【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明の熱変色性筆記具は、内部に熱変色性インキを収容した筆記体を軸筒内に収容し、前記軸筒に設けた操作体を操作して前記筆記体を前後方向に移動させ、前記筆記体のペン先を筆記具の先端から出没可能に構成した熱変色性筆記具であって、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な摩擦部と、少なくとも一の前記操作体としてのクリップ体とを備え、前記摩擦部を前記軸筒の後端に設けるとともに、前記軸筒における後端以外の部位に前記クリップ体を設けた構成としてある。
【0011】
上記構成によれば、摩擦部を、クリップ体(操作体)から独立させて軸筒の後端に設けたことにより、摩擦操作時に、摩擦部が後方へ移動することがなく、摩擦部を用いた摩擦操作が安定したものとなる。また、ペン先出没の操作をするときに摩擦部に触れる必要がないので、摩擦部が手垢等で汚れることを回避できる。
【0012】
好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記操作体として単一の前記クリップ体のみを備え、単一の前記クリップ体を操作することにより、前記筆記体のペン先を突出状態及び没入状態にすることが可能な構成とする。
【0013】
上記構成によれば、ペン先出没の操作を単一のクリップ体で行うことができ、軸筒に複数の操作体(即ち複数の突出部分)を設ける必要がなくなる。さらに、操作体であるクリップ体は、ポケット等に挟持可能なクリップを兼ねるので、外観上、操作体としての突出部分をなくすことができ、熱変色性筆記具のデザイン上の自由度を増大させ、スマートな外観を得ることができる。
【0014】
上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒が、互いに連結可能な複数の部品からなる構成としてもよく、この場合に、前記軸筒の後端を含む部分が前記部品としての後軸からなり、前記後軸の後端部に前記摩擦部を設けた構成としてもよい。すなわち、本熱変色性筆記具を構成する軸筒は、一本の筒状体であってもよいし、複数の部品を互いに連結させて一本の筒状体となるものでもよい。
【0015】
好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒の側壁に前後方向に延びるスライド孔を設け、前記スライド孔に配設した前記クリップ体を前方へスライド操作することで、前記筆記体のペン先を没入状態から突出状態にする出没機構を備えた構成とする。
【0016】
上記構成によれば、クリップ体を前方へスライド操作することで、ペン先を突出状態及び没入状態にすることができ(いわゆるダブルノック式の出没機構)、操作方法が簡単であり、ユーザーが操作方法を容易に習得できる。
【0017】
好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒が、互いに連結可能な二以上の部品からなり、前記軸筒を構成する二つの前記部品の各側壁に、前端又は後端が開放され且つ前後方向に延びる第1又は第2の長孔をそれぞれ設け、二つの前記部品を連結したときに、前記第1及び第2の長孔が、互いに連通して前記スライド孔を形成する構成とする。
【0018】
上記構成によれば、例えば、後方に開放された第1の長孔と、前方に開放された第2の長孔とでスライド孔を形成した場合は、軸筒を構成する二つの部品を連結する際(即ちスライド孔を形成する際)に、第1及び第2の長孔の開放端を介して、クリップ体の取付部分をスライド孔に容易に挿入することができ、クリップ体と軸筒とを効率よく組み立てることが可能となる。
【0019】
好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒を構成する二つの前記部品の各側壁を、互いに径方向に重なるように連結し、前記第1及び第2の長孔が、互いに径方向に重なった状態で連通して前記スライド孔を形成する構成とする。
【0020】
上記構成によれば、第1及び第2の長孔を、互いに径方向に重なった状態で連通させたことにより、軸筒全体が不必要に長くなることを回避できる。すなわち、第1及び第2の長孔の重複部分はスライド孔の全長に影響を与えないのである。尚、「径方向に重なる」の構成については、後に具体例を挙げて詳述する。
【0021】
より好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒を構成する一の前記部品に設けた前記第1の長孔に前記クリップ体の基部を挿入する工程と、前記軸筒を構成する他の前記部品に設けた前記第2の長孔に前記クリップ体の基部を挿入しつつ、他の前記部品を一の前記部品に連結させ、前記第2の長孔を前記第1の長孔に連通させて前記スライド孔を形成する工程と、を経て前記クリップ体を前記スライド孔に組み付けた構成とする。
