特許第6542458号(P6542458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6542458
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】化粧用シート
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20190628BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190628BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20190628BHJP
   D04H 1/495 20120101ALI20190628BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20190628BHJP
【FI】
   A45D34/04 535B
   A61K8/73
   A61K8/02
   D04H1/4374
   D04H1/495
   D04H1/732
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-212768(P2018-212768)
(22)【出願日】2018年11月13日
【審査請求日】2018年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2018-185739(P2018-185739)
(32)【優先日】2018年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐子
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−4264(JP,A)
【文献】 特開2010−18553(JP,A)
【文献】 特開2008−155566(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076660(US,A1)
【文献】 特許第6387474(JP,B1)
【文献】 実開平7−2483(JP,U)
【文献】 特許第5260784(JP,B1)
【文献】 特開2006−109984(JP,A)
【文献】 特許第5388535(JP,B2)
【文献】 特許第5436002(JP,B2)
【文献】 再公表特許第2015/152013(JP,A1)
【文献】 太田 豊,化粧メーカーの美容医療の取り組み,FRAGRANCE JOURNAL,日本,フレグランス ジャーナル社,2007年 8月15日,第35巻第8号,66−68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の面に配置されたスパンレース不織布と、
前記スパンレース不織布に積層され、かつ他方側の面に配置されたエアレイド不織布と、を有し、
前記エアレイド不織布は、疎水性繊維を含まず、親水性繊維を含み、
前記エアレイド不織布の前記親水性繊維は、レーヨン繊維とパルプ繊維を含み、
前記レーヨン繊維の坪量は、2.0g/m以上7.0g/m以下であり、
前記エアレイド不織布を厚さ方向において三等分した領域のうち、厚さ方向の外側に位置する側部領域における前記レーヨン繊維の坪量は、前記三等分した領域のうち厚さ方向の中央に位置する中央領域における前記レーヨン繊維の坪量よりも高い、化粧用シート。
【請求項2】
前記化粧用シートは、使用前の状態において折り線を基点に折り畳まれており、
前記折り畳まれた状態で、前記スパンレース不織布は、外側に配置されている、請求項1に記載の化粧用シート。
【請求項3】
前記化粧用シートは、使用前の状態において折り線を基点に折り畳まれており、
前記折り畳まれた状態で、前記エアレイド不織布は、外側に配置されている、請求項に記載の化粧用シート。
【請求項4】
前記折り線に重なって形成された切り取り線を有し、
前記スパンレース不織布は、前記切り取り線に沿って配向された繊維を有する、請求項又は請求項に記載の化粧用シート。
【請求項5】
前記スパンレース不織布は、オーガニックコットン繊維を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の化粧用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧等に使用される化粧用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、化粧等に使用される化粧用シートが記載されている。特許文献1の化粧用シートは、エアレイド不織布によって構成されている。エアレイド不織布は、一般的に吸液性及び液戻りがよく、化粧水等の液体を適切に引き込み、かつ引き込んだ液体を適切に放出し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5388535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化粧用シートを使用する際は、化粧用シートに化粧水等の液体を引き込んだ状態で、肌にパッティングしたり、肌に押し当てた状態で肌に滑らせたりして、肌に当接させる。