(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
剥離温度25℃、剥離速度300mm/minの条件下で、前記フィルム状接着剤を前記ダイシングテープから引き剥がしたときの剥離力が0.01〜3.00N/20mmである請求項5に記載のフィルム状接着剤付きダイシングテープ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフィルム状接着剤は、ミラーシリコンウエハへ40℃で貼りつけた後、25℃で測定した密着力が0.5N/10mm以上であり、好ましくは0.6N/10mm以上、より好ましくは4N/10mm以上である。0.5N/10mm以上であると、40℃程度の低温でフィルム状接着剤が半導体ウエハに良好に接着できるので、半導体ウエハへの熱影響を防止でき、半導体ウエハの反りを抑制できる。一方、0.5N/10mm未満であると、密着力が低く、フィルム状接着剤から半導体ウエハが剥離してしまうおそれがある。密着力の上限は特に限定されないが、例えば、10N/10mm以下である。
本明細書において、密着力は、ミラーシリコンウエハからフィルム状接着剤を剥離するときの剥離力を意味し、実施例に記載の方法で測定できる。
【0022】
フィルム状接着剤の25℃における貯蔵弾性率は、5MPa以上が好ましく、2×10
2MPa以上がより好ましい。5MPa未満であると、ダイシングテープとの密着力が高くなり、ピックアップ性が低下する傾向がある。フィルム状接着剤の25℃における貯蔵弾性率は、5×10
3MPa以下が好ましく、3×10
3MPa以下がより好ましく、2.5×10
3MPa以下がさらに好ましい。5×10
3MPaを超えることは、配合上難しい。
貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0023】
フィルム状接着剤の100℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましい。0.01MPa以上であると、ダイアタッチ時にフィルム状接着剤がはみ出し難い。一方、フィルム状接着剤の100℃における貯蔵弾性率は、1MPa以下が好ましく、0.8MPa以下がより好ましい。1MPa以下であると、ダイアタッチ時にボイドを噛みこみ難くなり、安定なダイアタッチとなりやすい。
【0024】
フィルム状接着剤の表面粗さ(Ra)は、0.1〜1000nmが好ましい。0.1nm未満は、配合上難しい。一方、1000nmを超えると、低温貼りつき性が低下するおそれがある。また、ダイアタッチ時の被着体への張りつき性も低下するおそれがある。
【0025】
175℃で5時間加熱した後の測定温度25℃における電気抵抗率は低いほど好ましく、例えば、1×10
−2Ω・m以下である。1×10
−2Ω・m以下であると、導電性がよく、小型・高密度実装に対応できる。
【0026】
175℃で5時間加熱した後の測定温度25℃における熱伝導率は高いほど好ましく、例えば、0.5W/m・K以上である。0.5W/m・K以上であると、放熱性がよく、小型・高密度実装に対応できる。一方、0.5W/m・K未満であると、放熱性が悪く、熱がたまり、導電性を悪化させるおそれがある。
【0027】
フィルム状接着剤は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBTなどの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0028】
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基などが挙げられる。
【0029】
また、重合体(アクリル共重合体)を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0030】
アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が10万以上のものが好ましく、30万〜300万のものがより好ましく、50万〜200万のものがさらに好ましい。上記数値範囲内であると、接着性及び耐熱性に優れるからである。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0031】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−40℃以上、より好ましくは−35℃以上、さらに好ましくは−25℃以上である。−40℃未満であると、フィルム状接着剤がベタベタになり、ダイシングテープとくっつき過ぎてピックアップ性が悪くなる傾向がある。また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−11℃以下である。−10℃を超えると、弾性率が高くなり、40℃程度の低温でフィルム状接着剤を半導体ウエハに張り付けることが困難になる(低温貼りつき性が低下する)傾向がある。
本明細書において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、Fox式により求めた理論値をいう。
また、ガラス転移温度を求める他の方法として、示差走査熱量計(DSC)によって測定される最大熱吸収ピーク時の温度により、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を求める方法もある。具体的には、測定する試料を示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製の「Q−2000」)を用い、予測される試料のガラス転移温度(予測温度)より約50℃高い温度で10分加熱した後、予測温度より50℃低い温度まで冷却して前処理し、その後、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分にて昇温して吸熱開始点温度を測定し、これをガラス転移温度とする。
【0032】
フィルム状接着剤は、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、熱安定性を向上できる。
【0033】
硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物などの含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型などのエポキシ樹脂が用いられる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性などに優れるからである。
