(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)SEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含み、かつ、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)5-フルオロウラシル(5-FU)を含む化学療法剤とを含む、薬学的組成物。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、変異ヒトアクチビン受容体IIB(vActRIIBまたはsActRIIBという)ポリペプチドを含む単離されたタンパク質を提供する。本明細書において使用する場合、vActRIIBポリペプチドという用語は、ヒトvActRIIBポリペプチドとヒトvActRIIB5ポリペプチドの両方を指す。一態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:2または18のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、該アミノ酸配列において位置E28またはR40のどちらか一方または位置E28およびR40の両方にあるアミノ酸が、別の非天然アミノ酸で置換されており、かつ、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。一態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:2または18のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、該アミノ酸配列において位置E28もしくはR40またはE28とR40の両方にあるアミノ酸が非天然アミノ酸で置換されており、シグナルペプチドは除去されており、かつ、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。一態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:2または18のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、該アミノ酸配列において位置E28もしくはR40またはE28とR40の両方にあるアミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、シグナル配列が除去され、かつ、成熟ポリペプチドのN末端が切断されており、かつ、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。一態様では、N末端成熟切断型vActRIIBポリペプチドが、成熟配列のN末端の4アミノ酸またはN末端の6アミノ酸を欠いており、ポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。一態様では、位置E28における置換が、W、YおよびAからなる群より選択される。さらなる態様では、位置E28における置換が、A、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される。さらなる態様では、位置R40における置換が、G、Q、M、H、K、およびNからなるアミノ酸の群より選択される。さらなる態様では、位置E28における置換が、A、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択され、かつ、位置R40における置換が、A、G、Q、M、H、K、およびNからなるアミノ酸の群より選択される。さらなる態様では、ポリペプチドが異種タンパク質をさらに含む。一態様では、異種タンパク質がFcドメインである。さらなる態様では、FcドメインがヒトIgG Fcドメインである。
【0014】
一態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、70、72、87、88、91、93、95、および97に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0015】
別の態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、96に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補体によってコードされるポリペプチドを含む。
【0016】
別の局面において、本発明は、vActRIIBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。一態様では、核酸分子が、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、69、71、92、94、96に示す核酸配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補体を含む。
【0017】
別の態様では、核酸分子が、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97からなる群に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる態様では、核酸分子が、転写または翻訳調節配列をさらに含む。別の局面では、vActRIIB核酸分子を含む組換えベクターが提供される。別の局面では、組換えベクターを含む宿主細胞が提供され、かつ、vActRIIBポリペプチドを産生する方法が提供される。
【0018】
本発明はさらに、本発明のvActRIIBポリペプチドまたはタンパク質の少なくとも一つを含有する組成物を提供する。一態様では、組成物が、薬学的に許容される担体と混合されたvActRIIBポリペプチドまたはタンパク質を含有する薬学的組成物である。
【0019】
別の局面において、本発明は、そのような障害を患っている対象に、vActRIIBポリペプチドまたはタンパク質を含有する治療組成物を投与することによって、該対象において筋消耗性疾患を処置または予防する方法を提供する。筋消耗性疾患には以下の状態が含まれるか、または筋消耗性疾患は以下の状態に起因する:がん悪液質、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、うっ血性閉塞性肺疾患(congestive obstructive pulmonary disease)、慢性心不全、化学悪液質、HIV/AIDSによる悪液質、腎不全、尿毒症、関節リウマチ、加齢性筋減少症、加齢性虚弱、器官萎縮、手根管症候群、アンドロゲン欠乏、ならびに長期床上安静、脊髄傷害、脳卒中、骨折、および加齢による不動ゆえの筋消耗。筋消耗は、宇宙飛行による無重力状態、インスリン抵抗性、熱傷による筋消耗、アンドロゲン欠乏、および他の障害にも起因しうる。別の局面において、本発明は、アクチビンAの発現と相関する疾患を処置する方法を提供する。一態様では、疾患ががんである。別の局面において、本発明は、代謝障害を処置する方法を提供し、該方法は、そのような処置を必要とする対象に治療組成物を投与する段階を含み、該代謝障害が、骨量減少、糖尿病、肥満、耐糖能異常、高血糖、アンドロゲン欠乏、およびメタボリック症候群から選択される。別の局面において、本発明は、それを必要とする対象に本発明のvActRIIBポリペプチドまたはタンパク質をコードするベクターを投与する段階を含む、遺伝子治療の方法を提供し、該ベクターは、該対象において該vActRIIBポリペプチドまたはタンパク質を発現することができる。
【0020】
別の態様では、(i)位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)化学療法剤とを含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物の変異アクチビンIIB受容体は、vActRIIBポリペプチドの位置28に、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される置換を有することができる。別の態様では、vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択されるか、またはvActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである。さらに別の態様では、vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている。さらに別の態様では、医薬が、薬学的に許容される担体、化学療法剤、およびアクチビンIIB受容体ポリペプチド変異体も含む。
【0021】
別の局面では、薬学的組成物の化学療法剤がヌクレオシド類似体である。別の態様において、化学療法剤は5-フルオロウラシルまたはダカルバジンであることができる。
【0022】
別の態様では、そのような処置を必要とする対象においてミオスタチン活性を阻害する方法が提供され、該方法は、(i)位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)化学療法剤とを含む薬学的組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含む。薬学的組成物の変異アクチビンIIB受容体は、vActRIIBポリペプチドの位置28に、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される置換を有することができる。別の態様では、vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択されるか、またはvActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである。さらに別の態様では、vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている。
【0023】
別の局面では、そのような処置を必要とする対象において、アクチビンが過剰発現している疾患を処置する方法が提供され、該方法は、(i)位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)化学療法剤とを含む組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含む。薬学的組成物の変異アクチビンIIB受容体は、vActRIIBポリペプチドの位置28に、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される置換を有することができる。別の態様では、vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択されるか、またはvActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである。さらに別の態様では、vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている。
【0024】
本発明の一局面では、上記の方法を使ってがんを処置することができる。がんは、精巣がん、卵巣がんまたは黒色腫であることができる。
【0025】
別の態様では、そのような処置を必要とする対象において腫瘍塊のサイズを縮小させる方法が提供され、該方法は、(i)位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)化学療法剤とを含む薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む。薬学的組成物の変異アクチビンIIB受容体は、vActRIIBポリペプチドの位置28に、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される置換を有することができる。別の態様では、vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択されるか、またはvActRIIBポリペプチドの位置28における置換はWである。さらに別の態様では、vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている。腫瘍塊は、精巣がんもしくは卵巣がんまたは黒色腫に起因するものであることができる。
【0026】
さらに別の態様では、そのような処置を必要とする対象において黒色腫を処置する方法も提供され、該方法は、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)を含む薬学的組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含み、該ポリペプチドは、位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、該ポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。
【0027】
別の態様では、そのような処置を必要とする対象において、血管新生因子の過剰発現を有する状態を処置する方法が提供され、該方法は、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)を含む薬学的組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含み、該ポリペプチドは、位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、該ポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる。状態はがんであることができ、がんは卵巣がんであることができる。VEGF-AまたはAng-1は過剰発現していてもよい。
[本発明1001]
(i)SEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含み、かつ、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)5-フルオロウラシル(5-FU)を含む化学療法剤とを含む、薬学的組成物。
[本発明1002]
(i)位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、かつ、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)と、(ii)化学療法剤とを含む、薬学的組成物。
[本発明1003]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される、本発明1001または1002の薬学的組成物。
[本発明1004]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される、本発明1001〜1003のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1005]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである、本発明1001〜1004のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1006]
ポリペプチドが、SEQ ID NO:91のポリペプチド配列を含むか、またはポリペプチドが、SEQ ID NO:91のポリペプチド配列からなる、本発明1001〜1005のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1007]
前記vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている、本発明1001〜1006のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1008]
前記化学療法剤がヌクレオシド類似体である、本発明1001〜1007のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1009]
前記化学療法剤が5-フルオロウラシルである、本発明1001〜1008のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1010]
前記化学療法剤がダカルバジンである、本発明1001〜1009のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1011]
薬学的に許容される賦形剤を含む、本発明1001〜1010のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1012]
そのような処置を必要とする対象においてアクチビン活性を阻害する方法であって、本発明1001〜1011のいずれかの組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含む、方法。
[本発明1013]
投与によって、リン酸緩衝食塩水(PBS)を投与した対照対象と比較した前記対象における血管新生因子の発現レベルの減少がもたらされる、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、Ang-1、エンドグリン、オステロポンチン(osteropontin)、IGFBP-1、またはIGFBP-2である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるカスパーゼ3活性化の増加がもたらされる、本発明1012〜1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1012〜1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
そのような処置を必要とする対象においてアクチビンが過剰発現している疾患を処置する方法であって、本発明1001〜1011のいずれかの組成物の治療有効量を該対象に投与する段階を含む、方法。
[本発明1018]
