特許第6542316号(P6542316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542316
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/12 20120101AFI20190628BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20190628BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   E21B47/12
   G01C7/06
   G01C15/00 104D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-175934(P2017-175934)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-52445(P2019-52445A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年5月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314179(JP,A)
【文献】 特開2004−183375(JP,A)
【文献】 特開2003−293680(JP,A)
【文献】 特開平07−177070(JP,A)
【文献】 特開2008−059447(JP,A)
【文献】 特開平11−003487(JP,A)
【文献】 特開2013−007241(JP,A)
【文献】 特開平06−188799(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0356152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
G01C 1/00−15/14
G08C 13/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削刃を有する掘削管により地盤を掘削して前記掘削管を地中に進入させる掘削装置において、
前記掘削管に設けられ前記掘削管の地中内の位置を検出するためのセンサと、
前記掘削管に設けられ前記センサによる位置検出信号を無線送信する第1の通信機と、
前記掘削管の後端部に前記掘削管の地中への進入深さに応じた本数だけ接続され、中空部内が前記位置検出信号を無線送信する信号伝送路を構成する複数の中空管と、
前記信号伝送路を送られてくる位置検出信号を受信する第2の通信機を有し、前記第2の通信機で受信した位置検出信号から前記掘削管の現在位置を求める演算を実行する演算装置と、
前記掘削管と後続の前記中空管の間、及び、前記中空管と後続の中空管との間の少なくとも1箇所に接続される中継管とを備え、
前記中継管には、前記信号伝送路を前記第2の通信機に向けて送られてくる位置検出信号を中継する中継装置が設けられており、
前記中空管には、前記中継装置が設けられていない掘削装置。
【請求項2】
前記第1の通信機と前記第2の通信機とは、所定の近距離無線通信規格に準拠した無線方式で無線通信を行う請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記中継管は、内部が中空の第1及び第2の管からなり、
前記第1の管は、前端部に前記掘削管又は前記中空管が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に第2の管の前端部が嵌め合わされる後端接続部とを備え、
前記第2の管は、前端部に前記第1の管の前記後端接続部が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に後続の前記中空管の前端部が嵌め合わされる後端接続部とを備え、
前記第1の管の内部に形成された段部と前記第2の管の前端接続部との間に前記中継装置が保持されている請求項1に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記中継装置は、リング形状の合成樹脂成形体に埋設されている請求項1または3に記載の掘削装置。
【請求項5】
前記中継装置は、前記合成樹脂成形体より外部へ突出するアンテナを備えている請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
最後尾の前記中空管の後端に接続される連結管をさらに備え、
前記連結管は、前端部に前記中空管が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に前記掘削管を地中に進入させるボーリングマシンの回転推進機構の接続部が嵌め合わされる後端接続部とを備え、
