(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの分子を含む融解流を、メルトブローダイの複数のオリフィスに通すことにより、複数のメルトブローン繊維を形成する工程であって、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーが、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む、工程と、
b)工程(a)の前記メルトブローン繊維が前記複数のオリフィスから出た直後に、前記メルトブローン繊維の少なくとも一部分に、制御された空中熱処理作業を行う工程であって、前記制御された空中熱処理作業は、強制ガス流対流加熱を用いて実施され、前記制御された空中熱処理作業を受けた前記繊維部分内の分子の少なくとも一部分の応力緩和を達成するのに十分な時間、前記メルトブローン繊維の一部分のガラス転移温度よりも高く、融解温度より低い温度で行われ、前記メルトブローン繊維の見掛け結晶子サイズが、30Å〜50Åである、工程と、
c)工程(b)の前記制御された空中熱処理作業を受けたメルトブローン繊維の一部分の少なくとも一部をコレクターに捕集して、不織布繊維構造を形成する工程であって、前記不織布繊維構造は、工程(b)の前記制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率よりも、低い収縮率を呈する、工程と、
を含むプロセス。
少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーを含む熱可塑性材料の融解流を、メルトブローダイに供給する工程であって、前記熱可塑性材料は核生成を達成するのに有効な量の核生成剤を含まず、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーが、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む、工程と、
前記熱可塑性材料にメルトブローを行って少なくとも1本の繊維にする工程と、
前記少なくとも1本の繊維が、前記メルトブローダイから出た直後、不織布繊維構造としてコレクターに捕集される前に、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーのガラス転移温度よりも高く、融解温度よりも低い温度で、制御された空中熱処理作業を受ける工程であって、この処理時間は、前記不織布繊維構造が、前記制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率よりも、低い収縮率を呈するのに、十分な時間であり、前記制御された空中熱処理作業は、強制ガス流対流加熱を用いて実施され、前記制御された空中熱処理作業を受けた繊維の見掛け結晶子サイズが、30Å〜50Åである、工程と、
を含むプロセス。
前記不織布繊維構造の第1加熱においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線が、空中熱処理なしで同じように調製された不織布繊維構造の第1加熱においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線に比べて、より高い結晶化温度へのシフトを示す、請求項5に記載の不織布繊維構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を形成する添付の一連の図面が参照されるが、これらはいくつかの具体的な実施形態の実例として示されている。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施されうる点を理解されたい。以下の発明を実施するための形態はしたがって、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0014】
特に断らない限り、本明細書並びに特許請求の範囲で使用される特徴部のサイズ、量、及び物理特性を表すすべての数字は、全事例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでない旨が示されない限り、上記の明細書及び添付の「特許請求の範囲」において示される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望される特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、また特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入を適用することによって解釈されなければならない。更に、終点での数の範囲の使用は、その範囲内のすべての数(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の更に狭い範囲又は単一値を含む。
【0015】
用語:
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して特定の用語が使用されており、大部分は周知であるが、いくらか説明を必要とするものもある。本明細書で使用されるとき、以下の通りであると理解すべきである。
数値又は幾何学的形状に関して用語「約」、「ほぼ」、「およそ」は、その数値の+/−5パーセント、あるいは、一般に認識される辺の数を有する幾何学的形状の隣接する辺の間の内角値の+/−5パーセントであることを意味し、これには明示的に、その数値又は角度値の+/−5パーセント以内のより狭い範囲、並びに正確な数値又は角度値も含まれる。例えば、「約」100℃の温度は、95℃〜105℃の温度を示すが、明示的に任意の更に狭い範囲の温度又は例えば100℃ちょうどの温度を含むその範囲内の単一の温度をも含む。
【0016】
特性又は特徴に関して用語「実質的」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴の2%以内に呈されるが、特性又は特徴の2パーセント以内の任意の狭い範囲及び特性、並びに特徴の正確な値もまた明示的に含むことを意味する。例えば、「実質的に」透明な基材は、98〜100%の入射光線を透過する基材を示す。
【0017】
用語「a」、「an」及び「the」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」を含有する材料への言及は、2つ又はそれ以上の化合物の混合物を含む。
【0018】
用語「又は」は、その内容が明確に指示しない限り、通常は「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0019】
用語「(コ)ポリマー」は、少なくとも約10,000g/モル(いくつかの実施形態においては、10,000g/モル〜5,000,000g/モルの範囲)の分子量を有する相対的に高分子量の材料を意味する。用語「(コ)ポリマー」(複数を含む)は、ホモポリマー及びコポリマー並びに、例えば、共押出により又は例えば、エステル交換反応を含む反応により、混和性配合物に形成され得るホモポリマー又はコポリマーを含む。用語「(コ)ポリマー」は、ランダム、ブロック及びスター(例えば、樹状性)の(コ)ポリマーを含む。
【0020】
用語「メルトブロー」及び「メルトブローンプロセス」とは、少なくとも1つ又は複数のオリフィスに、1つ又は2つ以上の熱可塑性(コ)ポリマーを含む融解繊維形成材料を通して押し出し、フィラメントを形成しながら、このフィラメントを空気又は他の細径化流体と接触させて、フィラメントを細くし、分離した繊維にした後、この細径化された繊維を捕集することによって、不織布繊維ウェブを形成するための方法を意味する。代表的なメルトブローンプロセスは、例えば米国特許第6,607,624号(Berriganら)で教示されている。
【0021】
用語「メルトブローン繊維」は、メルトブロー又はメルトブローンプロセスにより調製された繊維を意味する。この用語は、一般に、メルトブローダイの1つ又は2つ以上のオリフィスから押し出される1つ又は2つ以上の熱可塑性(コ)ポリマーの1つ又は2つ以上の融解流から形成される不連続繊維と、その後に冷却されて固化した繊維及びそれを含むウェブを指すのに使用される。これらの指定は、単に説明の便宜上用いられる。本明細書に説明するプロセスにおいて、部分的に固化した繊維と、わずかにべとつく及び/又は半融解した表面を依然として含む繊維との間に明確な境界がない場合がある。
【0022】
用語「ダイ」は、メルトブローンを含むがこれに限定されないポリマー融解プロセス及び繊維押出プロセスに使用する、少なくとも1つのオリフィスを含んだ加工用アセンブリを意味する。
【0023】
用語「不連続」という用語は、繊維又は繊維群に関して使用されるとき、有限のアスペクト比(例えば長さ対直径の比が、例えば約10,000未満)を有する繊維を意味する。
【0024】
用語「配向」は、繊維に関して使用されるとき、繊維内の(コ)ポリマー分子の少なくとも一部分が、繊維の長手方向軸に揃っていることを意味し、例えばこれは、引き抜き加工の使用によって、又は、ダイから繊維流が押し出される際の細径化装置の使用によって形成される。
【0025】
用語「不織布繊維ウェブ」又は「不織布ウェブ」は、個々の繊維又はフィラメントが相互に重なり合っている構造を呈したシート又はマットを形成しているが、編布として識別可能な状態ではない、繊維の絡まり又は点接着により特徴付けられる繊維集合体を意味する。
【0026】
用語「単成分」は、繊維又は繊維群に関して使用されるとき、その断面にわたって本質的に同じ構成成分を有する繊維を意味する。単成分には、配合物(すなわち(コ)ポリマー混合物)又は添加剤含有材料が含まれ、実質的に均一な組成物の連続相が、繊維の断面及び長さにわたって延在する。
【0027】
用語「直接捕集された繊維」とは、一組のオリフィスから融解繊維を押し出し、繊維がオリフィスと捕集表面との間で偏向板等に接触することなく、少なくとも部分的に固化した繊維を繊維として捕集表面上に捕集することによって、本質的に1つの作業で繊維が形成されウェブとして捕集されることを意味する。
【0028】
用語「ひだ付き」とは、少なくとも部分的に折りたたまれて、一般に並列に、対向して折り目の列をなす形状を形成するウェブを意味する。そのため、全体としてのウェブのひだ付けは、個々の繊維の捲縮と区別される。
【0029】
用語「自立的」は、不織布繊維構造(例えば、不織布繊維ウェブなど)に関して使用されるとき、その構造が、ワイヤ、メッシュ、その他の剛性材料の隣接強化層を含まないことを意味するが、ただし、そのようなマトリックスを含むひだ付きフィルタエレメントは、そのフィルタエレメントの選択された部分を強化するために、先端の安定化(例えば平坦なワイヤ面層)又は周縁の強化(例えば縁の接着剤又はフィルタフレーム)を含む場合がある。あるいは、又はこれに加えて、用語「自立的」は、剛性層、2成分繊維、接着剤、又はその他のフィルタ材の強化を必要としない、耐変形性のフィルタエレメントを意味する。
【0030】
用語「ウェブ坪量」は、10cm×10cmウェブサンプルの重量から算出され、通常、平方メートル当たりのグラム(gsm)で表される。
【0031】
用語「ウェブ厚さ」は、150Paの適用圧力における5cm×12.5cmの寸法の試験器フット部を有する厚さ試験ゲージを用いて、10cm×10cmのウェブサンプルで測定される。
【0032】
用語「嵩密度」とは、文献からの引用で、ウェブを形成するバルクポリマー又はポリマー配合物の単位容積当たりの質量である。
【0033】
用語「ソリディティ」とは、密度に反比例する不織布ウェブの特性であり、ウェブの透過性及び気孔率の特性を示し(低ソリディティは高透過率及び高気孔率に相当)、次の式で定義される。
【0035】
所与の不織布メルトブローン繊維構造(例えばウェブ)又は構成要素の集合における繊維の、用語「メジアン繊維径」は、例えば走査型電子顕微鏡を使用して、繊維構造の1枚又は2枚以上の画像を撮像し、その1枚又は2枚以上の画像で明確に見える繊維の繊維直径を測定して、繊維径の合計数xを求め、x個の繊維直径のメジアン繊維径を計算することにより決定される。通常、xは約50より大きく、望ましくは約50〜約2の範囲である。しかしながら、場合によっては、xは30又は20の小さい値に選択することができる。これらの小さなx値は、直径が大きい繊維、又は絡まり合いが激しい繊維に対し特に有効となる場合がある。
【0036】
(コ)ポリマー又は(コ)ポリマー性繊維又は繊維ウェブについて、用語「公称融点」は、本明細書に記述されるように、変調示差走査熱量測定法(MDSC)を用いて得られた第1加熱全熱流量プロットのピーク最大値が、(コ)ポリマー又は繊維の融解領域内にある場合の温度に対応し(その融解領域内の最大値が1つだけの場合)、また、最高強度の融解ピークが生じる温度として、複数の最大値がある場合は、(例えば、2つの異なる結晶質相が存在することなどにより)複数の公称融点があることを示す。
【0037】
用語「微粒子」及び「粒子」は、実質上互換的に使用される。概して、微粒子又は粒子とは、微粉砕形状の材料の別個の小片又は個々の部分を意味する。しかし、微粒子はまた、微粉砕形状の個別微粒子が結び付いた又は集積した集合体を含んでもよい。したがって、本開示の特定の代表的実施形態で使用される個別微粒子は、凝集、物理的噛み合い、静電結合、又は他の結び付き方により微粒子を形成してもよい。特定の例において、個別微粒子の凝集体の形態をとる微粒子は、米国特許第5,332,426号(Tangら)に記載されるように意図的に形成することもできる。
【0038】
用語「多孔質」は、メルトブローン不織布繊維構造又はウェブに関して、空気透過性であることを意味する。用語「多孔質」は、微粒子に関して、気体又は液体透過性であることを意味する。
【0039】
「微粒子装填」又は「微粒子装填プロセス」とは、形成されている間に微粒子が繊維流又はウェブに添加されるプロセスを意味する。代表的な微粒子装填法は、例えば、米国特許第4,818,464号(Lau)及び同第4,100,324号(Andersonら)において教示される。
【0040】
