特許第6542877号(P6542877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6542877肥満治療用ステントについて、幽門括約筋の正常な機能を許容する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542877
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】肥満治療用ステントについて、幽門括約筋の正常な機能を許容する装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20190628BHJP
【FI】
   A61F2/04
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-513801(P2017-513801)
(86)(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公表番号】特表2017-527388(P2017-527388A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015050805
(87)【国際公開番号】WO2016044660
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】62/052,000
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヒングストン、ジョン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、クロード オー.
(72)【発明者】
【氏名】ルート、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ビシャル
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0307070(US,A1)
【文献】 米国特許第08211186(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0109087(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/092715(WO,A2)
【文献】 特表2005−514106(JP,A)
【文献】 特開平10−328216(JP,A)
【文献】 特開2011−200661(JP,A)
【文献】 特表平04−501525(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/162114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテーゼにおいて、前記プロテーゼは、
外面を有するステントであって、
近位ステントフランジと、
前記近位ステントフランジから遠位に延びる近位ステントセグメントと、
前記近位ステントセグメントから遠位に延びる拡張ステントセグメントとを含むステントと
前記ステントの外面を完全に覆うポリマーカバーであって、前記プロテーゼの外面を形成するポリマーカバーと、
前記拡張ステントセグメントから遠位に延びるとともに、前記ポリマーカバーの管状セクションによってのみ形成される接続セグメントとを含み、
前記接続セグメントは、幽門括約筋の正常な機能のため、前記プロテーゼが移植された時に、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置される、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテーゼにおいて、前記近位ステントフランジセグメントが近位ステント端を形成し、前記拡張ステントセグメントが遠位ステント端を形成する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項3】
請求項1に記載のプロテーゼにおいて、前記ステントはさらに
前記接続セグメントから遠位に延びる遠位ステントフランジを含み、前記遠位ステントフランジは遠位ステント端を形成し、前記近位ステントフランジは近位ステント端を形成し、
前記ステントはステントフィラメントを含み、前記ステントフィラメントは前記近位ステントフランジ、前記近位ステントセグメント、および前記拡張ステントセグメントを形成するように第一編組角度で編組される、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロテーゼにおいて、前記第一編組角度は120°である、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプロテーゼにおいて、前記接続セグメントは30mm70mmの長手方向の長さと、15mm25mmの直径とを有する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項6】
請求項1に記載のプロテーゼにおいて、前記ステントはさらに遠位ステントフランジを含み、前記接続セグメントは前記拡張ステントセグメントを前記遠位ステントフランジに係合し、前記近位ステントフランジは近位ステント端を形成し、前記遠位ステントフランジは遠位ステント端を形成する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロテーゼにおいて、
前記近位ステントフランジは20mm40mmの長手方向の長さと、その最も広い点において20mm30mmの直径とを有し、
前記近位ステントセグメントは100mm200mmの長手方向の長さと、10mm20mmの均一な直径とを有し、
前記拡張ステントセグメントは40mm80mmの長手方向の長さと、その最も広い点において30mm70mmの直径とを有する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項8】
請求項6に記載のプロテーゼにおいて、前記遠位ステントフランジは20mm40mmの長手方向の長さと、その最も広い点において20mm30mmの直径とを有する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項9】
請求項7または8に記載のプロテーゼにおいて、前記接続セグメントは30mm70mmの長手方向の長さと、15mm25mmの直径とを有する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロテーゼにおいて、前記ポリマーカバーはシリコーンカバーである、ことを特徴とするプロテーゼ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロテーゼにおいて、前記ステントは前記プロテーゼの単一のステント層を形成する、ことを特徴とするプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、肥満治療用ステントについて、移植された時に、幽門括約筋の正常な機能を許容するように構成されたプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満とは、健康に悪影響を及ぼし、平均余命の短縮や健康上の問題の増加を生じさせ得るほどにまで過剰な体脂肪が蓄積された状態のことをいう。ボディマス指数(BMI)は体重と身長とを比較することにより得られる尺度であり、その値が25kg/m〜30kg/mの場合は過体重(肥満予備軍)、30kg/mを超える場合は肥満であると定義されている。肥満は、最も一般的には、過剰な食事のカロリー、身体活動の欠如、および遺伝的感受性の組み合わせによって引き起こされる。平均して、肥満は平均余命を6〜7年短縮する。また、肥満は様々な疾患、特に心臓病、2型糖尿病、睡眠時の呼吸障害、特定の種類の癌、および変形性関節症の可能性を増加させる。肥満は成人および子供の罹患率の増加に伴い、世界的に主要な予防可能である死因の一つとなっており、当局はこれを21世紀の最も深刻な公衆衛生上の問題の一つであると認識している。WHOは2005年、世界中で少なくとも4億人の成人(9.8%)が肥満であると推定した。CDCの報告書によると、2007年〜2008年において、米国の成人の34%、および子供の17%が肥満であった。肥満は、米国で年間365,000人が死亡する原因となると推測されている。