前記連結管の内部に形成された段部と前記ボーリングマシンの接続部との間に前記中継装置が保持されている請求項1に記載の掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に掘削刃を有する掘削管により地盤を掘削して掘削管を地中に進入させる掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤を掘削するためのボーリング工法が知られている。ボーリング工法は、例えば地表面から建造物の下方に向かって斜めに曲線掘削を行い、その後、水平方向に向きを変えて直線掘削を行うことで、建造物の下方に、薬液を注入するための孔や、通信線を挿入するための孔を形成するものである。
【0003】
この種のボーリング工法に用いられる掘削装置は、先端に掘削刃を有する掘削管と、掘削管の後端側に順次接続される中空管と、地上に設置されたボーリングマシンとを備えており、ボーリングマシンで中空管及び掘削管を地中に推進させる。掘削管には地中での掘削管の位置等を測定するためのセンサが取り付けられている。センサの位置検出信号は、地上に設置された演算装置に送信され、この位置検出信号により掘削管の位置が演算される。
【0004】
センサから演算装置に位置検出信号の送信を行う方法として、例えば、特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1の掘削装置では、中空管は、単位管と、単位管の内部に設けられた保護管とからなる二重管として構成されており、単位管と保護管との間に通信線が通され、この通信線を用いて位置検出信号の送受信が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−7241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した引用文献1に記載のものでは、通信線を用いて信号を送受信しているため、断線の恐れがある。また、二重管である中空管を特別に作製する必要があり、既存の中空管を用いることが出来ないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、通信線を用いず、既存の掘削管及び中空管を用いて位置検出信号を送受信可能な掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による掘削装置は、先端に掘削刃を有する掘削管により地盤を掘削して前記掘削管を地中に進入させるものである。掘削装置は、前記掘削管に設けられ前記掘削管の地中内の位置を検出するためのセンサと、前記掘削管に設けられ前記センサによる位置検出信号を無線送信する第1の通信機と、前記掘削管の後端部に前記掘削管の地中への進入深さに応じた本数だけ接続され、中空部内が前記無線送信のための信号伝送路を構成する複数の中空管と、前記信号伝送路を送られてくる位置検出信号を受信する第2の通信機を有し、前記第2の通信機で受信した位置検出信号から前記掘削管の現在位置を求める演算を実行する演算装置と、前記掘削管と後続の前記中空管の間、及び、前記中空管と後続の中空管との間の少なくとも1箇所に接続される中継管とを備えている。前記中継管には、前記信号伝送路を前記第2の通信機に向けて送られてくる位置検出信号を中継する中継装置が設けられている。
【0009】
掘削管に設けられたセンサによる位置検出信号は、第1の通信機から中継装置を介して中空管の中空部を通って第2の通信機へ送信される。演算装置は、第2の通信機で受信された位置検出信号に基づき、掘削管の現在位置を求める。
【0010】
上記の構成によれば、第1の通信機と第2の通信機との間で無線により送信を行っているため、断線事故が生じない。また、従来のように通信線を通すための二重管を用いる必要がなく、既存の中空管を用いることができる。さらに、無線により通信を行う場合、通信精度が低下する恐れがあるが、掘削管と後続の中空管の間、及び、中空管と後続の中空管との間の少なくとも1箇所に位置検出信号を中継する中継装置を設けているので、通信精度が低下することなく、第1の通信機と第2の通信機との間で信号の送受信を確実に行うことができる。
【0011】
前記第1の通信機と前記第2の通信機とは、所定の近距離無線通信規格に準拠した無線方式で無線通信を行うことが好ましい。
【0012】
無線通信は、好ましくは、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)のいずれかに準拠した無線方式で行われ、より好ましくは、ZigBeeに準拠した無線方式で行われる。
【0013】
