特許第6542617号(P6542617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542617
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】尿分析装置及び尿搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20190628BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G01N35/04 G
   G01N33/493 B
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-168921(P2015-168921)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-44631(P2017-44631A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田村 暢也
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−223922(JP,A)
【文献】 特開2003−75450(JP,A)
【文献】 特開2005−91277(JP,A)
【文献】 特開2005−233855(JP,A)
【文献】 特開2006−292732(JP,A)
【文献】 特開2007−139462(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103513044(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿検体を収容し上端が開口した第1検体容器を第1検体吸引位置に搬送する搬送部と、
前記第1検体吸引位置とは異なる第2検体吸引位置が内部に位置づけられ、尿検体を収容し上端が開口した第2検体容器が通過可能な通過口を有する保護カバーと、
前記保護カバー内に設けられ、前記第2検体吸引位置において前記第2検体容器を支持する支持部と、
尿検体吸引のため前記第1検体吸引位置にある前記第1検体容器内に当該第1検体容器の開口を介して挿入され、尿検体吸引のため前記第2検体吸引位置にある前記第2検体容器内に当該第2検体容器の開口を介して挿入されるノズルと、
前記ノズルによって吸引した尿検体中の成分を検出する検出部と、
前記支持部に支持された前記第2検体容器の姿勢を尿検体吸引時の姿勢に維持しつつ前記支持部を前記保護カバーの内外に移動させる移動機構と、
前記支持部が前記保護カバー内にあるときには前記通過口を閉じており、前記支持部が前記保護カバー外へ移動するときには前記通過口を開く開閉カバーと、
を備える尿分析装置。
【請求項2】
前記保護カバー外への前記支持部の移動と前記通過口を開く前記開閉カバーの動作とを連動させるとともに、前記保護カバー内への前記支持部の移動と前記通過口を閉じる前記開閉カバーの動作とを連動させる連動機構を更に備える
請求項1に記載の尿分析装置。
【請求項3】
回動軸と、
前記開閉カバーを前記回動軸まわりに回動自在に前記回動軸に連結する連結部と、
を更に備え、
前記開閉カバーは、前記回動軸まわりの回動によって、前記通過口を開閉するよう構成され、
前記連動機構は、
前記連結部に形成された長孔と、
前記支持部に取り付けられ、かつ、前記支持部の移動と前記開閉カバーの動作との連動によって前記長孔の長手方向に移動するように前記長孔に挿入されたローラと、
を有する
請求項2記載の尿分析装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記第2検体容器が前記支持部から上方に突出した状態で前記第2検体容器を収納する収納孔を含み、
前記開閉カバーは、前記収納孔に対して相対的に下方に移動しつつ前記通過口を開き、前記収納孔に対して相対的に上方に移動しつつ前記通過口を閉じるように構成されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項5】
前記開閉カバーは、前記支持部の移動方向における前記開閉カバーの上端と前記支持部との間隔が広がるように移動しつつ前記通過口を開くように構成されている
請求項4記載の尿分析装置。
【請求項6】
前記開閉カバーは、前記通過口を開いた際に、前記開閉カバーの下端側が前記通過口を介して前記保護カバー内に入るように設けられている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項7】
尿検体吸引時の前記姿勢は、前記第2検体容器が直立した姿勢である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記支持部を水平移動させる直線移動機構である
請求項1〜7のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記支持部の移動速度を抑制するダンパーを有している
請求項1〜8のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項10】
前記支持部は、前記第2検体容器が前記支持部から上方に突出した状態で前記第2検体容器を収納する収納孔と、
前記開閉カバーによって開かれた前記通過口のうち少なくとも前記収納孔よりも上方の範囲を塞ぐように前記収納孔よりも上方に突出状に設けられた壁部と、を備える
請求項1〜9のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項11】
前記支持部に支持されている前記第2検体容器を検出する第1センサと、
前記支持部に支持されている前記第2検体容器又は第3検体容器を検出する第2センサと、
を更に備え、
前記支持部は、
前記第2検体容器の下端を支持する第1支持面と、
前記第1支持面よりも上方に設けられ、前記第2検体容器とは異なる大きさの第3検体容器に装着されたアダプタの下端を支持する第2支持面と、
を有し、
前記第1センサは、前記第2支持面よりも下方に配置され、
前記第2センサは、前記第2支持面よりも上方に配置されている
請求項1〜10のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項12】
前記第1センサは、前記第2検体吸引位置にある前記第2検体容器に接触する接触子を有し、