「微粒子装填媒体」又は「微粒子を装填した不織布繊維ウェブ」とは、繊維内に捕捉されるか、又は繊維に結合された微粒子、化学的に活性な微粒子を含有する、分離している繊維の開放構造の交絡塊を有する、不織布ウェブを意味する。
【0041】
「捕捉される」とは、微粒子がウェブの繊維中に分散されて物理的に保持されていることを意味する。一般に、繊維及び微粒子に沿って点接触及び線接触しているため、微粒子のほぼすべての表面積が流体との相互作用に利用できる。
【0042】
次に本開示の様々な代表的実施形態について、具体的に図面を参照しながら説明する。本開示の代表的実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更が可能である。したがって、本開示の実施形態は以下に記述する代表的な実施形態に限定されず、特許請求の範囲及びその任意の同等物に定められた制限によって支配されるものと理解されたい。
【0043】
本開示は、1つのポリエステル(コ)ポリマー又はポリエステル(コ)ポリマーの組み合わせを含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる繊維を使用して、寸法安定性メルトブローン不織布繊維構造体(例えば、マット、ウェブ、シート、スクリム、布地など)を作製するプロセス及び装置について記述する。本開示の装置及びプロセス以前は、ポリエステル(コ)ポリマーを含む熱可塑性(コ)ポリマー繊維、特に約10マイクロメートル未満の直径又は厚さを有する繊維をメルトブローすることは困難であった。かかる繊維をメルトブローするためには、対応する熱可塑性ポリエステル(コ)ポリマーをその公称融点よりもかなり高い温度まで加熱する必要がある。かかる熱可塑性ポリエステル(コ)ポリマーの高温加熱は、例えば、(コ)ポリマーの過剰分解、脆弱な繊維ウェブ、メルトブロー中の粒子状の(コ)ポリマー材料(一般に「サンド」と呼ばれる)の形成を含み得る、1つ又は任意の組み合わせの問題をもたらすことがある。従来のプロセスを使用してメルトブローンポリエステル(コ)ポリマー繊維が製造される場合でも、かかる繊維で作製された繊維ウェブ及び他の繊維構造体は、繊維の製造に使用されたポリエステル(コ)ポリマーのガラス転移温度以上の温度において、典型的には、過度の収縮性、ないしは別の態様で、貧弱な寸法安定性を呈する。
【0044】
本発明者らは、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性ポリエステル(コ)ポリマー、又は複数の熱可塑性半結晶性ポリエステルポリマーを含む熱可塑性(コ)ポリマーを使用して、繊維をメルトブローし、メルトブローン不織布繊維ウェブを形成する方法を見出した。この繊維は、繊維の直径が約10マイクロメートル未満であっても、繊維の製造に使用されたポリエステル(コ)ポリマーのガラス転移温度以上の温度において使用するのに好適であり得る。かかる繊維は、比較的低コスト(例えば、製造コスト及び/又は原材料コスト)であること、耐久性、熱への暴露による収縮の低減、高温での寸法安定性の向上、及び難燃特性の1つ又は任意の組み合わせなど、1つ以上の所望の特性を呈し得る。本開示はまた、より環境に優しい、非ハロゲン化難燃性ポリエステル系不織布又は織布繊維材料の提供に使用することもできる。
【0045】
これらは、高温での寸法安定性を有する(コ)ポリマー材料を含有するポリエステルで作製されるため、かかる繊維で作製された不織布及び織布繊維構造体(例えば、マット、ウェブ、シート、スクリム、布地など)並びにかかる繊維構造体で作製された物品(例えば、保温物品、防音物品、絶縁物品、液体フィルタ、ガスフィルタ、衣類、及び個人用保護装置)は、比較的高温環境で使用でき、収縮したとしても、ごくわずかな収縮を呈するだけである。本開示の実施形態により提供される、熱に曝露されても著しく収縮することのない寸法安定性ポリエステルブローン微細繊維ウェブの開発は、これらのウェブの有用性及び工業的適用範囲を広げることになる。そのようなメルトブローン微細繊維ウェブは、断熱材物品及び高温用防音物品として特に有用であり得る。
【0046】
装置
よって、代表的な実施形態において、本開示は装置について記述し、この装置は、メルトブローダイと、このメルトブローダイから放出されるメルトブローン繊維に、このメルトブローン繊維の融解温度よりも低い温度で、制御された空中熱処理を行うための手段と、この空中熱処理されたメルトブローン繊維を捕集するコレクターと、を含む。
【0047】
ここで
図1aを参照し、本開示の実施形態を実施するための図示的な装置15の全体概略側面図が、直接ウェブ製造法及び装置として示されており、繊維を形成する(コ)ポリマー材料は、本質的に1方向の作業でウェブに変換される。装置15は従来型のブローン微小繊維(BMF)製造構成からなっており、これは例えば、Wente,「Superfine Thermoplastic Fibers」,Industrial Engineering Chemistry,Vol.48,p.1342 et sec(1956)、又はNaval Research LaboratoriesのレポートNo.4364(1954年5月25日発行)「Manufacture of Superfine Organic Fibers」(van Wente,A.,Boone,C.D.,and Fluharty,E.L.著)に教示されている。この構成は押出成形機10からなり、これは、ペレット又は粉末状の(コ)ポリマー樹脂のためのホッパー11と、押出成形機バレルを加熱して(コ)ポリマー樹脂を融解させ、融解(コ)ポリマーを形成するための一連の加熱ジャケット12とを有する。融解(コ)ポリマーは押出成形機バレルから出てポンプ14へと入り、これによって、装置の下流構成要素を通る融解(コ)ポリマー流に対する制御を向上させることが可能になる。
【0048】
所望により、ポンプ14から出た融解(コ)ポリマーは、所望により、運搬チューブ16を含む混合手段15へと流入し、これは例えば、KENIX型スタティックミキサー18などの混合手段を含む。融解(コ)ポリマーが運搬チューブ16を通過する際、一連の加温ジャケット20が融解(コ)ポリマーの温度を制御する。混合手段15はまた所望により、運搬チューブの流入端近くに注入ポート22を含み、これは所望により高圧計量ポンプ24に接続されていて、これにより、融解(コ)ポリマー流がスタティックミキサー18に入る際に、所望による添加剤を注入することができる。
【0049】
融解(コ)ポリマー流は、所望による運搬チューブ16から出た後、メルトブロー(BMF)ダイ26を通って送達される。これは、少なくとも1つのオリフィスを含み、ここを融解(コ)ポリマーが通過すると同時に、(コ)ポリマー流に高速度の高温空気流を衝突させる。この作用によって融解(コ)ポリマー流が引き伸ばされ、細径化されて、微小繊維になる。
【0050】
ここで
図1bを参照し、本開示の実施形態を実施するための別の図示的な装置の全体概略側面図が、直接ウェブ製造法及び装置15’として示されており、繊維を形成する融解(コ)ポリマー材料は、本質的に1方向の作業でウェブに変換される。装置15’は、例えば前述のvan Wenteによる文献に教示されているように、従来型のブローン微小繊維(BMF)製造構成からなっている。この構成は押出成形機10を含み、これは、ペレット又は粉末状の(コ)ポリマー樹脂のためのホッパー11を有し、これが(コ)ポリマー樹脂を加熱して、(コ)ポリマー樹脂の融解流を形成する。(コ)ポリマー樹脂の融解流が、メルトブロー(BMF)ダイ26に入り、このダイには少なくとも1つのオリフィス11があり、ここを融解(コ)ポリマー流33が通過すると同時に、この(コ)ポリマー流33に、ガス供給マニフォルド25からのガスをガス流入口15に通すことにより形成された高速度の高温空気流を衝突させ、ダイ26からガスジェット23及び23’として出て、この作用によって融解(コ)ポリマー流が引き伸ばされ、細径化されて、微小繊維になる。ガスジェットの速度の制御は、例えば、ガス流の圧力及び/若しくは流量を調節することによって、並びに/又はガス流入口の寸法27(すなわち隙間)を制御することによって、行うことができる。
【0051】
図1a又は1bに示されている装置又はプロセスのいずれにおいても、融解(コ)ポリマー繊維流は、メルトブローダイ15又は15’の少なくとも1つのオリフィス11から出るとすぐに、この繊維を構成する少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの融解温度より低い温度での、制御された空中熱処理を受ける。この制御された空中熱処理処理には、手段32及び/又は32’が使用される。いくつかの代表的実施形態において、メルトブローダイから放出されたメルトブローン繊維の制御された空中熱処理のための手段32及び/又は32’は、放射ヒーター、自然対流ヒーター、強制ガス流対流ヒーター、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0052】
いくつかの代表的実施形態において、メルトブローダイから放出されたメルトブローン繊維の制御された空中熱処理のための手段は、
図1bに示すように、メルトブローダイ26から出た直後のメルトブローン繊維流に直接的又は間接的(例えば周囲空気の同調流を使用して)に衝突するように配置される、1つ又は2つ以上の強制ガス流対流ヒーター32及び/又は32’である。特定の代表的実施形態において、メルトブローダイ26を出た直後のメルトブローン繊維流の、制御された空中熱処理の手段は、
図1aに示すように、1つ又は2つ以上の放射ヒーター32及び/又は32’である(例えば、少なくとも1つの赤外線ヒーターで、例えば、実施例に記述されているような石英ランプ赤外線ヒーター)。
【0053】
「メルトブローダイを出た直後」という表現は、メルトブローン繊維の制御された空中熱処理が、少なくとも1つのオリフィス11からの延長部(融解(コ)ポリマー流33が通過する経路)から熱処理距離21以内で生じることを意味する。熱処理距離21は、0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、又は更には1mmの短さであってよい。好ましくは、熱処理距離は、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、又は更には5mm以下である。好ましくは、熱処理の合計距離は、0.1〜50mm、0.2〜49mm、0.3〜48mm、0.4〜47mm、0.4〜46mm、0.5〜45mm、0.6〜44mm、0.7〜43mm、0.8〜42mm、0.9〜41mm、又は更には1mm以上〜40mm以下である。
【0054】
空中熱処理の最中に、又は後に、微小繊維が固化し始め、これによって、コレクター28に到達する際に凝集ウェブ30を形成する。この方法は、後で接着プロセスを行う必要なしに、メルトブローン不織布繊維ウェブを直接形成可能な微細直径繊維を製造する工程において、特に好ましい。
【0055】
プロセス
更なる代表的実施形態において、本開示は、
a)少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの分子を含む融解流を、メルトブローダイの複数のオリフィスに通すことにより、複数のメルトブローン繊維を形成する工程と、
b)工程(a)のメルトブローン繊維が複数のオリフィスから出た直後に、メルトブローン繊維の少なくとも一部分に、制御された空中熱処理作業を行う工程であって、制御された空中熱処理作業は、制御された空中熱処理作業を受けた繊維部分内の分子の少なくとも一部分の応力緩和を達成するのに十分な時間、メルトブローン繊維の一部分の融解温度より低い温度で行われる工程と、
c)工程(b)の制御された空中熱処理作業を受けたメルトブローン繊維の一部分の少なくとも一部をコレクターに捕集して、不織布繊維構造を形成する工程であって、不織布繊維構造は、工程(b)の制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率(本明細書で記述される方法を用いて測定)よりも、低い収縮率を呈する、工程と、
を含むプロセスを提供する。
【0056】
他の代表的な実施形態において、本開示は、
少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーを含む熱可塑性材料の融解流を、メルトブローダイに供給する工程であって、熱可塑性材料は核生成を達成するのに有効な量の核生成剤を含まない、工程と、
熱可塑性材料にメルトブローを行って少なくとも1本の繊維にする工程と、
この少なくとも1本の繊維が、メルトブローダイから出た直後、不織布繊維構造としてコレクターに捕集される前に、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの融解温度よりも低い温度で、制御された空中熱処理作業を受ける工程であって、この処理時間は、不織布繊維構造が、制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率(本明細書で記述される方法を用いて測定)よりも、低い収縮率を呈するのに、十分な時間である、工程と、
を含むプロセスを提供する。
【0057】
メルトブロープロセス
メルトブロープロセスにおいて、熱可塑性(コ)ポリマー材料が融解されて融解(コ)ポリマー材料を形成し、これを、メルトブローダイの1つ又は2つ以上のオリフィスに通して押し出す。いくつかの代表的実施形態において、メルトブロープロセスは、融解(コ)ポリマー材料を少なくとも1本又は複数の繊維プリフォームに形成(例えば、押し出す)し、これを更に、メルトブローダイの少なくとも1つのオリフィスに通して、少なくとも1本の繊維プリフォームを少なくとも1本の繊維に凝固させる(例えば、冷却により)工程を含んでよい。このプリフォームが形成され、メルトブローダイの少なくとも1つのオリフィスに通されるとき、熱可塑性(コ)ポリマー材料はまだ概ね融解状態である。
【0058】
