(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出が、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)MS、タンデムMS、エレクトロスプレーイオン化−飛行時間(ESI−TOF)、ESI−イオントラップ、液体クロマトグラフィー(LC)−MS、ガスクロマトグラフィー(GC)−MS、及びイオンモビリティー(IM)−MSからなる群から選択される質量分析計によって行なわれる請求項1〜5のいずれか一項の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、核酸を含む検査試料又は培養物(例えば、微生物培養物)を含む。また、「試料」という用語は生体試料及び環境試料の両方を意味する。試料は合成による検査試料を含みうる。生体試料としては、全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞洗浄液、胃洗浄液、腹腔洗浄液、乳管洗浄液、耳洗浄液、関節鏡下洗浄液)、生検試料、尿、便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙、汗、母乳、胸液、胚細胞、及び胎児細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、生体試料は血液であり、より好ましくは血漿である。本明細書で使用される場合、「血液」という用語は、全血又は従来から定義されている血清及び血漿などの血液のいずれの画分を包含する。血漿は、血液凝固阻止剤で処理された血液を遠心分離した結果として生じる全血の画分を指す。血清は、血液試料が凝固した後に残る体液の水様部分を指す。環境試料としては、表面物質(surface matter)、土、水、及び工業試料などの環境物質(environmental material)、並びに食品加工及び乳加工機器、装置、設備、用具、消耗品、及び非消耗品から得られる試料が挙げられる。これらの例は本発明に適用可能な試料の種類を限定するものと解釈してはならない。
【0010】
本明細書で使用される場合、「標的」又は「標的核酸」という用語は、その存在が検出若しくは測定されることになっているいずれの分子、又はその機能、相互作用、若しくは特性が研究されることになっているいずれの分子を意味することを意図する。したがって標的は、そのための検出可能なプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)若しくはアッセイが存在するいずれの分子を本質的に含むか、又は当業者によって作製されうる。例えば、標的は、検出可能なプローブ(例えば、抗体)と結合できるか、そうでなければ検出可能なプローブ(例えば、抗体)と接触できる、核酸分子、ポリペプチド、脂質、又は炭水化物などの生体分子であってよく、ここで検出可能なプローブは本発明の方法で検出できる核酸も含む。本明細書で使用される場合、「検出可能なプローブ」は対象の標的生体分子にハイブリダイズ又はアニールできるいずれの分子又は薬剤を指し、本明細書に記載の標的生体分子の特異的検出を可能にする。本発明の1つの態様では、標的は核酸であり、検出可能なプローブはオリゴヌクレオチドである。「核酸」及び「核酸分子」という用語は、本開示を通してほとんど同じ意味で用いられうる。それらの用語は、オリゴヌクレオチド、オリゴ、ポリヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、相補的DNA(cDNA)、細菌DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、RNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、siRNA、触媒RNA、クローン、プラスミド、M13、P1、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、増幅核酸、アンプリコン、PCR産物及び他の種類の増幅核酸、RNA/DNAハイブリッド、並びにポリアミド核酸(PNA)を指し、それらすべては一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態であることができ、特に別段限定がなければ、天然のヌクレオチド並びにその組み合わせ及び/又は混合物と同様に機能できる天然ヌクレオチドの既知のアナログを包含することになる。よって、「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシド三リン酸、ヌクレオシド二リン酸、及びヌクレオシド一リン酸を含む天然のヌクレオチド及び修飾/非天然ヌクレオチド、並びにポリ核酸又はオリゴヌクレオチド内に存在する一リン酸単量体を指す。また、ヌクレオチドは、リボ−2’−デオキシ、リボ−2,3’−デオキシ、及び当該技術分野で周知の膨大な数の他のヌクレオチド模倣体でありうる。模倣体としては、3’−O−メチル、ハロゲン化塩基、又は糖置換体などの鎖終止ヌクレオチド;無糖、アルキル環構造を含む代替的糖構造;イノシンを含む代替的塩基;デアザ修飾;カイ、及びプサイ、リンカー修飾(chi, and psi, linker-modified);質量標識(mass label)修飾;ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、アミド、エステル、エーテルを含むホスホジエステル修飾又は置換、並びに光切断ニトロフェニル部分などの切断連結(cleavage linkage)を含む基礎的(basic)又は完全なヌクレオチド間置換が挙げられる。
【0011】
標的の有無は定量的又は定性的に測定できる。標的は、例えば、単純若しくは複雑な混合物を含むさまざまな形態、又は実質的に精製された形態であることができる。例えば、標的は他の構成要素を含有する試料の一部、又は試料の単独の構成成分若しくは主要な構成成分であることができる。したがって標的は、全細胞若しくは全組織の構成成分、細胞抽出物若しくは組織抽出物、その分画溶解物、又は実質的に精製された分子であることができる。また、標的は既知又は未知のいずれかの配列又は構造を有することができる。
【0012】
「増幅反応」という用語は、核酸の標的配列のコピーを増やすいずれのインビトロの手段を指す。
【0013】
「増幅すること」は、増幅を可能にするのに充分な条件に溶液を供する工程を指す。増幅反応の構成要素としては、例えば、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、dNTPなどが挙げられうるが、これらに限定されない。典型的には、「増幅すること」という用語は標的核酸の「指数関数的な」増加を指す。しかし、本明細書で使用される場合、「増幅すること」は核酸の選ばれた標的配列の数の線形増加も指すが、1回の単一プライマー伸長工程とは異なる。
