特許第6542317号(P6542317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542317
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】無菌手術トレイ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20190628BHJP
   A61B 50/33 20160101ALI20190628BHJP
【FI】
   A61F9/007 200Z
   A61B50/33
【請求項の数】20
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-176548(P2017-176548)
(22)【出願日】2017年9月14日
(62)【分割の表示】特願2015-108508(P2015-108508)の分割
【原出願日】2011年1月6日
(65)【公開番号】特開2018-8107(P2018-8107A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】12/684,850
(32)【優先日】2010年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308013333
【氏名又は名称】ドヘニー アイ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フマーユーン、 マーク
(72)【発明者】
【氏名】デボー、 チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック、 マシュー
(72)【発明者】
【氏名】バドリ、 プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】チッヘラ、 ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】カーンズ、 ラルフ
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06117127(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143734(US,A1)
【文献】 特開2000−139946(JP,A)
【文献】 特開2009−219718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 50/30−50/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術野内に配置された無菌手術トレイであって、前記無菌手術トレイと共に殺菌された複数の手術器具を有する無菌手術トレイと、
前記手術野の外側で前記無菌手術トレイから離れて配置され、前記無菌手術トレイと通信するように構成されたラックシステムであって、前記無菌手術トレイに流体を送り込むように構成されたポンプと、加圧ガス源と、真空源と、を有するラックシステムと、
前記ラックシステムと前記複数の手術器具との少なくとも一方と通信状態にある入力機構として構成された、前記無菌手術トレイ内の少なくとも1つのコントローラと、
前記ラックシステムと通信状態にある、前記無菌手術トレイ内のディスプレイと、
前記ラックシステムに連結されたアーム機構と、
前記アーム機構に連結され、前記無菌手術トレイを受け入れるとともに、前記ポンプ、前記加圧ガス源、および前記真空源をそれぞれ前記無菌手術トレイに通信可能に連結させるように構成された接続架台と、を有し、
前記ラックシステムが、前記少なくとも1つのコントローラを介して前記無菌手術トレイで受信したユーザ入力を処理するように構成されたプロセッサを有する、
無菌手術トレイシステム。
【請求項2】
前記無菌手術トレイが、前記少なくとも1つのコントローラを介して前記無菌手術トレイで受信したユーザ入力を処理するように構成された別のプロセッサを有する、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項3】
前記複数の手術器具とは別個の部材であり前記無菌手術トレイと通信するように連結されたハンドピース上に配置された別のコントローラをさらに有する、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項4】
前記ハンドピースが、前記無菌手術トレイを介して前記ラックシステムと通信状態にある、請求項3に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコントローラが、前記無菌手術トレイに流体を送り込むように構成された前記ポンプを制御するように構成されている、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項6】
前記複数の手術器具の少なくとも1つが、前記流体を受け取るように構成されている、請求項5に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項7】
前記ラックシステムが、前記無菌手術トレイの前記少なくとも1つのコントローラによって制御されるように構成された光源をさらに有する、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項8】
前記光源が、前記無菌手術トレイに光を送るように構成されている、請求項7に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項9】
前記複数の手術器具の少なくとも1つが、前記光を受信するように構成されている、請求項8に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項10】
前記光源が、前記複数の手術器具の少なくとも1つに光を送るように構成されている、請求項7に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項11】
前記加圧ガス源が、前記無菌手術トレイの前記少なくとも1つのコントローラによって制御されるように構成されている、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項12】
前記加圧ガス源が、前記無菌手術トレイに加圧ガスを送るように構成されている、請求項11に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項13】
前記複数の手術器具の少なくとも1つが、該手術器具の空気圧駆動を行うために前記加圧ガスを受け取るように構成されている、請求項11に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項14】
前記加圧ガス源が、前記複数の手術器具の少なくとも1つの空気圧駆動を行うために該少なくとも1つの手術器具に前記加圧ガスを送るように構成されている、請求項11に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項15】
前記ラックシステムが、前記無菌手術トレイ内の前記少なくとも1つのコントローラによって制御されるように構成された電気エネルギー源をさらに有する、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項16】
前記電気エネルギー源が、前記無菌手術トレイに電気エネルギーを送るように構成されている、請求項15に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項17】
前記複数の手術器具の少なくとも1つが、前記電気エネルギーを受け取るように構成されている、請求項16に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項18】
前記電気エネルギー源が、前記複数の手術器具の少なくとも1つに電気エネルギーを送るように構成されている、請求項15に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項19】
前記真空源が、前記無菌手術トレイ内の前記少なくとも1つのコントローラによって制御されるように構成されている、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【請求項20】
前記複数の手術器具の少なくとも1つが、前記真空源と通信するように構成されている、請求項1に記載の無菌手術トレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術トレイに関し、特に、外科医または他のユーザが、無菌手術トレイに関連する他の道具および器具を無菌手術トレイから直接、監視することと、無菌手術トレイから直接、制御すること、の少なくとも一方を可能にする無菌手術トレイに関する。無菌手術トレイは、手術材料と手術器具を手術野に搬送するための容器として、そして複数の手術器具を収容する無菌トレイとして機能することもできる。無菌手術トレイは、該トレイに取り付けられた複数の電気入力および出力コネクタを含むこともできる。
【0002】
この出願は、2010年1月8日に出願され、発明の名称が「無菌手術トレイ」である、出願番号第12/684,850の米国特許出願に対する優先権を主張するPCT出願である。出願番号第12/684,850の米国特許出願は、2008年10月22日に出願され、発明の名称が「無菌手術トレイ」である、出願番号第12/256,420の米国特許出願の一部継続出願である。出願番号第12/256,420の米国特許出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「独立手術センター」である、出願番号第12/107,038の一部継続出願であって、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「携帯式の硝子体切除術把手と注入/吸入カセットを含む独立手術センター」である、出願番号第60/925,546の米国仮出願の利益を請求する。出願番号第12/256,420の米国特許出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「個人手術センター」である、出願番号第12/107,052の米国出願の一部継続出願でもあり、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「個人手術センター」である、出願番号第60/925,5620の米国仮出願の利益を請求する。出願番号第12/256,420の米国特許出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「手術パックとトレイ」である、出願番号第12/106,962の米国特許出願の一部継続出願でもあり、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「手術パックとトレイ」である、出願番号第60/925,548の米国仮出願の利益を請求する。
【0003】
出願番号第12/684,850の米国特許出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「独立手術センター」である、出願番号第12/107,038の一部継続出願でもあり、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「携帯式の硝子体切除術把手と注入/吸入カセットを含む独立手術センター」である、出願番号第60/925,546の米国仮出願の利益を請求する。この出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「個人手術センター」である、出願番号第12/107,052の米国出願の一部継続出願でもあり、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「個人手術センター」である、出願番号第60/925,562の米国仮出願の利益を請求する。この出願は、2008年4月21日に出願され、発明の名称が「手術パックとトレイ」である、出願番号第12/106,962の米国特許出願の一部継続出願でもあり、2007年4月20日に出願され、発明の名称が「手術パックとトレイ」である、出願番号第60/925,548の米国仮出願の利益を請求する。
【0004】
上記の出願の各々、特に、手術トレイに関するシステム、方法、および装置は参照によってその全部がここに含まれる。
【背景技術】
【0005】
メーカから手術センターへ出荷された無菌パックを、眼科手術(特に、硝子体網膜または白内障の手術)を一例とする手術において使用することが良く知られている。これらのパックは、手術において通常使用され、1回使用の手術器具、流体カセット、管セット、ドレープ、手術針、そして他の装置を含むいくつかの物品を通常、含んでいる。パックの個々の内容は、手術の種類と、おそらく外科医または手術センターの個々の好みにかかっている。
【0006】
手術の準備をするとき、通常、無菌ドレープが、メイヨー(Mayo)トレイと一般に呼ばれるものの上に置かれる。無菌パックの内容とおそらく追加の無菌の手術器具と手術材料は、手術に必要な材料および器具が看護師または外科医に容易に利用できるように、トレイの上に広げられる。
【0007】
パックが手術における少なくとも幾つかの手術器具用のトレイとして働くことができるように、手術器具と管セットの多くがまとめられて、パックの嵌め合い凹部に置かれる無菌パックも知られている。
【0008】
手術器具のいくつかは、手術部位によって定まる無菌野と、トレイ上にあって手術において使用される無菌器具および無菌材料の外にある手術コンソールまたは手術システムによって電気的にまたは空気圧で動力を与えられる。無菌材料のいくつかは無菌野から除かれ、または一部が手術の前に無菌野から除かれる。除かれた無菌材料は、非無菌の手術コンソールに接続されたポンプカートリッジと管セットを含んでいる。手術コンソールは、手術中に使用される装置を制御する複数のパラメータを表示し、入力するための大型のディスプレイスクリーンも通常、含んでいる。この手術機構は、コンソール上でパラメータを調整し、異なった手順を行うために異なった手術器具に切替えつつ、手術が効率的に行えるように、外科医と1人または2人の助手を通常、必要とする。
【0009】
