【文献】
Org. Lett.,2014年 3月14日,16,1884−1887
【文献】
Org. Lett.,2011年,Vol.13, No.17,4746−4748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試薬が、トシルアジド、スルホニルアジド、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化セシウム、アジ化亜鉛から成る群から選択される、請求項10〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ビシクロ[1.1.1]ペンタンは、ひずみが大きい環であるにもかかわらず、、非常に安定である。単離されたビシクロ[1.1.1]ペンタンの最初の例は、1964年にWiberg(Wiberg et al. Tetrahedron Lett. 1964, 531-4)によって報告された。
しかしながら、難しく、低い収率の化学的性質により、ビシクロ[1.1.1]ペンタン分野の発展は、緩やかであった。約20年後、生産性の高いBCPへの経路が、Wiberg(Wiberg et al. J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 5239-40)により発見され、Sziemes(Semmler et al. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 6410-11)により、ひずみが
大きい環の[1.1.1]プロペランを出発物質として利用する経路がさらに開発された。
【0010】
ビシクロ[1.1.1]ペンタンは、(立体的)形状および(電気的)極性等の特有な特性を有し、環のひずみが大きいことが、橋頭炭素上の置換基に対する電子吸引性効果を生む。例えば、1−ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミンは、tert−ブチルアミンと比べて著しく低い塩基性である(共役酸のpKaは、1−ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミンでは、8.6であり、対して、tBuNH
2では11.0である)。同様に、1−カルボキシビシクロ[1.1.1]ペンタンは、ピバル酸より酸性である(pKaは、1−カルボキシビシクロ[1.1.1]ペンタンでは4.09であり、対して、ピバル酸では5.05である)。これらとその他の特性は、BCPが、有機化学の基本要素(building block)として重要な用途に使われる可能性を示唆している。それでも、一部のBCPの合成における進歩があったにもかかわらず(例えば、Bunker et al., Org. Lett. 2011, 13, 4746-4748を参照)、さらなるBCP基本要素(building block)、および公
知のBCP系化合物のためのコスト効率のよい合成が必要とされている。
略号
【0011】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に示すように定義される。
【表1】
定義
【0012】
基が「置換されていてもよい」ものとして記載されている場合は常に、その基は、示さ
れた1以上の置換基による非置換型または置換型である。同様に、基が「非置換型または(もしくは)置換型」として記載されている場合に、置換されているならば、置換基は、示された1以上の置換基から選択されている。置換基が全く示されていないならば、示された「置換されていてもよい」または「置換型」基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、(ヘテロシクリル)アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、一置換型アミノ基、および二置換型アミノ基からそれぞれ独立して選択された1個以上の基で置換されていることを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「a」と「b」が整数である「C
a〜C
b」は、基の中の炭素原子の数を指す。示された基は、「a」〜「b」(「a」と「b」を含む)の炭素原子を含み得る。従って、例えば、「C
1〜C
4アルキル」基は、1〜4の炭素を有する全てのアルキル基、すなわち、CH
3−、CH
3CH
2−、CH
3CH
2CH
2−、(CH
3)
2CH−、CH
3CH
2CH
2CH
2−、CH
3CH
2CH(CH
3)−、および(CH
3)
3C−を指す。「a」および「b」が全く指定されていないならば、これらの定義において記載されている最も広い範囲が想定される。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、完全飽和の脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、分枝または直鎖であってもよい。分枝アルキル基の例として、限定はされないが、イソブロピル、sec−ブチル、t−ブチル等が挙げられる。直鎖アルキル基の例として、限定はされないが、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル等が挙げられる。アルキル基は、1〜30の炭素原子を有してもよい(「1〜30」等の数値の範囲は、本明細書に記載されている場合は常に、与えられた範囲内の各整数を指す。例えば、「1〜30の炭素原子」は、アルキル基が、1の炭素原子、2の炭素原子、3の炭素原子等、30の炭素原子を含む、30までの炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義は、数値の範囲が指定されていない場合の用語「アルキル」の記載についても当てはまる)。アルキル基は、1〜12の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。また、アルキル基は、1〜6の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキル基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0015】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、炭素二重結合を含む2〜20の炭素原子の一価の直鎖ラジカルまたは分子鎖ラジカルを指し、例えば、限定はされないが、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられる。アルケニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0016】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、炭素三重結合を含む2〜20の炭素原子の一価の直鎖ラジカルまたは分子鎖ラジカルを指し、例えば、限定はされないが、1−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル等が挙げられる。アルキニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全飽和の(二重結合または三重結合を全く含まない)単環炭化水素系または多環炭化水素系を指す。環が二環以上の多環からなる場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルキル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜
