特許第6542885号(P6542885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルティア・インコーポレーテッドの特許一覧

特許6542885広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層
<>
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000009
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000010
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000011
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000012
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000013
  • 特許6542885-広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542885
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】広い温度範囲にわたって音響減衰特性を有する多層中間層
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20190628BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B32B27/30 102
   C03C27/12 D
【請求項の数】28
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2017-520907(P2017-520907)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公表番号】特表2017-533841(P2017-533841A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】US2015055633
(87)【国際公開番号】WO2016061295
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】14/882,317
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/514,641
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェンジー
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010671(JP,A)
【文献】 特開2010−037193(JP,A)
【文献】 特開平06−000926(JP,A)
【文献】 特開平04−254444(JP,A)
【文献】 特開2001−316140(JP,A)
【文献】 特開2013−032261(JP,A)
【文献】 特表2008−532817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00−43/00
C03C27/00−29/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む2種類以上のポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤が混合及び溶融押出されることで少なくとも1つの軟質層が形成され、
(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.16の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項2】
第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は5重量%〜50重量%の量で存在する、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項3】
第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は25重量%〜50重量%の量で存在する、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項4】
ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項5】
第3のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量は、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂又は第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル含量と同等である、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項6】
第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は、少なくとも2.0重量%である、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項7】
第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は、少なくとも3.0重量%である、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項8】
第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂と第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のガラス転移温度(T)の間の差は、少なくとも3.0℃である、請求項1に記載のポリマー中間層。
【請求項9】
第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;
第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む2種類以上のポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤が混合及び溶融押出されることで少なくとも1つの軟質層が形成され、
(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.16の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は5重量%〜50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項10】
第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む2種類以上のポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤が混合及び溶融押出されることで少なくとも1つの軟質層が形成され、
ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項11】
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、少なくとも0.40のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度を有する軟質層と;
を含み;そして
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項12】
軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である、請求項11に記載のポリマー中間層。
【請求項13】
軟質層中の樹脂組成物のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度は、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度よりも高い、請求項12に記載のポリマー中間層。
【請求項14】
軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である、請求項11に記載のポリマー中間層。
【請求項15】
軟質層中の樹脂組成物のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度は、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度よりも高い、請求項14に記載のポリマー中間層。
【請求項16】
ポリマー中間層の軟質層中の可塑化樹脂組成物は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、請求項11に記載のポリマー中間層。
【請求項17】
請求項11に記載のポリマー中間層の製造方法であって、
軟質層中の樹脂組成物は、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される、ポリマー中間層の製造方法。
【請求項18】
請求項11に記載のポリマー中間層の製造方法であって、
軟質層中の樹脂組成物は、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される、ポリマー中間層の製造方法。
【請求項19】
ポリマー中間層は第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、請求項11に記載のポリマー中間層。
【請求項20】
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物を含み、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及びポリビニルアルコール含量に基づく組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤を含む軟質層と;
を含み;
軟質層はポリビニルアルコール含量に基づく組成における第3の分散度を有し、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第3の分散度は少なくとも0.40であり、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第3の分散度は、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第1の分散度及びポリビニルアルコール含量に基づく組成における第2の分散度のいずれよりも高く;
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項21】
組成におけるポリビニルアルコール含量に基づく第3の分散度は、組成におけるポリビニルアルコール含量に基づく第1の分散度よりも少なくとも10%高く、組成におけるポリビニルアルコール含量に基づく第2の分散度よりも少なくとも10%高い、請求項20に記載のポリマー中間層。
【請求項22】
軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である、請求項20に記載のポリマー中間層。
【請求項23】
軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である、請求項20に記載のポリマー中間層。
【請求項24】
ポリマー中間層の軟質層中の可塑化樹脂組成物が20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、請求項20に記載のポリマー中間層。
【請求項25】
ポリマー中間層は第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、請求項20に記載のポリマー中間層。
【請求項26】
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、軟質層の樹脂組成物は、8〜16重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び少なくとも0.40のポリビニルアルコール含量に基づく組成における分散度を有する軟質層と;
を含み;
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
【請求項27】
軟質層のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、1モル%〜28モル%の平均残留酢酸ビニル含量を有する、請求項26に記載のポリマー中間層。
【請求項28】
軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量及びポリビニルアルコール含量に基づく組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及びポリビニルアルコール含量に基づく組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、軟質層は少なくとも0.40のポリビニルアルコール含量に基づく組成における第3の分散度を有し、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第3の分散度は、ポリビニルアルコール含量に基づく組成における第1の分散度及びポリビニルアルコール含量に基づく組成における第2の分散度のいずれよりも高い、請求項26に記載のポリマー中間層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、多層ガラスパネル用のポリマー中間層、及び少なくとも1つのポリマー中間層シートを有する多層ガラスパネルの分野に関する。特に、本発明は、複数の熱可塑性ポリマー層を含む吸音ポリマー中間層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]多層パネルは、一般に、基材(例えばガラス、ポリエステル、ポリアクリレート、又はポリカーボネートであるが、これらに限定されない)の2つのシートを含み、その間に1以上のポリマー中間層がサンドイッチされているパネルである。積層された多層ガラスパネルは、建築用窓の用途、並びに自動車及び航空機の窓において通常的に用いられている。これらの用途は、通常は積層安全ガラスと呼ばれる。その主要な機能は、物体からの衝撃によって引き起こされるもののようなエネルギーを、開口部を通して侵入させないで、又はガラスの破片を分散させないで吸収して、それによって囲まれた区域内の物体又は人間に対する損傷又は被害を最小にすることである。安全ガラスはまた、他の有益な効果を与えるため、例えば音響ノイズを減衰させ、UV及び/又はIR光の透過を減少させ、及び/又は窓の開口部の外観及び美的魅力を増大させるために用いることもできる。
【0003】
[003]安全ガラスにおいて見られる熱可塑性ポリマーは、ポリ(ビニルアセタール)又はポリ(ビニルブチラール)(PVB)のような熱可塑性ポリマーの単一の層から構成することができ、これは、ガラスを通る音の伝達を減少させるように改変された1以上の物理特性を有していた。かかる音響減衰についての従来の試みは、低いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーを用いることを含んでいた。他の試みは、熱可塑性ポリマーの2以上(例えば3つ)の隣接する層を用いる多層中間層を含んでおり、これらの層は異なる特性を有する(例えば、米国特許第5,340,654号明細書、米国特許第5,190,826号明細書、及び米国特許第7,510,771号明細書を参照)。これらの多層中間層は、通常は、低い残留ヒドロキシル含量を有する単一のポリ(ビニルアセタール)樹脂を有する軟質層、及び相当により高い残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂を有する2つのより硬質の外側層を含む。軟質層は音響減衰特性を与え、一方、複数の硬質層は中間層の取扱い性、加工性、及び機械的強度を与える。硬質の外側層は、一般に音響減衰特性には非常に少ししか寄与しない。
【0004】
[004]多層ガラスパネルを通る音の伝達を減少させる多層中間層(少なくとも2つの隣接するポリマー層を含む)を製造する従来の試みは、2以上の層の間の種々の組成の順列又は相違に依拠している。従来の多層中間層は、単一の樹脂を有し、単一のガラス転移温度及び組成におけるより低い分散度を示す軟質層を有する。1つの従来技術の方法においては、異なる炭素長のアセタールを用いることが教示されている(例えば米国特許第5,190,826号明細書を参照)。他の従来技術の方法においては、異なる重合度を用いることが教示されている(例えば、特開平03−124441号公報、又は米国特許出願公開第2003/0139520A1号明細書を参照)。層を変化させる他の方法は、組成差として2つの隣接する層の1つにおいて少なくとも5モル%の残留アセテートレベルを有するPVB樹脂を用いることである(例えば、特許3377848号公報、及び米国特許第5,340,654号明細書を参照)。最後に、他の方法においては、異なる可塑剤濃度を有するポリ(ビニルブチラール)樹脂を用いている(例えば米国特許第7,510,771号明細書を参照)。これらの中間層は全て、狭い温度範囲内のみで遮音特性を与え、組成における狭い分布及び低い分散度を有する樹脂組成物を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,340,654号明細書
【特許文献2】米国特許第5,190,826号明細書
【特許文献3】米国特許第7,510,771号明細書
【特許文献4】米国特許第5,190,826号明細書
【特許文献5】特開平03−124441号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0139520A1号明細書
【特許文献7】特許第3377848号公報
【特許文献8】米国特許第5,340,654号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[005]これらの中間層においては、軟質層のポリ(ビニルアセタール)樹脂中における残留ヒドロキシル含量及び可塑剤の量は、中間層が、乗物及び建物に取り付けられる風防ガラス及び窓のような多層ガラスパネルに関して周囲適用温度において最適の遮音特性を与えるように最適化されているが、周囲温度より高いか又は低い温度においては、遮音特性は大きく低下する可能性がある。例えば、多層中間層を含む多層ガラスパネルがそのコインシデンス周波数領域(例えばおよそ5,000Hzの領域)において20℃において最大遮音性能を有するように多層中間層組成物が最適化されている場合には、適用温度を約10℃変化させる(温度を10℃に低下させるか、又は温度を30℃に上昇させる)と、遮音性が数デシベル又はそれ以上のように大きく減少する。温度を更に低下又は上昇させると、遮音性能が更により多く減少する。