前記疾患ががんである、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記疾患が、性腺がん、精巣がん、卵巣がん、皮膚がん、または黒色腫である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
投与によって、リン酸緩衝食塩水(PBS)を投与した対照対象と比較した前記対象における血管新生因子の発現レベルの減少がもたらされる、本発明1017〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、Ang-1、エンドグリン、オステロポンチン、IGFBP-1、またはIGFBP-2である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるカスパーゼ3活性化の増加がもたらされる、本発明1017〜1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1017〜1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるがん細胞のアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1017〜1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
そのような処置を必要とする対象において腫瘍塊のサイズを縮小させる方法であって、本発明1001〜1011のいずれかの組成物の有効量を該対象に投与する段階を含む、方法。
[本発明1026]
前記腫瘍塊が、性腺がん、精巣がん、卵巣がん、皮膚がん、または黒色腫に起因している、本発明1025の方法。
[本発明1027]
そのような処置を必要とする対象に組成物の治療有効量を投与する段階を含む、該対象において性腺がん、精巣がん、卵巣がん、皮膚がん、または黒色腫を処置する方法であって、該組成物が、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)を含み、該ポリペプチドが、位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、かつ、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、方法。
[本発明1028]
前記がんが卵巣がんである、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される、本発明1027または1028の方法。
[本発明1030]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される、本発明1027〜1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである、本発明1027〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
ポリペプチドが、SEQ ID NO:91のポリペプチド配列を含む、本発明1027〜1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている、本発明1027〜1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
投与によって、リン酸緩衝食塩水(PBS)を投与した対照対象と比較した前記対象における血管新生因子の発現レベルの減少がもたらされる、本発明1027〜1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、Ang-1、エンドグリン、オステロポンチン、IGFBP-1、またはIGFBP-2である、本発明1034の方法。
[本発明1036]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるカスパーゼ3活性化の増加がもたらされる、本発明1027〜1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1027〜1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるがん細胞のアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1027〜1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
そのような処置を必要とする対象に、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)を含む薬学的組成物の治療有効量を投与する段階を含む、該対象において黒色腫を処置する方法であって、該ポリペプチドが、位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、方法。
[本発明1040]
そのような処置を必要とする対象に、変異アクチビンIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)を含む薬学的組成物の治療有効量を投与する段階を含む、該対象において血管新生因子の過剰発現を有する状態を処置する方法であって、該ポリペプチドが、位置28における1アミノ酸置換以外はSEQ ID NO:18のポリペプチド配列を含み、該ポリペプチドが、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、方法。
[本発明1041]
前記状態ががんである、本発明1040の方法。
[本発明1042]
前記がんが卵巣がんである、本発明1041の方法。
[本発明1043]
VEGF-AまたはAng-1が過剰発現している、本発明1040〜1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、F、Q、V、I、L、M、K、H、W、およびYからなる群より選択される、本発明1040〜1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換が、Eの代わりにA、W、およびYからなるアミノ酸の群より選択される、本発明1040〜1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記vActRIIBポリペプチドの位置28における置換がWである、本発明1040〜1045のいずれかの方法。
[本発明1047]
ポリペプチドが、SEQ ID NO:91のポリペプチド配列を含む、本発明1040〜1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
前記vActRIIBポリペプチドがN末端シグナル配列を欠いている、本発明1040〜1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
投与によって、リン酸緩衝食塩水(PBS)を投与した対照対象と比較した前記対象における血管新生因子の発現レベルの減少がもたらされる、本発明1040〜1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、Ang-1、エンドグリン、オステロポンチン、IGFBP-1、またはIGFBP-2である、本発明1049の方法。
[本発明1051]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるカスパーゼ3活性化の増加がもたらされる、本発明1040〜1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1040〜1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
投与によって、PBSを投与した対照対象と比較した前記対象におけるがん細胞のアポトーシスの増加がもたらされる、本発明1040〜1052のいずれかの方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
変異ヒトアクチビンIIB受容体(vActRIIB;sActRIIBともいう)ポリペプチドを含むタンパク質を開示する。これらのタンパク質およびポリペプチドは、3つのTGF-βタンパク質、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビンA、およびGDF-11の少なくとも一つに結合し、これらのタンパク質の活性を阻害するその能力を特徴とする。これらのタンパク質およびポリペプチドは、本明細書において開示する修飾を含有しないポリペプチドと比較して、低下した凝集傾向も呈する。修飾は、アクセッション番号NP_001097の野生型ActRIIB(SEQ ID NO:47)およびActRIIBの細胞外ドメイン(SEQ ID NO:18)またはActRIIB5の細胞外ドメイン(SEQ ID NO:2)を基準として、位置28、40、または28と40の両方におけるアミノ酸置換からなる。
【0030】
本明細書において使用する場合、「TGF-βファミリーメンバー」または「TGF-βタンパク質」という用語は、アクチビンおよび増殖分化因子(GDF)タンパク質を含むトランスフォーミング成長因子ファミリーの構造的に関連する成長因子を指す(Kingsley et al. Genes Dev. 8:133-146 (1994)、McPherron et al. Growth factors and cytokines in health and disease, Vol. 1B, D. LeRoith and C.Bondy. ed., JAI Press Inc., Greenwich, Conn, USA: pp 357-393)。
【0031】
GDF-8は、ミオスタチンとも呼ばれ、骨格筋組織の負の調節因子である(McPherron et al. PNAS USA 94:12457-12461 (1997))。ミオスタチンは、ヒトの場合はGenBankアクセッション番号AAB86694(SEQ ID NO:49)を持つ約375アミノ酸長の不活性タンパク質複合体として合成される。前駆体タンパク質は、四塩基性プロセシング部位におけるタンパク質分解的切断によって活性化されて、N末端不活性プロドメインと、二量体化して約25kDaのホモ二量体を形成する約109アミノ酸のC末端タンパク質とを生じる。このホモ二量体が生物学的に活性な成熟タンパク質である(Zimmers et al., Science 296, 1486 (2002))。
【0032】
本明細書において使用する場合、「プロドメイン」または「プロペプチド」という用語は、活性なC末端タンパク質を遊離させるために切り離される不活性N末端タンパク質を指す。本明細書において使用する場合、「ミオスタチン」または「成熟ミオスタチン」という用語は、単量体型、二量体型またはその他の形態の生物学的に活性な成熟C末端ポリペプチド、ならびに生物学的に活性なフラグメントまたは関連ポリペプチド、例えばアレル変異体、スプライス変異体、ならびに融合ペプチドおよび融合ポリペプチドなどを指す。成熟ミオスタチンは、ヒト、マウス、ニワトリ、ブタ、シチメンチョウ、およびラットを含む多くの種間で100%の配列同一性を有すると報告されている(Lee et al., PNAS 98, 9306 (2001))。
【0033】
本明細書において使用する場合、GDF-11とは、Swissprotアクセッション番号O95390(SEQ ID NO:50)を有するBMP(骨形態形成タンパク質)、ならびに同タンパク質の変異体および種ホモログを指す。GDF-11は、アミノ酸レベルで、ミオスタチンに対して約90%の同一性を有する。GDF-11は、軸骨格の前方/後方パターン形成の調節に関与するが(McPherron et al., Nature Genet. 22 (93): 260-264 (1999)、Gamer et al., Dev. Biol. 208 (1), 222-232 (1999))、出生後の機能は知られていない。
【0034】
アクチビンAはポリペプチド鎖βAのホモ二量体である。本明細書において使用する場合、「アクチビンA」という用語は、GenBankアクセッション番号NM_002192(SEQ ID NO:48)を有するアクチビンタンパク質、ならびに同タンパク質の変異体および種ホモログを指す。
【0035】
アクチビン受容体
本明細書において使用する場合、アクチビンII型B受容体(ActRIIB)という用語は、アクセッション番号NP_001097(SEQ ID NO:47)を有するヒトアクチビン受容体を指す。可溶性ActRIIBという用語には、ActRIIBの細胞外ドメイン(SEQ ID NO:18)、ActRIIB5の細胞外ドメイン(SEQ ID NO:2)および位置64のアルギニンがアラニンで置換されているこれらの配列も包含される。
【0036】
可溶性変異ActRIIBポリペプチド
本発明は、可溶性のヒト変異ActIIB受容体ポリペプチド(本明細書では、vActRIIBポリペプチド、または変異ポリペプチドもしくはsActRIIBという)を含む単離されたタンパク質を提供する。本明細書において使用する場合、「vActRIIBタンパク質」という用語は、vActRIIBポリペプチドを含むタンパク質を指す。本明細書において使用する場合、「単離された」という用語は、内在性物質からある程度精製されたタンパク質またはポリペプチド分子を指す。これらのポリペプチドおよびタンパク質は、アクチビンA、ミオスタチン、またはGDF-11のいずれか一つを結合させて、それらの活性を阻害する能力を有すると特徴決定される。いくつかの態様では、アクチビンA、ミオスタチン、またはGDF-11に対する変異ポリペプチドの結合アフィニティが、野生型ポリペプチドと比較して改善される。
【0037】
一態様において、vActRIIBポリペプチドは、位置E28またはR40のどちらか一方、または位置E28とR40の両方にあるアミノ酸が別の非天然アミノ酸で置換されており、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させることができる、SEQ ID NO:2または18のアミノ酸配列を有する。別の態様では、vActRIIBポリペプチドが、これらの配列の成熟型または切断成熟型である。本明細書において使用する場合、「成熟vActRIIBポリペプチド」という用語は、アミノ酸シグナル配列が除去されているポリペプチドを指す。一態様では、成熟配列が、例えば、SEQ ID NO:2のアミノ酸19〜160、およびSEQ ID NO:18のアミノ酸19〜134であり、位置28および位置40にある一方または両方のアミノ酸が別の非天然アミノ酸で置換されており、ポリペプチドがアクチビンA、ミオスタチン、またはGDF-11に結合する能力を保っている。本明細書において使用する場合、切断型成熟vActRIIBポリペプチドという用語は、シグナル配列を有し、かつ成熟ポリペプチドのN末端からアミノ酸が除去されているポリペプチドを指す。一態様では、成熟N末端の4アミノ酸または成熟ポリペプチドのN末端の6アミノ酸が除去される。この態様では、切断型成熟配列が、例えば、位置28および位置40にある一方または両方のアミノ酸が非野生型アミノ酸で置換されているSEQ ID NO:2のアミノ酸23〜160、またはSEQ ID NO:2のアミノ酸25〜160、およびSEQ ID NO:18のアミノ酸23〜134、またはSEQ ID NO:18のアミノ酸25〜134であり、これらは、アクチビンA、ミオスタチン、またはGDF-11に結合する能力を保っている。本明細書において使用する場合、「位置28」および「位置 40」(すなわちE28およびR40)いう用語は、18アミノ酸のシグナル配列を含むSEQ ID NO:2および18の配列を基準としたアミノ酸位置を指す。一貫性を保つために、成熟または切断型成熟配列に関して、成熟vActRIIBポリペプチドが位置10および/もしくは位置22に置換を有するか、切断型成熟ポリペプチドが位置6および/もしくは位置18に置換を、または位置4および/または位置16に置換を有する場合、これらの変異体も、完全長SEQ ID NO:2および18に照らして、または
図1もしくは2に示すように、すなわち位置E28および/またはR40のアミノ酸置換と言及する。そのような成熟態様またはN末端切断型態様を以下に例示する。
【0038】
一態様では、位置E28における置換が、W、YおよびAからなるアミノ酸の群より選択される。一態様では、位置28の置換がWである。さらなる態様では、位置28の置換が、A、F、Q、V、I、L、M、K、H、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択される。さらなる態様では、位置40の置換が、G、Q、M、H、KおよびNからなるアミノ酸の群より選択される。さらなる態様では、位置28の置換が、A、F、Q、V、I、L、M、K、H、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択され、かつ位置40の置換が、A、G、Q、M、H、K、およびNからなるアミノ酸の群より選択される。一態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。別の態様では、タンパク質が、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、96からなる群に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補体によってコードされるポリペプチドを含む。
【0039】
一態様では、シグナル配列がvActRIIBポリペプチドから除去されて、成熟変異ポリペプチドが残る。本願のポリペプチドの調製には、さまざまなシグナルペプチドを使用することができる。シグナルペプチドは
図1および2に示す配列(SEQ ID NO:73)を有するか、またはSEQ ID NO:2および18のシグナル配列であるSEQ ID NO:74などの代替シグナル配列を有することができる。vActRIIBまたはvActRIIB5ポリペプチドを発現させるのに有用な他のシグナルペプチドはどれでも使用することができる。
【0040】