【0014】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、それによって標的二本鎖DNAの特定のセグメント又はサブシーケンスが等比数列的に増幅される方法を指す。PCRは当業者に周知であり、例えば、米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書、並びにPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds, 1990を参照されたい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合又はその類似体で連結した天然又は修飾ヌクレオシド単量体の直線状オリゴマーを指す。オリゴヌクレオチドとしては、標的核酸に特異的に結合できるデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、そのアノマー型、ペプチド核酸(PNA)などが挙げられる。通常は、単量体はホスホジエステル結合又は類似体で連結されて、少数の単量体単位、例えば3〜4個から、数十個の単量体単位、例えば40〜60個の範囲の大きさのオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字の配列によって表される場合は常に、ヌクレオチドは左から右へ5’〜3’の順であり、特に断りのない限り、「A」はデオキシアデノシンを表わし、「C」はデオキシシチジンを表わし、「G」はデオキシグアノシンを表わし、「T」はデオキシチミジンを表わし、及び「U」はリボヌクレオシド、ウリジンを表わすことが理解されるであろう。通常は、オリゴヌクレオチドは4つの天然デオキシヌクレオチドを含む。しかし、オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオシド又は非天然ヌクレオチドアナログも含んでもよい。酵素がその活性のために、例えば、一本鎖DNA、RNA/DNA二本鎖、又は同種のものといった特異的なオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質要求性をもつ場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質について適切な組成物を選択することは充分、当業者の知識の範囲内である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチドプライマー」又は単に「プライマー」は、標的核酸鋳型の配列にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドプローブの検出を容易にするポリヌクレオチド配列を指す。本発明の増幅実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは核酸合成の開始点としての役割を担う。非増幅実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは切断剤によって切断されることができる構造を創るのに使用されうる。プライマー長はさまざまであることができ、多くの場合、長さは50個のヌクレオチド未満、例えば、12〜25のヌクレオチド長である。PCRに用いるプライマーの長さ及び配列は当業者に公知の原則に基づいて設計できる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチドプローブ」という用語は、対象の標的核酸にハイブリダイズ又はアニールできるポリヌクレオチド配列を指し、標的核酸の特異的な検出を可能にする。
【0018】
「ミスマッチヌクレオチド」又は「ミスマッチ」は、その1つ又は複数の位置において標的配列に相補的ではないヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドプローブは少なくとも1つのミスマッチを有しうるが、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ以上のミスマッチヌクレオチドも有することもできる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「多型」という用語はアレルバリアントを指す。多型は一塩基多型(SNP)及び単純配列長多型を含むことができる。多型は別のアレルと比較して、1つのアレルでの1つ以上のヌクレオチド置換に起因しうるか、又は削除若しくは複製、反転、及び当該技術分野で公知の変化に起因しうる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「質量識別可能なサイズ(mass-distinguishable size)」という用語は、「切断産物サイズ」、「分解産物サイズ」、又は「プローブ断片サイズ」と交換可能に使用されてよく、本明細書の方法によって記載のオリゴヌクレオチドプローブの切断及び放出の結果として生じる1つの主要な分解産物の大きさを指す。質量識別可能なサイズをもつ断片(MDF)としては、オリゴヌクレオチドプローブ断片、ヌクレオチドオリゴヌクレオチドプローブ断片、非ヌクレオチドオリゴヌクレオチドプローブ断片、分離を容易にする修飾タグ(例えば、疎水性部分及び親和性部分)を含有するオリゴヌクレオチドプローブ断片が挙げられるが、これらに限定されない。固有の質量識別可能なサイズをもつ断片を生成することは、感度の著しい向上をもたらし、マルチプレックス反応を行なう能力の増強が可能になる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「修飾(modification)」という用語は、分子レベル(例えば、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格)でのオリゴヌクレオチドプローブの改変を指す。ヌクレオシド修飾としては、切断遮断物質又は切断誘導物質の導入、マイナーグルーブ結合物質の導入、同位体濃縮、同位体欠質(isotopic depletion)、重水素の導入、及びハロゲン修飾が挙げられるが、これらに限定されない。また、ヌクレオシド修飾はハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを上げる部分、又はオリゴヌクレオチドプローブの融点を上げる部分を含んでもよい。例えば、ヌクレオチド分子は、2’炭素及び4’炭素を接続する追加の架橋で修飾して、ヌクレアーゼによる切断に対して耐性があるロックド核酸(LNA)ヌクレオチドをもたらしうる。
【0022】
標的ポリヌクレオチドに対するプローブなどの1つの分子が別の分子に結合することに関して「特異的な」又は「特異性」という用語は、その分子と他の分子の実質的に少ない認識、接触、及び複合体形成を伴う、2分子間の認識、接触、及び安定した複合体の形成を指す。本明細書で使用される場合、「アニール」という用語は、2分子間の安定した複合体の形成を指す。
【0023】
プローブの少なくとも1つの領域が核酸配列の相補体の少なくとも1つの領域と実質的な配列同一性を共有する場合、プローブは核酸配列に「アニールできる」。「実質的な配列同一性」は、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、95%、又は99%、及び最も好ましくは100%の配列同一性である。DNA配列及びRNA配列の配列同一性を決定する目的で、U及びTは多くの場合、同じヌクレオチドとみなされる。例えば、配列ATCAGCを含むプローブは配列GCUGAUを含む標的RNA配列にハイブリダイズできる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「切断剤」という用語は、限定されないが酵素を含む、オリゴヌクレオチドプローブを切断して質量識別可能サイズの断片を生じることができるいずれの手段を指す。増幅が起こらない方法に関して、切断剤は単独で、オリゴヌクレオチドプローブの第2の部分又はその断片を切断、分解、又はそうでなければ放出する働きをする。切断剤は酵素でもよい。切断剤は天然でも、合成でも、非修飾でも、又は修飾されていてもよい。
【0025】
増幅が起こる方法に関して、切断剤は好ましくは合成(又は重合)活性及びヌクレアーゼ活性をもつ酵素である。そのような酵素は多くの場合、核酸増幅酵素である。核酸増幅酵素の例は、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(TaqMAN、登録商標(RTM))又は大腸菌DNAポリメラーゼIなどの核酸ポリメラーゼ酵素である。酵素は天然でも、非修飾でも、又は修飾されていてもよい。
【0026】
「核酸ポリメラーゼ」はヌクレオチドの核酸への組み込みを触媒する酵素を指す。例示的な核酸ポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼなどが挙げられる。
【0027】