【0022】
上記構成によれば、クリップ体をスライド孔に容易に挿入できることに加え、第1の長孔に挿入したクリップ体の基部をガイドにして、第1及び第2の長孔の位置合わせと、一の部品と他の部品の連結とを簡単に行うことができるようになる。
【0023】
好ましくは、上述した本発明の熱変色性筆記具において、前記出没機構としてのカム機構を前記軸筒内に備え、前記カム機構には、交互に前後方向の異なる位置で係合可能なカム部及び突起を含み、前記クリップ体を前方へスライド操作することにより、前記カム部及び前記突起を交互に前後方向の異なる位置で係合させ、前記筆記体のペン先を交互に突出状態又は没入状態にする構成とする。
【0024】
より好ましくは、前記出没機構として、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯及びカム溝と、前記筆記体の後方に回転可能に配置され、前記カム歯又は前記カム溝に交互に係合可能な複数の突条を有する回転部材と、前記クリップ体に設けられ、前記回転部材を回動させる複数の他のカム歯と、前記筆記体を後方に付勢する弾発体と、を前記軸筒内に備え、前記弾発体の付勢力に抗して、前記クリップ体を前方へスライド操作することにより、前記突条を前記カム歯又は前記カム溝に交互に係合させ、前記筆記体のペン先を交互に突出状態又は没入状態にする構成としてもよい。
【0025】
このような構成によれば、カム機構を利用して、クリップ体を前方にスライド操作するだけでペン先を突出状態及び没入状態にすることができるダブルノック式の出没機構を構成することができ、本熱変色性筆記具の操作方法が極めて簡単となり、ユーザーが操作方法を容易に習得できるようになる。
【0026】
好ましくは、上述した本熱変色性筆記具の出没機構において、前記クリップ体が、前記軸筒内に収容され且つ前後方向に延びる軸部を有し、前記軸部と前記回転部材とが、前後方向のあそびを有する状態で互いに係止される構成とする。
【0027】
このような構成によれば、クリップ体の軸部と回転部材とが、前後方向のあそびを有した状態で係止されることにより、ペン先の突出状態(すなわち、カム歯と突条が前方で係合している場合)において、スライド孔の前方に移動したクリップ体の後方への移動が阻止される。その結果、ペン先の突出状態において摩擦操作を行う場合に、クリップ体の近傍を把持したとしても、クリップ体が不用意に移動することがなく、安定した摩擦操作が可能となる。
【0028】
好ましくは、上述した本熱変色性筆記具の出没機構において、前記スライド孔より前方の前記軸筒の外面に、前後方向に延びるガイド溝を形成し、前記クリップ体の前部内面に玉部を突設し、前記クリップ体の前後方向の移動に伴って、前記玉部が前記ガイド溝内を前後方向に摺動する構成とする。
【0029】
上記構成によれば、クリップ体をスライド操作するときに、玉部がガイド溝に沿って摺動してクリップ体を前後方向にガイドするので、クリップ体の横方向(周方向)のぐらつきを防止することができる。また、衣類のポケットや手帳等の被挟持物をクリップ体に挟持させるときに、被挟持物が玉部とガイド溝との間に挟まれるので、クリップ体の挟持性能が向上する。
【0030】
好ましくは、上述した本熱変色性筆記具の出没機構において、前記摩擦部が弾性材料からなり、前記摩擦部の一部がペン先没入状態のクリップ体に当接してなる構成とする。
【0031】
上記構成によれば、ペン先を突出状態からペン先没入状態にするときに、スライド溝の後方に移動したクリップ体が弾性材料からなる摩擦部に当接するので、このときに筆記体に加わる衝撃を緩和することができる。その結果、筆記体内のインキの逆流等やペン先からの空気の混入を防止することが可能となる。
【0032】
上述した本熱変色性筆記具の出没機構において、前記摩擦部が弾性材料からなり、前記軸筒の後端又は前記後軸の後端部に圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形によって固着し、又は前記軸筒の全体もしくは前記後軸の全体を、前記摩擦部としての弾性材料で形成した構成とする。
【0033】
上記構成によれば、軸筒の後端に摩擦部を十分強固に固定することができ、摩擦操作時に、摩擦部が後方へ移動したり、脱落したりすることがなく、摩擦部を用いた摩擦操作が安定したものとなる。
【0034】
以下、上述した本発明のより具体的な実施の形態<1>〜<7>について、
図1〜35の符号を引用して説明する。
【0035】