しかしながら、外科手術に対する少ない補償金と結びついて、手術が病院から外来外科センター(ASC)へ、さらには医者自身の診療所へと移っている現在の傾向によって、外科医がわずかの支援で、または支援なしで手術を行えるようにする要求がある。さらに、人員とコストに制限があるため、外科医に与えられる助手は、行われる特定の外科手術では通常、訓練されておらず、その結果、外科医と助手の間の意思の疎通は特に効率的であるとは言えないかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、外科医が、手術の間、わずかな支援でまたは支援なしで安全で、効率的で、費用効率が高い手術を行えるようにする手術システムと手術製品に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある一定の実施態様では、無菌手術トレイは、無菌トレイと、無菌トレイ内のポンプと、ポンプに接続された、無菌トレイ内のモータと、を有する。トレイは、複数の手術器具を入れる構造を有するのが望ましい。トレイがポンプ流体タンクを少なくとも1つ含み、該タンクがポンプに動作可能に接続されていることも望ましい。異なった実施態様では、無菌手術トレイは、トレイに接続された、複数の電気入力および出力コネクタを有している。
【0012】
ある一定の実施態様では、注入流体タンクは、各室内の異なった流体を保持する多数の室流体タンクと、2つまたは3つ以上の室に接続されてこれら室を加圧する圧力ポンプと、これら多数の室に接続されて、選択された室に含まれる流体が該選択された室から流れ出るように該多数の室の1つを選択的に開く、多位置弁と、を有する。
【0013】
ある一定の実施態様では、無菌手術トレイは、複数の手術器具を保持する収容エリアと、収容エリアから離れて配置された流体タンクと、流体タンクに動作可能に接続されたポンプと、ポンプに駆動するように連結されたモータと、無菌トレイに接続された、複数の入力および出力コネクタと、モータに接続されている、該複数の入力および出力コネクタの少なくとも1つのコネクタと、を有する。無菌手術トレイシステムは、ある一定の実施態様では、複数の手術器具を保持する無菌面を形成する上面を有するトレイと、上面に保持された少なくとも1つの手術器具と、該少なくとも1つの手術器具とともに使用されるポンプ流体タンクと、該少なくとも1つの手術器具とポンプ流体タンクとに動作可能に接続されたポンプと、ポンプに接続されてポンプを駆動するモータと、を有し、少なくともポンプが手術中に手術野内に留まっていてもよい。
【0014】
ある一定の実施態様では、無菌手術トレイは、複数の手術器具を保持する上面と、無菌トレイに接続されており、かつ流体ポンプタンクに接続されるポンプと、ポンプに接続されて、ポンプに動力を供給するモータと、有している。無菌手術トレイは、ある一定の実施態様では、複数の手術器具を保持する無菌上面を有するトレイと、トレイと共に予め包装され、殺菌されているポンプ流体タンクと、少なくとも1つの手術器具とポンプ流体タンクとに、動作するように接続される、トレイ内のポンプと、ポンプに接続されてポンプに動力を供給するモータと、を有してよい。
【0015】
ある一定の実施態様では、外科手術のための独立システムは、処理ユニットを含む制御装置と、外科手術に関連し、制御装置に動作可能に連結された複数の器具と、を有し、制御装置と複数の器具は一緒に予め包装され、処理ユニットは、予め包装された複数の器具の少なくとも1つを制御するように構成されている。ある一定の実施態様では、複数の電気器具の少なくとも1つは処理ユニットを有している。処理ユニットは、複数の電気器具の各々の間で通信を行うように構成することができる。ある一定の実施形態では、該通信は無線通信であってよい。ある一定の実施態様では、処理ユニットは、複数の電気器具から状態更新を受信し、状態更新をシステムのユーザに知らせるように構成することができる。
【0016】
ある一定の実施態様では、手術システムは、処理ユニットを含む携帯手術トレイと、処理ユニットに動作可能に連結された複数の器具と、該複数の器具の1つまたは複数の器具の動作パラメータを制御するユーザ入力を出力するユーザ入力装置と、を有し、処理ユニットは、ユーザ入力を受信し、動作コマンドを該複数の器具の該1つまたは複数の器具に送信するように構成されている。ある一定の実施態様では、処理ユニットは、複数の器具から動作パラメータを受信することと、監視すること、の少なくとも一方を行うようにさらに構成されている。ある一定の実施態様では、処理ユニットは、たとえば、少なくとも1つの動作パラメータが閾値を満たした場合に、安全機構として、停止コマンドを把手に送信するようにさらに構成されている。
【0017】
ある一定の実施態様では、外科手術のための電源内蔵式手術システムは、手術トレイと、複数の手持ち式の器具と、手術トレイと手持ち式の器具の少なくとも一方にある電源と、処理ユニットと、を有し、処理ユニットは複数のプログラム命令を実行するように構成され、複数のプログラム命令は、少なくとも1つの電源からの電力を検出する命令と、該少なくとも1つの電源からの電力を複数の手持ち式の器具に向ける命令と、複数の手持ち式の器具の各々との通信を確立する命令を含む。
【0018】
ある一定の実施態様では、携帯式生物学的切断・吸引装置は、切断チップと、流体吸引装置と、切断チップと流体吸引装置に連結された統合制御ユニットと、を有し、制御ユニットは、切断チップと流体吸引装置の切断と吸引を制御するように構成されている。
【0019】
ある一定の実施態様では、手術システムは、手術中に、切断、切除、照明、レーザ照射、吸引、注入、焼灼、生物学的組織と流体の冷凍保存、流体の人体への注入と吸引の少なくとも1つを行うように構成され、少なくとも一部が使い捨てできる携帯式手術台と、手術台に連結されて、外科手術中に1つまたは複数の動作パラメータを監視する監視センターと、を有する。
【0020】
ある一定の実施態様では、個人手術センターは、複数の手持ち式の器具の少なくとも1つと無線通信する携帯用コンピュータユニットを有し、携帯用コンピュータユニットは、プロセッサと、複数のプログラム命令が格納されたメモリと、を含み、プロセッサは該複数のプログラム命令を実行するように動作可能であり、該複数のプログラム命令は、複数の手持ち式の器具の少なくとも1つを自動的に識別するプログラム命令と、識別された手持ち式の器具の動作状態を無線で受信するプログラム命令と、識別された手持ち式の器具の動作状態の変化を監視するプログラム命令と、動作状態をディスプレイに表示するプログラム命令と、を含む。
【0021】
ある一定の実施態様では、手術システムは、外科医によってアクセス可能で、1つまたは複数の医療器具の動作パラメータを制御する制御システムと、制御システムと無線通信する汎用コンピュータを含む監視システムと、有し、汎用コンピュータは、プロセッサと、複数のプログラム命令が格納されたメモリと、含み、プロセッサは該複数のプログラム命令を実行するように動作可能であり、該プログラム命令は、制御システムによって制御される医療器具を無線で識別するプログラム命令と、該1つまたは複数の医療器具の動作パラメータを制御システムから無線で受信するプログラム命令と、該1つまたは複数の医療器具の動作パラメータの変化を監視するプログラム命令と、該1つまたは複数の医療器具の動作パラメータを、汎用コンピュータに連結されたディスプレイに表示するプログラム命令と、を含む。
【0022】
ある一定の実施態様では、無菌手術トレイシステムは、手術野内に配置され、少なくとも1つのコントローラをさらに有する無菌手術トレイと、無菌手術トレイから離れて、かつ手術野の外に配置され、無菌手術トレイの少なくとも1つのコントローラと通信状態にあるラックシステムと、を有する。
【0023】
ある一定の実施態様では、無菌手術トレイシステムは、手術野内に配置され、少なくとも1つのディスプレイをさらに有する無菌手術トレイと、無菌手術トレイから離れて、かつ手術野の外に配置され、無菌手術トレイの少なくとも1つのディスプレイと通信状態にあるラックシステムと、を有する。
【0024】
ある一定の実施態様では、手術システムを制御する、コンピュータで実施される方法は、手術野内の無菌手術トレイに連結されたコントローラにおいてユーザ入力を受信することと、無菌手術トレイから離れて、かつ手術野の外に配置されたラックシステムにユーザ入力を送信することと、ラックシステム内のプロセッサを用いて、ユーザ入力を処理することと、処理されたユーザ入力に基づいて手術装置を制御することと、を有する。ある一定の実施態様では、無菌手術トレイは前記コントローラを有する。ある一定の実施態様では、手術装置は前記コントローラを有し、手術装置は無菌手術トレイまたはラックシステムに連結されている。ある一定の実施態様では、手術装置は手持ち式の装置、たとえば、切断装置である。ある一定の実施態様では、送信することは、ラックシステムへの無線または有線の接続によって行われる。ある一定の実施態様では、送信することは、ラックシステムと電子通信状態にある無菌手術トレイへの無線または有線の接続によって行われる。手術装置は、手持ち式手術装置(たとえば、切断装置)、真空制御装置または真空源と、流体制御装置または流体源と、光制御装置または光源と、エネルギー制御装置またはエネルギー源(たとえば、電気エネルギー)、などを、限定なしに含むことができる。
【0025】
この、発明の概要のために、本発明のある一定の態様、利点、新規な特徴がここに記載されている。必ずしもそのような利点の全てが本発明のある特定の実施態様にしたがって達成されるものではないことが理解されるべきである。したがって、当業者は、ここに教示された1つの利点また利点の集合を、ここに教示されまたは示唆された他の利点を必ずしも達成することなく、達成するやり方で本発明が具体化しまたは実行されてもよいことがわかるであろう。
【0026】
本発明の上述のおよび他の特徴、態様、および利点を、本発明を例示することが意図され、本発明を限定することが意図されていない好適な実施形態の図面を参照して以下に詳細に説明する。図面は以下のいくつかの図を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイの平面図である。
図2図1の無菌手術トレイの底面図である。
図3】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイの他の形状を示す図である。
図4】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイの他の実施形態の平面図である。
図5図4の部分正面図である。
図6】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイの一部の他の実施形態の図である。
図7】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイの他の実施形態の図である。
図8】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイのさらに他の実施形態の斜視図である。
図9】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイと共に使用される足踏みコントローラの斜視図である。
図10】本発明の好適な実施形態による注入流体タンクの他の実施形態の斜視図である。
図11】本発明の好適な実施形態による、特定の手術用の無菌手術トレイの平面図である。
図12】本発明の好適な実施形態による、他の特定の手術用の無菌手術トレイの平面図である。
図13】本発明の好適な実施形態による無菌手術トレイと共に使用される流体-空気交換システムの機能ブロック図である。
図14】本発明の好適な実施形態による、個人手術センターに連結された独立手術センター、手術器具または他の器具、および病院と診療所の少なく一方を示すブロック図である。
図14A】本明細書に記載されたシステム、たとえば個人手術センターの1つまたは複数の実施形態を実施するソフトウェアを実行するように構成されたコンピュータハードウェアシステムの一実施形態を示すブロック図である。
図15】本発明の好適な実施形態による処理装置と無菌手術トレイの少なくとも一方によって実行される様々な処理の流れ図である。
図16】本発明の好適な実施形態による独立手術センターの処理装置によって実行される処理の流れ図である。
図17】ラックシステムと通信状態にある無菌手術トレイの実施形態の概略図である。
図18】ラックシステムと通信している無菌手術トレイの他の実施形態の概略図である。
図19】ラックシステムに接続された無菌手術トレイの実施形態の概略図である。
図20】接続架台によってラックシステムに接続する無菌手術トレイの実施形態の概略図である。
図21】ラックシステムと無線で通信する無菌手術トレイの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明を眼科手術に関して記載するが、これは例示のみを目的とするものであり、当業者は、ここに記載し、権利を主張する実施形態は、たとえば、矯正歯科手術、神経外科手術、心臓血管手術、胃腸手術、整形および皮膚手術、一般外科手術、耳、鼻、喉を含むが、これらに限定されない、頭と頸部の手術、顎顔面手術、血管手術、胸部手術(肺)、移植手術、などの、しかしこれらに限定されない他の種類の手術に等しく適用できることを理解するであろう。
【0029】
外科医が、他の外科医からの最小の手助けで効率的な手術を行い、かつ大きな設備投資のない手術センターまたは診療所で手術を行うことができるためには、手術器具および手術装置を無菌の手術野内で管理することが必要となる。無菌の手術野は通常、無菌のドレープによって覆われた手術部位に隣接した領域と、手術器具と手術材料が手術中に外科医の手が届くように置かれた領域と、によって定まる。手術器具が手術のために置かれる領域は通常、一般にメイヤー(Mayo)トレイと呼ばれる、無菌のドレープによって覆われた、無菌でないトレイである。
【0030】
ここに記載された本発明の実施形態は、外科医に、手術中にトレイとして機能する、あらかじめ包装された無菌パックとして製造され、組み立てられた無菌手術トレイを提供することによって、外科医に手術の無菌野の管理を提供するものである。パックと言う用語は、メーカから顧客(病院、ASC、医者の診療所)に出荷され、手術を行うために外科医によって使用される無菌のパッケージに含まれている手術器具と他の物品をまとめて特定することを意味している。トレイと言う用語は、手術野の少なくとも一部を定め、手術中に使用される流体操作装置、手術器具、そして他の雑多な物品を保持する構造を指している。
【0031】
好適な実施形態では、パックはトレイと同義であってよい。以下でわかるように、好適な実施形態では、本発明の手術トレイは製造され、手術のための必要な装置と組み立てられた後、袋または他の容器に入れられ、殺菌されてよい。その後、袋が開けられると、トレイが袋から取り出され、場合によって蓋またはカバーが取り外されて、手術に必要な、全てではなくともいくつかの手術器具と他の物品が姿を現す。無論、特許請求の範囲から逸脱することなく、この好適な実施形態に変形を加えてもよい。たとえば、この好適な無菌トレイをポンプ容器、ポンプ、およびモータと共に包装し、殺菌してもよいことが考えられるが、これらポンプ容器、ポンプ、およびモータを、殺菌せずに包装してもよい。たとえば、モータが、トレイから封鎖された室の内に収納されていた場合、モータを殺菌する必要はないかもしれない。ここで用いられているように、「モータ」と言う用語は、少なくともポンプを駆動するエネルギーを受け取り、これを加減する装置を意味し、かつこれを限定なしに含む。