【0003】
肥満手術(または減量手術)は、重度の肥満(BMIが40kg/mを超える場合、またはBMIが35kg/mを超えるとともに併存疾患を有している場合)を治療するための外科的治療である。最も一般的な肥満手術は、小さな胃パウチおよび食物脚(ルー脚)を形成し、互いに、且つ患者の空腸に対して吻合し、小腸の一部をバイパスさせるルーワイ胃バイパス術(RYGB)である(図1)。別の肥満手術では、図2に示すように、胃の一部の切除(スリーブ状胃切除術、または十二指腸スイッチ術を伴う胆膵消化回避術)が含まれ得る。十二指腸スイッチ術を伴う胆膵消化回避術において、胃の約80%が切除され、薄いスリーブ状の胃が形成される。食物を小腸に放出する弁(幽門)は、通常は胃に接続する小腸(十二指腸)の限られた部分とともに残される。外科手術においては、腸の端部を胃の近くの十二指腸に接続することによって、腸の大半を迂回させる(胆膵消化回避術)。この減量手術は効果的であるが、栄養失調やビタミン欠乏等のリスクがあり、厳重な監視が必要となる。これは一般に、ボディマス指数が50kg/mを超える人に適用されており、毎年約150,000人の患者が肥満手術を受けている。長期間の研究において、この処置により体重の長期的な著しい減少、糖尿病からの回復、心疾患リスク因子の改善、および23%〜40%の死亡率の低減という効果が導かれることが示されている。
【0004】
肥満手術において、約2%〜3%の確率で術後のリークが生じることが報告されているが、過少報告により実際の数値はより高い可能性がある。RYGBPの場合、リークは主に胃のパウチのステープルラインに沿った、胃腸の吻合部において生じる。しかしながら、リークはまた、食道および胃の間のZ線に沿って生じる場合もある。リークは肥満手術後の最も恐ろしい合併症の一つであり、罹患率および死亡率の増加と関連している。リークは、非経口栄養を伴うドレナージ、腸の休息、様々な内視鏡的方法(食道ステント、クリップ、接着剤、縫合)、および第二の肥満手術を含む、様々な方法で治療することができる。しかしながら、これらの治療方法はすべて、欠点を有している。
【0005】
食道ステントは、スリーブ状胃切除術後のリークを治療するためによく使用されている。しかしながら、これらのステントはスリーブ状胃切除術後の変形した胃の形状に適合しないため、移動しやすい。また、既存のステントは有効な治療において使用するには短すぎるため、二つのステントが使用される場合もある。
【0006】
スリーブ状胃切除術の場合、リークの大部分はスリーブの上部(近位側の3分の1)において生じる。これは、上部が手術中にアクセスしにくく、ステープル止めがより困難であるためであり、また、胃の切開領域に狭窄がある場合、スリーブの上部において圧力が上昇することによる。図3はスリーブ状胃切除術前の胃の形状を示すものであり、図4はスリーブ状胃切除術後の胃の形状を示すものである。
【0007】
本願の範囲を限定することなく、本願のいくつかの実施形態についての簡単な概要を以下に示す。本願の要約された実施形態や追加の実施形態に関するさらなる詳細については、以下の詳細な説明に見出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願はこれに鑑み、肥満治療用ステントについて、移植された時に、幽門括約筋の正常な機能を許容するように構成されたプロテーゼを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも一つの実施形態において、本願は移植された時に、幽門括約筋の正常な機能を許容するように構成されたプロテーゼに関する。
本明細書に開示されるプロテーゼは、単一のステント層およびポリマー層を含むことができる。単一のステント層はステントを含み、ポリマー層はポリマーカバーを含むことができる。
【0010】
プロテーゼを形成する方法は、近位ステントフランジ、近位ステントセグメント、および拡張ステントセグメントを含む近位ステントを形成する工程と、遠位ステントフランジを含む遠位ステントを形成する工程と、近位および遠位ステントを覆うようにポリマー材料を適用する工程と、接続セグメントを形成する工程と、これらの組み合わせとを含む。
【0011】
プロテーゼを形成する方法は、結合部を形成する工程を含んでいてもよい。
近位ステントおよび遠位ステントの少なくとも一方を形成する方法は、少なくとも一つのステントフィラメントを織り込む工程を含んでいてもよく、この織り込みには、編組、編み、および結び目が含まれる。
【0012】
ステントは近位ステントフランジと、近位ステントセグメントと、拡張ステントセグメントとから構成されていてもよく、近位ステントセグメントは近位ステントフランジと拡張ステントセグメントとを接続する。
【0013】
ステントは近位ステントフランジと、近位ステントセグメントと、拡張ステントセグメントと、短縮遠位セグメントとから構成されていてもよく、近位ステントセグメントは近位ステントフランジと拡張ステントセグメントとを接続し、短縮遠位セグメントは拡張ステントセグメントから遠位に延びる。
【0014】
ステントはポリマーカバーによってのみ相互に接続された第一ステントおよび第二ステントを含んでいてもよく、第一ステントは近位ステントフランジと、近位ステントフランジから遠位に延びる近位ステントセグメントと、近位ステントセグメントから遠位に延びる拡張ステントセグメントとを含み、第二ステントは遠位ステントフランジを含む。
【0015】
ステントは近位ステントフランジと、近位ステントフランジから遠位に延びる近位ステントセグメントと、近位ステントセグメントから遠位に延びる拡張ステントセグメントと、拡張ステントセグメントから遠位に延びる接続セグメントと、接続セグメントから遠位に延びる遠位ステントフランジとから構成されていてもよい。
【0016】
プロテーゼは外面を有するステントを含んでいてもよく、ステントは近位ステントフランジと、近位ステントフランジから遠位に延びる近位ステントセグメントと、近位ステントセグメントから遠位に延びる拡張ステントセグメントと、ポリマーカバーとを含む。
【0017】
プロテーゼは外面を有するステントを含んでいてもよく、ステントは近位ステントフランジと、近位ステントフランジから遠位に延びる近位ステントセグメントと、近位ステントセグメントから遠位に延びる拡張ステントセグメントと、ステントの外面を完全に覆うポリマーカバーとを含み、ポリマーカバーはプロテーゼの外面を形成する。
【0018】
プロテーゼは内腔を画定する。プロテーゼは約340mm〜約410mmの長手方向の長さを有していてもよい。プロテーゼは可変の直径を有していてもよい。
ステントはプロテーゼの第一端からプロテーゼの第二端まで延びていてもよい。ステントはレーザー切断されていても、織り込まれていてもよい。ステントは自己拡張可能であってもよい。ステントはステントフィラメントによって形成されていてもよい。ステントフィラメントは複合繊維であってもよい。
【0019】
近位ステントフランジは、約20mm〜約40mm、好ましくは約30mmの長手方向の長さを有していてもよい。近位ステントフランジは、その最も広い点において約20mm〜約30mm、好ましくは約25mmの直径を有していてもよい。近位ステントフランジは均一な直径を有する第一セクションと、テーパ状の第二セクションとを有していてもよい。第一セクションは近位ステントフランジの近位端を形成し、第二セクションは近位ステントフランジの遠位端を形成していてもよい。
【0020】
近位ステントセグメントは、約100mm〜約200mm、好ましくは約150mmの長手方向の長さを有していてもよい。近位ステントセグメントは、約10mm〜約20mm、好ましくは約20mmの直径を有していてもよい。近位ステントセグメントの直径は均一であってもよい。
【0021】
拡張ステントセグメントは可変の直径を有していてもよい。拡張ステントセグメントは卵形の形状を有していてもよい。拡張ステントセグメントの第一端は第二端よりも小さな直径を有していてもよい。拡張ステントセグメントは、約40mm〜約80mm、好ましくは約60mmの長手方向の長さを有していてもよい。拡張ステントセグメントは、その最も広い点において約30mm〜約70mm、好ましくは約50mmの直径を有していてもよい。
【0022】
