特許第6542813号(P6542813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542813
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】旋回式ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/32 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   A42B3/32
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-7409(P2017-7409)
(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公開番号】特開2018-115407(P2018-115407A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398058441
【氏名又は名称】テイケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】荒川 健司
(72)【発明者】
【氏名】神門 徹
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−129224(JP,U)
【文献】 特開2015−132032(JP,A)
【文献】 国際公開第00/060967(WO,A2)
【文献】 特開2004−084145(JP,A)
【文献】 特許第5908929(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回式ヘルメットであって、
ヘルメット本体を上下に二分割してなる、基部および可動部と、
水平方向を回転軸方向として、平行に第1の回転軸および第2の回転軸を配してなる、旋回部と、を少なくとも具備し、
第1の回転軸は可動部に連結してあり、
第2の回転軸は基部に連結してあり、
旋回部でもって可動部を回転させて、可動部の一部または全部を、可動部の天頂部分が上を向いた状態で基部の下側から基部の内部に収容可能に構成したことを特徴とする、
旋回式ヘルメット。
【請求項2】
基部の上部に、外周側を凹部とする段差を設け、
可動部の下縁を、前記凹部に嵌合して基部と可動部とを連結することを特徴とする、
請求項1に記載の旋回式ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用、運転用、スポーツ用、軍用、防災用などのヘルメットに関し、より詳しくは、不使用時にヘルメットの一部を旋回させることによって、ヘルメットの容積を減少することが可能なヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
不使用時に、ヘルメットの容積を減少(減容)可能な機構を備えたヘルメットとして、分離式、反転式、折り畳み式など、種々の構造が開発されている。
例えば、特許文献1に記載のヘルメットは分離式のヘルメットであり、ヘルメット本体を上下方向に二分割して、上側のキャップを下側の透明防護体に係合することで一体化可能とし、不使用時には、キャップを上方から押圧することで透明防護体との係合状態を解除し、透明防護体の内部に設けた吊設体でもってキャップを吊設した状態で、透明防護体内へと収容する構造を呈している。
また、特許文献2の記載のヘルメットは反転式のヘルメットであり、ヘルメット本体を上下方向に二分割して、上側のドーム状殻部材を、下側の環状殻部材の左右方向に伸びる枢軸を介して反転可能に連結する構造を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−084145号公報
【特許文献2】特許第5908929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係るヘルメットでは、以下に記載する問題のうち、少なくとも何れか1つの問題を有する。
(1)上方からの押圧力によってキャップと透明防護体との係合状態が解除されるため、落下物などの衝撃による防護機能に難がある。
(2)係合機構が甘くなると、キャップが落下するため、使用感が悪い。
(3)雨などの際に、キャップと透明防護体との係合箇所に雨が溜まりやすく、係合箇所の隙間を通ってヘルメット内部に水が漏れてしまう。
(4)吊設体によってキャップと透明防護体とを繋いでいるため、吊設体が破断して各部材が分かれてしまうと、部材の行方がわからなくなってしまう。
【0005】
また、特許文献2に係るヘルメットでは、以下に記載する問題のうち、少なくとも何れか1つの問題を有する。
(5)枢軸を長穴内でスライドさせてドーム状殻部材と環状殻部材との相対位置を偏移させることで、ドーム状殻部材の反転動作を実現しているため、落下物などの衝撃による上方からの押圧力によってドーム状殻部材がスライドして反転してしまう可能性があり、非反転状態で、ドーム状殻部材を位置決めするロック手段が必須となる。