【0032】
無菌手術トレイ10が図1に示されている。トレイ10は、複数の手術器具14を収容する構造12を有している。複数の手術器具14を収容する構造12は、特定の器具の形状に概ね一致する、図示されているような嵌合構造であってよい。ここで使用されているように、「嵌合」の用語は、物品の一部またはすべての凹部に対する相補形状を有する容器を限定なしに指す。あるいは、構造12は、種々の手術器具14を保持する形状を有する、トレイ10内の凹部(不図示)であってよく、または構造12は、手術器具14を上面16に対して概ね垂直な向きに保持する、トレイ10内に形成された複数の窪み(不図示)であってよく、または他の適切な構造12をも使用してよい。外科医が器具を容易に、かつ都合よく取り上げ、そして、それをトレイ10に戻すことができるように、手術器具14同士の間に十分な空間をおいて手術が行われるために必要な、手術器具14を受けるのに十分な面積を、トレイ10は上面16に有しなければならない。
【0033】
無菌トレイ10は、アクニロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)または同様の熱可塑性の物質のような材料で成形されてよい。トレイ10は従来のメイヤー(Mayo)トレイに取って代わり、外科医と手術部位の間におかれてよい。したがって、トレイ10は、アームレスト18を構成する構造に載っている外科医の腕の重さに耐えるのに十分に丈夫であることが望ましい。しかしながら、外科医の腕とトレイ10のための他の便宜がなされてもよく、その場合、トレイ10は丈夫に作る必要はない。
【0034】
よく知られているように、トレイ10は、1つまたは複数の器具に緩衝塩類溶液(BSS)のような手術液を与える間、1つまたは複数の手術器具14を受け入れるプライミング液タンク20を形成する構造を有してもよい。タンク20が備えられていない場合、ユーザは、手術器具と管をBSSでプライミングする(たとえば、充填する)ビーカまたは他の容器を用いる必要があるかもしれない。
【0035】
ドレープ24をトレイ10に取り付ける構造22も設けてもよい。ドレープ24は、眼科手術の間、患者の頭(不図示)の一部のような、患者の上に置かれてよい。構造22は、ドレープ24をトレイ10に取り付ける、接着テープ、フックアンドループ材料、または他の構造のような適切な構造であってよい。ドレープ24を使用することによって、少なくとも1つの流体貯留溝26を使用して、手術中に発生する、ドレープ24から流出した流体を集めることができる。図1は溝26が2つの場合を示しているが、患者の頭(不図示)が手術中に置かれることになる中央部28全体を囲む溝(不図示)を1つ形成してもよい。
【0036】
手術器具14は複数の手術器具、特に、トレイ10と共にあらかじめ包装され、殺菌された眼科手術用器具を含んでよい。さらに、手術器具14が少なくとも1つ、図1に示されているように、管32と34の少なくとも一方を経てポンプ流体タンク30にメーカにおいて接続されてもよい。無菌手術トレイ10が眼科手術用である場合、これら複数の手術器具14は、組織分離具、吸引器、医薬品注入器を少なくとも含んでいるのが望ましい。組織分離具は、硝子体切断器、レンズ乳化、分解、または切断装置、鋏、および電気メスの少なくとも1つを含み、これらは全てよく知られている。吸入器は、硝子体切断器および水晶体超音波乳化吸引術(水晶体)装置において知られているように、組織分離具に組み込まれてもよい。吸引器と医薬品注入器は、一般に、洗浄/吸引(I/A)把手と呼ばれる、組み合わされた医薬品注入器と吸引器であってよい。手術トレイ10が硝子体網膜手術用である場合、医薬品注入器は医薬品注入カニューレと、接続された管であってよい。
【0037】
他の手術器具には、自己照光が望ましい照明器具が含まれてよい。すなわち、この照明器具は、組み込み式の光源を有し、一般に知られた遠隔の光源と光ファイバーの組み合わせではない。さらに、トレイ10は、無縫合の硝子体網膜手術において通常、使用される侵入部位位置合わせカニューレ36のような追加の物品を含んでもよい。
【0038】
トレイ10は、所望の手術を行うのに必要な全てのまたはほぼ全ての手術器具を含むのが望ましい。たとえば、トレイ10は、所望の手術が眼の硝子体切除である場合、硝子体切断器、洗浄器具、照明器具、吸入源、医薬品注入源、受動手術器具(たとえば、動力源を持たない)、そして場合により、空気/流体交換源である、硝子体切除用の手術器具を含む。所望の手術が眼からの白内障摘出の場合、トレイ10に含まれる手術器具は、水晶体装置、水晶体針、カプセル研磨具、吸引源、輸液源、受動手術器具、そして場合によりオイルが充填されたシリンジのような白内障摘出具であろう。トレイ10は、トレイ10と共にあらかじめ包装され、殺菌された上記の複数の器具以外の手術器具を収容する構造も含むのが望ましい。その一例は、図1において全体が参照番号38で示されている空き空間である。
【0039】
ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ10は、図2で最もよくわかるように、ポンプ流体タンク30に、動作するように接続された、無菌トレイ10内に収容された1つまたは複数のポンプ40も含む。ある一定の実施形態では、1つまたは複数のモータ42も無菌トレイ10内に収容され、ポンプ40に接続されている。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ10は、1つまたは複数のモータと1つまたは複数のポンプを取り外し可能に収容することと、1つまたは複数のモータと1つまたは複数のポンプに機械的に、電気的に、の少なくとも一方で接続されることの少なくとも一方のように構成することができる。ある一定の実施形態では、これら1つまたは複数のモータと1つまたは複数のポンプは他の無菌手術トレイと共に再使用されることがあるため、これら1つまたは複数のモータと1つまたは複数のポンプは一部または全部が無菌であってもよいし、無菌でなくてもよい。トレイ10の底面図である図2に示された実施形態では、タンク30はトレイ10から容易には取り外せない。他の実施形態(たとえば、以下に述べる図6を参照)は、内蔵され、トレイ10のポケット、すなわちくぼみ(不図示)に配置された、タンクとポンプとモータの組み立て体を、該組み立て体が手術の前、手術中、手術の後にトレイ10から容易に取り出せるように提供する。
【0040】
タンク30は、吸引された組織と流体を手術中に集める吸引ポンプ流体タンクであってもよく、またはタンク30は、流体を手術部位に注入する注入ポンプ流体タンクでもよい。タンク30の他の実施形態は図2に示されているもので、図2では、注入タンク46と吸引タンク44が、注入用と吸入用の別個の室を有し、ポンプが各室に動作するように接続されている単一の流体タンク30を構成するように、タンク30は実際、吸入タンク44と注入ポンプ流体タンク46の両方である。したがって、図2の構成では、ポンプ40は注入ポンプであり、ポンプ48は吸引ポンプである。モータ42と50は電気モータであるのが好ましく、ポンプ40と48を駆動するのに必要な性能に応じて同じ種類のモータまたは異なったモータであってよい。吸引ポンプ48は、十分な量の組織と流体を、行われる手術の種類にとって許容できる割合で吸引する適宜なポンプであるのが望ましい。眼科手術の場合、ポンプ40と48は、真空ポンプ(たとえば、回転翼またはダイアフラム)または容積移送式ポンプ(たとえば、蠕動または渦巻型)の一方であってよい。トレイ10は、オイルまたは他の流体を眼の中に注入するシリンジポンプ(不図示)も含んでよい。
【0041】
ある一定の実施形態では、ポンプとタンクをトレイ10に含めることは、コンソールをベースとした従来のシステムに対して特別な流体工学的利点がある。たとえば、トレイ10の構造と機能性は、ポンプ流体タンクが、眼のような手術野から2フィート(60.96cm)未満の距離にあることを可能にするので、流体工学的利点が得られる。この近接性によって、2フィート(60.96cm)未満、ことによると18インチ(45.72cm)未満の長さの注入と吸引の管を使用できる。そのような短い管を使用することによって、注入タンク46から注入管と手術器具を通って目へ、これに続いて目から吸引管を通って吸引タンク44への吸引によって定まる流体回路の長さを遵守することを、今日知られている、コンソールをベースとした従来の手術と比較して大いに軽減することができる。コンソールをベースとした従来の手術は、注入経路と吸引経路の両方について数フィート(6−8フィート(182.88−243.84cm)も)の管を使用する。さらに、吸引と注入の管の長さが短くなることによって流体の伝播の遅れが小さくなり、かつ吸引と注入の働きの応答性が増す。6−8フィート(182.88−243.84cm)の管は、好適な実施形態において可能な、はるかに短い配管長と比べて流体の性能に悪影響を与えることがある。管長が長い程、好適な実施形態のより短い管長と比べて、手術器具と目に加わる、圧力と真空のレベル変化の遅れが長くなる。これらの長い遅れは管長の増大と管の法規遵守の結果である。管のいかなる法規遵守の影響も管長が長くなることによって増大する。管長が短い程、外科医にとって外科手術の困難さを減らすこともできる。その理由は、手術室内の長ったらしい多数の管のために、外科医は通常、手術中に、これらの長ったらしい管をもつれさせたり、挟んだりしないように注意しなければならないからである。
【0042】
トレイ10は、手術野に隣り合った体の一部の輪郭に一致する形状を有していてもよい。図1図2からわかるように、トレイ10は、トレイ10が眼科手術の間、患者の頭(不図示)の周りに置かれるように湾曲している。概ねU字形状であると言うことができるトレイ10は、患者の頭の頂部が壁52に最も近く、言い換えると、U字形部分28の底に位置するように、置かれることになるであろう。眼科手術用の無菌手術トレイは、図3において参照番号54で示されるように、半円の形状であってもよい。流体タンク30は、図1図2の実施形態において示されているように、手術中、患者の頭の側部にあるのが望ましい。
【0043】
流体タンク30は、ある種のプラスティック、すなわち樹脂のような適切な材料で作られた硬質のハウジングであってもよい。ポンプ流体タンクは、図4に示されている袋56であってもよい。図4の実施形態における、トレイ10に類似した無菌手術トレイ58は、4番目の柱(不図示)から吊るされてもよいBSS瓶のような、離れて位置する注入源60を含む。注入源60は、管64(製造中、トレイ58に含まれるのが望ましい)によって手術器具62に接続されている。器具62は管68によってポンプ66と接続されている。ポンプ66は、図5でわかるように、モータ70によって動作する。図5は、図4の線5−5に沿ったトレイ58の内部の部分正面図である。ポンプ66は手術野からの組織と流体を、管62を経て袋56内へ吸引する。袋56は、トレイ58上の、フック74のような構造から吊るされてもよい。
【0044】
図1図2を参照すると、流体タンク30は、ユーザが、手術野に注入される手術用流体で流体タンク46を満たせるようにする注入口76を含むのが望ましい。流体タンク44は、流体タンク44が手術中に一杯になると、吸引された流体を空にする排出口を含むのが望ましい。
【0045】
図6は、分離された吸引タンク102と注入タンク104を含む吸引・注入タンク100を示している。吸引・注入タンク100はそれぞれの室102と104用の別個のポンプとモータを含んでいる。吸引ポンプ106とモータ108は手術野から流体と組織を、手術器具110を通って管112によって吸引する。注入タンク104内に含まれる注入流体は、タンク104に圧力をかける注入ポンプ116とモータ118によってタンク104から管114を通って注入器具(不図示)に強制的に送られる。注入器具の例は、目の中に挿入されて、注入流体が目に入り、目がつぶれるのを防ぐために内部眼圧を維持するようにする注入カニューレであってよい。図からわかるように、ポンプ106とモータ108、ポンプ116とモータ118がタンク100の室120に収容されている。室120内ではポンプとモータが分離されているため、それらを、メーカで包装した後はタンク100、その関連するトレイ、および手術器具と一緒に殺菌する必要がないかもしれない。注入または吸引された流体と直接、接触するいかなる面も無菌でなければならないことは一般に認められた決まり事である。関連するトレイはタンク100とともに図示されていないが、タンク100は、トレイ10について上述したのと同様なやり方でトレイ内に保持され、トレイとともに予め包装され、殺菌されうることが容易に理解される。さらに、タンク100をトレイから外して、手術のための好都合な場所に置き、または出っ張り122によって吊るすことも可能である。
【0046】
トレイ10は、モータ42と50を、配線84を介して電源82に接続する、モータ42と50に接続された電源コネクタ80を含む。電源82は図2にバッテリとして示されているが、電源82は、直流(DC)電源、交流(AC)電源、燃料電池、Wirtricityのような無線電源、または他の適切な電源の少なくとも1つであってよい。したがって、電源コネクタ80は、図示のバッテリコネクタの代わりにACコネクタ、燃料電池コネクタ、または無線電源コネクタの少なくとも1つであってよい。図2は、1つの電源接続を示しているが、多数の電源が用いられてもよいことが理解されるべきである。さらに、電源82は、図示のように、トレイ10とともに予め包装され殺菌されなくてもよく、むしろ、トレイ10が、手術のために開けられ、準備された後、トレイ10に接続される電源であってもよい。一つまたは複数の電源コネクタ80は、図7に示されているように、トレイ10の側壁10にあるような、トレイ10の一部、すなわち、電源コネクタ80が、DC電源、AC電源、または壁のコンセント(不図示)に差し込まれるACコード(不図示)に接続される部分に取り付けられてもよい。無線による電力伝送が用いられる場合、手術器具が電力伝送装置を含むことができるならば、配線84を省くことが可能である。全ての手術器具が電力を必要としているわけではないことは明らかであり、なかにはバッテリまたは燃料電池によって自ら電力を供給している手術器具もある。
【0047】
トレイ10が開けられた後に電源が接続される場合では、電源が無菌である必要は必ずしもないかもしれない。たとえば、トレイ10の下側部分に、バッテリパックまたは燃料電池を収容する開口があってもよい。この場合、ことによると、無菌でないバッテリパックまたは燃料電池が使用されることがありえる。なぜならば、それがトレイ10の無菌野の上面16の下にあるからである。
【0048】