別の態様では、vActRIIBポリペプチドが、SEQ ID NO:2および18に実質的に類似している配列を有する。本明細書において使用する場合、「実質的に類似」という用語は、ポリペプチドが、SEQ ID NO:2および18に示すアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約98%の同一性、または少なくとも約99%の同一性を有し、位置28および/または40にある一方または両方のアミノ酸が非野生型アミノ酸で置換されており、該ポリペプチドが、SEQ ID NO:2および18のポリペプチドの活性、すなわちミオスタチン、アクチビンAまたはGDF-11を結合させてそれらを阻害する能力を保っていることを指す。加えて、vActRIIBポリペプチドという用語には、本明細書に記載する位置28および/または40の置換を含有するN末端およびC末端切断体などのSEQ ID NO:2または18のフラグメントであって、ミオスタチン、アクチビンAまたはGDF-11を結合させてそれらを阻害することができるフラグメントも包含される。
【0041】
本明細書において使用する場合、vActRIIBおよびvActRIIB5ポリペプチドの「誘導体」という用語は、グリコシル基、脂質、アセチル基、またはC末端もしくはN末端融合ポリペプチドなどの共有結合的または凝集的コンジュゲートを形成させるための少なくとも一つの追加化学部分または少なくとも一つの追加ポリペプチドの取り付け、PEG分子へのコンジュゲーション、および以下にさらに詳しく説明する他の修飾を指す。変異ActRIIB受容体ポリペプチド(vActRIIB)は、哺乳動物細胞、大腸菌(E. coli)、酵母および他の組換え宿主細胞などのさまざまな細胞タイプにおいて発現させることで、プロセシングによって生じる追加の修飾および誘導体、例えばC末端およびN末端への修飾も含むことができる。さらに、vActRIIBポリペプチドフラグメント、ならびにSEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97に示すポリペプチド配列の不活化N-グリコシル化部位、不活化プロテアーゼプロセシング部位、または保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドも含まれる。
【0042】
本明細書において使用する場合、「vActRIIBまたはvActRIIB5ポリペプチド活性」または「可溶性ActRIIBまたはActRIIB5ポリペプチドの生物学的活性」という用語は、vActRIIBおよびvActRIIB5ポリペプチドの一つまたは複数のインビトロまたはインビボ活性、例えば限定するわけではないが、後述の実施例で実証するものを指す。vActRIIBポリペプチドの活性には、ミオスタチンまたはアクチビンAまたはGDF-11に結合する能力、およびミオスタチンまたはアクチビンAまたはGDF-11の活性を減少させるかまたは中和する能力などがあるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において使用する場合、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11に「結合することができる」という用語は、当技術分野において公知の方法、例えば後述の実施例2に記載するBiacore法などによって測定される結合を指す。また、実施例2では、pMARE C2C12細胞ベースのアッセイ法によって、アクチビンA中和活性、ミオスタチン中和活性、およびGDF-11中和活性を測定する。インビボ活性には、後述の動物モデルで実証されるとおり、また当技術分野において公知であるとおり、体重を増加させること、除脂肪筋量を増加させること、骨格筋量を増加させること、脂肪量を減少させることなどがあるが、それらに限定されるわけではない。生物学的活性には、さらに、特定のタイプの腫瘍が引き起こす悪液質を減少させるかまたは防止すること、特定のタイプの腫瘍の成長を防止すること、および特定の動物モデルの生存時間を増加させることも含まれる。vActRIIBポリペプチド活性についてはさらに後述する。
【0043】
本発明のポリペプチドは、融合タンパク質が形成されるように直接またはリンカー配列を介してvActRIIBポリペプチドに取り付けられた異種ポリペプチドをさらに含む。本明細書において使用する場合、「融合タンパク質」という用語は、組換えDNA技法によって異種ポリペプチドが取り付けられているタンパク質を指す。異種ポリペプチドには、例えば参照により本明細書に組み入れられるWO 00/29581に記載されているように、Fcポリペプチド、Hisタグ、および変異ActRIIBポリペプチドのオリゴマー化および安定化を促進するためのロイシンジッパードメインなどがあるが、それらに限定されるわけではない。一態様では、異種ポリペプチドがFcポリペプチドまたはFcドメインである。一態様では、Fcドメインが、ヒトIgG1、IgG2、およびIgG4 Fcドメインから選択される。これらをSEQ ID NO:80、82および84に示す。vActRIIBは、各々のIgG Fc領域に隣接するIgG1、IgG2、またはIgG4のヒンジ配列の全部または一部を、さらに含むことができる。IgG1、IgG2、およびIgG4の全ヒンジ配列をそれぞれSEQ ID NO:76、77、および78に示す。
【0044】
vActRIIBポリペプチドは任意でさらに、「リンカー」配列を含むことができる。リンカーは、主として、ポリペプチドと第2の異種ポリペプチドまたは他のタイプの融合物との間のスペーサーとして、または2つもしくはそれ以上の変異ActRIIBポリペプチドの間のスペーサーとして役立つ。一態様では、リンカーが、ペプチド結合によって一つに連結されたアミノ酸、好ましくはペプチド結合によって連結された1〜20個のアミノ酸から構成され、アミノ酸は20種の天然アミノ酸から選択される。これらのアミノ酸のうち一つまたは複数は、当業者には理解されているとおり、グリコシル化されていてもよい。一態様では、該1〜20個のアミノ酸が、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。好ましくは、リンカーは、大部分が立体障害の少ないアミノ酸、例えばグリシンおよびアラニンなどから構成される。例示的なリンカーはポリグリシン(特に(Gly)5、(Gly)8、ポリ(Gly-Ala)、およびポリアラニンである。好適なリンカーの一例は、後述の実施例で示すように、(Gly)4Ser(SEQ ID NO:75)である。さらなる態様において、vActRIIBはヒンジリンカーを含むことができる。すなわち、SEQ ID NO:79に例示されるように、リンカー配列がヒンジ領域の隣に設けられる。
【0045】
リンカーは非ペプチドリンカーでもある。例えば、s=2〜20である-NH-(CH2)
s-C(O)-などのアルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、例えば低級アルキル(例えばC1〜C6)低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH2、フェニルなどの任意の非立体障害基で、さらに置換されていてもよい。
【0046】
一態様では、vActRIIBポリペプチドを、直接的に、またはリンカーを介して、またはヒンジリンカーを介して、Fcポリペプチドに取り付けることができる。一態様では、FcがヒトIgG Fcである。Fcに取り付けられたvActRIIBには、例えば表1および表2に示し、本明細書の実施例において述べるように、vActRIIB-IgG1Fc,E28A(SEQ ID NO:60)、vActRIIB-IgG1Fc,E28W(SEQ ID NO:62)、vActRIIB-IgG1Fc,E28Y(SEQ ID NO:64)、vActRIIB-IgG Fc,R40G(SEQ ID NO:66)、vActRIIB5-IgG1Fc,E28A(SEQ ID NO:70)、およびvActRIIB5-IgG1Fc E28W(SEQ ID NO:72)などがある。さらなる態様には、vActRIIB-IgG2 Fc,E28W(SEQ ID NO:91)、vActRIIB-IgG2 Fc,E28Y(SEQ ID NO:93)、およびvActRIIB-IgG2 Fc(SEQ ID NO:95)が含まれる。後述の実施例で実証するように、変異体は、野生型ActRIIB-IgG2 IgG2と比較して、凝集を生じにくいことが実証された。
【0047】
本明細書において開示するvActRIIBポリペプチドは、例えば、ActRIIBポリペプチドの分解を減少させかつ/または半減期を増加させること、毒性を減少させること、免疫原性を減少させること、および/または生物学的活性を増加させることなど、望ましい性質の付与を目的として、非ペプチド分子に取り付けることもできる。例示的な分子には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリジン、デキストランなどの線状ポリマー、脂質、コレステロール基(ステロイドなど)、糖質、またはオリゴ糖分子などがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
別の局面において、本発明は、本発明のvActRIIBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。本明細書において使用する場合、「単離された」という用語は、内在性物質からある程度精製された核酸分子を指す。一態様では、本発明の核酸分子が、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。複数のコドンが同じアミノ酸をコードすることができる遺伝暗号の公知の縮重ゆえに、DNA配列は、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、および96に示すもの、またはSEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、および96の相補鎖から変動することができ、それでもなお、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。そのような変異DNA配列は産生中に起こるサイレント突然変異に起因するか、またはこれらの配列の意図的突然変異誘発の産物であることができる。
【0049】
別の態様では、本発明の核酸分子が、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、および96に示すポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはSEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、および96の相補鎖を含む。別の態様において、本発明は、ストリンジェントな条件下または中等度の条件下で、SEQ ID NO:3、5、7、9、11、13、15、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、51、53、55、59、61、63、65、67、69、71、92、94、および96のポリペプチドコード領域とハイブリダイズする核酸分子であって、コードされるポリペプチドが、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97に示すアミノ酸配列を含み、コードされるポリペプチドがvActRIIBポリペプチドの活性を維持している、核酸分子を提供する。
【0050】
本発明の核酸分子には、一本鎖型、二本鎖型両方のDNA、ならびにそのRNA相補体が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、PCRによって増幅されたDNA、およびそれらの組み合わせが含まれる。ゲノムDNAは、従来の技法によって、例えばSEQ ID NO:1または17のDNAまたはその適切なフラグメントをプローブとして使用することなどによって、単離することができる。ActRIIBポリペプチドをコードするゲノムDNAは、いくつかの種について入手することができるゲノムライブラリーから得られる。合成DNAは、オーバーラップするオリゴヌクレオチドフラグメントを化学合成した後、そのフラグメントをアセンブルして、コード領域と隣接配列との一部または全部を再構成することによって、入手することができる。RNAは、mRNAの高レベル合成を指示する原核発現ベクター、例えばT7プロモーターを使ったベクターと、RNAポリメラーゼとから得ることができる。cDNAは、ActRIIBを発現するさまざまな組織から単離されたmRNAから調製されるライブラリーから得られる。本発明のDNA分子には、完全長遺伝子ならびにそのポリヌクレオチドおよびフラグメントが含まれる。完全長遺伝子は、N末端シグナル配列をコードする配列も含みうる。
【0051】
本発明の別の局面では、前記核酸配列を含有する発現ベクターが提供され、そのようなベクターで形質転換された宿主細胞およびvActRIIBポリペプチドを産生する方法も提供される。「発現ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド配列からポリペプチドを発現させるためのプラスミド、ファージ、ウイルスまたはベクターを指す。vActRIIBポリペプチドを発現させるためのベクターは、最低限、ベクターの増殖に必要な配列と、クローニングされたインサートの発現に必要な配列とを含有する。発現ベクターは、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する一つまたは複数の遺伝要素、例えばプロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写されタンパク質に翻訳されるべきvActRIIBポリペプチドをコードする配列、および(3)適切な転写開始配列および転写終結配列のアセンブリを含む転写ユニットを含む。これらの配列は選択マーカーをさらに含みうる。宿主細胞における発現に適したベクターは容易に入手することができ、核酸分子は、標準的な組換えDNA技法を使ってベクターに挿入される。そのようなベクターは、特異的組織において機能するプロモーター、および標的ヒトまたは動物細胞においてvActRIIBを発現させるためのウイルスベクターを含むことができる。vActRIIBの発現に適した例示的な発現ベクターは、vActRIIBポリヌクレオチドを含有するpDSRa(参照により本明細書に組み入れられるWO 90/14363に記載されている)とその誘導体、ならびに当技術分野において公知の、または後述する、他の任意の適切なベクターである。
【0052】
本願はさらに、vActRIIBポリペプチドを作製する方法を提供する。他のさまざまな発現/宿主システムを用いることができる。これらのシステムには、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞システム;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)をトランスフェクトするか、細菌発現ベクター(例えばTiプラスミドまたはpBR322プラスミド)で形質転換された、植物細胞システム;または動物細胞システムなどがあるが、それらに限定されるわけではない。組換えタンパク質産生に役立つ哺乳動物細胞には、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、またはそれらの誘導体、例えば無血清培地中で成長するVeggie CHO細胞株および関連細胞株(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31参照)またはDHFRが欠損しているCHO DX-B11株(Urlaub et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20)、COS細胞、例えばサル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175参照)、W138、BHK、HepG2、3T3(ATCC CCL 163)、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、L細胞、C127細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)から誘導されたCV1/EBNA細胞株(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821参照)、ヒト胎児腎臓細胞、例えば293、293EBNAまたはMSR293、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養から誘導された細部株、初代外植片、HL-60、U937、HaKまたはJurkat細胞などがあるが、それらに限定されるわけではない。哺乳類発現では、成長培地から回収することができる分泌ポリペプチドまたは可溶性ポリペプチドの産生が可能になる。
【0053】
適切な宿主-ベクターシステムを使用し、本発明の核酸分子を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、産生を可能にする条件下で培養することにより、vActRIIBポリペプチドが組換えにより産生される。形質転換細胞は、長期高収率ポリペプチド産生に使用することができる。そのような細胞を、所望の発現カセットに加えて選択マーカーを含有するベクターで形質転換したら、その細胞を1〜2日間、強化培地で成長させてから、選択培地に切り替えることができる。選択可能マーカーは、導入された配列をうまく発現する細胞の成長と回収が可能になるように設計される。安定に形質転換された細胞の耐性細胞塊を、使用した細胞株に適した組織培養技法を使って増殖させることができる。組換えタンパク質の発現に関する概説は、Methods of Enzymology, v.185, Goeddell, D.V., ed., Academic Press (1990)に見出される。
【0054】