この発明の一実施形態においては、前記中継管は、内部が中空の第1及び第2の管からなる。前記第1の管は、前端部に前記掘削管又は前記中空管が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に第2の管の前端部が嵌め合わされる後端接続部とを備える。前記第2の管は、前端部に前記第1の管の前記後端接続部が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に後続の前記中空管の前端部が嵌め合わされる後端接続部とを備える。前記第1の管の内部に形成された段部と前記第2の管の前端接続部との間に前記中継装置が保持されている。
【0014】
前記中継装置は、リング形状の合成樹脂成形体に埋設されていることが好ましい。
【0015】
合成樹脂成形体を中継管の内径に合わせて形成することで、中継装置を中継管の内部にしっかりと保持することができる。また、中空管や中継管の中空部に水を通して掘削を行う場合や、掘削された土砂が中継管の中空部に入り込む場合であっても、中継装置は浸水せず保護される。
【0016】
好ましい実施形態においては、前記中継装置は、前記合成樹脂成形体より外部へ突出するアンテナを備えている。
【0017】
アンテナは中継管の中空部内に突出するため、位置検出信号は中継管や中空管の内部を伝送しやすくなる。特に、中継管や中空管が金属製であって内周面に段部が構成されている場合、アンテナが段部から内側に突出しない位置に設けられていると、位置検出信号の伝送が段部により遮られる場合があるが、中継管の中空部内においてアンテナを段部よりも内側に突出させることで、位置検出信号は中継管や中空管の内部を伝送しやすくなる。
【0018】
この発明の一実施形態においては、最後尾の前記中空管の後端に接続される連結管をさらに備え、前記連結管は、前端部に前記中空管が嵌め合わされる前端接続部と、後端部に前記掘削管を地中に進入させるボーリングマシンの回転推進機構の接続部が嵌め合わされる後端接続部とを備え、前記連結管の内部に形成された段部と前記ボーリングマシンの接続部との間に前記中継装置が保持されている。
【0019】
ボーリングマシンは地上に設置されており、中空管の内部を伝送されてきた位置検出信号は地上に位置する連結管の中継装置を介して第2の通信機に送信される。連結管の中継装置が地上に位置していることで、地盤の影響を受けずに、地上に配置された第2の通信機へ確実に位置検出信号を送信することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の通信機と第2の通信機との間で無線により送信を行っているため、断線事故が生じず、既存の中空管を用いてセンサからの位置検出信号の送信を行うことができる。また、中継装置を介在させるので、通信精度を低下させずに第1の通信機と第2の通信機との間で信号の送受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る掘削装置の全体構成を示す概略図である。
図2】掘削管の長さ方向に沿う断面図である。
図3】中空管の長さ方向に沿う断面図である。
図4】中継管の長さ方向に沿う断面図である。
図5】連結管の長さ方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(掘削装置の全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る掘削装置1の全体構成を示す概略図である。掘削装置1は、例えば、排水管、水道管、ガス管、通信線や電力線などのケーブルを通す地中管、薬液注入管などを地盤G中に設置するために使用される。
【0023】
掘削装置1は、先端に掘削刃を有する掘削管2により地盤Gを掘削して掘削管2を地中に進入させるものである。掘削装置1は、掘削管2と、掘削管2の後端部に掘削管2の地中への進入深さに応じた本数だけ接続される複数の中空管3と、掘削管2と後続の中空管3の間、及び、中空管3と後続の中空管3との間の少なくとも1箇所に接続される中継管4と、最後尾の中空管3の後端に接続される連結管5と、中空管3、掘削管2、中継管4を地中に進入させるボーリングマシン6と、掘削管2の地中内の位置を検出するためのセンサ25により検出された位置検出信号に基づき、掘削管2の現在位置を求める演算を実行する演算装置7を備えている。図示の実施形態では、各中空管3の後端に中継管4を接続しているが、中継管4は必ずしも全ての中空管3の後端に接続する必要はない。
【0024】
(掘削管の構成)