8の原子を含むことができる。シクロアルキル基は、非置換型または置換型であってもよい。典型的なシクロアルキル基としては、決して限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの環の中に1つ以上の二重結合を含む単環炭化水素系または多環炭化水素系を指すが、二重結合が1つより多い場合、二重結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を形成することはない(そうでなければ、本明細書で定義されるように、基は、「アリール」である)。シクロアルケニル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜8の原子を含むことができる。環が二環以上の多環からなる場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルケニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキニル」は、少なくとも1つの環の中に1つ以上の三重結合を含む単環炭化水素系または多環炭化水素系を指す。三重結合が1つより多い場合、三重結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を形成することはない。シクロアルキニル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜8の原子を含むことができる。環が二環以上の多環からなる場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルキニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、−ORの式を指し、式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、(ヘテロアリール)アルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルである。アルコキシの非限定的な例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ、およびベンズオキシ(benzoxy)が挙げられる。アルコキシは、置換型または非置換型であってもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を有する、炭素環式(全てが炭素の)単環系または多環芳香族系(2つの炭素環が化学結合を共有している縮合環系を含む)を指す。アリール基の中の炭素原子の数は、変わり得る。例えば、アリール基は、C
6〜C
14アリール基、C
6〜C
10アリール基、またはC
6アリール基であり得る。アリール基の例として、限定はされないが、ベンゼン、ナフタレン、およびアズレンが挙げられる。アリール基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子(例えば、1、2、または3のヘテロ原子)、すなわち、窒素、酸素、および硫黄が非限定的な例として挙げられる炭素以外の元素を含む、単環芳香族系または多環芳香族系(完全に非局在化したπ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環の中の原子の数は、変わり得る。例えば、ヘテロアリール基は、環の中に4〜14の原子を含むことができ、環の中に5〜10の原子を含むことができ、環の中に5〜6の原子を含むことができる。さらに、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのアリール環と少なくとも1つのヘテロアリール環、または少なくとも2つのヘテロアリール環等の2つの環が、少なくとも1つの化学結合を共有する、縮合環系を含む。ヘテロアリール環の例として、限定はされないが、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチ
アゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、およびトリアジンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリサイクリル(heteroalicyclyl)」は、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10
員環から18員環までの単環系、二環系、および三環系を指し、炭素原子は、1〜5のヘテロ原子と共に前記環系を形成する。ヘテロ環は、所望により1つ以上の不飽和結合を含んでもよいが、不飽和結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系が生じないように位置する。ヘテロ原子は、炭素以外の元素であり、例えば、限定はされないが、酸素、硫黄、および窒素が挙げられる。本定義が、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、および環状カルバメート等のオキソ系およびチオ系を含むように、ヘテロ環は、1つ以上のカルボニル官能基またはチオカルボニル官能基をさらに含んでもよい。環が二環以上の多環からなる場合、環は、互いに、縮合またはスピロの形式で連結していてもよい。さらに、ヘテロアリサイクリック(heteroalicyclic)の中のどの窒素も、四級化さ
れていてもよい。ヘテロシクリル基またはヘテロアリサイクリック(heteroalicyclic)
基は、非置換型または置換型であってもよい。このような「ヘテロシクリル」基または「ヘテロアリサイクリル(heteroalicyclyl)」基として、1,3−ジオキシン、1,3−
ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN−オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2−オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルフォリン、チアモルフォリンスルホキシド、チアモルフォリンスルホン、およびそれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4−メチレンジオキシフェニル)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」および「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン基およびアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。例として、ベンジル、2−フェニル(アルキル)、3−フェニル(アルキル)、およびナフチル(アルキル)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアラルキル」および「ヘテロアリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレン基およびヘテロアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。例として、2−チエニル(アルキル)、3−チエニル(アルキル)、フリル(アルキル)、チエニル(アルキル)、ピロリル(アルキル)、ピリジル(アルキル)、イソキサゾリル(アルキル)、イミダゾリル(アルキル)、およびそれらのベンゾ縮合類似体が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0026】
「ヘテロアリサイクリル(heteroalicyclyl)(アルキル)」および「ヘテロシクリル
(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたヘテロ環基またはヘテロアリサイクリック(heteroalicyclic)基を指す。(ヘテロアリサイクリル(heteroalicyclyl))アルキルの低級アルキレンおよびヘテロシクリルは、置換型または非置換型であってもよい。例として、テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル(メチル)、ピペリジン−4−イル(エチル)、ピペリジン−4−イル(プロピル)、テトラヒドロ−2H−チオピラン−4−イル(メチル)、および1,3−チアジナン−4−イル(メチル)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0027】
「低級アルキレン基」は、直鎖状−CH
2−連結(tethering)基を指し、「低級アル
キレン基」は、分子断片を自身の末端の炭素原子を介して連結するように結合を形成する。例として、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、およびブチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)が挙げられるが、これらに限定はされない。低級アルキレン基は、低級アルキレン基の1つ以上の水素を置換することによって、および/または同じ炭素上の両方の水素をシクロアルキル基(例えば、
【化2】
)で置換することによって、置換型になり得る。
【0028】
本明細書で使用される用語「カルボニル」は、C=O(すなわち、炭素と酸素の二重結合)を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、カルボニル基を介して置換基として連結された水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、およびヘテロシクリル(アルキル)を指す。例として、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが挙げられる。アシルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語「アミノ」は、−NH