電源コネクタ80は、図2に示すように、電源82がポンプと少なくとも1つの手術器具14に電力を供給するように、モータ42、50と少なくとも1つの手術器具14に直接、接続されてもよい。少なくとも1つの手術器具14は、配線84の1つ、入出力コネクタ86、配線88(図1に図示)を介して電源80に接続されている。無論、2つ以上の手術器具14が、図示されていない他の入出力コネクタ86を介して電源コネクタ80に接続されてもよい。接続できる手術器具には硝子体切断器と、水晶体乳化、細分、または切断装置と、照明装置と、鋏が含まれる。さらに、手術器具14は、トレイ10と共に予め包装され、殺菌され、ポンプタンク30と入出力のコネクタ86に接続されてもよい。
【0049】
電源コネクタ80はモータと手術器具に直接、接続されてもよいが、複数の手術器具に電力を供給するために無菌トレイ10のいたる所に電力を分配する、図2に示す電力分配器90が望まれることもある。電力分配器90は、使用される電源および手術に必要な手術器具に応じて、電圧変換器、DC‐DCコンバータ、AC−DCコンバータのような多くの形態をとり得る。さらに、電力分配器90は、手術器具、モータ、オペレータフィードバックまたはステータス表示器を動作させる制御機能を実行するプロセッサも含み、すなわち電力分配器90は、実行される全手術動作に対する中央コントローラであってもよい。
【0050】
外科医が、少ない支援でまたは支援なしに手術を行うのを可能にする要望のために、トレイ10は、複数の溝92のような、無菌の障壁をトレイ10に接続する構造を含むのが望ましい。図8において、無菌の障壁94がトレイ10に取り付けられている。無菌の障壁94は、無菌野の外側の無菌でないユーザ(不図示)が、無菌野を危険にさらすことなく無菌野内の内容物を操作することを可能にする少なくとも1つのポケット95が形成された、しなやかなシート96を含む。シート96は、トレイ10の複数の溝92内に保持されている支持体98に取り付けられている。ポケット95は図8では、ユーザ用の手袋を形成する2つのポケットとして示されている。ポケット95は手袋以外の他の形態をとり得ることが容易に理解されるべきである。たとえば、ポケット95は、指の開口を形成するいかなる構造もない、単に空洞であってもよい。
【0051】
トレイ10は、複数の手術器具を収容する構造を有するのに加えて、図1図2に見られるように、トレイ10に取り付けられた複数の入出力コネクタ86を含むのが望ましい。したがって、図2において最もよく見られるように、無菌手術トレイ10は、無菌トレイ10内に含まれるポンプ流体タンク30と、1つのポンプまたは複数のポンプ40、48と、1つのモータまたは複数のポンプ40、48に接続された1つまたは複数のモータ42、50と、を含むのが望ましく、図示されているバッテリのような電源82に接続する複数の入力および出力のコネクタ86の少なくとも1つがモータ42と50に接続されている。
【0052】
トレイ10は、出力コネクタ86の少なくとも1つに取り付けられた状態指示器130を少なくとも1つさらに含んでもよい。状態指示器は発光ダイオード(LED)または音響信号発生器であってよい。図1において、左側に3つの状態指示器130が手術器具14に隣接しているのが図示されている。手術器具14の種類に応じて、3つの状態指示器130は、異なった種類のフィードバックをユーザに与えることができる。たとえば、タンク30がセンサを含んでいた場合、これら指示器130は、真空レベルが受け入れることができない(赤)、真空レベルが受け入れることができないレベルに近づいている(黄)、真空レベルが受け入れられるレベルである(緑)、ことをユーザに示すために、色が赤、黄、緑であってよい。他の例では、状態指示器130は手術器具の速度またはエネルギーレベルを示すことができ、速度またはエネルギーのレベルが高いとき3つの指示器全てがオンであり、速度またはエネルギーのレベルが中間レベルのとき2つの指示器がオンであり、速度またはエネルギーのレベルが低いとき1つの指示器がオンである。
【0053】
トレイ10は、眼科手術のようなある一定の手術に対しては暗くてもよい手術室で使用されるので、複数のLED132が複数の出力コネクタ86に接続され、複数の手術器具保持凹部12の各々に隣接して、トレイ10上の手術器具保持凹部12の場所を照らす少なくとも1つのLED132がトレイ10に接続されているのが望ましい。複数の手術器具14がトレイ10内に保持され、複数の入力および出力のコネクタの一部に接続され、トレイとともに予め包装され、殺菌されるのが望ましい。
【0054】
患者と外科医の直ぐ間で外科医が、手術野に制約なしにアクセスするのを可能にする場所134においてトレイ10が十分に狭いことが、トレイ10が目的とした手術の種類に応じて望ましい。図1の例では、場所134はトレイ10の中心にあり、トレイ10のU字形の形状の底部を形成している。トレイ10が、トレイ10内に複数の手術器具を含み、かつ入力および出力の複数のコネクタ86の一部に接続されている場合、これら複数の手術器具に接続されている入力および出力の複数のコネクタ86は、接続された手術器具がトレイのいずれかの側に位置して、左側または右側の外科医のためのスペースを確保できるように、トレイ10に概ね中心位置134にて取り付けられているのも望ましい。
【0055】
状態指示器130はまた、バッテリまたは燃料電池の出力レベル、入力および出力のコネクタに接続されたポンプ流体タンクの流体レベル、または入力および出力のコネクタに接続された照明器の照明レベルを示すために、上記したのと同様にして、トレイ10の上に置かれてもよい。手術器具と、トレイ10に接続された他の装置の少なくとも一方の状態を、数字、アイコン、バーグラフ、などによって表示するディスプレイ136を状態指示器とLED130の代わりにまたは状態指示器とLED130に追加して設けてもよい。上記したように、トレイ10は、入力および出力の複数のコネクタ86に取り付けられて、ユーザ、複数の手術器具14、そして入力および出力の複数のコネクタ86に接続された複数の装置からの入力を受信し、ユーザ、複数の手術器具14、そして複数の装置に信号を送信するプロセッサも有してもよい。プロセッサは電力分配器90の一部であっても、または別個の装置であってもよい。プロセッサは、トレイ10と一緒に予め包装され、殺菌されていてもよく、またはトレイ10が開けられ、手術のために準備された後にトレイ10に接続されてもよい。
【0056】
トレイ10は、入力および出力の複数のコネクタ86に接続されて、遠隔の複数の装置と複数の手術器具との間で信号を送受信する無線送受信器138をも含んでよい。無線送受信器138は、赤外線または無線周波数送受信器のような、条件に合った種類の無線通信装置であってよい。無線送受信器の例として、ブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標)、Wifi(登録商標)またはIEEE 802.11の送受信器、または他の周知の無線通信装置がある。無線送受信器138は、トレイ10のいたるところおよび入力および出力の複数のコネクタ86を流れる情報によって外科手術を監視または制御する、トレイ10と、手術室またはどこか他のところにあるラップトップコンピュータ(不図示)に接続されたプロセッサに接続することができる。明瞭および簡単化のために、ワイヤ、すなわち配線84のいくつかと、入力および出力の複数のコネクタ86のいくつかだけが図面に示されているが、プロセッサはトレイ10から遠隔に位置する可能性があり、制御、監視、フィードバック、通信のうちの少なくとも1つの信号が無線送受信器138によってプロセッサとトレイ10の間を無線で流れることもできることが理解されるべきである。
【0057】
上記した複数の装置に加えて、入力および出力の複数のコネクタ86のいくつかがユーザ入力ボタン、ノブ33、などに接続されてもよい。さらに、図9に示された足踏みコントローラ142に接続する足踏みコントローラコネクタ140がトレイ10に取り付けられてもよい。無論、足踏みコントローラ142は、図9において参照符号144によって示されているように無線送受信器138によってトレイ10に接続されてもよい。入力および出力の複数のコネクタ86の一部が、トレイ10内の予め包装され、殺菌された複数の手術器具の他に、追加の手術器具への接続用であることも望ましい。たとえば、硝子体網膜の手術を行う外科医は、予め包装され、殺菌されたトレイ10内に含まれていない破砕器具を必要とすることがあるが、それは、嵌め合わせ式の入力および出力のコネクタ86を用いてトレイ10に接続することができる。
【0058】
無菌手術トレイと共に使用されてよい注入流体タンクの他の例が図10に示されている。注入タンク150は、各室に異なった流体を保持する複数室流体タンクである。2つまたは3つ以上の室154、156、158に、これら室を加圧する圧力ポンプ152が接続されている。多位置弁160が多数の室154、156、158に管162によって接続されている。弁160は、選択された室内に含まれる流体が選択された室から出て目または他の手術野に管164と手術器具(不図示)を通って流れるのを可能にする。弁160は、周知の3位置止水栓160として示されているが、弁160は、設計に応じて、個々の弁または機械的または電気的に作動させられる複数の弁であってもよい。弁160が電気的に作動させられる場合、弁160はトレイ10に取り付けられまたはトレイ10内に収容され、入力および出力の複数のコネクタ86の一部に接続されて、弁160の位置の手動による選択以外を支持することができるであろう。図示されている注入流体タンク150は3つの室154、156、158を有し、各室が、眼科手術に特に有用な、BSS、シリコンオイル、ガスの1つを保持するが、他の流体を、行われる特定の手術の要件に応じてこれら室内に保持することができる。たとえば、これら室の1つは粘弾性を含む場合がある。注入タンク150は、ユーザが室154、156、158内の流体のレベルを容易にわかるように透明であることも望ましい。注入流体タンク150は、トレイ10との一緒の使用以外に使用され、他の手術システムで使用されてもよいことも理解されるべきである。
【0059】
モータ116によって動力が供給される注入ポンプ152は、複数の流体を手術野に注入する複数の室154、156、158を加圧する。モータ166は、電源供給と制御のために入力および出力の複数のコネクタ86(不図示)に接続されていることが理解されるべきである。室154、156、158は、これら室を満たすためと再度、満たすための複数のアクセス口168をも含んでいるのが望ましい。アクセス口168は、流体が漏れるのを防ぎ、また室が適切に加圧されるのを可能にする蓋または密閉具を必要とすることがある。室154は、流体172で部分的に満たされた袋170を示している。流体172はBSSまたは他の流体であってよい。室154は、ポンプ152が手術中に流体タンク室154を加圧して、BSS172を流体タンク150から無理に押し出すように、BSSで少なくとも部分的に満たされた袋170を含んでいる。室156はシリコンオイル174を保持し、室158はガス176を保持してもよい。
【0060】
図11は、目の硝子体切除を行うための器具を含む複数の手術器具を含む無菌手術トレイ180の一例を示している。硝子体切除を行うために、少なくとも照明器具、組織切断具、注入具、侵入部位位置合わせシステム、そしてメスが通常、トレイ180のような無菌トレイ内に含まれるであろう。
【0061】
図12は、目から水晶体摘出を行うための器具を含む複数の手術器具を含む無菌手術トレイ182の例を示している。水晶体摘出を行うために、少なくとも水晶体乳化装置、注入装置、粘弾性、破裂鉗子、人工水晶体挿入具、そしてメスが通常、トレイ182のような無菌トレイに含まれるであろう。
【0062】
図13は、トレイ10のような無菌手術トレイ内に含められるポンプタンク150の代替である流体‐空気交換システム300の機能ブロック図である。システム300は、BSSタンク302と、流体、BSS、または空気のいずれが注入ポンプ308内に流れ込むのを許すかを選択する選択弁306に接続されている、空気のタンク304を含むのが望ましい。注入ポンプ308は、流体を目または体の他の部分に注入する適切なポンプであってよい。バイパス弁310が注入ポンプ308とオイルタンク312からの流路に接続する。オイルタンク312は逆止弁316を介してオイル源314に接続されている。オイル源314は、図示のシリンジであってよく、またはオイルを自動的にタンク312に送り出すポンプ(不図示)に接続されている他の源であってもよい。オイルタンクはそれから、他の逆止弁320を介して三方向栓弁318に接続されている。弁306、310、そして318の位置に応じて、空気、BSS、またはオイル(通常、シリコンオイル)が目の中に注入される。バイパス弁310は、注入ポンプと空気またはBSSがタンク312からのオイルを目の中へ押し込むのを可能にする。
【0063】
独立手術センターと個人手術センター
ある一定の実施形態では、独立手術トレイ1402は、図14に示したように、ここに記載された無菌手術トレイを少なくとも含むことができる。独立手術センター1402は様々な手術/医療または他の装置1401、個人手術センター1410、病院/医療診療所システム1414の少なくともいずれかに接続されてよい。
【0064】
図14を参照すると、独立手術センターは、外部の手術コンソールなしに動作可能で、独立型のシステムとして働くことができる。あるいは、独立手術センターを、様々な手術装置と他の装置1401(ここでは、把手とも呼ぶ)の少なくともいずれかに、たとえば、しかし限定されない、照明装置1407、足踏みペダル入力装置1406、切断装置1408(以下にさらに説明するように、生物組織切断装置とも呼ぶ)、灌注装置、注入装置、視覚装置、吸引装置、レーザ装置、焼灼装置、切除装置、水晶体乳化装置、水晶体切断装置、鋏装置、または他の同様の装置に連結することもできる。ある一定の実施形態では、前述の手術装置と他の装置の少なくとも一方は、電源(内部のまたは外部のAC/DC)、処理ユニット、ネットワークインタフェース(有線または無線の)、電子装置、メモリ、音声機構、などを含むことができる。ある一定の実施形態では、独立手術センター1402はネットワークインタフェース1440を介して様々な手術装置と他の装置の少なくとも一方と通信、連結されること、接続されること、の少なくとも一方を行う。ネットワークインタフェース1440は、ブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標)、Wifi(登録商標)またはIEEE 802.11、または他の無線通信プロトコルを用いて有線接続と無線接続の少なくとも一方で動作することができる。
【0065】