【0007】
[006]更に、従来の多層中間層を用いて製造される多層ガラスパネルは、世界の1つの地域においては周囲温度において望ましい遮音性を有することができるが、周囲温度が相違する世界の他の地域においては、遮音性はより低くなる可能性があり、或いは性能が凡庸でしかなくなる可能性がある。世界の同じ地域においても、季節が一年を通して変化して、温度が大きく上昇又は低下するにつれて、ガラスパネルの遮音性能も変化する。
【0008】
[007]したがって、周囲温度のような1つの温度のみの代わりに広い温度範囲にわたって遮音性能を有する多層中間層を開発する必要性が当該技術において存在する。より具体的には、広い温度範囲にわたって遮音性能を与える少なくとも1つの軟質層を有する多層中間層を開発する必要性が当該技術において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[008]当該技術におけるこれら及び他の問題のために、中でも、1つ又は複数の硬質層、及び1つ又は複数の軟質層を含む多層中間層をここで記載する。幾つかの態様においては、軟質層は組成におけるより広い分布(又はより高い分散度)を有する樹脂組成物を含む。組成における高い分散度を有する樹脂組成物を含む多層中間層は、他の従来の多層中間層よりも広い温度範囲にわたって良好な吸音性能を有する。一態様においては、これらの多層中間層は、可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む第1のポリマー層(硬質層);異なるヒドロキシル含量を有する2種類以上の可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを含む第2のポリマー層(軟質層);及び可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む第3のポリマー層(硬質層);を含む。一態様においては、これらの多層中間層は、可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む第1のポリマー層(硬質層);組成における高い分散度を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む第2のポリマー層(軟質層);及び可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む第3のポリマー層(硬質層);を含む。幾つかの態様においては、第2のポリマー層を第1のポリマー層と第3のポリマー層の間に配置して、2つの硬質の外側(スキン)層、及び中央の軟質(コア)層を形成する。幾つかの態様においては、第2のポリマー層は、異なるヒドロキシル含量、異なる残留アセテート含量、又は両方を有する2種類以上の可塑化ポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを含む。幾つかの態様においては、軟質層は、2種類以上の樹脂をブレンドすることによって製造される組成における高い分散度を有する樹脂を含む。他の態様においては、軟質層は、本明細書において更に記載するようにして製造される組成における高い分散度を有する樹脂組成物を含む。
【0010】
[009]一態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(damping loss factor)(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。
【0011】
[010]幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.16、又は少なくとも約0.17、又は少なくとも約0.18、又は少なくとも約0.19、又は少なくとも約0.20、又は少なくとも約0.21、又は少なくとも約0.22、又は少なくとも約0.23、又は少なくとも約0.24、或いは少なくとも約0.25の減衰損失係数(η)を有する。
【0012】
[011]幾つかの態様においては、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は、約5重量%〜約50重量%、又は約25重量%〜約50重量%の量で存在する。
[012]幾つかの態様においては、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は、20.0℃未満、又は19.0℃未満、又は18.0℃未満、又は17.0℃未満、又は16.0℃未満、或いは15.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する。幾つかの態様においては、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂と第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のガラス転移温度(T)の間の差は、少なくとも2.0℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも3.0℃、又は少なくとも4.0℃、少なくとも5.0℃である。
【0013】
[013]幾つかの態様においては、第3のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量は、第1のポリ(ビニルブチラール樹脂)又は第2のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量と同等である。幾つかの態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は、少なくとも2.0重量%、又は少なくとも3.0重量%、又は少なくとも4.0重量%、或いは少なくとも5.0重量%である。
【0014】
[014]他の態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は約5重量%〜約50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。幾つかの態様においては、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は約25重量%〜約50重量%の量で存在する。
【0015】
[015]幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.16、又は少なくとも約0.17、又は少なくとも約0.18、又は少なくとも約0.19、又は少なくとも約0.20、又は少なくとも約0.21、又は少なくとも約0.22、又は少なくとも約0.23、又は少なくとも約0.24、或いは少なくとも約0.25の減衰損失係数(η)を有する。
【0016】
[016]幾つかの態様においては、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は、20.0℃未満、又は19.0℃未満、又は18.0℃未満、又は17.0℃未満、又は16.0℃未満、或いは15.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する。幾つかの態様においては、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂と第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のガラス転移温度(T)の間の差は、少なくとも2.0℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも3.0℃、又は少なくとも4.0℃、少なくとも5.0℃である。
【0017】
[017]幾つかの態様においては、第3のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量は、第1のポリ(ビニルブチラール樹脂)又は第2のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量と同等である。幾つかの態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は、少なくとも2.0重量%、又は少なくとも3.0重量%、又は少なくとも4.0重量%、或いは少なくとも5.0重量%である。
【0018】
[018]他の態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。幾つかの態様においては、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は、19.0℃未満、又は18.0℃未満、又は17.0℃未満、又は16.0℃未満、或いは15.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する。
【0019】
[019]幾つかの態様においては、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は、約5重量%〜約50重量%、又は約25重量%〜約50重量%の量で存在する。
[020]幾つかの態様においては、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂と第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のガラス転移温度(T)の間の差は、少なくとも2.0℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも3.0℃、又は少なくとも4.0℃、少なくとも5.0℃である。
【0020】
[021]幾つかの態様においては、第3のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量は、第1のポリ(ビニルブチラール樹脂)又は第2のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量と同等である。幾つかの態様においては、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は、少なくとも2.0重量%、又は少なくとも3.0重量%、又は少なくとも4.0重量%、或いは少なくとも5.0重量%である。
【0021】
[022]幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15、又は少なくとも約0.16、又は少なくとも約0.17、又は少なくとも約0.18、又は少なくとも約0.19、又は少なくとも約0.20、又は少なくとも約0.21、又は少なくとも約0.22、又は少なくとも約0.23、又は少なくとも約0.24、或いは少なくとも約0.25の減衰損失係数(η)を有する。
【0022】
[023]また、ここに開示する、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層の製造方法も開示する。
【0023】
[024]また、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は約5重量%〜約50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層の製造方法も開示する。幾つかの態様においては、ここに開示するように、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は約25重量%〜約50重量%の量で存在する。
【0024】
[025]また、ここに開示する、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層の製造方法も開示する。
【0025】
[026]一態様においては、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;そして、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。
【0026】
[027]他の態様においては、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物を含み、組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤を含む軟質層;を含み;軟質層は組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は少なくとも0.40であり、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高く;ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。
【0027】
[028]他の態様においては、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、軟質層の樹脂組成物は、約8〜約16重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層を開示する。
【0028】
[029]幾つかの態様においては、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である。
【0029】
[030]幾つかの態様においては、軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度は、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い。
【0030】
[031]幾つかの態様においては、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である。
【0031】
[032]幾つかの態様においては、軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度は、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い。
【0032】
[033]幾つかの態様においては、ポリマー中間層の軟質層中の可塑化樹脂組成物は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する。
[034]幾つかの態様においては、軟質層中の樹脂組成物は、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される。
【0033】
[035]幾つかの態様においては、軟質層中の樹脂組成物は、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される。
【0034】
[036]幾つかの態様においては、ポリマー中間層は第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている。
[037]幾つかの態様においては、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度よりも少なくとも10%高く、組成における第2の分散度よりも少なくとも10%高い。
【0035】
[038]幾つかの態様においては、軟質層のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、約1モル%〜約28モル%の平均残留酢酸ビニル含量を有する。
[039]幾つかの態様においては、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量及び組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、軟質層は少なくとも0.40の組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高い。
【0036】
[040]また、多層パネルも開示する。本多層パネルは、ガラスのような少なくとも1つの剛性の基材、幾つかの態様においては2つの剛性の基材、及びここに開示するポリマー中間層又は多層ポリマー中間層を含む。このパネルは向上した遮音特性を有する。
【0037】
[041]また、ここに開示する、向上した遮音性を有し、少なくとも1つの軟質層及び1つの硬質層を含むポリマー中間層の製造方法も開示する。
[042]また、向上した遮音性を有し、少なくとも1つの軟質層及び1つの硬質層を含み、軟質層中の樹脂組成物は、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造されるポリマー中間層の製造方法も開示する。
【0038】
[043]また、向上した遮音性を有し、少なくとも1つの軟質層及び1つの硬質層を含み、軟質層中の樹脂組成物は、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造されるポリマー中間層の製造方法も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】[044]図1は、本発明のコア層樹脂(DR−1)及び比較コア層樹脂(CR−1)に関する樹脂組成の分布を示すグラフである。
図2】[045]図2は、本発明のコア層樹脂(DR−5)及び比較コア層樹脂(CR−1)に関する樹脂組成の分布を示すグラフである。
図3】[046]図3は、本発明の中間層(DI−5)及び比較中間層(CI−2)に関する10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示すグラフである。
図4】[047]図4は、本発明の中間層(DI−14)及び比較中間層(CI−2)に関する10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示すグラフである。
図5】[048]図5は、本発明の中間層(DI−22)及び比較中間層(CI−2)に関する10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示すグラフである。