例えば原核生物システムを使った発現など、一部の例では、発現した本発明のポリペプチドを生物学的に活性にするために、それを「リフォールディング」し、酸化して、適正な三次構造とジスルフィド結合を生成させる必要がありうる。リフォールディングは、当技術分野において周知のいくつかの手順を使って達成することができる。そのような方法には、例えば、可溶化したポリペプチドを、カオトロピック剤の存在下で、通常は7を上回るpHに曝露することなどがある。カオトロープの選択は、封入体の可溶化に使用される選択と類似しているが、典型的には、カオトロープは、より低濃度で使用される。例示的なカオトロピック剤はグアニジンおよび尿素である。ほとんどの場合、リフォールディング/酸化溶液はさらに、システイン橋形成のためのジスルフィドシャフリングが起こることを可能にする特定の酸化還元ポテンシャルが生じるように、還元剤とその酸化型とを特定の比で含有すると考えられる。よく使用される酸化還元対の中には、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化第二銅、ジチオスレイトールDTT/ジチアンDTT、および2-メルカプトエタノール(bME)/ジチオ-bMEなどがある。多くの例において、リフォールディングの効率を増加させるために、共溶媒を使用することができる。よく使用される共溶媒には、グリセロール、さまざまな分子量のポリエチレングリコール、およびアルギニンなどがある。
【0055】
加えて、ポリペプチドは、従来の技法に従って、溶液中で合成するか、固相支持体上で合成することができる。さまざまな自動合成装置が市販されており、公知のプロトコールに従って使用することができる。例えばStewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d.Ed., Pierce Chemical Co. (1984)、Tarn et al., J Am Chem Soc, 105:6442, (1983)、Merrifield, Science 232:341-347 (1986)、Barany and Merrifield, The Peptides, Gross and Meienhofer, eds, Academic Press, New York, 1-284、Barany et al., Int J Pep Protein Res, 30:705-739 (1987)を参照されたい。
【0056】
本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、当業者に周知のタンパク質精製技法に従って精製することができる。それらの技法は、ある段階での、タンパク質性画分と非タンパク質性画分との大まかな分画を伴う。ペプチドポリペプチドを他のタンパク質から分離したら、クロマトグラフィー技法および電気泳動技法を使って、関心対象のペプチドまたはポリペプチドを、さらに精製することにより、部分精製または完全な精製(または均一精製)を達成することができる。「単離されたポリペプチド」または「精製ポリペプチド」という用語は、本明細書において使用する場合は、ポリペプチドがその天然に得ることのできる状態と比較して任意の程度まで精製されている、他の構成要素から単離することができる組成物を指すものとする。それゆえに、精製ポリペプチドとは、それが天然に存在しうる環境を伴わないポリペプチドも指す。一般的には、「精製された」とは、他のさまざまな構成要素を除去するための分画に供されており、発現されるその生物学的活性を実質的に保っている、ポリペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」という用語を使用する場合、その指摘は、ポリペプチドまたはペプチドが組成物の主要構成要素を形成している、例えば組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、もしくは約90%、またはそれ以上を構成している、ペプチドまたはポリペプチド組成物を指す。
【0057】
精製において使用するのに適したさまざまな技法は当業者には周知であると考えられる。それらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体(免疫沈降)などによる沈殿、または熱変性による沈殿と、それに続く遠心分離;クロマトグラフィー、例えばアフィニティクロマトグラフィー(プロテインAカラム)、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、疎水性相互作用クロマトグラフィー;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;およびこれらの技法の組み合わせなどがある。当技術分野においては一般に公知であるとおり、さまざまな精製段階を実行する順序は変更することができ、あるいは特定の段階を省略しても、依然として、実質的に精製されたポリペプチドの調製には適切な方法になりうると考えられる。例示的な精製段階を後述の実施例に記載する。
【0058】
ポリペプチドの精製度を定量するためのさまざまな方法は、本開示に照らせば、当業者には公知であると考えられる。それらには、例えば、活性画分の特異的結合活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって画分内のペプチドまたはポリペプチドの量を評価することなどがある。ポリペプチド画分の純度を評価するための好ましい一方法は、該画分の結合活性を算出して、それを初期抽出物の結合活性と比較し、そうすることで、本明細書においては「精製倍数」で評価される精製度を算出することである。結合活性の量を表すために使用される実際の単位は、もちろん、精製を追跡するために選んだそのアッセイ技法と、ポリペプチドまたはペプチドが検出可能な結合活性を呈するかどうかとに依存すると考えられる。
【0059】
変異アクチビンIIB型ポリペプチドは、筋分解カスケードを活性化するリガンドに結合する。リガンドであるアクチビンA、ミオスタチン、およびGDF-11を結合させてそれらの活性を阻害することができるvActRIIBポリペプチドは、筋萎縮が関与する疾患に対して潜在的治療能を有し、特定のがん、例えば卵巣腫瘍、前立腺腫瘍および黒色腫、ならびに後述の実施例において示す他の疾患の処置にも潜在的治療能を有する。
【0060】
しかし、野生型ActRIIBまたはActRIIB5ポリペプチドを発現しまたは精製する際には、凝集が起こりうる。この凝集には、発現中の構造化オリゴマー形成と、発現中およびポリペプチド精製後の非構造化凝集体生成とが含まれる。
【0061】
構造解析、分子モデリング、および質量分析のアプローチを併用することにより、ActRIIBポリペプチドでは、非グリコシル化ActRIIBポリペプチド間の静電相互作用および水素結合相互作用によって促進される分子間ジスルフィド結合形成を介して、多量体化が起こりうることが示されている。2つのActRIIB分子の界面では、例えば、一方のActRIIB中のE28側鎖と、他方のActRIIB中のR40側鎖との間に、かなりの水素結合が存在する。加えて、決定的な静電相互作用が、一方のActRIIB中のE28と他方のActRIIB中のR40との間に存在する。
【0062】
これらの静電相互作用は、一時的なActRIIB二量体の総数を増加させて、ActRIIBユニット間の非共有結合および/または共有結合形成の促進をもたらすのに、著しく寄与しうる。残基28と残基40の間の相互作用は、これらの相互作用のなかで最も決定的である。というのも、これら2つの残基は、二重の水素結合と強い静電相互作用に関与するからである。残基28と残基40はActRIIB:ActRIIB相互作用に関与し、ActRIIB:リガンド相互作用には関与しない。そこで、本発明によれば、受容体ポリペプチドの溶解性を向上し、凝集を減少させるために、残基28と残基40を非天然アミノ酸で置換することができる。それゆえに、下に示すように、E28およびR40をそれぞれ他の可能な天然アミノ酸で置換し、発現させ、Biacoreで試験した。Biacoreで決定された結合を下記実施例2の表1Aおよび表1Bに示す。さらにまた、vActRIIBポリペプチドの凝集百分率も、以下に決定する。
【0063】
後述する実施例の結果は、本明細書に記載のアミノ酸置換を有するvActRIIBポリペプチドおよびタンパク質について、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させてそれらを中和する能力を保ったまま、凝集が減少することを示している。
【0064】
抗体
本発明はさらに、本発明のvActRIIBポリペプチドに特異的に結合するものを含めて、変異ActRIIBポリペプチドに結合する抗体を包含する。本明細書において使用する場合、「特異的に結合する」という用語は、抗体が、vActRIIBポリペプチドに対して106M-1またはそれより大きい結合アフィニティ(Ka)を有することを指す。本明細書において使用する場合、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds), Cold Spring Harbor Press, (1988)参照)およびモノクローナル抗体(例えば米国再発行特許第32,011号、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号、ならびにMonoclonal Antibodies: A New Dimension in Biological Analysis, Plenum Press, Kennett, McKearn and Bechtol (eds.) (1980)を参照されたい)を含む、無傷の抗体を指す。本明細書において使用する場合、「抗体」という用語は、抗体のフラグメント、例えば組換えDNA技法によって産生されるか、無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって産生される、F(ab)、F(ab')、F(ab')2、Fv、Fc、および単鎖抗体なども指す。「抗体」という用語は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と2つの異なる結合部位とを有する人工的なハイブリッド抗体である二重特異性抗体または二機能性抗体も指す。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'フラグメントの連結などといった、さまざまな方法によって産生することができる(Songsivilai et al., Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990)、Kostelny et al., J. Immunol.148:1547-1553 (1992)参照)。
【0065】
本明細書において使用する場合、「抗体」という用語は、キメラ抗体、すなわち、一つまたは複数の非ヒト可変抗体イムノグロブリンドメインにカップリングされたヒト定常抗体イムノブロブリンドメインを有する抗体、またはそのフラグメントも指す(例えば米国特許第5,595,898号および米国特許第5,693,493号)。抗体は、「ヒト化」抗体(例えば米国特許第4,816,567号およびWO 94/10332参照)、ミニボディ(minibody)(WO94/09817)、マキシボディ(maxibody)、およびトランスジェニック動物によって産生される抗体も指し、この場合、ヒト抗体産生遺伝子の一部を含有しているが内在性抗体の産生を欠いているトランスジェニック動物は、ヒト抗体を産生することができる(例えばMendez et al., Nature Genetics 15:146-156 (1997)、および米国特許第6,300,129号参照)。「抗体」という用語には、多量体型抗体、またはヘテロ二量体型抗体などのタンパク質の高次複合体、および抗イディオタイプ抗体も含まれる。「抗体」には抗イディオタイプ抗体も含まれる。vActRIIBに対する抗体は、例えばインビトロおよびインビボでvActRIIBを同定し定量するために、使用することができる。
【0066】
SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95、および97を含む本明細書に記載のvActRIIBポリペプチドに特異的に結合する、任意の哺乳動物からのポリクローナル抗体、例えばマウス抗体およびラット抗体、ならびにウサギ抗体も含まれる。
【0067】
そのような抗体は、研究ツールとして、本明細書に開示するポリペプチドを検出しアッセイするための定量的アッセイ法において用いられる。そのような抗体は、上述の方法を使って、当技術分野において公知のとおり、作製される。
【0068】
薬学的組成物
本発明のvActRIIBタンパク質およびポリペプチドを含有する薬学的組成物も提供される。そのような組成物は、薬学的に許容される材料および生理学的に許容される製剤材料と混合された治療有効量または予防的有効量のポリペプチドまたはタンパク質を含む。薬学的組成物は、例えば組成物のpH、オスモル濃度、粘度、透明性、色、等張性、匂い、滅菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着または浸透などを修飾し、維持しまたは保存するための製剤材料を含有しうる。好適な製剤材料には、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);抗微生物剤;酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えばボラート、重炭酸塩、トリス-HCl、シトラート、フォスフェート、他の有機酸);充填剤(例えばマンニトールまたはグリシン)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えばカフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン);充填剤;単糖;二糖および他の糖質(例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン);タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);着色剤;矯味矯臭剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えばナトリウム);保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素);溶媒(例えばグリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);糖アルコール(例えばマンニトールまたはソルビトール);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(例えばプルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール(tyloxapal));安定性強化剤(スクロースまたはソルビトール);張性強化剤(例えばハロゲン化アルカリ金属(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトールソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的佐剤などがあるが、それらに限定されるわけではない(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company, 1990)。
【0069】
最適な薬学的組成物は、例えば意図する投与経路、送達フォーマット、および所望の投薬量などに応じて、当業者によって決定されると考えられる。例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、前記参照。そのような組成物は、ポリペプチドの物理的状態、安定性、インビボ放出速度、インビボクリアランス率に影響を及ぼしうる。例えば好適な組成物は非経口投与用の注射用水、生理食塩溶液でありうる。
【0070】
薬学的組成物の主要ビヒクルまたは担体の性質は水性または非水性のどちらかでありうる。例えば好適なビヒクルまたは担体は、場合によっては非経口投与用の組成物においては一般的な他の材料が補足された、注射用水、生理食塩溶液、または人工脳脊髄液でありうる。中性緩衝食塩水、または血清アルブミンと混合された食塩水は、さらなる例示的ビヒクルである。別の例示的な薬学的組成物は、pH約7.0〜8.5のトリス緩衝液またはpH約4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、それらはさらに、ソルビトールまたはその適切な代用品を含みうる。本発明の一態様では、所望の純度を有する選択された組成物を、随意の製剤化物質(Remington's Pharmaceutical Sciences、前記)と混合することにより、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、貯蔵用の組成物を調製することができる。さらに、治療組成物は、スクロースなどの適切な賦形剤を使って、凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0071】
製剤は、さまざまな方法で、例えば吸入治療によって、経口的に、または注射によって送達することができる。非経口投与が考えられる場合、本発明において使用するための治療組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に所望のポリペプチドを含む、パイロジェンフリーの非経口的に許容される水溶液の形態をとりうる。非経口注射用の特に好適なビヒクルは滅菌蒸留水であり、その中に、ポリペプチドが適正に保存処理された滅菌等張液として製剤化される。さらに別の調製物は、製品の制御放出または持続放出をもたらす、注射可能なマイクロスフェア、生体浸食性(bio-erodible)粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソームなどの作用物質を使った所望の分子の製剤化を伴うことができ、その場合は、その製品をデポー注射によって送達することができる。ヒアルロン酸も使用することができ、これは、循環における持続的滞留を促進する効果を有しうる。所望の分子を導入するための他の好適な手段には、埋め込み型の薬物送達デバイスがある。
【0072】