<1>第1の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、筆記体9の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体9の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先91を設け、軸筒2内に前記筆記体9を後方に付勢された状態で前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体9のペン先91を軸筒2の前端孔31から出没可能に構成した熱変色性筆記具であって、前記軸筒2の側壁に前後方向に延びるスライド孔21を設け、前記スライド孔21から径方向外方にクリップ体7を突出させ、前記クリップ体7を前記スライド孔21に沿って前後方向に移動可能に構成し、ペン先没入状態からクリップ体7を前方にスライド操作することによりペン先91を軸筒2の前端孔31から突出状態にし、ペン先突出状態からクリップ体7を操作することによりペン先91を没入状態にする出没機構を備え、前記軸筒2の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な摩擦部10を設けた構成となっている。
【0036】
前記第1の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記摩擦部10を軸筒2の後端に設けたことにより、摩擦操作時、摩擦部10の後への移動が阻止されるため、摩擦部10を用いて安定した摩擦操作が可能となる。また、前記第1の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、ペン先出没の操作をするための操作部をクリップ体7に設け、摩擦部10をクリップ体7(操作部)から独立させたことにより、ペン先91を出没する際、クリップ体7を操作し、摩擦部10を操作しないため、摩擦部10が手垢等で汚れることを回避できる。また、前記第1の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、軸筒2外面にクリップ体7を設けたにもかかわらず、従来の多芯タイプのサイドスライド式の熱変色性筆記具に比べ、突出部分が少なく、外観デザイン上の自由度が増加し、スマートな外観を得ることができる。
【0037】
尚、本発明において、前記クリップ体7は、軸筒2外面との間において衣類のポケットや手帳等の被挟持物に挟持可能なものである。尚、本発明において、前記摩擦部10は、少なくとも摩擦操作時に、前記摩擦部10を軸筒2の後端に固定する構成であればよく、例えば、摩擦部10が、ペン先出没操作以外の操作により軸筒2後端より出没する構成であってもよい。尚、本発明において、ペン先突出状態からクリップ体7を操作するとは、ペン先突出状態を解除する操作であり、例えば、クリップ体7を前方にスライド操作すること、クリップ体7を径方向内方に押圧操作すること、またはクリップ体7を回転操作すること等が挙げられる。尚、本発明で、摩擦操作時とは、摩擦部10を用いて摩擦操作する時をいう。前記摩擦操作時において、ペン先突出状態またはペン先没入状態のいずれであってもよい。
【0038】
<2>第2の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第1の発明の筆記具1において、前記出没機構が、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構であり、軸筒2内面に形成されたカム部41と、該カム部41に係合し且つ筆記体9の後端に当接する回転部材6と、該回転部材6に係合するカム歯73a,74aを備えた前記クリップ体7と、前記軸筒2内に収容され且つ筆記体9を後方に付勢する弾発体8とからなり、ペン先突出操作及びペン先没入操作の何れもがクリップ体7を前方にスライド操作するタイプである構成となっている。
【0039】
前記第2の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、出没機構が、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構であり、ペン先突出操作及びペン先没入操作の何れもがクリップ体7を前方にスライド操作するタイプ(いわゆるダブルノック式の出没機構)であるため、操作方法が簡単であり、ユーザーが操作方法を容易に習得できる。
【0040】
<3>第3の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第1または第2の発明の熱変色性筆記具1において、前記軸筒2が、前軸3と、該前軸3の後端部に連結される中間軸4と、該中間軸4の後端部に連結される後軸5とからなり、前記前軸3の前端にペン先91が出没可能な前端孔31を設け、前記中間軸4の内面にカム部41を設け、中間軸4の後端部に、後方に開放され且つ前後方向に延びる第1の長孔44を設け、前記後軸5の前端部に、前方に開放され且つ前後方向に延びる第2の長孔51を設け、前記中間軸4の後端部と前記後軸5の前端部とを、第1の長孔44と第2の長孔51とが連通するよう連結し、前記第1の長孔44と前記第2の長孔51とにより軸筒2の側壁に前記スライド孔21を形成し、前記後軸5の後端外面に摩擦部10を固定した構成となっている。