図6】[049]図6は、どのようにして15%ピーク高さを計算するかを図式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[050]ここでは中でも、第1の樹脂と第2の樹脂の混合物を含む少なくとも1つの軟質コア層、及び少なくとも1つの硬質スキン層を含み、第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量(重量基準のPVOH%として測定)は第1の樹脂における残留ヒドロキシル含量よりも高い、向上した遮音性を有する多層中間層を記載する。幾つかの態様においては、第2の樹脂の残留ヒドロキシル含量は、1つ又は複数のスキン層における残留ヒドロキシル含量よりも低い。第1の樹脂及び第2の樹脂は、それぞれ1つのガラス転移温度(T)を有し、第1の樹脂と第2の樹脂のガラス転移温度は異なる。ここではまた中でも、組成における高い分散度を有する樹脂を含む少なくとも1つの軟質層、及び少なくとも1つの硬質層を含み、軟質層樹脂における組成における分散度(下記において規定する)は少なくとも0.40である、広い温度範囲にわたって向上した遮音性を有する多層中間層を記載する。幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.16、或いは10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.17、又は少なくとも0.18、又は少なくとも0.19、又は少なくとも0.20、又は少なくとも0.21、又は少なくとも0.22、又は少なくとも0.23、又は少なくとも0.24、又は少なくとも0.25、或いはそれ以上の減衰損失係数(η)を有する。
【0041】
[051]下記に記載するように、幾つかの方法でより広い分布又は高い(即ち少なくとも0.40又はそれ以上の)分散度を有する軟質層樹脂組成物を製造することが可能である。樹脂組成物は、0.40より高く、又は少なくとも0.41、又は少なくとも0.42、又は少なくとも0.43、又は少なくとも0.44、又は少なくとも0.45、又は少なくとも0.50、又は少なくとも0.55、又は少なくとも0.60、又は少なくとも0.65、或いはそれ以上の分散度を有していてよい。
【0042】
[052]コポリマー、ターポリマー、又は多モノマーのポリマーの特徴は、化学組成、例えばポリマー中の残留ヒドロキシル基及び/又は残留酢酸ビニル基、或いは他の基の量におけるそれらの分散度である。ポリマー中の個々のモノマー基又は官能基の組成は、平均値の周囲の分布を有している。本明細書において用いる化学組成の分布は、「組成における分散度」又は「樹脂組成における分散度」と呼び、これらの用語は本明細書においては互換的に用いられる可能性がある。
【0043】
[053]本明細書において用いる「中間層」とは、風防ガラス及び建物の窓における安全ガラスのような多層ガラス用途において用いることができる任意の熱可塑性の構造体である。「多層」及び「複数の層」という用語は1つより多い層を有する中間層を意味し、多層及び複数の層は互換的に用いることができる。多層中間層は、通常は少なくとも1つの軟質層及び少なくとも1つの硬質層を含む。幾つかの態様においては、1つ又は複数の軟質層は、1以上の硬質層に隣接して及び/又はその間に配することができ、軟質層は、2つの硬質層の間に配する場合にはコア層と呼ぶことがあり、より硬質の外側層はスキン層と呼ぶことがある。他の態様においては、コア層を外側層又はスキン層よりも硬質にして、より軟質の外側又はスキン層、及び硬質のコア層を有する中間層を与えることができる。他の態様においては、多層中間層は3つより多い層を含む。
【0044】
[054]本明細書において用いる「軟質層」又は「より軟質の層」は、ポリマー中間層の層に言及している場合には、中間層中の他の層のものよりも、或いは他の層と比べてより低いガラス転移温度を有する層である。本明細書において用いる「硬質層」又は「より硬質の層」は、中間層中の他の層のものよりも、或いは他の層と比べてより高いガラス転移温度を有する層である。軟質又はより軟質、及び硬質又はより硬質という用語は、層の相対的な特徴であり、2以上の層を比較するためのものである。
【0045】
[055]組成における広い分布又は高い分散度を有するポリマー樹脂の例としては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂のような樹脂が挙げられる。通常のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリ(ビニルアルコール)を酸触媒の存在下において1種類以上のアルデヒド(例えばブチルアルデヒド)でアセタール化することによって形成することができる。得られるポリ(ビニルアセタール)樹脂は、次に、例えば米国特許第2,282,057号明細書及び米国特許第2,282,026号明細書、並びにVinyl Acetal Polymers, Encyclopedia of Polymer Science & Technology, 3版, vol.8, p.381-399, B.E. Wade (2003)に記載されているもののような公知の方法にしたがって分離し、安定化し、乾燥することができる。得られるポリ(ビニルアセタール)樹脂中に存在する残留アルデヒド基、又は残基の全量は、ASTM−D1396によって、又はASTM−D1396滴定法に類似の数百の滴定から較正される近赤外測定によって測定することができる。ポリ(ビニルアセタール)樹脂中のアルデヒド残基の全量はアセタール成分と総称することができ、ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残りは残留ヒドロキシル又はアセテート基を含む。
【0046】
[056]ここに記載するポリ(ビニルブチラール)樹脂のようなポリ(ビニルアセタール)樹脂は、通常は残留ヒドロキシル及び/又は残留アセテート基を含む。本明細書において用いる「残留ヒドロキシル含量」及び「残留アセテート含量」或いは「残留酢酸ビニル含量}という用語は、それぞれ、処理が完了した後に樹脂上に残留しているヒドロキシル及びアセテート基の量を指す。例えば、ポリ(ビニルブチラール)は、ポリ酢酸ビニルをポリ(ビニルアルコール)に加水分解し、次にポリ(ビニルアルコール)をブチルアルデヒドによってアセタール化してポリ(ビニルブチラール)を形成することによって製造することができる。ポリ酢酸ビニルを加水分解するプロセスにおいては、全てのアセテート基がヒドロキシル基に転化する訳ではなく、残留アセテート基が樹脂上に残留する。同様に、ポリ(ビニルアルコール)をアセタール化するプロセスにおいては、全てのヒドロキシル基がアセタール基に転化する訳ではなく、同様に樹脂上に残留ヒドロキシル基が残留する。その結果、殆どのポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリマー鎖の一部として、残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基又はビニルヒドロキシル含量(%)として)、及び残留アセテート基(酢酸ビニル基又は酢酸ビニル含量(%)として)の両方を含む。残留ヒドロキシル含量は重量%で表され、残留アセテート含量はモル%又は重量%で表される。残留ヒドロキシル含量及び残留アセテート含量は両方とも、ASTM−D1396又は上記で議論した同様の方法にしたがって測定される。
【0047】
[057]種々の態様においては、ポリマーは多層パネルにおいて用いるのに好適な任意のポリマーであってよい。代表的なポリマーとしては、ポリビニルアセタール(PVA)(例えばポリ(ビニルブチラール)(PVB)又はポリ(ビニルブチラール)の異性体であるポリ(ビニルイソブチラール)(PVB又はPVisoBとも呼ばれる)、脂肪族ポリウレタン(PU)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(塩化ビニル−co−メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリレート)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、並びに上記の可能な熱可塑性樹脂のいずれかから誘導されるエチレン/カルボン酸コポリマー及びそのイオノマーのような酸コポリマー、上記の組合せなどが挙げられるが、これらに限定されない。PVB及びその異性体のポリビニルイソブチラール、ポリ塩化ビニル、イオノマー、及びポリウレタンが、一般に中間層のために好適なポリマーであり;PVB及びその異性体が特に好ましい。ポリウレタンは異なる硬度を有する可能性がある。代表的なポリウレタンポリマーは、ASTM−D2240にしたがって85未満のショアA硬度を有する。ポリウレタンポリマーの例は、20℃未満のガラス転移温度を有する脂肪族イソシアネートポリエーテルベースのポリウレタンであるAG8451及びAG5050(Woburn, MAのThermedics Inc.から商業的に入手できる)である。EVAポリマー(又はコポリマー)は、種々の量の酢酸ビニル基を含む可能性がある。望ましい酢酸ビニル含量は、一般に約10〜約90モル%である。より低い酢酸ビニル含量を有するEVAは、低温における遮音のために用いることができる。エチレン/カルボン酸コポリマーは、一般に1〜25モル%のカルボン酸含量を有するポリ(エチレン−co−メタクリル酸)及びポリ(エチレン−co−アクリル酸)である。エチレン/カルボン酸コポリマーのイオノマーは、アルカリ金属(例えばナトリウム)及びアルカリ金属(例えばマグネシウム)の水酸化物、アンモニア、又は亜鉛のような遷移金属の他の水酸化物のような塩基でコポリマーを部分的又は完全に中和することによって得ることができる。好適なイオノマーの例としては、Surlyn(登録商標)イオノマー樹脂(Wilmington, DelawareのDuPontから商業的に入手できる)が挙げられる。
【0048】
[058]代表的な多層中間層構造の例としては、PVB/PVB/PVB、PVB/PVisoB/PVB(ここで、PVB又はPVisoB層は、異なる残留ヒドロキシル含量又は異なるポリマー組成を有する2種類以上の樹脂を含む)、PVC/PVB/PVC、PU/PVB/PU、イオノマー/PVB/イオノマー、イオノマー/PU/イオノマー、イオノマー/EVA/イオノマー(ここで、軟質層のPVB(PVisoBを含む)、PU、又はEVAは、異なるガラス転移を有する2種類以上の樹脂を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、硬質及び軟質層は、全て同じか又は異なる出発PVB樹脂を用いるPVBであってよい。樹脂とポリマーの他の組合せは当業者に明らかである。
【0049】
[059]ポリ(ビニルアセタール)又はPVB樹脂のような樹脂組成物に関して組成における広い分布又は高い分散度を達成する1つの方法は、第2の樹脂の残留ヒドロキシル含量(重量基準でPVOH%として測定)が第1の樹脂の残留ヒドロキシル含量と異なる第1及び第2の樹脂の混合物を与えることである。他の方法は、第2の樹脂の残留酢酸ビニル含量(モル基準又は重量基準でPVAc%として測定)が第1の樹脂の残留酢酸ビニル含量と異なる第1及び第2の樹脂の混合物を与えることである。最後に、他の方法は、第2の樹脂の残留ヒドロキシル含量及び残留酢酸ビニル含量が両方とも第1の樹脂の残留ヒドロキシル含量及び残留酢酸ビニル含量と異なる第1及び第2の樹脂の混合物を与えることである。
【0050】
[060]組成における広い分布又は高い分散度は、例えば、個々の樹脂が異なる残留ヒドロキシル含量、残留酢酸ビニル含量、又は両方を有する2種類以上の異なる樹脂をブレンドして樹脂の混合物を形成することによって達成することができる。異なる残留ヒドロキシル含量及び/又は酢酸ビニル含量を有する2種類以上の異なる樹脂を用いて開始することによって、組成における高い分散度を有する樹脂組成物を達成することができる。
【0051】
[061]高い分散度を有する樹脂組成物を得る他の方法は、異なる組成(即ち、異なる加水分解レベル又は加水分解の異なる程度)の少なくとも2種類(又はそれ以上)のポリ(ビニルアルコール)(PVOH)樹脂を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドのようなアルデヒドと反応させて、組成における広い分布又は高い分散度を有する樹脂を製造することによるものである。例えば、PVOH樹脂の少なくとも1つは約95%以上の加水分解度を有し、他のPVOH樹脂は約93%以下の加水分解度を有する(又は別の言い方をすると、加水分解レベルの間に例えば少なくとも2%のような差が存在する)2種類(又はそれ以上)の異なるPVOH樹脂を混合することができる。2種類の異なるPVOH樹脂を混合し、これらをアルデヒド(例えばブチルアルデヒド)と反応させることによって、得られる樹脂組成物は、残留ビニルアルコール含量において約2%以上の差のような差を有する樹脂ブレンド又は混合物になる。同様に、例えば約5モル%以下の残留酢酸ビニルを有するPVOH樹脂及び約7モル%以上の残留酢酸ビニルを有するPVOH樹脂のような残留酢酸ビニルの異なるレベルを有する2種類(又はそれ以上)のPVOH樹脂を混合又はブレンドして、ブチルアルデヒドのようなアルデヒドと反応させることができる。得られる樹脂組成物は、異なるPVOHレベル、又は異なるPVAcレベル、或いは両方のような異なる出発組成又は特性の複数の樹脂の混合物になり、組成物は高い分散度を有するようになる。
【0052】
[062]広い分布又は高い分散度を有する樹脂組成物を達成するための他の方法は、PVOH樹脂をまずブチルアルデヒドのようなアルデヒドと反応させ、次に反応混合物に第2のPVOH樹脂を加えてそれをアルデヒドと反応させることによるものである。第1及び第2のPVOH樹脂の量(又は第2のPVOH樹脂に対する第1のPVOH樹脂の比)、アルデヒドの量及び1つ又は複数のタイプ、第2のPVOHを反応混合物に加える前の遅延時間、及び反応時間のような変数を制御して、残留ヒドロキシル基又は残留酢酸ビニル基、或いは残留ヒドロキシル基と残留アセテート基の両方の量における高い分散度のような、樹脂組成における高い分散度を有する樹脂を製造することができる。最終的に、1つがより高い残留ヒドロキシルレベル及び/又は残留アセテートレベルを有し、1つがより低い残留ヒドロキシル及び/又は残留アセテートレベルを有して高い分散度を有する組成物を形成している、異なる組成の2種類の樹脂の混合物又はブレンドが得られる。
【0053】
[063]組成における狭い分布又は低い分散度を有するポリマーは、より狭いガラス転移を有する可能性があり、一方、組成における広い分布又は高い分散度を有するポリマーは、より広いガラス転移を有する可能性がある。多層中間層中の軟質層を、組成における広い分布又は高い分散度を有するように配合することによって、これらの多層中間層を含む多層ガラスパネルは、低い分散度又は狭い分布を有する軟質層の樹脂組成物を有する多層ガラスパネルよりも、広い温度範囲にわたってより良好な遮音特性を有することが分かった。
【0054】
[064]本発明者らは、驚くべきことに、組成における広い分布又は高い分散度を有し、及び幾つかの場合には1つより多いガラス転移を有する樹脂を有する軟質層をガラスパネル中に導入することによって、多層ガラスパネルの遮音特性を広い温度範囲にわたって維持することができることを見出した。ここで更に記載するように、多層中間層中の軟質層を、組成における広い分布又は高い分散度(即ち少なくとも0.40)を有し、及び幾つかの場合においては1つより多いガラス転移を有するように配合することによって、向上した多層中間層を含む多層ガラスパネルの遮音特性を、1つのみのガラス転移温度、及び/又は組成における狭い分布又は低い分散度(即ち0.40未満)を有する樹脂組成物を有する1つ又は複数の軟質層を有する従来の多層中間層を含むガラスパネルと比べて向上させることができる。
【0055】
[065]更に、3つ以上のポリマー層を有する本発明の幾つかの態様(即ち3層中間層)は容易に取り扱われるように配合することができ、従来のプロセスにおける従来の中間層に対する直接的な代替物として用いることができるので、これらの向上した中間層は、現在の積層体製造方法に修正を加える必要なしに多くの用途において用いることができるであろう。例えば、従来のポリマー中間層を含む自動車の風防ガラスを、完成品の風防ガラスを形成するために用いる積層プロセスを変化させずに本発明の中間層を用いて置き換えることができる。
【0056】
[066]本発明の種々の態様においては、多層中間層は互いと接触して配置されている少なくとも2つのポリマー層を含み、1つのポリマー層は軟質であり、他のポリマー層は硬質であり、それぞれのポリマー層は少なくとも1種類の熱可塑性ポリマー樹脂を含む。熱可塑性ポリマーは、それぞれの層において同一又は異なっていてよい。
【0057】
[067]広い温度範囲にわたって良好な遮音特性を有する多層ガラスパネルは、高い残留ヒドロキシル基及び/又は残留アセテート基の分散度のような組成における高い分散度を有する組成物を用いて軟質層を配合し、及び/又は複数のガラス転移温度(T)を示すように軟質層を配合することによって達成することができる。次に、共押出又は積層のような当該技術において公知のプロセスによって、軟質層を1以上の硬質層と組合せて、例えばそれと積層して、単一の多層中間層を形成する。上記に記載したように、軟質層には少なくとも第1の樹脂及び第2の樹脂の混合物を含ませることができ、ここで、可塑化されているか又は可塑化されていない軟質層の樹脂は、それぞれ異なるガラス転移及びガラス転移温度を有し、第2の樹脂におけるガラス転移温度は第1の樹脂におけるガラス転移温度と異なる。更に、第2の樹脂におけるガラス転移は、硬質層のガラス転移温度よりも低くすることができる。或いは又は更には、軟質層に、異なる残留ヒドロキシル含量及び/又は異なる残留酢酸ビニル含量を有する2種類以上の異なる樹脂を含ませることができ、或いは軟質層の樹脂組成物を上記に記載した方法によって製造又は得て、組成における広い分布又は(少なくとも0.40の)高い分散度を有する樹脂組成物を与えることができる。
【0058】
[068]本明細書において用いるポリマーのガラス転移とは、「ガラス状」の状態からゴム状の状態への状態であり、これは可逆性であり;ガラス転移温度は、ガラス状態からゴム状態への転移を示す温度である。ガラス転移状態において、ポリマーは最も高い音響減衰を与える。ガラス転移温度(T)は、動的機械熱分析(DMTA)によって測定することができる。DMTAは、試料の貯蔵(弾性)係数(G’)(パスカル)、損失(粘性)係数(G”)(パスカル)、tanδ(=G”/G’)を、所定の振動数及び温度スイープ速度において温度の関数として測定する。1Hzの振動数及び3℃/分の温度スイープ速度を用いた。次に、温度スケール(℃)でのtanδピークの位置によってTを求める。
【0059】
[069]本発明の種々の態様においては、ポリマー層の少なくとも1つは、ポリ(ビニルブチラール)のようなポリ(ビニルアセタール)樹脂、及び可塑剤を含む。他の態様においては、全てのポリマー層はポリ(ビニルアセタール)樹脂又はポリ(ビニルブチラール)樹脂と可塑剤を含む。幾つかの態様においては、軟質のコア層は、少なくとも、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1の樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2の樹脂の混合物を含み、ここで第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量(重量基準でPVOH%として測定)は第1の樹脂におけるものと異なり、第1及び第2の樹脂の両方における残留ヒドロキシル含量は、1つ又は複数のスキン層における残留ヒドロキシル含量よりも低い。幾つかの態様においては、層中の1つ又は複数の樹脂は、ここで議論するように異なる組成における分散度又は分布を有するように選択される。