【0035】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0036】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0037】
フィルム状接着剤は、25℃で固形の硬化性樹脂及び25℃で液状の硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な低温貼りつき性が得られる。
本明細書において、25℃において液状とは、25℃において粘度が5000Pa・s未満であることをいう。一方、25℃において固形とは、25℃において粘度が5000Pa・s以上であることをいう。
なお、粘度は、Thermo Scientific社製の型番HAAKE Roto VISCO1を用いて測定できる。
【0038】
フィルム状接着剤において、25℃で固形の硬化性樹脂の重量/25℃で液状の硬化性樹脂の重量が、49/51〜10/90であることが好ましく、45/55〜40/60であることがより好ましい。
49/51より、25℃で固形の硬化性樹脂の比率が多くなると、40℃程度の低温でフィルム状接着剤を半導体ウエハに張り付けることが困難になる(低温貼りつき性が低下する)傾向がある。一方、10/90より、25℃で固形の硬化性樹脂の比率が少なくなると、フィルム状接着剤がベタベタになり、ダイシングテープとくっつき過ぎてピックアップ性が悪くなる傾向がある。
【0039】
フィルム状接着剤中の熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂の合計含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。5重量%以上であると、フィルムとしての形状を保ちやすい。また、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂の合計含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。70重量%以下であると、導電性粒子が好適に導電性が発現する。
【0040】
フィルム状接着剤において、熱可塑性樹脂の重量/硬化性樹脂の重量が、50/50〜10/90であることが好ましく、40/60〜15/85であることがより好ましい。50/50より、熱可塑性樹脂の比率が多くなると、熱安定性が悪くなる傾向がある。一方、10/90より、熱可塑性樹脂の比率が少なくなると、フィルム化が難しくなる傾向がある。
【0041】
フィルム状接着剤は、導電性粒子を含む。導電性粒子としては特に限定されず、ニッケル粒子、銅粒子、銀粒子、金粒子、アルミニウム粒子、カーボンブラック粒子、繊維状粒子であるカーボンナノチューブ、コア粒子の表面を導電性材料で被覆した粒子などが挙げられる。
【0042】
コア粒子は、導電性、非導電性のいずれでもよく、例えば、ガラス粒子などを使用できる。コア粒子の表面を被覆する導電性材料としては、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウムなどの金属を使用できる。
【0043】
導電性粒子の形状は特に限定されず、例えば、フレーク状、針状、フィラメント状、球状、鱗片状のものなどを使用できる。なかでも、分散性、充填率の向上の点でフレーク状が好ましい。
【0044】
導電性粒子の平均粒径は特に限定されないが、フィルム状接着剤の厚みに対して、0.001倍以上(フィルム状接着剤の厚み×0.001以上)が好ましく、0.1倍以上がより好ましい。0.001倍未満であると、導電パスの形成が難しく、導電性が安定しない傾向がある。また、導電性粒子の平均粒径はフィルム状接着剤の厚みに対して、1倍以下(フィルム状接着剤の厚み以下)が好ましく、0.8倍以下がより好ましい。1倍を超えると、チップ割れを起こす危険性がある。
なお、導電性粒子の平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0045】
導電性粒子の比重は0.7以上が好ましく、1以上がより好ましい。0.7未満であると、接着剤組成物溶液(ワニス)の作製時に導電性粒子が浮いてしまい、導電性粒子の分散が不均一になるおそれがある。また、導電性粒子の比重は22以下が好ましく、21以下がより好ましい。22を超えると、導電性粒子が沈みやすく、導電性粒子の分散が不均一になるおそれがある。
【0046】
フィルム状接着剤中の導電性粒子の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。30重量%未満であると、導電パスの形成が難しい傾向がある。また、導電性粒子の含有量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは94重量%以下である。95重量%を超えると、フィルム化が難しい傾向がある。また、ウエハに対する密着力が低下する傾向がある。
【0047】
フィルム状接着剤は、前記成分以外にも、フィルム製造に一般に使用される配合剤、例えば、架橋剤などを適宜含有してよい。
【0048】
本発明のフィルム状接着剤は、通常の方法で製造できる。例えば、前記各成分を含有する接着剤組成物溶液を作製し、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を乾燥させることで、フィルム状接着剤を製造できる。
【0049】
接着剤組成物溶液に用いる溶媒としては特に限定されないが、前記各成分を均一に溶解、混練又は分散できる有機溶媒が好ましい。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレンなどが挙げられる。塗布方法は特に限定されない。溶剤塗工の方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、リバースコーター、コンマコーター、パイプドクターコーター、スクリーン印刷などが挙げられる。なかでも、塗布厚みの均一性が高いという点から、ダイコーターが好ましい。
【0050】
基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙などが使用可能である。接着剤組成物溶液の塗布方法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗布膜の乾燥条件は特に限定されず、例えば、乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間で行うことができる。