別の局面では、注射可能な投与に適した薬学的製剤を、水溶液に、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、または生理緩衝食塩水などに、製剤化することができる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有しうる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することもできる。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームなどがある。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーも送達に使用しうる。任意で、懸濁液は、適切な安定剤、または化合物の安定性を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする作用物質も含有しうる。別の態様では、薬学的組成物を吸入用に製剤化することができる。吸入溶液はエアロゾル送達用の噴射剤を使って製剤化することもできる。さらに別の態様では、溶液を噴霧することができる。経肺投与は、化学修飾タンパク質の経肺投与が記載されているPCT出願番号PCT/US94/001875に、さらに詳しく記述されている。
【0073】
特定の製剤を経口投与しうることも考えられる。本発明の一態様では、この方法で投与される分子を、錠剤またはカプセル剤などの固形剤形の調合において通例使用される担体を使って、またはそのような担体を使わずに、製剤化することができる。例えばカプセル剤は、バイオアベイラビリティが最大になり、かつ体循環前(pre-systemic)分解が最小限に抑えられるような消化管中のポイントで製剤の活性部分が放出されるように、設計することができる。治療用分子の吸収が容易になるように追加の作用物質を含めることができる。希釈剤、矯味矯臭剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用しうる。経口投与用の薬学的組成物は、経口投与に適した投薬量で、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を使って製剤化することもできる。そのような担体により、薬学的組成物は、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能になる。
【0074】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固形賦形剤と混和し、その結果得られた顆粒の混合物を(任意で粉砕後に)錠剤または糖衣錠の核が得られるように加工することによって、得ることができる。所望であれば、適切な助剤を加えることができる。好適な賦形剤には、糖質またはタンパク質充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、およびアルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどを添加してもよい。
【0075】
糖衣錠の核は、濃厚糖溶液などの適切なコーティングと一緒に使用することができ、このコーティングも、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含みうる。製品識別のために、または活性化合物の量、すなわち投薬量を特徴決定するために、錠剤または糖衣錠のコーティングには、染料または顔料を加えてもよい。
【0076】
経口的に使用することができる薬学的調製物には、ゼラチン製のプッシュフィット式(push-fit)カプセル剤、ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングとで作られた密封軟カプセル剤も含まれる。プッシュフィット式カプセル剤は、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、そして任意で安定化剤と混合された活性成分を含有することができる。軟カプセル剤では、活性化合物を適切な液体、例えば安定化剤を含む、または安定化剤を含まない、脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコールなどに溶解または懸濁することができる。
【0077】
さらなる薬学的組成物は、持続送達製剤または制御送達製剤中のポリペプチドを伴う製剤を含めて、当業者には明白であると考えられる。他のさまざまな持続送達手段または制御送達手段、例えばリポソーム担体、生体浸食性微粒子または多孔性ビーズおよびデポー注射剤などを製剤化するための技法も、当業者には公知である。例えば、薬学的組成物を送達するための多孔性ポリマー微粒子の制御放出が記載されているPCT/US93/00829を参照されたい。持続放出調製物のさらなる例には、フィルムまたはマイクロカプセルなどといった造形品の形態にある半透過性ポリマーマトリックスがある。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー(Sidman et al., Biopolymers, 22:547-556 (1983)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277, (1981);Langer et al., Chem. Tech., 12:98-105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.、前記)またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)を含みうる。持続放出組成物には、当技術分野において公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームも含まれる。例えばEppstein et al., PNAS (USA), 82:3688 (1985);EP36,676;EP 88,046;EP143,949参照。
【0078】
インビボ投与に使用される薬学的組成物は典型的には滅菌状態でなければならない。これは滅菌濾過膜による濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使った滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のどちらにでも行うことができる。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥型で、または溶解状態で貯蔵することができる。加えて、非経口組成物は一般に、滅菌アクセス口を有する容器や、皮下注射針で突き刺すことができる栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0079】
薬学的組成物を製剤化し終えたら、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固形物、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として、滅菌バイアルに保存することができる。そのような製剤は、すぐに使用できる(ready-to-use)形態で、または投与前に再構成を必要とする形態(例えば凍結乾燥体)で、貯蔵することができる。
【0080】
特定の一態様において、本発明は、単回投与単位(single-dose administration unit)を作るためのキットに向けられる。本キットのそれぞれは、乾燥タンパク質が入っている第1容器と、水性製剤が入っている第2容器とを、どちらも含有する。単室式および多室式充填済みシリンジ(例えば液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含んでいるキットも本発明の範囲に包含される。
【0081】
治療的に使用されるべき薬学的組成物の有効量は、例えば治療状況および治療目的に依存すると考えられる。したがって、処置にとって適切な投薬量レベルが、送達される分子、そのポリペプチドが使用される適応症、投与経路、患者のサイズ(体重、体表または器官サイズ)および状態(年齢および全身の健康状態)に、部分的に依存して変動することは、当業者には理解されると考えられる。したがって臨床家は、最適な治療効果が得られるように投薬量をタイトレーションし、投与経路を変更することができる。典型的な投薬量は、上述の因子に依存して、約0.1mg/kgから最大約100mg/kgまたはそれ以上の範囲に及びうる。ポリペプチド組成物は、好ましくは、静脈内に注射または投与することができる。長時間作用性の薬学的組成物は、その製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3日〜4日毎、1週間毎、または2週間毎に投与することができる。投与の頻度は、使用する製剤中のポリペプチドの薬物動態パラメータに依存すると考えられる。典型的には、組成物は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで投与される。それゆえに組成物は、単回投与として、または時間をかけて(同じまたは異なる濃度/投薬量での)複数回投与として、または持続注入として、投与することができる。適切な投薬量のさらなる精密化はルーチンに行われる。適切な投薬量は、適切な用量応答データの使用によって確認することができる。
【0082】
薬学的組成物の投与経路は、公知の方法に従って、例えば経口的に、または静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、病変内経路による注射で、または髄内、髄腔内、室内、経皮、皮下、または腹腔内に、さらには鼻腔内、腸内、外用、舌下、尿道、膣、または直腸手段によって、または持続放出システムによって、または埋め込みデバイスによって行われる。所望であれば、組成物をボーラス注射によって投与するか、注入によって持続的に投与するか、埋め込みデバイスによって投与することができる。これに代えて、またはこれに加えて、所望の分子が吸収またはカプセル化されている膜、スポンジ、または他の適切な材料の埋め込みによって、組成物を局所的に投与することもできる。埋め込みデバイスを使用する場合、デバイスは任意の適切な組織または器官に埋め込むことができ、所望の分子の送達は、拡散、徐放性ボーラス、または持続的投与によることができる。
【0083】
いくつかの例では、本明細書に記載するような方法を使ってポリペプチドを発現し分泌するように遺伝子操作された特定の細胞を埋め込むことによって、本発明のvActRIIBポリペプチドを送達することができる。そのような細胞は、動物細胞またはヒト細胞であることができ、自家(autologous)、異種由来(heterologous)、または異種(xenogeneic)であることができる。任意で、細胞を不死化してもよい。免疫学的応答の機会を減少させるために、細胞をカプセル化して周囲組織の浸潤を回避してもよい。カプセル化材料は、典型的には、ポリペプチド製品の放出は可能にするが、患者の免疫系による、または周囲組織からの他の有害因子による細胞の破壊は妨げる、生体適合性半透過性ポリマーの包みまたは膜である。
【0084】
vActRIIBまたはvActRIIBの誘導体をコードする核酸分子を対象に直接導入するインビボでのvActRIIB遺伝子治療も考えられる。例えばvActRIIBをコードする核酸配列は、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適切な送達ベクターを使って、または送達ベクターを使わずに、核酸コンストラクトの局所注射によって、ターゲット細胞中に導入される。代替ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルスベクターなどがあるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスベクターの物理的導入は、所望の核酸コンストラクトまたは所望の核酸配列を含有する他の適切な送達ベクターの局所注射、リポソーム媒介導入、直接注入(裸のDNA)、または微粒子ボンバードメント(遺伝子銃)によって達成することができる。
【0085】
vActRIIB組成物の使用
本発明は、前記ポリペプチドをvActRIIBポリペプチドと接触させることによって、インビボおよびインビトロでミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11の量または活性を減少させるかまたは中和するための方法および薬学的組成物を提供する。vActRIIBポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、およびGDF-11に対して高いアフィニティを有し、ミオスタチン、アクチビンA、およびGDF-11のうちの少なくとも一つの生物学的活性を減少させかつ阻害することができる。いくつかの態様では、vActRIIBポリペプチドが、野生型ActRIIBポリペプチドと比較して向上した活性を呈する。これを後述の実施例において実証する。
【0086】
一局面において、本発明は、そのような処置を必要とする対象に有効投薬量のvActRIIB組成物を投与することにより、該対象においてミオスタチン関連および/またはアクチビンA関連障害を処置するための方法および試薬を提供する。本明細書において使用する場合、「対象」という用語は、任意の動物、例えばヒトを含む哺乳動物を指す。
【0087】
本発明の組成物は、体重のパーセンテージとしての除脂肪筋量を増加させ、体重のパーセンテージとしての脂肪量を減少させるために使用される。
【0088】
vActRIIB組成物によって処置することができる障害には、さまざまな形態の筋消耗ならびに代謝障害、例えば糖尿病および関連障害、ならびに骨変性疾患、例えば骨粗しょう症などがあるが、それらに限定されるわけではない。vActRIIB組成物は、後述の実施例3に示すさまざまな疾患モデルにおいて筋消耗性障害の処置に有効であることが実証された。これは、インヒビン-αノックアウトマウスにおける筋消耗の処置、colon-26がん悪液質モデルにおける筋消耗の処置、後肢懸垂モデルにおける筋萎縮の防止、OXV雌の処置において実証実験を行ったものであり、除脂肪筋量の増加、脂肪量の減少および骨塩含量の増加を示した。
【0089】
筋消耗性障害には、デュシェンヌ筋ジストロフィー、進行性筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、デジュリーヌ-ランドゥジー筋ジストロフィー、エルプ筋ジストロフィー、および幼児神経軸索性筋ジストロフィーなどのジストロフィーも包含される。さらなる筋消耗性障害は、慢性疾患または慢性障害、例えば筋萎縮性側索硬化症、うっ血性閉塞性肺疾患、がん、AIDS、腎不全、器官萎縮、アンドロゲン欠乏、および関節リウマチなどから生じる。
【0090】
ミオスタチンおよび/またはアクチビンの過剰発現は、重度の筋および脂肪消耗症候群である悪液質の一因になりうる。動物モデルでの悪液質の処置におけるvActRIIBポリペプチドの有効性を後述の実施例3に示す。悪液質は、関節リウマチ、糖尿病性腎症、腎不全、化学療法、熱傷による傷害、および他の原因によっても生じる。別の例では、ミオスタチン免疫反応性タンパク質の血清中濃度および筋肉内濃度が、AIDS関連筋消耗を呈する人々では増加し、除脂肪体重と逆相関することがわかった(Gonzalez-Cadavid et al., PNAS USA 95:14938-14943 (1998))。ミオスタチンレベルが熱傷傷害に応答して増加し、異化的筋効果をもたらすことも示されている(Lang et al., FASEB J 15, 1807-1809 (2001))。筋消耗をもたらすさらなる状態は、身体障害による不動、例えば車いすへの拘束、脳卒中、疾病、脊髄傷害、骨折または外傷ゆえの長期床上安静、および微小重力環境(宇宙飛行)における筋萎縮から生じうる。例えば、血漿中ミオスタチン免疫反応性タンパク質は、長期床上安静後に増加していることが見出された(Zachwieja et al. J Gravit Physiol. 6(2):11(1999)。スペースシャトル飛行中に微小重力環境に曝露されたラットの筋は、曝露されていないラットの筋と比較して、発現するミオスタチンの量が増加していることも見出された(Lalani et al., J. Endocrin 167 (3):417-28 (2000))。
【0091】
加えて、脂肪対筋比の加齢性の増加、および加齢性筋萎縮も、ミオスタチンに関連すると考えられる。例えば平均血清中ミオスタチン免疫反応性タンパク質は、若年(19〜35歳)、中年(36〜75歳)、および高齢(76〜92歳)男性および女性の群内で、年齢とともに増加し、同時に、平均筋量および除脂肪体重は、これらの群内で年齢とともに低下した(Yarasheski et al. J Nutr Aging 6(5):343-8 (2002))。加えて、現在では、ミオスタチンが心筋において低レベルで発現することが見出されており、梗塞後の心筋細胞では、発現が上方制御されている(Sharma et al., J Cell Physiol. 180 (1): 1-9 (1999))。それゆえに、心筋におけるミオスタチンレベルの減少は、梗塞後の心筋の回復を改善しうる。
【0092】
ミオスタチンは、2型糖尿病、非インスリン依存性真性糖尿病、高血糖、および肥満を含む代謝障害にも影響を及ぼすと考えられる。例えばミオスタチンの欠如は、2つのマウスモデルの肥満および糖尿病表現型を改善することが示されている(Yen et al. FASEB J. 8:479 (1994)。米国特許出願第11/590,962号、米国出願公開第2007/0117130号において、AAV-ActRIIB5ベクターは、動物において、特に肥満動物モデルにおいて、筋対脂肪比を増加させることが実証されている。本開示のvActRIIBポリペプチド、例えばSEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、52、54、56、60、62、64、66、68、70、72、87、88、91、93、95は、そのような使用に適している。それゆえに、本発明の組成物を投与することによって脂肪組成を減少させると、動物における糖尿病、肥満、高血糖状態が改善され得る。加えて、ActRIIB5ポリペプチドについて米国特許出願第11/590,962号、米国特許出願公開第2007/0117130号において実証されているように、vActRIIBポリペプチドを含む組成物は、肥満個体における食品摂取量を減少させうる。