図14に示されているように、ネットワークインタフェース1440は、独立手術センター1402に受け入れられること、独立手術センター1402に連結されること、独立手術センター1402から除かれること、の少なくともいずれかを行うことができるバッテリパック1442に連結されてもよい。ある一定の実施形態では、バッテリパック1442は、限定なしに、1つのバッテリまたは複数のバッテリ1444と、処理ユニット1446を含む。ある一定の実施形態では、処理ユニットは、ここに記載されたように、独立手術センター1402、個人手術センター、別個のコンソール、手術装置の少なくともいずれかにあってよい。バッテリパック1442は、バッテリ1444、処理ユニット1446(たとえば、インテル(登録商標)8085マイクロプロセッサ)、ネットワークインタフェース1440の少なくともいずれかが回路と電子装置1412の少なくとも一方に結合されることと、接続すること、の少なくとも一方を可能にする電気接点と複数のコネクタの少なくとも一方を有してよい。ある一定の実施形態では、処理ユニット1446は、電子装置1412内のメモリに格納されている、発光ダイオード(LED)1448の制御と、操作ノブ、ボタン、または他の入力装置1450を介してのユーザ入力の受信の少なくとも一方をおこなうためのプログラム命令を実行するように構成されている。たとえば、処理ユニットを、切断装置の状態、速度、または他の同様の指示を指示/表示するようにLEDを制御するようにも構成することができる。処理ユニット1446を、ポンプ1454に連結されたモータ1452と通信するように構成することもできる。処理ユニット1446を、手術装置と他の装置1401の少なくとも一方または個人手術センター1410と通信することとコマンドを送信することの少なくとも一方を行うように構成することもできる。
【0066】
図14を参照すると、バッテリパック1442は使い捨ての、または他の独立手術センター1402で再使用可能であってよい。バッテリパック1442は無菌または無菌でなくてもよく、無菌でない場合、バッテリパックは手術野内にはあってはならない。好適な実施形態では、バッテリパック1442は、バッテリパック1444、処理ユニット1446、ネットワークインタフェース1440の少なくともいずれかのコストのために、他の独立手術センター1402で再使用されるが、ある一定の実施形態では、バッテリパック1442は無菌の目的のために使い捨てである。独立手術センターは個人手術センター1410と連結されていてもよい。
【0067】
図14を参照すると、ある一定の実施形態では、個人手術センター1410は独立手術センター1402を制御することができる。個人手術センター1410は、ディスプレイまたはタッチスクリーン入力ディスプレイ1428への様々な医療器具(たとえば、把手と複数の手術装置の少なくとも一方)の設定の監視と、該設定のディスプレイまたはタッチスクリーン入力ディスプレイ1428への表示の少なくとも一方を行うように構成することができる、コンソール、汎用コンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットワーク化された1つまたは複数の装置、などを限定なしに含むことができる。個人手術センター1410の他の実施形態を以下に説明する。個人手術センター1410は、リアルタイムデータと周期的データの少なくとも一方と、独立手術センターから取得、受信の少なくとも一方をした複数の状態レベルを格納するログデータベース1430を限定なしに含む。独立手術センターと外科医/専門家の少なくともいずれかから受信したデータ、状態レベル、患者情報の少なくともいずれかに基づいて、個人手術センター1410は、報告システムとデータベース1432の少なくとも一方を用いて報告の生成と格納の少なくとも一方を行うことができる。個人手術センター1410は、請求システムとデータベース1420とのインタフェースを行うことができる請求モジュール1434を用いて請求手続きを開始することもできる。個人手術センター1410は、患者記録モジュール1436を用いて、データ、状態レベル、患者情報の少なくともいずれかを患者記録データベース1422に格納することもでき、またはこのデータを、HISインタフェースモジュール1438を用いて病院情報システム(HIS)1424に格納することができる。ある一定の実施形態では、個人手術センター1410は、様々な手術装置と他の装置の少なくとも一方の設定および状態を監視、表示し、他方独立手術センターは独立手術センター内の回路と電子装置1412、様々な手術装置と他の装置内の少なくとも一方の回路と制御装置によって医療器具を制御する。ある一定の実施形態では、個人手術システム1410を他の病院/診療所システム1414に連結することもできる。
【0068】
図14は、個人手術センター1410からのデータを記録するシステムおよびデータベース1416と、報告書を作成するシステムおよびデータベース1418と、送り状、請求書、未収保険金請求書の少なくとも1つを生成するシステムおよびデータベース1420と、患者のレコードを格納するシステムおよびデータベース1422と、病院情報システム(HIS)とインタフェースで接続するシステム1424と、を限定なしで含むことができる病院/診療所システム1414の一実施形態も示している。
【0069】
図14を参照すると、ある特定の実施形態では、独立手術センター1402と、手術装置と他の装置の少なくとも一方は、手術が行われる無菌野内に配置することができ、他方、個人手術センターと病院/診療所システムは無菌野の外に配置することができる。
【0070】
生物組織切断装置
図6と14を参照すると、ある一定の実施形態では、生物組織切断装置と吸引把手(たとえば、硝子体切除術把手または他の同様の把手)の少なくとも一方は携帯でき、軽量で、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方に動力を供給するためにバッテリによって電力を供給することができる。生物組織切断装置と吸引把手は、無菌野、診療所、手術センター、手術室で使用することができる。生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は独立した機器として、または上記した独立手術センターと共に使用してよい。把手は使い捨てであってよく、かつ生物組織切断装置に吸引圧力を供給する吸引/注入カセットに接続することができる。図6は、注入ライン114と、生物組織切断装置と吸引把手110を有する吸引/注入カセット100の一例を示している。カセットの左側は生物組織切断装置と吸引把手に吸引圧力を供給する働きをし、右側は注入を供給する。
【0071】
ある一定の実施形態では、たとえば、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、発明の名称が「使い捨て硝子体切除術把手」で、参照によって全内容がここに含まれる、継続中の米国特許出願公開第2008−0208233号(米国特許出願第11/963、749号)に記載されたような使い捨ての把手である。さらに、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、バッテリ電源または他の電源と、流量調整器/ピンチ弁を含むことができる。把手は、他の手術器具、内部または外部のモニタまたはスピーカー、または吸引/注入カセット内の制御センターと無線で通信(たとえば、ブルートゥース(登録商標)など)してもよい。あるいは、把手は、個人手術センターと独立手術センターの少なくとも一方と無線で通信してもよい。手術パラメータ(たとえば、切断速度、周波数、吸引圧力/流量)は、直接把手上で、または把手に無線で接続された足踏みペダルによって制御されてよい。そのようなパラメータは、切断チップ、吸引ポンプ、などを含んでよい。駆動回路は、把手にどのようにして電源が供給されるか(たとえば、バッテリによってまたは吸引/注入カセットを経て)に応じて、把手、手術トレイ、または吸引/注入カセットに直接、組み込まれてもよい。
【0072】
上記したように、ある一定の実施形態によれば、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、外部のコントロールセンターと共に使用されるのではなく、独立型の機器であってよい。把手の制御部は把手自体の上に配置して、手術コンソールの必要性をなくすことができる。把手自体または手術トレイは、外科医に手術の現在の設定と機器の故障を知らせるディスプレイまたはスピーカーを備えてよい。ある一定の実施形態によれば、把手は、たとえば、マイクロプロセッサベースのユニット、ASIC、などであってよいコントロールユニットまたは処理ユニットと、他の回路を含む。
【0073】
ある一定の実施形態では、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、コントロールセンターを含む吸引/注入カセットと共に、または外部のラップトップコントロールセンターと共に使用することができる。本システムをコンセントにプラグで接続することができるかもしれないが、バッテリの電源は把手の操作性を良好なものにすることができる。バッテリは把手、手術トレイの内部、または吸引/注入カセット自体に設置してよい。バッテリを把手の内部に設置する場合、バッテリがユニットの重量と大きさを増大させるため、操作性と人間工学性を損なう可能性がある。吸引/注入カセットは、この器具上の人間工学が重要ではないので、大きく、重くなる可能性がある。しかしながら、バッテリが吸引/注入カセットまたは手術トレイに設置されると、電線を、吸引線とともに把手にロープでつなぐ必要があるであろう。
【0074】
無線制御(たとえば、ブルートゥース(登録商標))を、把手、吸引/注入カセット、手術トレイ、またはこれの全てに搭載してもよい。把手がバッテリ電源を用い、かつ吸引カセットまたは手術トレイへのリンクを含まない場合、無線通信は通常、把手、手術トレイ、そして他の装置内で行われることになる。しかしながら、これらの2つの間に直接有線リンクが存在する場合、無線通信はある装置、たとえば、手術トレイで行われることがある。ある一定の実施形態では、無線通信は、把手の重量を減らすために吸引/注入カセットまたは手術トレイ内で行われる。ある一定の実施形態では、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方、ネットワーク通信、吸引用のバッテリ/電源は手術トレイに直接有線接続によって端を発する。
【0075】
ある一定の実施形態では、把手は、器具の状態、故障、切断速度、などに関する情報を中継するディスプレイとスピーカーの少なくとも一方を含んでよい。たとえば、把手は、把手自体の上にLEDとスピーカーの少なくとも一方を含んでよい。ある一定の実施形態では、器具と動作の情報も手術トレイ上のディスプレイまたはスピーカーに表示されてよく、または個人手術センターまたはラップトップセンター上に表示して外科医がそのような情報をより容易に調べることができるようにしてもよい。
【0076】
生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、個人手術センターまたはラップトップセンターと共に用いられる場合、個人手術センターまたはラップトップセンターと直接、または独立した手術トレイまたは手術トレイを介して通信してもよい。個人手術センターまたはラップトップセンターは、現在の切断速度、バッテリ寿命(該当する場合)、何らかの故障、または他の何らかの指示器または状態情報のような、器具と動作の情報を示すことができる。個人手術センターまたはラップトップセンターは、許容される最大切断速度、他の手術パラメータのような追加の情報も受信してもよい。生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方は、始動時、独立手術センター、個人手術センター、ラップトップセンターの少なくとも1つに対して自分を特定し、それが以前に使用されたかどうかを示すことができる。流量検出または流量制御が用いられる場合、複数のセンサと複数のアクチュエータを、生物組織切断装置と吸引把手の少なくとも一方の近くに、またはこれらの上に直接、設置してもよい。
【0077】
個人手術センター
図14Aを参照すると、個人手術センター用の、コンピュータシステムと装置の少なくとも一方が図示されている。図14Aは、1つまたは複数の独立手術センター910と1つまたは複数の手術装置915の少なくとも一方と1つまたは複数のネットワーク9010を介して通信しているコンピュータシステム(不動システムまたはモバイル装置であってよい)の一実施形態のブロック図を示している。コンピュータシステム900は、ここに記載された1つまたは複数のシステムおよび1つまたは複数の方法を実施するために用いられてよい。さらに、一実施形態では、コンピュータシステム900は、複数の手術装置からの状態データと状態情報の少なくとも一方を処理するように構成されてよい。図14Aは、コンピュータシステム900の一実施形態を示しているが、コンピュータシステム900の複数の構成要素または複数のモジュール内に備えられた複数の機能を、より少ない構成要素およびより少ないモジュールに組合せ、または追加の複数の構成要素または複数のモジュールにさらに分割してもよい。
【0078】
一実施形態では、システム900は、ここに記載された複数の機能、複数の方法、そして複数のプロセスの少なくともいずれかを実行する複数の処理・分析モジュール906を有する。処理・分析モジュール906は、コンピュータシステム900上で、以下にさらに説明する中央処理装置904によって実行されてもよい。
【0079】
コンピュータシステムの構成要素
一実施形態では、上記で示した複数のプロセス、複数のシステム、そして複数の方法は、コンピュータ装置上で実行されるソフトウェアで一部または全部が具体化されてよい。コンピュータ装置の複数の構成要素と複数のモジュール内に備えられた機能は1つまたは複数の構成要素と1つまたは複数のモジュールの少なくとも一方を含んでよい。たとえば、コンピュータ装置は、サーバのアレイにおいて実施できるような、多数の中央処理装置(CPU)と、大容量記憶装置を含んでよい。
【0080】
一実施形態では、コンピュータシステム900は、複数のデータベースに対して制御と通信の少なくとも一方を行い、処理を行い、データベースから報告書を作成するのに適したラップトップコンピュータをも含む。コンピュータシステム900は、マイクロプロセッサを含んでよい中央処理装置(CPU)904をも含む。コンピュータシステム900は、情報を一時的に格納するランダムアクセスメモリ(RAM)と情報を永久的に格納するリードオンリーメモリ(ROM)の少なくとも一方のようなメモリ905と、ハードディスクドライブ、ディスケット、または光媒体記憶装置のような大容量記憶装置901と、をさらに含む。通常、コンピュータシステム900の複数のモジュールは、標準ベースのバスシステムを用いてコンピュータに接続されている。複数の異なった実施形態では、標準ベースのバスシステムはたとえば、周辺構成要素相互接続(PCI)、マイクロチャネル、SCSI、工業規格構造(ISA)、そして拡張ISA(EISA)構造であってよい。
【0081】