近位ステントフランジは近位ステント端を形成し、拡張ステントセグメントは遠位ステント端を形成していてもよい。
ステントは、拡張ステントセグメントから遠位に延びる短縮遠位セグメントを含んでいてもよい。短縮遠位セグメントはステントの遠位端を形成していてもよい。短縮遠位セグメントは、約10mm〜約30mm、好ましくは約20mmの長手方向の長さを有していてもよい。短縮遠位セグメントは、約15mm〜約25mm、好ましくは約20mmの直径を有していてもよい。短縮遠位セグメントの直径は均一であってもよい。
【0023】
ステントはさらに、拡張ステントセグメントから遠位に延びる接続セグメントを含んでいてもよい。接続セグメントは、約30mm〜約70mm、好ましくは約50mmの長手方向の長さを有していてもよい。接続セグメントは、約15mm〜約25mm、好ましくは約20mmの直径を有していてもよい。接続セグメントは、幽門括約筋の正常な機能のため、プロテーゼが移植された時に、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されていてもよい。接続セグメントは、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されていてもよい。接続セグメントはポリマーカバーのセクションによって形成されていてもよい。接続セグメントは編組接続セグメントであってもよい。
【0024】
ポリマーカバーのセクションは結合部によって支持されていてもよい。結合部は、約30mm〜約70mmの長手方向の長さを有していてもよい。結合部は長手方向ストラットであってもよい。結合部はステントフィラメントであってもよい。複数のステントフィラメントは、編組ストラット結合部を形成するように編組されていてもよい。結合部は、拡張ステントセグメントおよび遠位ステントフランジに溶接されていてもよい。
【0025】
ステントはさらに、接続セグメントから遠位に延びる遠位ステントフランジを含んでいてもよい。遠位ステントフランジは、約20mm〜約40mm、好ましくは30mmの長手方向の長さを有していてもよい。遠位ステントフランジは、その最も広い点において約20mm〜約30mm、好ましくは約25mmの直径を有していてもよい。遠位ステントフランジは均一な直径を有する第一セクションと、テーパ状の第二セクションとを有していてもよい。第二セクションは近位ステントフランジの近位端を形成し、第一セクションは遠位ステントフランジの遠位端を形成していてもよい。遠位ステントフランジは遠位ステント端を形成し、近位ステントフランジは近位ステント端を形成していてもよい。
【0026】
ステントフィラメントは近位ステントフランジ、近位ステントセグメント、拡張ステントセグメント、および遠位ステントフランジを形成するように第一編組角度で編組されていてもよい。ステントフィラメントは編組接続セグメントを形成するように第二編組角度で編組されていてもよい。第二編組角度は第一編組角度よりも小さくてもよい。第一編組角度は約120°、第二編組角度は約60°であってもよい。
【0027】
ステントはさらに、遠位ステントフランジを含んでいてもよい。ポリマーカバーは、拡張ステントセグメントを遠位ステントフランジに係合する接続セグメントを形成していてもよい。
【0028】
近位ステントフランジセグメントは近位ステント端を形成し、遠位ステントフランジは遠位ステント端を形成していてもよい。
ステントは、近位ステントフランジ、近位ステントセグメント、および拡張ステントセグメントを含む第一ステントと、遠位ステントフランジを含む第二ステントとを含んでいてもよく、第一および第二ステントはポリマーカバーのセクションによってのみ接続される。
【0029】
ポリマーカバーはステントの外面を完全に覆っていてもよい。ポリマーカバーはプロテーゼの外面を形成していてもよい。ポリマーカバーは管状であってもよい。ポリマーカバーはシリコーンを含んでいてもよい。ポリマーカバーは分解に対して抵抗を有しており、不浸透性であり、リークを塞ぎ、組織の内部成長を低減させ、またはこれらを組み合わせた性質を有していてもよい。ポリマーカバーはステントに固定される。ポリマーカバーはステントの外面に固定された第一ポリマーカバーと、ステントの内面に固定された第二ポリマーカバーとを含んでいてもよい。ポリマーカバーは、シリコーン、スチレンイソプレンブタジエン(SIBS)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいてもよい。
【0030】
プロテーゼは、ポリマーカバーの外面上に治療剤の層を含んでいてもよい。
これらの、または別の実施形態は、本明細書に添付されてその一部を形成する特許請求の範囲において詳細に指摘されている。しかしながら、さらなる理解のため、本明細書のさらなる一部および付随の説明的事項を形成し、一つ以上の実施形態について図示して説明する図面を参照することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ルーワイ処置後の消化管の一部の概略図である。
図2】十二指腸スイッチ術を伴う胆膵消化回避術後の消化管の一部の概略図である。
図3】スリーブ状胃切除術前の胃の形状の概略図である。
図4】スリーブ状胃切除術後に変形した胃の形状の概略図である。
図5A】プロテーゼの一実施形態の概略断面図である。
図5B】結合部とともに、図5Aに示すプロテーゼを示す概略断面図である。
図6】部分的に閉じられた接続セグメントを有するプロテーゼの一実施形態の概略断面図である。
図7】プロテーゼの一実施形態の概略断面図である。
図8】プロテーゼの一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本願の主題は多くの異なる形態で実現することができるが、本願の特定の好ましい実施形態が本明細書において詳細に説明されている。この説明は本願の原理の例示であり、本願を図示された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0033】
本願の目的のため、図中の同様の参照符号は、別段の指示がない限り、同様の特徴を指すものとする。
以下に定義される用語について、特許請求の範囲または本願の他の箇所において異なる定義がされない限り、これらの定義が適用されることが企図される。
【0034】
明確な指示の有無にかかわらず、すべての数値は本明細書において、「約(about)」という用語によって修飾されているものとみなす。用語「約(about)」は、最も近い有効数字に四捨五入された数値を含む。
【0035】
端点による数値範囲の表現は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
本明細書において、用語「均一(uniform)」には、製造中に生じる誤差が含まれる。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、用語「一つの(a,an,the)」等の単数形は、別段の明確な指示がない限り、複数の対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、用語「AまたはB(or)」等は一般に、別段の明確な指示がない限り、「AおよびBの少なくとも一方(and/or)」を含む意味で用いられる。
【0037】
本願で用いられるように、「接続(connect)」または「係合(engage)」という用語には、「間接的(indirect)」な接続または係合は含まれない。
プロテーゼおよびプロテーゼを形成する要素はそれぞれ、幅、長さ、および厚さを有する。本願で用いられるように、「厚さ」はプロテーゼの外面からプロテーゼの内面までを径方向において測定され、「幅」は周方向において測定され、「長さ」は長手方向において測定される。
【0038】
本願で用いられるように、プロテーゼの「内面」とはプロテーゼの内腔を画定する表面であり、プロテーゼの「外面」は内面に対向する表面である。
本願で用いられるように、「カバー」14はステント壁によって画定される開口部の上に延在することによって開口部を閉塞し、開口部を介したプロテーゼの管腔内への組織の成長を抑制するものである。ステント12は完全に覆われたステントであってもよい。本明細書で用いられる「完全に覆われたステント」とは、少なくともステントの第一端から第二端まで延びるカバー14を有するものである。従って、完全に覆われたステントのカバー14は、ステント12の長さと等しいか、またはこれよりも長い長さを有する。本明細書で用いられる「部分的に覆われたステント」とは、ステント12の長手方向の長さよりも短い長手方向の長さを有するカバー14を有するものである。