2を指す。
【0031】
「一置換型アミノ」基は、「−NHR」基であって、Rが、本明細書で定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得る、「−NHR」基を指す。一置換型アミノは、置換型または非置換型であってもよい。一置換型アミノ基の例として、−NH(メチル)、−NH(フェニル)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0032】
「二置換型アミノ」基は、「−NR
AR
B」基であって、R
AおよびR
Bが、それぞれ独立して、本明細書で定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得る、「−NR
AR
B」基を指す。二置換型アミノは、置換型または非置換型であってもよい。二置換型アミノ基の例として、−N(メチル)
2、−N(
フェニル)(メチル)、−N(エチル)(メチル)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0033】
用語「ハロゲン原子」または「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素などの元素周期表の7列(column)の放射性安定原子の任意の1つを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換されたアルキル基(例えば、モノハロアルキル、ジハロアルキル、およびトリハロアルキル)を指す。このような基として、クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、および1−クロロ−2−フルオロメチル、2−フルオロイソブチルが挙げられるが、これらに限定はされない。ハロアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」は、1つ以上の水素原子がヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例として、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、および2,2−ジヒドロキシエチルが挙げられるが、これらに限定はされない。ヒドロキシアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアルコキシ基を指す。例として、アルキル−O−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アシルアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアシルを指す。例として、アリール−C(=O)−(CH
2)n−、およびヘテロアリール−C(=O)−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。アシルアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アミノアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結された、置換されていてもよいアミノ基を指す。例として、H
2N−(CH
2)n−、(CH
3)
2N−(CH
2)n−、および(CH
3)(フェニル)N−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ハロアルコキシ」は、1つ以上の水素原子が、ハロゲンで置換された−O−アルキル基(例えば、モノハロアルコキシ、ジハロアルコキシ、およびトリハロアルコキシ)を指す。このような基として、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1−クロロ−2−フルオロメトキシ、および2−フルオロイソブトキシが挙げられるが、これらに限定はされない。ハロアルコキシは、置換型または非置換型であってもよい。
【0040】
「スルホニル」基は、「SO
2R」基を指し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、(ヘテロアリール)アルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルであり得る。スルフェニルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0041】
置換基の数が指定されていない場合(例えば、ハロアルキル)、1つ以上の置換基が存在してもよい。例えば、「ハロアルキル」は、1つ以上の同じハロゲン、または異なるハロゲンを含み得る。別の例として、「C
1−C
3アルコキシフェニル」は、1つ、2つ、または3つの原子を含む、1つ以上の同じアルコキシ基または異なるアルコキシ基を含み
得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、ラジカルは、単独の電子である不対電子を有する種を示し、前記ラジカルを含む前記種は、他の種と共有結合していることができる。従って、その意味において、ラジカルは、必ずしもフリーラジカルではない。むしろ、ラジカルは、大型分子の特定の部分を示す。用語「ラジカル」は、用語「基」と交換可能に使用され得る。
【0043】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載のあらゆる化合物において、絶対立体化学が明確に示されていない場合、各中心は、それぞれ独立して、R配置、S配置、またはその混合であり得ることが理解される。従って、本明細書に与えられる化合物は、エナンチオマーとして純粋であっても良く、片方のエナンチオマーに富んでいて(enantiomerically enriched)も良く、ラセミ混合物であっても良く、ジアステレオマーとして純粋で
あっても良く、片方のジアステレオマーに富んでいて(diastereomerically enriched)
も良く、または立体異性混合物であってもよい。また、EまたはZとして定義され得る幾何異性体を生成する、1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載のあらゆる化合物において、各二重結合は、それぞれ独立して、E、Z、またはそれらの混合物であり得ることが理解される。
【0044】
本明細書に開示される化合物が、満たされていない価を有する場合、価は、水素、または水素−1(プロチウム)および水素−2(デューテリウム)等の水素の同位体で満たされることが理解されるべきである。
【0045】
値の範囲が与えられている場合、上限および下限、ならびに範囲の上限と下限の間の各間の値が、本実施形態内に包含されることが理解される。
方法
【0046】
本明細書に開示される一部の実施形態は、[1.1.1]プロペラン;第7族遷移金属化合物または第9族遷移金属化合物;水素化物源;および、ビシクロ[1.1.1]ペンタンが置換基で置換されるように、前記置換基の全部または一部を与え得る試薬、を混合することを含み得る、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を合成するための方法に関する。
【0047】
置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を合成するための一般的な合成経路をスキーム1および2に示し、本明細書に記載する。本明細書に示され記載される経路は、例示のためだけのものであり、いかなる意味においても、特許請求の範囲を限定することを意図してはおらず、特許請求の範囲を限定することと解釈されてはならない。当業者は、開示される合成の変更を認めることと、本明細書の開示に基づく代替経路を考案することができるであろう。全てのこのような変更および代替経路は、特許請求の範囲内にある。
【化3】
【0048】
スキーム1に示すように、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物について、水素化物源は、示された水素に寄与し、試薬は、R
1またはR
1の一部に寄与する。本明細書に与えられるように、様々な第7族化合物、第9族化合物、R
1またはR
1の一部を含む試薬、および水素化物源を使用して、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を形成し得る。
【0049】
[1.1.1]プロペランは、様々な方法を介して合成され得る。適当な方法は、その全体を本明細書の一部を構成するものとして援用される、Shtarev et al., J. Am. Chem.