【0051】
本発明のフィルム状接着剤の製造方法としては、例えば、前記各成分をミキサーにて混合し、得られた混合物をプレス成形してフィルム状接着剤を製造する方法なども好適である。ミキサーとしてはプラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0052】
フィルム状接着剤の厚みは特に限定されないが、5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。5μm未満であると、反りが生じた半導体ウエハや半導体チップと接着しない箇所が発生し、接着面積が不安定となる場合がある。また、フィルム状接着剤の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。100μmを超えると、ダイアタッチの荷重によってフィルム状接着剤が過度にはみ出し、パッドを汚染する場合がある。
【0053】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体装置の製造に好適に使用できる。なかでも、リードフレームなどの被着体と半導体チップとを接着する(ダイアタッチする)ダイアタッチフィルムとして特に好適に使用できる。被着体としては、リードフレーム、インターポーザ、半導体チップなどが挙げられる。なかでも、リードフレームが好ましい。
【0054】
本発明のフィルム状接着剤は、ダイシングテープと一体的に使用することが好ましい。つまり、フィルム状接着剤付きダイシングテープの形態で使用することが好ましい。この形態で使用すると、フィルム状接着剤付きダイシングテープに貼り付けられた状態の半導体ウエハをハンドリングできるので、半導体ウエハ単体でハンドリングする機会を減らすことができ、ハンドリング性が良好である。したがって、近年の薄型の半導体ウエハであっても良好にハンドリングできる。また、この形態で使用する場合、フィルム状接着剤に半導体ウエハを貼り付けることになるが、前述のフィルム状接着剤を用いるため、半導体ウエハの反りを抑制できる。
【0055】
[フィルム状接着剤付きダイシングテープ]
以下、本発明のフィルム状接着剤付きダイシングテープについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤付きダイシングテープの断面模式図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るフィルム状接着剤付きダイシングテープの断面模式図である。
【0056】
図1に示すように、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10は、ダイシングテープ11上にフィルム状接着剤3が積層された構成を有する。ダイシングテープ11は基材1上に粘着剤層2を積層して構成されており、フィルム状接着剤3はその粘着剤層2上に設けられている。また本発明は、
図2に示すフィルム状接着剤付きダイシングテープ12のように、ワーク(半導体ウエハなど)貼り付け部分にのみフィルム状接着剤3’を形成した構成であってもよい。
【0057】
基材1は、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10、12の強度母体となるものであり、紫外線透過性を有するものが好ましい。基材1としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙などが挙げられる。
【0058】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0059】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0060】
粘着剤層2の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性接着剤を用いることができる。感圧性接着剤としては、半導体ウエハやガラスなどの汚染をきらう電子部品の超純水やアルコールなどの有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0061】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0062】
アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0063】
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性などの点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0064】
アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止などの点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0065】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーなどの数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0066】
粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線などの放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0067】
図1に示す粘着剤層2のワーク貼り付け部分に対応する部分2aのみを放射線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。この場合、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはフィルム状接着剤3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。
【0068】
また、
図2に示すフィルム状接着剤3’に合わせて放射線硬化型の粘着剤層2を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分2aを形成できる。この場合、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bにウエハリングを固定できる。