【0039】
本願で用いられる治療剤の層またはコーティングは、本明細書で用いられるカバー14とは異なるものである。
本願で用いられるように、「近位」および「遠位」の基準点は口または消化管の始端であり、プロテーゼ10が消化管内に移植された時に、プロテーゼ10の「近位」端はプロテーゼ10の「遠位」端よりも消化管の始端の近くに配置されるように構成されている。
【0040】
本願で用いられるように、「端部(end)」は要素の末端の部分であり、「端部領域(end region)」は「端部」に隣接する領域であり、「端部」を含むものである。
【0041】
本願で用いられるように、「領域(region)」または「セクション(section)」は、第一の長手方向位置から第二の長手方向位置まで延びる管状のプロテーゼ10の一部であり、管状のプロテーゼの円周全体の周りに延びるものである。
【0042】
本明細書で用いられるように、「直径」とは二点間に延びる直線の距離であり、特定の形状を示すものではない。
以下の詳細な説明は図面を参照して読まれるべきものであり、図面においては、異なる図中の同様の要素には同様の参照符号が付されている。図面は必ずしも縮尺通りとはなっていないが、例示的な実施形態を示しており、本願の範囲を限定することは意図していない。
【0043】
A.プロテーゼ
幽門は、幽門括約筋を介して開閉することにより、胃から十二指腸への食物の流入を調整する。幽門括約筋とは、胃と十二指腸との間の接続部である幽門口の周囲の筋肉の帯である。十二指腸が開かれるように幽門口が開状態を維持している時、胃および食道に胆汁が逆流することがあり、これは不快感を生じさせる可能性がある。胆汁の逆流は十二指腸スイッチ術を伴う胆膵消化回避術よりもスリーブ状胃切除術において生じやすいが、この理由は後に、胆汁が消化管を通過しなければならないためである。
【0044】
本明細書に開示されるプロテーゼ10は、消化管に移植されるように構成および配置される。プロテーゼは当技術分野で知られるように、より小さな直径の送達構成から、より大きな直径の移植構成まで拡張することができる。
【0045】
本明細書に開示されるプロテーゼ10は、プロテーゼが移植された時に幽門括約筋の正常な機能を許容するように構成および配置される(例えば、図5A図8参照)。後に詳述するように、移植されたプロテーゼ10の遠位端が幽門括約筋の近位に配置される場合、または幽門括約筋に及ぶ移植されたプロテーゼ10のセグメントが幽門括約筋の正常な開閉を妨げないように構成される場合に、幽門括約筋の正常な機能が果たされ得る。いくつかの場合において、プロテーゼ10はスリーブ状胃切除術の一部として、またはその後に移植される。このような場合、プロテーゼ10は肥満治療用プロテーゼと呼ぶことができる。
【0046】
プロテーゼ10は内腔を画定する(例えば、図5A図8参照)。プロテーゼ10は、プロテーゼの内腔を通る流れを調整するための弁構造を有していなくてもよい(例えば、図5A図8参照)。本明細書で説明するように、内腔を通る流れは、接続セグメント22によってのみ調整されてもよい。
【0047】
本明細書に開示されるプロテーゼ10は自己拡張可能であってもよく、約340mm〜約410mmの長手方向の長さを有しており、可変の直径を有しており、またはこれらの組み合わせとすることができる。プロテーゼ10はポリマーカバー層と単一のステント層とを含む(例えば、図5A図7参照)。プロテーゼ10の内腔は単一のステント層によって、または内側のポリマーカバーによって部分的に画定されていてもよい。
【0048】
A.1.プロテーゼのポリマーカバー層
ポリマーカバー層は、プロテーゼ10によるリークの閉塞、組織の内部成長の抑制、およびこれらを組み合わせた機能を向上させることができる。ポリマーカバー層は分解に対して抵抗を有しており、透過性を有しており、またはこれらを組み合わせた性質を有していてもよい。
【0049】
ポリマーカバー層は、ポリマーカバー14を含む。ポリマーカバー14は、ステント12の長手方向の長さの一部または全体を覆う。従って、ステント12は部分的に覆われたステント、または完全に覆われたステントとすることができる。例えば浸漬コーティングまたはスプレーコーティングを含むがこれらに限定されない、ポリマーカバー14を形成するための任意の適切な方法でポリマー材料をステント12に適用することができる。あるいは、ポリマーカバー14は管状であってもよく、締まり嵌め、縫合糸、または他の任意の適切な固定手段によって、ステント12に固定することができる。
【0050】
プロテーゼは、単一のポリマー層または二つのポリマー層を有することができる。ポリマーカバー14はプロテーゼ10の外面を形成する単一の層であってもよい(例えば、図5A図8参照)。あるいは、ポリマーカバーはプロテーゼの外面を形成する第一カバーとプロテーゼの内面を形成する第二カバーとを含んでいてもよい(図示略)。プロテーゼ10が二つのポリマー層を有する場合、第一ポリマー層はステント層/ステント12の外面を覆うことができ、第二ポリマー層はステント層/ステント12の内面を覆うことができる。
【0051】
ポリマーカバー14に適した材料には、シリコーン、スチレンイソプレンブタジエン(SIBS)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン、およびこれらの組み合わせが含まれる。ポリマーカバー14は、膨張する材料、または対応する状況下で膨張する薬剤でコーティングされた材料の少なくとも一方から生成することができる。
【0052】
A.2.プロテーゼのステント層
プロテーゼ10は、単一のステント層を有する(例えば、図5A図8参照)。単一のステント層は、ステント12によって形成することができる。ステント12は、遠位または近位への移動を抑制するような形状とすることができる。ステント12は、プロテーゼ10の第一端および第二端を形成する。
【0053】
ステント12は、一つ以上の織り込まれたステントフィラメントから形成することができる。本明細書で用いられるように、この織り込みには、編組ステントフィラメント、編みステントフィラメント、および結び目付きステントフィラメントが含まれる。編組ステントのいくつかの例として、ボストンサイエンティフィック社が製造販売しているWALLFLEX(登録商標)、WALLSTENT(登録商標)、およびPOLYFLEX(登録商標)ステントが挙げられる。編みステントの一例として、ボストンサイエンティフィック社製のULTRAFLEX(登録商標)ステントが、結び目付きステントの一例として、ボストンサイエンティフィック社製のPrecision Colonic(商標)ステントが挙げられる。ステント12はレーザー切断されていてもよい。あるいは、ステント12は上述の種類のステントの任意の組み合わせとすることができる。
【0054】
ステント12は当技術分野で知られるように、より小さな直径の送達構成から、より大きな直径の移植構成まで拡張することができる。ステント12は自己拡張可能であってもよい。
【0055】
ステントフィラメントに適した材料には、ELGILOY(登録商標)およびニチノール(登録商標)等の合金、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマー、生分解性ポリマー、および放射線不透過性材料が含まれる。ステントフィラメントは、例えばニチノール(登録商標)の外殻と白金のコアとを有するコアファイバまたは複合繊維とすることができる。コアファイバまたは複合繊維についてのいくつかの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,101,392号および同第6,527,802号に開示されている。
【0056】
ステント12は、近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16とを含む(例えば、図5A図8参照)。近位ステントセグメント18は、近位ステントフランジ20と拡張ステントセグメント16とを接続する。
【0057】