【0060】
[070]種々の態様において、軟質層のような層中に2種類以上の樹脂の混合物が存在する場合には、より軟質の層中の第1のポリマー樹脂は、可塑化された際に1つのガラス転移温度:Tg1を有して、適用温度T1において遮音特性を与えるように選択され、第2のポリマー樹脂は、異なる残留ヒドロキシル含量及び第2の適用温度T2において遮音特性を与える第2のガラス転移温度:Tg2を有するように選択される。また、第1及び第2の樹脂と異なる残留ヒドロキシル含量を有する更なる樹脂を選択することもでき、これらはガラス転移温度:Tg3、Tg4、・・・Tgn(ここで、nは異なる樹脂の数である)を有し、これらを層中に導入して適用温度T3、T4、・・・Tn(ここで、nは異なる樹脂の数である)において遮音特性を与えて、複数のガラス転移を有し、複数のガラス転移温度:Tg1、Tg2、Tg3、Tg4、・・・Tgnを示す軟質層を与えて、より広い温度範囲にわたって遮音特性を与えることができる。幾つかの態様においては、複数のTは、僅かしか相違しない可能性があるので測定できない可能性があるが、ガラス転移又はTは単一のガラス転移を有する樹脂組成物よりも広くすることができる。他の態様においては、この樹脂は組成における高い分散度を有していてよく、これによって複数又はより広いガラス転移及びTを与えることもできる。
【0061】
[071]種々の態様においては、軟質層は組成における高い分散度を有する樹脂組成物を含み、幾つかの態様においては、樹脂組成物は2種類のポリ(ビニルブチラール)樹脂及び可塑剤を含む。第2の可塑化樹脂は、第1の可塑化樹脂のものと少なくとも約1.5℃、又は少なくとも約2℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも3℃、又は少なくとも4℃、又は少なくとも5℃、又は少なくとも6℃、又は少なくとも7℃、又は少なくとも8℃、又は少なくとも9℃、又は少なくとも10℃、又は少なくとも11℃、又は少なくとも12℃、或いはそれ以上異なるガラス転移温度を有する。第1の可塑化樹脂は、−40℃〜約25℃、又は約−30℃〜20℃、又は約−20℃〜10℃、又は約25℃以下、又は約20℃以下、又は約15℃以下、又は約10℃以下、又は約9℃以下、又は約8℃以下、又は約−40℃より高く、又は約−35℃より高く、又は約−30℃より高く、又は約−25℃より高く、或いは約−20℃より高いガラス転移温度を有していてよい。本発明において用いる可塑化樹脂のガラス転移温度は、個々の可塑化樹脂によって形成されるシートについて、例えば他の可塑化樹脂と混合して例えば軟質層を形成する前に求められる。
【0062】
[072]種々の態様においては、軟質層は2種類より多いポリ(ビニルブチラール)樹脂及び可塑剤を含む。ガラス転移温度:Tg1、Tg2、Tg3、・・・はそれぞれの可塑化樹脂に対応し、2つの隣接する可塑化樹脂のガラス転移温度における差は、少なくとも1.5℃、又は少なくとも1.6℃、又は少なくとも1.7℃、又は少なくとも1.8℃、又は少なくとも1.9℃、又は少なくとも2.0℃、又は少なくとも2.1℃、又は少なくとも2.2℃、又は少なくとも2.3℃、又は少なくとも2.4℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも2.6℃、又は少なくとも2.7℃、又は少なくとも2.8℃、又は少なくとも2.9℃、又は少なくとも3.0℃、又は少なくとも4.0℃、又は少なくとも5.0℃、或いはそれ以上である。
【0063】
[073]第1の可塑化樹脂と第2の可塑化樹脂の間のガラス転移温度の差は、2つの樹脂を異なる残留ヒドロキシル含量を有するように選択することによるか、或いは上記に記載した方法によって達成することができる。種々の態様においては、軟質層中の第2のPVB樹脂は、第1のPVB樹脂の残留ヒドロキシル含量と少なくとも約1.0重量%、又は少なくとも約1.5重量%、又は少なくとも約2.0重量%、又は少なくとも約2.5重量%、又は少なくとも約3.0重量%、又は少なくとも約3.5重量%、又は少なくとも約4.0重量%、又は少なくとも約4.5重量%、又は少なくとも約5.0重量%、又は少なくとも約5.5重量%、又は少なくとも約6.0重量%、又は少なくとも約6.5重量%、又は少なくとも約7.0重量%、又は少なくとも約7.5重量%、又は少なくとも約8.0重量%、又は少なくとも約8.5重量%、又は少なくとも約9.0重量%、又は少なくとも約9.5重量%、又は少なくとも約10.0重量%、又は少なくとも約10.5重量%、又は少なくとも約11.0重量%、又は少なくとも約11.5重量%、又は少なくとも約12重量%、或いはそれ以上異なる残留ヒドロキシル含量を有する。例えば幾つかの態様においては、第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量は、第1の樹脂と約1.0重量%〜約7.0重量%異なる。この第1の樹脂と第2の樹脂の間の差は、より低い残留ヒドロキシル含量を有する第1の樹脂の残留ヒドロキシル含量を、より大きい残留ヒドロキシル含量を有する第2の樹脂の残留ヒドロキシル含量から減じる(又は残留ヒドロキシル含量の差の絶対値をとる)ことによって計算される。例えば、第1の樹脂が12重量%の残留ヒドロキシル含量を有し、第2のポリマーシートが15重量%の残留ヒドロキシル含量を有する場合には、2つの樹脂の残留ヒドロキシル含量は3重量%異なり、或いは第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量は第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量よりも3重量%高い。第1の樹脂と第2の樹脂の間の残留ヒドロキシル含量の差は、実施例において完全に詳細に議論するように、中間層に向上した遮音性能を与えるように制御する。
【0064】
[074]第1の可塑化樹脂と第2の可塑化樹脂の間のガラス転移温度の差はまた、2つの樹脂を、それらが同じか又は類似の残留ヒドロキシル含量を有するが、異なるレベルの残留酢酸ビニル基又は酢酸ビニル基含量を有するように選択することによって達成することもできる。この場合には、軟質層はアセテート基のより高い分散度を有する樹脂を含む。種々の態様においては、軟質層中の第2のPVB樹脂は、第1の樹脂の残留ヒドロキシル含量と同じか又は類似の残留ヒドロキシル含量を有するが、第1のPVB樹脂の残留酢酸ビニル含量と、少なくとも約2.0モル%、又は少なくとも約3.0モル%、又は少なくとも約4.0モル%、又は少なくとも約5.0モル%、又は少なくとも約6.0モル%、又は少なくとも約7.0モル%、又は少なくとも約8.0モル%、又は少なくとも約9.0モル%、又は少なくとも約10.0モル%、又は少なくとも約11.0モル%、又は少なくとも約12.0モル%、又は少なくとも約13.0モル%、又は少なくとも約14.0モル%、又は少なくとも約15.0モル%、或いはそれ以上異なる残留酢酸ビニル含量を有する。他の態様においては、軟質層中の第2のPVB樹脂は、両方とも第1のPVB樹脂と異なる残留ヒドロキシル含量及び残留酢酸ビニル含量を有する。別の言い方をすると、幾つかの態様においては、軟質層は少なくとも、第1の残留ヒドロキシルレベル及び第1の残留アセテートレベルを有する第1の樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシルレベル及び第2の残留アセテートレベルを有する第2の樹脂を含み、樹脂の少なくとも2つの間の残留ヒドロキシルレベルの間の差は少なくとも1.0重量%であり、及び/又は樹脂の少なくとも2つの間の残留アセテートレベルの間の差は少なくとも2.0モル%である。
【0065】
[075]幾つかの態様においては、任意のPVB樹脂は、ビニルイソブチラール基、ビニルブチラール基、2−エチルヘキサナール基、或いはビニルブチラール、ビニルイソブチラール、又は2−エチルヘキサナール基の任意の組合せを有していてよい。
【0066】
[076]本発明の種々の態様においては、軟質層中の樹脂(又は2種類以上の樹脂が存在する場合には、少なくとも1つの樹脂)の残留ヒドロキシル含量と、隣接する硬質層における残留ヒドロキシル含量は、少なくとも約2.5重量%、又は少なくとも約3.0重量%、又は少なくとも約3.5重量%、又は少なくとも約4.0重量%、又は少なくとも約4.5重量%、又は少なくとも約5.0重量%、又は少なくとも約5.5重量%、又は少なくとも約6.0重量%、又は少なくとも約6.5重量%、又は少なくとも約7.0重量%、又は少なくとも約7.5重量%、又は少なくとも約8.0重量%、又は少なくとも約8.5重量%、又は少なくとも約9.0重量%、又は少なくとも約9.5重量%、又は少なくとも約10.0重量%、又は少なくとも約10.5重量%、又は少なくとも約11.0重量%、又は少なくとも約11.5重量%、又は少なくとも約12重量%、或いはそれ以上相違していてよい。幾つかの態様においては、(存在する場合には)軟質層中の第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量は、軟質層中の第1の樹脂のものよりも高く、硬質層中の樹脂の残留ヒドロキシル含量よりも低い。更なる態様においては、軟質層中に少なくとも2種類の樹脂が存在する場合には、軟質層中の第2の樹脂における残留ヒドロキシル含量は第1の樹脂のものよりも低い。代表的な態様においては、軟質層中の1つ又は複数の樹脂のより高い残留ヒドロキシル含量は、硬質層中の樹脂の残留ヒドロキシル含量よりも低く、少なくとも2.5重量%、又は少なくとも約3.0重量%、又は少なくとも約3.5重量%、又は少なくとも約4.0重量%、又は少なくとも約4.5重量%、又は少なくとも約5.0重量%、又は少なくとも約5.5重量%、又は少なくとも約6.0重量%、又は少なくとも約6.5重量%、又は少なくとも約7.0重量%、又は少なくとも約7.5重量%、又は少なくとも約8.0重量%、又は少なくとも約8.5重量%、又は少なくとも約9.0重量%、又は少なくとも約9.5重量%、又は少なくとも約10.0重量%、又は少なくとも約10.5重量%、又は少なくとも約11.0重量%、又は少なくとも約11.5重量%、又は少なくとも約12重量%、或いはそれ以上相違する。2種類以上の樹脂を有する他の態様においては、スキン層中の樹脂の残留ヒドロキシル含量は、軟質層中の樹脂の1つの残留ヒドロキシル含量と同等である。当業者に公知なように、所望の特性を有する中間層を与えるために必要に応じて、残留ヒドロキシルレベルの任意の組合せを与えることができる可能性がある。
【0067】
[077]本発明の種々の態様においては、軟質層中の1つ又は複数の樹脂の残留ヒドロキシル含量、及び隣接する1つ又は複数の硬質層中の1つ又は複数の樹脂の残留ヒドロキシル含量は同じか又は異なっていてよく、所望の場合には、軟質層中の1つ又は複数の樹脂の残留ヒドロキシル含量を、隣接する1つ又は複数の硬質層中の1つ又は複数の樹脂の残留ヒドロキシル含量よりも高く又は低くすることができる。
【0068】
[078]本発明の種々の態様においては、軟質層中の1つ又は複数の樹脂の残留アセテート含量、及び隣接する1つ又は複数の硬質層中の1つ又は複数の樹脂の残留アセテート含量は同じか又は異なっていてよく、所望の場合には、軟質層中の1つ又は複数の樹脂の残留アセテート含量を、隣接する1つ又は複数の硬質層中の1つ又は複数の樹脂の残留アセテート含量よりも高く又は低くすることができる。
【0069】
[079]図1は、本発明樹脂(DR−1:本発明層DL−1〜DL−4において用いた樹脂)、及び比較樹脂(CR−1:比較層CL−1において用いた樹脂)に関するヒドロキシル基の分布又は分散度を示す。異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂のブレンドである本発明樹脂(DR−1)は、より低い分散度(0.31)を有する比較樹脂(CR−1)よりも組成におけるより広い分布、及びしたがってより高い分散度(0.41)を有し、より広いTを有する。
【0070】
[080]図2は、異なる本発明樹脂(DR−5:本発明層DL−9及びDL−10において用いた樹脂)、及び比較樹脂(CR−1:比較層CL−1において用いた樹脂)に関するヒドロキシル基の分布又は分散度を示す。0.41の組成における分散度を有する本発明樹脂のDR−1における樹脂よりも大きな残留ヒドロキシル含量の間の差を有する異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂の別のブレンドである本発明樹脂(DR−5)は、より低い分散度(0.31)を有する比較樹脂(CR−1)よりも広い分布、及び2つのピーク並びに2つのガラス転移及びTの値、及びしたがって組成におけるより高い分散度(0.72)を有する。
【0071】
[081]図1及び2、並びに下記の実施例及び表におけるデータは、コア層において用いる本発樹脂組成物を、異なるヒドロキシル含量を有する2つの異なる樹脂のブレンドから配合することによって、本発明樹脂組成物は、比較樹脂よりも組成における広い分布及び高い分散度を有することを示す。
【0072】
[082]図3は、本発明中間層(DI−5)及び比較中間層(CI−2)に関する、10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示す。本発明中間層(DI−5)は、2種類の樹脂(第1の樹脂は約9.6重量%の残留ヒドロキシル含量を有し、第2の樹脂は約11.5重量%の残留ヒドロキシル含量を有する)の50:50ブレンド(このブレンドは約10.5重量%の平均残留ヒドロキシルを有する)を含むコア層を有し、75phrの可塑剤を含む。コア層樹脂(DR−1)は0.41の組成における分散度を有する。比較中間層(CI−2)は、約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量、及び0.31の組成における分散度を有する単一の比較樹脂(CR−1)を含むコア層を有し、75phrの可塑剤(DI−5と同等のレベル)を含む。両方の中間層とも、10ミルのコア層厚さ、及び40ミルの全中間層厚さを有し、コア層における平均残留ヒドロキシル含量及び可塑剤の量は同じである。2種類の樹脂のブレンド(DR−1)を含む本発明中間層(DI−5)は、30℃における減衰損失係数を(比較中間層CI−2と比べて実質的に変化しないで)維持しながら、10℃及び20℃の両方において向上した減衰損失係数を示し、したがってより広い温度範囲(即ち10℃から20℃、更には30℃)にわたって、特に比較中間層CI−2と比べて低い温度においてより良好又は向上した遮音性を与える。
【0073】
[083]図4は、本発明中間層(DI−14)及び比較中間層(CI−2)に関する、10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示す。本発明中間層(DI−14)は、2種類の樹脂(第1の樹脂は約9.6重量%の残留ヒドロキシル含量を有し、第2の樹脂は約13重量%の残留ヒドロキシル含量を有する)の50:50ブレンド(このブレンドは約11.3重量%の平均残留ヒドロキシルを有する)を含むコア層樹脂(DR−3)を含み、70phrの可塑剤を含む。コア層樹脂(DR−3)は0.68の組成における分散度を有する。比較中間層(CI−2)は、約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量及び0.31の組成における分散度を有する単一の樹脂(CR−1)を含むコア層を有し、75phrの可塑剤を含む。両方の中間層ともに、10ミルのコア層厚さ及び40ミルの全中間層厚さを有する。2種類の樹脂のブレンド(DR−3:ここに記載している)を含む本発明中間層(DI−14)は、10℃における減衰損失係数を(比較中間層CI−2と比べて実質的に変化しないで)維持しながら、20℃及び30℃の両方において向上した減衰損失係数を示し、したがってより広い温度範囲にわたって、特に比較中間層CI−2よりも高い温度において遮音性を与える。
【0074】
[084]図5は、本発明中間層(DI−22)及び比較中間層(CI−2)に関する、10℃、20℃、及び30℃における減衰損失係数を示す。本発明中間層は、2種類の樹脂(第1の樹脂は約9.6重量%の残留ヒドロキシル含量を有し、第2の樹脂は約13重量%の残留ヒドロキシル含量を有する)の75:25のブレンド(このブレンドは約10.5重量%の平均残留ヒドロキシルを有する)を含むコア層樹脂(DR−2)を有し、70phrの可塑剤を含む。コア層樹脂(DR−2)は0.58の組成における分散度を有する。比較中間層は、約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量及び0.31の組成における分散度を有する単一の樹脂(CR−1)を含むコア層を有し、75phrの可塑剤を含む。両方の中間層ともに、10ミルのコア層厚さ及び40ミルの全中間層厚さを有する。2種類の樹脂のブレンド(DR−2)を含む本発明中間層(DI−22)は、3つの温度全てにおいて向上した減衰損失係数を示し、したがってより広い温度範囲にわたって遮音性を与える。
【0075】
[085]図3〜5は、多層中間層中の軟質層(この場合においてはコア層)を、2種類(又はそれ以上)の樹脂のブレンドを含むもののような組成における高い分散度(広い分布)を有する樹脂組成物を含むように配合することによって、より低い温度、より高い温度、又はより広い温度範囲にわたって遮音性を向上させることができることを示す。遮音性能を関心のある温度範囲にわたって拡げるために、組成における分散度を、少なくとも0.40(即ち組成における高い分散度)になるように制御する。
【0076】
[086]例えば一態様においては、この組成における広い分布又は高い分散度は、複数の樹脂又は出発材料の残留ヒドロキシル含量における差が約3重量%より多い複数の樹脂及び/又は出発材料(例えばPVOH樹脂)を選択することによって制御及び達成される。他の態様においては、温度範囲の一方の側のみにおいて性能を拡げるために、残留ヒドロキシル含量における差を約3重量%未満になるように選択することができる。この組成における分散度(複数の樹脂又は出発材料における差(例えば残留ヒドロキシル含量における差)によって影響を受ける)はまた、本発明の中間層を含むガラスパネルの適用温度に影響を与えるようにも選択される。他の態様においては、この組成における広い分布又は高い分散度は、複数の樹脂又は出発材料の残留アセテート含量における差が約5モル%より多い複数の樹脂及び/又は出発材料(例えばPVOH樹脂)を選択することによって制御及び達成される。他の態様においては、温度範囲の一方の側のみにおいて性能を拡げるために、残留アセテート含量における差を約5モル%未満になるように選択することができる。
【0077】