前記支持部は、前記第2検体吸引位置に移動してきた前記第2検体容器が前記接触子に接触するのを許容する第1欠損部を有している
請求項11に記載の尿分析装置。
【請求項13】
前記第2センサは、前記第2検体吸引位置にある前記第2検体容器又は前記第3検体容器に接触する接触子を有し、
前記支持部は、前記第2検体吸引位置に移動してきた前記第2検体容器又は前記第3検体容器が前記接触子に接触するのを許容する第2欠損部を有している
請求項11又は12に記載の尿分析装置。
【請求項14】
前記第2センサによって前記第2検体容器又は前記第3検体容器を検出し、前記第1センサが前記第2検体容器を検出した場合には、前記ノズルを前記第2検体吸引位置へ移動させ、
前記第2センサによって前記第2検体容器又は前記第3検体容器を検出し、前記第1センサが前記第2検体容器を検出していない場合には、前記ノズルを前記第2検体吸引位置よりも上方の第3検体吸引位置へ移動させる、制御部を更に備える
請求項11〜13のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項15】
前記搬送部による前記第1検体容器の搬送、前記ノズルの移動、及び前記移動機構による前記支持部の移動を制御する制御部を更に備える
請求項1〜11のいずれか1項に記載の尿分析装置。
【請求項16】
尿検体を収容し上端が開口した第1検体容器をノズルによる第1検体吸引位置に搬送する搬送部と、
前記第1検体吸引位置とは異なる前記ノズルによる第2検体吸引位置が内部に位置づけられ、尿検体を収容し上端が開口した第2検体容器が通過可能な通過口を有する保護カバーと、
前記保護カバー内に設けられ、前記第2検体吸引位置において前記第2検体容器を支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記第2検体容器の姿勢を尿検体吸引時の姿勢に維持しつつ前記支持部を前記保護カバーの内外に移動させる移動機構と、
前記支持部が前記保護カバー内にあるときには前記通過口を閉じており、前記支持部が前記保護カバー外へ移動するときには前記通過口を開く開閉カバーと、
を備える尿搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿分析装置及び尿搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常検体より優先して測定されるべき検体が収容された検体容器を、通常検体の吸引位置とは別の吸引位置で支持する支持部を備えた検体分析装置が知られている。支持部は、検体容器へのユーザの接触を避けるため、周囲が保護カバーで覆われる。このため、支持部への検体容器の設置時又は取り出し時には、支持部は保護カバー外へ出てくる必要がある。
【0003】
特許文献1は、支持部が回動して保護カバー外へ出る構造を開示している。特許文献1の装置の場合、支持部の回動に伴って、支持部に支持された検体容器の姿勢が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第103513044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体容器の姿勢が変化する場合、検体容器内に多量の検体が収容されていると、検体容器内の検体が容器開口から外にこぼれるおそれがある。特許文献1記載の検体容器のように容器開口が蓋で閉じられていれば、検体容器の姿勢が変化しても問題ないが、尿検体を収容した検体容器のように容器開口が蓋で閉じられていない場合には、特許文献1の支持部に検体容器を設置すると、検体容器の姿勢変化のため、検体容器から検体がこぼれるおそれがある。
【0006】
したがって、検体容器に蓋がなくても、検体容器から検体がこぼれるおそれを低減することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、尿検体を収容し上端が開口した第1検体容器を第1検体吸引位置に搬送する搬送部と、第1検体吸引位置とは異なる第2検体吸引位置が内部に位置づけられ、尿検体を収容し上端が開口した第2検体容器が通過可能な通過口を有する保護カバーと、保護カバー内に設けられ、第2検体吸引位置において第2検体容器を支持する支持部と、尿検体吸引のため第1検体吸引位置にある第1検体容器内に当該第1検体容器の開口を介して挿入され、尿検体吸引のため第2検体吸引位置にある第2検体容器内に当該第2検体容器の開口を介して挿入されるノズルと、ノズルによって吸引した尿検体中の成分を検出する検出部と、支持部に支持された第2検体容器の姿勢を尿検体吸引時の姿勢に維持しつつ支持部を保護カバーの内外に移動させる移動機構と、支持部が保護カバー内にあるときには通過口を閉じており、支持部が保護カバー外へ移動するときには通過口を開く開閉カバーと、を備える尿分析装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、尿検体を収容し上端が開口した第1検体容器をノズルによる第1検体吸引位置に搬送する搬送部と、第1検体吸引位置とは異なる前記ノズルによる第2検体吸引位置が内部に位置づけられ、尿検体を収容し上端が開口した第2検体容器が通過可能な通過口を有する保護カバーと、保護カバー内に設けられ、前記第2検体吸引位置において前記第2検体容器を支持する支持部と、支持部に支持された前記第2検体容器の姿勢を検体吸引時の姿勢に維持しつつ前記支持部を前記保護カバーの内外に移動させる移動機構と、支持部が保護カバー内にあるときには通過口を閉じており、支持部が保護カバー外へ移動するときには通過口を開く開閉カバーと、を備える尿搬送装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部が保護カバー内外に移動する際に、第2検体容器の姿勢が検体吸引時の姿勢に維持されるため、検体容器に蓋がなくても検体がこぼれるおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開閉カバーが開いた状態の尿分析装置の斜視図である。
図2】開閉カバーが閉じた状態の尿分析装置の斜視図である。
図3】尿分析装置の概略構成を示す平面図である。
図4】ノズル駆動部を示す内部側面図である。
図5】開閉カバーが閉じた状態の保護カバー内部を示す内部側面図である。
図6】開閉カバーが開いた状態の保護カバー内部を示す内部側面図である。
図7図5のA−A矢視図である。
図8】連動機構の変形例を示す側面図である。
図9】第1センサ及び第2センサの説明図である。