【0093】
本発明のActRIIBポリペプチドを投与することにより、骨強度が改善し、骨粗しょう症および他の変性骨疾患が減少する。これは後述のOVXマウスモデルにおいて実証された。また、例えばミオスタチン欠損マウスは、マウス上腕骨の灰分および密度の増加、および海綿骨と皮質骨の両方における筋が付着している領域での灰分の増加、ならびに筋量の増加を示すことも見出されている(Hamrick et al. Calcif Tissue Int 71(1):63-8 (2002))。加えて、本発明のvActRIIB組成物は、前立腺がんの処置に使用されるアンドロゲン欠乏療法など、アンドロゲン欠乏の効果を処置するためにも使用することができる。
【0094】
本発明は、有効投薬量のvActRIIBタンパク質を動物に投与することによって、食用動物の筋量を増加させるための方法および組成物も提供する。成熟C末端ミオスタチンポリペプチドは試験した全ての種において同一であるから、vActRIIBポリペプチドは、ウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、およびブタを含む農業上重要な種において、筋量を増加させ、脂肪を低下させるのに有効であると期待できる。
【0095】
本発明のvActRIIBポリペプチドおよび組成物は、アクチビンAの活性にも拮抗する。アクチビンAは、特定のタイプのがん、特に卵巣がんなどの性腺腫瘍において発現すること、および重度の悪液質を引き起こすことが公知である(Ciprano et al. Endocrinol 141 (7):2319-27 (2000)、Shou et al., Endocrinol 138 (11):5000-5 (1997)、Coerver et al., Mol Endocrinol 10(5):534-43 (1996)、Ito et al. British J Cancer 82(8):1415-20 (2000)、Lambert-Messerlian, et al., Gynecologic Oncology 74:93-7 (1999)。後述の実施例3において、本発明のvActRIIBポリペプチドは、インヒビン-αノックアウトマウスモデルおよびcolon-26がん悪液質マウスモデルにおいて、重度の悪液質を処置し、腫瘍サイズを縮小させ、生存時間を引き延ばすのに有効であることが実証された。それゆえに、本発明の組成物は、アクチビンA過剰発現およびミオスタチン発現に関係する状態、例えば特定のがんによる悪液質を処置するために使用することができ、また特定の性腺タイプおよび黒色腫の処置にも使用することができる。
【0096】
本開示の組成物は単独で使用するか、その治療効果を強化するために、または潜在的副作用を減少させるために、他の治療剤と組み合わせて使用することができる。これらの性質には、増加した活性、増加した溶解性、減少した分解、増加した半減期、減少した毒性、および減少した免疫原性が含まれる。したがって本開示の組成物は長期にわたる処置レジメンに有用である。加えて、本発明の化合物の親水性および疎水性の性質は、よくバランスがとれており、それが、インビトロでの使用にも、とりわけインビボでの使用にも、その有用性を高めている。具体的には、本開示の化合物は、体内での吸収およびバイオアベイラビリティを可能にする、水性媒質への適度の溶解性を有すると同時に、化合物が推定作用部位、例えば特定細胞塊に向かって細胞膜を横切ることを可能にする、脂質への、ある程度の溶解性も有する。
【0097】
本発明のvActRIIBポリペプチドおよび組成物は、がんを処置するための化学療法剤と組み合わせて使用することができる。化学療法剤は抗新生物薬を含むことができる。化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物アルカロイドおよびテルペノイドを含むこともできる。
【0098】
アルキル化剤は、シスプラチンおよびカロプラチン(caroplatin)を含むことができる。代謝拮抗物質は、プリン類(例えばアザチプリン(azathiprine)またはメルカプトプリン)またはピリミジン類を含むことができる。さらに、化学療法剤はヌクレオシド類似体、例えば5-フルオロシル(fluorocil)であることができる。ビンクリスチンやビンブラスチンなどのビンカアルカロイドも使用することができる。
【0099】
さらなる抗新生物剤には、例えばアルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、例えばメクロルエタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランおよびクロラムブシル;ニトロソウレア、例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(メチル-CCNU);エチレンイミン/メチルメラミン、例えばトリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン);アルキルスルホネート、例えばブスルファン;トリアジン、例えばダカルバジン(DTIC);代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサートやトリメトレキサートなどの葉酸類似体、5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2'-ジフルオロデオキシシチジンなどのピリミジン類似体、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2'-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、フルダラビンホスフェート、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA)などのプリン類似体;天然物、例えば、パクリタキセル、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、およびビノレルビンを含むビンカアルカロイド、タキソテール、エストラムスチン、およびエストラムスチンホスフェートなどの有糸分裂阻害剤;ピポドフィロトキシン(ppipodophylotoxin)、例えばエトポシドおよびテニポシド;抗生物質、例えばアクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、およびアクチノマイシン;酵素、例えばL-アスパラギナーゼ;生物学的応答修飾物質、例えばインターフェロン-アルファ、IL-2、G-CSFおよびGM-CSF;その他の作用物質、例えば白金配位錯体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン、アントラセンジオン、例えばミトキサントロン、ヒドロキシ尿素などの置換尿素、N-メチルヒドラジン(MIH)およびプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(o,p'-DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;ホルモン、および副腎皮質ステロイドアンタゴニストを含むアンタゴニスト、例えばプレドニゾンおよび等価物、デキサメタゾンならびにアミノグルテチミド;プロゲスチン、例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール等価物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;アンドロゲン、例えばプロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン/等価物;抗アンドロゲン、例えばフルタミド、性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体およびロイプロリド;ならびに非ステロイド抗アンドロゲン、例えばフルタミドを含めることができる。
【0100】
加えて、本発明のvActRIIBポリペプチドは、多くのアッセイ法において、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を検出し、定量するのに有用である。一般に、本発明のActRIIBポリペプチドは、例えばAsai, ed., Methods in Cell Biology, 37, Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc., New York (1993)などに記載されているアッセイ法に類似するさまざまなアッセイ法において、ミオスタチン、アクチビンA、またはGDF-11を結合させて固定化するための捕捉剤として有用である。ポリペプチドは、ミオスタチンを検出し定量することが可能になるように、何らかの方法で標識するか、または標識された抗体などの第3の分子と反応させることができる。例えば、ポリペプチドまたは第3の分子をビオチンなどの検出可能分子で修飾し、次にそれを第4の分子、例えば酵素標識ストレプトアビジンまたは他のタンパク質に結合させることができる(Akerstrom, J Immunol 135:2589 (1985)、Chaubert, Mod Pathol 10:585 (1997))。
【0101】
本発明を説明してきたが、以下の実施例は実例として記載するものであり、限定ではない。
【実施例】
【0102】
実施例1:vActRIIBポリペプチドの発現および精製
変異ActRIIBポリペプチドの発現と精製には以下の方法を使用した。
【0103】
米国特許出願第11/590,962号、米国特許出願公開第2007/0117130号に記載されているように、ヒトアクチビンIIB型受容体のcDNAをヒト精巣由来のcDNAライブラリー(Clontech, Inc.)から単離し、クローニングした。
【0104】
アミノ酸置換の決定
構造解析、分子モデリング、および質量分析のアプローチを併用することにより、ActRIIBでは、非グリコシル化ActRIIB分子間の静電相互作用およびH結合相互作用によって惹起される分子間ジスルフィド結合形成を介して、凝集(オリゴマー化)が起こりうることが示された。残基28および40は、ActRIIB:ActRIIB相互作用に関与し、ActRIIBとそのリガンドとの相互作用には関与しないことが決定された。
【0105】
最初に、ActRIIB-Fc上のE28およびR40を、それぞれの位置において、Aで置換した。光散乱分析および質量分析により、完全にグリコシル化されたvActRIIB-IgG1Fc,E28AおよびvActRIIB-IgG1Fc R40Aの画分は、野生型タンパク質と比較して、有意に増加していることが確認された。E28AおよびR40A vActRIIB-IgG1Fcを37℃で6日間インキュベートしたが、野生型と比較して、凝集はほとんどまたは全く起こらなかった。野生型ActRIIB(SEQ ID NO:2および18)の発現中または精製中に起こりうる凝集を軽減または防止するために、位置28および40(シグナル配列を持つSEQ ID NO:2および18に関する)にアミノ酸置換を施した。この凝集は、発現中の構造化オリゴマー形成と、発現中およびタンパク質精製後の非構造化凝集体生成とであると、同定されている。
【0106】
産生工程および精製工程の異なる段階での凝集を、後述の手順に従い、サイズ排除クロマトグラフィーを使って決定した。
【0107】
変異ActRIIBポリペプチド(vActRIIBおよびvActRIIB5)の産生には、以下の例示的方法を使用した。E28Wをもたらす突然変異を含有するプライマーを用いるPCRオーバーラップ伸長法で、vActRIIB,E28Wをコードするポリヌクレオチド(SEQ ID NO:23)を、ヒトIgG1 Fcドメイン(SEQ ID NO:82)をコードするポリヌクレオチドまたはヒトIgG2 Fc(SEQ ID NO:84)をコードするポリヌクレオチドに、ヒンジリンカー配列(SEQ ID NO:79をコードするヌクレオチド)を介して融合した。全ポリヌクレオチド配列はSEQ ID NO:61である。二本鎖 DNAフラグメントをpTT5(Biotechnology Research Institute, National Research Council Canada (NRCC)、カナダH4P 2R2モントリオール(ケベック)アベニュー・ロイヤルマウント6100)、pDSRα(WO/9014363に記載)および/またはpDSRαの誘導体にサブクローニングした。別の態様では、vActRIIBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、リンカーGGGGS(SEQ ID NO:75)もしくはその多量体およびまたはヒンジリンカー(例えばSEQ ID NO:79)をコードするポリヌクレオチドに取り付けた。
【0108】
改変されたvActRIIB-FcおよびvActRIIB5-Fcの一過性発現は次のように行った。
【0109】
250μg/mlジェネティシン(Invitrogen)および0.1%Pluronic F68(Invitrogen)を補足したFreeStyle(商標)培地(Invitrogen Corporation, カリフォルニア州カールズバッド)中で維持した無血清懸濁培養適応293-6E細胞(National Research Council of Canada、カナダ、オタワ)において、上記2分子の改変変異体を一過性に発現させた。トランスフェクションは1L培養物として行った。簡単に述べると、細胞接種物を、4Lフェルンバッハ振とうフラスコ(Corning, Inc.)で、1.1×106細胞/mlまで成長させた。振とうフラスコ培養を、37℃および5%CO2に保たれた湿潤培養器中に設置したInnova 2150シェーカープラットフォーム(News Brunswick Scientific、ニュージャージー州エディソン)上、65RPMで維持した。トランスフェクション時に、293-6E細胞を1.0×106細胞/mlに希釈した。
【0110】
トランスフェクション複合体を100mlのFreeStyle培地中で形成させた。まず、1mgのプラスミドDNAを培地に加え、次に3mlのFuGene HDトランスフェクション試薬(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)を加えた。トランスフェクション複合体を室温で約15分間インキュベートしてから、振とうフラスコ中の細胞に加えた。トランスフェクションの20時間後に、20%(w/v)のペプトンTN1(OrganoTechnie S.A., TeknieScience、カナダ、ケベック州)を最終濃度が0.5%(w/v)になるように加えた。トランスフェクション/発現を4〜7日間行った後、4℃における4,000RPMで60分間の遠心分離によって、条件培地を収穫した。
【0111】
安定トランスフェクションと発現は次のように行った。標準的なエレクトロポレーション法を使用して、CHO宿主細胞に(Bianchi et al., Biotech and Bioengineering, 84(4):439-444 (2003)に従って)発現プラスミドpDC323-vActRIIB(E28W)-huIgG2 FcおよびpDC324-vActRIIB(E28W)-huIgG2 Fcを安定トランスフェクトすることにより、vActRIIB-ヒト(hu)IgG2-Fc細胞株を作出した。発現プラスミドによる宿主細胞株のトランスフェクション後に、プラスミドの選択と細胞の回収が可能になるように、GHTを含まない無血清選択培地中で細胞を2〜3週間にわたって成長させた。細胞は、85%を上回る生存度が達成されるまで選択される。次に、このトランスフェクト細胞のプールを、150nMメトトレキサートを含有する培地で培養した。
【0112】
細胞株クローニング
細胞バンクを、選択したクローンから、次の手順に従って作製した。増幅した安定トランスフェクト細胞のプールを96ウェルプレートに播種し、小スケール試験で、成長および生産性能について、候補クローンを評価した。約60バイアルのプレマスター細胞バンク(PMCB)を、選ばれたクローンから調製した。全てのPMCBを無菌性、マイコプラズマおよびウイルスについて試験した。
【0113】
典型的な流加操作を用いてvActRIIB-Fc発現細胞株をスケールアップした。細胞をWaveバイオリアクター(Wave Biotech LLC)に接種した。培養に、ボーラスフィードを3回投入した。10日目に10Lを収穫し、残りを11日目に収穫した。どちらの収穫物も、深層濾過を行ってから、滅菌濾過した。条件培地を10インチの0.45/0.2μmプレフィルタで濾過した後、6インチの0.2μmフィルタで濾過した。
【0114】
タンパク質精製
ActRIIB-Fc(IgG1とIgG2の両方)、ActRIIB5-Fc(IgG1とIgG2の両方)、およびそれらの変異体を含有する約5Lの条件培地を、5ft2の10Kメンブレンタンジェンシャルフローフィルタ(Pall)を使って濃縮した。濃縮された材料を、PBS(塩化マグネシウムも塩化カルシウムも含まないダルベッコ)で平衡化しておいた5mLのプロテインA High Performance Column(商標)(GE Healthcare)に適用した。280nmにおける吸光度(OD280)が0.1未満になるまでカラムを平衡化緩衝液で洗浄した後、結合しているタンパク質を0.1Mグリシン-HCl、pH2.7で溶出し、1Mトリス-HCl、pH8.5で直ちに中和した。中和した溶出物のプールを1mlの体積まで濃縮し、PBS(塩化マグネシウムも塩化カルシウムも含まないダルベッコ)で平衡化した320mlのSephacryl-200カラム(GE Healthcare)に適用した。4〜20%SDS PAGEゲル(Invitrogen)で泳動することで、プールする画分を決定した。これらのポリペプチドを、活性、凝集度について、以下に示すように試験した。
【0115】
任意で、例えばShp-Sepharoseカラムを使って、ポリペプチドをさらに精製することができる。濃度はOD280を使って決定した。
【0116】
実施例2:インビトロ活性アッセイ法