Soc. 2001, 123, 3484-3492、およびLynch et al., Org. Synth. 1998, 75, 98-105に記載されている。適当な方法の一例をスキーム2に示す。
【化4】
金属化合物
【0050】
当業者は、第7族が以下の元素:コバルト、ロジウム、イリジウム、およびマイトネリウムを含むことと、第9族がマンガン、テクネチウム、レニウム、およびボーリウムを含むこととを理解する。いくつかの実施形態において、第7族遷移金属化合物は、コバルト系遷移金属化合物であり得る。遷移金属化合物の酸化状態は、変わり得る。例えば、いくつかの実施形態において、コバルトの酸化状態は、Co(II)であり得、このとき、第7族遷移金属化合物は、Co(II)系遷移金属化合物である。その他の実施形態において、コバルトの酸化状態はCo(III)であり得、このとき、第7族遷移金属化合物は、Co
(III)系遷移金属化合物である。
【0051】
いくつかの実施形態において、第9族遷移金属化合物は、マンガン系化合物であり得る。コバルトの場合と同じように、マンガン系遷移金属化合物のマンガンの酸化状態は変わり得る。いくつかの実施形態において、マンガンの酸化状態は、Mn(II)であり得、このとき、第9族遷移金属化合物は、Mn(II)系遷移金属化合物である。その他の実施形態において、マンガンの酸化状態は、Mn(III)であり得、このとき、第9族遷移金属
化合物は、Mn(III)系遷移金属化合物である。第7族および第9族遷移金属化合物は
、塩、溶媒和物(一溶媒和物(mono-solvate)および過溶媒和物(per-solvate)を含む
)、または水和物(一水和物および過水和物(per-hydrate)を含む)であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、第7族遷移金属化合物は、第7族金属に結合および/または配位している1つ以上のリガンドを含み得、このとき、第7族遷移金属化合物は、第7族遷移金属錯体である。いくつかの実施形態において、第9族遷移金属化合物は、第9族金属に結合および/または配位している1つ以上のリガンドを含み得、このとき、第9族遷移金属化合物は、第9族遷移金属錯体である。本明細書で使用される場合、用語「リガンド」は、当業者が理解しているような通常の意味で本明細書で使用され、キレートまたは配位化合物の中の中心原子と結合している基を指す。適当なリガンドの例として、(サレン型リガンド等の)シッフ系リガンド、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジリデンアミノ)−2,2−ジフェニルアセテート、2−アミノイソ酪酸を伴ったサリチルアルデヒド、およびアラニンを伴ったサリチルアルデヒドが挙げられる。適当なリガンドの他の例を以下に与える。
【化5】
【0053】
いくつかの実施形態において、1つより多いリガンドが、第7族遷移金属錯体中に存在し得る。いくつかの実施形態において、1つより多いリガンドが、第9族遷移金属錯体中に存在し得る。いくつかの実施形態において、第7族遷移金属錯体は、コバルト系遷移金属錯体であり得る。いくつかの実施形態において、第9族遷移金属錯体は、マンガン系遷移金属錯体であり得る。
【0054】
本明細書に記載の方法において使用される第7族遷移金属化合物または第9族遷移金属化合物の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、第7族遷移金属化合物または第9族遷移金属化合物は、化学量論量で存在し得る。その他の実施形態において、第7族遷移金属化合物または第9族遷移金属化合物は、触媒量で存在し得る。さらなる他の実施形態において、第7族遷移金属化合物または第9族遷移金属化合物は、過剰量で存在し得る。適当な第7族および第9族遷移金属化合物の例として、以下が挙げられる。トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)マンガン(III)[Mn(
dpm)
3]、(アセタト−κO)[[rel−(1R,2R)−2,2’−[1,2−シクロヘキサンジイルビル[(ニトリロ−κN)メチリジン]]ビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノラト−κO]](2−)]コバルト(III)、および[N
,N’−(1,1,2,2−テトラメチルエチレン)ビス(3,5−ジ−tert−ブチ
ルサリチリデンイミナト)]コバルト(II)。他の例として、硝酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(Co(acac)
2)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(II)、ビス(1−モルフォリノカルバモイル−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオ−ナト)コバルト(II)(Co(modp)
2)、酢酸マンガン(II)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0055】
遷移金属化合物のさらなる例として、以下が挙げられる。
【化6】
【化7】
式中、Lは、配位溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、THF、アセトン等)であり得る。いくつかの実施形態において、第7族遷移金属化合物は、
【化8】
であり得る。
その他の実施形態において、第7族遷移金属化合物は、
【化9】
であり得る。
【0056】
第7族および第9族遷移金属化合物は、市販されている、かつ/または、第7族および第9族遷移金属化合物は、当業者に知られている方法を使用して合成され得る。例は、以下:Gaspar et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2007, 46, 4519-4522; Gaspar et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2008, 47, 5758-5760; Schaus et al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 1307−1315; 2003年7月2日に公開された欧州特許公報EP1323725;Waser et al., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 11693-11712;および、Gaspar et al.,
Am. Chem. Soc. 2009, 131, 13214−13215において与えられており、これらは、その全
体を本明細書の一部を構成するものとして援用される。
試薬
【0057】