上述の任意のプロセスにおいて、メルトブローは、熱可塑性(コ)ポリマー材料をメルトブローできるように十分に高いが、熱可塑性(コ)ポリマー材料に容認できない変質を生じさせるほど高くはない温度の範囲内で実行するべきである。例えば、メルトブローは、熱可塑性(コ)ポリマー材料を少なくとも約200℃、225℃、250℃、260℃、270℃、280℃、又は更には少なくとも290℃で、約360℃、350℃、340℃、330℃、320℃、310℃、又は更には300℃以下の範囲の温度に達するようにさせる温度で実行できる。
【0059】
制御された空中熱処理プロセス
制御された空中熱処理作業は、放射加熱、自然対流加熱、強制ガス流対流加熱、又はこれらの組み合わせを用いて実施することができる。好適な放射加熱は、例えば、赤外線又はハロゲンランプ加熱システムを用いて提供され得る。好適な赤外線(例えば石英ランプ)放射加熱システムは、Research,Inc.(Eden Prairie,MN)、Infrared Heating Technologies,LLC(Oak Ridge,TN)、及びRoberts−Gordon,LLC(Buffalo,NY)から入手可能である。好適な強制ガス流対流加熱システムは、Roberts−Gordon,LLC(Buffalo,NY)、Applied Thermal Systems,Inc.,(Chattanooga,TN)及びChromalox Precision Heat and Control(Pittsburgh,PA)から入手可能である。
【0060】
通常、空中熱処理は少なくとも約50℃、70℃、80℃、90℃、100℃で、最高で約340℃、330℃、320℃、310℃、300℃、275℃、250℃、225℃、200℃、175℃、150℃、125℃、又は更には110℃までの温度で実施される。
【0061】
通常、制御された空中熱処理作業の持続時間は、少なくとも約0.001秒、0.005秒、0.01秒、0.05秒、0.1秒、0.5秒、又は更には0.75秒で、長くとも約1.5秒、1.4秒、1.3秒、1.2秒、1.1秒、1.0秒、0.9秒、又は更には0.8秒以下である。
【0062】
上述のように、空中熱処理を実施する好ましい温度は、少なくとも部分的に、繊維を製造する(コ)ポリマー(複数を含む)の熱特性に依存する。いくつかの代表的実施形態において(コ)ポリマー(複数を含む)は、脂肪族ポリエステル(コ)ポリマー、芳香族ポリエステル(コ)ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの半結晶性(コ)ポリマーを含む。特定の代表的実施形態において、この半結晶性(コ)ポリマーは、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む。特定の代表的実施形態において、この少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーは、ポリエステル(コ)ポリマーと、少なくとも1つの他の(コ)ポリマーとの配合物を含み、ポリマー配合物を形成する。
【0063】
上述の任意の実施形態において、制御された空中熱処理作業は、通常、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマー(複数を含む)に、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマー(複数を含む)のガラス転移温度より高い温度を適用する。いくつかの代表的実施形態において、制御された空中熱処理作業によって、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマー(複数を含む)が、(コ)ポリマー分子の少なくともある程度の応力緩和が生じるのに十分な時間、それぞれのガラス転移温度より低い温度に冷却されるのが防止される。
【0064】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、現在、空中熱処理プロセスを使用して、メルトブローダイから放出された半結晶性(コ)ポリマー繊維を、ダイオリフィス(複数を含む)を出た直後に処理した場合、メルトブローン繊維内の(コ)ポリマー分子は、融解状態又は半融解状態を維持しながら、ダイオリフィスから出た直後に応力が緩和されると考えられている。メルトブローン繊維はこのようにして、空中熱処理なしの同様のメルトブローン繊維に比べて、新たな特性及び有用性を備えた繊維が得られるよう形態的に調整される。
【0065】
本明細書で使用される広義の用語「応力緩和」は、単に、配向された半結晶性(コ)ポリマー繊維の形態の変化を意味する。しかしながら、本開示の空中熱処理される繊維内の1つ又は2つ以上の(コ)ポリマー(複数を含む)の分子構造を、発明者らは下記のように理解している(本明細書の発明者らの「理解」の記述に束縛されるものではなく、これは、いくばくかの理論的考察を含むものである)。
【0066】
繊維内の(コ)ポリマー鎖の配向と、本開示で記述される空中熱処理によって達成された繊維内の半結晶性熱可塑性(コ)ポリマー分子の応力緩和の度合は、例えば、使用する(コ)ポリマー材料の性質、オリフィスを出るポリマー流を小繊維化するよう作用するエアナイフによって導入される空気流の温度、メルトブローン繊維の空中熱処理の温度及び持続時間、繊維流の速度、及び/又はコレクター表面の最初の接触点での繊維の固化の度合などの、操作パラメータの選択により影響を受ける可能性がある。
【0067】
発明者らは現在、本開示による空中熱処理により達成される応力緩和は、不織布繊維を形成する(コ)ポリマー材料の結晶化を誘引するよう作用する核又は「シード」の数を、減らすか及び/又はサイズを大きくするよう働く可能性があると考えている。古典的な核生成理論、例えばF.L.Binsbergenの理論(「Natural and Artificial Heterogeneous Nucleation in Polymer Crystallization」,Journal of Polymer Science:Polymer Symposia,Volume 59,Issue 1,p.11〜29(1977))は、様々な繊維形成プロセスパラメータ(例えば、温度履歴/熱処理、急冷、機械的操作、又は超音波、音波若しくはイオン化放射処理)が、一般に、PETなどの半結晶性材料において、ガラス転移温度と冷結晶化の開始との間の領域での結晶質核生成が増大された繊維を形成することを、教示している。そのような従来調製されている繊維材料は、その繊維を構成する(コ)ポリマー材料のガラス転移温度を10℃だけ上回って加熱した場合でも、「多量の核生成を起こすことが示されている」。
【0068】
一方、本開示の空中熱処理プロセスを用いて調製されたウェブ材料では典型的に、ガラス転移温度を上回る温度まで加熱されたときに、冷結晶化の開始の遅れ又は減少が示される。空中熱処理された繊維をガラス転移温度を上回って加熱した場合に、このように冷結晶化の開始が遅れ又は減少することによって、そのような空中熱処理された繊維を含む不織布繊維ウェブの熱による収縮も減少することがしばしば観察されている。
【0069】
よって、この空中熱処理プロセスのいくつかの代表的な実施形態において、繊維は、メルトブローンダイオリフィスから出た直後に、空中に留まった状態で、制御された短い時間、かなり高い温度に維持される。一般に、繊維は、その繊維を構成する(コ)ポリマー材料の応力緩和が少なくともある程度達成されるのに十分な時間、その繊維を形成する(コ)ポリマー材料のガラス転移温度よりも高い温度で空中にあり、更にいくつかの実施形態においては、その繊維を形成する(コ)ポリマー材料の公称融点以上の温度で空中にある。
【0070】
更に、特定の代表的実施形態において、空中熱処理プロセスは、PET及びPLAなどの結晶化が遅い材料について、結晶化のふるまいと平均結晶子サイズに影響を与えると考えられ、よって、ガラス転移温度より高い温度に加熱されたときに、これらの材料を含む不織布繊維ウェブの収縮のふるまいを変える。空中加熱処理された繊維を形成する(コ)ポリマー材料内のポリマー核生成部位密度を、そのようにその場で改良し減少させることは、(コ)ポリマー鎖内の物理的(熱)又は化学的変化(例えば架橋)により、(コ)ポリマー内のより小さなサイズの結晶性「シード」を除去することによって、ポリマー核生成の数を減少させ、これによって、熱収縮が低減された、より熱安定性のウェブが得られると考えられる。
【0071】
この改善された低収縮のふるまいは、少なくとも部分的に、後続の熱曝露又は熱処理中の結晶化の遅れによるものであり、おそらくは、分子秩序の邪魔になる(コ)ポリマー内の結晶核又は「シード」構造のレベルを低減することにより生成される、より強い(コ)ポリマー鎖間整列によるものであると考えられる。結晶核又は「シード」のその場の数の減少又はサイズの増加は、製造時に比較的低レベルの結晶性を有し、しかも、高温でより寸法安定性な不織布繊維ウェブをもたらし、具体的には、繊維を形成している(コ)ポリマー材料について、ガラス転移温度(T
g)以上の温度に加熱されたときに、また更に具体的には、冷結晶化温度(T
cc)以上の温度に加熱されたときに、より寸法安定性な不織布繊維ウェブをもたらすと考えられる。
【0072】
任意のプロセス工程
上述のプロセスによって製造される、メルトブローダイの1つ又は2つ以上のオリフィスから放出された融解(コ)ポリマーの無秩序な流れは、容易に、メルトブローン繊維の空中熱処理の最中に、又は後に、別個の非メルトブローン繊維又は微粒子を組み入れることができる。
【0073】
よって、いくつかの代表的実施形態において、このプロセスは更に、空中熱処理作業の前に、最中に、又は後に、メルトブローン繊維に複数の微粒子を添加する工程を含む。更なる代表的実施形態において、このプロセスは、付加的に又は別の方法として、空中熱処理作業の前に、最中に、又は後に、メルトブローン繊維に複数の非メルトブローン繊維を添加する工程を含む。
【0074】
特に、所望による微粒子及び/又は非メルトブローン繊維は、空中熱処理中に、又は例えば米国特許第4,100,324号に開示されているように、メルトブローン不織布繊維ウェブとして捕集中に、有利に添加することができる。これらの添加された非メルトブローン繊維又は微粒子は、追加の結合剤又は結合プロセスの必要なしに、繊維性マトリックス内に絡まることができる。これらの添加された非メルトブローン繊維又は微粒子は、これらを組み込むことで、メルトブローン不織布繊維ウェブに付加的な特性を加えることができ、例えば、ロフト、研磨性、柔らかさ、帯電防止性、液体吸着性、液体吸収性などの特性を加えることができる。
【0075】
ベルトブローダイの1つ又は2つ以上のオリフィスから出る際の繊維に関連して、繊維形成プロセスの補助として従来使用されている様々なプロセスを使用することができる。そのようなプロセスには、仕上げ剤、接着剤、又はその他の材料を繊維上にスプレーする工程、静電荷を繊維に印加する工程、水霧を繊維に適用する工程などの工程が挙げられる。更に、結合剤、接着剤、仕上げ剤、及び他のウェブ又はフィルムを含む種々の材料を、捕集したウェブに添加してもよい。例えば、捕集前に、押し出された繊維(複数を含む)を、例えば、更なる延伸、噴霧等、
図1に示されない多くの追加の処理工程にさらしてもよい。
【0076】
いくつかの特定の実施形態において、メルトブローン繊維は、有利なように静電帯電させることができる。よって、特定の代表的実施形態において、メルトブローン繊維に、エレクトレット帯電プロセスを行うことができる。代表的なエレクトレット帯電プロセスは、ハイドロ帯電である。繊維のハイドロ帯電は、繊維の上への極性流体の吹き付け、浸漬、又は濃縮、続いて繊維が帯電するように乾燥することを含む様々な技術を用いて行なわれ得る。ハイドロ帯電について記述している代表的な特許には、米国特許第5,496,507号、同第5,908,598号、同第6,375,886 B1号、同第6,406,657 B1号、同第6,454,986号、及び同第6,743,464 B1号が挙げられる。好ましくは、水は極性ハイドロ帯電液として用いられ、濾材は、好ましくは、液体噴流又は任意の好適な噴霧手段により提供される液滴流を用いて、極性ハイドロ帯電液に暴露される。
【0077】
繊維を水圧で交絡するのに有用な装置は、一般的にハイドロ帯電を行うのに有用であるが、ハイドロ帯電においてその操作は、一般に水流交絡で用いられるものよりも低い圧力で行われる。米国特許第5,496,507号は、その装置では、後で乾燥される媒体に濾過性能増強エレクトレット電荷を与えるのに充分な圧力で、水の噴流又は水滴流がウェブ形態の繊維上に吹き付けられる、代表的な装置を記述している。
【0078】
最適な結果を得るのに必要な圧力は、用いる噴霧器の種類、繊維を形成するポリマーの種類、ウェブの厚さ及び密度、並びに、コロナ帯電などの前処理がハイドロ帯電の前に行われるかどうかにより変わってもよい。一般的には、約69kPa〜約3450kPaの範囲の圧力が好適である。好ましくは、水滴を提供するために使用される水は、比較的純粋である。蒸留水又は脱イオン水が、水道水より好ましい。
【0079】
エレクトレット繊維は、ハイドロ帯電に追加して又は代替して、静電帯電(例えば、米国特許第4,215,682号、同第5,401,446号、及び同第6,119,691号で記述されているような)、摩擦帯電(例えば、米国特許第4,798,850号で記述されているような)、又はプラズマフッ素化(例えば、米国特許第6,397,458 B1号で記述されているような)を含むその他の帯電技術で処理されてもよい。コロナ放電に続くハイドロ帯電及びプラズマフッ素化に続くハイドロ帯電は、組み合わせて使用される特に好適な帯電技術である。
【0080】
捕集後、捕集された塊30は、付加的に又は別の方法として、所望の場合に、後のプロセスのために保管用ロールに巻き取ることができる。一般に、捕集されたメルトブローン不織布繊維ウェブ30がいったん捕集された後は、カレンダー、エンボス加工ステーション、ラミネーター、カッターなどの他の装置に運ぶことができ、あるいは、駆動ロールを通して保管用ロールに巻き取ることができる。
【0081】
使用することが可能な他の流体としては、繊維に噴霧される水、例えば、繊維を加熱する温水又は熱蒸気、及び繊維を急冷する比較的冷たい水が挙げられる。