【0041】
前記第3の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、後方に開放された第1の長孔44と前方に開放された第2の長孔51とによりスライド孔21を形成したことによって、前記中間軸4と前記後軸5とを連結する際(即ちスライド孔21を形成する際)に、クリップ体7を第1の長孔44と第2の長孔51とに挿入でき、クリップ体7をスライド孔21に容易に挿入することができ、クリップ体7と軸筒2との容易な挿入組立が可能となる。
【0042】
<4>第4の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第3の発明の熱変色性筆記具1において、前記中間軸4の側壁と前記後軸5の側壁とを互いに径方向に重なるように連結し、前記第1の長孔44と前記第2の長孔51とを径方向に連通させた構成となっている。
【0043】
前記第4の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記中間軸4の側壁と前記後軸5の側壁とを互いに径方向に重なるように連結し、前記第1の長孔44と前記第2の長孔51とを径方向に連通させたことにより、軸筒2全体が不必要に長くなることを回避できる。尚、本発明で、前記中間軸4の側壁と前記後軸5の側壁とを互いに径方向に重なるように連結するとは、例えば、中間軸4の側壁外面と後軸5の側壁内面とを径方向に重なるように連結(例えば嵌合や螺合)させる構成、または、中間軸4の側壁内面と後軸5の側壁外面とを径方向に重なるように連結(例えば嵌合や螺合)させる構成が挙げられる。前記中間軸4の側壁と前記後軸5の側壁とを互いに径方向に重なるように連結する構成は、少なくとも、前記中間軸4の側壁の一部と前記後軸5の側壁の一部とが互いに径方向に重なるように連結する構成であればよい。
【0044】
<5>第5の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第2、第3または第4の発明の熱変色性筆記具1において、前記クリップ体7が、前記軸筒2内に収容され且つ前後方向に延びる軸部73を有し、前記軸部73と前記回転部材6とが、互いに回転可能且つ互いに前後方向のあそびを有した状態で前後方向に係止される構成となっている。
【0045】
前記第5の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記クリップ体7が、前記軸筒2内に収容され且つ前後方向に延びる軸部73を有し、前記軸部73と前記回転部材6とが、互いに回転可能且つ互いに前後方向のあそびを有した状態で前後方向に係止されることにより、ペン先突出状態において、回転部材6がカム部41のカム歯41aに係止され、回転部材6の後方移動が阻止されるとともに、クリップ体7の不用意な前後方向の移動が抑えられる。その結果、ペン先突出状態でクリップ体7の近傍を把持しても、安定した摩擦操作が可能となる。
【0046】
<6>第6の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第1乃至第5の発明の何れかの熱変色性筆記具1において、前記スライド孔21より前方の前記軸筒2の外面に、前後方向に延びるガイド溝48を形成し、前記クリップ体7の前部内面に玉部71aを突設し、前記クリップ体7の前後方向の移動に伴って前記ガイド溝48内を前記玉部71aが前後方向に摺動する構成となっている。
【0047】
前記第6の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記スライド孔21より前方の前記軸筒2の外面に、前後方向に延びるガイド溝48を形成し、前記クリップ体7の前部内面に玉部71aを突設し、前記クリップ体7の前後方向の移動に伴って前記ガイド溝48内を前記玉部71aが前後方向に摺動することにより、クリップ体の挟持性能が向上するとともにクリップ体7の横方向(周方向)のぐらつきを防止できる。
【0048】
<7>第7の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記第1乃至第6の発明の何れかの熱変色性筆記具1において、前記摩擦部10が弾性材料からなり、前記摩擦部10の一部がペン先没入状態のクリップ体7に当接してなる構成となっている。
【0049】
前記第7の実施の形態に係る熱変色性筆記具1は、前記摩擦部10が弾性材料からなり、前記摩擦部10の一部がペン先没入状態のクリップ体7に当接してなることにより、ペン先突出状態からペン先没入状態にする際、弾発体8の後方付勢により筆記体9及びクリップ体7が後方移動し、クリップ体7と弾性材料よりなる摩擦部10とが当接するため、その際に筆記体9に加わる衝撃を緩和できる。その結果、筆記体9内のインキの逆流等やペン先91からの空気の混入を防止できる。