ステント12はさらに、拡張ステントセグメント16から遠位に延びる短縮遠位セグメント26を含むことができる(例えば、図8参照)。短縮遠位セグメント26は、約15mm〜約25mm、好ましくは約20mmの均一な直径と、約10mm〜約30mm、好ましくは約20mmの長手方向の長さとを有する円筒形とすることができる。短縮遠位セグメント26の遠位端は、ステント12の遠位端を形成する。短縮遠位セグメント26を有するプロテーゼ10が移植された場合、移植されたプロテーゼ10の遠位端は幽門括約筋の近位に配置される。
【0058】
ステント12はさらに、遠位ステントフランジ24を含むことができる(例えば、図5A図6参照)。図5Aおよび図5Bに示すステント12は、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を含む近位ステント部と、遠位ステントフランジ24を含む遠位ステント部とを有するとして図示されている。後に詳述するように、拡張ステントセグメント16はその最も広い点において、近位ステントセグメント18の直径よりも大きく、近位ステントフランジ20および遠位ステントフランジ24の直径と等しいか、またはこれらよりも大きな直径を有する。
【0059】
プロテーゼ10は、拡張ステントセグメント16と遠位ステントフランジ24とを係合する接続セグメント22を含むことができる(例えば、図5A図6参照)。後に詳述するように、接続セグメント22は(例えば図5Aおよび図5Bのような、結合部によって支持されているか、または支持されていない)ポリマーカバー14のセクションであっても、(例えば図6のような)編組セグメントであってもよい。
【0060】
A.2.a.近位ステントフランジ
近位ステントフランジ20は、例えば図5A図8に示すプロテーゼ10が移植された時に、食道の遠位領域の壁に沿って拡張することによって、食物または液体がプロテーゼと食道壁との間を通過することを防止するように構成される。
【0061】
近位ステントフランジ20は可変の直径を有する。近位ステントフランジ20は、近位ステントフランジ20の近位端が近位ステントフランジ20の遠位端よりも大きな直径を有するように外方に拡張する(例えば、図5A図8参照)。近位ステントフランジ20は均一な直径を有する第一セクションと、テーパ状の直径を有する第二セクションとを有することができる(例えば、図5A図8参照)。
【0062】
近位ステントフランジ20は、約20mm〜約40mm、好ましくは約30mmの長さと、拡張された時にその最も広い点において約20mm〜約30mm、好ましくは約25mmとなる直径とを有することができる。その最も広い点における近位ステントフランジ20の直径は、近位ステントセグメントの均一な直径よりも大きい(例えば、図5A図8参照)。近位ステントフランジ20についてのこれらの寸法は例示のために提供されたものであり、限定のために提供されたものではない。近位ステントフランジ20の寸法は、様々な解剖学的構造に適合するように修正可能であることが認識され得る。
【0063】
A.2.b.近位ステントセグメント
近位ステントセグメント18は、近位ステントフランジ20から遠位に延びる。近位ステントセグメント18は、近位ステントフランジ20のテーパ状の第二セクションから遠位に延びていてもよい(例えば、図5A図8参照)。近位ステントセグメント18は、例えば図5A図8に示すプロテーゼ10が移植された時に、Z線にわたって食道の遠位領域から胃の近位まで延びるように構成される。
【0064】
近位ステントセグメント18は、拡張された時に約10mm〜約20mm、好ましくは約15mmとなる均一な直径と、約100mm〜約200mm、好ましくは約150mmの長さと、これらの組み合わせとを有することができる。近位ステントセグメント18についてのこれらの寸法は例示のために提供されたものであり、限定のために提供されたものではない。当業者であれば、近位ステントセグメント18の寸法を様々な解剖学的構造に適合するように修正することができると認識するであろう。
【0065】
A.2.c.拡張ステントセグメント
拡張ステントセグメント16は、近位ステントセグメント18から遠位に延びる。拡張ステントセグメント16は、例えば図5A図8に示すプロテーゼ10が移植された時に、肥満手術によって生じた胃の前庭内に載置されるように構成される。拡張ステントセグメント16は近位ステントフランジ20と協働して、プロテーゼ10の遠位または近位への移動を抑制することができる。
【0066】
拡張ステントセグメント16は、拡張された時に可変の直径を有することができる(例えば、図5A図8参照)。拡張ステントセグメント16は、拡張ステントセグメント16の第一端が第二端よりも小さな直径を有するような卵形の形状を有することができる(例えば、図5A図8参照)。拡張ステントセグメント16は、約40mm〜約80mm、好ましくは約60mmの長さと、拡張された時にその最も広い点において約30mm〜約70mm、好ましくは約50mmとなる直径とを有することができる。拡張ステントセグメント16はその最も広い点において、近位ステントフランジ20の直径よりも大きく、近位ステントセグメント18の均一な直径よりも大きな直径を有する(例えば、図5A図8参照)。拡張ステントセグメント16についてのこれらの寸法は例示のために提供されたものであり、限定のために提供されたものではない。当業者であれば、拡張ステントセグメント16の寸法を様々な解剖学的構造に適合するように修正することができると認識するであろう。
【0067】
A.2.d.接続セグメント
接続セグメント22は、プロテーゼが移植された時に幽門括約筋に及ぶように構成および配置される。従って、接続セグメント22はプロテーゼの幽門括約筋セグメントと呼ぶこともできる。接続セグメント22は、図5A図6に示すプロテーゼ10が移植された時に、幽門括約筋の開閉がプロテーゼ10によって妨げられないように構成される。例えば、接続セグメント22は、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されるか、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されるか、またはその両方とすることにより、プロテーゼ10が移植された時に幽門括約筋の正常な開閉を許容することができる。接続セグメント22が径方向に拡張および収縮する場合、プロテーゼ10の内腔を通る流れを調整することができる。
【0068】
接続セグメント22は拡張ステントセグメント16から遠位に延び、拡張ステントセグメント16と遠位ステントフランジ24とを係合する(例えば、図5A図6参照)。従って、ステント12は近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、接続セグメント22と、遠位ステントフランジ24とを有する。
【0069】
接続セグメント22は、ポリマーカバー14のセクション(例えば、図5A参照)、結合部30(例えば、図5B参照)、編組セグメント(例えば、図6参照)、およびこれらの組み合わせによって形成することができる。接続セグメント22は、約30mm〜約70mm、好ましくは約50mmの長さと、拡張された時に約15mm〜約25mm、好ましくは約20mmとなる直径とを有することができる。接続セグメント22の直径は均一であってもよい。接続セグメント22の直径はその最も広い点において、拡張ステントセグメントの直径よりも小さくすることができる(例えば、図5A図6参照)。接続セグメント22の寸法は例示のために提供されたものであり、限定のために提供されたものではない。当業者であれば、接続セグメント22の寸法を様々な解剖学的構造に適合するように修正することができると認識するであろう。
【0070】
結合部30のいくつかの非限定的な例には、長手方向ストラット、縫合糸、およびこれらの組み合わせが含まれる。結合部30はステントフィラメントとは別個の要素であっても、ステントフィラメントの一つ以上によって形成されていてもよい。結合部の数は、プロテーゼが移植されたと時に幽門括約筋の正常な機能を妨げないように設定されるべきである。接続セグメントは1つ、2つ、3つ、または4つの結合部30を有することができる。複数の結合部30が存在する場合、結合部は周方向に間隔を空けて配置され、長手方向に延びることができる。結合部30は、約30mm〜約70mm、好ましくは約50mmの長さを有することができる。
【0071】