このとき、化粧用シートの肌触りがよいと使用感が向上するため、肌触りの向上が求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、肌触りの向上と、吸液性及び液戻りの向上と、を両立できる化粧用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る化粧用シートは、一方側の面に配置されたスパンレース不織布と、前記スパンレース不織布に積層され、かつ他方側の面に配置されたエアレイド不織布と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
化粧用シートにおける肌触りの向上と吸液性及び液戻りの向上とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、化粧用シートの斜視図である。
図2図2は、化粧用シートの展開状態の平面図である。
図3図3は、図2に示すA−A線に沿った化粧用シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る化粧用シートは、一方側の面に配置されたスパンレース不織布と、前記スパンレース不織布に積層され、かつ他方側の面に配置されたエアレイド不織布と、を有する。
【0010】
化粧用シートの他方側の面にエアレイド不織布が配置されているため、吸液性及び液戻りが向上し、化粧水等の液体を適切に引き込み、かつ引き込んだ液体を適切に放出し易い。また、化粧用シートの一方側の面にスパンレース不織布が配置されているため、液拡散性がよく肌触りを向上させることができる。よって、肌触りの向上と、吸液性及び液戻りの向上と、を両立できる。
【0011】
好ましい一態様によれば、前記エアレイド不織布は、疎水性繊維を含まず、親水性繊維を含んでよい。
【0012】
本態様によれば、エアレイド不織布が疎水性繊維を含まないため、疎水性繊維を含むエアレイド不織布と比較して、柔らかく、肌に対する触感を向上できる。親水性繊維は、特に液体によって濡れた際に柔らかくなり、吸水しない合成繊維のような疎水性繊維を含む場合の異物感が抑制できるため、エアレイド不織布の肌触りをより向上できる。
【0013】
好ましい一態様によれば、前記エアレイド不織布の前記親水性繊維は、レーヨン繊維とパルプ繊維を含み、前記レーヨン繊維の坪量は、2.0g/m以上7.0g/m以下であってよい。
【0014】
本態様によれば、レーヨン繊維の坪量が2.0g/m以上であることにより、MMD(平均摩擦係数の変動値)及びSMD(平均摩擦係数の変動値)を小さくし、表面のざらつき及び表面の凹凸を低減でき、表面の滑りやすさを向上できる。また、レーヨン繊維の坪量が7.0g/m以下であることにより、レーヨン繊維が偏って配置されることによる表面の凹凸を抑制できる。
【0015】
好ましい一態様によれば、前記エアレイド不織布の前記親水性繊維は、レーヨン繊維とパルプ繊維を含み、前記エアレイド不織布を厚さ方向において三等分した領域のうち、厚さ方向の外側に位置する側部領域における前記レーヨン繊維の坪量は、前記三等分した領域のうち厚さ方向の中央に位置する中央領域における前記レーヨン繊維の坪量よりも高くてよい。
【0016】
本態様によれば、側部領域は、中央領域よりも厚さ方向の外側に位し、化粧用シートの他方側の面において肌に対して当接する。当該側部領域のレーヨン繊維の坪量が比較的高いため、化粧用シートの少なくとも他方側の面の滑らかさを向上させ、肌触りをより向上できる。
【0017】
好ましい一態様によれば、前記化粧用シートは、使用前の状態において折り線を基点に折り畳まれており、前記折り畳まれた状態で、前記スパンレース不織布は、外側に配置されてよい。
【0018】
本態様によれば、スパンレース不織布は、折り畳まれた状態で外側に配置されているため、折り畳まれた状態で表面側に位置する面を肌に当てて使用する際に、肌触りを向上できる。また、使用前に、化粧用シートの表面を指でなでた際に、指を滑らかに滑らせることができ、使用前に肌に優しい心証を持つことができ、安心して使用することができる。
【0019】
好ましい一態様によれば、前記化粧用シートは、使用前の状態において折り線を基点に折り畳まれており、前記折り畳まれた状態で、前記エアレイド不織布は、外側に配置されてよい。
【0020】
本態様によれば、折り畳まれた状態で化粧用シートの表面側に位置する面の液体の引き込み性が高く、また引き込んだ液体の放出性が高い。よって、化粧用シートの表面側から導入した液体をシート内面側に導き、内面側のスパンレース不織布によって広く拡散させ、拡散した液体を表面側のエアレイド不織布によって肌に放出できる。少ない液体であっても、広い面積で液体を肌に当てることができる。
【0021】
好ましい一態様によれば、前記折り線に重なって形成された切り取り線を有し、前記スパンレース不織布は、前記切り取り線に沿って配向された繊維を有してよい。