(6)ドーム状殻部材と環状殻部材との相対位置を偏移させるためにドーム状殻部材と環状殻部材との接触面を平坦にする必要があり、雨などの際に、ドーム状殻部材と環状殻部材と間の隙間を通ってヘルメット内部に水が漏れやすくなる。
(7)ドーム状殻部材と環状殻部材との相対位置を偏移させることで、ドーム状殻部材の反転動作を実現しているため、非反転状態においてドーム状殻部材の前後揺動によって生じる隙間からの水漏れを回避するには、前記(5)に示すロック手段が必須となる。
【0006】
以上の通り、本願発明は、容積を減少可能なヘルメットにおいて、より利便性・安全性の高いヘルメットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、旋回式ヘルメットであって、ヘルメット本体を上下に二分割してなる、基部および可動部と、水平方向を回転軸方向として、平行に第1の回転軸および第2の回転軸を配してなる、旋回部と、を少なくとも具備し、第1の回転軸は可動部に連結してあり、第2の回転軸は基部に連結してあり、旋回部でもって可動部を回転させて、可動部の一部または全部を、可動部の天頂部分が上を向いた状態で基部の下側から基部の内部に収容可能に構成したことを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、基部の上部に、外周側を凹部とする段差を設け、可動部の下縁を、前記凹部に嵌合して基部と可動部とを連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を有する。
(1)ヘルメットの外表面に連続性を持たせることができる。
基部と可動部との間に介設する旋回部でもって、基部と可動部の上下関係を入れ換えることができる。
よって、基部と可動部とが完全に独立する分離式ヘルメットでなければ実現できなかったヘルメット外表面の連続性の確保を実現できる。
ヘルメット外表面の連続性を確保できると、使用状態において、基部と可動部の連結部分で外表面に段差や大きな隙間が生じることがなくなる。
(2)基部と可動部との間の隙間からの浸水がしにくい。
基部と可動部との間の隙間になる連結面が略水平面を含むため、ヘルメットの使用時に、水が隙間に侵入しにくい。
(3)ヘルメット内部にまで浸水する恐れを抑制できる。
基部に設けた段差面により、ヘルメット内部にまで浸水することがない。
(4)可動部の沈み込みを防止できる。
基部に設けた凸部を、可動部の下縁と張出部とで挟み込むため、上方からの押圧力に対して、可動部が開いて下方に沈み込むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る旋回式ヘルメットを示す概略斜視図。
図2】使用状態の旋回式ヘルメットを示す背面側概略図。
図3】使用状態の旋回式ヘルメットを示す正面側概略図。
図4】収納後の旋回式ヘルメットを示す概略斜視図。
図5】旋回前後の旋回式ヘルメットの対比図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0011】
<1>全体構成(図1
本発明に係る旋回式ヘルメットは、ヘルメット本体を上下に二分割してなる、基部10および可動部20と、基部10と可動部20とを繋ぐ旋回部30と、を少なくとも具備して構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>基部(図1
基部10は、上下に分割したヘルメット本体の下側部分に相当する部材である。
基部10には、汗止め、あごひも、ヘッドバンド、インナーキャップなどの公知の内装部品を脱着自在に適宜設けてあるが、各図面での図示は省略している。
【0013】
<3>可動部(図1
可動部20は、上下に分割したヘルメット本体の上側部分に相当する部材である。
本実施例では、可動部20が略椀型の形状を呈しており、基部10の上部に、可動部20の下部を接続することで、両者が一体化されたヘルメット本体を構築している。
【0014】
<3.1>基部との分割位置(図1
なお、基部10と可動部20とに分割するヘルメット本体の分割線は、後述する可動部20の旋回動作後に、基部10の内部へと可動部20の一部または全部を収容するのに支障が無い範囲で適宜設定すればよい。
【0015】
<4>基部と可動部との連結態様(図1
本実施例における基部10と可動部20との連結態様について、以下説明する。
【0016】
<4.1>インロー嵌合による固定(図1
図1に示すように、本実施例に係る旋回式ヘルメットでは、基部10と可動部20との連結箇所にインロー嵌合を用いることで止水性を確保している。
このインロー嵌合は、前記基部10の上部においてヘルメットの外周側に設けた凹部11に、前記可動部20の下縁を嵌合するよう構成している。
【0017】
このインロー嵌合により、凹部11と、凹部11より高い位置を端面とする凸部12との間には段差13が生じる。
ヘルメットの外周側へと通ずる隙間から水が浸入したとしても、この水は前記段差によって遮られるため、ヘルメットを傾斜させない限り、ヘルメットの内側まで水が侵入することはない。
【0018】
<4.2>差し込みピンによる固定(図1