【0082】
不織布繊維構造
本開示の装置及びプロセスは、代表的な実施形態において、凝集しかつ取り扱い可能なウェブを形成するよう結合された(コ)ポリマー熱可塑性繊維を含む、新しい寸法安定性メルトブローン不織布繊維構造を提供する。
【0083】
この不織布繊維構造は、マット、ウェブ、シート、スクリム、布地、及びこれらの組み合わせを含む様々な形態であり得る。メルトブローン繊維の空中熱処理を行い、不織布繊維構造として捕集した後、この不織布繊維構造は、約15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は更には1%未満の収縮率(後述の収縮率試験方法を使用して決定)を呈する。
【0084】
メルトブローン繊維
本開示のメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは、一般に、不連続繊維と見なされ得るメルトブローン繊維を含む。しかしながら、例えば融解状態からの固化の度合など、選択されている操作パラメータに応じて、捕集された繊維は半連続的又は本質的に不連続であり得る。
【0085】
特定の代表的実施形態において、本開示のメルトブローン繊維は、配向(すなわち、分子的に配向)されていてよい。
【0086】
不織布繊維構造又はウェブのメルトブローン繊維は、約10マイクロメートル(μm)、9μm、8μm、7μm、5μm、4μm、3μm、2μm、又は更には1μm未満のメジアン繊維径(後述の試験方法を使用して決定される)を呈し得る。
【0087】
メルトブローン繊維の構成成分
本開示のメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは一般に、少なくとも1つの半結晶性(コ)ポリマーを含む。
【0088】
半結晶性(コ)ポリマー
代表的な実施形態において、少なくとも1つの半結晶性(コ)ポリマーが、脂肪族ポリエステル(コ)ポリマー、芳香族ポリエステル(コ)ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み得る。この半結晶性(コ)ポリマーは、特定の代表的実施形態において、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む。
【0089】
他の代表的な実施形態において、前述の任意の一実施形態の不織布繊維構造は、ポリエステル(コ)ポリマーと、少なくとも1つの他の(コ)ポリマーとの配合物を含んでポリマー配合物を形成する、少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーを含む繊維を含む。
【0090】
一般に、任意の半結晶性繊維形成(コ)ポリマー材料が、本開示の繊維及びウェブを調製するのに使用できる。熱可塑性ポリマー材料は、ポリエステルポリマーと、少なくとも1つの他のポリマーと、の配合物を含んで、2つ以上のポリマー相のポリマー配合物を形成してよい。ポリエステルポリマーは、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、又は脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとの組み合わせであることが望ましい場合がある。
【0091】
熱可塑性ポリエステル(コ)ポリマーは、熱可塑性ポリエステル(コ)ポリマー材料のポリマー部分若しくは相のみ、これらの大部分、又は少なくともこれらのかなりの部分を形成できる。ポリエステル(コ)ポリマーは、熱可塑性(コ)ポリマー材料がメルトブロー可能であり、結果として生じた繊維が許容可能な機械的特性及び熱特性を呈する場合、熱可塑性(コ)ポリマー材料のかなりの部分を形成する。例えば、ポリエステル(コ)ポリマー含有量の少なくとも約70容量%は、熱可塑性(コ)ポリマー材料のかなりのポリマー部分又は相を形成してよい。
【0092】
許容可能な機械的特性又は特徴としては、引張強度、初期弾性、厚さなどが挙げられ得る。例えば、繊維から作製された不織布ウェブが、約150℃の温度で約4時間加熱されたときに、約30、25、20又は15%未満、一般的には、約10又は5%以下の線収縮を呈する場合、繊維は、許容可能な熱特性を呈すると見なされてよい。
【0093】
好適なポリエステル(コ)ポリマーには、ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(エチレン)ナフタレート(PEN)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中に記載される特定のポリマーは単なる例であって、広範な種類の他のポリマー又は繊維形成材料が有用である。
【0094】
繊維はまた、顔料や染料などの特定の添加剤が添加された材料を含む、材料の配合物から形成されてもよい。コア・シース(芯鞘)型又はサイド・バイ・サイド型の二成分繊維などの二成分繊維が使用されてよい(本明細書中では、「二成分」は2つ以上の成分を有する繊維を含み、それぞれは、繊維の横断面の別個の部分を占め、繊維の長さにわたって延在する)。
【0095】
しかしながら、本開示は単成分繊維を用いた場合に最も有利であり、数多くの利点を有し(例えば、製造及び組成の複雑さが少ない;「単成分」繊維は本質的に断面にわたって同じ成分を有する;単成分には配合物又は添加剤含有材料が含まれ、この中で、均一な組成の連続相が繊維の断面及び長さにわたって延在する)、本開示により便利に接着でき、付加的な接着性と成形性を得ることができる。
【0096】
本開示のいくつかの代表的実施形態において、繊維の混合物を含むウェブを調製するように、異なる繊維形成材料が、押出ヘッドの異なるオリフィスから押し出され得る。更なる代表的実施形態において、配合されたウェブを調製するように、繊維が捕集される前に、又は捕集されるときに、本開示にしたがって調製される繊維の流れ内に他の材料が導入される。例えば、米国特許第4,118,531号の教示にしたがって、他の短繊維を配合することができ、あるいは同第3,971,373号の教示にしたがって、ウェブ内に微粒子材料を導入及び捕捉することができ、あるいは同第4,813,948号に教示されるマイクロウェブをこのウェブに配合することができる。あるいは、本開示により調製された繊維は、繊維の配合物を調製するために他の繊維の流れの中へ導入されてもよい。
【0097】
ほとんどの場合、実質的に円形断面を有する繊維が調製されるが、その他の断面形状も使用され得る。一般に、本開示の方法を用いて調製された実質的に円形断面を有する繊維の直径は、幅広い範囲であり得る。微小繊維サイズ(直径が約10マイクロメートル以下)を得ることができ、いくつかの利点がもたらされ得る。しかし、より大きな直径の繊維も調製することができ、特定の用途に有用である。しばしば、この繊維の直径は20マイクロメートル以下である。繊維直径が、約9、8、7、6又は更には5マイクロメートル以下であることが商業上望ましいことがある。繊維直径が、4、3、2、又は1マイクロメートル以下であることが商業上、更に望ましいことがある。
【0098】
よって、本開示の代表的なメルトブロープロセスにおいて、熱可塑性(コ)ポリマー材料が提供され、これは、少なくとも1つ又は複数の半結晶性ポリエステル(コ)ポリマー(例えば、PET、PEN、PBT、PLA、並びにおそらくはPHB及びPTT)を含む。この熱可塑性(コ)ポリマー材料は、それぞれが約10マイクロメートル未満の直径、つまり厚さを有する、複数の繊維にメルトブローされる。
【0099】
変調示差走査熱量測定法(MDSC)繊維特性
本開示による空中熱処理を用いて処理された繊維内に生じる変化を調べるのに有用なツールの1つが、変調示差走査熱量測定法(MDSC)であり、これについて下記に説明される。一般に、試験サンプル(例えば、試験ウェブの小さな断片)に対して、MDSC装置内で第1加熱及び冷却サイクルを行う。「第1加熱」は、受け取ったままの試験サンプルを、そのサンプルの公称融点(安定なベースラインに戻る熱流量信号により判定)よりも高い温度まで加熱する。「第1冷却」は、「第1加熱」された試験サンプルを次に、公称融点より高い温度から、サンプルのガラス転移温度よりも低い温度、典型的には室温よりも低い温度(例えば約10℃)まで冷却する。第1加熱は、その形成後ただちに、すなわち追加の熱処理を経ることなく、本開示の不織布繊維ウェブの特徴を測定する。第1冷却は、第1加熱後の、本開示の不織布繊維ウェブの結晶化(又はむしろ再結晶化)特性を測定する。
【0100】
代表的なMDSCデータを
図2、及び3A〜3Cに示す。MDSC試験は特に、
図2〜3に示すように、3種類の異なるプロット又は信号トレースを生成する(ここに示されているすべてのMDSCプロットにおいて、横座標は温度がセルシウス度単位で記されている。縦座標は熱エネルギーがワット/グラム単位で記されている。発熱現象は、プロット曲線の上向き偏向(例えばピーク)により示される)。
【0101】
図2〜3の左端の縦軸目盛は、全熱流量プロットのためのものであり、右内側の縦軸目盛は(表示されている場合)、非可逆熱流量プロットのためのものであり、右端の縦軸目盛は(表示されている場合)、可逆熱流量プロットのためのものであり、別個のプロットそれぞれが、本開示のメルトブローン繊維及び不織布メルトブローン繊維構造(例えばウェブ)を特徴付けるのに有用な、様々な特徴的MDSC特性を明らかにしている。
【0102】
ある程度識別可能な特徴的MDSC特性のいくつかが、偏向の形態又はピークのシフトとして現れ、これは、試験される繊維の(コ)ポリマー組成と繊維の条件(繊維が受けたプロセス又は曝露の結果)に応じて、異なる温度でMDSCプロット上に現れ得、これらは例えば、
図2及び3A〜3Cに図示されている。
【0103】
よって、
図2のプロットBにより例示される特定の代表的な実施形態において、空中熱処理を受けた代表的な半結晶性(コ)ポリマー繊維について得られた、公称融点より高い温度に繊維を第1加熱した後の、第1冷却のMDSCデータ全熱流量プロット(実施例1)には、全熱流量プロットの公称融点近くの発熱ピークに、認識可能な「ショルダー」Cが現れており、これは、空中熱処理された繊維の冷却による結晶化開始の遅れを反映する。公称融点より高い温度から繊維を冷却した際の結晶化開始の遅れを反映すると考えられるこの「ショルダー」は、空中熱処理を受けずに同様に調製されたメルトブローン不織布繊維ウェブで得られた第1冷却のMDSCデータ全熱流量プロット(比較実施例A、プロットA)には存在しない。
【0104】
加えて、
図3A〜3Bにより例示される特定の代表的な実施形態において、本開示による空中熱処理を受けた半結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の第1加熱の、MDSCを用いて得られた、全熱流量プロット、可逆熱流量プロット、非可逆熱流量プロット(実施例9)を、空中熱処理を受けていない同様に調製されたメルトブローン繊維(比較実施例E)と比較したときに、100℃〜140℃の領域で(すなわち、T
g(約75℃)より高く公称融点(約256℃)より低い温度で)、冷結晶化(加熱後の結晶化)ピークがより高い冷結晶化温度(T
cc)へとシフトしていることが示されている。
【0105】
更に、
図3Cにより示される追加の代表的な実施形態において、実施例9(空中熱処理あり)の不織布繊維構造を、公称融点より高い温度に加熱した後の第1冷却においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線は、比較実施例E(空中熱処理なし)の不織布繊維構造を、公称融点より高い温度に加熱した後の第1冷却においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線に比較したときに、公称融点の低温側へのシフトと、ガラス転移温度と公称融点との間の結晶化ピーク上のショルダーとが示され、冷却による結晶化開始の遅れを反映している。
【0106】
所望による不織布繊維構造(ウェブ)の構成要素
更なる代表的実施形態において、本開示の不織布メルトブローン繊維構造は更に、1つ又は2つ以上の所望による構成要素を含み得る。この所望による構成要素は、不織布メルトブローン繊維構造の最終用途に好適なように、単独で、又は任意の組み合わせで使用され得る。3つの非限定的な、現時点で好ましい所望による構成要素には、下記に詳しく述べるように、所望によるエレクトレット繊維構成要素、所望による非メルトブローン繊維構成要素、及び所望による微粒子構成要素が挙げられる。
【0107】
所望によるエレクトレット繊維構成要素
本開示の不織布メルトブローン繊維ウェブは、所望によりエレクトレット繊維を含み得る。好適なエレクトレット繊維は、米国特許第4,215,682号、同第5,641,555号、同第5,643,507号、同第5,658,640号、同第5,658,641号、同第6,420,024号、同第6,645,618号、同第6,849,329号、及び同第7,691,168号に記述されており、これらの全開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
好適なエレクトレット繊維は、繊維を電場中でメルトブローすることにより、例えば極性分子を含有するポリマー又はワックスなどの好適な誘電材料を融解し、融解した材料をメルトブローダイに通して、離散した繊維を形成し、次いで離散した繊維を強力な電場に暴露する間に融解したポリマーを再固化させることにより製造され得る。エレクトレット繊維は、過剰の電荷をポリマー又はワックスなどの高絶縁性材料の中に埋め込むこと、例えば電子線、コロナ放電、電子からの注入、間隙又は誘電性バリアを横断した電気的な絶縁破壊などによっても製造され得る。特に好適なエレクトレット繊維はハイドロ帯電させた繊維である。
【0109】
所望による非メルトブローン繊維構成要素
追加の代表的な実施形態において、不織布繊維構造は所望により、複数の非メルトブローン繊維を更に含む。よって、代表的な実施形態において、不織布繊維ウェブは追加的に、別個の非メルトブローン繊維を含み得る。所望により、この別個の非メルトブローン繊維は短繊維である。一般に、別個の非メルトブローン繊維は、例えば、コストの低下、又はメルトブローン不織布繊維ウェブの特性の改善のための、充填繊維として作用する。