代表的なコンピュータシステム900は、キーボード、マウス、タッチパッド、そしてプリンタのような、一般に利用できる1つまたは複数の入力/出力(I/O)装置・インタフェース903を含んでいる。一実施形態では、I/O装置・インタフェース903は、データを可視的にユーザに提示するのを可能にする、モニタのような、1つまたは複数のディスプレイ装置または1つまたは複数のタッチスクリーンディスプレイ装置を含む。特に、ディスプレイ装置は、たとえば、複数のGUI、アプリケーションソフトウェアデータの提示、そしてマルチメディアの提示を行う。図14Aの実施形態では、I/O装置・インタフェース903は様々な外部の装置に通信インタフェースをも提供する。コンピュータシステム900は、たとえば、スピーカー、ビデオカード、グラフィックアクセラレータ、マイクロフォンのような1つまたは複数のマルチメディア装置902をも含んでよい。
【0082】
コンピュータシステム装置/オペレーティングシステム
コンピュータシステム900は、たとえば、サーバ、ウインドウズ(登録商標)サーバ、構造クエリー言語サーバ、ユニックスサーバ、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯電話、パーソナルディジタルアシスタント、キオスク、オーディオプレーヤ、などのような種々のコンピュータ装置上で実行されてよい。コンピュータシステム900は一般に、z/OS(登録商標)、ウインドウズ(登録商標)95、ウインドウズ98、ウインドウズNT、ウインドウズ2000、ウインドウズXP、ウインドウズビィスタ、リナックス、BSD、SunOS、Solaris、または他の互換性のあるオペレーティングシステムのようなオペレーティングシステムソフトウェアによって制御、調整される。マッキントッシュシステムでは、オペレーティングシステムは、MAC OS Xのような、利用可能なオペレーティングシステムであってよい。他の実施形態では、コンピュータシステム900は、独自のオペレーティングシステムによって制御されてもよい。従来のオペレーティングシステムは、複数のコンピュータプロセスを実行のために制御、スケジューリングし、メモリ管理を行い、ファイルシステム、ネットワーク化、複数のI/Oサービスを提供し、特に、グラフィカルユーザインタフェース(「GUI」)のようなユーザインタフェースを提供する。
【0083】
ネットワーク
図14Aの実施形態では、コンピュータシステム900は、LAN、WAN、またはインターネットのようなネットワーク910と、たとえば、有線の、無線の、または有線と無線の組み合わせの通信リンク915によって連結されている。ネットワーク910は、様々な計算装置と他の複数の電子装置の少なくとも一方と、有線または無線の通信リンクによって通信する。図14Aの代表的な実施形態では、ネットワーク910は、1つまたは複数の独立手術センター910と1つまたは複数の手術装置915の少なくとも一方と通信している。
【0084】
コンピュータシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、他の種類のディスプレイ、複数のディスプレイの組み合わせの少なくとも1つのような、全ての点をアドレス可能なディスプレイの組み合わせとして実施してもよいブラウザモジュールまたは他の出力モジュールを含んでもよい。さらに、ブラウザモジュールまたは他の出力モジュールは入力装置903と通信するように実施されてよく、たとえば、メニュー、ウインドウズ、ダイアログボックス、ツールバー、制御子(たとえば、無線ボタン、チェックボックス、スライディングスケール、など)のような様式化されたスクリーン要素を用いてユーザがデータをアクセスするのを可能にする適宜なインタフェースを有するソフトウェアをも含んでもよい。さらに、ブラウザモジュールまたは他の出力モジュールは、ユーザから信号を受信するために、一組の入力装置および出力装置と通信してよい。
【0085】
1つまたは複数の入力装置は、キーボード、ローラボール、タッチペン、マウス、トラックボール、音声認識システム、または予め指定されたスイッチまたはボタンを含んでよい。1つまたは複数の出力装置は、スピーカー、ディスプレイスクリーン、プリンタ、または音声合成器を含んでよい。さらに、タッチスクリーンは、混成の入力/出力装置として働いてもよい。他の実施形態では、ユーザは、インターネット、WAN、またはLAN、または同様のネットワークを通して通信することなく、スコア発生器に接続されたシステム端末を通してのようにシステムとより直接的に相互に作用してよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、システム900は、対話型データとデータベースをオンラインで、リアルタイムに、または周期的にアップロードし、ダウンロードし、または見ると言う明確な目的のために遠隔のマイクロプロセッサとメインフレームホストコンピュータ間に確立された物理的または論理的接続を有してよい。遠隔のマイクロプロセッサは、クライアントサーバシステムまたはメインサーバシステムを含む、コンピュータシステム900を動作させるエンティティによって動作させられるか、1つまたは複数の手術装置915と1つまたは複数の独立手術センター910の少なくとも一方によって動作させられる、の少なくともいずれかであってよい。
【0087】
他のシステム
図14Aに示されたシステムに加えて、ネットワーク910は、他のデータ源または他のコンピュータ装置、たとえば請求システムまたは病院情報システムと通信してよい。コンピュータシステム900は、1つまたは複数の内部データ源と1つまたは複数の外部データ源の少なくとも一方をも有してよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のデータ保存場所と1つまたは複数のデータ源は、DB2(登録商標)、Sybase(登録商標)、オラクル、CodeBase、マイクロソフト(登録商標)のSQLサーバのようなリレーショナルデータベースと、たとえば、フラットファイルデータベース、エンティティ‐リレーションシップデータベース、オブジェクト指向のデータベース、レコードベースのデータベースの少なくともいずれかのような他の種類のデータベースを用いて実現されてよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、ここに記載された動作、方法、処理は、1つまたは複数の汎用コンピュータによって実行される複数のソフトウェアモジュール(プログラム)内で、または該ソフトウェアモジュールを用いて実施される。ソフトウェアモジュールは、何らかの適切な、コンピュータ読出し可能な媒体上に、または該媒体内に格納されてよい。様々なステップが代わりに、特別に設計されたハードウェア内で全部または一部実行されてよいことが理解されるべきである。当業者は、全ての計算、解析、最適化の少なくともいずれかがコンピュータの使用を必要とするわけではないが、上記した方法、計算または解析のあるものはコンピュータの使用によって容易になることを理解するであろう。
【0089】
処理の流れの例
図15は、本発明の実施形態にしたがって、独立手術センターの処理装置1446によって実行される処理の流れ図である。
【0090】
ある一定の実施形態では、図15の処理は、ここに記載された無菌手術トレイに収納されたまたは入れられた処理装置によって行われる処理を表している。本発明のある一定の実施形態では、本処理は、処理装置がシステム内に設置されている場所に基づいて、システムの他の器具または構成要素によって行われてよい。ある一定の実施形態では、システムは、多数の処理装置を含んでよく、図15の処理は該多数の処理装置の1つまたは複数によって行われてもよい。
【0091】
ブロック611に、本処理は、独立手術センターと通信している器具から信号を受信する。本実施形態では、トレイは、有線接続によって、たとえば把手によって器具からの信号を受信し、または無線接続によって、たとえば、照明装置から、器具からの信号を受信してもよい。
【0092】
ブロック613に、本処理は、受信した信号が状態更新信号かまたは調整要求信号かどうか判定する。ある一定の実施形態では、処理装置は、選択された複数の器具の動作パラメータを調整するために使用されてよく、また同じ器具または他の器具の状態を処理し、ユーザに知らせるために使用されてもよい。処理装置が、当該信号が調整要求信号であると判定すると、処理はブロック615に進む。処理装置が、当該信号が状態更新信号であると判定すると、処理は代わりにブロック619に進む。
【0093】
ブロック615に、本処理は、調整信号が向けられている装置を決定する。ある一定の実施形態では、調整信号は、処理装置に直接、接続されたユーザ操作機器によって受信されてよい。たとえば、調整信号は、トレイ内の処理装置に並んで配置された注入装置を制御するユーザ操作機器から発したものであってよい。他の実施形態では、調整信号は、遠隔の器具上に設置されたユーザ操作機器、たとえば、トレイと組み合わされた足踏み式のペダルから無線で受信されてよい。調整要求のいくつかは、調整信号の源の装置または構成要素を意味し、調整信号のいくつかの他の信号は異なった装置を、それがトレイ上または手術システム内の完全に別個の器具上の装置であろうとなかろうと、意味してもよい。調整信号の源に関係なく、処理装置は、意図した目的の装置または器具を決定する。
【0094】
ブロック617に、本処理は調整コマンドを目的の装置または器具に送信する。調整コマンドは、システムの構成に応じて、処理装置がシステムに対するスイッチまたはルーティング装置として働く不変の調整信号であってよく、または調整コマンドは、受信された調整要求信号、たとえば、ブロック611について上記したような受信信号に基づいて処理装置によって生成された全く新しいコマンド信号であってよい。システムの多くの実施形態では、調整信号がそれぞれの装置または器具に送信された後、該装置の複数の動作設定または複数のパラメータは調整コマンドにしたがって調整される。
【0095】
該信号が状態更新信号である場合、処理は、ブロック619に、状態更新信号の源を決定する。殆どの実施形態では、状態更新信号は、該状態更新信号の源である装置の状態更新情報を含む。状態更新情報は、源の装置に関する様々な情報、たとえば,現在の設定、動作パラメータ、残存電力レベル、器具の故障状態、そして他の情報を含んでよい。システム内の各特定の器具の状態情報は、該器具の機能に依存して異なっている。たとえば、把手は、切断装置の切断速度または吸引レベルの状態を出力し、これに対して照明装置は照明レベル状態を出力してよい。
【0096】
ブロック621に、本処理は装置または器具の状態を更新する。最初に受信された信号が調整信号であろうが状態更新信号であろうが、システムの処理装置は、該受信信号に関連する状態情報を更新してよい。該信号が調整信号であった場合、処理装置は、調整要求が送られた目的の装置の状態情報を更新してよい。該信号が状態更信号であった場合、処理装置は、該状態更新信号の源である装置の状態情報を、該状態更新信号の内容に基づいて、直接、更新してよい。処理装置は、状態更新を、処理装置を収容している器具に配置された、たとえばモニタに表示してよい。あるいは、状態更新は、たとえば、LED表示器への変更によって、視覚的に表現されてよく、または、たとえば、利用可能なスピーカーによって出力される音声警報によって聴覚で表現してもよい。ある一定の実施形態では、視覚的または音響的状態指示器が、処理装置を収容する器具に加えて、または該器具の代わりに、システムの様々な他の器具上で利用可能であってよい。これらの実施形態では、処理装置は状態更新情報を、出力またはユーザへのフィードバックの目的のために、適宜な器具に送られてよい。本発明の一実施形態によれば、更新情報は、外科手術のために生成されたログファイルにログインするために個人手術センターに送信される。状態更新がシステムに入力され、またはシステムによって記録された後、処理は戻る。
【0097】
安全機構の手順
図16に示されているように、ある一定の実施形態では、ここに記載された独立手術センター1402、処理装置1446、個人手術センター1410の少なくともいずれかを、状態データと調整データの少なくとも一方を、様々な手術装置と装置1401の少なくとも一方から受信し、または様々な手術装置と装置1401の少なくとも一方の状態を決定するように構成することができる。様々な手術装置と装置1401の少なくとも一方の状態の解析と監視の少なくとも一方を行うにあたって、独立手術センター1402、処理装置1446、個人手術センター1410の少なくともいずれかを、様々な安全機構手順、たとえば、ただし限定されない切断装置安全機構手順と低流体安全機構手順を呼び出すように構成することができる。
【0098】
図16を参照すると、図示された処理1601は少なくとも4つの異なった段階、最初のセットアップ、定常状態、切断装置安全機構手順、低流体安全機構手順に分割することができる。処理1601はブロック1602にスタートする。ユーザと外科医の少なくとも一方はブロック1604に独立手術センター、手術装置、他の装置の少なくともいずれかの電源をオンにする。独立手術センターの電源をオンにするに当たって、ブロック1606に、独立手術センター内の処理装置と電子装置の少なくとも一方は、手術中に使用される、利用可能な手術装置と他の装置の少なくとも一方の検索、検出、発見の少なくともいずれかを行う。ブロック1608に、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、手術のための利用可能な手術装置と他の装置の少なくとも一方を登録する。登録に当たって、手術装置と他の装置の少なくとも一方は、手術装置識別番号、ロット番号、部品番号、手術装置の名称と種類の少なくとも一方、装置の現在の状態、装置上の利用可能なオプション(たとえば、オンまたはオフ、低、中、または高速度、など)を含むが、これらに限定されない、パラメータと識別情報の少なくとも一方の送出と送信の少なくとも一方を処理装置と独立手術センターの少なくとも一方に対して行うことができる。登録と、全ての手術装置と他の装置の少なくとも一方の登録とこれらとの通信の確立の少なくとも一方の後、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、ブロック1610に、状態または、手術装置と他の装置の少なくとも一方においてまたはこれらに対してなされる調整を決定するために、手術装置と他の装置の少なくとも一方からの周期的な情報/データの取得と受信の少なくとも一方を行う。
【0099】