図10】第1センサ及び第2センサの説明図である。
図11】ノズル制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.尿分析装置]
尿分析装置は、尿検体を分析する。図1から図3に示すように、尿分析装置10は、測定ユニット20と、搬送装置30と、を備える。測定ユニット20は、尿検体の測定に関する処理を行う。尿検体の測定に関する処理には、尿検体の分注、尿検体からの試料調製、及び尿検体中の成分の検出などを含む。測定ユニット20は、検体容器から尿検体を吸引するノズル111と、処理チャンバ231と、検出部260と、を有している。測定ユニット20は、ハウジング21を有している。ハウジング21内には、ノズル111、処理チャンバ231、及び検出部260が、収納されている。
【0012】
ノズル111は、ハウジング21内において、図1図3においてY方向として示される前後方向に移動可能に設けられている。搬送装置30及び測定ユニット20は、ノズル111の移動方向である前後方向に並設されている。搬送装置30は、第1検体容器61を搬送する。第1検体容器61は、ラック60に保持された状態で搬送される。ラック60は、複数の第1検体容器61を保持することができる。第1検体容器61は、上部開口を有する有底円筒形である。第1検体容器61の上部開口は、蓋によって閉じられておらず開放状態で、ラック60に保持される。尿検体を分析する場合、採尿カップに被検者の尿検体が採取され、採尿カップから一定量の尿検体が検体容器に分取されてそのまま尿分析装置にセットされるため、通常、検体容器の開口は蓋によって閉じられていない。
【0013】
尿分析装置10は、制御部40を備えている。制御部40は、測定ユニット20及び搬送装置30を制御する。制御部40は、コンピュータによって構成され、CPU41及び記憶装置42を有する。制御部40は、記憶装置42に記憶されたコンピュータプログラムがCPU41によって実行されることで、処理を行う。制御部40は、測定ユニット20内に設けられていても良いし、搬送装置30内に設けられていても良い。
【0014】
尿分析装置10は、処理装置50を備えている。処理装置50は、検出部260の出力の分析処理を含む処理を行う。処理装置50は、コンピュータによって構成され、CPU51、表示部52、入力部53、記憶装置54などを含む。処理装置50は、記憶装置54に記憶されたコンピュータプログラムがCPU51によって実行されることで、処理を行う。表示部52は、例えば、スクリーンディスプレイであり、例えば、分析結果を表示する。表示部52は、入力を受け付けるための画面表示も行う。入力部53は、例えば、キーボード又はマウスである。
【0015】
[2.測定ユニット]
図4に示すように、測定ユニット20は、ノズル111を移動させる駆動部112を備えている。駆動部112はハウジング21内に収納されている。ノズル111は、下端に形成された吸引口111aを有している。ノズル111は、吸引口111aから尿検体を吸引し、吸引した尿検体を吸引口111aから吐出する。ノズル111による尿検体の吸引及び吐出は制御部40によって制御される。駆動部112も制御部40によって制御される。ノズル111は、駆動部112によって、初期位置74から、尿検体を吸引するための第1検体吸引位置71、第2検体吸引位置72、又は第3検体吸引位置73へ移動する。検体吸引位置71,72,73は、尿検体吸引の際に、ノズル111の先端111aが位置すべき位置である。
【0016】
ノズル111は、第1検体吸引位置71に位置する第1検体容器61、第2検体吸引位置72に位置する第2検体容器62、又は第3検体吸引位置に位置する第3検体容器63から、尿検体を吸引する。第2検体容器62及び第3検体容器63は、緊急(STAT)検体が収容された容器である。緊急検体は、ラック50に保持された第1検体容器61に収容された通常検体に優先して測定される検体である。第2検体容器62は、例えば、第1検体容器62と同じ形状であり、上部開口を有する。第3検体容器63は、例えば、第2検体容器62よりも小さい容器であり、上部開口を有する。第3検体容器63は、例えば、検体の量が少ない場合に用いられる。第2検体容器62及び第3検体容器63の上部開口は、第1検体容器61の上部開口と同様に、蓋によって閉じられておらず開放されている。
【0017】
第2検体吸引位置72及び第3検体吸引位置73は、第1検体吸引位置71よりも前方に位置する。第2検体吸引位置72及び第3検体吸引位置73は、図3に示すように、平面視においては、同じ位置にあるが、図4に示すように、上下方向位置が異なる。第3検体吸引位置73は、第2検体吸引位置72の上方に位置する。
【0018】
検体吸引位置71,72,73は、搬送装置30上に設定されており、測定ユニット20のハウジング21外に位置する。ノズル111が搬送装置30上の検体吸引位置71,72,73の上方までハウジング21内を移動できるように、搬送装置30の後方に設けられた測定ユニット20のハウジング21は、搬送装置30の上方に位置するように前方へ張り出すように形成されている。
【0019】
図4に示すように、駆動部112は、ノズル111を水平方向に移動させる第1水平移動機構113と、ノズル111を垂直方向に移動させる第1垂直移動機構114と、を備えている。第1水平移動機構113は、対のプーリ113aに巻き掛けられた無端ベルト113bを有している。無端ベルト113bには、取付具115を介して、第1垂直移動機構114が取り付けられている。第1垂直移動機構114には、ノズル111が設けられている。プーリ113aは、モータ113cによって回転駆動される。モータ113cは、制御部40によって制御される。プーリ113aが回転駆動されると、無端ベルト113bが回転し、第1垂直移動機構114及びノズル111が、第1の水平方向であるY1方向又はY2方向へ移動する。
【0020】
第1垂直移動機構114は、対のプーリ114aに巻き掛けられた無端ベルト114bを有している。無端ベルト114bには、取付部116を介して、ノズル111を保持するノズル保持部117が取り付けられている。プーリ114aは、モータ114cによって回転駆動される。モータ114cは、制御部40によって制御される。プーリ114aが回転駆動されると、無端ベルト114bが回転し、ノズル保持部117に保持されたノズル111が、垂直方向であるZ1方向又はZ2方向へ移動する。
【0021】