【0110】
好適な非メルトブローン充填繊維の非限定例としては、単一成分の合成繊維、半合成繊維、ポリマー繊維、金属繊維、炭素繊維、セラミック繊維、及び天然繊維が挙げられる。合成及び/又は半合成ポリマー繊維としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン(例えば、ヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタム)、ポリプロピレン、アクリル(アクリロニトリルのポリマーから形成された)、レーヨン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマーなどで作製されたものが挙げられる。
【0111】
好適な金属繊維の非限定例としては、任意の金属又は金属合金、例えば、鉄、チタン、タングステン、白金、銅、ニッケル、コバルトなどから作製された繊維が挙げられる。
【0112】
好適な炭素繊維の非限定例としては、グラファイト繊維、活性炭繊維、ポリ(アクリロニトリル)由来の炭素繊維などが挙げられる。
【0113】
好適なセラミック繊維の非限定例としては、任意の金属酸化物、金属炭化物、又は金属窒化物が挙げられ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ケイ素などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
好適な天然繊維の非限定例としては、竹、綿、ウール、黄麻、アガーベ、サイザル、ココナッツ、大豆、麻布などが挙げられる。
【0115】
使用される繊維構成要素は、未使用又は再生廃棄繊維、例えば、衣類切断、カーペット製造、繊維製造、テキスタイル加工などから再生された再生繊維であってもよい。
【0116】
不織布繊維ウェブを形成するために使用される別個の非メルトブローン充填繊維が含まれる場合、そのサイズ及び量は一般に、不織布繊維ウェブ100の所望の性質(すなわち、高さ、開放性、柔軟性、ドレープ性)及び化学的に活性な微粒子の所望の装填に依存する。一般に、繊維直径が大きいほど、繊維長が大きくなり、繊維中のクリンプの存在が、より開放性及び高さのある物品をもたらす。一般に、小さく短い繊維は、より小型の不織布物品をもたらす。
【0117】
所望による微粒子成分
特定の代表的実施形態において、不織布繊維構造は更に、複数の微粒子を含む。本開示による代表的な不織布繊維ウェブは、有利なように、複数の化学的に活性な微粒子を含み得る。化学的に活性な微粒子は、任意の別個の微粒子であってもよく、室温で固体であり、外部流体位相との化学的相互作用を受けることができる。代表的な化学的相互作用としては、吸着、吸収、化学反応、化学反応の触媒、溶解などが挙げられる。
【0118】
加えて、前述の代表的実施形態のいずれかでは、化学的に活性な微粒子は、吸着微粒子(例えば、吸着剤微粒子、吸収剤微粒子等)、乾燥剤微粒子(例えば、その局所近接における乾燥状態を誘導又は維持する、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等の吸湿性物質を含む微粒子)、殺生物剤微粒子、マイクロカプセル、及びそれらの組み合わせから有利に選択されてもよい。前述の実施形態のいずれかでは、化学的に活性な微粒子は、活性炭微粒子、活性アルミナ微粒子、シリカゲル微粒子、アニオン交換樹脂微粒子、カチオン交換樹脂微粒子、モレキュラーシーブ微粒子、珪藻土微粒子、抗菌化合物微粒子、金属微粒子、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0119】
流体濾過物品として特に有用な不織布繊維ウェブの代表的な一実施形態では、化学的に活性な微粒子は、吸着微粒子である。種々の吸着微粒子を採用することができる。吸着微粒子としては、鉱物微粒子、合成微粒子、天然吸着微粒子、又はそれらの組み合わせが挙げられる。望ましくは、吸着微粒子は、目的とする使用条件の下で存在が予想される気体、エアゾール、若しくは液体を吸収又は吸着する能力を持つ。
【0120】
吸着微粒子は、ビーズ、フレーク、顆粒、又は粒塊を含む、あらゆる使用可能な形式をとることができる。好ましい吸着微粒子には、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ及びその他の金属酸化物、吸着又は化学反応により液体からある成分を除去できる金属微粒子(例えば銀微粒子)、ホプカライト(一酸化炭素の酸化を触媒できる)などの微粒子触媒剤、酢酸などの酸性溶液又は水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液で処理した粘土又はその他の鉱物、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ及びその他のゼオライト、殺生物剤、殺真菌剤、並びに殺ウイルス剤が挙げられる。活性炭及び活性アルミナは、現状において特に好適な吸着微粒子である。また、例えば、気体の混合物を吸収するために、吸着微粒子の混合物を採用することができるが、実際問題として、気体の混合物を取り扱うには、個々の層に別々の吸着微粒子を採用して、多層シート状物品を組み立てる方がよりよい場合がある。
【0121】
気体濾過物品として特に有用な不織布繊維ウェブの代表的な一実施形態では、化学的に活性な吸着微粒子は、気体吸着剤又は吸収剤微粒子であるように選択される。例えば、気体吸着剤微粒子は、活性炭素、炭、ゼオライト、モレキュラーシーブ、酸性気体吸着剤、ヒ素還元材料、ヨウ化樹脂などを挙げることができる。例えば、吸収剤微粒子はまた、珪藻土などの天然多孔質微粒子材料、粘土、又はメラミン、ゴム、ウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、シリコーン、及びセルロースなどの合成微粒子を挙げることもできる。吸収剤微粒子としてはまた、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又は顆粒状ポリビニルアルコールのような超吸収体微粒子を挙げることもできる。
【0122】
液体濾過物品として特に有用な不織布繊維ウェブの特定の代表的実施形態では、吸着微粒子は、液体、活性炭、珪藻土、イオン交換樹脂(例えば、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、若しくはそれらの組み合わせ)、モレキュラーシーブ、金属イオン交換吸着剤、活性アルミナ、抗菌性化合物、又はそれらの組み合わせを含む。特定の代表的実施形態は、ウェブの吸着微粒子密度が約0.20〜約0.5g/ccの範囲であることを提供している。
【0123】
様々なサイズ及び量の化学的に活性な吸着微粒子を使用して、不織布繊維ウェブを形成してもよい。代表的な一実施形態では、吸着微粒子は、直径1mmを超えるメジアン寸法を有する。別の代表的実施形態では、吸着微粒子は、直径1cm未満のメジアン寸法を有する。更なる実施形態では、微粒子粒径の組み合わせを使用することができる。代表的な追加の一実施形態では、吸着微粒子は、大微粒子と小微粒子の混合を含む。
【0124】
望ましい吸着微粒子の粒径は大幅に変えることができ、これは通常目的とする使用条件にある程度基づいて選ばれる。一般的な指針として、流体濾過用途に特に有用な吸着微粒子の粒径は、約0.001〜約3000μmのメジアン径内でばらつきがあってもよい。一般的には、吸着微粒子は、約0.01〜約1500μmのメジアン径、より一般的には約0.02〜約750μmのメジアン径、最も一般的には約0.05〜約300μmのメジアン径である。
【0125】
特定の代表的実施形態では、吸着微粒子は、1μm未満の集団メジアン径を有するナノ微粒子を含む場合がある。多孔質のナノ微粒子は、流体媒質からの汚染物質を吸着(例えば吸収及び/又は吸着)するための高い表面積を提供するという利点を有する場合がある。超微細又はナノ微粒子を使用するそのような代表的な実施形態では、例えば、ホットメルト接着剤などの接着剤、及び/又はメルトブローン不織布繊維ウェブへの熱の適用(すなわち熱接着)を用いて、微粒子が繊維に接着結合されることが好ましい可能性がある。
【0126】
異なる粒径範囲を有する吸着微粒子の混合物(例えば、二峰性混合物)を採用することもできるが、実際問題としては、上流層により大きい吸着微粒子を、下流層により小さい吸着微粒子を採用して多層シート状物品を組み立てる方がより良い。少なくとも80重量%の吸着微粒子、より一般的には少なくとも84重量%、更に最も一般的には少なくとも90重量%の吸着微粒子は、ウェブの中に捕捉されている。ウェブの坪量に関して示すと、吸着微粒子装填濃度は、例えば、比較的微細な(例えば、サブミクロン寸法)吸着微粒子では少なくとも約500gsmであり、比較的大きい(例えば、マイクロ寸法)吸着微粒子では少なくとも約2,000gsmである。
【0127】
いくつかの代表的実施形態では、化学的に活性な微粒子は、金属微粒子である。金属微粒子を使用して、研磨不織布繊維ウェブを形成してもよい。金属微粒子は、短繊維又はリボン様セクションの形状でもよく、あるいはグレイン様微粒子の形状でもよい。金属微粒子は、これらに限定されないが、銀(抗菌/抗微生物性を有する)、銅(殺藻剤の特性を有する)、又は1つ若しくは複数の化学的に活性な金属の混合物のような任意の種類の金属を含むことができる。
【0128】
他の代表的実施形態において、化学的に活性な微粒子は、固体殺生物剤又は抗菌剤である。固体殺生物剤及び抗微生物剤の例は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物、塩化ベンジルコニウム、ハロゲン化ジアルキルヒダントイン、及びトリクロサンなどのようなハロゲン含有化合物が挙げられる。
【0129】
更なる代表的実施形態において、化学的に活性な微粒子は、マイクロカプセルである。マイクロカプセルは、米国特許第3,516,941号(Matson)に記載されており、化学的に活性な微粒子として使用することができるマイクロカプセルの例を含む。マイクロカプセルは、固体又は液体の殺生物剤又は抗菌剤と共に装填されてもよい。マイクロカプセルの主要な品質のうちの1つは、それらの内に含有された材料を放出するために、機械的応力によって微粒子が崩壊され得ることである。したがって、不織布繊維ウェブの使用中、マイクロカプセルは、不織布繊維ウェブ上に適用された圧力によって崩壊し、マイクロカプセル内に含有された材料を放出する。
【0130】
そのような特定の代表的実施形態では、微粒子を一緒に結合して繊維成分のメッシュ又は支持不織布繊維ウェブを形成するように接着性又は「粘着性」にすることが可能な表面を有する少なくとも1つの微粒子を使用することが有利である場合がある。これに関して、有用な微粒子は、不連続繊維の形態であり得る、例えば熱可塑性ポリマーであるポリマーを含むことができる。好適なポリマーとしては、ポリオレフィン、特に、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE)(例えばExxon−Mobil Chemical Company(Houston,Texas)より入手可能なVISTAMAXX(商標))が挙げられる。更なる代表的な実施形態では、TPE類は通常粘着性の傾向があり、不織布繊維ウェブを形成するための繊維を加える前に、微粒子を一緒に結合させて三次元網状組織を形成する助けとなり得るため、特に表面層又は表面コーティングとしてTPEを含む微粒子が好ましい場合がある。特定の代表的実施形態では、VISTAMAXX(商標)TPEを含む微粒子は、過酷な化学薬品環境、特に低pH(例えば、約3以下のpH)及び高いpH(例えば、約9以上のpH)に対する抵抗力の改善を提供する場合がある。
【0131】
微粒子材料の任意の好適なサイズ又は形状が選択されてもよい。好適な微粒子は、様々な物理的形態(例えば、中実微粒子、多孔質微粒子、中空のバブル、凝集体、不連続繊維、短繊維、フレークなど)、形状(例えば、球、楕円、多角形、針状など)、形状均一性(例えば、単分散、実質的に均一、非均一又は不規則など)、組成(例えば、無機微粒子、有機微粒子、又はこれらの組み合わせ)、並びに寸法(例えば、サブミクロン寸法、マイクロメートルの寸法など)を有し得る。
【0132】
特に微粒子粒径に関連して、いくつかの代表的な実施形態では、微粒子の集団のサイズを制御することが望ましい場合がある。特定の代表的実施形態では、微粒子が、繊維不織布繊維ウェブ内に物理的に混入又は捕捉される。そのような実施形態では、微粒子は、一般的には、少なくとも50μm、より一般的には、少なくとも75μm、更により一般的には、少なくとも100μmの集団のメジアン径を有するよう選択される。
【0133】
他の代表的な実施形態では、例えば、熱融解型接着剤のような接着剤、及び/又は熱可塑性樹脂微粒子若しくは熱可塑性樹脂繊維の一方又は両方への加熱(すなわち、熱接着)を用いて繊維に接着結合される、より微細な微粒子を使用することが好ましい場合がある。そのような実施形態では、微粒子は、好ましくは、少なくとも25μm、より一般的には、少なくとも30μm、最も一般的には、少なくとも40μmのメジアン径を有することが通常は好ましい。いくつかの代表的実施形態では、化学的に活性な微粒子は、直径1cm未満のメジアン寸法を有する。他の実施形態では、化学的に活性な微粒子は、1mm未満、より一般的には25マイクロメートル未満、更により一般的には10マイクロメートル未満のメジアン寸法を有する。
【0134】
しかしながら、接着剤及び熱接着の両方を使用して微粒子を繊維に接着する他の代表的な実施形態では、それら微粒子が、1ミクロン(μm)未満、より一般的には約0.9μm未満、更により一般的には約0.5μm未満、最も一般的には約0.25μmの集団メジアン径を有するサブミクロン寸法の微粒子の集団を含んでもよい。そのようなサブミクロン寸法の微粒子は、高表面積、及び/又は高吸収性及び/又は高吸着能力が望まれる用途において特に有用であり得る。更なる代表的な実施形態では、サブミクロン寸法の微粒子の集団は、少なくとも0.001μm、より一般的には、少なくとも約0.01μm、最も一般的には、少なくとも約0.1μm、最も一般的には、少なくとも約0.2μmの集団メジアン径を有する。