[087]種々の態様においては、軟質層中のPVB樹脂は、PVOH%として計算して約6〜約22重量パーセント(重量%)、約8〜約16重量%、約10〜約14重量%のヒドロキシル基、及び幾つかの態様に関してはPVOH%として計算して約8〜約12重量%のヒドロキシル基を含む。種々の態様においては、樹脂はまた、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算して30重量%未満の残留エステル基、25重量%未満の残留エステル基、20重量%未満、15重量%未満、13重量%未満、10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満の残留エステル基を含んでいてもよく、残りはブチルアルデヒドアセタールのようなアセタールであるが、場合によってはイソブチルアルデヒドアセタール基、又は2-エチルヘキサナールアセタール基、或いはブチルアルデヒドアセタール、イソブチルアルデヒド、及び2−エチルヘキサナールアセタール基の任意の2つの混合物のような他のアセタール基である。
【0078】
[088]種々の態様において、樹脂が2種類(又はそれ以上)の樹脂を含む場合には、第2の樹脂は、PVOH%として計算して約6〜約24重量%、約7〜約18重量%、約8〜約16重量%、及び幾つかの態様に関しては約10〜約14重量%のヒドロキシル基を含む。種々の態様においては、樹脂はまた、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算して約30重量%未満の残留エステル基、25重量%未満の残留エステル基、20重量%未満、15重量%未満、13重量%未満、10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満の残留エステル基を含んでいてもよく、残りはブチルアルデヒドアセタールのようなアセタールであるが、場合によってはイソブチルアルデヒドアセタール基、2-エチルヘキサナールアセタール基、或いはブチルアルデヒドアセタール、イソブチルアルデヒド、及び2−エチルヘキサナールアセタール基の任意の2つの混合物のような他のアセタール基である。
【0079】
[089]種々の態様においては、硬質層中の樹脂は、PVOH%として計算して約15〜約35重量%、約16〜約30重量%、又は約17〜約22重量%;及び幾つかの態様に関しては約17.5〜約22.5重量%の残留ヒドロキシル基を含んでいてよい。種々の態様においては、軟質層に関する第1の樹脂及び第2の樹脂、或いは1つ又は複数の硬質層に関する樹脂、或いはこれらの樹脂の任意の2つ、或いは樹脂の全部はまた、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算して30重量%未満の残留エステル基、25重量%未満の残留エステル基、20重量%未満、15重量%未満、13重量%未満、10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満の残留エステル基を含んでいてもよく、上記で議論したように、残りはブチルアルデヒドアセタールのようなアセタールであるが、場合によってはイソブチルアルデヒド、2-エチルヘキサナールアセタール基、或いはブチルアルデヒドアセタール、イソブチルアルデヒドアセタール基、及び2−エチルヘキサナールアセタール基の任意の2つの混合物のような他のアセタール基である。
【0080】
[090]幾つかの態様においては、軟質中の1つ又は複数の樹脂は、約1モル%乃至30モル%未満、又は約29モル%未満、又は約28モル%未満、又は約27モル%未満、又は約26モル%未満、又は約25モル%未満、又は約1モル%より多く、又は約2モル%より多く、或いはそれ以上の残留アセテート含量のような残留エステル含量を含む。
【0081】
[091]2種類の樹脂のブレンドを含む態様においては、第1の樹脂に対する第2の樹脂の量は、所望に応じて、軟質層中のそれぞれの1〜99重量%、2〜98重量%、3〜97重量%、4〜96重量%、5〜95重量%、10〜90重量%、15〜85重量%、20〜80重量%、25〜75重量%、又は約50重量%のような任意の範囲で変化させることができる。第2の樹脂の量は、所望の特性に応じて約1重量%乃至約99重量%までの任意の量であってよい。幾つかの態様においては、第2の樹脂の量は約25〜約75重量%で変化する。
【0082】
[092]種々の態様においては、軟質層は2種類より多い樹脂を含む。樹脂の任意の2つの間の組成における差は、第1の樹脂と第2の樹脂の間の差に関して上記に与える任意の差であってよい。2種類より多い樹脂に関しては、それぞれの樹脂は、ポリマー中間層の所望の特性及び樹脂の特定の特性に応じて、少なくとも1重量%又はそれ以上、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%乃至98重量%までの量で含ませることができる。他の態様においては、軟質層は、上述したような組成における広い分布又は(少なくとも0.40の)高い分散度を有するように製造された1種類の樹脂を含む。
【0083】
[093]本発明の多層中間層においては、樹脂は一般に選択される特定の樹脂に応じて可塑化される。与えられたタイプの可塑剤に関して、ポリ(ビニルブチラール)樹脂中におけるその可塑剤の相溶性は、主としてヒドロキシル含量によって決定される。通常は、より高い残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)は、減少した可塑剤の相溶性又は容量をもたらす。同様に、より低い残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)は、増加した可塑剤の相溶性又は容量をもたらす。これらの特性を用いて、それぞれのポリ(ビニルブチラール)ポリマーのヒドロキシル含量を選択し、軟質層を広いガラス転移を有するように製造し、それぞれのポリマーシート層を、適切な可塑剤装填量を可能にし、軟質層におけるポリマー層の間及び2以上の樹脂の間の可塑剤含量の差を安定に維持するように配合することができる。
【0084】
[094]中間層中における可塑剤の量を調節してガラス転移温度(T)に影響を与えることができる。一般に、より多い量の可塑剤装填はより低いTをもたらす。可塑剤は、より低い残留ヒドロキシル含量を有するポリマー樹脂中により多い可塑剤、及びより高い残留ヒドロキシル含量を有するPVB樹脂中により少ない可塑剤が存在するように分配されるので、可塑剤の量を調節して、軟質層のガラス転移温度、及び中間層が最適の遮音特性を示す温度をシフトさせることができる。
【0085】
[095]本発明の種々の態様においては、中間層は、5phrより多く、約5〜約120phr、約10〜約90phr、約20〜約70phr、約30〜約60phr、或いは120phr未満、又は90phr未満、又は60phr未満、又は40phr未満、或いは30phr未満の全可塑剤を含む。中間層中における全可塑剤含量を調節して軟質層のガラス転移に影響を与えて、与えられた適用温度範囲における中間層の遮音特性を最適にする。1つ又は複数の硬質層或いは1つ又は複数の軟質層中における可塑剤含量は、全可塑剤含量と異なっていてよい。更に、米国特許第7,510,771号明細書(その全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)において開示されているように、平衡状態におけるそれぞれの層の可塑剤含量は層のそれぞれの残留ヒドロキシル含量によって定まるので、1つ又は複数の硬質層或いは1つ又は複数の軟質層は、上記で議論した範囲内の異なる可塑剤のタイプ及び可塑剤の含量を有していてよい。例えば、平衡において、中間層は2つの硬質の外側(スキン)層を含んでいてよく、硬質層の合計厚さが軟質層のものに等しい場合に約45.4phrの中間層に関する全可塑剤量のためには、それぞれのスキン層は30phrの可塑剤を有し、軟質の内側(コア)層は65phrの可塑剤を有する。より厚いか又はより薄い硬質層に関しては、中間層に関する全可塑剤量はそれに対応して変化する。本発明の種々の態様においては、軟質層と硬質層の可塑剤含量は、少なくとも8phr、又は少なくとも9phr、又は少なくとも10phr、又は少なくとも12phr、又は少なくとも13phr、又は少なくとも14phr、又は少なくとも15phr、又は少なくとも16phr、又は少なくとも17phr、又は少なくとも18phr、又は少なくとも19phr、又は少なくとも20phr、又は少なくとも25phr、或いはそれ以上異なる。本発明において用いる可塑剤又は中間層中の任意の他の成分の量は、重量/重量基準の樹脂100部あたりの部(phr)として測ることができる。例えば、30gの可塑剤を100gのポリマー樹脂に加える場合には、得られる可塑化ポリマーの可塑剤含量は30phrになる。本発明において用いられるように、中間層の可塑剤含量が与えられている場合には、可塑剤含量は、中間層を製造するのに用いた混合物又は溶融体中の可塑剤のphrに関連して決定される。
【0086】
[096]種々の態様においては、可塑剤は、通常の可塑剤、又は2種類以上の通常の可塑剤の混合物から選択される。幾つかの態様においては、約1.450未満の屈折率を有する通常の可塑剤としては、例えばトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GEH)、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、及びこれらの混合物を挙げることができる。幾つかの態様においては、通常の可塑剤は3GEH(屈折率=25℃において1.442)である。
【0087】
[097]幾つかの態様においては、当業者に公知の他の可塑剤、例えばより高い屈折率を有する可塑剤(即ち高屈折率の可塑剤)を用いることができる。本明細書において用いる「高屈折率の可塑剤」は、少なくとも約1.460の屈折率を有する可塑剤である。本明細書において用いる、本開示の全体にわたって用いる可塑剤又は樹脂の屈折率(屈折指数としても知られる)とは、ASTM−D542にしたがって589nmの波長及び25℃において測定されるものか、又はASTM−D542にしたがって文献において報告されているもののいずれかである。種々の態様においては、可塑剤の屈折率は、コア層及びスキン層の両方に関して、少なくとも約1.460、又は約1.470より高く、又は約1.480より高く、又は約1.490より高く、又は約1.500より高く、又は1.50より高く、或いは1.520より高い。幾つかの態様においては、1種類又は複数の高屈折率の可塑剤は通常の可塑剤と併せて用いられ、幾つかの態様においては含ませる場合には通常の可塑剤は3GEHであり、可塑剤混合物の屈折率は少なくとも1.460である。
【0088】
[098]用いることができる高い屈折率を有する可塑剤の例としては、ポリアジペート(約1.460〜約1.485のRI);エポキシド(約1.460〜約1.480のRI);フタレート及びテレフタレート(約1.480〜約1.540のRI);ベンゾエート(約1.480〜約1.550のRI);及び他の特殊な可塑剤(約1.490〜約1.520のRI)が挙げられるが、これらに限定されない。高屈折率の可塑剤の例としては、中でも多塩基酸又は多価アルコールのエステル、ポリアジペート、エポキシド、フタレート、テレフタレート、ベンゾエート、トルエート、メリテート、及び他の特殊な可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な可塑剤の例としては、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2−エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3−ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ−o−トルエート、トリエチレングリコールジ−o−トルエート、ジプロピレングリコールジ−o−トルエート、1,2−オクチルジベンゾエート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルテレフタレート、ビスフェノールAビス(2−エチルヘキサノエート)、エトキシ化ノニルフェノール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
[099]幾つかの態様においては、2種類以上の通常の可塑剤の混合物、2種類以上の高屈折率可塑剤、又は少なくとも1種類の高屈折率の可塑剤とより低い屈折率を有する少なくとも1種類の通常の可塑剤の混合物のような複数の可塑剤の混合物を、1以上の層において用いることができる。当業者であれば、所望の結果及び1つ又は複数の層及び中間層の屈折率を得るためにどのように1種類又は複数の可塑剤を選択するかを理解するであろう。
【0090】
[0100]2つより多い層を有する態様においては、ポリマー中間層に、より高い可塑剤含量を有する軟質層と接触させて配置される第2の又は更なる硬質層(例えば第2のスキン層)を含ませることができる。このポリマー層を加えることによって、次の構造:第1の硬質層/軟質層/第2の硬質層(これは、第1のスキン層/コア層/第2のスキン層として記載することもできる)を有する3層構造がもたらされる。この第2の硬質層又はスキン層は、第1の硬質層又はスキン層と同じ組成を有していてよく、或いは異なっていてもよい。また、所望に応じて更なる複数の層を存在させることもできる。
【0091】
[0101]種々の態様においては、第2の硬質層は第1の硬質層と同じ組成を有する。他の態様においては、第2の硬質層は第1の硬質層と異なる組成を有し、第2の硬質層と軟質層の間の組成の差は、第1の硬質層と軟質層の間の差に関して上記に与えた任意の差であってよい。例えば、一態様は、20重量%の残留ヒドロキシル含量を有する第1の硬質層/15.5重量%の残留ヒドロキシル含量を有する第1の樹脂、及び17重量%の残留ヒドロキシル含量を有する第2の樹脂を有する軟質層/18重量%の残留ヒドロキシル含量を有する第2の硬質層であってよい。この例においては、硬質層は、少なくとも、第1の樹脂のヒドロキシル含量よりも2.5重量%多い残留ヒドロキシル含量を有する点で軟質層中の第1の樹脂と異なる。勿論、本明細書全体にわたって記述する任意の他の差によって、単独か又は組み合わせて、第2の硬質層を軟質層と区別することができる。これは1つの例に過ぎず、当業者であれば、多くの他の態様及び組合せが可能であり、本発明において意図されることを認識するであろう。
【0092】
[0102]ここに記載した2層又は3層の態様に加えて、更なる態様は3つより多い層を有する中間層を包含し、ここでは、異なる残留ヒドロキシル層を有する更なる層、例えば交互の可塑剤含量を交互のヒドロキシル含量、及び場合によっては約1〜約30モル%の残留アセテート含量と共に有するポリマー層の繰り返しを用いることができる。このようにして形成される中間層は、例えば4、5、6、又は10以下、或いはこれ以上の個々の層を有していてよい。
【0093】
[0103]一般に、ポリマー中間層の厚さ又はゲージは、約0.25mm〜約2.54mm(約10ミル〜100ミル)、約0.38mm〜約1.52mm(約15ミル〜60ミル)、約0.51〜1.27mm(約20ミル〜約50ミル)、及び約0.38〜約0.89mm(約15ミル〜約35ミル)の範囲であるが、より薄いか又はより厚い中間層が意図され、所望の場合にはこれを用いることもできる。種々の態様においては、多層中間層の硬質及び軟質(又は幾つかの態様においてはスキン及びコア)層のようなそれぞれの層は、約1ミル〜99ミル(約0.025〜2.51mm)、約1ミル〜約59ミル(約0.025〜1.50mm)、1ミル〜約29ミル(約0.025〜0.74mm)、又は約2ミル〜約28ミル(約0.05〜0.71mm)の厚さを有していてよいが、これらの厚さの任意の組合せが可能である。
【0094】
[0104]最終的な中間層は、押出によって形成されても、又は共押出によって形成されても、押出ダイから排出される際にポリマー溶融体のメルトフラクチャーを経て形成されるので、一般にランダムな粗さの表面形状を有し、所望の場合には、当業者に公知の任意のエンボス加工方法によって一方又は両方の側(例えば外側層又はスキン層)上においてランダムな粗さの表面の上に更にエンボス加工することができる。
【0095】
[0105]ここに開示する多層中間層の特徴である広い温度範囲にわたる遮音効果は、共押出プロセスを用いることによって単一のポリマー中間層において達成される。2以上の別々のポリマー層を互いと接触させて配置して次に単一の中間層に積層する本発明のそれぞれの中間層の態様に関しては、共押出されたポリマーシートが本発明の積層中間層における個々の層に対応する2以上の別個の層を有する一態様も存在する。更に、多層ガラスパネル、中間層の製造方法、及び別々のポリマー層を一緒に積層する本発明の多層ガラスパネルの製造方法のそれぞれに関して、多層中間層に代えて共押出されたポリマー層を用いる類似の態様も存在する。
【0096】
[0106]本発明はまた、上記に記載したような、残留ヒドロキシルレベルにおける高い分散度、又は残留アセテートレベルにおける高い分散度、或いは残留ヒドロキシルレベルにおける高い分散度と残留アセテートレベルにおける高い分散度の両方のような組成における高い分散度を有する樹脂を製造する種々の方法も包含する。
【0097】
[0107]本発明はまた、本明細書において記載したような、第1のポリマー層、及び異なる組成の2種類以上の樹脂、又は組成における高い分散度を有する樹脂組成物を含む第2のポリマー層(ここで、2つのポリマー層は異なる組成を有する)を形成し、2つのポリマー層を一緒に積層して中間層を形成する工程を含む、中間層の製造方法も包含する。
【0098】
[0108]本発明はまた、第1のポリマー層、異なる組成の2種類以上の樹脂を含む第2のポリマー層、及び第3のポリマー層(ここで、3つのポリマー層は本明細書に記載した3層の態様にしたがう組成を有する)を形成し、3つのポリマー層を一緒に積層して中間層を形成する工程を含む、中間層の製造方法も包含する。
【0099】
[0109]本発明はまた、第1のポリマー層、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される異なる組成を有する樹脂を含む第2のポリマー層、及び第3のポリマー層(ここで、3つのポリマー層は、本明細書に記載した3層の態様にしたがう組成を有する)を形成し、3つのポリマー層を一緒に積層して中間層を形成する工程を含む、中間層の製造方法も包含する。
【0100】
[0110]本発明はまた、第1のポリマー層、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される異なる組成を有する樹脂を含む第2のポリマー層、及び第3のポリマー層(ここで、3つのポリマー層は本明細書に記載した3層の態様にしたがう組成を有する)を形成し、3つのポリマー層を一緒に積層して中間層を形成する工程を含む、中間層の製造方法も包含する。
【0101】
[0111]本発明はまた、種々の接着制御添加剤(ACA)を含む中間層も包含する。かかるACAとしては、米国特許第5,728,472号明細書(その全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)に開示されているACA、残留酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)、及び/又はマグネシウムビス(2−エチルヘキサノエート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