図2に示すように、掘削管2は内部が中空の本体管23を有し、本体管23の先端部に軸方向に対して傾斜した受圧面21aを有するテーパ―ビッド21が設けられている。本体管23の長さ方向の中央部には広径部24が形成されている。広径部24は外管23aと内管23bとからなり、本体管23の内径と、内管23bの内径とは等しく、本体管23の内周面と内管23bの内周面とが揃っている。外管23aと内管23bとの間に、掘削管2の地中内の位置を検出するためのセンサ25が設けられている。センサ25は、例えば加速度センサ、ジャイロスコープ等であり、掘削管2のピッチ角、ヨー角、ロール角を測定するものである。センサ25によるこれらの角度の検出信号を以下、「位置検出信号」という。センサ25は、内管23bの外周面に固定された図示しない制御基板に組み込まれている。
【0025】
外管23aの後端部の内周面には、リング形状の合成樹脂成形体27が保持されている。合成樹脂成形体27は、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂から構成されるが、材質はこれに限定されない。また、合成樹脂成形体27は完全なリング形状でなくてもよく、一部が切り離されていてもよい。成樹脂成形体27には、第1の通信機28が埋設されている。第1の通信機28は信号線又は無線によりセンサ25と接続されており、センサ25による位置検出信号を受信し、後述する第2の通信機71に向けて無線送信している。第1の通信機28は、無線通信を行うためのアンテナ29、図示しない無線通信部、制御部、メモリ等を備えている。アンテナ29は、略L字形状であり、合成樹脂成形体27より中空内に向けて突出している。アンテナ29は、本体管23の内周面に段部が形成されている場合には、段部よりも内側に突出するように設けられる。なお、アンテナ29の形状はL字形状に限定されず、I形状でもよく、合成樹脂成形体27内に埋設されていてもよい。アンテナ29の形状や形式は、第1の通信機28、第2の通信機71、中継装置48、58の通信性能に応じて選択される。
【0026】
本体管23は、後端部に、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41が内部に嵌め込まれる後端接続部22を備えている。図2においては、後端接続部22に中空管3が接続されている。この後端接続部22の内径は、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41の外径よりも若干大きく形成されている。後端接続部22の内周面にはネジ部(図示せず)が形成されており、このネジ部と、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41の外周面に形成されたネジ部(図示せず)とが螺合することで、掘削管2が後続の中空管3又は中継管4と接続される。後端接続部22の内周面の前端には、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41との接続時に、この前端接続部31、41の先端31b、41bが突き当たる段部22aが形成されている。
【0027】
本実施形態では、掘削管2の本体管23の内周面と、内管23aの内周面と、合成樹脂成形体27の内周面と、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41の内周面とが揃っている。外側から視認できる掘削管2の長さは、本実施形態では約150cmであるが、この長さに限定されるものではない。
【0028】
(中空管の構成)
図3は中空管3の長さ方向に沿う断面図である。図3においては、中空管3の前端及び後端に中継管4が接続されている。中空管3は、中空部内が第1の通信機28からの信号を無線により送信するための信号伝送路を構成している。図3に示すように、中空管3は、前端部に、掘削管2、前側の中空管3、中継管4のいずれかの後端接続部22、32、42の内部に嵌め込まれる前端接続部31を備えている。前端接続部31の外周面には、掘削管2、前側の中空管3、中継管4のいずれかの後端接続部22のネジ部と螺合するネジ部(図示せず)が形成されている。さらに、前端接続部31の外周面には、掘削管2、前側の中空管3、中継管4の後端接続部22、32、42との接続時に、この後端接続部22、32、42の後端22b、32b、42bが突き当たる段部31aが形成されている。
【0029】
また、中空管3は、後端部に、後続の中空管3、中継管4、連結管5の前端接続部31、41、51のいずれかが内部に嵌め込まれる後端接続部32を備えている。図3においては、後端接続部32に中継管4が接続されている。この後端接続部32の内径は、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41の外径よりも若干大きく形成されている。後端接続部32の内周面にはネジ部(図示せず)が形成されており、このネジ部と、後続の中空管3又は中継管4の前端接続部31、41の外周面に形成されたネジ部(図示せず)とが螺合することで、中空管3が後続の中空管3、中継管4、連結管5のいずれかと接続される。後端接続部32の内周面の前端には、後続の中空管3、中継管4、連結管5の前端接続部31、41、51のいずれかとの接続時に、この前端接続部31、41、51の先端31b、41b、51bが突き当たる段部32aが形成されている。