ノズル111は、第1水平移動機構113によって、初期位置74、第1検体吸引位置71の上方、及び第2検体吸引位置72の上方を結ぶ直線状の移動経路75に沿って、水平移動する。ノズル111の水平移動経路75から、検体吸引位置71,72,73までの垂直移動は、第1垂直移動機構114によって行われる。図5,6に示すように、ハウジング21には、ハウジング21内のノズル111が、ハウジング21外の検体吸引位置71,72,73へ移動する際に通る開口21a,21bが形成されている。ノズル111は、開口21a,21bを通って、ハウジング外21の検体吸引位置71,72,73へ下方移動する。
【0022】
ノズル111によって吸引された尿検体は、処理チャンバ231に分注される。処理チャンバ231では、尿検体と試薬とが混合され測定試料が調製される。測定試料は検出部260に供給される。検出部260は、測定試料中の有形成分を検出する。検出部260は、例えば、尿検体に対する光学的検出を行う光学検出器によって構成される。光学検出器は、測定試料が導入されるフローセルを有する。光学検出器は、フローセル中の測定試料の流れに対して、レーザ光などの光を照射し、照射した光に基づき測定試料中の成分から発せられた光を検出する。光学検出器が検出する光は、例えば、前方散乱光、側方散乱光、蛍光を含む。
【0023】
検出部260は、検知した光を電気信号に変換する。検出部260は、電気信号に対して、増幅・AD変換などの処理を行う。検出部260が有する信号処理回路によって、AD変換後の信号から特徴パラメータが抽出される。特徴パラメータは、尿検体の分析処理に用いられるパラメータである。特徴パラメータは、例えば、前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、蛍光強度、蛍光パルス幅、及び蛍光パルス面積を含む。特徴パラメータは、制御部40を介して、検体中の成分の分析処理を行う処理装置50へ送信される。処理装置50は、受信した特徴パラメータに基づき、尿検体の成分を分析する。
【0024】
[3.搬送装置]
搬送装置30は、第1検体容器61が保持されたラック60を搬送可能に構成されている。図1から図3に示すように、搬送装置30は、第1載置領域31と、第2載置領域32と、搬送部33と、第2検体容器62及び第3検体容器63の設置部34と、を備えている。図3に示すように、第1載置領域31は、載置されたラック60を、搬送部33のラック受入位置33aにラック60を供給する。第2載置領域32には、搬送部33のラック排出位置33bから排出されたラック60が載置される。搬送部33は、ラック受入位置33aとラック排出位置33bと間を結ぶ搬送経路を有している。ラック60は、搬送経路上に載置され、搬送部33は、搬送経路に沿ってラック60を搬送する。搬送部33は、ラック60を、搬送経路の任意の位置に移動させることができる。
【0025】
第1載置領域31は、複数のラック60を前後方向であるY方向に並べて載置できるよう形成されている。第1載置領域31は、図示しない送り機構を有しており、送り機構は、ラック60を、後方であるY2方向に搬送する。第1載置領域31の送り機構は、ラック60をラック受入位置33aへ供給する。
【0026】
搬送部33は、ラック受入位置33aへ供給されたラック60を搬送経路に沿って移動させる搬送機構300を有している。搬送機構300は、搬送部33の搬送経路を形成する載置板370の下方に配置されている。搬送機構300は、ラック60の底面に係合する2つの係合ユニット331を有し、これらの係合ユニット331を左右方向であるX方向に移動させるよう構成されている。2つの係合ユニット331は、それぞれ別のラック60に係合することができる。したがって、実施形態の搬送部33は、2つのラック60を搬送することができる。搬送部33によるラック60の移動は、制御部40によって制御される。
【0027】
図5及び図6に示すように、係合ユニット331は、ラック60の底部に係合する係合爪336を有している。係合爪336は、搬送部333の載置板370に形成された溝370aを通って、載置板370上のラック60の底部に係合する。溝370aは、搬送部33の搬送経路方向であるX方向に沿って長く形成されている。溝370aは、前後方向に2本並設されており、2つの係合ユニット331のうちの一方の係合ユニット331の係合爪336は、一方の溝370aから上方に突出してラック60の底部に係合する。他方の係合ユニット331の係合爪336も、他方の溝370aから上方に突出してラック60の底部に係合する。
【0028】
図3に示すように、第2載置領域32は、複数のラック60を前後方向であるY方向に並べて載置できるように形成されている。第2載置領域32は、図示しない送り機構を有しており、送り機構は、ラック60を、前方であるY1方向に搬送する。第2載置領域32の送り機構は、搬送部33のラック排出位置33bにあるラック60を、第2載置領域32へ排出させる。
【0029】
図1から図6に示すように、搬送部33の搬送経路上には、ノズル111による第1検体吸引位置71が設定されている。第1検体吸引位置71は、ラック受入位置33aとラック排出位置33bとの間に設定されている。搬送部33は、ラック受入位置33aに載置されたラック60に保持された複数の第1検体容器61が、順次、第1検体吸引位置71に来るように、ラック60を搬送する。したがって、ラック60に保持された第1検体容器61は、第1検体吸引位置71に順次搬送される。搬送部33によって第1検体吸引位置71に搬送された第1検体容器61の尿検体は、第1検体吸引位置71に移動してきたノズル111によって吸引される。
【0030】
設置部34は、緊急(STAT)検体が収容された第2検体容器62又は第3検体容器63を設置するためのものである。設置部34は、搬送部33の前方に設けられている。設置部34は、保護カバー360と、第2検体容器62を支持する支持部350と、を備えている。保護カバー360は、第1載置領域31と第2載置領域32の間において、上方突出状に形成されている。保護カバー360は、その前側に、支持部350が出入りする通過口361を有している。設置部34は、保護カバー360の通過口361を開閉する開閉カバー362を有している。保護カバー360の内部には、第2検体吸引位置72及び第3検体吸引位置73が位置づけられている。保護カバー360は、その上部に、ノズル111が保護カバー360内に進入するための開口367を有している。ハウジング21内のノズルは、ハウジング21に形成された開口21a及び保護カバー360に形成された開口367を通って、第2検体吸引位置72又は第3検体吸引位置73へ移動する。