「耐熱性DNAポリメラーゼ」は、安定であり(すなわち、分解又は変性に耐性があり)、選ばれた期間にわたって高温に供されたときに充分な触媒活性を保持するDNAポリメラーゼを指す。例えば、耐熱性DNAポリメラーゼは、二本鎖核酸を変性するのに必要な時間、高温に供したとき、充分な活性を保持して、続いて起こるプライマー伸長反応を行なう。核酸変性に必要な加熱条件は当該技術分野において周知であり、米国特許第4,683,202号明細書及び同第4,683,195号明細書に例示されている。本明細書で使用される場合、耐熱性ポリメラーゼは典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)などの温度サイクリング反応での使用に好適である。耐熱性核酸ポリメラーゼの例としては、テルムス・アクウァーティクスTaqDNAポリメラーゼ、テルムス属種不明(Thermus sp)Z05 ポリメラーゼ、テルムス・フラブス(Thermus flavus)ポリメラーゼ、TMA−25及びTMA−30ポリメラーゼなどのテルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼなどが挙げられる。
【0028】
「改変」ポリメラーゼは、ポリメラーゼの天然若しくは野生型形態、又はポリメラーゼの別の改変形態などの、少なくとも1つの単量体が参照配列と異なるポリメラーゼを指す。例示的な改変としては、単量体挿入、削除、及び置換が挙げられる。また、改変ポリメラーゼは、2つ以上の親由来する同定可能な構成要素配列(例えば、構造ドメイン又は機能ドメインなど)を有するキメラポリメラーゼを含む。参照配列の化学修飾を含むものもまた改変ポリメラーゼの定義の範囲内に含まれる。改変ポリメラーゼの例としては、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼ、ΔΖ05ポリメラーゼ、ΔZ05−ゴールドポリメラーゼ、ΔZ05Rポリメラーゼ、E615G TaqDNAポリメラーゼ、E678G TMA−25ポリメラーゼ、E678G TMA−30ポリメラーゼなどが挙げられる。
【0029】
「5’→3’ヌクレアーゼ活性」又は「5’−3’ヌクレアーゼ活性」という用語は、典型的には核酸鎖合成に関連する、ヌクレオチドが核酸鎖の5’末端から除去される核酸ポリメラーゼの活性を指し、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIはこの活性をもつ一方でクレノウ断片はこの活性をもたない。5’→3’ヌクレアーゼ活性をもつ幾つかの酵素は5’→3’エキソヌクレアーゼである。そのような5’→3’エキソヌクレアーゼの例としては、バチルス・サブティリス(B. subtilis)由来エキソヌクレアーゼ、脾臓由来ホスホジエステラーゼ、ラムダエキソヌクレアーゼ、酵母由来エキソヌクレアーゼII、酵母由来エキソヌクレアーゼV、及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来エキソヌクレアーゼが挙げられる。
【0030】
「主要な断片」という用語は、所与のいずれの検出方法で検出できる全断片の90%超を構成する断片を指す。
【0031】
「プロパンジオール」又は「プロパンジオールスペーサー」という用語は、1,3−プロパンジオールを指し、プロパン−1,3−ジオール、1,3−ジヒドロキシプロパン、及びトリメチレングリコールと同義である。「HEG」又は「HEGスペーサー」という用語は、ヘキサエチレングリコールを指し、3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1,17−ジオールと同義である。
【0032】
本発明のさまざまな態様は核酸ポリメラーゼの特部な性質に基づく。核酸ポリメラーゼは幾つかの活性をもつことができ、それらのうち、5’→3’ヌクレアーゼ活性によって、核酸ポリメラーゼはより大きい相補的ポリヌクレオチドにアニールしたオリゴヌクレオチドからモノヌクレオチド又はより小さいオリゴヌクレオチドを切断できる。切断が効率的に起こるためには、上流オリゴヌクレオチドは、より大きい同じポリヌクレオチドにアニールしなければならない。
【0033】
5’→3’ヌクレアーゼ活性を利用する標的核酸の検出は、米国特許第5,210,015号明細書、同第5,487,972号明細書、及び同第5,804,375号明細書、並びにHolland et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7276-7280に記載のように、「TaqMan(登録商標)」又は「5’−ヌクレアーゼアッセイ」によって行なうことができる。TaqMan(登録商標)アッセイでは、増幅領域内にハイブリダイズする標識検出プローブは増幅反応中に存在する。プローブがDNA合成用プライマーとして作用することを防ぐようにプローブは修飾される。増幅は5’→3’エキソヌクレアーゼ活性をもつDNAポリメラーゼを用いて行なわれる。増幅の各合成工程の間、伸長されているプライマーの下流の標的核酸にハイブリダイズするいずれのプローブは、DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。よって、新しい標的鎖の合成はまた、プローブの分解をもたらし、分解産物の蓄積は標的配列の合成の基準尺度を提供する。
【0034】
分解産物を検出するのに適したいずれの方法も5’ヌクレアーゼアッセイに使用できる。多くの場合、検出プローブは2つの蛍光色素で標識され、片方は他方の色素の蛍光を消光できる。色素はプローブに結合され、典型的にはリポーター色素又は検出色素は5’末端に結合され、消光色素は内部部位に付けられ、プローブがハイブリダイズしない状態にあるときに消光が起き、DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素の間で起こる。増幅は消光を無くすのと同時に色素間のプローブの切断をもたらし、最初に消光された色素から観察できる蛍光の増加をもたらす。分解産物の蓄積は反応蛍光の増加を測定することによってモニターされる。米国特許第5,491,063号明細書及び同第5,571,673号明細書は、増幅と同時に起こるプローブの分解を検出する代替的な方法を記載する。
【0035】
標的核酸を検出するための5’ヌクレアーゼアッセイには、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性をもついずれのポリメラーゼを用いることができる。よって、幾つかの実施形態では、5’−ヌクレアーゼ活性をもつポリメラーゼは耐熱性及び熱活性核酸ポリメラーゼである。そのような耐熱性ポリメラーゼとしては、ユーバクテリウム属、テルムス属、テルモトガ属、及びテルモシフォ属のさまざまな種に由来するポリメラーゼの天然のままの形態及び組み換え形態、並びにそれらのキメラ形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本発明の方法に使用できるテルムス種(Thermus species)ポリメラーゼとしては、テルムス・アクウァーティクス(Taq)DNAポリメラーゼ、テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、テルムス種Z05(Z05)DNAポリメラーゼ、テルムス種spsl7(sps17)、及びテルムス種Z05が挙げられる(例えば、米国特許第5,405,774号明細書、同第5,352,600号明細書、同第5,079,352号明細書、同第4,889,818号明細書、同第5,466,591号明細書、同第5,618,711号明細書、同第5,674,738号明細書、及び同第5,795,762号明細書に記載されている)。本発明の方法に使用できるテルモトガポリメラーゼとしては、例えば、テルモトガ・マリティマDNAポリメラーゼ及びテルモトガ・ネアポリタナDNAポリメラーゼが挙げられ、使用できるテルモシフォポリメラーゼの例はテルモシフォ・アフリカヌスDNAポリメラーゼである。テルモトガ・マリティマDNAポリメラーゼ及びテルモシフォ・アフリカヌスDNAポリメラーゼの配列は国際公開第92/06200号パンフレットに公開されている。テルモトガ・ネアポリタナの配列は国際公開第97/09451号パンフレットに見出すことができる。