【0030】
中空管3の後端に後続の中空管3、中継管4、連結管5と接続された状態で、中空管3の内周面と、後続の中空管3、中継管4、連結管5の前端接続部31、41、51との内周面とが揃っている。外側から視認できる中空管3の長さは、本実施形態では約300cmであるが、この長さに限定されるものではない。
【0031】
(中継管の構成)
図4は中継管4の長さ方向に沿う断面図である。図4においては、中継管4の前端及び後端に中空管3が接続されている。中継管4は、内部が中空の第1及び第2の各管45、46からなる。第1の管45は、前端部に前端接続部41、後端部に後端接続部43を備えている。前端接続部41は前側の掘削管2又は中空管3の後端接続部22、32の内部に嵌め込まれ、後端接続部43は内部に第2の管46の前端接続部44が嵌め込まれる。前端接続部41の外周面には、前側の掘削管2又は中空管3の後端接続部22、32のネジ部と螺合するネジ部(図示せず)が形成されている。さらに、前端接続部41の外周面には、前側の掘削管2又は中空管3の後端接続部22、32との接続時に、この後端接続部22、32の後端22b、32bと突き当たる段部41aが形成されている。
【0032】
第1の管45の後端接続部43の内径は第2の管46の前端接続部44の外径よりも若干大きく形成されている。後端接続部43の内周面にはネジ部(図示せず)が形成されており、このネジ部と、第2の管46の前端接続部44の外周面に形成されたネジ部(図示せず)とが螺合することで、第1の管45が第2の管46と接続されている。
【0033】
第1の管45の後端部の内径は前端部の内径よりも大きく形成されており、長さ方向中央部付近において内径の差により段部45aが形成される。
【0034】
第1の管45の内周面の段部45aと、第2の管46の前端接続部44の先端44bとの間には、リング形状の合成樹脂成形体47が保持されている。合成樹脂成形体47の構成は合成樹脂成形体27の構成と同様であるため、説明を省略する。合成樹脂成形体47には、中継装置48が埋設されている。中継装置48は、第1の通信機28または前側の中継装置48から信号伝送路を介して送られてくる位置検出信号を受信し、第2の通信機71に向けて送信している。中継装置48は、無線通信を行うためのアンテナ49、図示しない無線通信部、制御部、メモリ等を備えている。アンテナ49の構成は第1の通信機28のアンテナ29の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
第2の管46は、前端部に第1の管45の後端接続部43に嵌め込まれる前端接続部44と、後端部に後続の中空管3の前端接続部31が嵌め込まれる後端接続部42とを備えている。前端接続部44の外周面には、第1の管45の後端接続部43のネジ部と螺合するネジ部(図示せず)が形成されている。さらに、前端接続部44の外周面には、第1の管45の後端接続部43との接続時に、この後端接続部43の後端43bが突き当たる段部44aが形成されている。
【0036】
後端接続部42の内径は後続の中空管3の前端接続部31の外径よりも若干大きく形成されている。後端接続部42の内周面にはネジ部(図示せず)が形成されており、このネジ部と、後続の中空管3の前端接続部31のネジ部とが螺合することで、中継管4が後続の中空管3と接続される。後端接続部42の前端には、後続の中空管3の前端接続部31の先端31bが突き当たる段部42aが形成されている。
【0037】
中継管4の後端に中空管3が接続された状態で、第1の管45の前端接続部41の内周面、合成樹脂成形体47の内周面、第2の管46の前端接続部44の内周面、後続の中空管3の前端接続部31の内周面が揃っている。
外側から視認できる中継管4の長さは、本実施形態では約50cmであるが、この長さに限定されるものではない。中継管4は全ての中空管3の後端に接続してもよいが、第1の通信機28と第2の通信機71との間の通信状況に応じて所定の数の中空管3毎に接続してもよく、所定の中空管3と後続の中空管3との間にのみ接続してもよい。
【0038】
(連結管の構成)