【0069】
つまり、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、粘着剤層2における前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように前記部分2aを放射線照射することが好ましい。
【0070】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合などの放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0071】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0072】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分などを含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分などが粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0073】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0074】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0075】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などが挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0076】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分などは、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0077】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線などにより硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマーなどのベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0078】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシランなどの光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物などの光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤などが挙げられる。
【0079】
前記放射線硬化型の粘着剤層2中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層2に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。放射線照射により着色する化合物の使用割合は、適宜設定できる。
【0080】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性などの点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0081】
フィルム状接着剤付きダイシングテープ10、12のフィルム状接着剤3、3’は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでフィルム状接着剤3、3’を保護する保護材としての機能を有している。セパレータはフィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤3、3’上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙なども使用可能である。
【0082】
フィルム状接着剤付きダイシングテープ10、12は、通常の方法で製造できる。例えば、ダイシングテープ11の粘着剤層2とフィルム状接着剤3、3’とを貼り合わせることで、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10、12を製造できる。
【0083】
剥離温度25℃、剥離速度300mm/minの条件下で、フィルム状接着剤3、3’をダイシングテープ11から引き剥がしたときの剥離力が0.01〜3.00N/20mmであることが好ましい。0.01N/20mm未満であると、ダイシング時にチップ飛びが発生するおそれがある。一方、3.00N/20mmを超えると、ピックアップが困難になる傾向がある。
該剥離力は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0084】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置の製造方法は、フィルム状接着剤を用いて半導体チップを被着体にダイアタッチする工程を含む。
【0085】
以下、本発明の半導体装置の製造方法について、
図3を参照しながら、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10を用いて半導体装置を製造する場合を例にして説明する。
図3は、本発明の半導体装置の一製造方法を説明するための図である。
【0086】
先ず、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10におけるフィルム状接着剤3の半導体ウエハ貼り付け部分3a上に半導体ウエハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り付け工程)。本工程は、圧着ロールなどの押圧手段により押圧しながら行う。このとき、40℃程度の低温で圧着できる。具体的には、圧着温度(貼り付け温度)は、35℃以上が好ましく、37℃以上がより好ましい。圧着温度の上限は低い方が好ましく、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは43℃以下である。40℃程度の低温で半導体ウエハ4に張り付けできるので、半導体ウエハ4への熱影響を防止でき、半導体ウエハ4の反りを抑制できる。