【0036】
5’ヌクレアーゼアッセイでは、増幅検出は典型的には増幅と同時(すなわち「リアルタイム」)である。幾つかの実施形態では、増幅検出は定量的であり、増幅検出はリアルタイムである。幾つかの実施形態では、増幅検出は定量的(例えば、標的核酸の有無の終点検出)である。幾つかの実施形態では、増幅検出は増幅後である。幾つかの実施形態では、増幅検出は定量的であり、増幅検出は増幅後である。
【0037】
本発明において、オリゴヌクレオチドプローブの分解産物の検出は、蛍光レポーター色素及び消光色素を使用しない代わりに2つの異なる部分をもつプローブを合成するものである。第1の部分は、標的核酸に少なくとも部分的に相補的である相補的部分であり、標準ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログから構成され、この部分は検出される標的核酸に結合できる。さらに、プローブのこの第1の部分の3’末端は、DNAポリメラーゼによって伸長できないように修飾又はブロックされる。第2の部分は、第1の部分の5’末端に結合される非相補的部分であり、標的核酸に結合できない「フラップ」領域を形成する(
図1を参照)。この5’フラップ部分は、ヌクレオチド又は非ヌクレオチド又はヌクレオチド及び非ヌクレオチドの両方から成ることができる。オリゴヌクレオチドプローブの5’フラップ第2の部分に存在できる非ヌクレオチドは、いずれの有機部分又は繰り返し単位(例えば、(CH
2−CH
2−O)
nなど)であることができる。
【0038】
オリゴヌクレオチドプローブの第1及び第2の部分は非ヌクレオチドリンカーによって隔てられる(
図1を参照)。このリンカーは、炭素、炭素及び酸素、炭素及び窒素、又はこれらのいずれの組み合わせから成ることができ、いずれの長さであることができる。さらに、リンカーは直線状部分又は環状部分から成ることができる。リンカーは、単一単位又はリン酸結合によって隔てられた複数の同一若しくは異なる単位に由来しうる。リンカーの目的は、オリゴヌクレオチドプローブの第1の部分の第1及び第2のヌクレオチドを連結するホスホジエステル結合での切断による主要な5’−ヌクレアーゼ断片をもたらすために、オリゴヌクレオチドプローブの第1部分と第2の部分の連結部に不安定なヒンジ領域を創り出すことである。よって、5’−ヌクレアーゼ活性をもつ酵素によるオリゴヌクレオチドプローブの切断は、リンカーを含む「5’−フラップ」領域(すなわち、オリゴヌクレオチドプローブの第2の部分)及びオリゴヌクレオチドプローブの標的特異的な相補的部分(すなわち、第1の部分)の単一ヌクレオチドから成る標的特異的な単一の「固有質量」断片をもたらす。本発明での使用に好適であるリンカーの例としては、プロパンジオール、ヘキサエチレングリコール(HEG)、トリエチレングリコール(TEG)、スペーサーホスホラミダイト9(グレンリサーチ社、カタログ番号10−1909−90)、スペーサーC12 CEホスホラミダイト(グレンリサーチ社、カタログ番号10−1928−90)、及びdスペーサーCEホスホラミダイト(グレンリサーチ社、カタログ番号10−1914−90)が挙げられる。リンカーは、単一単位、単一種類の分子の複数の連続単位、又は分子の組み合わせの複数の連続単位であることができる。
【0039】
前述のように、所与の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプローブの5’−フラップ部分は、他の標的核酸の5’−フラップと明確に異なり分析解像可能にする固有質量サイズをもちさすれば、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、又は両方の組み合わせから成ることができる。原則として、これによって、単一反応から何百個もの標的核酸のマルチプレックス検出が可能になりうる。例えば、標準的なヌクレオチドであるA、G、C、及びTのみを使用して、6個のヌクレオチドのみから成る5’−フラップは、84個の可能性のる断片を生じることができ、それらすべてが固有質量識別可能サイズをもつ。くわえて、5’−フラップ部分は、相分離クロマトグラフィー(例えば、米国特許第5,859,247号明細書を参照)でのフルオラスタグ又はビオチン−ストレプトアビジン親和性クロマトグラフィーでのビオチンタグなどの修飾タグと結合されて断片の分離又は精製を容易にする。
【0040】
本発明はオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを提供する。これらのプローブ及びプライマーを作製するのに使用する方法を多少なりとも限定することを意図しない。当業者は、プローブ及びプライマーを作製する幅広い種類の化学合成法及び試薬を良く精通している。また、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを天然のヌクレオチド構造又は天然の塩基(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)に限定することを意図しない。典型的に核酸に見出される天然のヘテロ環式塩基の他に、非天然核酸アナログも本発明に使用される。
【0041】
非天然アナログとしては、非天然複素環塩基又は他の修飾塩基をもつものが挙げられる。特に、多くの非天然塩基がさらに、例えば、Seela et al. (1991), Helv. Chim. Acta 74: 1790, Grein et al. (1994), Bioorg. Med. Chem. Lett. 4: 971-976, 及びSeela et al. (1999), Helv. Chim. Acta 82: 1640に記載される。さらに説明すると、融点(Tm)調節剤として作用するヌクレオチドに使用されるある種特定の塩基は随意に含まれる。例えば、これらの幾つかとしては、7−デアザプリン(例えば、7−デアザグアニン、7−デアザアデニンなど)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、プロピニル−dN(例えば、プロピニル−dU、プロピニル−dCなど)などが挙げられる。米国特許第5,990,303号明細書を参照されたい。他の代表的なヘテロ環式塩基としては、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ‐6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、及びキサンチンの8−アザ誘導体;アデニン、グアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ‐6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、及びキサンチンの7−デアザ−8−アザ誘導体;6−アザシトシン;5−フルオロシトシン;5−クロロシトシン;5−ヨードシトシン;5−ブロモシトシン;5−メチルシトシン;5−プロピニルシトシン;5−ブロモビニルウラシル;5−フルオロウラシル;5−クロロウラシル;5−ヨードウラシル;5−ブロモウラシル;5−トリフルオロメチルウラシル;5−メトキシメチルウラシル;5−エチニルウラシル;5−プロピニルウラシル、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケウオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、7−デアザアデニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、7−デアザグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケウオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル(pseudouracil)、ケウオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ‐3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6−ジアミノプリン、並びに5−プロピニルピリミジンなどが挙げられる。さらに説明すると、修飾オリゴヌクレオチドの他の例としては、1つ以上のロックド核酸をもつもの(LNA(商標))単量体(例えば、Exiqon株式会社(A/S)、ヴェドベック、デンマークのライセンス下、リンク・テクノロジーズ社(Link Technologies、Ltd.)、ラナークシャー、スコットランドから入手可能なLNA(商標)単量体を含むオリゴヌクレオチド)が挙げられる。また、これらのようなヌクレオチドアナログは、例えば、米国特許第6,639,059号明細書;米国特許第6,303,315号明細書、及び米国特許出願公開第2003/0092905号明細書にも記載されている。