図5は、連結管5の長さ方向に沿う断面図である。連結管5は、前端部に中空管3の内部に嵌め込まれる前端接続部51と、後端部にボーリングマシン6の回転推進機構62の接続部61が嵌め込まれる後端接続部52とを備えている。連結管5の内周面には段部5aが形成され、段部5aとボーリングマシン6の接続部61の先端61bとの間に、リング形状の合成樹脂成形体57が保持されている。その他の連結管5の構成は中継管4の第1の管45の構成と同様であり、連結管5の前端接続部51、段部51a、後端接続部52、先端52b、段部5a、合成樹脂成形体57、中継装置58、アンテナ59の構成は、中継管4の第1の管45の前端接続部41、段部41a、後端接続部43、先端43a、段部45a、合成樹脂成形体47、中継装置48、アンテナ49の構成に対応するため、説明を省略する。
連結管5の後端にボーリングマシン6の接続部61が接続された状態で、連結管5の前端接続部51の内周面、合成樹脂成形体57の内周面、接続部61の内周面が揃っている。
外側から視認できる連結管5の長さは、本実施形態では約350cmであるが、この長さに限定されるものではない。また、連結管5は必ずしも用いられなくてもよく、中空管3が直接ボーリングマシン6の接続部61に接続されていてもよい。
【0039】
(ボーリングマシンの構成)
ボーリングマシン6は、例えば、図1に示すようにベースマシンに回転推進機構62が設けられており、回転推進機構62は、回転駆動モータ64と、回転駆動モータ64を昇降させる昇降装置63とを備えている。回転駆動モータ64は、接続部61を介して連結管5に同軸に連結されており、回転駆動モータ64の昇降、回転により、掘削管2、中空管3、中継管4、連結管5を回転させ、地中に進入させる。図5に示すように、接続部61の外周面には、ネジ部(図示せず)が形成されているとともに、連結管5の後端接続部52の後端52bが突き当たる段部61aが形成されている。
【0040】
本実施形態では、掘削管2の本体管23、外管23a、内管23b、テーパ―ビッド21、中空管3、中継管4、連結管5を鋼などの金属から構成している。これにより、第1の通信機28から送信された位置検出信号が掘削管2、中空管3、中継管4、連結管5の外部と遮蔽され、掘削管2、中空管3、中継管4、連結管5の内部を伝送される。なお、掘削管2、中空管3、中継管4、連結管5を構成する材質は鋼に限定されず、例えば塩化ビニール、ナイロン等の合成樹脂製であってもよい。
【0041】
(演算装置の構成)
演算装置7は、信号伝送路を送られてくる位置検出信号を受信する第2の通信機71と、第2の通信機71で受信した位置検出信号から掘削管2の現在位置を求める演算を実行する演算部を備えている。また、演算結果を表示する表示部を備えていてもよい。第2の通信機71は、連結管5の中継装置と無線通信を行うためのアンテナ、送受信部、制御部、メモリ等を備えている。演算部は、例えば制御部を構成するCPUや記憶部を構成するメモリを備えたパソコン等の計算機である。パソコンのCPUやメモリが第2の通信機71の制御部、メモリを兼ねていてもよい。演算装置7は地上のボーリングマシン6の近傍に配置される。本実施形態では、第2の通信機71は、連結管5の中継装置と無線で接続されているが、有線で接続されていてもよい。第2の通信機71は、演算部とともにケースに収容されていてもよく、演算部から離れた位置に配置されていてもよい。また、演算装置7がボーリングマシン6と一体に設けられていてもよい。
【0042】
第1の通信機28と第2の通信機71との間の無線通信は、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)のいずれかに準拠した無線方式で行われ、より好ましくは、ZigBeeに準拠した無線方式で行われる。ZigBeeはスリープ時の待機電力がWi−Fi、Bluetooth(登録商標)よりも小さく、スリープからの立ち上がり時間が短い点において有利である。
【0043】
(ボーリング工法と掘削管の位置検出方法)
次に、本実施形態の掘削装置1を用いたボーリング工法について説明する。まず、地盤G上の掘削位置の近傍にボーリングマシン6を配置する。そして、ボーリングマシン6の回転推進機構62の接続部61に連結管5を連結し、連結管5の前端接続部51に掘削管2の後端接続部22を接続する。次に、掘削管2を回転推進により地盤Gに挿入する。この推進は、ボーリングマシン6の回転駆動モータ64の下降により行う。掘削管2を途中まで地盤Gに挿入すると、掘削管2と連結管5との間に中空管3を接続し、掘削管2及び中空管3を地盤Gに挿入する。中空管3を途中まで地盤Gに挿入すると、掘削管2と連結管5との間に中継管4を接続し、掘削管2、中空管3、中継管4を地盤Gに挿入していく。以降、順次中空管3及び中継管4を接続して地盤Gに推進させる。本実施形態では、中空管3毎に中空管3の後端に中継管4を接続しているが、必ずしも全ての中空管3の後端に中継管4を接続する必要はない。
