図33は、
図22に示す8つの偏向点1〜8及びオフセットを有する8つの偏向点1’〜8’を各々に対して異なる位置補正と組み合わされたオフセットを有する8つの偏向点1’’〜8’’と共に示す主要光線偏向パターン501(又は焦点偏向パターン)を示している。各偏向点1’’〜8’’は、他の偏向点とは異なる位置補正を示している。
【0120】
別の構成では、異なる位置補正を他の位置合わせ値(例えば、オフセット値)又は調節値と組み合わせることができる。
図34は、オフセット領域502上に重ね合わせられたX線検出器上の主要X線ビーム位置補正(例えば、微調節)に対する位置補正領域(又は微調節領域)512を示している。位置補正領域512は、オフセットを有する主要X線ビーム510を取り囲む垂直位置補正範囲(限度)514と水平位置補正領域(限度)516とによって定めることができる。位置補正領域512の範囲でオフセット及び位置補正を有する主要X線ビーム518を発生させることができる。一例では、位置補正範囲は50μmよりも小さいとすることができる。一例では、位置補正範囲は10μmよりも小さいとすることができる。X線管の物理的構造又は偏向位置に基づいて、オフセットを有する主要X線ビームのいかなる側の垂直位置補正範囲又は水平位置補正範囲も対称ではなくてもよいか又は互いに異なるとすることができる。
【0121】
例えば、オフセット(すなわち、位置510からの異なるオフセット値)を有する主要X線ビーム511がオフセット領域502又は許容ステアリング範囲503の縁部にある場合に、位置補正領域513は、オフセットを有する主要X線ビーム511を取り囲む小さめの垂直位置補正範囲515又は小さめの水平位置補正範囲517によって縮小される可能性がある。位置補正領域513の範囲でオフセットを有する主要X線ビーム及び位置補正519を発生させることができる。別の例では、オフセットなしで位置補正を使用することができ、従って、位置補正領域(図示せず)の範囲で位置補正が加えられた主要X線ビーム509を発生させることができる。
【0122】
図35は、平坦X線検出器306(
図31A〜
図31C)上に重ね合わせられた湾曲X線検出器306(
図31A〜
図31C)の上面図を示し、平坦X線検出器と湾曲X線検出器の間の歪曲を示している。画像の平坦X線検出器外形940を画像の湾曲X線検出器外形942、並びに平坦X線検出器及び湾曲X線検出器上の中心点916(
図31A〜
図31C)又は938に対して示している。平坦X線検出器に対して較正された湾曲X線検出器の縁点944を較正又は平坦X線検出器上に生成される画像を適合させるために湾曲X線検出器のシフト縁点946に対して調節、シフト、又は較正することができる。中心点938は、補正位置又は調節位置を持たない場合がある。点のうちで他の位置にある残りのもの(例えば、中間点)は、既知の較正位置又は測定された較正位置(位置補正が加えられた)に比例して調節することができる。中間位置は、既知の偏向点補正から計算することができる。
【0123】
図36は、2次誤差を補正するために使用することができる様々なステアリング位置820(例えば、焦点偏向パターン内)に関するX線管の焦点サイズ(又は主要光線強度又はX線ビームエネルギ分布)の電子的調節の流れ図を示している。X線管の電子的主要光線位置合わせを実施することができる620。撮像器又は検出器がX線管からのX線に偏向位置で露出される824。検出器は、焦点サイズを表す主要光線強度、X線ビーム電力レベル、X線ビームエネルギ分布を測定するように構成することができる。測定は、検出器のピクセル又は領域において行うことができる。強度又は電力レベルを有するX線検出器の画像がX線検出器又はシステム制御ユニット内のプロセッサによって処理され826、プロセッサが、偏向主要光線(すなわち、実際の偏向主要光線サイズ)と指定基準位置での主要光線(すなわち、サイズ補正を加えた又は加えていないターゲット偏向主要光線サイズ)との間のX線強度差を表すサイズ補正(又はサイズ補正値又はサイズ調節)を計算する828。一例では、サイズ補正は、各偏向位置に対する管電圧及び管電流組合せに関連付けられる。プロセッサは、偏向主要光線サイズ(サイズ補正を加えた又は加えていない)が受容可能な許容範囲又は強度の範囲にあるか否かを決定する830。
【0124】