さらに、図1では、基部10の上部に差し込み穴14、可動部20にピン21を設けている。使用状態のヘルメットとすべく、基部10と可動部20とを連結する際に、差し込み穴14へとピン21が差し込まれることで、両者を固定・一体化している。
【0019】
<5>旋回部(図1,2)
旋回部30とは、基部10と可動部20との間に介在させ、基部10に対して可動部20を離脱および回転させることにより、可動部20を基部10の下側へと潜りこませるための手段である。
旋回部30は、互いに水平方向を軸方向として、所定長さだけ離隔した位置に平行に配した状態を呈する第1の回転軸31および第2の回転軸32で構成する。
本実施例では、板状の部材の一端に第1の回転軸31、他端に第2の回転軸32を設けた平行の二軸ヒンジからなる旋回部30がヘルメット本体の側面に位置するように設けている。
以下、各回転軸の詳細について説明する。
【0020】
<5.1>第1の回転軸(図2
第1の回転軸31は、基部10と可動部20とが一体化されてヘルメット本体を構成している状態において、可動部20を起立させつつさらに逆側まで倒伏させた状態とするための回転動作を実現するための部材である。
第1の回転軸31は、可動部20に連結し、基部10とは直接固定されていない。
よって、第1の回転軸31そのものが後述する第2の回転軸32によって回転可能な状態を呈している。
【0021】
<5.2>第2の回転軸(図2
第2の回転軸32は、第1の回転軸31でもって基部10から取り外した可動部20をさらに回転させて、可動部20の一部または全部を、基部10の下側から基部10の内部へと潜りこませるための部材である。
第2の回転軸32は基部10の上下方向の長さの略中央付近に連結してあり、旋回させた第1の回転軸31が、基部10の上縁近傍または下縁近傍に位置するよう構成してある。
よって、本実施例では、第1の回転軸31と第2の回転軸32との間の離隔距離が基部10の上下長の約半分の長さとなっており、第2の回転軸32が基部10の上下方向における略中間位置に取り付けた状態を呈している。
【0022】
<6>基部と可動部との固定(回転フック)(図1,3)
本実施例では、基部10について、旋回部30を設けた側面の反対側の側面に、可動部20のシェルに設けた被係合部22へと係合可能な回転フック40を設けている。
この回転フック40による係合を解除しない限り、可動部20の旋回動作を行うことはできない。
【0023】
<6.1>回転フックおよびピンによる可動部の位置ズレ阻止(図1
前記の通り、回転フック40は、ヘルメット本体の外側から基部10と可動部20とを係合固定している。
一方、前記したように、可動部20に設けたピン21は、ヘルメット本体の内周面近傍で基部10と可動部20とを連結固定している。
すなわち、可動部20の下縁は、回転フック40と基部10の凸部12で挟み込まれた状態となる。
よって、上記の連結態様によれば、可動部に生じる押圧力による、基部10に対する可動部20の内外周側へのズレをおさえ、ひいては可動部の下縁が開いて基部の外周面へと沈み込むことを防止することができる。
【0024】
<7>使用イメージ(図1,4,5)
本実施例に係る旋回式ヘルメットの使用イメージについて説明する。
なお、本発明において、各回転軸の回転角度や動作手順は、下記の例に限定されるものではない。
【0025】
<7.1>第1の回転軸による可動部の倒伏動作(図1
まず、基部10と可動部20とを固定している回転フック40による係合を解除してから、第1の回転軸31でもって可動部20を回転させ、基部10の側方で可動部20が倒伏した状態とする。
【0026】
<7.2>第2の回転軸による可動部の回転動作(図4
次に、第2の回転軸32でもって、第1の回転軸31および可動部20を略180°回転させる。この回転動作により、可動部20は、基部10と一体化された状態と同じ姿勢(非反転状態)を維持したまま、基部10の下側から潜りこんだ状態となる。
【0027】
<7.3>旋回前後の対比図(図5
図5に示すように、可動部20の旋回後は、基部10の底部と、可動部20の底部の高さがほぼ揃った状態となり、可動部20の天頂部分が基部10の内部に収容されて、あたかも基部10と可動部20の上下関係が入れ換わった状態で積層した形態を呈している。
このとき、可動部20の天頂部分が基部10の内部に収容された状態となり、ヘルメット全体の高さが圧縮されてコンパクトとなり、ヘルメット全体の容積が減少することとなる。
【0028】
<7.4>まとめ
このように、本発明においては、第1の回転軸31による回転動作と、第2の回転軸32による回転動作を順次もしくは並行して実施することにより、基部10と可動部20の上下を入れ換えた状態で、可動部の一部または全部を基部10の内部に収容することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 基部
11 凹部
12 凸部
13 段差
14 差し込み穴
20 可動部
21 ピン
22 被係合部
30 旋回部
31 第1の回転軸
32 第2の回転軸
40 回転フック
図1
図2
図3
図4
図5