上述のように精製したvActRIIBポリペプチドの試料を、リン酸緩衝食塩水(PBS:2.67mM塩化カリウム、138mM塩化ナトリウム、1.47mMリン酸カリウム一塩基性、8.1mMリン酸ナトリウム二塩基性、pH7.4)で0.2mg/mlまで希釈し、37℃で6日間インキュベートしてから、MALDI-MS(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析)、SECおよび/またはSEC-LS分析にかけた。プロテインA精製段階後の野生型ポリペプチドおよび変異ポリペプチドの凝集を、SECまたはSEC-LSを使って決定し、分子の分子量を後述のMALDI-MS法で確認した。
【0117】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。実験は、2本のカラム(TOSOHAAS G3000swxl、7.8×300mm)を直列に備えたAgilent 1100 HPLCシステムで行った。2×PBSを0.5ml/分の移動相として使用した。
【0118】
サイズ排除クロマトグラフィー-光散乱(SEC-LS)。実験は、Superdex-200ゲル濾過カラム(Amersham Pharmacia、ウィスコンシン州ウォーケショー)を備えたAgilent 1100 HPLCシステムで行った。次に、分子質量を決定するために、試料をWyatt miniDawn LSレーザー光散乱検出器およびWyatt Optilab DSP屈折計(Wyatt Technology Co.、カリフォルニア州サンタバーバラ)に通した。PBSを0.4ml/分の移動相として使用した。
【0119】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析。試料をシナピン酸と混合(1:1)し、MALDI-MS(Applied Biosystems Voyager System 2009)にかけた。この手順は分子の分子量をチェックするために使用した。
【0120】
アクチビンおよびミオスタチンに対する結合アフィニティおよびIC50値は後述のように決定した。
【0121】
定量的BIAcore(登録商標)アッセイ法。上述したIgG1 Fcとの融合物において、E28およびR40をそれぞれ別の天然アミノ酸で置換した。これらは、下記の表に示すように、リンカーありまたはリンカーなしで生成させた。条件培地から得た各vActRIIB-IgG1Fc試料を、ヤギ抗ヒトIgG1 Fc抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-005-098、ロット63550)被覆CM5表面に捕捉した。捕捉された試料表面上に、BIACore2000(BIACore Life Sciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使って、20nMのアクチビンAを注入した。その結果得られたセンサーグラムを、vActRIIB-IgG1Fc変異体の捕捉RL(500RU)に対して標準化した。いくつかの変異体について標準化した結合応答(RU)を表2に示し、以下にさらに説明する。哺乳動物細胞発現によって得た条件培地を使って、Biacore測定により、アクチビンに対する相対的結合アフィニティも決定した。アクチビンA(20nM)を使って条件培地中の可溶性の受容体ポリペプチドを捕捉し、測定されたSPRシグナルを標準化した。標準化されたSPRは、+++++:>60、++++:40〜60、+++:20〜40、++:10〜20、+:5〜10、-:<5。
【0122】
表1Aおよび表1Bに相対的結合データの結果を要約する。下記の表は、vActRIIB-IgG1Fcの特定の態様が、特に、野生型より高いアフィニティでアクチビンAに結合したこと、または野生型に匹敵するアフィニティを保っていたことを示している。
【0123】
(表1A)野生型および改変ActRIIB-IgG1 Fc結合(安定トランスフェクタント)
【0124】
(表1B)野生型および改変ActRIIB-IgG1 Fc結合(一過性トランスフェクタント)
【0125】
C2C12細胞ベース結合アッセイ法
vActRIIB5-IgG1 FcおよびvActRIIB-IgG1 Fc変異体を、上述のように生成させた。アクチビンIIB受容体へのアクチビンAまたはミオスタチンの結合を阻害するこれらの変異体の能力を、以下に説明する細胞ベースの活性アッセイ法を使って試験した。
【0126】
pMARE-lucコンストラクトをC2C12筋芽細胞(ATCC No:CRL-1772)にトランスフェクトすることにより、ミオスタチン/アクチビン/GDF-11応答性レポーター細胞株を生成させた。pMARE-lucコンストラクトは、ミオスタチン/アクチビン応答エレメント(Dennler et al. EMBO 17:3091-3100 (1998))に相当するCAGA配列の12回リピートをpLuc-MCSレポーターベクター(Stratageneカタログ番号219087)のTATAボックスの上流にクローニングすることによって作製される。C2C12細胞はその細胞表面にアクチビン受容体IIBを天然に発現する。ミオスタチン/アクチビンA/GDF-11が細胞受容体を結合させると、Smad経路が活性化され、リン酸化されたSmadが応答エレメントに結合し(Macias-Silva et al. Cell 87:1215 (1996))、その結果、ルシフェラーゼ遺伝子の発現が起こる。次に、市販のルシフェラーゼレポーターアッセイキット(カタログ番号E4550、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を製造者のプロトコールに従って使用することにより、ルシフェラーゼ活性を測定した。pMARE-lucがトランスフェクトされているC2C12細胞の安定株(C2C12/pMARE)を使って、以下の手順で活性を測定した。レポーター細胞をプレーティングして96ウェル培養物にした。上述のように構築した野生型および変異ActRIIB-IgG1 Fc融合物の希釈液を用いるスクリーニングを、4nMアクチビンに濃度を固定して行った。アクチビンAをいくつかの濃度の受容体と共にプレインキュベートした。処理培養物中のルシフェラーゼ活性を決定することによってアクチビン活性を測定した。各ポリペプチドについてIC50値を決定した。それらを表2に示す。ミオスタチンの決定のために、上述のように生成したActRIIB-huIgG2 Fc融合体に関して同じ手順が続けられた。プロテインA精製した野生型および変異体を、同じ方法を使ったミオスタチンに関するIC50値の決定に使用した。この決定には、ポリペプチドを4nMミオスタチンと共にプレインキュベートした。加えて、上述の手順を使って凝集度を決定した。これらの値を下記表3に示す。
【0127】
表1Aに列挙した一組のActRIIB5-IgG1 Fc変異体のうち、いくつかのActRIIB-IgG1 Fc変異体と3つのActRIIB5-IgG1 Fc変異体を野生型ポリペプチドと一緒にさらに精製し、SPR(表面プラズモン共鳴)により、20nMアクチビンAで分析した。表2に、選択されたvActRIIB-IgG1 Fcポリペプチドの、アクチビンに対するSPR結合アフィニティを示す。アクチビンA(20nM)を使って試料中のvActRIIBポリペプチドを捕捉し、測定されたSPRシグナルを標準化した。上述した細胞ベースのアクチビン阻害アッセイ法からIC50値を得た。標準誤差は全ての結果について10%未満である。
【0128】
(表2)
【0129】
上記表2に示すように、野生型と比較して、アクチビンの遮断に関するvActRIIB-IgG1Fc(E28W)のIC50値は2.07nMであり、vActRIIB-IgG1Fc(E28Y)のIC50値は2.1nMであった。さらにまた、vActRIIB-IgG1FcのE28W変異体およびE28Y変異体は安定であり、一度精製した後は凝集することがなかった。
【0130】
ミオスタチン遮断細胞ベースアッセイ法におけるIC50値を、さらなる変異ポリペプチドについても決定した。これらの変異体は、シグナル配列とN末端の最初の6アミノ酸を欠いている成熟切断型vActRIIBポリペプチドであった。これらの配列を表3に示す。表3は、プロテインA精製後のタンパク質の凝集パーセントと、ミオスタチンに関するIC50値とを示している。凝集パーセントが変異ポリペプチドでは野生型と比較してはるかに低いことがわかる。シグナル配列とN末端の4アミノ酸とを欠いており、以下に示すように同一の置換を有する成熟切断型vActRIIBポリペプチドについても、類似する結果が得られた。
【0131】
(表3)
【0132】
表4に配列表のSEQ ID NO:1〜99に対応する配列を特定する。
【0133】
(表4)
【0134】
実施例3: vActRIIBを用いたインビボ処置
以下の動物試験は、いずれも成熟切断型vActRIIB-IgG2 Fc(E28W)ポリペプチド(SEQ ID NO:91)を使用し、下記の手順に従って行った。
【0135】
インヒビン-α欠損マウスにおける筋消耗の処置
インヒビン-αはアクチビンAの天然の阻害剤である。インヒビン-αを欠いているマウスは、循環中に著しく上昇したアクチビンAレベルを示し、卵巣がん、精巣がん、および副腎がんなどの腫瘍の自然発生的形成に関連する致死的な消耗症候群を患う(Matzuk et al., PNAS 91(19):8817-21 (1994)、Cipriano et al. Endocrinology 121(7): 2319-27(2000)、Matzuk et al., Nature 360(6402):313-9 (1992))。以下の実験のために、インヒビン-αノックアウトマウス(C57BL/6J)をCharles River Laboratoriesから入手した。体重および筋量に対するvActRIIB-IgG2 Fc E28W(SEQ ID NO:91)(以下、E28W、またはE28Wポリペプチド、または可溶性受容体E28Wという)の効果を、インヒビン-αノックアウトマウスで調べた。8週齢雄インヒビン-αノックアウトマウスにおいて、14日間の単回注射試験を行った。雄インヒビン-αノックアウトマウスは、8週齢時に、同齢野生型同腹仔対照マウスと比較して、体重の25%超を失っていた。0日目に、ノックアウトマウスのうちの5匹に、E28W(30mg/kg)の単回皮下注射を与え、5匹のノックアウトマウスに等体積のPBS(ビヒクル)を皮下投与した。ベースライン対照として、0日目に、5匹の同齢野生型マウスにビヒクルの単回皮下注射を投与した。0日目、7日目および14日目にマウスの体重を測定した。14日目の最後に、全てのマウスを屠殺し、その除脂肪枝肉重量および腓腹筋量を剖検によって分析した。14日間の試験期間中に、ビヒクル処置ノックアウトマウスの平均体重は、0日目の22.5gから14日目の21.4gまで約1.1g低下した。対照的に、E28W処置ノックアウトマウスの平均体重は、0日目の22.1gから14日目の33.1gまで11gの劇的な増加を示した。終了時剖検分析により、E28Wポリペプチドは、インヒビン-αノックアウトマウスにおける除脂肪枝肉重量および腓腹筋量を、以下に示すように、事実上二倍にすることが明らかになった。E28W処置ノックアウトマウスの平均除脂肪枝肉重量は、ビヒクル処置ノックアウトマウスが約8.0g、ビヒクル処置野生型対照マウスが約12.1gであるのと比較して、約14.9gであった。E28W処置ノックアウトマウスの平均腓腹筋重量(両脚から)は、ビヒクル処置ノックアウトマウスの約209mg、ビヒクル処置野生型対照マウスの約324mgと比較して、約426mgであった。これらの結果は、体重減少および筋消耗の疾患状態の処置に関するE28Wポリペプチドの有効性を実証しており、これらの結果を下記の表に要約する。

*:P<0.05、対野生型+ビヒクル;#:P<0.05、対KO+ビヒクル
【0136】
E28Wポリペプチドの投与が精巣腫瘍および卵巣腫瘍の形成率に及ぼす効果を、それぞれ雄および雌インヒビン-αKOマウスで調べた。この試験では、8週齢の雄(n=5)と9週齢の雌(n=6)とを含む11匹のインヒビン-αノックアウトマウスを、E28W(30mg/kg)の単回皮下注射で処置し、同齢の雄(n=5)と雌(n=6)とを含む別の11匹のインヒビン-αノックアウトマウスには、等体積のPBS(ビヒクル)を単回注射した。加えて、同齢の雄(n=5)と雌(n=6)とを含む11匹の野生型同腹仔対照マウスには、ビヒクルの単回注射を投与した。処置の2週間後にマウスを屠殺し、視認可能な精巣腫瘍および卵巣腫瘍の形成率を調べるための剖検に供した。11匹のビヒクル処置ノックアウトマウスのうちの10匹は同定可能な腫瘍を発生させたことがわかった。具体的には、調べた雄5匹中の5匹に、また雌6匹中の5匹に、それぞれ精巣腫瘍および卵巣腫瘍の形成が見出された。これらの腫瘍のサイズは、野生型対照マウスにおける対応する正常な精巣または卵巣より、2〜3倍大きいことがわかった。これを
図3に示す。E28W処置インヒビン-αノックアウトマウスは10%(11匹中1匹)しか、目に見える腫瘍形成を示さなかった。具体的には、雌では、6匹のE28W処置ノックアウトマウス中、1匹が同定可能な卵巣腫瘍を発生させたのに対し、6匹の無処置雌ノックアウト個体のうち5匹は、同齢野生型対照と比較して卵巣のサイズや外部形態にほとんどまたは全く変化がなかった。E28W処置雄ノックアウトマウスは5匹中5匹が目に見える腫瘍を示さず、同齢野生型対照と比較して精巣のサイズや外部形態にほとんどまたは全く変化がなかった。これらの結果は、E28W投与が、インヒビン-αKOマウスにおける精巣腫瘍および卵巣腫瘍の形成の減少にも黒色腫の形成の減少にも有効であったことを実証しており、がん処置における可溶性受容体療法の臨床的有用性を示唆している。
【0137】
食欲不振の処置におけるE28Wポリペプチドの有効性を、雄インヒビン-αノックアウトマウスで調べた。この試験では、インヒビン-αノックアウトマウス(n=5)における食物消費量が、同齢野生型マウス(n=10)の食物消費量と比較して、有意に減少した。E28W処置インヒビン-αノックアウトマウスの食物摂取量は、試験した3週間の間に、有意に増加することがわかった。E28W処置ノックアウトマウスにおける平均週間食物摂取量は、同齢野生型対照マウスにおける平均週間食物摂取量よりわずかに高いレベルまで増加し、ビヒクルで処置したノックアウトマウスの平均週間食物摂取量より約50%高かった。したがってこのデータは、インヒビン-αKOマウスにおける食欲不振を改善するのにE28W処置が著しく有効であったことを示している。
【0138】
生存時間に対するE28W処置の効果を雄および雌インヒビン-αKOマウスにおいてそれぞれ調べた。雄の場合、50日齢前後のインヒビン-αKOマウス25匹に、E28Wポリペプチドを投与すると共に(10mg/kg/週、SC)、同齢インヒビン-αKOマウス26匹にビヒクル(PBS)を投与した。19匹の同齢野生型雄マウスにビヒクルを与え、それらをベースライン対照として使用した。ビヒクル処置ノックアウトマウスは試験の15日目(65日齢前後)に死に始めた。実験の34日目(84日齢前後)までに、ビヒクル処置ノックアウトマウスの50%が死亡し、78日目(128日齢前後)までには、100%が死亡していた。対照的に、E28Wポリペプチドで処置された25匹のノックアウトマウス、またはビヒクルで処置された19匹の野生型対照マウスのなかで、試験の78日目(128日齢前後)より前に死亡したものはなかった。E28W処置ノックアウトマウスでは、25匹のうちの1匹が試験の78日目(128日齢前後)に死亡し、25匹のうち24匹は、100日目(150日齢前後)を超えても生き残っていた。ビヒクル処置野生型マウスは、100日間の試験期間中に、1匹も死亡しなかった。類似する生存時間結果が、雌インヒビン-αKOマウスでも得られた。約50日齢の雌インヒビン-αKOマウス22匹をE28Wで処置し(10mg/kg/週、SC)、同齢の雌インヒビン-αKOマウス23匹をPBS(ビヒクル)で処置した。一方、17匹の野生型雌対照マウスも、ビヒクルで処置した。ビヒクル処置雌ノックアウトマウスは試験の40日目(90日齢前後)で死に始めた。実験の58日目(108日齢前後)までに、ビヒクル処置雌ノックアウトマウスの50%が死に、試験の86日目(約136日齢)までに、100%が死んでいた。対照的に、E28W処置雌ノックアウトマウスは約5%(22匹中1匹)しか死なず、約90%(22匹中20匹)は、試験の120日目(約170日齢)を超えても生き残っていた。ビヒクル処置野生型マウスは、120日間の試験期間中に1匹も死ななかった。それゆえに、このデータは、E28Wポリペプチド療法が、雄雌両方のインヒビン-αノックアウトマウスの生存時間を劇的に引き延ばすのに有効であることを実証している。雄雌両方のノックアウトマウスについて生存曲線の概略的プロットを
図4に示す。
【0139】
colon-26腫瘍を有するマウスにおける筋消耗の処置
colon-26腫瘍を有するマウスは、がん悪液質を研究するために広く使用されている前臨床動物モデルである(Fujita et al., Int J Cancer 68(5):637-43 (1996)、Kwak et al., Cancer Research 64(22):8193-8 (2004))。体重変化、筋量および生存率に対するE28Wポリペプチドの効果を、腫瘍を有するマウスで調べた。colon-26(C-26)腫瘍細胞を、40匹の10週齢雄CDF1マウスの皮下に、1匹あたり0.5×106細胞の割合で移植した。腫瘍移植は0日目に行った。腫瘍移植後5日目から、毎週、20匹のC-26マウスを10mg/kgのvActRIIB IgG2 Fc E28W(SEQ ID NO:91)の皮下注射で処置すると共に、20匹のC-26マウスをビヒクル(PBS)で処置した。同時に、10匹の同齢および同体重正常マウスをビヒクル(PBS)だけで処置した。体重および食物摂取量を週に3回決定した。腫瘍を有するマウスの生死を毎日2回、点検した。腫瘍サイズは、PCコンピュータに接続したカリパス(Ultra-Cal IV IP65電子カリパス、Fred V Fowler Co.、マサチューセッツ州ボストン)を使って測定され、値は、マイクロソフトExcelデータファイルのワークシートに、自動的に記録された。