【0042】
オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーは当該技術分野で公知のいずれの技術を用いて調製できる。ある実施形態では、例えば、オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーは、任意の核酸合成方法を用いて、例えば、Beaucage and Caruthers (1981), Tetrahedron Letts. 22(20): 1859-1862に記載の固相ホスホラミダイト方法に従って化学的に合成される。さらに説明するすると、オリゴヌクレオチドはまた、トリエステル法を用いて合成できる(例えば、Capaldi et al. (2000), "Highly efficient solid phase synthesis of oligonucleotide analogs containing phosphorodithioate linkages", Nucleic Acids Res. 28(9):e40、及びEldrup et al. (1994), "Preparation of oligodeoxyribonucleoside phosphorodithioates by a triester method", Nucleic Acids Res. 22(10): 1797-1804を参照)。当該技術分野で公知の他の合成技術もまた、例えば、Needham VanDevanter et al. (1984), Nucleic Acids Res. 12: 6159-6168に記載されるように自動合成装置を用いてを利用できる。多種多様な装置が自動オリゴヌクレオチド合成用に市販されている。マルチヌクレオチド合成方法(例えば、トリヌクレオチド合成など)も随意に利用される。そのうえ、プライマー核酸は随意にさまざまな修飾を含む。例えばある実施形態では、プライマーは制限酵素切断部位リンカーを含んで、例えば、後続のアンプリコンクローニング又は同種のものを容易にする。さらに説明すると、例えば、米国特許第6,001,611号明細書に記載のようにプライマーはまた随意に修飾されて増幅反応の特異性を向上し、プローブはまた、本明細書に記載されているように、そうでなければ当該技術分野で公知であるように、さまざまな他の修飾を含んで合成できる。
【0043】
本発明の反応混合物、方法、及び他の態様に利用されるプローブはヌクレオチド又は非ヌクレオチドタグを有してよい。そのようなタグは、当該技術分野で公知の多様な技術によってオリゴヌクレオチドに直接的又は間接的に結合できる。説明すると、使用されるタグの種類に応じて、タグは末端(オリゴヌクレオチドプライマー及び/若しくはプローブの5’又は3’末端)又は非末端ヌクレオチドに結合でき、さまざまなサイズ及び組成のリンカー又はスペーサーアームを通して間質的に結合できる。市販のホスホラミダイト試薬を用いて、官能基(例えば、チオール又は第一級アミン)を5’又は3’末端のいずれかに適切に保護されたホスホラミダイトを介して含有するオリゴヌクレオチドが作製でき、タグをそのようなオリゴヌクレオチドに例えば、Innis et al. (Eds.) PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Elsevier Science & Technology Books (1990) (Innis)に記載のプロトコールを用いて結合できる。
【0044】
本質的には、いずれの核酸(標準又は非標準、標識又は非標識)も、ザ・ミッドランド・サーティファイド・リエージェント社(The Midland Certified Reagent Company)(テキサス州ミッドランド)、オペロンテクノロジー社(Operon Technologies Inc.)(アラバマ州ハンツビル)、プロリゴ・エルエルシー(Proligo LLC)(コロラド州ボルダー)、及び多くの他の供給元などの多様な市販供給元のいずれかから特別注文又は普通に注文できる。
【0045】
PCR産物の検出のための、特に多数の標的核酸を検出する多重化する設定における質量分析の使用には多くの課題がある。Beerら(Analyst, 2012, 137: 5325-5333)は、14個の遺伝子から23個の異なるSNPを検出する液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化質量分析を用いたマルチプレックスPCR遺伝子型決定アッセイを記載している。これらのSNP部位からのアンプリコンの長さは78bp〜130bpの範囲であった。しかし、長いアンプリコンは良好にイオン化せず、質量分析による分離が難しいことが知られている。さらに、A:TとG:C塩基対の間の質量差が小さいことに起因して、二本鎖PCR産物は分析を複雑にすることがある。したがって、PCRの間に生成された短く、固有標的断片の使用のほうが検出しやすく、高い感度につながると思われ、多重化の成功により良い機会を提供するであろう。
【0046】
幾つか最近の研究は、容易に分離及び検出できる切断可能な「タグ」部分を含有するオリゴヌクレオチドプローブの使用を開示している(例えば、米国特許出願公開第2005/0053939号明細書;米国特許第8,133,701号明細書)。しかし、これらの研究は、米国特許出願公開第2005/0053939号明細書では「タグ」分子の複雑な性質又は米国特許第8,133,701号明細書では所与の標的核酸に対する複数の断片の生成のいずれかに起因して、標的核酸のマルチプレックス検出を行なう能力は制限される。いずれの場合でも、マルチプレックス設定で特定の標的核酸の有無を正確に同定することは難しいであろう。この課題は本発明によって解決される。本発明ではオリゴヌクレオチドプローブの5’フラップ部分及び相補的部分はリンカーによって隔てられ、5’ヌクレアーゼ活性をもつ酵素による切断の後に、5’フラップ、リンカー、及び相補的な部分の5’末端の1つさらなるヌクレオチドから成る単一の「固有質量」断片は個々の標的核酸各々に対して生成されることになり、次いで質量分析によって明確に検出及び分解できる。
【0047】