様々な試薬を使用して、置換基の全部または一部をビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物に与え得る。いくつかの実施形態において、試薬は、求電子試薬として機能することができ、求核試薬を捕捉することができる。その他の実施形態において、試薬は、炭素ラジカル種のラジカル補足剤として機能して、置換型BCPを与えることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、LG
1−R
1の構造を有することができ、式中、R
1は、[1.1.1]プロペランの炭素に結合し、LG
1は、脱離基である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「脱離基」は、化学反応において他の原子または基と置換され得る、あらゆる原子または基を指す。さらに具体的に言うと、いくつかの実施形態において、「脱離基」は、求核置換反応で置換される原子または基を指す。いくつかの実施形態において、「脱離基」は、強酸の共役塩基である、あらゆる原子または基である。適当な脱離基の例として、トシレート、メシレート、スルホニル、およびハロゲン(例えば、I、Br、およびCl)が挙げられるが、これらに限定はされない。脱離基の非限定的な特性と例は、例えば、Organic Chemistry, 2
nd ed., Francis Carey (1992)の328〜331ページ;Introduction to Organic Chemistry, 2
nd ed., Andrew Streitwieser and Clayton Heathcock (1981)の169〜171ページ;および、Organic Chemistry, 5
th ed., John McMurry (2000)の398および408ページに見られ、これらは全て、遊離基の特性と例を開示するという限定的な目的のために、本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【0060】
いくつかの実施形態において、LG
1は、置換されていてもよいスルホニル、置換されていてもよいホスホネート、アルカリ金属、または遷移金属であり得る。様々な置換されていてもよいスルホニルおよび置換されていてもよいホスホネートが適当である。いくつかの実施形態において、置換されていてもよいスルホニルは、置換されていてもよいトシルであり得る。いくつかの実施形態において、置換されていてもよいホスホネートは、置換されていてもよいジ(アルキル)シアノホスホネート(例えば、ジ(エチル)シアノホ
スホネート)であり得る。
【0061】
LG
1−R
1の構造を有する試薬の非限定的な例として、トシルアジド、スルホニルアジド、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化セシウム、アジ化亜鉛、シアン化トシル、塩化トシル、チオシアン酸カリウム、シアン酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、(E)−(フェニルスルホニル)メタナールO−ベンジルオキシム、(E)−N−(ベンジルオキシ)−1−(フェニルスルホニル)メタンイミドイルシアニド、シアノリン酸ジエチル、tert−ブチルイソシアネート、および置換されていてもよいスルホニルオキシムが挙げられる。
【0062】
その他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、R
1A−R
1Bの構造を有することができ、式中、R
1Bは、[1.1.1]プロペランの炭素と結合し、さらなる変換を経てR
1を形成し、R
1Aは、副産物を形成する。R
1A−R
1Bの例は、酸素分子である。酸素分子の1つの酸素原子は、[1.1.1]プロペランの炭素と結合し、もう一方の酸素は、酸化物の副産物(例えば、シラノキシ(silanoxy)副産物)を形成する。R
1A−R
1Bの構造を有する、置換基の全部または一部を与え得る試薬のさらなる例は、置換されていてもよいオキサジリジンである。
【0063】
さらなる他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、R
1の構造を有し得る。これらの試薬について、試薬の全原子は、[1.1.1]プロペランの炭素を増やして、置換型BCPを形成し得る。この種類の試薬の例は、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)である。
【0064】
またさらなる他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、置換されていてもよいR
1−C
2〜10アルケニルの構造を有し得る。いくつかの実施形態において、R
1−C
2〜10アルケニルは、非置換型であり得る。その他の実施形態において、R
1−C
2〜10アルケニルは、置換型であり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、置換されていてもよいR
1−C
2−6アルケニルの構造を有し得る。
水素化物源
【0065】
様々な試薬は、水素を[1.1.1]プロペランに与えるように使用され得る。本明細書で使用される場合、「水素化物源」は、H
−またはHラジカル(H・)を与え得る試薬である。適当な水素化物源は、水素化物を[1.1.1]プロペラン、または第7族もしくは第9族遷移金属化合物の金属中心に転移させて、金属−水素化物錯体を与え得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、水素化物源は、金属系水素化物源であり得る。例として、アルカリ金属系水素化物、およびアルカリ金属系ホウ水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等)が挙げられるが、これらに限定はされない。その他の実施形態において、水素化物源は、非金属系水素化物源であり得る。非金属系水素化物源の例として、シラン(例えば、フェニルシランおよびメチルジフェニルシラン)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、および置換されていてもよいボラン(BH
3、BH
3錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)、およびイソピノカンフェイルボラン等)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0067】
水素化物源試薬は、販売業者から入手すること、および/または当業者に知られている方法を使用して合成することができる。重水素化された均等物もまた、販売業者から入手すること、および/または、例えば、その全体を本明細書の一部を構成するものとして援
用される、Keinan et al., J. Org. Chem., 1987, 52, 2576−2580、およびHarvey et al., J. Am. Chem. Soc., 1957, 79, 1437−1439に記載されているように、市販の試薬を使用して合成することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に与えられる方法は、水素化物源の第1の部分、および水素化物源の第2の部分を加えることを含み得る。
