特許第6542719号(P6542719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542719
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】車両用デフロスタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20190628BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B60H1/34 651C
   F24F13/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-134807(P2016-134807)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-2075(P2018-2075A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 慎一郎
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−000461(JP,U)
【文献】 実開平07−030108(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0002333(KR,A)
【文献】 特開2008−126928(JP,A)
【文献】 特開2015−174467(JP,A)
【文献】 実開昭60−182265(JP,U)
【文献】 特開昭63−104626(JP,A)
【文献】 実開昭63−159367(JP,U)
【文献】 実開平02−016314(JP,U)
【文献】 特開昭61−024652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントデフロスタダクトと、インストルメントパネルに設けられ上記フロントデフロスタダクトの吹出口の上方に配置されたフロントデフロスタノズルとを備え、このフロントデフロスタノズルに、前後方向に延びる複数のフィンが左右方向に間隔をおいて配置された車両用デフロスタ装置において、
上記フロントデフロスタノズルの下方には、上記フロントデフロスタダクトの吹出口を覆うようにして格子部材が配置され、この格子部材と上記フロントデフロスタダクトが、薄肉樹脂ヒンジを介して一体に連なっており、
上記フロントデフロスタノズルの複数のフィンは、上記吹出口から上方に吹き出す空気を左右方向に拡げるために傾斜しており、
上記格子部材は、前後方向に延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された複数の縦格子を有し、
上記格子部材の上記縦格子は、隣接するフィンの下端の中間に配置されていることを特徴とする車両用デフロスタ装置。
【請求項2】
上記格子部材は、左右に延びて上記縦格子の中間部と交差する横格子を有し、この横格子が上記フィンの中間部と交差することを特徴とする請求項に記載の車両用デフロスタ装置。
【請求項3】
上記格子部材には上記薄肉樹脂ヒンジから離れた箇所に係合部が形成され、上記フロントデフロスタダクトには上記係合部が係合する受部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用デフロスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントウィンドウに空気を吹き付けるデフロスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたデフロスタ装置は、フロントデフロスタダクトと、インストルメントパネルに設けられフロントデフロスタダクトの吹出口の上方に位置するフロントデフロスタノズルとを備えており、フロントデフロスタダクトを通る空気をフロントデフロスタノズルからフロントウィンドウに吹き付けることによりその曇りを解消するようになっている。
上記デフロスタ装置のフロントデフロスタノズルおよびフロントデフロスタダクトの吹出口は、フロントウィンドウに沿って左右に長く延びており、そのほぼ全領域に空気を吹き付けることができるようになっている。フロントデフロスタノズルには、前後方向に延びる多数のフィンが左右方向に間隔をおいて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3621240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記デフロスタ装置において、上記フロントデフロスタノズルのフィンの間隔を広げることを余儀無くされる場合がある。例えば、本願実施例のようにフロントデフロスタの主たる吹出口をフロントウィンドウの中央部に配置し、これに対応してフロントデフロスタノズルをフロントウィンドウの中央部に配置し、このフロントデフロスタノズルから上方に吹き出す空気を左右に広げてフロントウィンドウに吹き付ける場合である。この場合には、フロントデフロスタノズルのフィンを傾斜させるため、成形上の制約からフィンの間隔を広げざるを得ない。
【0005】