【0087】
また、圧力は、1×10
5〜1×10
7Paであることが好ましく、2×10
5〜8×10
6Paであることがより好ましい。また、貼付時間としては、1秒〜5分が好ましく、1分〜3分がより好ましい。
【0088】
次に、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばフィルム状接着剤付きダイシングテープ10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式などを採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、フィルム状接着剤付きダイシングテープ10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0089】
フィルム状接着剤付きダイシングテープ10に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をフィルム状接着剤付きダイシングテープ10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。
【0090】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型である場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2のフィルム状接着剤3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間などの条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0091】
ピックアップした半導体チップ5は、フィルム状接着剤3を介して被着体6に接着固定する(ダイアタッチ)。
【0092】
ダイアタッチ温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。また、ダイアタッチ温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。150℃以下とすることにより、ダイアタッチ後の反りの発生を防止できる。
【0093】
続いて、フィルム状接着剤3を加熱処理することにより、半導体チップ5と被着体6とを接着させる。
加熱処理の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは170℃以上である。加熱処理の温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱処理の温度が上記範囲であると、良好に接着できる。また、加熱処理の時間は、適宜設定できる。
【0094】
次に、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線などが用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上であり、該温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは175℃以下である。また、その加熱時間は数秒〜数分間(例えば、1秒〜1分間)行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0095】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上であり、該加熱温度は、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0096】
必要に応じて、封止物を更に加熱をしてもよい(後硬化工程)。これにより、封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化できる。加熱温度は適宜設定できる。
【0097】
以上のとおり、フィルム状接着剤付きダイシングテープを用いる場合には、フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤と半導体ウエハを貼り合わせる工程(I)、半導体ウエハをダイシングして半導体チップを形成する工程(II)、工程(II)により形成された半導体チップをフィルム状接着剤とともにピックアップする工程(III)、及び工程(III)によりピックアップした半導体チップをフィルム状接着剤を介して被着体にダイアタッチする工程(IV)を含む方法により、半導体装置を製造できる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0099】
実施例で使用した成分について説明する。
アロンタックS−2060:東亜合成(株)製のアロンタックS−2060(アクリル共重合体、Mw:55万、ガラス転移温度:−22℃)
テイサンレジンSG−70L:ナガセケムテックス(株)製のテイサンレジンSG−70L(アクリル共重合体、Mw:90万、ガラス転移温度:−13℃)
テイサンレジンSG−P3:ナガセケムテックス(株)製のテイサンレジンSG−P3(アクリル共重合体、Mw:85万、ガラス転移温度:12℃)
EOCN−1020−4:日本化薬(株)製のEOCN−1020−4(25℃で固形のエポキシ樹脂)
JER828:三菱化学(株)製のJER828(25℃で液状のエポキシ樹脂)
MEH−7851SS:明和化成社製のMEH−7851SS(フェノールアラルキル樹脂)
1400YM:三井金属鉱業(株)製の1400YM(銅粉、平均粒径4μm、比重8.9)
ES−6000:ポッターズ・パロティーニ(株)製のES−6000(シルバーガラスビーズ、平均粒径6μm、比重3.9〜4.0)
AUP−1000:大崎工業(株)製のAUP−1000(金粉末、平均粒径1μm、比重19.3)
【0100】
[フィルム状接着剤及びフィルム状接着剤付きダイシングテープの作製]
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
表1に記載の配合比に従い、表1に記載の各成分及び溶媒(メチルエチルケトン)を、ハイブリッドミキサー(キーエンス製 HM−500)の攪拌釜に入れ、攪拌モード、3分で攪拌・混合した。得られたワニスを、離型処理フィルム(三菱樹脂(株)製のMRA50)にダイコーターにて塗布した後,乾燥させて、フィルム状接着剤を作製した。
【0101】