【0068】
[1.1.1]プロペラン、第7族または第9族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、[1.1.1]プロペラン、第7族または第9族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬のうち1つ以上は、他の1つ以上の上記化合物よりも多いことがあり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、[1.1.1]プロペランおよび/または水素化物源よりも多いことがあり得る。その他の実施形態において、水素化物源は、[1.1.1]プロペランおよび/または置換基の全部または一部を与え得る試薬よりも多いことがあり得る。さらなる他の実施形態において、[1.1.1]プロペランは、水素化物源および/または置換基の全部または一部を与え得る試薬よりも多いことがあり得る。上回る量は、変わり得る。例えば、上回る量は、約1.2倍以上、約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上、または約4倍以上であり得る。その他の実施形態において、[1.1.1]プロペラン、第7族または第9族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬のうち1つ以上は、他の1つ以上の上記化合物とほぼ等しいモル数であり得る。
【0069】
[1.1.1]プロペラン、第7族または第9族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬の各々を混合する順序もまた、変わり得る。例えば、第7族または第9族遷移金属化合物を、置換基の全部または一部を与え得る試薬と混合し、次いで、[1.1.1]プロペランおよび水素化物源を加えることができる。あるいは、[1.1.1]プロペランを置換基の全部または一部を与え得る試薬の前に加えることができる。
追加の化合物
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、1つ以上の追加の化合物を含み得る。例えば、本明細書に記載の方法は、開始剤として作用し得る追加の化合物も含み得る。開始剤は、反応性のラジカル種を生成して、反応を促進し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、捕捉化合物として作用し得る化合物も含み得る。例として、捕捉化合物を、本明細書に記載の方法で形成される1つ以上の化合物の副産物と結合することができ、副反応の数、および/または反応の間に形成される副産物の量を減らすことができる。その他の実施形態において、捕捉化合物は、ラジカル捕捉化合物であり得る。ラジカル捕捉化合物の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、添加剤として作用し得る追加の化合物もまた含み得る。本明細書で使用される場合、「添加剤」は、反応性の化合物の再生を促進する。例えば、添加剤は、反応性の遷移金属化合物を再生し得る。本明細書に記載の方法で使用され得る適当な追加の化合物として、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、メチルモルホリンオキシド、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、酸素、過ヨウ素酸ナトリウム、臭素酸銀、クロロギ酸銀、
硝酸セリウムアンモニウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、Oxone(登録商標)、3−クロロ過安息香酸等が挙げられる。
【0073】
1つ以上の追加の化合物は、本明細書に与えられる方法において、様々な場面で含まれ得る。同様に、本明細書に与えられる方法において、様々な量の1つ以上の追加の化合物が含まれ得る。本明細書に与えられる方法に含まれる追加の化合物のタイミングと量は、当業者の知識の範囲内にある。
溶媒
【0074】
本明細書に記載の方法において、様々な溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、アルコール系溶媒であり得る。いくつかの実施形態において、共溶媒を本明細書に記載の方法において使用することができる。適当な溶媒および共溶媒として、エタノール、メタノール、イソプロパノール、H
2O、THF、Et
2O、NMP、DMF、DMSO、MTBE、CH
3CN、CH
2Cl
2、トルエン、またはジオキサン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、溶媒は、H
2Oであり得る。その他の実施形態において、溶媒は、THFであり得る。いくつかの実施形態において、溶媒および共溶媒の組み合わせは、H
2OおよびTHFであり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、イソプロパノールであり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、メタノールおよびEt
2Oの溶媒系であり得る。
時間および温度
【0075】
本明細書に与えられる方法を、様々な温度で実施し得る。さらに、温度を、方法の間、下げること、および/または上げることができる。いくつかの実施形態において、温度は、約−5℃〜約30℃の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、温度は、室温(約25℃)であり得る。その他の実施形態において、温度は、約0℃であり得る。いくつかの実施形態において、温度は、30℃より高温であり得る。その他の実施形態において、温度は、0℃未満であり得る。
【0076】
本明細書に記載の方法によって、時間も変わり得る。例えば、本明細書に与えられる方法の時間は、約30分〜約3時間の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、時間は、約10時間〜約24時間の範囲内にあり得る。
【0077】
本明細書に与えられるように、BCPに最初に結合されるR
1は、さらなる変換を経て、他のR
1基を形成し得る。例えば、R
1基は、当業者に知られている方法を使用して還元されて、他のR
1基を形成し得る。さらなる変換の例として、還元、酸化、付加、脱離、濃縮、カップリング、メタセシス、転位、環化(cyclization)、芳香族化、環化(annulation)、断片化、置換、転移、同族体化、および多成分反応が挙げられる。特定の例
として、アジドは、当業者に知られている方法を使用して還元されて、アミノ基を形成し得る。適当な変換のさらなる例は、Richard C. Larock Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations (2
nd Ed., Wiley, John & Sons,