図16を参照すると、一実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方がブロック1612に、手術装置と他の装置の少なくとも一方からのデータと情報の少なくとも一方の、テスト送信して応答を求めること、要求、受信の少なくともいずれかを行う定常状態に入る。ブロック1614に、手術装置と他の装置の少なくとも一方を、状態データと他のデータの少なくとも一方の収集、取得、解析の少なくともいずれかを、状態データと他のデータを処理装置と独立手術センターの少なくとも一方に送出または送信するために、行うように構成することができる。手術装置と他の装置の少なくとも一方を、ブロック1616に、データと他の情報の少なくとも一方を独立手術センターにリアルタイムに、ほぼリアルタイムに、周期的に送出または送信するように構成することができ、ここでデータと他の情報の少なくとも一方は、装置状態情報(たとえば、オンまたはオフ、起動されたまたは動作を停止させられた、速度レベル、温度、バッテリレベル、経過時間、流体レベル、警報と故障の少なくとも一方のメッセージ、など)、ユーザが入力した調整データ、装置データ、などを、限定なしに含むことができる。データを送出または送信した後、処理はブロック1610に戻り、処理を繰り返す。
【0100】
図16を参照すると、ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術トレイの少なくとも一方は、ユーザまたは外科医がいつ切断装置を起動したかを、切断装置から状態メッセージを受信することによって、ブロック1618に検出することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、切断装置を起動することができる前と切断装置を起動することができる間の少なくとも一方に切断装置安全機構手順を開始することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方を、手術野への注入流体の供給を開始するために、ブロック1620に、切断装置を起動することができる前、または切断装置の起動と同時に、注入モータとポンプの少なくとも一方に起動コマンドまたは起動信号を送信するように構成することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方を、手術野から過剰の流体と組織/破片の少なくとも一方を除去するための真空の生成と、切断が始まる前に切断装置内への流体の準備、の少なくとも一方を行うために、ブロック1622に、切断装置を起動することができる前、または切断装置の起動と同時に、吸引モータとポンプの少なくとも一方に起動コマンドまたは起動信号を送信するように構成することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方を、ブロック1624に、起動コマンドまたは起動信号を切断装置のモータ装置に送信するように構成することができる。起動コマンドまたは起動信号を送出または送信した後、処理はブロック1610に戻り、処理を繰り返す。
【0101】
切断装置安全機構手順は、必要な手術装置と装置の少なくとも一方が、切断が開始される前に起動されることを保証することによって手術ミスと患者への害の少なくとも一方を防ぐことができる。たとえば、目の様々な手術において、吸引された、または漏れた硝子体液による目の内部圧の低下によって引き起こされる目の損傷を防ぐために、注入モータは、切断の前に起動されなければならない。上記の処理は、手術のための必要な様々な装置を起動するための工程の数を減らすことによって、外科医のために手術の複雑さを低減することができる。
【0102】
図16を参照すると、ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、流体室装置、たとえば、注入タンク104から状態メッセージを受信することによって、様々な流体タンク内の流体レベルがいつ低くまたは高くなったかをブロック1626に検出することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、切断装置が起動される前と切断装置が起動されている間の少なくとも一方のときに、低/高流体安全機構手順を開始することができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、切断装置が起動される前、または切断装置が起動されている間、独立手術センターと他の手術装置の少なくとも一方にある警報音回路の開始と起動の少なくとも一方をブロック1628におこなうことができ、ここで、可聴音/警報は、様々なタンク室内の低い、高い、の少なくとも一方の流体レベルをユーザ/外科医に警告するために生成されるであろう。処理装置と独立手術センターの少なくとも一方を、ブロック1630に、切断装置から状態情報の受信と取得の少なくとも一方を行う前に、(予め決められた、またはユーザが定めた)ある期間、たとえば、10秒、10分、など待つように構成することもできる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、流体タンク室のような他の手術装置からデータと情報の少なくとも一方を取得して、流体レベルが変化したかどうかを判定することができる。切断装置がオン、流体レベルが変化していない、流体レベルが悪化した、の少なくとも1つが起こった場合、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方はブロック1632に、動作停止コマンドの、切断装置と吸引装置の少なくとも一方への送信と送出の少なくとも一方をすることができる。ある一定の実施形態では、処理装置と独立手術センターの少なくとも一方は、目がつぶれるのを防ぐために、注入を維持し続ける。作動停止コマンドまたは作動停止信号を送出または送信した後、処理はブロック1610に戻り、処理を繰り返す。
【0103】
高/低安全機構手順は、必要なタンク室が手術中に十分な流体レベルを有することを保証することによって、手術ミスと患者への害の少なくとも一方を防ぐことができる。たとえば、目の様々な手術において、硝子体液の漏れ/除去による目のつぶれを防ぐために、目への注入は連続的でなければならず、したがって注入タンク内の注入流体の低いレベルは手術中に目がつぶれる危険を引き起こす可能性がある。上記の処理は、外科医と助手の少なくとも一方がタンク室内の流体レベルを絶えず監視する必要性を減らすことによって、外科医にとって手術の複雑さを低減することができる。
【0104】
上記した他の実施形態の場合と同じように、図17から21は、外科医または他のユーザが、手術野から移動することと、手術野から殆ど目をそらすことの少なくとも一方を行う必要なしに、手術トレイシステム1700に関連する道具や他の器具を直接、監視することと、直接制御することの少なくとも一方を行うことを可能にするように構成された手術トレイシステム1700を開示している。ここに記載された手術トレイシステムを使用する外科医または他のユーザは、様々なシステム調整を行うために、助手または手術室看護師への言葉による指示の頼ることと、助手または手術室看護師へ言葉による指示を与えることの少なくとも一方を行うことの必要はないか、ほとんど必要ないであろう。
【0105】
図17に示されているように、手術トレイシステム1700は、外科医または他のユーザが、手術トレイシステム1700に関連する道具と他の器具を直接、監視することを可能にするディスプレイを少なくとも1つ有することができる。手術野内と、手術野と同じ目に見える平面、領域、視野の少なくとも1つのほぼ中と、該少なくとも1つの近く、該少なくとも1つに隣接した、該少なくとも1つに近接した、の少なくとも1つにおける少なくとも1つのディスプレイによって、外科医とユーザの少なくとも一方は手術野から実質的に目をそらす必要はないであろう。たとえば、ある一定の実施形態では、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、一般に手術野の横を見る必要があるだけで、モニタまたは他のディスプレイを見るために、一般に手術野を実質的に見上げることと、手術野から目を離すことの少なくとも一方の必要はないであろう。ある一定の実施形態では、手術トレイシステム1700は、ユーザ入力を受信し、外科医または他のユーザが、流体源、真空源、照明源、電気エネルギー源、などを含むが、これらに限定されない手術道具または他の器具を直接、制御することを可能にするコントローラ(たとえば、ボタン、ノブ、スイッチ、ユーザ入力インタフェース、など)を少なくとも1つ有している。手術野内と、手術野と同じ、目に見える面、領域、視野の少なくとも1つ内に実質的にある、これに近い、これに隣接した、これに近接した、の少なくとも1つに少なくとも1つのコントローラがあることによって、外科医とユーザの少なくとも一方は、システム、道具、そして他の器具の少なくとも一方に対して様々な調整を行うために、手術野から殆ど目をそらす必要も、助手への言葉による指示に頼ることと、該指示を助手に与えることの少なくとも一方を行う必要もない。ある一定の実施形態では、該少なくとも1つのコントローラは、たとえば切断装置1408または他の手持ち操作の装置を含むが、これらに限定されない手術装置上に設置され、該手術装置内に設置され、該手術装置と組み合わされ、該手術装置に埋め込まれ、または連結されている。ある一定の実施形態では、ユーザ入力は、手術装置または手術トレイ上で入力され、または手術装置または手術トレイから受信され、またはコントローラを介して入力することができる。手術装置上のコントローラに入力された、または手術装置上のコントローラによって入力されたユーザ入力はラックシステムに直接または手術トレイを経てラックシステムに(有線接続または無線接続によって)送信することができる。
【0106】
図17をさらに参照すると、ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1042はコントローラ1450を少なくとも1つ有している。この少なくとも1つのコントローラ1450は、通信リンク1709(有線と無線の少なくとも一方)によってラックシステム1702と接続、電気通信、連結の少なくとも一方が可能である。無線通信リンクの例として、無線周波数(RF)、赤外線リンク、光リンク、などがあるが、これらに限定されるものではない。少なくとも1つのコントローラ1450は、ユーザ入力を取得するスイッチ、ノブ、ボタン、または他の機構を含むことができるが、これらに限定されない。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1042はディスプレイ1448を少なくとも1つ有する。この少なくとも1つのディスプレイ1448はラックシステム1702と接続、電気通信、連結の少なくとも一方が可能である。少なくとも1つのディスプレイ1448は、データ、情報、状態、指示の少なくとも1つをユーザに出力する液晶ディスプレイ(LCD)と、発光ダイオード(LED)と、光源と、メータと、指示器と、他の機構を含むことができるが、これらに限定されない。
【0107】
ラックシステム1702は、他のシステム、装置、デバイス、ハードウェアの少なくとも1つに接続され、該少なくとも1つと通信し、または該少なくとも1つの連結された、たとえば、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、他のコンピュータシステムを有することができるが、これらに限定されない。ここで、他のシステム、装置、デバイス、ハードウェアは、流体制御装置と流体源1704の少なくとも一方、真空制御装置と真空源1706の少なくとも一方、プロセッサ1708、メモリ1710、電気エネルギー制御装置と電気エネルギー源1712の少なくとも一方、処理モジュール1714、大容量記憶装置1716、入力/出力(I/O)インタフェースとネットワークインタフェース1718の少なくとも一方、を含むが、これらに限定されない。
【0108】
ラックシステム1702は、流体制御装置と流体源1704の少なくとも一方も含むことができる。ラックシステム1702は外部の流体源に接続することができ、流体制御装置1704は、管1705を通しての無菌手術トレイ1042への流体の流れを制御するように構成されている。あるいは、ラックシステム1702は流体源1704を含むことができ、ラックシステムは、管1705を通しての無菌手術トレイ1042への流体の流れを制御するように構成されている。ある一定の実施形態では、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、無菌手術トレイ1042上の少なくとも1つのコントローラを調整することと、無菌手術トレイの近くにある、無菌手術トレイに隣接した、無菌手術トレイのまわりの、または無菌手術トレイに近接した、手術器具、手持ち式の装置、把手、などの上にあるコントローラを調整すること、の少なくとも一方を行うことによって、流体制御装置と流体源1704の少なくとも一方を制御することができる。ラックシステム1702は真空制御装置と真空源1706の少なくとも一方を有することができる。ラックシステム1702は外部の真空源に接続することができ、真空制御装置1706は、管1707を通して無菌手術トレイ1042に印加、または供給される真空の量と強さを制御するように構成されている。あるいは、ラックシステム1702は真空源1706を含むことができ、ラックシステムは、管1707を通して無菌手術トレイ1042への真空の量と強さを制御するように構成されている。ある一定の実施形態では、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、無菌手術トレイ1042上の少なくとも1つのコントローラを調整することによって、真空制御装置と真空源1706の少なくとも一方を制御することができる。
【0109】
ラックシステム1702はプロセッサ1708を含むことができる。プロセッサ1708は、少なくとも1つのコントローラ1450を経てユーザから受信されたユーザ入力を処理するように構成することができる。プロセッサ1708は、少なくとも1つのディスプレイによってユーザに表示する出力データを処理するように構成することができる。プロセッサ1708は、ラックシステム1702と手術トレイシステム1700の少なくとも一方に関連する、道具、器具、モジュール、構成要素、装置の少なくとも1つを制御することと、これらに命令を送信すること、の少なくとも一方を行うように構成することができる。ラックシステム1702は、プロセッサ1708によって処理されるデータと命令の少なくとも一方を格納するメモリを有することができる。ラックシステム1702は、電気エネルギー制御装置と電気エネルギー源1712の少なくとも一方を有することができる。ラックシステム1702は外部の電気エネルギー源に接続することができ、電気エネルギー制御装置1712は、電線1713によって無菌手術トレイ1042への電気エネルギーの流れを制御することと、電気エネルギーが無菌手術トレイ1042へ向かうようにすること、の少なくとも一方を行うように構成されている。あるいは、ラックシステム1702は電気エネルギー源1712を有することができ、ラックシステムは、電線1713による無菌手術トレイ1042への電気エネルギーの流れを制御するように構成されている。ある一定の実施形態では、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、無菌手術トレイ1042上の少なくとも1つのコントローラ1450を調整することによって、電気エネルギー制御装置と流体源1712の少なくとも一方を制御することができる。