上記のようにフィンの間隔を広げると、フィンの間から異物が落下し、フロントデフロスタダクトに侵入する可能性がある。そこで、本願発明者は、フロントデフロスタノズルの下方においてフロントデフロスタダクトの吹出口に格子部材を配置し、異物落下を防止することを考えた。しかし、この格子部材を別途製造すると、製造コストが増大するとともに、格子部材を吹出口に装着する作業も煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、フロントデフロスタダクトと、インストルメントパネルに設けられ上記フロントデフロスタダクトの吹出口の上方に配置されたフロントデフロスタノズルとを備え、このフロントデフロスタノズルに、前後方向に延びる複数のフィンが左右方向に間隔をおいて配置された車両用デフロスタ装置において、上記フロントデフロスタノズルの下方には、上記フロントデフロスタダクトの吹出口を覆うようにして格子部材が配置され、この格子部材と上記フロントデフロスタダクトが、薄肉樹脂ヒンジを介して一体に連なっていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、フロントデフロスタノズルのフィンの間隔を広げてもその下方に配置された格子部材により、フロントデフロスタダクトダクトへの異物落下を阻止することができる。格子部材はフロントデフロスタダクトと薄肉樹脂ヒンジを介して一体に連なっているので、フロントデフロスタダクトと同時に成形することが可能であり製造コストを抑えることができる。さらに格子部材は、薄肉樹脂ヒンジによりフロントデフロスタダクトに対して位置決めされているので、薄肉樹脂ヒンジを中心に回動させることにより、フロントデフロスタダクトの吹出口に簡単に装着することができる。
【0008】
好ましくは、上記格子部材は、前後方向に延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された縦格子を有し、この格子部材の上記縦格子が、上記フィン間に配置されている。
この構成によれば、少ない縦格子で効率良く異物落下を防止することができる。
【0009】
好ましくは、上記フロントデフロスタノズルの複数のフィンは、上記吹出口から上方に吹き出す空気を左右方向に拡げるために傾斜しており、上記格子部材の上記縦格子は、隣接するフィンの下端の中間に配置されている。
この構成によれば、フィンが傾斜していても確実に異物落下を防止することができる。
【0010】
好ましくは、上記格子部材は、左右に延びて上記縦格子の中間部と交差する横格子を有し、この横格子が上記フィンの中間部と交差する。
この構成によれば、フィンが前後方向に長くても確実に異物落下を防止できる。
【0011】
好ましくは、上記格子部材には上記薄肉樹脂ヒンジから離れた箇所に係合部が形成され、上記フロントデフロスタダクトには上記係合部が係合する受部が形成されている。
上記構成によれば、格子部材をフロントデフロスタダクトの吹出口に安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、格子部材により、フロントデフロスタノズルからフロントデフロスタダクトへの異物侵入を防止できる。しかも、格子部材の装備に伴う製造コスト上昇を抑制でき、格子部材の装着作業も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るデフロスタ装置のダクト構造を示す斜視図である。
図2】同ダクト構造を構成する第1構成部材と格子部材を示す斜視図である。
図3】同ダクト構造を構成する第2構成部材を示す斜視図である。
図4】同ダクト構造を覆うインストルメントパネルを示す斜視図である。
図5図4におけるA−A矢視断面図である。
図6図5におけるB−B矢視断面図である。
図7】同デフロスタ装置によるフロントウィンドウへの空気の吹き付け状況を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態に係るデフロスタ装置について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両の左右方向を意味する。
デフロスタ装置は、図1に示すダクト構造1を備えている。このダクト構造1は、中空をなす基部10と、この基部10から左右に分岐して前方に延びる一対のフロントデフロスタダクト20と、これらフロントデフロスタダクト20の前端部にそれぞれ連なり左右方向に延びる一対の延長ダクト30とを備えている。
【0015】
基部10の下端開口には、図示しない空調装置からの温度調節された空気が導入されるようになっている。基部10に導入された空気は左右のフロントデフロスタダクト20を通って前方に送られ、さらに左右の延長ダクト30に送られるようになっている。
なお、基部10には、筒形状をなす接続部40が形成されている。この接続部40には、別体をなすサイドデフロスタダクト(図示しない)が接続されており、基部10からサイドデフロスタダクトへも空気が送られるようになっている。
【0016】
フロントデフロスタダクト20の前端部には、上方に向けて開放された吹出口21が形成されている。延長ダクト30には、上記吹出口21から左右に離れた箇所に、上方に向けて開放された小さな補助ノズル35が形成されている。
【0017】
上記ダクト構造1は半割り構造をなしており、図2に示す後側(車室側)のダクト構成部材1Aと図3に示す前側のダクト構成部材1Bとを連結することにより構成されている。これらダクト構成部材1A、1Bは射出成形により得られる。ダクト構成部材1A、1Bにおいて、上記基部10、フロントデフロスタダクト20、延長ダクト30、接続部40を構成する半割部分には、それぞれ符号10〜40に符号「A」,「B」を追加してその説明を省略する。
【0018】
図2に示すように、吹出口21は後側のダクト構成部材1Aに形成されている。このダクト構成部材1Aは、吹出口21の前方かつ近傍において起立する支持壁22を有している。この支持壁22はフロントウィンドウの左右方向中央部に位置し、この支持壁22に左右の延長ダクト30の半割部分30Aが連なっている。
【0019】
ダクト構成部材1Aの支持壁部22の上縁には、薄肉樹脂ヒンジ50を介して連結板部51の一方の縁が連なっており、この連結板部51の他方の縁には一対の格子部材55が連なっている。格子部材55は連結板部51と所定角度で交差している。左右の格子部材55は、連結板部51と架橋部56により互いに連結されている。
【0020】