[0112]本発明はまた、中間層に幾つかの更なる特性を与えるための他の添加剤も包含する。かかる添加剤としては、当業者に公知の添加剤の中でも、染料、顔料、安定剤(例えば紫外線安定剤)、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、IR吸収剤又は遮断剤(例えばインジウムスズオキシド、アンチモンスズオキシド、六ホウ化ランタン(LaB)、及びセシウムタングステンオキシド)、加工助剤、流動向上添加剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、成核剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤、及び充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
[0113]本発明はまた、ガラス、アクリル樹脂、又はポリカーボネートのような単一の基材も包含し、その上にポリマー中間層シートが配置され、最も通常的にはポリマー中間層の上にポリマーフィルムが更に配置される。ポリマー中間層シートとポリマーフィルムの組み合わせは、当該技術において一般に二重層と呼ばれる。二重層構造を有する代表的な多層パネルは、ガラス/ポリマー中間層シート/ポリマーフィルムであり、ここでポリマー中間層シートには上述したように複数の中間層を含ませることができる。
【0104】
[0114]本発明はまた、ガラス又はアクリル樹脂層のような当該技術において公知の2つの剛性で透明なパネルの間に本発明の任意の中間層を積層することを含む、多層ガラスの製造方法も包含する。本発明はまた、本発明の多層中間層を含む、風防ガラス又は建物の窓のような多層ガラスパネルも包含する。また、ガラスパネルに代えてアクリル樹脂のようなプラスチック或いは他の好適な材料を有する多層ガラスパネルも包含する。当業者であれば本発明の中間層を用いて上記に記載したもの以外の数多くの構造体を製造することができることを容易に認識するので、多層パネルのこれらの例はいかなるようにも限定することは意図していない。
【0105】
[0115]本発明の中間層を含むガラスパネルの音響伝達損失のような遮音特性は、振動測定から得られる減衰損失係数の値によって評価することができる。ガラスパネルの音響伝達損失は、パネルの減衰損失係数と相関する(例えば、Lu, J: Designing PVB Interlayer for Laminated Glass with Enhanced Sound Reduction, 2002, InterNoise 2002, 論文582を参照)。減衰損失係数(η)は、ISO−16940に記載されている機械インピーダンス測定によって測定した。幅25mm、長さ300mmで1対の2.3mmの透明ガラスを有する積層ガラス棒状試料を調製し、振動振盪機(Bruel and Kjaer)によって棒材の中心点において励振した。インピーダンスヘッド(Bruel and Kjaer)を用いて、棒材を励振して振動させるための力、及び振動速度を測定し、得られる伝達関数をNational Instrumentデータ獲得及び分析システムに記録する。ハーフパワー法を用いて、第1振動モードにおける減衰損失係数を計算する。減衰損失係数がより高いことは、より良好な遮音性能を意味する。
【0106】
[0116]種々の樹脂試料に関する樹脂組成における分散度は、傾斜ポリマー溶離クロマトグラフィー(GPEC)によって測定した。ポリ(ビニルブチラール)のようなポリ(ビニルアセタール)に関しては、残留ポリビニルアルコール含量の分布を評価するためにGPEC法が用いられている(例えば、Striegel, A.M., Journal of Chromatography A 2002, 971, 151を参照)が、残留ポリ酢酸ビニル含量における差のような他の組成変数を検出することもできる。GPEC法は、順相モード又は逆相モードで運転することができる。本発明の樹脂組成物の分析に関しては、用いたGPEC法は逆相HPLCモードに基づくものであった。用いた実験条件は、(1)Thermo Scientific Dionex Ultimate 3000シリーズHPLC;(2)Corona Veo充填エアゾール検出器−蒸発器(低設定);(3)カラム:Supelco Discovery C18、150mm、4.6mm、5ミクロン、180A;(4)カラム温度:30℃;(5)注入体積:10マイクロリットル;及び(6)下表に示すように1mL/分の流速において勾配条件下で移動相を運転した。
【0107】
【表1-1】
【0108】
[0117]試料を調製するために、約0.01〜0.02グラムのPVB樹脂を10ミリリットルの1−メチル−2−ピロリドン(NMP、CAS[872-50-4])中に溶解した。溶液を室温において一晩放置して溶解させ、次に0.22ミクロンのPTFEフィルターを通して濾過した。
【0109】
[0118]同じPVAc含量(約2モル%未満)において種々のPVOH含量の1組のPVB樹脂から較正曲線を作成した。較正樹脂のPVOH濃度は、近赤外分光法(NIRA)によって測定した。NIRAベースの濃度は、ASTM−D1396に基づく較正から形成した。ピーク最大値は、較正(標準)試料に関するPVOHの重量%であると仮定した。PVOH組成物のlogを滞留時間の関数としてプロットすることによって較正曲線を得た。樹脂の組成における分散度を、示した残留ヒドロキシルレベルを有する樹脂に関して測定し、下記の表及び実施例において示す。
【0110】
[0119]クロマトグラフィーソフトウエアを用いて、クロマトグラフィーピークを100の領域片に分割した。これらの片を用いて重量(平均)PVOH平均値(PVOH)を作成した。組成における分散度は、まず、ピーク高さの15%であったピーク値の上下の点において算出されたPVOH値における差を求めることによって計算した。組成における分散度は、このPVOHの差を重量平均(平均)PVOHで割ることによって算出した。試料が複数のピークを含む場合に関しては、(図6に示すように)より大きなピークを用いて15%ピーク高さを求め、PVOHの差にこの15%ピーク高さの上方であった複数のピークを含めて分散度を求めた。用いた式は次の通りであった。
【0111】
[0120]PVOH=ΣA(PVOH)/ΣA(i=1〜100) (I)
[0121]分散度=[(PVOH)−(PVOH)]/PVOH (II)
[0122]上式(I)及び(II)において、Aはi番目の片の標準化面積であり、(PVOH)及び(PVOH)は、ピーク最大値の上下の15%ピーク高さにおいて算出されたPVOHの組成である。
【0112】
[0123]本発明はまた、下記に示す態様1〜50も包含する。
[0124]態様1は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0113】
[0125]態様2は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は、20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0114】
[0126]態様3は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は約5重量%〜約50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0115】
[0127]態様4は、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂が約5重量%〜50重量%の量で存在する、態様1〜2のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
[0128]態様5は、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂が約25重量%〜約50重量%の量で存在する、態様1〜4のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0116】
[0129]態様6は、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂が20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、態様1又は3のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0117】
[0130]態様7は、第3のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量が、第1のポリ(ビニルブチラール樹脂)又は第2のポリ(ビニルブチラール樹脂)の残留ヒドロキシル含量と同等である、態様1〜6のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0118】
[0131]態様8は、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差が少なくとも2.0重量%ある、態様1〜7のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0119】
[0132]態様9は、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差が少なくとも3.0重量%である、態様1〜8のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0120】
[0133]態様10は、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂と第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のガラス転移温度(T)の間の差が少なくとも3.0℃である、態様1〜9のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0121】
[0134]態様11は、態様1〜10のいずれかのポリマー中間層を含む多層ガラスパネルである。
[0135]態様12は、第1のガラスパネル;態様1〜10のいずれかの特徴を含むポリマー中間層;第2のガラスパネル;を含み、ポリマー中間層は第1のガラスパネルと第2のガラスパネルの間に配置されている多層ガラスパネルである。
【0122】
[0136]態様13は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;そして、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0123】
[0137]態様14は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物を含み、組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤を含む軟質層を含み;軟質層は組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は少なくとも0.40であり、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも大きく;ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0124】
[0138]態様15は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、軟質層の樹脂組成物は、約8〜約16重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0125】
[0139]態様16は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である、態様13〜15のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0126】
[0140]態様17は、軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度が、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い、態様13〜16のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0127】
[0141]態様18は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である、態様13〜17のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0128】
[0142]態様19は、軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度が、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い、態様13〜18のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0129】
[0143]態様20は、ポリマー中間層の軟質層中の可塑化樹脂組成物が20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、態様13〜19のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0130】
[0144]態様21は、軟質層中の樹脂組成物が、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される、態様13〜20のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0131】
[0145]態様22は、軟質層中の樹脂組成物が、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される、態様13〜21のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0132】
[0146]態様23は、ポリマー中間層が第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、態様13〜22のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0133】
[0147]態様24は、組成における第3の分散度が、組成における第1の分散度よりも少なくとも10%高く、組成における第2の分散度よりも少なくとも10%高い、態様13〜23のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0134】
[0148]態様25は、軟質層のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、約1モル%〜約28モル%の平均残留酢酸ビニル含量を有する、態様13〜24のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0135】
[0149]態様26は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留ヒドロキシル含量及び組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、軟質層は少なくとも0.40の組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高い、態様13〜25のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0136】
[0150]態様27は、ポリマー中間層が、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.16の減衰損失係数(η)を有する、態様13〜26のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0137】
[0151]態様28は、ポリマー中間層の軟質層が少なくとも0.42の組成における分散度を有する、態様13〜27のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
[0152]態様29は、態様13〜28のいずれかのポリマー中間層を含む多層ガラスパネルである。
【0138】
[0153]態様30は、第1のガラスパネル;態様13〜29のいずれかの特徴を含むポリマー中間層;第2のガラスパネル;を含み、ポリマー中間層は第1のガラスパネルと第2のガラスパネルの間に配置されている多層ガラスパネルである。
【0139】
[0154]態様31は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0140】
[0155]態様32は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は5重量%〜50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0141】
[0156]態様33は、第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び可塑剤;を含む少なくとも1つの軟質層;第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び可塑剤;を含む少なくとも1つのより硬質の層;を含み;ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0142】
[0157]態様34は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;そして、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0143】
[0158]態様35は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物を含み、組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤を含む軟質層;を含み;軟質層は組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は少なくとも0.40であり、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高く;そして、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0144】