【0110】
ラックシステム1702は複数の処理モジュール1714を含むことができる。処理モジュール1714は、光源、電気モータ、圧力検出装置、そして他の装置を制御する処理装置を含むことができるが、これに限定されない。ラックシステム1702は、プロセッサ1708によって処理されたソフトウェア命令とデータの少なくとも一方と、ユーザと、手術トレイシステム1700に関連する道具と器具の少なくとも一方から受信したデータ、の少なくともいずれかを格納する大容量記憶装置1716を含むことができる。ラックシステム1702は、ネットワーク1720を通して他のコンピュータシステムと、通信リンク1726を通して、手術トレイシステム1700に関連する他の器具1401の少なくとも一方と、有線と無線の少なくとも一方の接続によって通信する入力/出力(I/O)・ネットワークインタフェース装置を含むことができる。
【0111】
たとえば、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、無菌手術トレイ1042上の少なくとも1つのコントローラ1450によって入力、すなわち命令を与えることによって切断装置1408を制御することができ、少なくとも1つのコントローラ1450は信号を、通信リンク1709(有線または無線)を通してラックシステム1702に送信する。あるいは、外科医と他のユーザの少なくとも一方は、切断装置1408または他の装置上の少なくとも1つのコントローラ1450を通して入力、すなわち命令を与えることによって切断装置1408または他の装置を制御することができ、少なくとも1つのコントローラ1450は信号を、通信リンク1709(有線または無線)を通してラックシステム1702に送信し、該信号は、ラックシステム1702に直接、またはラックシステム1702に無菌手術トレイ1042を通して送信することができる。ラックシステム1702は、ユーザ入力を処理し、信号を、通信リンク1726(有線または無線)を通して切断装置1408に送出するように構成することができる。切断装置1408は、状態データを、通信リンク1726を通してラックシステム1702に返すように構成することができ、ラックシステム1702は状態データを処理するように構成されている。ラックシステム1702は、処理された状態データを、少なくとも1つのディスプレイ1448によって外科医と他のユーザの少なくとも一方に表示するように構成することができる。この構成では、無菌手術トレイ1042は、外科医と他のユーザの少なくとも一方が、手術トレイシステム700に関連する様々な器具と構成要素の制御と調整の少なくとも一方を無菌手術野の内部から行なえるように構成されているのに対し、外科医からの命令の処理と、様々な器具と構成要素の実際の制御の少なくとも一方がラックシステム1702によって処理または実行される。この構成では、外科医と他のユーザの少なくとも一方が、手術トレイシステム1700に関連する様々な器具と構成要素の状態データの再検討と監視の少なくとも一方を無菌手術トレイ1042上で行うことができるのに対し、様々な器具と構成要素の状態データの処理はラックシステム1702によって行われる。
【0112】
ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1042はラックシステム1702の延長である。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1042は、ここに記載された他の実施形態に開示されているように、スマートなと、独立に動作する、の少なくとも一方である手術トレイに対して、ラックシステム1702の「スレーブ」である。無菌手術トレイ1042は、外科医がラックシステム1702の制御と調整の少なくとも一方を行えるように構成することができる。無菌手術トレイ1042は、ラックシステム1702によって処理と生成の少なくとも一方が行われたデータを表示するように構成することができる。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1042は、通信リンク1709(有線または無線)を介してラックシステムから受信したデータを処理する複数の回路、複数のプロセッサ、メモリ、そして他の複数の構成要素を含むが、これらに限定されない電子装置1412を有する。電子装置1412は、少なくとも1つのコントローラ1450からの信号と入力の少なくとも一方の受信と処理の少なくとも一方を行うように構成することができる。電子装置1412は、さらなる処理のために、信号と入力の少なくとも一方の送信、送出、通信をラックシステム1702に行うように構成することができる。
【0113】
ある一定の実施形態では、ラックシステム1702は、放射線医学情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかとネットワーク1720を介して通信するように構成することができる。ラックシステム1702は、無菌手術トレイ1042から受信したデータを、RIS、HIS、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかに格納または伝達するように構成することができる。そのようなデータは、トレイに関連するシリアルナンバー、トレイ起動コードまたは信号、請求コードまたは信号、などを含むことができるが、これらに限定されない。上記のデータ、コード、そして信号の少なくともいずれかを受信するにあたって、RIS、HIS、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかは、請求書または他の信号またはコードを処理するように構成することができる。ラックシステム1702は、無菌手術トレイ1042上の少なくとも1つのコントローラ1450を介してユーザから受信したデータをRIS、HIS、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかに格納し、または伝達するように構成することができる。ラックシステム1702は、少なくとも1つのディスプレイ1448上に表示されたデータをRIS、HIS、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかに格納し、または伝達するように構成することができる。ラックシステム1702は、手術道具と他の装置1401、1404、1406、1408の少なくとも一方から受信したデータをRIS、HIS、他のコンピュータシステム1722の少なくともいずれかに格納するように構成することができる。
【0114】
図18を参照すると、図17に開示された実施形態と類似した手術トレイシステム1700の他の実施形態が図示されている。図示された実施形態では、手術道具と他の装置1401(たとえば、切断装置1408)は、電子装置1412を介して無菌手術トレイ1042に接続と直接通信の少なくとも一方がされている。手術道具と他の装置1401は、無菌手術トレイ1042を介して、流体、光、電気エネルギー、真空の少なくともいずれかを受け取るように構成することができる。あるいは、手術道具と他の装置1401は、接続管を介してラックシステムから、流体、光、電気エネルギー、真空の少なくともいずれかを受け取るように構成することができる。
【0115】
図19は、無菌手術トレイ1042にアーム1902を介して接続と連結の少なくとも一方がされたラックシステム1702を有する手術トレイシステム1700の他の実施形態を示している。アーム1902は、リンク1709、管1705、1707、ワイヤ1713の少なくともいずれかと、他のコネクタと導管の少なくともいずれかを含むことができるが、これらに限定されない。図20に示されているように、手術トレイシステム1700は、アーム1902に接続または連結された接続架台2002を含むことができ、アーム1902はラックシステム1702に接続または連結されている。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1402は、無菌手術トレイ1402が接続架台2002とドッキングするのを可能にするコネクタまたは他の装置を有している。接続架台2002と無菌手術トレイ1402の少なくとも一方は、無菌手術トレイ1402を接続架台2002にロックするロック機構を有することができる。接続架台2002は、電気エネルギーの供給または無菌手術トレイ1402とラックシステム1702の間の電子通信を可能にする複数のワイヤコネクタを有することができる。接続架台2002は、流体と真空の少なくとも一方がラックシステム1702から無菌手術トレイ1402に供給されるのを可能にする管コネクタを有することができる。接続架台2002は、光がラックシステム1702から無菌手術トレイ1402に供給されるのを可能にする光ファイバーコネクタを有することができる。図21を参照すると、無菌手術トレイ1402は、無線リンク2102によってラックシステム1702と無線で通信することができる。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1402は、無線リンク2102によってラックシステム1702からデータを受信するように構成することができ、少なくとも1つのディスプレイ1448は、該データを表示するように構成されている。ある一定の実施形態では、無菌手術トレイ1402は、少なくとも1つのコントローラ1450によって、外科医または他のユーザからの入力データを受信することができ、無菌手術トレイ1402は、該入力データを無線リンク2102によってラックシステム1702に送出または送信することができる。ラックシステム1702は、該入力データを処理して手術トレイシステム1700と関連する様々な手術道具と他の器具の少なくとも一方を制御するための命令に変換するように処理することができる。ラックシステム1702に関する上記の実施形態は、ここに開示されたスマートな手術トレイ10と通信、組み合わせ、機能の少なくともいずれかが行えるように構成することもできる。
【0116】
一般に、ここで用いられる用語「モジュール」は、ハードウェアまたはファームウェアに埋め込まれたロジック、または、多分入口と出口の点を有し、たとえば、Java、CまたはC++、などのようなプログラミング言語で書かれたソフトウェア命令の集合を指す。ソフトウェアモジュールは、コンパイルされて、ダイナミックリンクライブラリにインストールされている実行可能プログラムにリンクされ、または、たとえば、BASIC、Perl、Lua、またはPythonのような解釈プログラミング言語で書かれてもよい。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールからまたはそれら自身から呼び出し可能と、検出されたイベントまたは割込みに応答して呼び出される、の少なくとも一方であってもよいことが理解されるであろう。ソフトウェア命令は,EPROMのようなファームウェアに埋め込まれてよい。ハードウェアモジュールは、ゲートとフリップフロップのような接続された複数のロジックユニットと、プログラマブルゲートアレイまたはプロセッサのような複数のプログラマブルユニット、の少なくとも一方からなっていてもよいことがさらに理解されるであろう。ここに記載されたモジュールはソフトウェアモジュールとして実施されるのが望ましいが、ハードウェアまたはファームウェアで表現されてもよい。一般に、ここに記載されたモジュールは、その物理的機構または記憶装置にも関わらず、他のモジュールに組み合わせることができ、または複数のサブモジュールに分割されてもよい。
【0117】
ある一定の実施形態では、ここに記載された動作、方法、プロセスは、1つまたは複数の汎用コンピュータまたは他のコンピュータシステムによって実行されるソフトウェアモジュール(プログラム)内で、または該ソフトウェアモジュール(プログラム)を用いて実施される。ソフトウェアモジュールは、何らかの適切な、コンピュータ読出し可能な媒体上またはその中に格納されてよい。代わりに、様々なステップが全部または一部、特別に指定されたハードウェア内で実施されてもよいことが理解されるべきである。当業者は、全ての計算、解析、最適化の少なくともいずれかがコンピュータの使用を必要としているわけではないが、上記した方法、計算、または分析のあるものはコンピュータの使用によって容易になることがわかるであろう。
【0118】
特に、「できる(can)」、「でありうる(could)」、「かもしれない(might)」、「してもよい(may)」のような条件付言語は通常、特に指示がない限り、または使用される文脈の中で他に理解されない限り、ある一定の実施形態は幾つかの特徴、要素、ステップの少なくともいずれかを含み、他の実施形態は、これらを含まないことを伝えることが意図されている。したがって、そのような条件付言語は一般に、特徴、要素、ステップの少なくともいずれかが1つまたは複数の実施形態では決して必要ないこと、または1つまたは複数の実施形態が、これらの特徴、要素、ステップの少なくともいずれかが特定の実施形態に含まれ、実行されるべきであるかどうかを、ユーザ入力または要求の有り無しに判定するロジックを必ず含んでいることを暗示することが意図されている。
【0119】
本発明を、ある好適な実施形態および例との関連で、そして内部照明器、たとえば、LEDの照明光源を有する内部照明器との使用との関連で開示したが、本発明は、特別に開示された実施形態を越えて、他の代わりの実施形態と本発明の使用の少なくとも一方、明らかな修正、そしてその等価物に拡張されることが当業者によって理解されるであろう。さらに、本発明の幾つかの変形例を示し、詳細に記載したが、本発明の範囲内にある他の修正が、この開示に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。様々な組み合わせ、特定の複数の特徴と実施形態の態様の副組み合わせがなされてもよく、依然として1つまたは複数の本発明の範囲内にあることも意図される。したがって、開示された実施形態の様々な特徴および態様が、開示された発明の様々なモードを構成するために、組み合わせることができ、または互いに置換えられてもよいことが理解されるべきである。このように、ここに開示された本発明の範囲は、上記した特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図されている。
図1
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図5
図6
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14A
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図16
図17
図18
図19
図20
図21