【0022】
本態様によれば、切り取り線を介して化粧用シートを分離して使用することができる。このとき、スパンレース不織布の繊維が切り取り線に沿っているため、切り取り線に沿って化粧用シートが分離しやすくなる。
【0023】
好ましい一態様によれば、前記スパンレース不織布は、オーガニックコットン繊維を含んでよい。
【0024】
本態様によれば、化粧用シートの少なくとも一方側の面にオーガニックコットン繊維が配される。オーガニックコットン繊維は、無農薬又は低農薬で栽培されるため、地球環境に優しく、また肌に優しいという安心感を使用者に与えることができる。
【0025】
(2)化粧用シートの全体概略構成
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る化粧用シートについて説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
本実施の形態の化粧用シートは、化粧水等の液体を含浸させた状態、粉体、クリーム、ジェル等を付着させた状態あるいはそのままで、使用者の顔面に押し当てたり、パッティングしたり、パックしたり、肌に塗らせたりして使用する。図1は、折り畳まれた状態の化粧用シート1の斜視図である。図2は、展開状態の化粧用シート1の平面図である。図3は、図2のA−A断面の模式断面図である。
【0027】
化粧用シート1は、平面方向に延びる第1方向D1及び第2方向D2と、厚さ方向Tと、を有する。第1方向D1、第2方向D2及び厚さ方向Tは、互いに直交する。化粧用シート1は、使用前の状態において第2方向D2に延びる折り線FLを基点に折り畳まれていてよい。化粧用シート1は、使用時に、図1に示すように、折り畳まれた状態であってもよいし、図2に示すように、折り線FLを基点に展開されていてもよい。展開状態において化粧用シート1の第1方向D1の長さは、化粧用シート1の第2方向D2の長さよりも長くてよい。折り線FLは、化粧用シート1の第2方向D2の全域に亘って形成されてよい。
【0028】
化粧用シート1は、厚さ方向Tの一方側の面1Aに配置されたスパンレース不織布20と、スパンレース不織布20に積層され、かつ厚さ方向Tの他方側の面1Bに配置されたエアレイド不織布10と、を有する。化粧用シート1は、少なくとも図2に示す展開状態において、一方側の面1Aにスパンレース不織布20が配置され、他方側の面1Bにエアレイド不織布10が配置されていればよい。化粧用シート1の他方側の面1Bにエアレイド不織布10が配置されているため、吸液性及び液戻りが向上し、化粧水等の液体を適切に引き込み、かつ引き込んだ液体を適切に放出し易い。また、化粧用シート1の一方側の面1Aにスパンレース不織布20が配置されているため、肌触りを向上させることができる。よって、肌触りの向上と、吸液性及び液戻りの向上と、を両立できる化粧用シート1を提供できる。
【0029】
加えて、スパンレース不織布20は、エアレイド不織布10と比較して平面方向における拡散性が高い。エアレイド不織布10によって厚さ方向Tの内側に引き込んだ液体をスパンレース不織布20によって平面方向に拡散できる。よって、少ない液体であっても、化粧用シート1の広い面積に拡散させ、広い面積において液体を肌に当接させることができる。
【0030】
化粧用シート1は、エアレイド不織布10及びスパンレース不織布20を有していればよく、エアレイド不織布10とスパンレース不織布20の間に他の不織布等のシートを有していてもよい。本実施の形態の化粧用シート1は、エアレイド不織布10と、スパンレース不織布20と、エアレイド不織布10とスパンレース不織布20との間に位置する接着層30と、を有している。接着層30は、エアレイド不織布10とスパンレース不織布20を接着するHMA型接着剤が配置されていてよい。接着層30は、接着剤の坪量を小さくすることが好ましく、スプレーによって塗工されていてよい。
【0031】
エアレイド不織布10は、疎水性繊維を含まず、親水性繊維を含んでよい。エアレイド不織布10を構成する繊維は、親水性繊維のみであってもよい。エアレイド不織布10が疎水性繊維を含まないため、疎水性繊維を含むエアレイド不織布と比較して、柔らかく、肌に対する触感を向上できる。親水性繊維は、特に液体によって濡れた際に柔らかくなり、吸水しない合成繊維のような疎水性繊維を含む場合の異物感が抑制できるため、エアレイド不織布の肌触りをより向上できる。
【0032】
エアレイド不織布10は、パルプ繊維とレーヨン繊維を含んでよい。レーヨン繊維の坪量は、2.0g/m以上7.0g/m以下であってよい。レーヨン繊維の坪量が2.0g/m以上であることにより、MMD(平均摩擦係数の変動値)及びSMD(平均摩擦係数の変動値)を小さくし、表面のざらつき及び凹凸を低減でき、表面の滑りやすさを向上できる。また、レーヨン繊維の坪量が7.0g/m以下であることにより、レーヨン繊維が偏って配置されることによる表面の凹凸を抑制できる。加えて、レーヨン繊維を含むことにより、レーヨン繊維を含まない構成と比較して、液体の離水性及び保持性を向上でき、また不織布の繊維による骨格が安定し、使用時に形状を維持し易くなる。