【0031】
支持部350は、保護カバー360内において、第2検体容器62又は第3検体容器63を、検体吸引時の姿勢で支持する。検体吸引時の第2検体容器62又は第3検体容器63の姿勢は、例えば、容器開口が上方を向いた直立した姿勢である。検体吸引時の第2検体容器62又は第3検体容器63の姿勢は、直立姿勢からやや傾いた姿勢であってもよい。
【0032】
支持部350は、第2検体容器62を上方から収納させるための収納孔350aとなる開口を有する有底筒状に形成されている。支持部350の内部空間の深さは、第2検体容器62の高さよりも小さい。したがって、支持部350に支持された第2検体容器62は、収納孔350aよりも上方に突出する。
【0033】
図5に示すように、支持部350は、通常は、保護カバー360内に収納されている。支持部350が保護カバー360内にあるときには、保護カバー360の通過口361は開閉カバー362によって閉じられている。支持部350は、前後方向であるY方向に移動可能である。図1及び図6に示すように、支持部350は、前方へ移動して、保護カバー360の前側の通過口361を通って保護カバー360の外に出ることができる。保護カバー360の通過口361は、支持部350及び支持部350に対して上方突出状に支持された第2検体容器62が通過可能な高さを有する。図1及び図6に示すように、開閉カバー362は、支持部350の保護カバー360外への移動を許容するため、通過口361を開く。
【0034】
支持部350は、後方へ移動して、保護カバー360外から通過口361を通って保護カバー360内へ戻ることができる。支持部350が保護カバー360内に戻ると、開閉カバー362は、再び、通過口361を閉じる。
【0035】
図5及び図6に示すように、設置部35は、支持部350を移動させる移動機構380を備えている。移動機構380は、支持部350に支持された第2検体容器62又は第3検体容器63の姿勢を検体吸引時の姿勢、例えば直立姿勢、に維持しつつ、移動させる。移動機構380は、保護カバー360内に設けられている。移動機構380は、板状の固定ベース部381と、固定ベース部381に取り付けられたガイド部材382と、ガイド部材382に対してスライド自在に取り付けられた移動ベース部383と、を有している。
【0036】
ガイド部材382は、支持部350の移動方向である前後方向に向けて水平に設けられている。移動ベース部383は、ガイド部材382に沿って前後方向に水平に直線移動する。このように実施形態に係る移動機構は直線移動機構である。移動ベース部383には、支持部350が取り付けられており、移動ベース383の水平移動によって支持部350も水平移動する。ガイド部材382は、支持部350を、図5に示す第2検体吸引位置72から、図6に示す保護カバー360外の位置までの間で移動させるための前後方向長さを有している。支持部350は、保護カバー360の内外を水平に直線移動するため、支持部350に支持された第2検体容器62又は第3検体容器63の姿勢を検体吸引時の姿勢に維持しつつ、保護カバー360の内外を移動できる。検体容器62,63の姿勢が維持されることで、検体容器62,63の上部開口が開放状態でも、検体容器62,63内の尿検体が移動中にこぼれるのを抑制できる。
【0037】
なお、支持部350に支持された第2検体容器62又は第3検体容器63の姿勢を検体吸引時の姿勢に維持したまま移動するのであれば、支持部350の移動は、水平移動でなくてもよく、上下方向であるZ方向成分を含む移動であってもよく、曲線移動であってもよい。
【0038】
移動機構380は、移動ベース部383及び支持部350を駆動する駆動部384を備えている。実施形態384の駆動部384は、移動ベース部383を前方移動させる。なお、移動ベース部383及び支持部350の後方移動は手動によって行われるが、この点は後述する。駆動部384は、渦巻バネ384aを有して構成されている。渦巻バネ384aは、固定ベース部381の前部に取付部384bを介して取り付けられた円筒状のバネ保持部384cに巻き掛けられている。図7に示すように、渦巻バネ384aの一端は、バネ保持部384cから後方である図7の右方に引き出され、移動ベース部383に設けられた支持片383aに取り付けられている。渦巻バネ384aは、移動ベース部383を前方に移動させる力を発生させる。渦巻バネ384aによって、移動ベース部383及び支持部350には、前方へ付勢される。
【0039】
渦巻バネ384aは、移動ベース部383が設けられている側とは反対側の面に沿って、後方に引き出されており、支持片383aは、移動ベース部383から、固定ベース381に形成された貫通孔386を通って、渦巻バネ384a側へ延びている。貫通孔386は前後方向に長く形成されており、移動ベース部383の移動を阻害しない。
【0040】
移動機構380は、駆動部384により前方に付勢された移動ベース部383の前方移動を阻止し、必要に応じて前方移動を許容するストッパ機構385を備えている。ストッパ機構385は、移動ベース部383から前方突出状に設けられた第1当接部385aと、固定ベース部381に対して回動自在に設けられた第2当接部385bと、を備えている。第2当接部384bは、固定ベース部381に設けられた支持片385cに対して、左右方向の支持軸385d回りに回動自在に取り付けられている。第2当接部385bは、支持軸385dから後方突出状に設けられている。第2当接部385bは、その後端が、第1当接部385aの前端と当接する。図5に示すように、第1当接部385aと第2当接部385bとが当接している状態では、移動ベース部383の前方移動は阻止され、支持部350は、図5に示すように、第2検体吸引位置72において静止する。
【0041】
第2当接部385bには、その前部から下方に延びる操作片385eが設けられている。操作片385eは、第2当接部385bを支持軸385d回りに下方へ回動させて、第1当接部385aとの当接を解除するためのものである。第1当接部385aと第2当接部385bとの当接が解除されると、移動ベース部383の前方移動が許容される。図6に示すように、移動ベース部383が前方移動すると、支持部350も前方移動し、支持部350は、通過口361を通って、保護カバー360へ出る。
【0042】