【0044】
掘削管2を所定の距離推進させる毎、例えば1m推進させる毎に、回転推進機構62の駆動を停止させ、センサ25により掘削管2の位置を測定する。センサ25により検出された位置検出信号は、第1の通信機28から中継管4の中継装置48、連結管5の中継装置58を介して第2の通信機71に送信される。この時、位置検出信号は中継管4及び中空管3の内部を伝送される。演算装置7は、第2の通信機71で受信した位置検出信号を用いて掘削管2の位置を検出し、この検出位置から掘削管2の掘削軌跡を求める。作業者は、掘削軌跡が計画軌跡と一致するように掘削管2のテーバービッド21の受圧面21aの向き、回転駆動モータ64の回転速度、回転駆動モータ64の下降のなどを随時調節する。
【0045】
上記の構成によれば、掘削管2のセンサ25による位置検出信号を、信号線を用いずに無線で地上の演算装置7まで送信しているので、信号線の断線事故が発生することがない。また、無線送信においては、信号の強度が小さくなり通信が不安定になる場合があるが、既存の中空管3の間や掘削管2と中空管3との間に中継装置48を備えた中継管4を配置することにより、既存の掘削管2及び中空管3を用いて位置検出信号を確実に演算装置7まで送信することができる。また、掘削管2、中空管3、中継管4を鋼などの金属で構成することにより、位置検出信号は掘削管2、中空管3、中継管4の中空部を信号伝送路として地上の演算装置7まで送信される。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0047】
本実施形態では、掘削管2に中空管3が接続されているが、掘削管2に中継管4が接続されてもよく、この場合、掘削管2の後端接続部22のネジ部が中継管4の前端接続部41のネジ部と螺合することにより、後続の中空管3が中継管4に嵌め込まれて接続される。このとき、中継管4の前端接続部41の段部41aに掘削管2の後端接続部22の後端22bが突き当たり、掘削管2の後端接続部22の段差22aに中継管4の前端接続部41の先端41bが突き当たる。
【0048】
また、中空管3の後端に中継管4を介さずに中空管3を接続してもよく、この場合、中空管3の後端接続部32のネジ部が後続の中空管3の前端接続部31のネジ部と螺合することにより、後続の中空管3が前側の中空管3に嵌め込まれて接続される。このとき、後続の中空管3の前端接続部31の段部31aに前側の中空管3の後端接続部32の後端32bが突き当たり、前側の中空管3の後端接続部32の段差32aに後続の中空管3の前端接続部31の先端31bが突き当たる。
【0049】
例えば、本実施形態では、各管2、3、4の後端接続部22、32、42と各管3、4、5の前端接続部31、41、51とはネジ止めにより固定されているが、これに限定されるものではない。例えば各管2、3、4の後端接続部22、32、42の内径と各管3、4、5の前端接続部31、41、51の外径とをほぼ同じに形成し、各管2、3、4の後端接続部22、32、42の内部に各管3、4、5の前端接続部31、41、51を嵌め込んだ際に、各管3、4、5の前端接続部31、41、51の外周面が各管2、3、4の後端接続部22、32、42の内周面に緊密に嵌合することで摩擦により各管の後端接続部22、32、42と各管の前端接続部31、41、51とが固定されてもよい。また、係止用のピンを貫通させる、係止突起や係止凹部を設ける等により、各管2、3、4の後端接続部22、32、42と各管3、4、5の前端接続部31、41、51とが固定されてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、各管2、3、4の後端接続部22、32、42の内部に各管3、4、5の前端接続部31、41、51を嵌め込んでいるが、各管2、3、4の後端接続部22、32、42の内径を各管3、4、5の前端接続部31、41、51の外径よりも小さくし、各管3、4、5の前端接続部31、41、51の内部に各管2、3、4の後端接続部22、32、42を嵌め込む構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 掘削装置
2 掘削管
21 テーパ―ビッド
22 後端接続部
25 センサ
27、47、57 合成樹脂成形体
28 第1の通信機
29 アンテナ
3 中空管
31 前端接続部
32 後端接続部
4 中継管
45 第1の管
41 第1の管の前端接続部
43 第1の管の後端接続部
46 第2の管
44 第2の管の前端接続部
42 第2の管の後端接続部
48、58 中継装置
49、59 アンテナ
5 連結管
51 前端接続部
6 ボーリングマシン
61 接続部
62 回転推進機構
7 演算装置
71 第2の通信機
図1
図2
図3
図4
図5