サイズ補正が受容可能な許容範囲又は強度の範囲にない場合に、フォーカシング値(例えば、指定焦点サイズを発生させるのに使用される)及び既存のサイズ補正(いずれかが存在する場合)にサイズ補正が追加される832。フォーカシング磁気機器が、サイズ補正を含む調節又は補正されたフォーカシングサイズ値によって焦点を調節し、検出器が調節された偏向主光線で露出され834、処理は、サイズ補正が、偏向位置に対する受容可能な許容範囲又は強度の範囲に入るまで繰り返される。一例では、サイズ補正は、TCUから発生されるフォーカシング信号を用いてフォーカシング磁気機器に適用することができる。サイズ補正が受容可能な許容範囲又は強度の範囲に入った状態で、このサイズ補正を微調節値として保存することができる836。サイズ補正は、X線管に付属のTCU内に保存することができる。一例では、管電圧と管電流との各組合せに対して異なるサイズ補正を計算することができる。
【0125】
一般的に焦点フォーカシングは、電子ビームに関してステアリング磁気機器の前に設けられたフォーカシング磁気機器を用いて焦点ステアリングの前に行われる。焦点サイズ820及び焦点位置800が電子的に調節される場合に、焦点サイズ820の電子的調節を焦点位置800の電子的調節の前に行うことができる(位置毎又はX線検出器毎のいずれかで)。
【0126】
焦点位置(又は主要光線位置)の電子的な較正又は調節又は焦点サイズ(又は主要光線強度又はX線ビームエネルギ分布)の電子的較正を平坦X線検出器と湾曲X線検出器の間の差に関する位置補正及びサイズ補正に対して解説したが、本説明の機構及び技術は、歪曲及び誤差をもたらす他の特徴要素に適用することができる。例えば、偏向の結果として生成される1つのタイプの誤差は、アノードの湾曲した角度付きターゲット軌道面の異なる区域上に入射する電子ビームに起因する焦点の幾何学的歪曲であり、この歪曲は、焦点の位置及びサイズにおいてある程度の歪曲及び誤差をもたらす可能性がある。管較正(
図24及び
図25Aの496)又はステアリング位置較正データ(
図24及び
図25Bの486)は、アノードターゲットの丸形面に起因する誤差及び歪曲を補正することができる。一部の例では、管較正又はステアリング位置較正データは、アノードの曲率に起因する歪曲及び誤差を十分に補償しない可能性がある。これに代えて又はこれに加えて、焦点の位置及びサイズの電子的較正は、焦点の位置及びサイズにより高い精度を与え、より良好な画像分解能を与えるために使用することができる。
【0127】
図32に示す処理と
図36に示す処理とを組み合わせることで、電子ビームを予め定められた位置のうちの1つにステアリングすることができ、画像が取得される。画像データは処理され、それぞれの補正又は較正パラメータが計算される。処理は、焦点サイズ及び偏向が定められた限度又は許容範囲の範囲に入るまで繰り返される。特定の管パラメータ設定に対する焦点サイズ及び偏向が較正された状態で、較正値が格納され、次の位置を較正することができる。位置はユーザが定めることができ、従って、本説明の処理は、ユーザが達成したいと望む撮像技術に対して各位置を調整又は較正することを可能にする。
【0128】
一部の例では、焦点のサイズ又は位置の較正は、オペレータ又はユーザが電子ビームを特定の位置に指令し、これが、次に、ある一定の位置でX線ビームを放出させる手動モードに実施することができる。データが取得され、焦点サイズ及び偏向距離は、利用、測定、又は決定することができる。次いで、測定データは、必要な調節を決定するために使用することができる。較正処理は、ユーザ又はオペレータが保守点検技術者を呼び出すコスト及び時間なく画像品質の改善に向けて調節を加えることを可能にする自動モードで実行することができる。較正処理により、個々の位置を最適化することができ、最適化された位置を発生させるのに使用されるパラメータを異なる手順(例えば、患者の検査)の間の使用に向けてTCUに格納することができる。自動モードでは、X線検出器を制御するために、又はX線検出器又はシステム制御ユニットからの関連情報を抽出するためにアプリケーション(例えば、スキャナシステムソフトウエア)を使用することができる。別の例では、電子ビームが1つの位置から次の位置に移動している時などに焦点サイズ誤差及び偏向誤差を動的に補正することができる。焦点位置の電子的較正又は焦点サイズの電子的較正は、自動化することができる調節及び調節検証のための機構を含み、従って、オペレータ又はユーザは、保守点検技術者の介入なく正しい位置及び焦点サイズを検証することができる。再較正を必要とする場合に、ユーザ又はオペレータは、検出された誤差を排除又は低減するように調節を加えるか又は自動較正手順を開始することができる。
【0129】
手動モード又は自動モードにおける偏向位置及び焦点サイズの調節は、電子ビームの微調節を可能にし、検出器上の曲率に起因する開口誤差及び他の偏向誤差を補正するのに「最適化された」値を生成することができる。焦点サイズ又は偏向位置に微調節を加えることにより、ユーザ(例えば、オペレータ)が歪曲誤差を補正することが可能になり、画像分解能、SN比、及び画像品質を改善することができる。