操作片385eは、固定ベース部381に取り付けられたコイルバネ385iを介して、後方に付勢されており、図5に示すように、第2当接部385bを、第1当接部385aに当接する位置に保持する。なお、第2当接部385bは、図5に示す位置よりも上方に回動しないように回動が規制されている。
【0043】
移動機構380は、操作片385eの操作のための操作駆動部として電磁シリンダ385fを備えている。電磁シリンダ385fは、制御部40によって制御される。電磁シリンダ385fは、前後方向に向いたシリンダロッド385gを前後に移動させる。シリンダロッド385gの前端にはヘッド385hが設けられており、シリンダロッド385gが前方移動すると、ヘッド385hは、操作片385eを前方に押す。操作片385eが前方に押されると、コイルバネ385iに抗して、第2当接部385bが支持軸385d回りに下方へ回動して、第1当接部385aの下側に入り込み、第1当接部385aによる移動ベース部383の移動規制が解除される。これにより、支持部350が、図6に示す位置へ前方移動する。
【0044】
図6に示すように前方移動した移動ベース部383が、図5に示す位置まで戻ると、第2当接部385bは、コイルバネ385iの付勢力により上方回動し、第1当接部385aに当接して、再び、移動ベース部383の前方移動は阻止される。なお、シリンダロッド385は、移動ベース部383の移動規制解除の際に、瞬間的に前後に往復動作する。つまりシリンダロッド385は、前方移動後、直ちに後方に戻る。したがって、ヘッド385hは、移動ベース部383の移動規制解除のとき以外は、操作片385eよりも後方に位置し、操作片385e及び第2当接部385bの回動を阻害しない。
【0045】
移動機構380は、駆動部384によって前方移動する移動ベース部383及び支持部350の移動速度を抑制するダンパー387を有している。ダンパー387は、移動ベース部383の下部に設けられている。ダンパー387は、例えば、歯車387aと、内部にオイルを有するハウジング387bと、を有して構成されている。ダンパー387は、歯車387aの回転が、ハウジング387b内のオイルの粘性によって抑制されるよう構成されている。歯車387aは、固定ベース部381に設けられたラック389に噛み合うよう設けられている。移動ベース部383が駆動部384によって移動すると、ラック389に噛み合っている歯車387aが回転するが、その回転は、ダンパー387によって抑制されるため、移動ベース部383及び支持部350の移動速度が、抑制される。したがって、渦巻バネ384aによる付勢力が大きくても、移動ベース部383及び支持部350を円滑に移動させることができる。
【0046】
開閉カバー362は、回転軸364回りに回動自在に設けられている。回動軸364は、固定ベース部381に設けられたカバー取付部401に支持されている。回動軸364は、軸方向が左右方向であるX方向に向いている。開閉カバー362の後部と回動軸364との間は、連結部365によって連結されている。開閉カバー362は、図5に示すように通過口361を閉じている状態から、回動軸364を中心として反時計回りに回動することで、図6に示すように通過口361を開くことができる。また、開閉カバー362は、図6に示すように通過口361を開いた状態から、回動軸364を中心として時計回りに回動することで、図5に示すように通過口361を閉じることができる。
【0047】
図5及び図6に示すように、設置部34は、移動機構380による支持部350の移動と開閉カバー362の動作とを連動させる連動機構400を備えている。連動機構400は、保護カバー360外への支持部350の前方移動と、開閉カバー362の開動作と、を連動させる。また、連動機構400は、保護カバー360内への支持部350の後方移動と、開閉カバー362の閉動作と、を連動させる。連動機構400は、連結部365に形成された長孔366と、支持部350に取り付けられたローラ355と、を有している。ローラ355は、支持部350の上下方向中途に設けられている。ローラ355は、連結部365に形成された長孔366内に、回転摺動自在に挿入されている。図6に示すように、支持部350が、前方移動すると、ローラ355が、長孔366の長手方向に移動しながら、回動軸364を中心として連結部365を反時計回りに回動させる。したがって、支持部350が前方移動するのと同時に、開閉カバー362が下方へ移動し、通過口361を開く。
【0048】
開閉カバー362は、通過口361を開く際に、図6において反時計回りに回動することで、支持部350の収納孔350aに対して相対的に下方に移動する。これにより、第2検体容器62又は第3検体容器63を収納孔350aから支持部350へ収納させ易くなる。
【0049】
ここで、通過口361は、支持部350から上方に突出した第2検体容器62が通過可能なように、支持部350の上部の収納孔350aよりも十分に高い必要がある。そして、開閉カバー362は、そのような高さのある通過口361を確実に閉じるために、支持部350の収納孔350aよりも上方に突出する高さを有している。このような高さのある開閉カバー362が、仮に、支持部350と同様に、前方へ水平移動して、通過口361を開くと、開閉カバー362が通過口361を開いても、開閉カバー362と支持部350との位置関係が、図5に示す状態に維持される。このため、開閉カバー362の上端362aが、保護カバー360から出た支持部350の前側において、支持部350よりも上方に突出することになる。この場合、第2検体容器62又は第3検体容器63を、保護カバー360と開閉カバー362との間の狭い隙間から、支持部350へ挿入させる必要がある。これに対して、本実施形態では、開閉カバー362は、支持部350上部の収納孔350aの高さと同程度の高さまで下方に移動しつつ通過口361を開く。このため、検体容器62,63の支持部350への挿入は、開閉カバー362によって阻害されにくくなり、容易となる。
【0050】
また、開閉カバー362が通過口361を開く回動動作は、開閉カバー上端362aの下方移動だけでなく、前方移動を含んでいる。実施形態の開閉カバー362の回動動作において、開閉カバー上端362aの前方移動量は、支持部350の前方移動量よりも大きくなっている。したがって、開閉カバー362が通過口361を開く際には、支持部350の移動方向である前後方向において、開閉カバー上端362aと支持部350との間隔が広がる。開閉カバー上端362aと支持部350との間隔が広がって離れることで、検体容器62,63の支持部350への挿入は、開閉カバー362によって阻害されにくくなり、容易となる。