Inc., Nov. 1999);およびJerry March, (Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (6
th Ed., Wiley, John & Sons, Inc., Jan. 2007)に与えられている。
化合物
【0078】
本明細書に開示される一部の実施形態は、式(I)の化合物に関する。
【化10】
(I)
式中、R
1は、N
3、CF
3、F、Cl、Br、I、CN、OH、SCN、NCO、NO、−C(=NOR
2)(CN)、または−CH(=NOR
2)であり得、R
2は、(C
1〜C
10)アルコキシ、置換型もしくは非置換型(C
1〜C
30)アルキル、置換型もしくは非置換型アリール、置換型もしくは非置換型アルケニル、置換型もしくは非置換アルキニル、置換型もしくは非置換型シクロアルキル、置換型もしくは非置換型シクロアルケニル、置換型もしくは非置換型シクロアルキニル、置換型もしくは非置換型ヘテロ環、置換型もしくは非置換型ヘテロアリール、置換型もしくは非置換型アリール(アルキル)、置換型もしくは非置換型アルキル(アリール)、または置換型もしくは非置換型ヘテロアリール(アルキル)であり得る。
【0079】
本明細書に記載の1つ以上の方法を使用して、式(I)の化合物を得ることができる。
例えば、いくつかの実施形態において、R
1は、N
3、SCN、−C(=NOR
2)(CN)、または−CH(=NOR
2)であり得る。その他の実施形態において、R
1は、CF
3、F、Cl、Br、I、CN、OH、またはNCOであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、N
3であり得る。その他の実施形態において、R
1は、CF
3であり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、Fであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、Clであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、Brであり得る。その他の実施形態において、R
1は、Iであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、CNであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、OHであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、SCNであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、NCOであり得る。その他の実施形態において、R
1は、NOであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、−C(=NOR
2)(CN)であり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、−CH(=NOR
2)であり得る。
【0080】
本明細書に与えられるように、R
2は、様々な基であり得る。例えば、R
2は、(C
1〜C
10)アルコキシ、置換型もしくは非置換型(C
1〜C
30)アルキル、置換型もしくは非置換型アリール、置換型もしくは非置換型アルケニル、置換型もしくは非置換型アルキニル、置換型もしくは非置換型シクロアルキル、置換型もしくは非置換型シクロアルケニル、置換型もしくは非置換型シクロアルキニル、置換型もしくは非置換型ヘテロシクリル、置換型もしくは非置換型ヘテロアリール、置換型もしくは非置換型アリール(アルキル)、置換型もしくは非置換型アルキル(アリール)、または置換型もしくは非置換型ヘテロアリール(アルキル)であり得る。いくつかの実施形態において、R
2は、置換されていてもよいベンジルであり得る。いくつかの実施形態において、OR
2は、カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド、カルバルデヒドオキシム、(ベンジルオキシ)カルビ
ミドイル(carbimidoyl)シアニド、またはカルバルデヒドO−ベンジルオキシムであり
得る。
【0081】
式(I)の化合物の非限定な例として、以下が挙げられる。
【化11】
【0082】
いくつかの実施形態において、R
1は、N
3になり得ない。その他の実施形態において、R
1は、CF
3になり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、Fになり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、Clになり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、Brになり得ない。その他の実施形態において、R
1は、Iになり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、CNになり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、OHになり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、SCNになり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、NCOになり得ない。その他の実施形態において、R
1は、NOになり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、−C(=NOR
2)(CN)になり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、−CH(=NOR
2)になり得ない。
【0083】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、
【化12】
になり得ない。
その他の実施形態において、式(I)の化合物は、
【化13】
にはなり得ない。
【0084】
置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を合成するためのさらなる詳細を、表1に与える。
【化14】
【表2】
【表3】
【表4】
*は、アルケニルおよびアルキルが、置換されていてもよいことを示す。
【0085】
当業者であれば、例示としてのスキームと例で説明されている手順を、所望の製品に到達するように変更する方法が分かるということについて留意すべきである。
【実施例】
【0086】
実施例1:基本手順
触媒AまたはBの溶液(2〜5mol%)を、1ppmのBHT(10mMの最終濃度)を含む、無水MeOHおよび無水Et
2Oの3:1混合物、または2:1混合物のどちらかに溶解し、N
2下で2分間攪拌した。プロペラン(1当量)と適当な捕捉剤(1.2〜1.5当量)を加え、次いで、PhSiH
3(1.0当量)を加えた。一夜室温で攪拌後、混合物を濃縮して、所望の化合物を得、これをシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製するか、またはさらなる精製をせずに使用した。