【0033】
エアレイド不織布10の坪量は、40g/m以上60g/m以下であってよい。本実施の形態のエアレイド不織布10は、パルプ繊維とレーヨン繊維を含んでおり、パルプ繊維とレーヨン繊維を積層後にゴム系のバインダーによって繊維を固定している。エアレイド不織布の坪量は、50g/mである。なお、バインダーは、ゴム系に限定されず、アクリル系やEVA樹脂であってもよい。
【0034】
エアレイド不織布10は、厚さ方向Tにおいて三等分した領域を有してよい。三等分した領域は、厚さ方向Tの外側に位置する一対の側部領域11と、側部領域11の間に位置し、厚さ方向Tの中央に位置する中央領域12と、を有する。一つの側部領域11のうち一方は、化粧用シート1の他方側の面1Bを構成する。側部領域11におけるレーヨン繊維の坪量は、中央領域12におけるレーヨン繊維の坪量よりも高い。側部領域11は、中央領域12よりも厚さ方向の外側に位し、化粧用シート1の他方側の面1Bにおいて肌に対して当接する。当該側部領域11のレーヨン繊維の坪量が比較的高いため、他方側の面1Bの滑らかさを向上させ、肌触りをより向上できる。
【0035】
好適には、側部領域11の厚さ方向の外側に位置する面には、レーヨン繊維が90%以上配置されてよく、より好適には、側部領域11の厚さ方向の外側に位置する面には、レーヨン繊維が100%配置されてよい。化粧用シート1の他方側の面1Bの滑らかさを向上させ、肌触りをより向上できる。
【0036】
エアレイド不織布10は、パルプ繊維を主に含有するパルプ層と、レーヨン繊維を主に含有するレーヨン層と、を有してよい。レーヨン層は、パルプ層の厚さ方向の両側の面に配置されてよい。エアレイド不織布の両面にレーヨン層が配置されていることにより、スパンレース不織布とレーヨン層が接着層30を介して接着される。スパンレース不織布とパルプ層が接着される構成と比較して、層間剥離を抑制し、接着状態を維持しやすくなる。
【0037】
スパンレース不織布20は、化粧水等の液体を平面方向に拡散でき、使用者は、少ない液体でも十分広がったと感じ易くなる。スパンレース不織布は、コットン繊維を含んでよく、より好適には、オーガニックコットン繊維を含んでいてよい。ここで、「オーガニックコットン」は、農業段階において、国際的な基準(CODEXに準じた各国の基準)に基づき有機性が認証され、それが証明されるコットンを意味する。化粧用シート1の少なくとも一方側の面1Aにオーガニックコットン繊維が配される。オーガニックコットン繊維は、無農薬又は低農薬で栽培されるため、地球環境に優しく、また肌に優しいという安心感を使用者に与えることができる。
【0038】
スパンレース不織布20は、オーガニックコットン繊維を90重量%以上有してよく、好適には、100重量%であってよい。スパンレース不織布は、一般的に肌触りがよく、オーガニックコットン繊維による安心感と肌触りのよさを与えることができる。よって、使用者は、肌により優しい心証を持ち、安心して使用することができる。本実施の形態のスパンレース不織布20は、オーガニックコットン繊維を100重量%有し、坪量は、25g/mである。
【0039】
スパンレース不織布20の坪量に対するエアレイド不織布の坪量の比率は、1.5以上2.5以下であってよく、本実施の形態の比率は、2.0である。スパンレース不織布20の坪量を高くすることにより、スパンレース不織布20の表面の凹凸が小さくなり、スパンレース不織布20の表面が滑らかになる。一方、スパンレース不織布20の坪量を低くし、比率が2.5以下であることにより、スパンレース不織布が硬くなり過ぎず、柔らかさを確保できる。また、エアレイド不織布の坪量を高くすることにより、離水性を確保できる。一方、エアレイド不織布は、坪量に対する嵩の比率が高く、化粧用シートの嵩(厚さ)を確保でき、触感を向上できる。
【0040】
図1に示すように、化粧用シートは、使用前の状態において折り線を基点に折り畳まれてよい。化粧用シート1が折り畳まれた状態で、スパンレース不織布20は、厚さ方向Tの外側に配置されており、エアレイド不織布10は、厚さ方向Tの内側に配置されてよい。スパンレース不織布20は、折り畳まれた状態で外側に配置されているため、折り畳まれた状態で表面側に位置する面を肌に当てて使用する際に、肌触りを向上できる。また、使用前に、化粧用シート1の表面を指でなでた際に、指を滑らかに滑らせることができ、使用前に肌に優しい心証を持つことができ、安心して使用することができる。
【0041】
また、他の形態において、化粧用シート1が折り畳まれた状態で、エアレイド不織布10は、厚さ方向Tの外側に配置されており、スパンレース不織布20は、厚さ方向Tの内側に配置されてよい。折り畳まれた状態で化粧用シートの表面側に位置する面の液体の引き込み性が高く、また引き込んだ液体の放出性が高い。よって、化粧用シートの表面側から導入した液体をシート内面側に導き、内面側のスパンレース不織布によって広く拡散させ、拡散した液体を表面側のエアレイド不織布によって肌に放出できる。少ない液体であっても、広い面積で液体を肌に当てることができる。