質量識別可能サイズをもつ断片(MDF)は、限定されないが、長さ、質量、電荷、又は質量電荷比を含む特定の物理的な属性又は検出特徴によって識別される。好ましい実施形態では、検出特徴は質量である。別の関連実施形態では、MDFは、限定されないが、MALDI−TOF質量分析での質量、飛行時間を含む物理的な属性に関連する挙動によって識別されうる。関連実施形態では、1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブのMDFは、質量分析マトリックスから放出及び選択的に脱離され、非選択的プライマー及びオリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、標的核酸が存在しない)は脱離しない。これらの実施形態に関して、MDFは、反応混合物に存在するオリゴヌクレオチドプローブ又は他の非MDFと比べて、より効率的に質量分析マトリックスから脱離するはずである。好ましい質量分析マトリックスとしては、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、アルファ−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)、クエン酸二アンモニウム(DAC)、及びその組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、質量分析マトリックスはタンパク質の分析用に設計されうる。タンパク質分析用の例示的なマトリックスとしてはDHB及びCHCAが挙げられるが限定されない。
【0048】
方法は1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ断片(すなわち、MDF)を未切断又は部分的に切断されたオリゴヌクレオチドプローブから分離する追加工程をさらに含むことができる。分離は、ビオチン又は他の親和リガンドなどの捕捉リガンド、及び捕捉リガンドに対する特異的な結合活性をもつ、アビジン、ストレプトアビジン、抗体、受容体、MDF、又はその機能的断片に相補的な捕捉プローブなどの捕捉剤を用いて達成できる。MDFは捕捉剤に対する特異的な結合活性をもつ捕捉リガンドを含有できる。また、MDFの残留部分を質量分析計で検出されるMDFの質量範囲から除外できるように、捕捉リガンド及び捕捉剤はMDFの残留部分に質量を加えるのに使用できる。1つの実施形態では、捕捉プローブは切断産物のユニバーサル増幅用のユニバーサルプライマーを有してもよい。
【0049】
また分離工程はMDFから塩、酵素、又は他のバッファー成分を除去するのに使用できる。クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、又は沈降などの当該技術分野で周知の幾つかの方法を用いて試料をできる。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー又は親和性クロマトグラフィーを用いて試料から塩を除去できる。分離方法の選択は試料の量に依存しうる。例えば、少量の試料が利用可能である場合又は小型装置が使用される場合、マイクロアフィニティークロマトグラフィー分離工程が使用されうる。くわえて、分離工程が望ましいか否か、及び分離方法の選択は、使用検出方法に依存しうる。例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化及びエレクトロスプレーイオン化の効率は試料から塩を除去することによって向上できる。例えば、塩はマトリックス支援レーザー脱離/イオン化でのレーザーからエネルギーを吸収することがあり、結果としてイオン化効率を下げる。
【0050】
質量分析法は、本発明の質量識別サイズをもつ断片(MDF)を検出し、よって標的核酸を同定及び/又は定量する好ましい方法である。MDFは質量分析計でイオン化でき、イオンはその質量電荷比に基づいて空間的又は時間的に分離される。次いで、質量分析計は各イオンに関連する質量を計算する。したがって、質量分析について言及するとき、質量という用語は、簡単のために質量電荷比を言い表わすのに用いられうる。
【0051】
質量分析法は分子を分離及び同定するための感度の高い、正確な技術である。一般に、質量分析計は2つの主要構成部、イオンの生成のためのイオン源及びそのイオンの質量の基準尺度であり、その尺度に変換されるイオンの質量電荷比を測定するための質量選択分析器を有する。数種のイオン化法が当該技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。MDFはオリゴヌクレオチドプローブの切断前でも、切断中でも、又は切断後でも荷電されうる。その結果として、電荷は質量分析手順を通して獲得できるので質量分析によって測定されることになるMDFは必ずしも電荷を必要とするわけではない。質量分析では、電荷及び検出部分などのMDFの随意の構成要素が用いられて質量をMDFに寄与できる。
【0052】
本明細書に記載のように、さまざまな質量分析法、例えば、四重極型質量分析法、イオントラップ型質量分析法、飛行時間型質量分析法、ガスクロマトグラフィー質量分析法、及びタンデム質量分析法は、イオン源及び質量分析器のさまざまな組み合わせを利用でき、カスタマイズされた検出プロトコールを柔軟に設計することが可能になる。くわえて、質量分析計は、全てのイオンをイオン源から質量分析計に順次又は同時に送るようにプログラムできる。さらに、質量分析計は、他のイオンをブロックしつつ質量分析計に送る特定の質量のイオンを選別するようにプログラムできる。
【0053】
質量分析計にイオンの移動を正確に制御する能力によって、検出プロトコールにおける選択の幅を広げることができ、例えばマルチプレックス実験からの数多くのmMDFを分析する場合に有利でありうる。例えば、多数のMDFを伴なうマルチプレックス実験では、一群の類似するリポーターから個々のリポーターを選択し、次にそのリポーターを別個に分析することが有利でありうる。質量分析計で検出される質量範囲を制御することに基づく別の利点としては、未切断又は部分的に切断されたタグ付きプローブを分析から除外し、アッセイからバックグラウンドノイズを減らす能力が挙げられる。
【0054】
質量分析計は質量差が小さいイオンを分解し、高精度でイオンの質量を測定できる。したがって、質量分析計は密に関連したタグの質量でも識別できるので、類似する質量のMDFを同一実験でいっしょに使用できる。結果して得られるリポータータグは相互に識別できるので、質量分析法を使用して達成される高分解能及び質量精度は大量のタグ付きプローブの使用を可能にする。大量のタグ付きプローブを使用する特質は、マルチプレックス実験を設計するにあたって有利な点である。
【0055】
MDFの質量を検出するために質量分析を用いることの別の利点はこの種の質量分析の高い感度に基づく。質量分析計は、イオン源によって形成される大部分のイオンを利用すること、及び質量分析器を通して検出器にこれらのイオンを効率的に送ることによって高い感度を実現する。この感度レベルが高いことに起因して、限られた量の試料でも質量分析を用いて測定できる。これは、各MDF種の量が少ない場合があるマルチプレック実験において有利な点でありうる。
【0056】
質量分析の方法は当該技術分野で周知である(Burlingame et al. Anal. Chem. 70: 647R-716R (1998); Kinter and Sherman, Protein Sequencing and Identification Using Tandem Mass Spectrometry Wiley-Interscience, New York (2000)を参照)。質量分析の方法に関連するプロセスは、試料由来の気相イオンの生成及びその質量の測定である。
【0057】
気相イオンの移動は、質量分析計で生成された電磁場を用いて正確に制御できる。これらの電磁場でのイオンの移動はイオンのm/zに比例し、これはm/zの測定つまり試料の質量の基礎を築く。これらの電磁場でのイオンの移動はイオンの含有及び収束を可能にし、質量分析の高い感度の理由となる。m/z測定の過程において、このイオンの到達を記録する粒子検出器にイオンは高効率で送られる。各m/zでのイオンの量は、x軸がm/zであり、y軸が相対存在量であるグラフ上でのピークで示される。さまざまな質量分析計はさまざまなレベルの分解能、すなわち、質量の密接に関連するイオン間のピークを分解する能力を有する。分解能はR=m/デルタmとして定義され、式中、mはイオン質量であり、デルタmは質量スペクトルの2つのピークの間の質量差である。例えば、分解能が1000の質量分析計は、m/zが100.0のイオンをm/zが100.1のイオンから分解できる。