【0135】
更なる代表的な実施形態では、微粒子は、最大約2,000μm、より一般的には、最大約1,000μm、最も一般的には、最大約500μmの集団メジアン径を有するマイクロ寸法の微粒子の集団を含む。他の代表的な実施形態では、微粒子は、最大約10μm、より一般的には、最大約5μm、更により一般的には、最大約2μmの集団メジアン径を有するマイクロメートル寸法の微粒子の集団(例えば、超微細マイクロファイバー)を含む。
【0136】
単一の完成品ウェブ内に複数の種類の微粒子を使用することもできる。複数のタイプの微粒子を使用すると、たとえそれらの微粒子のタイプの1つが同じタイプの別の微粒子と結合しなくとも、連続である微粒子ウェブを生成することが可能となり得る。この種のシステムの一例は、2種類の微粒子が使用されるものであり、一方の微粒子が、それら微粒子を互いに結合させ(例えば、不連続ポリマー繊維微粒子)、他方が、ウェブの所定の目的のための活性微粒子として作用する(例えば、活性炭のような吸着微粒子)ものであろう。そのような代表的な実施形態は、流体濾過用途に特に有用であり得る。
【0137】
例えば、化学的に活性な微粒子の密度、化学的に活性な微粒子の粒径、及び/又は最終的な不織布繊維ウェブ物品の所望の属性に応じて、繊維ウェブの総重量に対して種々の異なる装填の化学的に活性な微粒子を使用してもよい。一実施形態では、化学的に活性な微粒子は、総不織布物品重量の90重量%未満を構成する。一実施形態では、化学的に活性な微粒子は、総不織布物品重量の少なくとも10重量%未満を構成する。
【0138】
前述の実施形態のいずれかでは、化学的に活性な微粒子は、不織布繊維ウェブの厚さ全体にわたって有利に分散し得る。しかしながら、前述の実施形態のいくつかでは、化学的に活性な微粒子は、優先的に不織布繊維ウェブの主表面上に実質的に分散する。
【0139】
更に、当然のことながら、上述の化学的に活性な微粒子の1つ又は複数の任意の組み合わせを使用して、本開示による不織布繊維ウェブを形成してもよい。
【0140】
物品
不織布メルトブローン繊維構造は、上述のメルトブロー装置及びプロセスを用いて製造することができる。いくつかの代表的実施形態において、この不織布メルトブローン繊維構造は、マット、ウェブ、シート、スクリム、又はこれらの組み合わせの形態をとる。
【0141】
いくつかの特定の代表的実施形態において、このメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは、有利なように、帯電したメルトブローン繊維、例えばエレクトレット繊維を含み得る。特定の代表的実施形態において、このメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは多孔質である。いくつかの追加の代表的実施形態において、このメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは、有利なように自立的である。更なる代表的実施形態において、このメルトブローン不織布繊維構造又はウェブは有利なように、ひだ付きであってよく、例えばこれにより、液体用(水など)又は気体用(空気など)のフィルタ、暖房、換気若しくは空調(HVAC)フィルタ、又は個人保護用の呼吸用マスクなどの濾過媒体を形成し得る。例えば、米国特許第6,740,137号は、折り畳み可能なひだ付きフィルタエレメントに使用される不織布ウェブを開示している。
【0142】
本開示のウェブは、それ自体で使用することができ、例えば、濾過媒体、装飾用布地、又は保護用若しくは被覆材料として使用することができる。あるいは、他のウェブ又は構造と組み合わせて使用することができ、例えば、ウェブ上に配置又は積層された他の繊維層の支持体として、多層濾過媒体内で、又は膜を成形するための基材として、使用することができる。これらは調製の後、滑らかなカレンダリングロールを通して滑らかな表面のウェブを形成するか、成形装置を通して三次元形状に形成するよう加工することができる。
【0143】
本開示の繊維構造体は、少なくとも1つ又は複数の他の種類の繊維、例えば、短繊維ないしは別の方法での不連続繊維、メルトスパン連続繊維、又はこれらの組み合わせなど(図示なし)を更に含んでよい。本開示の代表的な繊維構造体は、例えば、管又は他の芯に巻かれてロールを形成でき、以降の加工に備えて保管されるか、更なる加工工程に直接送られるかのいずれかである不織布ウェブに形成されてよい。ウェブはまた、ウェブの製造後又はその後のある時点で、個別のシート、つまりマットに直接切り分けられてもよい。
【0144】
メルトブローン不織布繊維構造又はウェブは、例えば、断熱物品、防音物品、液体濾過物品、拭き取り布、手術用ドレープ、創傷包帯、衣類、呼吸用マスク、及びこれらの組み合わせなどの任意の好適な物品を製造するのに使用することができる。断熱物品又は防音物品は、乗物(例えば電車、航空機、自動車及びボート)の遮断要素として使用することができる。本開示のメルトブローン不織布繊維構造体を使用して、他の物品、例えば、寝具類、シェルタ、テント、絶縁体、断熱物品、液体フィルタ、ガスフィルタ、拭き取り布、衣類、衣類付属品、個人用保護具、呼吸用マスクなども製造できる。
【0145】
可撓性、ドレープ性のある小型の不織布繊維ウェブは、特定の用途、例えば、炉フィルタ又は気体濾過呼吸用マスクとして好ましい場合がある。そのような不織布繊維ウェブは、通常、75kg/m
3超、典型的に100kg/m
3超又は更には120 100kg/m
3超の密度を有する。しかしながら、特定の流体濾過用途に使用するために適した開放性と高さのある不織布繊維ウェブは、一般に60kg/m
3の最大密度を有する。本開示による特定の不織布繊維ウェブは、20%未満、より一般的には15%未満、更により好ましくは10%未満のソリディティを有し得る。
【0146】
様々な利点の中で特に、このメルトブローン繊維及びメルトブローン不織布繊維構造(例えばウェブ)は、加熱された場合又は高温で使用された場合にも、寸法安定性である。よって、代表的な実施形態において、本開示は、前述の装置及びプロセスの任意のものを用いて調製される不織布繊維構造を提供する。いくつかの特定の代表的実施形態において、この不織布繊維作製と空中熱処理プロセスは、高温用途で収縮して劣化する傾向が低減された繊維とそのような繊維を含む不織布繊維ウェブとを提供し、例えば、自動車、電車、航空機、ボート又はその他の乗物に防音を提供する。
【0147】
加えて、本開示の代表的な不織布繊維ウェブは、本明細書に開示される試験方法を用いて測定された圧縮強度が、1キロPa(kPa)超、1.2kPa超、1.3kPa超、1.4kPa超、又は更には1.5kPa超を呈し得る。更に、本開示の代表的な不織布繊維ウェブは、本明細書に開示される試験方法を用いて測定された最大負荷引張強度が、10ニュートン(N)超、50N超、100N超、200N超、又は更には300N超を呈し得る。更に、本開示の代表的な不織布繊維ウェブは、本明細書に開示される広角X線散乱を用いて測定された見掛け結晶子サイズが、30〜50Å(両端の値を含む)を呈し得る。
【0148】
本開示の様々な実施形態のいくつかを、以下の実施例で更に例証する。いくつかの実施例は、特定の特性(例えば、低収縮性などの寸法安定性、MDSC特性、向上した圧縮強度、向上した引張強度など)を示さないため、比較実施例として識別されている。しかしながら、比較実施例は、他の目的のために有用であり得、実施例の新しくかつ不明な特性を確立することができる。
【実施例】
【0149】
以下の実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲を過度に限定することを意味するものではない。本開示の幅広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例で説明される数値は、可能な限り、正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値に見られる標半偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。少なくとも、また特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入を適用することによって解釈されなければならない。
【0150】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分におけるすべての部、百分率、及び比率等は、重量を基準として提供される。使用した溶媒及び他の試薬は、特に断らない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手し得る。
【0151】
試験方法:
下記の試験方法を使用して、実施例の不織布メルトブローン繊維ウェブを特徴付けた。
【0152】
メジアン繊維径
実施例の不織布繊維ウェブのメルトブローン繊維のメジアン繊維径は、電子顕微鏡(EM)を使用して測定された。
【0153】
ソリディティ
不織布繊維ウェブの嵩密度の測定値をウェブの固体部分を構成する材料の密度で割ることで、ソリディティを求める。まずウェブの重量(例えば、10cm×10cmの断片)を測定することによって、ウェブの嵩密度を求めることができる。ウェブの重量の測定値をウェブの面積で割ることでウェブの坪量が得られ、g/m
2で記録される。直径135mmの円盤状のウェブを採取(例えば、打抜きで)して、ウェブ上に直径100mmの230gのおもりを中央に置いてウェブの厚さを測定し、ウェブの厚さを測定することができる。ウェブの坪量をウェブの厚さで割ることで、ウェブの嵩密度が得られ、g/m
3で記録される。
【0154】
次に、不織布繊維ウェブの嵩密度を、ウェブの中実繊維を含む材料(例えば(コ)ポリマー)の密度で割ることで、ソリディティが決定される。嵩のある(コ)ポリマーの密度は、供給業者がその材料の密度を特定していない場合は、標半方法によって測定することができる。ソリディティは、百分率で通常報告される無次元分数である。
【0155】
ロフト
ロフトは、100%からソリディティを引いた値として報告される(例えば、7%のソリディティは、93%のロフトに等しい)。
【0156】
変調示差走査熱量測定(MDSC)
特定の実施例及び比較実施例の不織布繊維ウェブの熱特性は、TA Instruments Q2000変調示差走査熱量計(MDSC)を使用して測定された。試料を計量し、TA InstrumentsのT
zeroアルミニウムパンに装填した。4℃/分の線形加熱速度を、60秒毎に±0.636℃の摂動振幅で適用した。試料を短時間保持して試料を乾燥させ、続いて0〜290℃の温度範囲にわたって加熱(H1)−急冷(Q)−加熱(H2)−徐冷(C2)−加熱(H3)プロファイルを行った。第1加熱の可逆及び非可逆熱流量が測定された。
【0157】
収縮測定
3枚の10cm×10cmの試料を使用して、縦方向(MD)及び横方向(CD)の両方で各ウェブサンプルのメルトブローンウェブの収縮特性を計算した。各試料の寸法は、80℃で60分間、150℃で60分間、及び150℃で7日間にわたってFisher Scientific Isotempオーブンに試料を配置する前と配置した後に測定した。各試料の収縮は、次の式を使用してMD及びCDについて計算した。
【0158】
【数2】
式中、L
0は試料の初期長さであり、Lは試料の最終長さである。収縮の平均値を計算し、下記の表に報告した。
【0159】
圧縮強度
ウェブの圧縮強度は、下記の手順により測定された。直径120mmの円形の試験サンプルをウェブから切り取った。このサンプルは、従来型のINSTRON引張検査機で、直径150mmの圧縮プレートを用い、クロスヘッド速度25mm/分で試験を行った。アンビル開始高さは、サンプル厚さよりわずかに高い位置に設定した。試験サイクル手順は下記の通りであった。サンプルの厚さを0.002psi(13.79Pa)で測定した。この初期厚さに基づき、サンプルが50%圧縮されるまで、圧縮を継続した。
【0160】
50%圧縮時の圧縮強度を、平方インチ当たりポンドの単位で記録し、これをキロパスカル(kPa)に変換した。次に、圧縮プレートを初期アンビル開始高さに戻した。次に、圧縮を30秒間停止してから、このサイクルを更に9回繰り返し、各サンプルについて合計10サイクル行った。
【0161】
各サンプルウェブの3つの複製物を試験した。3つの複製物を平均し、全10サイクルの平均を用いて、圧縮強度(kPa)を計算した。
【0162】
最大負荷引張強度
ウェブの最大負荷時の引張強度は、ASTM D 5034−2008に従い、クロスヘッド速度300mm/分、把持距離150mmで測定された。各試験サンプルについて、ニュートン(N)単位の最大負荷が記録された。各サンプルウェブの5つの複製物が試験され、その結果を平均して、最大負荷引張強度を得た。
【0163】
見掛け結晶子サイズ(D
app)
広角X線散乱(WAXS)
サンプルを、ゼロ背景のシリコン試料ホルダーの表面に置き、データ収集を行った。反射形状広角X線(WAXS)データは、PANalytical(Westborough,MA)Empyrean垂直回折計、銅K
α放射線、及びシンチレーション検出器の散乱線レジストリーを用いて、サーベイスキャンの形で収集された。回折計は、可変入射ビームスリット及び固定回折ビームスリットを用いる。10〜55度(2θ)で、0.04度刻み及び6秒のドウェル時間を用いて、サーベイスキャンを行った。40kV及び40mAのX線発生装置設定を使用した。
【0164】
小角X線散乱(SAXS)
データ収集時に、入射X線ビームをサンプル面に対して垂直に配置した。透過小角X線散乱(SAXS)データは、スリット視半されたKratkyコンパクトカメラ(Anton−Paar(Graz,Austria))、銅K
α放射線、及びリニア位置を感受する検出器の散乱線レジストリーを用いて、収集された。データは、サンプル・検出器間距離24cmで、10800秒間累積された。入射スリット高さは30μmとし、X線発生器設定は40kV及び30mAであった。