上記薄肉樹脂ヒンジ50、連結板部51、格子部材55は、ダクト構成部材1Aと同じ樹脂材料(例えばPPF)で形成され、射出成形時に同時に一体をなして成形される。格子部材55を薄肉樹脂ヒンジ50とともにダクト構成部材1Aと一体に成形できるので、製造コストを抑えることができる。
【0021】
各格子部材55は横長に形成されており、左右方向に間隔をおいて配置された複数(本実施形態では6本)の縦格子55aと、これら縦格子55aの略中央(中間部)と交差して左右方向に延びる横格子55bとを有している。
【0022】
左右の格子部材55は、薄肉樹脂ヒンジ50を中心に回動させることにより、図1に示すように左右の吹出口21を覆う位置にセットすることができる。格子部材55は薄肉樹脂ヒンジ50により位置決めされているので、吹出口21へのセットを簡単かつ効率良く行うことができる。
このセット状態で、連結板部51が支持壁部22に沿うように配置される。
【0023】
格子部材55は、薄肉樹脂ヒンジ50の反対側の縁において左右方向に延びる突条55c(係合部)と弾性爪55d(係合部)を有するとともに、側縁に係合突起55e(係合部)を有している。格子部材51を図2の位置からセット位置まで回動させると、突条55cが吹出口21の後側(車室側)の縁部21a(受部)に接するようにして吹出口21に入り込み、弾性爪55dがこの縁部21aに外側から係止され、係合突起55eが吹出口21の側縁近傍に形成された係合孔23(受部)に入り込む。これにより、格子部材55はセット位置で保持されるようになっている。
【0024】
図4に示すように、ダクト構造1はインストルメントパネル2により覆われている。本実施形態では、延長ダクト30はインストルメントパネル2により覆われず、車室内に露出している。
【0025】
インストルメントパネル2の前端縁部の左右方向中央部には、フロントデフロスタグリル60が設置され、左右端部にはサイドデフロスタグリル70が設置されている。これらグリル60,70はインストルメントパネル2の一部を構成している。
【0026】
上記フロントデフロスタグリル60は、左右に分かれた2つのフロントデフロスタノズル61を有している。各フロントデフロスタノズル61は左右に細長い形状を有しており、図5図6に示すように、フロントデフロスタダクト20の吹出口21の上方に位置し、この吹出口21に連なっている。
【0027】
フロントデフロスタノズル61には、前後方向に延びるフィン65が左右方向に間隔をおいて複数(本実施形態では6つ)形成されている。右側のフロントデフロスタノズル61では、フィン65は右に傾いており、その傾斜角度は右方向へ向かうにしたがって増大するようになっている。また、左側のフロントデフロスタノズル61では、フィン65は左に傾いており、その傾斜角度は左方向へ向かうにしたがって増大するようになっている。その結果、図7に示すように、右側のフロントデフロスタダクト20の吹出口21から上方に吹き出した空気は右側のフロントデフロスタノズル61のフィン65により拡がり、フロントウィンドウWの中央から右側の広い領域に当たる。同様に、左側のフロントデフロスタダクト20の吹出口21から上方に吹き出した空気は左側のフロントデフロスタノズル61のフィン65により拡がり、フロントウィンドウWの中央から左側の広い領域に当たる。
【0028】
図5に示すように、フロントデフロスタダクト20の吹出口21を覆う格子部材55は、フィン65の下方に位置している。縦格子55aは前後方向(図5の紙面と直交する方向)に延び、隣接するフィン65の下端縁間の間隙の略中央(中間位置)に配置されている。図6に示すように、横格子55bは、フィン65の下端縁の前後方向の略中央(中間部)と交差して、左右方向(図6において紙面と直交する方向)に延びている。
インストルメントパネル2に載せた小物等の異物がフィン65間を通って落下しても、上記格子部材55の縦格子55aと横格子55bにより阻止することができ、フロントデフロスタダクト20への異物侵入を阻止することができる。
【0029】
本実施形態では、フロントデフロスタダクト20から左右の延長ダクト30へも空気が流れ、図7に示すように、この延長ダクト30の補助ノズル35からフロントウィンドウWに空気を吹き付けることができる。このようにして、中央部のノズル61,61からの空気が及ばない領域、具体的にはフロントウィンドウWの左下隅部と右下隅部に空気を吹き付けることができる。なお、この補助ノズル35からの空気吹き出し量は少量で済むので、延長ダクト30は細くてよい。
【0030】
なお、インストルメントパネル2のサイドデフロスタグリル70は、接続部40に接続されたサイドデフロスタダクトの吹出口に連なっており、サイドウィンドウへ空気を吹き付けることができる。
【0031】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様が可能である。
上記実施形態では、格子部材はフロントデフロスタノズルのフィンに対応した配置の縦格子と横格子を有するが、このフィンの配置とは無関係な格子形状を有していてもよい。この場合、格子の目はフィン間隔より細かくする必要がある。
上記実施形態では一対のフロントデフロスタダクトが左右に分岐されているが、1つであってもよい。この場合には、1つの吹出口がフロントウィンドウの中央部に位置し、格子部材、フロントデフロスタグリルがそれぞれ1つずつ装備される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両のフロントウィンドウに空気を吹き付けるデフロスタ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ダクト構造
2 インストルメントパネル
20 フロントデフロスタダクト
21 吹出口
50 薄肉樹脂ヒンジ
55 格子部材
55a 縦格子
55b 横格子
61 フロントデフロスタノズル
62 フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7