ポリマーカバーは、周方向に隣接する結合部によって画定される開口部の上に延在する。このように、周方向に隣接する結合部によって画定される開口部を通して材料がプロテーゼの内腔に流入/流出することはできない。従って、プロテーゼ10は、二つの血管の分岐部分に移植されるようには構成および配置されない。
【0072】
結合部がステントフィラメントとは別個の要素である場合、結合部は、任意の適切な方法で近位および遠位ステントに固定することができる。例えば、結合部は近位および遠位ステントに溶接されていてもよい。
【0073】
一つ以上のステントフィラメントが結合部を形成する場合、ステントフィラメントは編組ストラットを形成するように編組するか、非編組マルチフィラメントストラットに形成することができる。この種類の結合部は、近位ステントおよび遠位ステントの少なくとも一方を形成する同じステントフィラメントによって形成されることから、「一体的結合部」と呼ぶことができる。
【0074】
接続セグメント22が編組セグメントである場合、編組セグメントは、約30°〜90°の非常に低い編組角度で編組されたステントフィラメントによって形成される。小さな編組角度は、より大きな編組角度と比較して径方向の力が小さくなり、短縮されにくくなる。例えば、60°の編組角度を有する直径20mmの接続セグメント22は、直径6mmに圧縮された場合、7mmだけ伸長するであろう。径方向の圧力は、編組角度が120°である場合と比較して約5倍小さくなるであろう。
【0075】
編組接続セグメント22を形成するステントフィラメントはまた、近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、遠位ステントフランジ24とを形成することができる。この実施形態において、ステントフィラメントは、近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、遠位ステントフランジ24とを形成するように、約100°〜約140°の編組角度で編組される。
【0076】
あるいは、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、拡張ステントセグメント16、および遠位ステントフランジ24がレーザー切断される場合、編組接続セグメント22は任意の適切な方法で、拡張ステントセグメント16および遠位ステントフランジ24に取り付けることができる。
【0077】
A.2.e.遠位ステントフランジ
遠位ステントフランジ24は、接続セグメント22から遠位に延びる(例えば、図5A図6参照)。遠位ステントフランジ24は、プロテーゼ10が移植された時に、空腸の壁に沿って拡張することによって、食物または液体がプロテーゼと腸壁との間を通過することを防止するように構成される。
【0078】
遠位ステントフランジ24は、遠位ステントフランジ24の遠位端が遠位ステントフランジ24の近位端よりも大きな直径を有するように外方に拡張する(例えば、図5A図6参照)。遠位ステントフランジ24はテーパ状の直径を有する第一セクションと、均一な直径を有する第二セクションとを有することができる(例えば、図5A図6参照)。遠位ステントフランジ24の第二セクションは、ステント12の遠位端を形成することができる。
【0079】
遠位ステントフランジ24は、約20mm〜約40mm、好ましくは約30mmの長さと、拡張された時にその最も広い点において約20mm〜約30mm、好ましくは約25mmの直径とを有することができる。遠位ステントフランジ24の直径はその最も広い点において、接続セグメント22の直径よりも大きい(例えば、図5A図6参照)。遠位ステントフランジ24の寸法は例示のために提供されたものであり、限定のために提供されたものではない。当業者であれば、遠位ステントフランジ24の寸法を様々な解剖学的構造に適合するように修正することができると認識するであろう。
【0080】
A.3.プロテーゼの追加の任意選択的な特徴
プロテーゼ10は、X線、MRI、超音波等の画像診断技術によって検出可能な一つ以上の領域、バンド、コーティング、部材等を含むことができる。いくつかの実施形態において、ステントの少なくとも一部は少なくとも部分的に放射線不透過性である。
【0081】
プロテーゼ10はまた、治療剤の送達のための一つ以上の機構を含むことができる。治療剤はしばしばコーティング、またはプロテーゼの表面領域上に配置された材料の他の(単一または複数の)層の形態で適用され、プロテーゼの移植部位またはそれに隣接する領域で解放されるように適合されるであろう。
【0082】
治療剤は、非遺伝物質、遺伝物質、細胞物質等の薬剤または他の医薬品であってもよい。適切な非遺伝子治療剤のいくつかの例には、ヘパリン等の抗血栓形成剤、ヘパリン誘導体、血管細胞増殖促進剤、成長因子阻害剤、パクリタキセルが含まれるが、これらに限定されない。薬剤に遺伝子治療剤が含まれる場合、遺伝物質には、DNA、RNA、およびこれらそれぞれの誘導体および成分、ヘッジホッグタンパク質等が含まれるが、これらに限定されない。治療剤に細胞物質が含まれる場合、細胞物質には、ヒト由来の細胞および非ヒト由来の細胞の少なくとも一方、およびこれらそれぞれの成分および誘導体が含まれ得るが、これらに限定されない。治療剤にポリマー剤が含まれる場合、ポリマー剤は、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロックコポリマー(SIBS)、ポリエチレンオキシド、シリコーンゴム、および他の任意の適切な基材の少なくとも一つとすることができる。
【0083】
A.4.実施例
上述のプロテーゼ10の例示は、以下の非限定的な実施例において提供される。
実施例1
図5Aは、単一のステント層を有するプロテーゼ10の第一実施例を示す。プロテーゼ10は、ポリマーカバー14で完全に覆われたステント12を有する。ポリマーカバー14は、プロテーゼ10の外面を形成する。図5Aに示すプロテーゼ10は、スリーブ状胃切除術の後に移植することができる。
【0084】
ステント12は近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、遠位ステントフランジ24とを有する。近位ステントフランジ20はステントの近位端を画定し、遠位ステントフランジ24はステント12の遠位端を画定する。
【0085】
近位ステントフランジ20および遠位ステントフランジ24は、外方に拡張している。近位ステントフランジ20の近位端は、その遠位端よりも大きな直径を有している。遠位ステントフランジ24の遠位端は、その近位端よりも大きな直径を有している。
【0086】
近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16は近位ステントを形成し、遠位ステントフランジ24は遠位ステントを形成する。近位ステントフランジ20は約30mmの長さ、近位ステントセグメント18は約150mmの長さ、拡張ステントセグメント16は約60mmの長さを有しており、近位ステントは全体で約240mmの長手方向の長さを有している。遠位ステントは、約30mmの長手方向の長さを有している。
【0087】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
接続セグメント22は、ポリマーカバー14の管状セクションによって形成される。接続セグメント22は、約50mmの長手方向の長さと、約20mmの直径とを有している。接続セグメント22は、拡張ステントセグメント16と遠位ステントフランジ24とを係合する。
【0088】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
図5Aに示すプロテーゼ10が消化管に移植された時、プロテーゼ10の近位端は食道内に配置され、プロテーゼ10の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置され、接続セグメント22の近位端は幽門括約筋の近位に配置され、接続セグメント22の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置される。接続セグメント22は、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されるか、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されるか、またはその両方とすることにより、プロテーゼ10が移植された時に幽門括約筋の正常な開閉を許容することができる。