【0165】
WAXS及びSAXSデータの解析及びプロットは、X線回折解析ソフトウェアJADE(v9、MDI、Livermore CA)を使用して行われた。観察された回折ピークには、Pearson VIIピーク型モデル、立方スプラインバックグラウンドモデル及びX線回折解析ソフトウェアJADE(v9、MDI、Livermore CA)のアプリケーションを用いて、プロファイルフィッティングを実施した。ピーク幅はK
α1構成要素の半値全幅(FWHM)としてとった。見掛け結晶子サイズ(D
app)は、機器の範囲拡大と形状係数0.9の採用で補正を行い、次のScherrerの式(P.Scherrer,Gottinger Nachrichten,2,p.98(1918)参照)を用いて、観察されたピークの半値全幅(FWHM)値から決定された。
D
app=Kλ/βcos(θ)(単位:Å)
式中:K=0.90(形状係数)
λ=1.540598Å(波長Cu K
α1 x線源)
β=機器範囲拡大補正後のピークFWHM(ラジアン)
θ=ピーク位置2θの半分
【0166】
D
appを決定するこの方法についての追加情報は、例えば、X−ray Diffraction Procedures for Polycrystalline and Amorphous Materials,Harold P.Klug and Leroy E.Alexander(John Wiley & Sons,Inc.,New York,(1954))),Chapter 9,p.491に記載されている。
【0167】
(実施例1)
本開示の不織布メルトブローンウェブは、Wente,Van A.,「Superfine Thermoplastic Fibers」,Industrial Engineering Chemistry,Vol.48,p.1342 et seq.(1956)、及びNaval Research LaboratoriesのレポートNo.4364(1954年5月25日発行)「Manufacture of Superfine Organic Fibers」(van Wente,A.,Boone,C.D.,and Fluharty,E.L.著)に記述されているものと同様のプロセスによって調製されたが、ただし、繊維を製造するのに、ドリル穴が開けられたダイが使用された。ダイを通じて、加熱された空気の高速流の中に、ポリエチレンテレフタレート(PET)熱可塑性(コ)ポリマーを押し出した。この高速流は、繊維の固化及び捕集前に、繊維を引き伸ばして細径化させる。繊維は無作為に、ナイロンベルト上に捕集した。
【0168】
融解繊維をダイからコレクター上に吹き付けた。この繊維は、ダイから出た直後、コレクターに到達する前に、石英IRランプ配列を有する2つの赤外線(IR)ヒーターの間を通過し、このヒーターの一方は繊維流の上方に、もう一方のヒーターは繊維流の下方に配置された。ヒーター間の隙間は約15.25cm(6インチ)であった。
【0169】
IRヒーターは、Research,Inc.(Eden Prairie,MN)により製造された。各ヒーターは、ウェブ横断方向幅16インチ(40.6cm)、ウェブ流方向の長さ13インチ(33cm)であった。ヒーターの最大強度は14ワット/平方cm(90ワット/平方インチ)であった。すべてのサンプルは、ヒーター強度0%又は100%で製造された。
【0170】
PET不織布メルトブローン微小繊維ウェブが、標的坪量210グラム/メートルで製造された。PETメルトブローン微小繊維ウェブは、Invista(Wichita,Kansas)から入手した固有粘度0.55のPET樹脂(8396 PET)から調製された。メルトブローンウェブの繊維径(EFD)は7.0〜8.5マイクロメートルであった。公称融点より高い温度に繊維サンプルを第1加熱した後の第1冷却MDSC試験データが、
図2にプロットされている。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、表1に報告されている。
【0171】
比較実施例A
実施例1のウェブと同様に、ただし空中熱処理を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。公称融点より高い温度に繊維サンプルを第1加熱した後の第1冷却MDSC試験データが、
図2にプロットされている。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、表1に報告されている。
【0172】
【表1】
【0173】
(実施例2〜3)
実施例2〜3は、実施例1と同様に、ただし米国特許第4,118,531号(Hauserら)に記述されている手順を用いてこのウェブに短繊維を追加して、調製された。この短繊維は、Auriga Polymers Inc(Mills River,NC)から入手した商品名IndoRama T295の、配向されたポリ(エチレンテレフタレート)(星形、6デニール、長さ3.2cm)の捲縮短繊維であった。結果として得られたウェブの組成は、70重量%が実施例1の8396 PET繊維、30重量%がT295短繊維で、合計ウェブ坪量は300gsmであった。結果として得られたウェブは、実施例1と同様に赤外線ランプで照射され、出力は0%、50%及び100%であった。ウェブサンプルは、実施例1と同様に収縮率特性について試験され、結果が下記表2に報告されている。
【0174】
比較実施例B
実施例2〜3のウェブと同様に、ただし空中IR加熱を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、表2に報告されている。
【0175】
【表2】
【0176】
(実施例4)
実施例4は、実施例1と同様に、ただし、Clariant Corp.から商品名EXOLIT
TM OP950(公称融点220℃、分解温度380℃、リン含有量約20%)として入手した難燃性−ジエチルホスフィン酸亜鉛が、ウェブ重量に対して10重量%添加されて調製された。結果として得られたウェブは、実施例1と同様に赤外線ランプで照射され、出力は0%、50%及び100%であった。ウェブサンプルは、実施例1と同様に収縮率特性について試験され、下記表3に報告されている。
【0177】
比較実施例C
実施例4のウェブと同様に、ただし空中IR加熱を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、表3に報告されている。
【0178】
【表3】
【0179】
(実施例5〜7)
実施例5〜7は、実施例1と同様に、ただし、繊維の押出成形に、ポリ乳酸(PLA)とポリプロピレン(PP)の配合物が使用されて調整された。ポリ乳酸(PLA)樹脂グレードは、Natureworks,LLC(Minnetonka,MN)からNatureworks 6202Dとして入手された。この樹脂を、従来型の強制空気を用い、135°Fで一晩乾燥させてから使用した。2種類のグレードのポリプロピレンが使用された。1つはTotal Petrochemical(PP1105E1)から、もう1つはExxonMobil Chemical(PP3860X)からであった。このポリプロピレンを装填量3重量%でPLAに配合した。このメルトブローンウェブの坪量は約75gsmであった。メルトブローンウェブの繊維径(EFD)は7〜9マイクロメートルであった。PLA/PPウェブの収縮率試験は、従来型の実験室用炉内で、一辺10cmのサンプルを70℃で72時間加熱することによって行われた。結果として得られたウェブは、実施例1と同様に赤外線ランプで照射され、出力は0%及び50%であった。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、下記の表4に報告されている。
【0180】
【表4】
【0181】
(実施例8)
実施例8は、実施例2と同様に、ただしアルミニウムプレートをダイの上下に置いて、メルトブローンプロセス中に生成される高温の空気を閉じ込める高温エンクロージャーを形成して調製した。アルミニウムプレートは58.4cm(23インチ、ダイ長さに沿って測定された長さ)、33cm(13インチ、ダイからコレクターまでの幅)、及び厚さ2.3mm(0.090インチ)であった。繊維製造に使用したPET樹脂は、NanYa Plastics Corporation(Lake City,SC)から商品名NanYa N211として入手した。このウェブの坪量は約300gsmであった。ベースのメルトブローンウェブの繊維径(EFD)は7〜9マイクロメートルであった。ウェブサンプルは、収縮率試験により収縮率について試験された。結果が下記表5に報告されている。
【0182】
比較実施例D
実施例8のウェブと同様に、ただし空中熱処理を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。収縮率試験にしたがって決定された収縮率は、表5に報告されている。
【0183】
【表5】
【0184】
(実施例9〜10)
実施例9〜10は、実施例1と同様に、ただし対流(すなわち強制)高温空気を空中熱処理に使用(
図1Bに示されている通り、ただし上側の高温空気ブロワーのみ使用)して調製した。
【0185】
繊維製造に使用したPET樹脂は、NanYa Plastics Corporation(Lake City,SC)から商品名NanYa N211として入手した。ベースのメルトブローンウェブの繊維径(EFD)は7〜10マイクロメートルであった。実施例9の繊維サンプルの第1加熱MDSC試験データが
図3A〜3Bにプロットされている。公称融点より高い温度に繊維サンプルを加熱した後の第1冷却MDSC試験データが、
図3Cにプロットされている。実施例9の繊維サンプルのWAXS試験データが
図4にプロットされている。実施例9の繊維サンプルのSAXS試験データが
図5にプロットされている。ウェブのサンプルは更に、収縮率(%)と、上述の引張強度試験により最大負荷引張強度(N)について試験された。結果が下記表6に報告されている。
【0186】
比較実施例E及びF
実施例8及び9のウェブとそれぞれ同様に、ただし空中熱処理を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。比較実施例Eの繊維サンプルの第1加熱MDSC試験データが
図3A〜3Bにプロットされている。公称融点より高い温度に繊維サンプルを加熱した後の第1冷却MDSC試験データが、
図3Cにプロットされている。比較実施例Eの繊維サンプルのWAXS試験データが
図4にプロットされている。比較実施例Eの繊維サンプルのSAXS試験データが
図5にプロットされている。ウェブのサンプルは更に、収縮率(%)と、上述の引張強度試験により最大負荷引張強度(N)について試験された。結果が下記表6に報告されている。
【0187】
(実施例11)
実施例11は、実施例2と同様に、ただし対流(強制)高温空気を空中熱処理に使用(
図1Bに示されている通り、ただし上側の空気ブロワーのみ使用)して調製した。
【0188】
繊維製造に使用したPET樹脂は、NanYa Plastics Corporation(Lake City,SC)から商品名NanYa N211として入手した。ベースのメルトブローンウェブの繊維径(EFD)は7〜10マイクロメートルであった。ウェブのサンプルは、それぞれ上述の試験方法により最大負荷引張強度(N)と圧縮強度(kPa)について試験された。結果が下記表6に報告されている。
【0189】
比較実施例G
実施例11のウェブと同様に、ただし空中熱処理を使用せずに、メルトブローン不織布繊維ウェブが調製された。ウェブのサンプルは、それぞれ上述の試験方法により、最大負荷引張強度(N)と圧縮強度(kPa)について試験された。結果が下記表6に報告されている。
【0190】
【表6】
【0191】
実施例9と比較実施例EのMDSCデータについての検討
図3A〜3Bは、実施例9と比較実施例Eについて、上述のMDSC試験方法を用いて得られた第1加熱プロットを示す。
図3Cは、実施例9と比較実施例Eについて、公称融点より高い温度にサンプルを加熱した後に得られた、MDSC試験方法を用いて得られた第1冷却加熱プロットを示す。
【0192】
ガラス転移の特徴は両方の材料で非常に類似しているが、実施例9は、比較実施例Eに比べて、発熱結晶化がより高い温度で開始しており(108℃に対して111℃)、またピーク最大冷結晶化温度がより高くなっている(122℃に対して126℃)。
【0193】
調製された空中加熱処理ウェブと無処理ウェブの両方とも、調製時には、結晶性成分が非常に低レベルであると推定された。サンプルの結晶性成分を、正味融解ピーク面積合計を計算し、更にPETについて140J/gの理論的熱融合を用いて正規化することによって推定する場合、実施例9の材料は、無処理の材料(4%)に比べて、わずかに高い結晶化度(7%)を示す。しかしながら、空中熱処理プロセスによって処理されたウェブ(実施例9)と、無処理ウェブ(比較実施例E)とを比較したとき、最も顕著な違いは、空中熱処理されたウェブが、T
gより高い温度、より具体的には例えばT
ccより高い温度(例えば150℃)又はそれより高い温度に加熱されたときにも、改善された寸法安定性を示すことである。
【0194】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、これらの観察結果は、T
gを超える温度での、半結晶性(コ)ポリマー(例えばPET)材料の冷結晶化の速度低下と開始温度の遅れは、空中熱処理で得られた結晶性成分のわずかな違いに関連していることを示唆している。しかしながら、別の違いがPETに見受けられる。収縮率の低下を示す材料に見られるのは、その同じ材料が、融解後でも、よりゆっくりと結晶化し続けるということである。このことは、核生成ふるまいの変化を示唆している。例えば、空中熱処理を受けた繊維では、核又は「シード」の生じる数が少ない、及び/又はサイズが大きいことを示唆する。この効果はおそらく、