【0058】
さまざまな構成をもつ数種類の質量分析計が入手又は作製できる。一般に質量分析計は主要構成部:試料導入部、イオン源、質量分析器、検出器、真空システム、及び計測器制御システム、並びにデータシステムをもつ。試料導入部、イオン源、及び質量分析器の違いが一般に計測器の種類及びその性能を規定する。例えば、導入部はキャピラリーカラム液体クロマトグラフィー源であることができ、マトリックス支援レーザー脱離に使用されるような直接プローブ又はステージであることができる。例えば、一般的なイオン源は、ナノスプレー及びマイクロスプレーを含むエレクトロスプレー、又はマトリックス支援レーザー脱離である。例示的な質量分析器としては、四重極マスフィルター、イオントラップ型質量分析器、及び飛行時間型質量分析器が挙げられる。
【0059】
イオン形成プロセスは質量スペクトル分析の出発点である。数種類のイオン化法が利用可能であり、イオン化法の選択は分析される対象の試料に依存する。例えば、ポリペプチドの分析に関して、エレクトロスプレーイオン化(ESI)などの比較的穏やかなイオン化手順が望ましい可能性がある。ESIについて、試料を含有する溶液は強い電場を創り出す高電位で細針に通され、結果として質量分析計に向けられた細かい霧状の高電荷液滴を生じる。他のイオン化手順としては、例えば、中性原子の高エネルギービームを使用して固体試料に当てて脱離及びイオン化を引き起こす高速原子衝撃法(FAB)が挙げられる。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)は、レーザーパルスを使用して紫外線吸収化合物マトリックス中に結晶化された試料にあてる方法である。当該技術分野で公知の他のイオン化手順としては、例えば、プラズマ及びグロー放電、プラズマ脱離イオン化、共鳴イオン化、及び二次イオン化が挙げられる。MDFはタグ付きプローブからの切断前でも、切断中でも、切断後でもイオン化できる。
【0060】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)は本明細書に記載の発明に有用な幾つかの特性をもつ。例えば、ESIはイオン化又は気化が難しいポリペプチドなどの生体分子に使用できる。くわえて、ESIの効率は非常に高く、高感度な測定の基礎を提供する。さらに、ESIは溶液から荷電分子を生成し、溶液中にあるMDFを分析するのに便利である。対照的に、MALDIなどのイオン化手順はイオン化前に試料の結晶化を要する。
【0061】
ESIは溶液から荷電分子を直接生成できるので、液体クロマトグラフィーシステムの試料に適合性がある。例えば質量分析計は、HPLCなどの液体クロマトグラフィーシステム用の導入部をもつことでき、画分はクロマトグラフィーカラムから質量分析計に流れる。液体クロマトグラフィーシステムと質量分析計のこの直列配置は時としてLC−MSと呼ばれる。LC−MSシステムは、例えば、質量分析前に切断されたMDFから未切断又は部分的に切断されたMDFを分離するのに使用できる。くわえて、クロマトグラフィーは質量分析前にMDF試料から塩又はバッファー成分を除去するのに使用できる。例えば、直列又は非直結の逆相HPLCカラムを用いる試料の脱塩は、イオン化プロセスの効率を上げ、よって質量分析による検出の感度を上げるのに使用できる。
【0062】
さまざまなイオン源と組み合わせることができる多様な質量分析器が利用可能である。当業者に公知で、本明細書に記載のように異なる質量分析器は異なる利点をもつ。検出のために選らばれる質量分析計及び方法は特定のアッセイに依存する。例えば、少量のイオンが検出のために生成される場合、より感度の良い質量分析器が使用できる。数種の質量分析器及び質量分析法が下記に説明される。イオンモビリティー(IM)質量分析法は新たな特質を質量分析(MS)に付加する気相分離法である。IMは気相イオンをその衝突断面積に基づいて分離し、飛行時間(TOF)質量分析と併用して、タンパク質及びペプチドの同定及び特徴付けに使用される強力なツールを生み出すことができる。したがって、タンパク質又はペプチドである場合、IM−MSは本発明にとって特に有用である。IM−MSは、the Journal of Biomolecular Techniques (Vol 13, Issue 2, 56-61)中にVerbeckらによってより詳細に論じられている。
【0063】
四重極型質量分析法は四重極マスフィルター又は分析器を利用する。この種の質量分析器は、電気的に接続される2つのロッドの2つのセットとして配置された4つのロッドから構成される。rf及びdc電圧の組み合わせを各ロッド対にかけ、イオンがマスフィルターの先頭から終端に動きながらイオンの振動運動を引き起こす場を作る。この場の結果は一方のロッド対にハイパスマスフィルターを作り出し、他方のロッド対にローパスマスフィルターを作り出す。ハイパスマスフィルターとローパスマスフィルターとの重なりは、両フィルターを通過して四重極の距離を通り抜けることができる規定のm/zを残す。このm/zは選別されて四重極マスフィルターに安定した状態で残る一方で、他のm/zは不安定な軌道をもってマスフィルターに残らない。質量スペクトルが印加電場を漸増することによって生じ、増加しているm/zが選別されて、マスフィルターを通過して検出器に到達する。くわえて、四重極はrfのみの電場をかけることによって全てのm/zのイオンを含有して送るように設定することもできる。これにより、四重極がレンズ又は収束システムとして、質量フィルタリング無しにイオンを送ることを要する質量分析計の領域で機能することが可能になる。このことは、下記にさらに説明するようにタンデム質量分析に有用であると思われる。
【0064】
四重極型質量分析器及び本明細書に記載の他の質量分析器は規定のm/z又は質量範囲を分析するようにプログラムできる。質量分析計のこの特性は本明細書に記載の本発明に有用である。切断MDF質量範囲はアッセイ前に既知であることになるので、質量分析計は、質量範囲より高いイオン又は質量範囲より低いイオンを除外しつつ、予測される正しい質量範囲のイオンを送るようにプログラムできる。質量範囲を選別する性能はアッセイのバックグラウンドノイズを減少でき、よってシグナル・ノイズ比を増加できる。くわえて、規定の質量範囲を使用していずれの未反応のオリゴヌクレオチドプローブの分析を除くことができる。したがって、質量分析計はMDFの検出及び同定と同様に本来の分離工程を遂行できる。
【0065】
イオントラップ型質量分析法はイオントラップ型質量分析器を利用する。これらの質量分析器では、全てのm/zのイオンが質量分析器内で最初に捕捉及び振動するように電場をかける。イオンはイオン源から八重極レンズシステムなどの収束装置を通ってイオントラップに入る。イオンの捕捉は、励起及び電極を通した検出器への排出の前に捕捉領域で起こる。質量分析は、トラップから検出器への増加しているm/zのイオンを排出する方法で振動の振幅を大きくする電圧を連続してかけることによって遂行される。四重極型質量分析法とは対照的に、イオンは全て選ばれたm/zをもつものを除いて質量分析器の電場に保持される。イオントラップの1つの利点は、一度に捕捉されているイオンの数を注意深く制限しさえすれば感度が非常に高いことである。イオンの数の制御はイオンがトラップに導入される時間を変動することによって達成できる。イオントラップはm/zの制限が低いが、イオントラップの質量分解能は四重極マスフィルターの質量分解能と同じである。
【0066】
飛行時間型質量分析法は飛行時間型質量分析器を利用する。このm/z分析法に関して、イオンは最初に(高電圧に発生した)電場での加速によって、決められた量の運動エネルギーを与えられる。加速に続いて、イオンがそのm/zに反比例する速度で進むフィールドフリー領域又は「ドリフト」領域にイオンは入る。したがって、m/zが小さいイオンは、m/zが大きいイオンよりはより早く進む。イオンがフィールドフリー領域の距離を進むのに要する時間が測定され、それ用いてイオンのm/zを計算する。