【0130】
X線管は、TCUとの組合せで、焦点の位置又はサイズの調節を含む自動の電子的較正手順を実行することができる。電子的較正は、保守点検技術者が設置又は保守点検中に画像品質を最適化することを可能にするか又はユーザが保守点検呼び出しなく較正をその場で検証及び補正するか又はやり直すことを可能にする。位置及びサイズの補正は、ユーザの要求に基づいてX線管の寿命を通して加えることができる。
【0131】
図37に示す流れ図は、管制御ユニット(TCU)を用いて異なる偏向位置に関して放射線検出器に対してX線管の主要光線を調節する方法1000を示している。本方法は、段階1010にあるように、X線管内のエミッタから電子を放出する段階を含む。段階1020にあるように、X線管上のエミッタとアノードの間にあるステアリング磁気多重極を用いて電子ビームを指定偏向位置に従って偏向する段階が続く。本方法の次の段階は、段階1030にあるように、電子がX線管のアノードの焦点上に衝突することから主要光線を有するX線を発生させる段階を含む。本方法は、段階1040にあるように、指定偏向位置からの偏向主要光線の距離を表す位置補正値をTCUで受信する段階を更に含むことができる。本方法の次の段階は、段階1050にあるように、ステアリング磁気多重極に適用される位置補正値に基づいてTCUの少なくとも1つのステアリングドライバからステアリング信号を発生させる段階を含むことができる。本方法は、段階1060にあるように、偏向主要光線が指定偏向位置と位置合わせするようにステアリング磁気多重極を用いてアノード上の焦点を移動する段階を更に含むことができる。ステアリング磁気多重極の少なくとも2つの極は、電子の経路の両側にある。
【0132】
本明細書に列挙する全ての参考文献は、その全体が特定の引用によって本明細書に組み込まれている。
【0133】
回路は、ハードウエア、ファームウエア、プログラムコード、実行可能コード、コンピュータ命令、及び/又はソフトウエアを含むことができる。非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体は、信号を含まないコンピュータ可読ストレージ媒体とすることができる。
【0134】
本明細書で説明する機能ユニットのうちの多くのものにその実施独立性をより具体的に強調するためにモジュール(又はユニット)とラベル付けしたことは理解すべきである。例えば、モジュールは、論理チップ、トランジスタ、又は他の構成要素を含むがこれらに限定されないカスタム超大規模集積(VLSI)回路又はゲートアレイを含むハードウエア回路として実施することができる。また、モジュールは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能アレイ論理回路、プログラム可能論理デバイス、又は類似のデバイスを含むがこれらの限定されないプログラム可能ハードウエアデバイスに実施することができる。
【0135】
本明細書を通じて「例」又は「実施形態」への参照は、例に関して説明する特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態内に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な箇所における「例」又は「実施形態」という言葉の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。
【0136】
更に、本説明の特徴、構造、又は特性は、1又は2以上の実施形態において適切な方式で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすために多くの特定の詳細(例えば、レイアウト及び設計の例)を提供する。しかし、当業者は、本発明をこれらの特定の詳細のうちの1又は2以上なしで又は他の方法、構成要素、レイアウト等と共に実施することができることを認識するであろう。この他に、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために公知の構造、構成要素、又は作動は、詳細には示していないか又は記載していない。
【0137】
以上の例は1又は2以上の特定の用途における本発明の原理を示すが、当業者には、本発明の革新的権限の行使なしでかつ本発明の原理及び概念から逸脱せずに実施の形態、使用、及び詳細に多くの修正を加えることができることは明らかであろう。従って、本発明を限定するように意図していない。本発明の様々な特徴及び利点は、以下の特許請求の範囲に示している。