【0051】
図6に示すように、開閉カバー362は、通過口361を開く際に、反時計回りの回動により下方移動し、開閉カバーの下端362b側が、保護カバー360内に入り込む。通過口361を開いた際に、開閉カバー362全体が保護カバー360外に突出せず、突出部分が少なくすることができる。ただし、開閉カバー上端362aは、通過口361を開いた際において、保護カバー360外に位置している。保護カバー360外に位置する開閉カバー上端362aは、後述のように、開閉カバー362を閉じるために、オペレータが後方へ押すための操作部となる。
【0052】
図5及び図6に示すように、支持部350は、その後側に、支持部350から上方突出状に設けられた壁部500を備えている。壁部500は、開閉カバー362によって開かれた通過口361のうち、収納孔350aよりも上方の範囲を塞ぐ。前述のように、開放された通過口361を壁部500で塞ぐことで、開放された通過口361から、検体容器62,63又は異物などが入り込むのを防止することができる。壁部500は、通過口361を完全に塞ぐ必要はなく、例えば、開閉カバー362によって開かれていても、通過口361から検体容器62,63が保護カバー360内に入らない程度に塞がれていれば、多少の隙間があっても良い。
【0053】
図1及び図6に示すように、保護カバー360外に出た支持部350には、緊急検体が収容された第2検体容器62を支持させることができる。支持部350には、第3検体容器63を支持させることもできるが、この点については後述する。
【0054】
支持部350に第2検体容器62又は第3検体容器63を支持させてから、オペレータが、開閉カバー上端362aを後方に押すと、開閉カバー362は、回動軸364を中心として時計回りに回動して通過口361を閉じる。すなわち、開閉カバー362は、支持部350の収納孔350aに対して相対的に上方に移動しつつ通過口361を閉じる。また、開閉カバー362は、その上端362aと支持部350との間隔が小さくなるように通過口361を閉じる。
【0055】
連動機構400は、開閉カバー362の回動動作を、支持部350の後方移動に変換する。つまり、開閉カバー362が時計回りに回動すると、長孔366がローラ355を後方に押して、ローラ355が長孔366の長手方向を戻りながら、支持部350が後方移動する。これにより、開閉カバー362の閉動作に連動して、支持部350が後方移動し、図5の位置に戻る。
【0056】
連動機構400は、省略してもよい。連動機構400を省略する場合、開閉カバー362の開閉動作を担う駆動部と、支持部350の前後移動を担う駆動部と、を別々に設ければよい。別々の駆動部で、開閉カバー362と支持部350を駆動する場合において、開閉カバー362の開閉動作と支持部350の前後移動を同時に行うには、それぞれの駆動部を同時に動作させればよい。
【0057】
連動機構400は、図5及び図6に示すものに限られず、例えば、図8に示す機構であってもよい。図8に示す連動機構400は、回動軸364と一体的に回転する歯車410と、歯車410に噛み合うピニオン420と、ピニオン420に噛み合うラック430と、を有して構成されている。ラック430は、支持部350に取り付けられており、支持部350と一体的に前後移動可能である。支持部350が前方に移動すると、ラック430が前方移動し、ピニオン420及び歯車410を介して、開閉カバー362が、回動軸364を中心として反時計回りに回動する。また、開閉カバー362を時計回りに手動で回動させると、歯車410及びピニオン420を介して、ラック430が後方移動する。
【0058】
[4.検体容器検出]
保護カバー360内には、第1センサ620と、第2センサ610と、第3センサ630と、が設けられている。第1センサ620及び第2センサ610は、第2検体吸引位置72にある第2検体容器62を検出するためのものである。図5図6及び図9に示すように、第1センサ620及び第2センサ610は、保護カバー360内に配置された柱状のセンサ支持部600に取り付けられている。センサ支持部600は、固定ベース部381に設けられている。
【0059】
第1センサ620及び第2センサ610は、それぞれ、発光素子と受光素子とを有するU字状のフォトインタラプタを有して構成されている。図9に示すように、第1センサ620及び第2センサ610は、それぞれ、検体容器に接触する接触子612,622を有している。接触子612,622は、フォトインタラプタに対して、上下方向であるZ方向に軸方向が向けられた回動軸614回りに回動自在に取り付けられた棒状部材である。図9(b)に示すように、接触子612,622は、その一端部612a,622aが、U字状のフォトインタラプタ内に位置して発光素子の光を遮るよう設けられている。図9(c)に示すように、第2検体容器62が第2検体吸引位置72に位置すると、第2検体容器62が接触子612,622を後方に押して、回動軸614回りに回動させる。これにより、接触子612,622の一端部612a,622aが、U字状のフォトインタラプタ外に位置し、発光素子の光が受光素子にて検出される。図9(c)の状態になると、第2検体容器62がセンサ620,610にて検出されたことになる。なお、接触子612,622は、図示しないコイルバネにより、図9(b)に示す位置をとるように付勢されている。
【0060】
図9(a)及び図10(a)に示すように、第1センサ620は、第2検体容器62を支持部350の上下方向中途で検出する。支持部350は、支持部350の上下方向中途位置で、支持部350内に収納された第2検体容器62と接触子622が接触するのを許容する第1欠損部351を有している。第1欠損部351は、支持部350の外周が一部切り欠かれて形成され、支持部350内に収納された第2検体容器62を外部に露出させる。
【0061】
図9(a)及び図10(a)に示すように、第2センサ610は、第2検体容器62を収納孔350aよりも上方で検出する。支持部350の壁部500は、第2検体容器62と接触子612が接触するのを許容する第2欠損部510を有している。第2欠損部510は、壁部500の一部が切り欠かれて形成され、接触子612が、壁部500を通過するのを許容する。
【0062】
図10に示すように、支持部350の内部には、第2検体容器62の下端を支持するための逆円錐状底面である第1支持面352と、第1支持面352よりも上方に位置する第2支持面353と、が形成されている。支持部350の内部において、第2支持面353より下は、第2支持面353の上側よりも、径が小さい空間であり、第2支持面353よりも上側において、支持部350の内部空間は拡径している。