[0159]態様36は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層;並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、軟質層の樹脂組成物は、約8〜約16重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層;を含み;ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0145】
[0160]態様37は、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂が5重量%〜50重量%の量で存在する、請求項31〜36のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0146】
[0161]態様38は、軟質層が少なくとも0.40の組成における分散度を有する、態様31〜37のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
[0162]態様39は、軟質層が少なくとも0.40の組成における分散度を有し、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、態様31〜38のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0147】
[0163]態様40は、軟質層が少なくとも0.40の組成における分散度を有し、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、態様31〜39のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0148】
[0164]態様41は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である、態様31〜40のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0149】
[0165]態様42は、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂が第1のガラス転移温度(T)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂が第2のガラス転移温度(T)を有し、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である、態様31〜41のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0150】
[0166]態様43は、軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度が、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い、態様31〜42のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0151】
[0167]態様44は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である、態様31〜43のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0152】
[0168]態様45は、軟質層中の樹脂組成物が、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される、態様31〜44のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0153】
[0169]態様46は、軟質層中の樹脂組成物が、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される、態様31〜45のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0154】
[0170]態様47は、ポリマー中間層が第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、態様31〜46のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0155】
[0171]態様48は、組成における第3の分散度が、組成における第1の分散度よりも少なくとも10%高く、組成における第2の分散度よりも少なくとも10%高い、態様31〜47のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0156】
[0172]態様49は、ポリマー中間層の軟質層中の可塑化樹脂組成物が20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、態様31〜48のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【0157】
[0173]態様50は、軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物が、第1の残留ヒドロキシル含量及び組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、軟質層は少なくとも0.40の組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高い、態様31〜49のいずれかの特徴を含む向上した遮音性を有するポリマー中間層である。
【実施例】
【0158】
[0174]多層中間層の向上した遮音(又は減衰)特性は、第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂及び第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を有する樹脂組成物、及び/又は(少なくとも0.40の)高い分散度を有する樹脂組成物、並びに少なくとも1種類の可塑剤を含む軟質層を有する多層(3層)中間層を、第1のポリ(ビニルブチラール)及び第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂のブレンドを有する樹脂組成物、及び/又は(0.39以下の)低い分散度を有する樹脂組成物、並びに少なくとも1種類の可塑剤を含む軟質層を有する多層中間層と比較することによって最も容易に認識することができる。
【0159】
[0175]種々の残留ヒドロキシル及び残留アセテート含量を有する樹脂組成物、並びにそれらの特性を表1にまとめる。実施例においては、単一の樹脂を含む11種類の比較樹脂(CR−1〜CR−11)、及び複数の樹脂のブレンド(DR−1〜DR−7;種々の個々の比較樹脂から製造した)、又は下記に記載するように本発明方法にしたがって製造した樹脂組成物(DR−8及びDR−9)のいずれかを含む9種類の本発明樹脂(DR−1〜DR−9)を用いた。表2は、DR−1〜DR−7を製造するために、どの樹脂のタイプ(残留ヒドロキシルレベル及び残留アセテートレベルのレベル)をブレンドしたか、及び本発明樹脂のDR−1〜DR−9の全部の組成における分散度の特性を示す。幾つかの場合においては、組成における分散度に関して試験した樹脂は、ブレンド中の樹脂とは異なるロットの樹脂からのものであってよいが、樹脂特性は同一であった。比較樹脂は0.39以下の組成における分散度(低分散度)を有しており、一方、本発明樹脂は少なくとも0.40、具体的には樹脂のDR−1〜DR−9においては約0.41以上の組成における高い分散度を有していた。
【0160】
[0176]本発明樹脂のDR−1〜DR−7は、異なる残留アセテート及び/又は残留ヒドロキシルのレベルを有する2種類の異なる出発樹脂を混合して樹脂のブレンド又は組成物を形成することによって得られた樹脂のブレンドを含んでいた。本発明樹脂のDR−1〜DR−7の特性を表1に示す。樹脂のDR−8及びDR−9に関しては、2種類の樹脂のブレンドに代えて、本発明方法にしたがって次のようにして樹脂組成物を調製した。DR−8に関しては、約98〜100%の加水分解度を有する第1のPVOH樹脂を、約88%の加水分解度を有する第2のPVOH樹脂と1:1(wt/wt)の比でブレンドし、ブチルアルデヒド及び(当該技術において公知の)酸触媒と反応させて、約12.4重量%の残留ヒドロキシル含量及び約7モル%の残留アセテート含量を有し、0.59の分散度を有する得られる樹脂を形成した。DR−9に関しては、約98〜100%の加水分解度を有する第1のPVOH樹脂を、約78%の加水分解度を有する第2のPVOH樹脂と1:1(wt/wt)の比でブレンドし、ブチルアルデヒド及び(当該技術において公知の)触媒と反応させて、約11.3重量%の残留ヒドロキシル含量及び約12モル%の残留アセテート含量を有し、0.48の分散度を有する得られる樹脂を形成した。本発明樹脂のDR−8及びDR−9の特性も表1に示す。
【0161】
【表1-2】
【0162】
[0177]表1において、上述したように、DR−8及びDR−9は、2種類のPVB樹脂のブレンド又は混合物ではなく、その代わりに上記に記載の方法にしたがって異なるPVOH樹脂を用いて出発して調製した。
【0163】
[0178]表1は、組成における広い分布又は高い分散度を有する軟質層又はコア層の樹脂組成物を製造することができたことを示す。本発明樹脂を比較樹脂と比較すると、本発明樹脂は全て0.40より高く、又は更には少なくとも0.41若しくはそれ以上、或いは少なくとも0.42若しくはそれ以上の組成における分散度を有していた。
【0164】
[0179]表2は、組成における高い分散度を有する本発明樹脂(DR−1〜DR−7)を調製するために用いた出発比較樹脂を示す。
【0165】
【表2】
【0166】
[0180]表2において示されるように、異なる組成における分散度の2種類の出発樹脂をブレンドすると、ブレンドした組成物の分散度は、最も組成における高い分散度を有する出発樹脂のものよりも更に相当に高かった。例えば、本発明樹脂のDR−2(比較樹脂CR−8とCR−9のブレンドである)は0.58の組成における分散度を有しており、一方、ブレンド中の個々の樹脂の最も組成における高い分散度は僅か0.32(CR−8に関する)であり、本発明樹脂のDR−7(比較樹脂CR−1とCR−6のブレンドである)に関しては、ブレンドの組成における分散度は0.67であり、一方、ブレンド中の個々の樹脂の最も組成における高い分散度は0.39(CR−6に関する)であった。表2において示されるように、組成における低い分散度を有する2種類の樹脂をブレンドすると、ブレンドの組成における分散度が少なくとも10%、特定のケースにおいては少なくともほぼ20%若しくはそれ以上、幾つかのブレンドにおいては30%以上、又は40%以上、或いは更には50%以上(DR−3を参照)増加した。
【0167】
[0181]100部のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物(比較樹脂のCR−1〜CR−11、又は本発明樹脂のDR−1〜DR−9のいずれか)、並びに表に示す量の種々の量の3GEH可塑剤及び他の通常の添加剤(上記に記載)を混合及び溶融押出することによって、代表的な軟質(コア)層(表3〜6において「本発明層」のDL−1〜DL−16と示す)、及び比較の軟質(コア)層(表において「比較層」のCL−1〜CL−3と示す)を製造した。次に、本発明層及び比較層を用いて、これらを、表において比較中間層及び本発明中間層(それぞれCI−1〜CI−4及びDI−1〜DI−26)として示すように、2つの硬質外側(スキン)層と組み合わせることによって種々の多層中間層を構成した。複数の硬質(スキン)層は、それぞれ多層中間層において15ミルの厚さを有しており、約19重量%の残留ヒドロキシル含量及び2%の残留アセテート含量を有する100部のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び38部の3GEH可塑剤、並びに他の通常の添加剤を溶融押出することによって製造した。多層中間層は全て、硬質層/軟質層/硬質層(又はスキン層/コア層/スキン層)の構造を有していた。
【0168】
[0182]これらの実施例及び表3〜6におけるデータは、コアにおいてより高い残留ヒドロキシル含量及び異なるガラス転移温度を有する第2のPVB樹脂をより低い残留ヒドロキシルレベルを有する第1のPVB樹脂に加える(又はこれと組み合わせる)場合のように、異なる残留ヒドロキシル含量及びガラス転移温度を有する少なくとも2種類のPVB樹脂をコア層において用いる場合、或いは高い分散度を有する樹脂組成物を軟質層において用いる場合には、一定の温度範囲にわたって音響減衰特性を向上及び達成することができることを示す。
【0169】
[0183]表3〜6においては、異なる残留ヒドロキシル含量及びガラス転移温度並びに組成における分散度を有する異なる本発明樹脂から構成した軟質層を、低い分散度を有する樹脂組成物を含む軟質層と比較している。ガラス転移温度、減衰損失係数、及び分散度の値を表3〜6に示す。
【0170】
【表3】
【0171】
[0184]表3は、低い分散度及び約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量を有する樹脂組成物から形成した軟質(コア)層を有する比較中間層を、高い分散度及び約10.5重量%の平均残留ヒドロキシル含量(約1.9重量%の組成物中の樹脂の間の残留ヒドロキシル含量の差分)を有する樹脂組成物を含む軟質(コア)層を有する本発明中間層と比較している。コア層は、5ミル及び10ミルの2種類の厚さ、並びに60phr〜75phrの種々の可塑剤レベルで形成した。ブレンド中の個々の可塑化樹脂に関するガラス転移温度、及びコア層の観察されたガラス転移温度を示す。個々のガラス転移温度はこれらの層においては大きな量は相違していなかったので、コア層については1つのガラス転移温度(2つの個々のガラス転移温度の間であった)しか観察及び測定されなかった。
【0172】
[0185]表3において示されるように、異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂のブレンドを含む本発明中間層のコア層の樹脂の組成物は、狭い分布又は0.31の低い分散度を有する樹脂組成物のみを含む比較層における樹脂の分散度と比べて、全て0.41の分散度を有していた。
【0173】
[0186]表3に示すように、全ての中間層について減衰損失係数を測定した。厚さ5ミルのコア層を有する本発明中間層に関しては、70及び75phrの可塑剤レベルにおいて、減衰損失係数は、比較中間層のものと比べて、10℃及び20℃においてはより高く、30℃においては実質的に変化していなかった。厚さ10ミルのコア層に関しては、同じであるが、より顕著な傾向が観察され、65、70、及び75phrの可塑剤レベルにおいて、減衰損失係数は10℃及び20℃においてより高く、30℃においては実質的に変化していなかった。60phrにおいては、減衰損失係数は、20℃及び30℃においては増加し、10℃においては変化しないで維持された。
【0174】
[0187]これらの例は、異なる残留ヒドロキシル含量(それぞれ9.6及び11.5重量%)の2種類の樹脂から形成した高い分散度を有する樹脂組成物を軟質(コア)層中に有することの利益を示す。これらの例において、本発明層の平均残留ヒドロキシル含量のレベルは、比較層中の樹脂の残留ヒドロキシルレベルと同等であり、10℃〜30℃の温度範囲において多層中間層の遮音特性が向上し且つ広くなった。軟質(コア)中の可塑剤の量を更に調節することによって、より高いか又はより低い温度限界のいずれかにおいて遮音特性を向上させることができる。これは、比較中間層のCI−1(減衰損失係数は20℃において最大であり(そして10℃及び30℃の両方において減少した))を、DI−1及びDI−2のような本発明中間層(減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、10℃において増加し、30℃において殆ど変化しないで維持された(即ち減少しなかった))と比較することによって明確に示される。本発明中間層のDI−3及びDI−4に関しては、減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、30℃においても増加した。CI−2をDI−5、DI−6、及びDI−7と比較すると同様の傾向が示され、減衰損失係数は、比較中間層のCI−2に関しては20℃において最大であり(そして、10℃及び30℃の両方において減少し)、一方、本発明中間層に関しては、減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、10℃においても増加し、30℃において殆ど変化しないで維持された。本発明中間層のDI−8に関しては、減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、30℃においても増加し、一方、10℃においては実質的に変化しないで維持され、これによりより広い温度範囲にわたってより良好な遮音性を与えられた。
【0175】
[0188]表4は、約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量を有する比較層(CL−1)を有する中間層を、複数の樹脂のブレンドであり、約11.3重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び約3.4重量%の残留ヒドロキシル含量の差分を有する樹脂組成物を含む本発明層(DL−5〜DL−8)と比較している。コア層は、5ミル及び10ミルの2種類の厚さで、60phr〜75phrの種々の可塑剤レベルにおいて形成した。可塑化樹脂に関するガラス転移温度、及びコア層のガラス転移温度を示す。ここでも、個々のガラス転移温度は大きな量は相違していないので、コア層について1つのガラス転移温度(2つの個々のガラス転移温度の間であった)しか測定されなかった。
【0176】
【表4】
【0177】
[0189]表4において示されるように、異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂のブレンドを含む樹脂組成物を含む本発明層のコア層の樹脂組成物は、0.31の組成における狭い分布又は低い分散度を有する比較層における樹脂の分散度と比べて、全て0.68の分散度を有していた。
【0178】
[0190]表4に示すように、全ての中間層について減衰損失係数を測定した。5ミルのコア層に関しては、60、65、70、及び75phrの可塑剤レベルにおいて、減衰損失係数は、10℃及び20℃においては比較中間層のものよりも低く、30℃においてはより高かった。10℃及び20℃における本発明中間層に関するより低い減衰損失係数は、(比較中間層に関する10.5に対して)11.3のより高い平均残留ヒドロキシル含量、及び5ミルのより薄いコア層の厚さのためである。コア層の厚さを5ミルから10ミルに増加させると、10℃及び20℃において減衰損失係数の大きな増加があった。75phrの可塑剤レベルにおいては、本発明中間層の減衰損失係数は、3つの温度全てにおいて比較中間層のものよりも良好であった。可塑剤レベルを70phr又は60phrに減少させると、10℃において減衰損失係数の減少があったが、減衰損失係数は本発明中間層に関して20℃及び30℃の両方において更に向上した。したがって、コア層においてより高い平均残留ヒドロキシル含量を有していても、組成における高い分散度を有するコア層を有する中間層に関してコア層の厚さを増加させることによって、より広い温度範囲にわたって中間層の遮音性を向上させることができる。