【化15】
実施例2:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリル:
【化16】
【0087】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリルを、実施例1の基本手順に従って、MeOH/Et
2O中でシアン化トシル、触媒A、およびフェニルシランを使用して合成した。
1H NMR (400 MHz、MeOH-d4) δ 2.40 (s、1 H)、2.31 (s、6 H)。
実施例3:N−(ベンジルオキシ)ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド:
【化17】
【0088】
N−(ベンジルオキシ)ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルビミドイル(carbimidoyl)シアニドを、実施例1の基本手順に従って、MeOH/Et
2O中でN−(ベ
ンジルオキシ)−1−(メチルスルホニル)メタンイミドイルシアニド、触媒A、およびフェニルシランを使用して合成した。生成物を異性体(EおよびZ)の混合物として単離した。主な異性体:
1H NMR (400 MHz、MeOH-d4) δ 7.37 − 7.33 (m、5H)、5.24 (s、2H、2.53 (s、1H)、2.07 (s、6H). 少量の異性体:
1H NMR (400 MHz、MeOH-d4
) δ7.37 − 7.33 (m、5H)、5.22 (s、1H)、2.51 (s、1H)、2.19 (s、6H)。
実施例4:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドO−ベンジルオキシム:
【化18】
【0089】
N−(ベンジルオキシ)ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルビミドイル(carbimidoyl)シアニドを、実施例1の基本手順に従って、MeOH/Et
2O中でトシルメ
タナールO−ベンジルオキシム、触媒A、およびフェニルシランを使用して合成した。LC/MS (APCI) m/z 202.1 [C
13H
15NO + H
+]。
実施例5:1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタン、および1−アミノビシクロ[1.1.1]ペンタン:
【化19】
【0090】
1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンを、実施例1の基本手順に従って、MeOH/Et
2O中でトシルアジド、触媒B、およびフェニルシランを使用して合成した。
【0091】
前の工程からのMeOH/Et
2O中の粗生成物のアジドへ、MeOH中のCuSO
4(0.1当量)、NaBH
4(1当量)を0℃で加えた。NaBH
4(4当量)を1時間かけて複数回に分けて加えた。混合物を一夜攪拌し、次に、ジオキサン中の4N HClで酸性化した。次に、混合物を乾燥するまで濃縮し、次いで、Et
2Oで粉末化して、1−アミノビシクロ[1.1.1]ペンタンを得た。LC/MS (APCI) m/z 84.1 [C
5H
9N+H]
+。
【0092】
当業者は、1−アミノビシクロ[1.1.1]ペンタンが、本明細書に記載の条件を使用して、1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンから形成されることを理解する。(Goh, Y. L., et al., Organic Letters 2014, 16(7), 1884-1887を参照)。従って、1−アミノビシクロ[1.1.1]ペンタンを本明細書に記載の条件から得たことは、MeOH/Et
2O中のトシルアジド、触媒B、およびフェニルシランを使用してBCPから1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンを形成することの証拠である。
実施例6:1−クロロビシクロ[1.1.1]ペンタン:
【化20】
【0093】
窒素雰囲気下で、Mn(dpm)
3(0.02mmol)を室温でイソプロパノール(5mL)に溶解し、次に、0℃へ冷却する。ジクロロメタン(5mL)に溶解したフェニルシラン(1mmol)および塩化トシル(1.5mmol;追加の試薬)を加え、次い
で、[1.1.1]プロペラン溶液(1mmol、〜0.2〜0.5Mのエーテル/ペンタン溶液)を加える。得られた混合物を0℃で21時間攪拌する。水およびブラインを加えて反応をクエンチする。混合物を5分間攪拌し、次に、酢酸エチルで抽出する。まとめた有機層を乾燥し(MgSO
4)、ろ過し、揮発性物質を減圧下で除去する。次に、未精製の残渣を次の工程で使用するか、そうでなければ、フラッシュクロマトグラフィーに付して、1−クロロビシクロ[1.1.1]ペンタンを得る。
実施例7:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−オール:
【化21】
【0094】
酸素を追加の試薬として使用して、実施例6の基本手順を繰り返して、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−オールを生成させる。あるいは、適当な試薬を使用して実施例1の基本手順に従う。
実施例8:1−チオシアナトビシクロ[1.1.1]ペンタン:
【化22】
【0095】
チオシアン酸カリウムを追加の試薬として使用して、実施例6の基本手順を繰り返して、1−チオシアナトビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成させる。あるいは、適当な試薬を使用して実施例1の基本手順に従う。
実施例9:1-イソシアナトビシクロ[1.1.1]ペンタン:
【化23】
【0096】
シアン酸カリウムを追加の試薬として使用して、実施例6の基本手順を繰り返して、1−イソシアナトビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成させる。あるいは、適当な試薬を使用して実施例1の基本手順に従う。
実施例10:1−ニトロソビシクロ[1.1.1]ペンタン:
【化24】
【0097】
亜硝酸ナトリウムを追加の試薬として使用して、実施例6の基本手順を繰り返して、1−ニトロゾビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成させる。あるいは、適当な試薬を使用して実施例1の基本手順に従う。
【0098】
上記では、明確化と理解という目的のために、例示と実例として、少し詳しく記載したが、当業者は、本開示の趣旨から逸脱することなく、様々な多くの変更をなし得ることを理解するであろう。従って、本明細書に開示された形態は、例示のためだけのものであり、本開示の範囲を限定することを意図してはおらず、むしろ、本発明の真の範囲と趣旨に沿った全ての変更と代替も含むことを意図することを、明確に理解するべきである。