【0067】
この種の質量分析で考慮すべき1つの点は、調べられている一連のイオンが同時に分析器に導入されることである。例えば、この種の質量分析は、イオンを短い、良く定義されたパルスを作り出すMALDIといったイオン化技術にうまく適合する。考慮すべき別の点は、その運動エネルギーの量に変動があるイオンによって作り出される速度広がりを制御することである。より長いフライトチューブ、イオンリフレクター、又はより高い加速電圧の使用は速度広がりの影響を最小限にすることに役立ちうる。飛行時間型質量分析器は、感度のレベルが高く、四重極型質量分析器又はイオントラップ型質量分析器と比べてm/z範囲が広い。また、質量分析器のスキャニングが必要ないので、この種の質量分析器ではデータを迅速に得ることができる。
【0068】
ガスクロマトグラフィー質量分析は、標的をリアルタイムで検出する良い解決策を提供する。システムのガスクロマトグラフィー(GC)部分は、化学混合物を分析物(例えば、MDF)のパルスに分離し、質量分析計(MS)は分析物を同定及び定量する。
【0069】
タンデム質量分析法は上記に質量分析器の組み合わせを利用できる。タンデム質量分析計は、さらなる分析用の対象のイオンを単離するために第1の質量分析器を使用してそのm/zに従ってイオンを分離できる。次に、単離された対象のイオンはフラグメントイオンに分割化され(衝突活性化解離又は衝突誘起解離と呼ばれる)、フラグメントイオンは第2の質量分析器によって分析される。これらの種類のタンデム質量分析計システムは、2つの質量分析器は通常コリジョンセルによって空間的に隔たれているので、空間的タンデムシステムと呼ばれる。タンデム質量分析計システムとしては、時間的タンデムシステムも挙げられ、そのシステムでは1つの質量分析器が使用され、その質量分析器は、イオンの単離、フラグメントの誘起、次いで質量分析に連続して使用される。
【0070】
空間タンデムのカテゴリーの質量分析計は複数の質量分析器を有する。例えば、タンデム四重極質量分析計システムは、第1の四重極マスフィルター、続いてコリジョンセル、続いて第2の四重極マスフィルター、次いでに検出器をもつことができる。別の配置は、第1の質量分析器に四重極マスフィルター、第2の質量分析器に飛行時間型質量分析器を、2つの質量分析器を隔てるコリジョンセルともに使用することである。リフレクトロン飛行時間、タンデムセクター型及びセクター型四重極型質量分析を含む他のタンデムシステムは当該技術分野で公知である。
【0071】
時間タンデムのカテゴリーの質量分析計は、異なる時点で異なる機能を実行する1つの質量分析器をもつ。例えば、イオントラップ型質量分析計は全てのm/zのイオンを捕捉するのに使用できる。1連のrfスキャン機能が適用され、対象のイオンのm/zを除く全てのm/zのイオンをトラップから排出する。対象のイオンのm/zが単離された後、rfパルスがかけられてトラップ内で気体分子との衝突を起こし、イオンの断片化を誘起する。次に、断片化されたイオンのm/z値が質量分析器によって測定される。イオンサイクロトロン共鳴装置は、フーリエ変換質量分析計としても知られ、時間タンデムシステムの例である。
【0072】
実験の各段階で選別されるイオンを制御することによって数種類のタンデム質量分析実験を行うことができる。様々な種類の実験は、時としてと「スキャン(scan)」呼ばれる質量分析器の様々な操作モードを利用する。質量スペクトルスキャンと呼ばれる第1の例では、第1の質量分析器及びコリジョンセルは質量分析のために全てのイオンを第2の質量分析器に送る。プロダクトイオンスキャンと呼ばれる第2の例では、対象のイオンは第1の質量分析器で質量選別され、次いでコリジョンセルで断片化される。次に形成されたイオンは第2の質量分析器をスキャンすることによって質量分析される。前駆イオンスキャンと呼ばれる第3の例では、第1の質量分析器はスキャンされて、質量分析されるイオンを断片化のためにコリジョンセルに連続して送る。第2の質量分析器は検出器に送る対象のプロダクトイオンを質量選別する。したがって、検出器信号は、共同のプロダクトイオンに断片化できる全ての前駆イオンの結果である。他の実験形式としては、一定の質量の違いがマススキャンで説明されるニュートラルロススキャンが挙げられる。マルチプレックス実験と同様に多くのリポータータグセットが単一実験で測定される場合、これらのさまざまなタンデム質量分析スキャン手順を用いることは有利でありうる。
【0073】
典型的な適用では、反応の間に生成されるMDFの量はサイクル閾値(Ct)に基づいて決定され、その値は検出可能量の核酸を生じるのに必要なサイクル数を表す。Ct値の決定は当該技術分野で周知である。簡潔に言うと、PCRの間に形成されるアンプリコンの量が増加するにつれて、信号強度が測定可能レベルに増加し、反応が非対数段階に入る後半のサイクルでプラトーに達する。信号強度を反応の対数期の間のサイクル数に対してプロットすることによって、検出可能な信号が得られる特定のサイクルが演繹的に割り出され、PCRの開始前の標的の量を計算するのに使用できる。Ctを決定する例示的な方法は、例えば、Heid et al. Genome Methods 6:986-94, 1996で加水分解プローブに関して記載されている。
【実施例】
【0074】
実施例1
5’−フラッププローブを用いたEGFR T790M増幅の検出
PCRアッセイを行なってヒト上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子のT790M変異(ヌクレオチド変異2369C→T)を検出した。T790M変異の位置を含むEGFR遺伝子の領域の増幅に以下のプライマーを使用した。フォワードプライマー:5’CCTCCCTCCAGGAAGCCTACGTGA−3’(配列番号1)
リバースプライマー:5’CAGTCGAAGGGCATGAGCTGEA−3’(E=t−ブチルベンジル−dC)(配列番号2)
【0075】
検出には、2つの連続したヘキサエチレングリコール(HEG)分子をリンカーとして含有する以下の5’−フラッププローブを利用した。5’−T
9JJTGCACGGTGGAGGTGAGGCAGP−3’(配列番号3)、ここでT
9は非相補的な5’フラップ部分を示し、JはHEGを示し、Pはホスフェートを示す。PCR反応混合物を96‐ウェルプレートに次の最終濃度で調製した。50mM トリス−HCl(pH8.0)、80〜100mM 塩化カリウム、200μΜ ATP、dCTP、及びdGTPの各々、400μΜ dUTP、200nMの各プライマー、200nM 5’−フラッププローブ、標的DNA(1,000〜100,000コピーのEGFRプラスミド、20nM DNAポリメラーゼ(5’ヌクレアーゼ活性をもつ)、0.1mM EDTA、2.5mM 酢酸マグネシウム。増幅及び分析は、ロシュライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)480装置(ロシュ・アプライド・サイエンス、インディアナ州インディアナポリス)を用いて行なった。次の温度プロフィールを用いた。95℃で1分(又は95℃(10秒)〜62℃(25秒)を2サイクル)、それに続いて92℃(10秒)から62℃(25〜30秒)へのサイクルを99回。
【0076】
界面活性剤及び他の混入物を除去するために、反応生成物をトップティップ(TopTip)(グライジェン社(Glygen Corp))アニオン交換スピンカラムに通した後、アジレントQ−TOF6530装置に載せ、断片をLC−MSによって分析した。
図2は、サイズがT
9JJT及びT
9JJTGに相当する断片を探すための本実験の抽出イオンクロマトグラム(EIC)を示す。T
9JJTの断片に相当する単一ピークのみが検出され、5’ヌクレアーゼ酵素による、二重のHEGリンカー分子に3’隣接するヌクレオチド位置にほぼ限限定された切断を示す。この断片の3’末の「T」ヌクレオチドは、EGFR遺伝子に相補的なプローブ部分の5’末ヌクレオチドに相当した。