【0063】
図10(b)に示すように、第2支持面353は、第3検体容器63に装着されたアダプタ700の下端を支持する。アダプタ700は、第2検体容器62よりも短い第3検体容器63を支持部350に支持させるためのものであり、第3検体容器63が上方突出状に挿入される。アダプタ700を介して支持部350に支持された第3検体容器63は、第2検体容器62の同様に、支持部350に対して上方突出状となるが、第2検体容器62のように第1支持面352には支持されていない。したがって、第3検体容器63を支持部350に支持させても、第1支持面352と第2支持面353の間には、第3検体容器63は位置しない。
【0064】
第1センサ620は、第2支持面353よりも下方、すなわち、第1支持面352と第2支持面353との間に配置されているため、支持部350に支持されている第2検体容器62を検出することができるが、第3検体容器63は支持部350に支持されていても検出しない。第2センサ620は、第2支持面353よりも上方に配置されているため、支持部350に支持されているのが第2検体容器62でも第3検体容器63でも検出できる。
【0065】
第3センサ630(図5及び図6参照)は、支持部350が保護カバー360内にあるか否か、すなわち、支持部350が前後方向の移動範囲における後端位置にあるか否かを検出する。第3センサ630は、固定ベース部381に設けられている。第3センサ630は、発光素子と受光素子とを有するU字状のフォトインタラプタを有して構成されている。支持部350が前後方向の移動範囲における後端位置に移動すると、移動ベース部383の後部が、U字状のフォトインタラプタ内に位置して発光素子の光を遮る。これにより、第3センサ630は、支持部350が保護カバー360内にあることを検出する。
【0066】
なお、保護カバー360内には、他のセンサ、例えば、第1載置領域31にラック60が載置されていることを検出するセンサや、搬送部33にラック60が位置していることを検出するセンサを配置することができる。
【0067】
[5.ノズル制御]
制御部40によるノズル制御は図11に示すように行われる。ノズル制御のため、制御部40は、ステップS11の判断を行う。ステップS11は、通常検体測定か否かの判断である。通常検体測定は、ラック60に保持された第1検体容器61の通常検体の測定である。通常検体測定でなければ、設置部34に設置された第2検体容器62又は第3検体容器63の緊急検体の測定である。通常検体測定及び緊急検体測定の選択は、処理装置50の表示部52に表示された選択ボタンである第1指示部52a又は第2指示部52bを選択することで、実行される。第1指示部52aは、通常検体測定の選択用である。第2指示部52bは、緊急検体測定の選択用である。指示部52a,52bが、入力部53の操作によって選択されると、選択された測定のモードとなる。
【0068】
ステップS11において測定モードが通常検体測定であると判断された場合、ステップS12において、制御部40は、搬送部33を制御して、尿検体を吸引すべき第1検体容器61を第1検体吸引位置へ搬送する。さらに、制御部40は、搬送部33上の第1検体容器61から尿検体を吸引すべく、第1検体吸引位置71へノズル111を移動させる。この場合、ノズル111は、初期位置74から、ハウジング21に形成された開口21bを通って、ハウジング21外に出て、搬送部33上の第1検体吸引位置71へ移動し、検体を吸引する。
【0069】
ステップS11において測定モードが緊急検体測定であると判断された場合、制御部40は、移動機構380に含まれる操作駆動部である電磁シリンダ385fを制御し、移動ベース部383の移動規制を解除し、開閉カバー362を開くとともに支持部530を保護カバー360外へ出す。オペレータが第2検体容器62又は第3検体容器63を支持部350に支持させ、開閉カバー362を押して開閉カバーを閉じるとともに支持部350を保護カバー360内に位置させると、ステップS13において、支持部350が保護カバー360内にあることが第3センサ630により検出される。
【0070】
また、ステップS14において、第2センサ610が検体容器を検出すると、制御部40は、支持部350に第2検体容器62又は第3検体容器63が支持されていると判断する。さらに、ステップS15において、第1センサ620が検体容器を検出した場合、制御部40は、支持部350に支持されているのは第2検体容器62であると判断する。この場合、ステップS16において制御部40は、第2検体吸引位置72へノズルを移動させる。また、第1センサ620が検体容器を検出しない場合、制御部40は、支持部350に支持されているのは第3検体容器63であると判断する。この場合、ステップS17において制御部40は、第3検体吸引位置73へノズルを移動させる。
【0071】
ノズル111が第2検体吸引位置72又は第3検体吸引位置73へ移動する場合、ノズル111は、初期位置74から、ハウジング21に形成された開口21aを通って、ハウジング21外に出て、保護カバー360の上部開口367から保護カバー内に進入して、第2検体吸引位置72又は第3検体吸引位置73へ移動し、尿検体を吸引する。第3検体容器63のための第3検体吸引位置73は、第2検体容器62のための第3検体吸引位置よりも上方に設定されているため、第3検体容器63が支持部350に支持されている場合には、ノズル111は、第2検体吸引位置よりも上方で尿検体を吸引する。
【符号の説明】
【0072】
10 尿分析装置
30 搬送装置
33 搬送部
34 設置部
40 制御部
61 第1検体容器
62 第2検体容器
63 第3検体容器
71 第1検体吸引位置
72 第2検体吸引位置
73 第3検体吸引位置
111 第1ノズル
260 検出部
350 支持部
350a 収納孔
351 第1欠損部
352 第1支持面
353 第2支持面
355 ローラ
360 保護カバー
362 開閉カバー
364 回動軸
365 連結部
366 長孔
380 移動機構
387 ダンパー
400 連動機構
500 壁部
510 第2欠損部
620 第1センサ
622 接触子
610 第2センサ
612 接触子
700 アダプタ
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