図5に示すように、腫瘍移植の2週間後に、C-26腫瘍を有するマウスは重度の悪液質を発症し、その体重を劇的に失った。E28W処置は、腫瘍を有するマウスにおける体重減少を効果的に緩和した。E28Wで処置した腫瘍を有するマウスの平均体重は、ビヒクルで処置した、腫瘍を有するマウスの平均体重より、有意に高かった(p<0.001、腫瘍接種後7日目から33日目まで。対応のないT検定、Graph pad Software Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。
【0140】
E28Wポリペプチド処置群とビヒクル処置群との間に腫瘍サイズの相違はなかったことから、この処置はC-26腫瘍成長には影響しないことが示された。終了時剖検分析により、E28W処置されC-26腫瘍を有するマウスの平均除脂肪枝肉量および腓腹筋重量は、ビヒクルで処置され腫瘍を有するマウスの値より有意に高いことが示された(除脂肪枝肉についても腓腹筋についてもp<0.001)。C-26腫瘍を有するマウスの生存時間に対するE28Wの効果を
図6に示す。ビヒクル処置マウスは腫瘍移植後14日目あたりで死に始めた。腫瘍移植後35日目には、20匹のビヒクルで処置されC-26腫瘍を有するマウスの全てが死亡したが、E28Wで処置されC-26腫瘍を有するマウスは20匹中17引きがまだ生き残っていた。このように、E28W処置は、C-26腫瘍を有するマウスの生存時間の有意な延長につながった(p<0.0001、カイ二乗検定)。それゆえに、E28Wポリペプチドは、C-26腫瘍を有するマウスの体重および筋量の維持に有効であるばかりでなく、生存時間の延長にも有効である。
【0141】
後肢懸垂マウスの処置
後肢懸垂マウスモデルを使って、不使用状態における筋量に対するvActRIIB-IgG2 Fc E28W(SEQ ID NO:91)の効果を調べた。後肢懸垂法は、Carlson CJらが以前に報告したもの(Carlson CJ, Booth FW and Gordon SE: Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 277:R601-RR606, 1999)と本質的に同じである。この試験には9週齢の雌C57BL/6マウスを使用した。合計60匹のマウスを次のとおり3群に分割した:1.ビヒクル(PBS)で処置される非懸垂ベースライン対照群(20匹)、2.ビヒクルで処置される後肢懸垂群(20匹)、および3. vActRIIB-IgG2 Fc,E28Wで処置される後肢懸垂群(20匹)。具体的には、後肢懸垂の開始時に、30mg/kgのvActRIIB-IgG2 Fc E28Wかビヒクルかどちらか一方の単回SC注射を、上述の群のそれぞれに与えた。体重変化を、週に2〜3回、経時的に測定した。次に挙げる4つの異なる時点において、各群からの5匹を屠殺した:1日目、3日目、7日目および14日目。腓腹筋重量を剖検によって決定した。
【0142】
下記の表に示すように、後肢懸垂は最大10%の体重の有意な喪失につながった。vActRIIB-IgG2 Fc E28Wによる後肢懸垂マウスの処置は、ANOVA測定で解析すると、ビヒクル処置後肢懸垂群または非懸垂ベースライン対照群のどちらよりも高いレベルへの有意な体重増加につながった。2週間の試験期間中に、ビヒクル処置懸垂群における0.2%の低下および非懸垂ベースライン対照群における4.8%体重増加とそれぞれ比較して、vActRIIB-IgG2 Fc E28W(SEQ ID NO:91)処置群の平均体重増加は12.6%であった。経時剖検結果は、後肢筋量が体重と並行して変化することを示した。vActRIIB-IgG2 Fc(E28W)による懸垂マウスの処置は、筋喪失を完全に緩和した。それゆえにこの実験の結果は、不使用に関連する筋萎縮の処置に、E28Wが有効であることを示している。
【0143】
OVXマウスの処置
卵巣切除雌C57Bl6マウス(OVX)は、女性の性腺機能低下症および骨粗しょう症のモデルであるとみなされている。24匹の雌C57Bl6マウスを3月齢時に卵巣切除し、3ヶ月間、回復させた。6月齢時に、24匹のOVXマウスならびに24匹の同齢シャム手術対照C57Bl6マウスを、3ヶ月の処置期間にわたる体重、筋量、およびNMRによる脂肪量、骨量(PIXImus-GE LUNAR Corporation)の経時変化について測定した。期間の終了時に動物を屠殺し、終了時剖検中に骨組織を収穫し、Faxitron X線およびマイクロCT(Faxitron X-ray CorporationおよびGE Medical system)分析に供した。E28W変異受容体(SEQ ID NO:91)は、体重、具体的には除脂肪骨格筋量、および骨量を増加させると同時に、マウスの脂肪含量を非卵巣切除マウスに見られるレベルにまで減少させるのに有効であることが実証された。具体的には、12週間の期間で、除脂肪筋量は、E28Wで処置したシャム手術マウスの20gから27.5gと比較して、また、OVX+ビヒクルまたはシャム+ビヒクルでは除脂肪筋量の増加がほとんどなかったこと(OVX+ビヒクルの場合で約19グラム、野生型+ビヒクルの場合で約20g)と比較して、E28Wで処置したOVXマウスでは20gから27.0gまで増加した。同じ試験において、E28Wで処置したOVXマウスは、12週間の試験の終了時までに、1匹あたり8g平均から、シャム手術動物に匹敵する1匹あたり約4g平均へと脂肪量の減少を示した。ビヒクルで処置したOVXマウスは、対照的に、試験中どの時点においても、脂肪量の喪失がなかった。最後に骨量は、E28Wで処置したOVXマウス処置では、ビヒクル処置OVXマウスと比較して増加した。終了時剖検の際に収穫した切離骨の大腿骨/脛骨BMC(骨塩含量)の分析は、pQCT分析(末梢定量的コンピュータ断層撮影法)で行った。E28Wで処置したOVXマウスは、約0.045g/cmのBMCが、12週間の試験の終了時に、シャム手術ビヒクル処置動物の最終BMCに匹敵する約0.055g/cmまで増加した。ビヒクルで処置したOVXマウスは、12週間の試験の終了時に0.045g/cmというほぼ同じBMCを示した。E28W処置野生型マウスは、12週間の試験の終了時に、約0.054g/cmから約0.065g/cmへのBMCの増加を示した。これらの試験は、加齢に伴う虚弱、骨粗しょう症および肥満の潜在的処置としてのE28Wポリペプチドの有効性を実証している。
【0144】
実施例4: sActRIIB(E28W-SEQ ID NO:91)によるがんの処置
卵巣がん(OC)を持つマウスにおけるアクチビンレベルを知らべた(
図7A)。循環アクチビンAレベルは、卵巣がん(OC)を持つマウスでは、正常対照対象(正常)と比較して有意に上昇していた。血清中アクチビンAはELISAで測定した。sActRIIB(E28W)(SEQ ID.NO:91)による卵巣がん処置の効果を
図7B〜7Dに示す。樹立した卵巣腫瘍を持つ12週齢の雌KOマウスを、sActRIIBまたはPBSの単回注射で、14日間処置した。対照同齢雌野生型同腹仔にはPBSを与えた。KOマウスにおけるアクチビンAの上昇した循環レベルは、sActRIIB処置によって、野生型対照レベルまで迅速に減少したことが、
図7Bからわかる。血清中アクチビンAは、処置後0日目、1日目および14日目に、ELISAによって測定した。
【0145】
図7Cでは、sActRIIB処置が、KOマウスにおける卵巣腫瘍塊を、野生型対照レベルにまで迅速に減少させたことがわかる。個々の動物の卵巣(左右)の重量を、0日目、1日目および14日目の剖検により、コホートごとに分析した。14日間のsActRIIB処置に応答して起こるKOマウスにおける進行卵巣腫瘍の劇的な退縮を表す卵巣の代表的な外部形態像(
図7D)。
【0146】
sActRIIBで処置したKOマウスにおいていくつかの追加観察を行った(データ未掲載)。KOマウスの卵巣腫瘍にはアクチビンA mRNAの過剰発現が見られた。この過剰発現は、sActRIIB処置によって防止された。加えて、sActRIIB処置は、KOマウスの卵巣腫瘍におけるホスホ-Smad2の増加を完全に遮断した。また、KOマウスの卵巣腫瘍におけるE-カドヘリンの激しい喪失も、sActRIIB処置によって逆転した。最後に、代表的な免疫組織化学像は、KOマウスの卵巣切片からのE-カドヘリン免疫反応性の完全な消失と、sActRIIBによる14日間の処置後の強いE-カドヘリン染色の再出現とを示した。
【0147】
図8Aは、インヒビン-αKOマウスにおいて、アクチビンA遮断が卵巣腫瘍におけるVEGFの過剰発現を消滅させうることを示している。樹立した卵巣腫瘍を持つ12週齢の雌KOマウスを、sActRIIBまたはPBSの単回注射で14日間処置した。対照として、同齢雌野生型同腹仔にPBSを与えた。ELISAデータから、KOマウスでは血清中VEGFレベルが著しく上昇するが、sActRIIB処置後は野生型対照レベルまで減少することが明らかになる。
【0148】
加えて、未掲載のデータでは、免疫組織化学染色像は、KOマウスの卵巣腫瘍切片において、劇的に増加したVEGFおよびAng-1免疫反応性を示し、それがsActRIIB処置によって完全に消滅することが、観察された。ウェスタンブロット分析により、KOマウスの卵巣腫瘍では、腫瘍血管新生関連タンパク質エンドグリン、オステロポンチン(Osteropontin)、IGFBP-1およびIGFBP-2の発現が、高度に誘導されたが、sActRIIB処置後は野生型対照レベルまで減少したことも、明らかになった。
【0149】
免疫組織化学分析により、sActRIIB処置はKOマウスの精巣腫瘍におけるカスパーゼ-3活性化につながることが示された。
図8Bにおいて、矢印は、残存腫瘍細胞がクラスターを形成している、sActRIIB処置卵巣腫瘍切片における活性カスパーゼ-3免疫反応性を指摘している。PBS処置卵巣細胞切片には活性カスパーゼ3免疫染色が存在しなかった。右側のヒストグラムは、各群3匹からの複数の卵巣切片に基づく、活性カスパーゼ-3の定量的分析を示している。
【0150】
別の実験では、アクチビンA拮抗作用が、アンジオポエチン-1過剰発現を抑制し、TOV-21Gヒト卵巣がん異種移植片の腫瘍微小環境における新血管形成を防止することが示された。TOV-21G卵巣がん異種移植片の移植は、CD1ヌードマウスの循環中のアクチビンAの上昇をもたらした。アクチビンAはELISAによって測定した。アクチビンAアンタゴニストであるsActRIIBの投与は、CD1ヌードマウスにおけるTOV-21G腫瘍成長を抑制した。腫瘍移植後12日目にTOV-21G異種移植片を有するマウスをsActRIIBまたはPBSで処置した。
【0151】
アクチビンAの遮断は、細胞培養におけるTOV-21G細胞のインビトロでの増殖に影響を及ぼさなかった。TOV21G細胞の成長を、IncuCyteシステムを使って「リアルタイムインビトロマイクロイメージング」によってモニターした。細胞播種の時点でアクチビンA阻害剤を加えた。スタウロスポリンは、細胞成長の阻害に関する陽性対照として、モニタリングシステムの信頼性を実証するために使用された。
【0152】
TOV-21G卵巣腫瘍異種移植片では、アクチビンAを遮断するとAng-1過剰発現が抑制され、腫瘍新血管形成が阻害された。TOV-21G異種移植片を有するヌードマウスを、腫瘍移植後12日目に、sActRIIBまたはPBSで処置した。TOV-21G腫瘍を処置後の異なる時点で単離し、次に、新生脈管構造のマーカーとしてのAng-1およびCD31に関する免疫組織化学染色に供した。細胞核を対比染色した。
【0153】
TOV-21G異種移植片腫瘍におけるカスパーゼ-3活性化およびがん細胞アポトーシスも、アクチビンAの遮断に続いて起こった。TOV-21G腫瘍切片を、カスパーゼ-3活性化に関して活性カスパーゼ-3特異的抗体を使って、また細胞アポトーシスに関してTUNEL染色を使って、免疫組織化学的に調べた。sActRIIBは、活性カスパーゼ-3および細胞アポトーシスを誘導した。
【0154】
これらの実験は、アクチビンAが複数の細胞タイプ(すなわち、がん細胞、内皮細胞、線維芽細胞および単球細胞)による血管新生因子過剰発現(例えばVEGF-AおよびAng-1)を刺激することができ、他方、腫瘍において上昇しているアクチビンAを遮断すると、血管新生因子の過剰発現が防止され、結果として、カスパーゼ-3および細胞アポトーシスが活性化されて、腫瘍抑制につながることを実証している。
【0155】
実施例5:卵巣および精巣の形態
PBSまたはsActRIIBで2週間処置された10週齢雄および14週齢雌インヒビン-αKOマウスならびに同齢野生型対照における卵巣および精巣腫瘍の組織学的試験を行った。8週齢雄および12週齢雌インヒビン-αKOマウスには、sActRIIBまたはPBSの単回注射を行った。処置の14日後に、卵巣器官および精巣器官を剖検によって収集した。組織切片を、卵巣については過ヨウ素酸シッフ染色、精巣についてはマッソン三色染色に付した。
【0156】
無処置の雌KOマウスでは、著しく拡大した卵巣は、圧倒的に固形がん塊と大量の出血とで満たされ、認識可能な卵胞はほとんど残っていなかった。しかし、sActRIIB処置後は、卵巣が正常サイズになり、その形態は比較的正常に見え、多くの卵胞を認識することができ、がん浸潤はごくわずかであり、出血もほとんどなかった。したがって、この顕微鏡分析は、腫瘍重量および外部形態に関する本発明者らの知見を裏付けており、この顕微鏡分析により、sActRIIB処置はKO動物の精巣および卵巣において劇的ながん退縮を引き起こすことが確認された。無処置雄KOマウスでは、精細管は大半が大量の未分化がん塊で置き換えられていたので、光学顕微鏡ではもはや正常な精巣構造を認識することができなかった。しかし、sActRIIB処置後は、精巣構造が比較的正常に見え、2、3個の小領域にまだ残存がん細胞が含まれ、一部の細管中の精原細胞の数は減少していたものの、精細管の大半は無傷であった。
【0157】
sActRIIB処置は、KOマウスにおける精巣腫瘍塊を、野生型対照レベルまで、迅速に縮小させることもわかった。個々の動物の精巣(左右)の重量を、処置直前および処置の14日後に、剖検によってコホートごとに分析した。この実験では、P<0.001、対野生型対照。n=6〜12。
【0158】
加えて、sActRIIBは、インヒビン-αKOマウスの精巣腫瘍において、VEGFおよびAng-1の過剰発現を消滅させ、カスパーゼ-3活性化を誘導することがわかった。アンジオポエチン-2転写産物は、sActRIIB処置後は、卵巣腫瘍でも精巣腫瘍でも、対照レベルに向かって減少した。
【0159】
実施例6:sActRIIBと化学療法剤との併用の効果
ヌードマウス中のTOV21G腫瘍性超阻害に対するアクチビンアンタゴニストsActRIIBおよび細胞毒性化学療法剤5-フルオロウラシルの効果。(
図9A)TOV-21G異種移植片を有するヌードマウスを、腫瘍移植後12日目に、それぞれsActRIIB、5-Fu、またはsActRIIBと5-Fuとの組み合わせで処置した。腫瘍体積の変化を経時的に記録した。sActRIIBは単独で腫瘍体積を34%減少させ、5-フルオロウラシル(5-FU)は単独で腫瘍体積を49%減少させることが、
図9Aでわかる。しかし、これら2つを組み合わせると、腫瘍体積は74%減少する。
【0160】
図9Bは、ヌードマウスにおけるG361ヒト黒色腫異種移植片の成長阻害に対するsActRIIBおよびダカルバジンの効果を示している。BALB/cヌードマウスをsActRIIB、ダカルバジン、またはsActRIIB+ダカルバジンで処置した。ダカルバジン併用試験のために、G361異種移植片(5×10
6細胞/匹)を移植したBALB/cヌードマウスを、腫瘍移植後18日目から、sActRIIBのみ(10mg/kg、SC、1回/週)、ダカルバジンのみ(5mg/kgで1日1回のIP注射を4日連続)、またはsActRIIBと5-FUとの組み合わせで処置した。腫瘍体積を、移植後26日目まで、電子カリパスによって経時的に測定した。
【0161】
化学療法剤とsActRIIBとが、おそらく異なる機序で作用することを考えると、実証された結果、すなわち両作用物質の組み合わせが、どちらか個別の作用物質よりも大きな影響を総合的腫瘍成長に及ぼすことは、必ずしも予想されなかったと考えられる。
【0162】
卵巣がんは、全ての婦人科がんのなかで最も致命的である。月経周期の調節に重要な機能を果たす性腺サイトカインであるアクチビンAは、卵巣がんを含む多くの悪性疾患において強く発現する。アクチビンAを中和すると、インヒビン欠損マウス中で樹立した卵巣腫瘍は根絶され、ヌードマウスにおける複数のアクチビンA分泌性卵巣異種移植片腫瘍の成長が著しく妨害される。アクチビンAの遮断は、細胞培養中の卵巣がん細胞のインビトロでの増殖に、直接的な効果は持たないと考えられるが、インビボでは、血管新生因子(すなわちVEGFおよびアンジオポエチン)の過剰発現を完全に消滅させ、腫瘍微小環境における新血管形成を阻害する。これは、それにより、卵巣腫瘍におけるカスパーゼ-3活性化およびがん細胞アポトーシスを誘発する。インビボでのこの顕著な効果は、少なくとも部分的には、腫瘍微小環境内に存在する宿主の内皮細胞における血管新生因子の過剰産生を惹起する腫瘍由来アクチビンAの能力よって説明することができる。卵巣腫瘍だけでなく、アクチビン遮断は、アクチビンAを分泌する少なくとも2つの他のがんタイプ(精巣腫瘍および黒色腫)のインビボ成長を阻害することも見出された。重要なことに、アクチビン拮抗作用の腫瘍阻害効果は、5-フルオロウラシルまたはダカルバジン化学療法の腫瘍阻害効果に少なくとも相加的であることがわかった。これらの発見は、腫瘍血管新生および腫瘍発生の臨床的メディエータとしてのアクチビンAの機能を実証している。それゆえに、上昇したアクチビンAをsActRIIBで遮断することは、卵巣がん、精巣がん、黒色腫、そしておそらく他の悪性疾患と戦うための有望な新しいアプローチであると思われる。
【0163】
本発明は、本明細書に記載する特定の態様によって、その範囲を限定されるものではない。それらの特定の態様は、本発明の個々の局面のほんの一例として挙げられているにすぎず、機能的に等価な方法および構成要素は、本発明の範囲内にある。事実、本明細書に示し説明したものに加えて、本発明のさまざまな変更態様が、上述の説明および添付の図面から当業者には明白になると考えられる。そのような変更態様は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。