【0089】
実施例2
図5Bは、単一のステント層を有するプロテーゼ10の第二実施例を示す。プロテーゼ10は、ポリマーカバー14で完全に覆われたステント12を有する。ポリマーカバー14は、プロテーゼ10の外面を形成する。図5Bに示すプロテーゼ10は、スリーブ状胃切除術の後に移植することができる。
【0090】
ステント12は近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、遠位ステントフランジ24とを有する。近位ステントフランジ20はステントの近位端を画定し、遠位ステントフランジ24はステント12の遠位端を画定する。
【0091】
近位ステントフランジ20および遠位ステントフランジ24は、外方に拡張している。近位ステントフランジ20の近位端は、その遠位端よりも大きな直径を有している。遠位ステントフランジ24の遠位端は、その近位端よりも大きな直径を有している。
【0092】
近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16は近位ステントを形成し、遠位ステントフランジ24は遠位ステントを形成する。近位ステントフランジ20は約30mmの長さ、近位ステントセグメント18は約150mmの長さ、拡張ステントセグメント16は約60mmの長さを有しており、近位ステントは全体で約240mmの長手方向の長さを有している。遠位ステントは、約30mmの長手方向の長さを有している。
【0093】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
接続セグメント22は、約50mmの長手方向の長さと、約20mmの直径とを有している。接続セグメント22は、拡張ステントセグメント16と遠位ステントフランジ24とを接合する。接続セグメント22は、ポリマーカバー14の管状セクションと結合部30とを含む。上述のように、結合部30はステントフィラメントと別個の要素としても、ステントフィラメントから形成してもよく、非編組ストラットまたは編組ストラット、およびこれらの組み合わせとすることができる。
【0094】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
図5Bに示すプロテーゼ10が消化管に移植された時、プロテーゼ10の近位端は食道内に配置され、プロテーゼ10の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置され、接続セグメント22の近位端は幽門括約筋の近位に配置され、接続セグメント22の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置される。接続セグメント22は、結合部30の有無にかかわらず、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されるか、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されるか、またはその両方とすることにより、プロテーゼ10が移植された時に幽門括約筋の正常な開閉を許容することができる。
【0095】
実施例3
図6は、単一のステント層を有するプロテーゼ10の第三実施例を示す。プロテーゼ10はステント12と、ポリマーカバー14とを有する。ポリマーカバー14は、プロテーゼ10の外面を形成する。図6に示すプロテーゼ10は、スリーブ状胃切除術の後に移植することができる。
【0096】
ステント12は近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16と、編組接続セグメント22と、遠位ステントフランジ24とを有する。図6は、編組接続セグメント22を部分的に閉じた/収縮した状態で示している。
【0097】
近位ステントフランジ20および遠位ステントフランジ24は、外方に拡張している。近位ステントフランジ20の近位端は、その遠位端よりも大きな直径を有している。遠位ステントフランジ24の遠位端は、その近位端よりも大きな直径を有している。
【0098】
近位ステントフランジ20は約30mmの長さと、その最も広い点において約30mmの直径とを有しており、近位ステントセグメント18は約150mmの長さと、約15mmの均一な直径とを有しており、拡張ステントセグメント16は約60mmの長さと、その最も広い点において約50mmの直径とを有しており、編組接続セグメント22は約57mmの収縮された移植時の長さと、約6mmの収縮された移植時の直径と、約50mmの拡張された移植時の長さと、約20mmの拡張された移植時の直径とを有しており、遠位ステントフランジ24は約20mmの長さと、その最も広い点において約20mmの直径とを有しており、ステント12は全体で約310mmの長手方向の長さを有している。編組接続セグメント22を形成するステントフィラメントの編組角度は約60°であり、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、拡張ステントセグメント16、および遠位ステントフランジ24を形成するステントフィラメントの編組角度は約120°である。
【0099】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
図6に示すプロテーゼ10が消化管に移植された時、プロテーゼ10の近位端は食道内に配置され、プロテーゼ10の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置され、編組接続セグメント22の近位端は幽門括約筋の近位に配置され、編組接続セグメント22の遠位端は幽門括約筋の遠位の十二指腸内に配置される。編組接続セグメント22は、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されるか、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されるか、またはその両方とすることにより、プロテーゼ10が移植された時に幽門括約筋の正常な開閉を許容することができる。
【0100】
実施例4
図7は、単一のステント層を有するプロテーゼ10の第四実施例を示す。プロテーゼはステント12と、ポリマーカバー14とを有する。ポリマーカバー14は、プロテーゼ10の外面を形成する。図7に示すプロテーゼ10は、スリーブ状胃切除術の後に移植することができる。プロテーゼ10は、約240mmの長手方向の長さを有する。
【0101】
ステント12は近位ステントフランジ20と、近位ステントセグメント18と、拡張ステントセグメント16とを有する。近位ステントフランジ20は、近位ステントフランジ20の近位端がその遠位端よりも大きな直径を有するように外方に拡張している。近位ステントフランジ20は約30mmの長さと、その最も広い点において約30mmの直径とを有しており、近位ステントセグメント18は約150mmの長さを有するとともに、約15mmの均一な直径を有する円筒形であり、拡張ステントセグメント16は約60mmの長さと、その最も広い点において約50mmの直径とを有しており、ステント12は全体で約240mmの長手方向の長さを有している。
【0102】
ポリマーカバー14はシリコーンで形成され、プロテーゼ10の外面を形成する。
図7に示すステント12はさらに、拡張ステントセグメント16から遠位に延びる短縮遠位セグメント26を含んでいてもよい(例えば、図8参照)。短縮遠位セグメント26は、近位ステントセグメント18の均一な直径と等しい均一な直径を有する管状のものとすることができる(例えば、図8参照)。
【0103】
図7に示すプロテーゼ10が消化管に移植された時、プロテーゼ10の近位端は食道内に配置され、プロテーゼ10の遠位端は幽門括約筋の遠位の胃内に配置される。従って、プロテーゼ10が移植された時に、幽門括約筋は正常に機能することができる。
【0104】
B.製造方法