図3Cの第1冷却サイクルデータによって最もよく示されており、この図では、空中加熱処理された繊維の(再)結晶化温度が低い側にシフトしている。また更に、下記に詳しく述べるように、X線散乱(WAXS、SAXS)を用いた見掛けの結晶子サイズの測定によっても、この見方が支持されている。
【0195】
実施例9と比較実施例EのWAXS及びSAXSデータについての検討
実施例9及び比較実施例EのWAXSデータが
図4に示されている。比較実施例Eでは、約21度と42度(2θ)に、2つの広い散乱極大値がある。これらの散乱極大値は、低レベルの結晶化度、及び大きなPET結晶子がないことと一貫している。このサンプル中のPET結晶子は十分に小さく、数が少ないため、分解された回折極大値を生成しない。
【0196】
一方、実施例9のWAXSデータは、PET三斜晶(010)、(−110)、及び(100)回折極大値が、サンプル(DS 063014−4)で観察された散乱極大値に重なり合っている証拠を示している。実施例9で散乱増加が見られることは、空中熱処理により製造されたこのサンプル中に存在する結晶子の数がより少なく、サイズがより大きいことと一貫している。実施例9において、(010)、(−110)、及び(100)極大値に基づき、新たに形成された結晶子について計算された見掛けの結晶子サイズは、それぞれ34、34、及び50Åである。
【0197】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」というときは、「実施形態」という用語の前に「代表的」という用語を含むか否かに関わらず、実施形態に関して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、説明する本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所における「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「ある実施形態では」といった表現があっても、必ずしも説明する本開示の同一の実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の好適な方法で1つ以上の実施形態に組み合わされてもよい。
【0198】
本明細書で特定の例となる実施形態を詳細に説明したが、当然のことながら、当業者は上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び同等物を容易に想起することができるであろう。したがって、本開示は、本明細書上文に記載される実例となる実施形態に過度に制限されないと理解されるべきである。更に、本明細書中で参照されるすべての刊行物、公開特許出願、及び発行された特許は、各々の個々の刊行物又は特許が明確にかつ個別に参照により援用されることを示したかのごとく、参照によりその全文が同程度に本明細書に援用される。様々な代表的な実施形態が説明された。これらの実施例及び他の実施形態は以下の特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[35]に記載する。
[項目1]
a)少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの分子を含む融解流を、メルトブローダイの複数のオリフィスに通すことにより、複数のメルトブローン繊維を形成する工程と、
b)工程(a)の前記メルトブローン繊維が前記複数のオリフィスから出た直後に、前記メルトブローン繊維の少なくとも一部分に、制御された空中熱処理作業を行う工程であって、前記制御された空中熱処理作業は、前記制御された空中熱処理作業を受けた前記繊維部分内の分子の少なくとも一部分の応力緩和を達成するのに十分な時間、前記メルトブローン繊維の一部分の融解温度より低い温度で行われる工程と、
c)工程(b)の前記制御された空中熱処理作業を受けたメルトブローン繊維の一部分の少なくとも一部をコレクターに捕集して、不織布繊維構造を形成する工程であって、前記不織布繊維構造は、工程(b)の前記制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率よりも、低い収縮率を呈する、工程と、
を含むプロセス。
[項目2]
少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーを含む熱可塑性材料の融解流を、メルトブローダイに供給する工程であって、前記熱可塑性材料は核生成を達成するのに有効な量の核生成剤を含まない、工程と、
前記熱可塑性材料にメルトブローを行って少なくとも1本の繊維にする工程と、
前記少なくとも1本の繊維が、前記メルトブローダイから出た直後、不織布繊維構造としてコレクターに捕集される前に、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの融解温度よりも低い温度で、制御された空中熱処理作業を受ける工程であって、この処理時間は、前記不織布繊維構造が、前記制御された空中熱処理作業を受けずに同じように調製された構造で測定した収縮率よりも、低い収縮率を呈するのに、十分な時間である、工程と、
を含むプロセス。
[項目3]
前記少なくとも1つの半結晶性(コ)ポリマーが、脂肪族ポリエステル(コ)ポリマー、芳香族ポリエステル(コ)ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、項目1又は2に記載のプロセス。
[項目4]
前記半結晶性(コ)ポリマーが、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む、項目3に記載のプロセス。
[項目5]
前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーが、ポリエステル(コ)ポリマーと、少なくとも1つの他の(コ)ポリマーとの配合物を含み、ポリマー配合物を形成する、項目3又は4に記載のプロセス。
[項目6]
前記空中熱処理作業を受けた前記不織布繊維構造の前記収縮率が、約15%未満である、項目1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目7]
前記制御された空中熱処理作業が、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーを、前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーのガラス転移温度より高い温度に加熱する、項目1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目8]
前記制御された空中熱処理作業が、約80℃〜約240℃の温度で実施される、項目1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目9]
前記制御された空中熱処理作業が、少なくとも約0.001秒かつ約1.0秒以下の持続時間を有する、項目1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目10]
前記制御された空中熱処理作業が、放射加熱、自然対流加熱、強制ガス流対流加熱、又はこれらの組み合わせを用いて実施される、項目1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目11]
前記制御された空中熱処理作業が、赤外線放射加熱を用いて実施される、項目10に記載のプロセス。
[項目12]
前記不織布繊維構造が、マット、ウェブ、シート、スクリム、布地、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目13]
前記不織布繊維構造の前記メルトブローン繊維が、約10.0マイクロメートル未満のメジアン繊維径を呈する、項目1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目14]
前記空中熱処理作業の前に、最中に、又は後に、前記メルトブローン繊維に複数の微粒子を添加する工程を更に含む、項目1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目15]
前記空中熱処理作業の前に、最中に、又は後に、前記メルトブローン繊維に複数の非メルトブローン繊維を添加する工程を更に含む、項目1〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
[項目16]
項目1〜15のいずれか一項に記載のプロセスを使用して調製された、不織布繊維構造。
[項目17]
少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーの分子を含有する複数のメルトブローン繊維を含む不織布繊維構造であって、前記熱可塑性材料は、核生成を達成するのに有効な量の核生成剤を含まず、更に、前記不織布繊維構造は寸法安定性であり、15%未満の収縮率を呈する、不織布繊維構造。
[項目18]
前記少なくとも1つの半結晶性(コ)ポリマーが、脂肪族ポリエステル(コ)ポリマー、芳香族ポリエステル(コ)ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、項目17に記載の不織布繊維構造。
[項目19]
前記半結晶性(コ)ポリマーが、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシル)ブチラート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、又はこれらの組み合わせを含む、項目17又は18に記載の不織布繊維構造。
[項目20]
前記少なくとも1つの熱可塑性半結晶性(コ)ポリマーが、ポリエステル(コ)ポリマーと、少なくとも1つの他の(コ)ポリマーとの配合物を含み、ポリマー配合物を形成する、項目17〜19のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目21]
前記不織布繊維構造が、マット、ウェブ、シート、スクリム、布地、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目17〜20のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目22]
前記不織布繊維構造の前記メルトブローン繊維が、約10マイクロメートル未満のメジアン繊維径を呈する、項目17〜21のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目23]
約0.5%〜約12%のソリディティを呈する、項目17〜22のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目24]
100gsm〜約350gsmの坪量を呈する、項目17〜23のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目25]
前記不織布繊維構造の第1加熱においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線が、空中熱処理なしで同じように調製された不織布繊維構造の第1加熱においてMDSCを用いて得られた全熱流量曲線に比べて、より高い結晶化温度へのシフトを示す、項目17〜24のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目26]
公称融点を上回る温度での空中熱処理で前記不織布繊維構造を加熱した後の第1冷却において、MDSCを用いて得られた全熱流量曲線が、空中熱処理なしで同じように調製された不織布繊維構造について公称融点を上回る温度に加熱した後の第1冷却において、MDSCを用いて得られた全熱流量曲線と比較されたときに、ガラス転移温度と公称融点との間に冷結晶化ピークのショルダーを呈する、項目25に記載の不織布繊維構造。
[項目27]
本明細書に開示される試験方法を用いて測定された圧縮強度が、1kPaより高い、項目17〜26のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目28]
本明細書に開示される試験方法を用いて測定された最大負荷引張強度が、10ニュートンより高い、項目17〜27のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目29]
本明細書に開示される広角X線散乱を用いて測定された見掛け結晶子サイズが、30Å〜50Å(端の値を含む)である、項目17〜28のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目30]
複数の微粒子を更に含む、項目17〜29のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目31]
複数の非メルトブローン繊維を更に含み、所望により該非メルトブローン繊維は短繊維である、項目17〜30のいずれか一項に記載の不織布繊維構造。
[項目32]
項目17〜31のいずれか一項に記載の不織布繊維構造を含む物品であって、前記物品が、断熱物品、防音物品、液体濾過物品、拭き取り布、手術用ドレープ、創傷包帯、衣類、呼吸用マスク、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、物品。
[項目33]
メルトブローダイと、
該メルトブローダイから放出されるメルトブローン繊維に、該メルトブローン繊維の融解温度よりも低い温度で、制御された空中熱処理を行うための手段と、
前記熱処理されたメルトブローン繊維を捕集するコレクターと、
を含む、装置。
[項目34]
前記メルトブローダイから放出されたメルトブローン繊維の制御された空中熱処理を行うための前記手段が、放射ヒーター、自然対流ヒーター、強制ガス流対流ヒーター、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目33に記載の装置。
[項目35]
前記メルトブローダイから放出されたメルトブローン繊維の制御された空中熱処理のための前記手段が、少なくとも1つの赤外線ヒーターを含む放射ヒーターである、項目34に記載の装置。