得られたフィルム状接着剤を直径230mmの円形に切り出し、ダイシングテープ(日東電工(株)製のP2130G)の粘着剤層上に25℃で貼り付けて、フィルム状接着剤付きダイシングテープを作製した。
【0102】
(実施例4〜6及び比較例4〜6)
表2に記載の配合比に従い、表2に記載の各成分を、プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製 T.K. HIVIS MIX “P−03”)の攪拌釜に入れ、90℃、20分で攪拌・混合した。得られた混合物を、成形プレス(北川精機(株)VH1−1572)にて120℃、圧力1kg/cm
2にて加圧し、フィルム状接着剤を作製した。
【0103】
得られたフィルム状接着剤を直径230mmの円形に切り出し、ダイシングテープ(日東電工(株)製のP2130G)の粘着剤層上に25℃で貼り付けて、フィルム状接着剤付きダイシングテープを作製した。
【0104】
[ミラーシリコンウェハの作製]
バックグラインダー((株)DISCO製のDFG−8560)を用いて、シリコンウエハ(信越化学工業(株)製、厚み0.6mm)の厚みが0.05mmとなるように研削し、ミラーシリコンウエハを作製した。
【0105】
[評価]
得られたフィルム状接着剤、フィルム状接着剤付きダイシングテープ、ミラーシリコンウエハを用いて以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0106】
[低温貼りつき性評価(1)]
ウエハマウンター(日東精機(株)製のMA−3000III)を用いて、貼り付け速度10mm/min、貼り付け温度40℃にて、フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤上に、ミラーシリコンウエハを貼り合わせた。
貼り合わせにより得られたものを、ミラーシリコンウエハが下側(地面側)となるように配置し、ミラーシリコンウエハがフィルム状接着剤から一部でも脱落した場合を×、脱落しない場合を○と判定した。
【0107】
[低温貼りつき性評価(2)]
フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤上に、保持目的にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製のBT−315)を貼り合わせた後、10mm幅で切断した。次いで、ポリエステル粘着テープからフィルム状接着剤及びダイシングテープからなる積層体を分離した。2kgローラーを用いて、積層体のフィルム状接着剤面に、40℃のミラーシリコンウエハを貼り付けた後、2分間、40℃にて放置した。その後、常温(25℃)にて20分間放置し、サンプルを得た。
サンプルについて、引張試験機((株)島津製作所製のAGS−J)を用いて、剥離角度180度、剥離温度25℃、剥離速度300mm/minにて、剥離試験を行った(ミラーシリコンウエハとフィルム状接着剤間の剥離試験)。
【0108】
[接着性評価]
ウエハマウンター(日東精機(株)製のMA−3000III)を用いて、貼り付け速度10mm/min、貼り付け温度40℃にて、フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤上に、ミラーシリコンウエハを貼り合わせた。
貼り合わせにより得られたものを、ダイサー((株)DISCO製のDFD−6361)を用いて、10mm×10mm□にダイシング(個片化)し、個片を得た。ダイボンダー(株)新川製のSPA−300)を用いて、120℃、0.1MPa、1秒にて、個片(チップ及びフィルム状接着剤からなる個片)をリードフレームにダイアタッチした。ダイアタッチ後に個片の側面を走査型電子顕微鏡で観察し、個片とリードフレームの間に隙間が無ければ「無」と判定し、隙間があれば「有」と判定した。
【0109】
[はみ出し評価]
ウエハマウンター(日東精機(株)製のMA−3000III)を用いて、貼り付け速度10mm/min、貼り付け温度40℃にて、フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤上に、ミラーシリコンウエハを貼り合わせた。
貼り合わせにより得られたものを、ダイサー((株)DISCO製のDFD−6361)を用いて、10×10mm□にダイシング(個片化)し、個片を得た。ダイボンダー((株)新川製のSPA−300)を用いて、120℃、0.4MPa、1秒にて、個片(チップ及びフィルム状接着剤からなる個片)をリードフレームにダイアタッチした。ダイアタッチ後に光学顕微鏡を用いて、上面から個片を観察し、チップの端面からフィルム状接着剤がはみ出した距離(はみ出し距離)を測定した。
【0110】
[25℃の貯蔵弾性率評価]
フィルム状接着剤付きダイシングテープからフィルム状接着剤を分離して、厚みが300μmになるまでフィルム状接着剤を重ね合わせて、フィルム状接着剤からなる積層体を作製した。この積層体から幅10mmの短冊状のサンプルを切り出した。
このサンプルについて、動的粘弾性測定装置(レオメトリクスサイエンティフィク社製のRSAIII)を用いて、チャック間距離20mm、昇温速度10℃/分、引張測定モードにて0〜50℃で測定し、25℃時の貯蔵弾性率を求めた。
【0111】
[フィルム状接着剤とダイシングテープ間の剥離力測定]
フィルム状接着剤付きダイシングテープのフィルム状接着剤上に、保持目的にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製のBT−315)を貼り合わせた後、100mm×100mm幅で切断し、サンプルを作製した。このサンプルについて、剥離速度300mm/min、剥離温度25℃でTピールにてダイシングテープからフィルム状接着剤を剥離し、剥離力を測定した。
【0112】
[総合判定]
以下の全ての条件を満たす場合を○と判定し、いずれかひとつでも満たさない場合を×と判定した。
条件(1):低温貼りつき性評価(1)の判定結果が○である。
条件(2):低温貼りつき性評価(2)で測定した密着力が0.5N/10mm以上である。
条件(3):接着性評価の判定結果が「無」である。
条件(4):はみ出し評価で測定したはみ出し距離が100μm以下である。
条件(5):25℃の貯蔵弾性率評価の測定結果が、5MPa以上である。
条件(6):フィルム状接着剤とダイシングテープ間の剥離力測定の測定結果が、0.01〜3.00N/20mmである。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】