【0179】
[0191]これは、比較中間層のCI−1(減衰損失係数は20℃において最大であり(そして10℃及び30℃の両方において減少した)を、DI−9、DI−10、DI−11、及びDI−12(減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、30℃においても増加した)と比較することによって明確に示される。10ミルの厚さのコア層を比較すると同じ傾向が示され、CI−2に関しては、減衰損失係数は20℃において最大であった(そして10℃及び30℃の両方において減少した)が、DI−13、DI−14、DI−15、及びDI−16に関しては、減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、30℃においても増加し、より広い温度範囲にわたってより良好な遮音性が与えられた。DI−13、DI−14、及びDI−15に関しては、10℃における減衰損失係数は、更に少なくとも0.20であった。
【0180】
[0192]表5は、約13重量%の残留ヒドロキシル含量を有する比較層を有する中間層を、約13重量%の平均残留ヒドロキシル含量及び約6.7重量%の残留ヒドロキシル含量の差分を有する2種類の樹脂を含む樹脂組成物を含む本発明層と比較している。コア層は、5ミル及び10ミルの2種類の厚さ、並びに60phr及び65phrの可塑剤レベルで形成した。個々の可塑化樹脂に関するガラス転移温度、及びコア層のガラス転移温度を示す。より高い残留ヒドロキシルレベルの差分(即ち6.7重量%の残留ヒドロキシル含量の差分)においては、本発明中間層において、2つの温度の間により大きな差があったので2つの異なるガラス転移温度が測定できた。
【0181】
【表5】
【0182】
[0193]表5に示されるように、異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂のブレンドである組成物を含む本発明層の樹脂組成物は、狭い分布又は0.29の低い分散度を有する比較層樹脂の組成における分散度と比べて、全て0.72の分散度を有していた。
【0183】
[0194]表5に示すように、全ての中間層について減衰損失係数を測定した。5ミルのコア層に関しては、全ての可塑剤レベルにおいて、本発明中間層の減衰損失係数は、3つの温度全てにおいて比較中間層のものと同等であった。10ミルのコア層に関しては、全ての可塑剤レベルにおいて、減衰損失係数は10℃及び20℃においては非常により高く、30℃においては僅かにより低かった。表5に示すように、2つの樹脂の間の残留ヒドロキシル含量においてより大きな差がある場合には、コア層の厚さを増加させることによって遮音性をより低い温度において向上させることができる。
【0184】
[0195]表6は、約10.5重量%の残留ヒドロキシル含量を有する比較層を有する中間層を、それぞれ約10.5重量%及び11.3重量%の平均残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂を含む樹脂組成物を含む本発明層と比較している。
【0185】
【表6】
【0186】
[0196]本発明中間層のDI−5、DI−6、及びDI−7と、DI−21、DI−22、及びDI−23は、同じ平均残留ヒドロキシル含量を有するが、樹脂組成物は異なる本発明樹脂である。約10.5重量%の平均残留ヒドロキシル含量を有する本発明樹脂は、2種類の樹脂(それぞれCR−8(9.6重量%の残留ヒドロキシル含量)及びCR−11(11.5重量%の残留ヒドロキシル含量;1.9重量%の残留ヒドロキシル含量の差分)を50:50の比でブレンドすることによって得た。約10.5重量%のこの同じ平均残留ヒドロキシル含量はまた、2種類の異なる樹脂(それぞれCR−8(9.6重量%の残留ヒドロキシル含量)及びCR−9(13重量%の残留ヒドロキシル含量);3.4重量%の残留ヒドロキシル含量の差分)を75:25の比でブレンドすることによっても得た。同様に、本発明中間層のDI−13、DI−14、及びDI−15と、DI−24、DI−25、及びDI−26は、2種類の樹脂(それぞれCR−8(9.6重量%の残留ヒドロキシル含量)及びCR−9(13重量%の残留ヒドロキシル含量);3.4重量%の残留ヒドロキシル含量の差分)を50:50の比でブレンドすることによって、並びに2種類の異なる樹脂(それぞれCR−8(9.6重量%の残留ヒドロキシル含量)及びCR−5(16.3重量%の残留ヒドロキシル含量);6.7重量%の残留ヒドロキシル含量の差分)を75:25の比でブレンドすることによって得た同じ平均残留ヒドロキシル含量を有するものであった。
【0187】
[0197]コア層は、10ミルの厚さで、65phr〜75phrの種々の可塑剤レベルにおいて形成した。個々の可塑化樹脂のガラス転移温度、及びコア層の1つ又は複数のガラス転移温度を示す。幾つかの場合においては、個々のガラス転移温度は大きな量は相違していないか、或いは第2の可塑化樹脂のガラス転移ピークはより少量の樹脂の存在のために弱いので、コア層については1つのガラス転移温度(2つの個々のガラス転移温度の間であった)しか測定されなかった。
【0188】
[0198]約10.5重量%の平均残留ヒドロキシル含量においては、第1の樹脂と第2の樹脂の間の残留ヒドロキシル含量における差分又は差がより小さい(1.9重量%)場合には、減衰損失係数は、5ミルのコア層(DI−5〜DI−7)に関しては10及び20℃において向上した。第2の樹脂の残留ヒドロキシルを11.5%から13%に増加させることなどによって残留ヒドロキシル含量における差分又は差を1.9%から3.4%に増加させると、3つの温度全てにおいて減衰損失係数におけるよりバランスの取れた増加が得られた(DI−21〜DI−22)。
【0189】
[0199]約11.3重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び3.4重量%の第1の樹脂と第2の樹脂の間の残留ヒドロキシル含量における差においては、減衰損失係数は20及び30℃において向上した(DI−13〜DI−15)。第2の樹脂の残留ヒドロキシルを13%から16.3%に増加させることなどによって差を3.4%から6.7%に増加させると、65及び70の可塑剤レベルにおいて30℃における減衰損失係数の増加がもたらされ(DI−25及びDI−26)、3つの温度全てにおいてよりバランスの取れた増加が与えられた(DI−24)。
【0190】
[0200]これは、比較中間層のCI−2(減衰損失係数は20℃において最大であり(そして10℃及び30℃の両方において減少した))を、DI−5、DI−6、DI−7、DI−21、及びDI−22のような本発明中間層(減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、10℃においても増加し、30℃においては比較中間層と比べて実質的に変化しないで維持された)と比較することによって明確に示される。比較中間層のCI−2を、本発明中間層のDI−13、DI−14、DI−15、DI−24、DI−25、及びDI−26と比較すると、減衰損失係数は同様に20℃において最大であったが、30℃においても増加し、10℃においては比較中間層と比べて、幾つかの場合においては僅かに減少し、他の場合においては実質的に変化しないで維持された。異なるヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂を有する中間層を異なる比及び異なる分散度で組み合わせて、個々の樹脂よりも、より広い温度範囲にわたってより良好な遮音性、及びより組成における高い分散度を与える樹脂組成物を形成することができる。
【0191】
[0201]表6において示されるように、異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類の樹脂のブレンドを含む本発明層の樹脂組成物は全て、狭い分布又は0.31の低い分散度を有する樹脂組成物のみを含む比較層における樹脂組成物の分散度と比べて、0.41又はそれ以上(或いは更には0.58又はそれ以上)の分散度を有していた。
【0192】
[0202]結論すると、ここに記載する軟質層を有する多層中間層は、当該技術において従来用いられていた従来の多層中間層を凌ぐ数多くの有利性を有する。概して、当該技術において従来用いられていた多層中間層と比較して、異なるヒドロキシル含量及びガラス転移温度を有する2種類(又はそれ以上)の異なる樹脂のブレンドを用いる場合のように、組成におけるより広い分布又は分散度を有するここに記載する軟質層を含む多層中間層は、向上した遮音性能を有し、中間層を使用する温度範囲を拡げる。他の有利性は当業者に容易に明らかになるであろう。
【0193】
[0203]好ましい態様であると現在考えられているものを含む幾つかの態様の記載に関連して発明を開示したが、詳細な説明は例示の意図であり、本発明の範囲を限定すると理解すべきではない。当業者に理解されるように、本明細書において詳細に記載されているもの以外の態様は本発明に包含される。発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載されている態様の修正及び変更を行うことができる。
【0194】
[0204]更に、本発明の任意の単一の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴は、互換的な場合には、本発明の任意の他の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴と互換的に用いて、本明細書全体にわたって与えられているそれぞれの構成要素に関して規定されている値を有する一態様を形成することができることが理解される。例えば、与えられている任意の範囲の可塑剤を含むことに加えて、与えられている任意の範囲の残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間層を形成して、本発明の範囲内であるが、列記するのは煩雑である多くの変形体を形成することができる。更に、フタレート又はベンゾエートのような属又はカテゴリーに関して与えられている範囲はまた、他に示していない限りにおいて、ジオクチルテレフタレートのようなカテゴリーの属又は構成要素の中の種に適用することもできる。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(2)第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は5重量%〜50重量%の量で存在する、(1)に記載のポリマー中間層。
(3)軟質層は少なくとも0.40の組成における分散度を有する、(1)に記載のポリマー中間層。
(4)第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂;
第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は5重量%〜50重量%の量で存在する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(5)軟質層は少なくとも0.40の組成における分散度を有し、ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、(4)に記載のポリマー中間層。
(6)第1の残留ヒドロキシル含量及び第1のガラス転移温度(T)を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び第2のガラス転移温度(T)を有し、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂;及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つの軟質層と;
第3の残留ヒドロキシル含量を有する第3のポリ(ビニルブチラール樹脂);及び
可塑剤;
を含む少なくとも1つのより硬質の層と;
を含み;
ポリマー中間層の軟質層中のそれぞれの可塑化樹脂は20.0℃未満のガラス転移温度(T)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(7)軟質層は少なくとも0.40の組成における分散度を有し、ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも0.15の減衰損失係数(η)を有する、(6)に記載のポリマー中間層。
(8)ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層と;
を含み;そして
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(9)軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留ヒドロキシル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%である、(8)に記載のポリマー中間層。
(10)第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂は第1のガラス転移温度(T)を有し、第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂は第2のガラス転移温度(T)を有し、第1のガラス転移温度(T)と第2のガラス転移温度(T)との間の差は少なくとも1.5℃である、(9)に記載のポリマー中間層。
(11)軟質層中の樹脂組成物の組成における分散度は、軟質層中の第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度、及び軟質層中の第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂の組成における分散度よりも高い、(8)に記載のポリマー中間層。
(12)軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留酢酸ビニル含量を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び第2の残留酢酸ビニル含量を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留酢酸ビニル含量と第2の残留酢酸ビニル含量との間の差は少なくとも1.0モル%である、(8)に記載のポリマー中間層。
(13)軟質層中の樹脂組成物は、第1の加水分解度を有する第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて反応混合物を形成し、第2の加水分解度を有する第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂を反応混合物に加え、そして第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を形成するプロセスによって製造される、(8)に記載のポリマー中間層。
(14)軟質層中の樹脂組成物は、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物(ここで、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂組成物はそれぞれ1つの加水分解度を有し、第1のポリ(ビニルアルコール)樹脂と第2のポリ(ビニルアルコール)樹脂の加水分解度の間の差は少なくとも2%である)を混合して混合物を形成し、混合物をブチルアルデヒドと反応させて、少なくとも0.40の組成における分散度を有する樹脂を製造するプロセスによって製造される、(8)に記載のポリマー中間層。
(15)ポリマー中間層は第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、(8)に記載のポリマー中間層。
(16)ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物を含み、組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂、及び可塑剤を含む軟質層と;
を含み;
軟質層は組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は少なくとも0.40であり、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高く;
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(17)組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度よりも少なくとも10%高く、組成における第2の分散度よりも少なくとも10%高い、(16)に記載のポリマー中間層。
(18)ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含む硬質層と;
ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物及び可塑剤を含み、軟質層の樹脂組成物は、約8〜約16重量%の平均残留ヒドロキシル含量、及び少なくとも0.40の組成における分散度を有する軟質層と;
を含み;
ポリマー中間層は、(ISO−16940にしたがう機械インピーダンス測定によって測定して)10℃、20℃、及び30℃から選択される2以上の異なる温度において測定して少なくとも約0.15の減衰損失係数(η)を有する、向上した遮音性を有するポリマー中間層。
(19)ポリマー中間層は第2の硬質層を更に含み、軟質層は複数の硬質層に隣接して且つその間に配置されている、(18)に記載のポリマー中間層。
(20)軟質層中のポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物は、第1の残留ヒドロキシル含量及び組成における第1の分散度を有する第1のポリ(ビニルブチラール)樹脂、並びに第2の残留ヒドロキシル含量及び組成における第2の分散度を有する第2のポリ(ビニルブチラール)樹脂を含み、第1の残留ヒドロキシル含量と第2の残留ヒドロキシル含量との間の差は少なくとも1.0重量%であり、軟質層は少なくとも0.40の組成における第3の分散度を有し、組成における第3の分散度は、組成における第1の分散度及び組成における第2の分散度のいずれよりも高い、(18)に記載のポリマー中間層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6