【0042】
化粧用シート1は、折り線FLに重なって形成された切り取り線2を有してよい。切り取り線2は、展開状態において化粧用シート1の厚さ方向の全域に貫通して形成されてよい。切り取り線2は、ミシン目であってよい。切り取り線を有することにより、使用者は、切り取り線を介して化粧用シート1を分離することができる。
【0043】
化粧用シート1のスパンレース不織布20は、切り取り線2に沿って配向された繊維を有してよい。切り取り線を介して化粧用シートを分離して使用することができる。このとき、スパンレース不織布の繊維が切り取り線に沿っているため、切り取り線に沿って化粧用シートが分離しやすくなる。切り取り線2に沿って配向された繊維とは、切り取り線に対する角度が45度未満の繊維である。切り取り線2に沿って配向された繊維は、スパンレース不織布を構成する繊維のうち50%以上であってよく、好適には、80%以上であってよい。繊維の配向角度を測定する方向としては、スパンレース不織布の平面を電子顕微鏡で撮影し、繊維の一端と他端の繋ぐラインを繊維の配向角度とする。
【0044】
次いで、エアレイド不織布10のレーヨン繊維による表面特性の評価について説明する。表面特性の評価は、実施例1から実施例4に係る化粧用シートのエアレイド不織布側の面におけるMMD(摩擦係数の平均偏差)及びSMD(表面粗さの平均偏差)を測定した。各サンプルにおいて、エアレイド不織布のレーヨン繊維の坪量を異ならせ、レーヨン繊維の坪量による表面特性を評価した。サンプル数は3とし、その平均値を算出した。測定結果を表1に示す。
【0045】
MMD(摩擦係数の平均偏差)及びSMD(表面粗さの平均偏差)の測定は、シートの表面の感触を表す特性値として一般的に知られている、カトーテック株式会社製のKESでの特性値(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄 発行昭和55年7月10日)に基づいて測定できる。
【0046】
具体的には、表面特性の測定は、カトーテック(株)製KES−FB4を用いて、各サンプルにおいて10×10cmを試料とし、平滑な金属平面の試験台に配置して行った。表面粗さの測定は、その表面(又は裏面)上に、10gfの荷重を掛け、かつ、0.5mm径のピアノ線で巻かれた幅0.5cmの接触端子を試料に圧着させて行い、また、表面摩擦の測定は、表面粗さの測定に用いた接触端子と同じピアノ線を巾1.0cmに20本並べ重錘によって50gfの力で接触面を試料に圧着させて行う。表面摩擦及び表面粗さの測定では、試料を0.1cm/secの一定速さで水平に2cm移動させ、試料には10g/cmの一軸張力が与えられる。測定結果により、MMD(摩擦係数の平均偏差)及びSMD(表面粗さの平均偏差)を求めた。
【0047】
【表1】
表1の測定結果から、エアレイド不織布の表面のMMDの値及びSMDの値が小さく、表面が滑らかであり、特にレーヨン繊維の坪量が2.0g/m以上7.0g/mであることにより、MMDの値及びSMDの値がより小さく、表面がより滑らかになることがわかった。
【0048】
次いで、スパンレース不織布による液の拡散性の評価について説明する。液の拡散性は、実施例に係る化粧用シートと、比較例に係る化粧用シートと、を用いて、液の拡散性を評価した。実施例に係る化粧用シートは、本実施の形態に係るスパンレース不織布とエアレイド不織布の2層構造の化粧用シートである。比較例にかかる化粧用シートは、エアレイド不織布の1層構造の化粧用シートである。各化粧用シートから50×50mmのサンプルを切り出し、1ccの精製水を滴下し、5秒経過後の拡散面積によって評価した。結果を表2に示す。
【表2】
表2の測定結果により、実施例に係る化粧用シートのスパンレース不織布側の面は、エアレイド不織布側の面及び比較例に係る化粧用シートの両側の面よりも拡散面積が広く、液の拡散性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、肌触りの向上と吸液性及び液戻りの向上とを両立できる化粧用シートを提供できる。
【符号の説明】
【0050】
1 :化粧用シート
1A :一方側の面
1B :他方側の面
2 :切り取り線
10 :エアレイド不織布
11 :側部領域
12 :中央領域
20 :スパンレース不織布
30 :接着層
D1 :第1方向
D2 :第2方向
FL :折り線
T :厚さ方向
【要約】
【課題】肌触りの向上と、吸液性及び液戻りの向上と、を両立できる化粧用シートを提供する。
【解決手段】化粧用シート(1)は、一方側の面に配置されたスパンレース不織布(20)と、スパンレース不織布(20)に積層され、かつ他方側の面に配置されたエアレイド不織布(10)と、を有する。エアレイド不織布は、疎水性繊維を含まず、親水性繊維を含んでよい。エアレイド不織布の親水性繊維は、レーヨン繊維とパルプ繊維を含んでよい。レーヨン繊維の坪量は、2.0g/m以上7.0g/m以下であってよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3