図5Aおよび図5Bに示すような、ステント12およびポリマーカバー14を含むプロテーゼ10を形成する方法は、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を含む近位ステントを形成する工程と、遠位ステントフランジ24を含む遠位ステントを形成する工程と、近位および遠位ステントを覆うとともに接続セグメント22を形成するようにポリマー材料を適用する工程と、結合部を形成する工程と、のうちの一つ以上の工程を含み、近位ステントおよび遠位ステントの少なくとも一方を形成する工程はステントフィラメントを織り込むことを含み、織り込みには編組、編み、および結び目が含まれ、近位ステントフランジ20の近位端はその遠位端よりも大きな直径を有しており、近位ステントセグメント18は均一な直径を有しており、拡張ステントセグメントは卵形の形状を有しており、遠位ステントフランジ24の近位端はその遠位端よりも小さな直径を有しており、結合部はステントフィラメントによって形成され、ステントフィラメントは複数のステントフィラメントであり、複数のステントフィラメントは編組ストラット結合部を形成するように編組され、結合部は別個の要素であるとともに近位および遠位ステントに固定されるという特徴のうちの一つ以上、およびこれらの組み合わせを含む。
【0105】
近位および遠位ステントは二つの異なる編組マンドレル上で製造され、次いで、プロテーゼ10および接続セグメント22を形成するようにステント12上にポリマー材料を適用するためのコーティングマンドレル上に配置することができる。あるいは、近位および遠位ステントは、プロテーゼ10および接続セグメント22を形成するようにステント12上にポリマー材料を適用するためにも使用されるマンドレル上で製造されてもよい。任意の適切なマンドレルまたは編組マンドレルを使用することができる。
【0106】
結合部30がステントフィラメントから形成される場合、編組マンドレルは、ステントフィラメントを配置して結合部を形成するための長手方向溝を有するセクションを含むことができる。従って、編組マンドレルは例えば、近位ステントを形成するための第一マンドレルセクションと、外側マンドレル表面に延在する長手方向に配向された結合部用の溝を有する第二マンドレルセクションと、遠位ステントを形成するための第三マンドレルセクションとを有することができる。このように、第一マンドレルセクションは近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を形成するように構成および配置され、第二マンドレルセクションは接続セグメント22を形成するように構成および配置され、第三マンドレルセクションは遠位ステントフランジ24を形成するように構成および配置される。
【0107】
図6に示すような、ステント12およびポリマーカバー14を含むプロテーゼ10を形成する方法は、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、拡張ステントセグメント16、編組接続セグメント22、および遠位ステントフランジ24を含むステントを形成する工程と、ステント12を覆うようにポリマーを適用する工程と、のうちの一つ以上の工程を含み、近位ステントおよび遠位ステントの少なくとも一方を形成する工程はステントフィラメントを織り込むことを含み、織り込みには編組、編み、および結び目が含まれ、近位ステントフランジ20の近位端はその遠位端よりも大きな直径を有しており、近位ステントセグメント18は均一な直径を有しており、接続セグメント22は円筒形であり、ステントフィラメントは編組されており、この場合の接続セグメント22を形成するステントフィラメントの編組角度はステント12の他のセグメント16、18、20、24を形成するステントフィラメントの編組角度よりも小さく、ステントフィラメントは編組されており、この場合の接続セグメント22を形成するステントフィラメントの編組角度は約60°であり、ステントフィラメントは編組されており、この場合のステント12の他のセグメント16、18、20、24を形成するステントフィラメントの編組角度は約120°であり、遠位ステントフランジ24の近位端はその遠位端よりも小さな直径を有するという特徴のうちの一つ以上、およびこれらの組み合わせを含む。
【0108】
図6に示すステントを編組するための編組マンドレルは、第一角度でステントフィラメントを編組するための第一マンドレルセクションと、第一角度よりも小さな第二角度でステントフィラメントを編組するための第二マンドレルセクションと、第一角度でステントフィラメントを編組するための第三マンドレルセクションとを有することができ、第一角度は約100°〜約140°であるとともに第二角度は約30°〜約90°であり、第一マンドレルセクションは近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を形成するように構成および配置され、第二マンドレルセクションは編組接続セグメント22を形成するように構成および配置され、第三マンドレルセクションは遠位ステントフランジ24を形成するように構成および配置されるという特徴のうちの一つ以上、およびこれらの組み合わせを含む。
【0109】
図7に示すような、ステント12およびポリマーカバー14を含むプロテーゼ10を形成する方法は、近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を含むステント12を形成する工程と、ステント12を覆うようにポリマーを適用する工程と、のうちの一つ以上の工程を含み、近位ステントおよび遠位ステントの少なくとも一方を形成する工程はステントフィラメントを織り込むことを含み、織り込みには編組、編み、および結び目が含まれ、近位ステントフランジ20の近位端はその遠位端よりも大きな直径を有しており、近位ステントセグメント18は円筒形であるという特徴のうちの一つ以上、およびこれらの組み合わせを含む。図7に示すステントを編組するために使用可能なマンドレルの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、同一出願人の米国特許出願公開第2011/0307070号に開示されている。
【0110】
C.使用方法
本明細書に記載のプロテーゼ10は、肥満手術後のリークを治療するために使用することができ、該方法は、プロテーゼを配置する工程であって、プロテーゼの近位端を食道内に配置するとともに、プロテーゼの遠位端を幽門括約筋の近位または幽門括約筋の遠位のいずれかに配置する工程と、プロテーゼが、径方向の力が全く作用しないか、またはごくわずかしか作用しないように構成および配置されるか、幽門括約筋の開閉に伴って径方向に拡張および収縮するように構成および配置されるか、またはその両方とすることにより、プロテーゼ10が移植された時に幽門括約筋の正常な開閉を許容することと、プロテーゼがステント12およびポリマーカバー14を含み、ポリマーカバー14がプロテーゼの外面を形成することと、ステント12が近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、および拡張ステントセグメント16を含み、拡張ステントセグメントがプロテーゼの遠位端を形成することと、ステント12が近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、拡張ステントセグメント16、編組接続セグメント22、および遠位ステントフランジ24を含む編組ステントであり、ステントフィラメントが編組接続セグメント22を形成するように第一角度で編組されることと、ステントフィラメントが近位ステントフランジ20、近位ステントセグメント18、拡張ステントセグメント16、および遠位ステントフランジ24を形成するように第二編組角度で編組され、第二編組角度が第一編組角度よりも大きいことと、第一編組角度が約100°〜約140°であるとともに第二編組角度が約30°〜約90°であることと、ステント12がプロテーゼ10の内側層を形成し、ポリマーカバー14がプロテーゼ10の外側層を形成することと、のうちの一つ以上、およびこれらの組み合わせを含む。
【0111】
上記開示は例示的なものであり、網羅的なものではない。この説明は、当業者に多くの変形物および代替物を示唆するであろう。個々の図に示されて上述された様々な要素は、必要に応じて組み合わせたり、組み合わせるために修正したりすることができる。これらの代替物および変形物はすべて、「含む(comprising)」という用語が「含むが、これに限定されない(including, but not limited to)」という意味を有する特許請求の範囲に含まれることが企図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8