特許第6543105号(P6543105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543105粉末材料の運搬部材、粉末床溶融結合装置及び粉末床溶融結合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543105
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】粉末材料の運搬部材、粉末床溶融結合装置及び粉末床溶融結合方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20190628BHJP
   B29C 64/214 20170101ALI20190628BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20190628BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190628BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20190628BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B29C64/153
   B29C64/214
   B29C64/393
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B22F3/105
   B22F3/16
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-125469(P2015-125469)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-7221(P2017-7221A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】398018962
【氏名又は名称】株式会社アスペクト
(74)【代理人】
【識別番号】100159547
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴谷 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 啓三
(72)【発明者】
【氏名】早野 誠治
(72)【発明者】
【氏名】萩原 正
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246541(JP,A)
【文献】 特表2008−540173(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/140547(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/196149(WO,A1)
【文献】 特開2004−143581(JP,A)
【文献】 特開2007−307742(JP,A)
【文献】 特表2012−505774(JP,A)
【文献】 特開2016−107543(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1894371(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料を収納する粉末材料収納容器と、
前記粉末材料収納容器と並べて置かれ、粉末材料の薄層を形成する薄層形成容器と、
前記粉末材料収納容器と前記薄層形成容器の上面を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材とを有し、
前記運搬部材は、複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでおり、
前記粉末材料収納容器は、底に前記粉末材料を載せる昇降台を有し、複数の前記ブレードのうち前記移動方向に対して最後部の前記ブレードを前記粉末材料収納容器の縁に配置したときに、残りの1以上の前記ブレードが前記粉末材料の上に配置される大きさを有し、
制御手段をさらに有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動させて、前記粉末材料を収納した前記粉末材料収納容器の縁に前記最後部のブレードを配置するとともに、残りの1以上の前記ブレードを前記粉末材料の上に配置する工程と、
前記昇降台を上昇させて前記粉末材料を押し上げ、前記複数のブレードの間に供給する工程と、
前記運搬部材を移動させ、前記複数のブレードの間であって少なくとも2以上の間に前記粉末材料を保持した状態で前記粉末材料を運ぶ工程と
を有する、
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【請求項2】
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部をさらに有することを特徴とする請求項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項3】
前記運搬部材では、複数の前記ブレードのうち少なくとも前記移動方向に対して最後部の前記ブレードの下端部は、前記粉末材料収納容器と前記薄層形成容器の上面に接して移動することを特徴とする請求項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項4】
複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでおり、複数の前記ブレードのうち前記移動方向に対して最後部の前記ブレードを粉末材料収納容器の縁に配置したときに、残りの1以上の前記ブレードが粉末材料の上に配置される大きさを有している運搬部材を用意する工程と、
前記運搬部材を粉末材料の上に移動させ、前記粉末材料を押し上げて複数の前記ブレードの間に供給する工程と、
前記運搬部材を移動させて、前記複数のブレードの間であって少なくとも2以上の間に前記粉末材料を保持した状態で前記粉末材料を運ぶ工程と
を有することを特徴とする粉末床溶融結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料の薄層を選択的に溶融し結合したものを積層し、3次元造形物を作製する粉末材料の運搬部材、粉末床溶融結合装置及び粉末床溶融結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末床溶融結合装置は、加熱用のエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、粉末材料の薄層を形成しエネルギービームにより溶融結合して造形を行う薄層形成部とを備えている。
【0003】
また、薄層形成部は、図11に示すように、粉末材料19を収納する粉末材料収納容器12a, 12bと、粉末材料の薄層19aを形成する薄層形成容器11と、薄層形成部の表面上を移動し、粉末材料19を運ぶリコータ105とを備えている。
【0004】
この粉末床溶融結合装置を用いて、図11(a)乃至(c)、図12(a)に示すように、リコータ105を右側に移動させて粉末材料収納容器12aから粉末材料19を押し取り、薄層形成容器11に運び入れてパートテーブル15上に粉末材料の薄層19aを形成する。残った粉末材料19は粉末材料収納容器12bに収納する。
【0005】
この後、図12(b)に示すように、薄層19aの特定領域をエネルギービーム20により加熱することで粉末材料19を溶融して結合し、固めて、1層目の結合層19bを形成する。
【0006】
引き続き、リコータ105を上記動作に準じて左側に移動させることで、2層目の結合層19bを形成する。この場合、粉末材料収納容器12bが、粉末材料の供給側となり、粉末材料収納容器12aが、薄層を形成後に残った粉末材料を収納する収納側となる。
【0007】
その後、上記動作を繰り返し、数百層或いは数千層にわたって結合層19bを積層し、3次元造形物を作製する。
【0008】
下記特許文献1、2にはこのような粉末床溶融結合方法が記載されている。特に、特許文献2に係る発明は、特許文献3のような結合層を固定するための物体支持体と平板からなるサポート手段を用いないで、結合層19bの反りを抑制する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−155538号公報
【特許文献2】特開2015−038237号公報
【特許文献3】特許4054075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図11図12に示すリコータ105を用いた場合、粉末材料19の運搬中に、図11(b)に示すように、リコータ105の前に多くの粉末材料19が集積してくる。
【0011】
このとき、粉末材料19が重い場合、図13に示すように、リコータ105の前で部分的に下の層に大きな荷重がかかるため、下の層に結合層19bが形成されていると、粉末材料19の運搬中に結合層19bに力が偏ってかかる。そのため、結合層19bが傾き、そのままリコータ105によって引きずられてしまう。これによって、結合層19bの位置がずれてしまい、正常な造形を行うことができなくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みて創作されたものであり、粉末材料が重い場合でも粉末材料を運搬するときに下の層に部分的に大きな荷重がかからないようにすることができる運搬部材(リコータ)を備えた粉末材料の運搬部材、粉末床溶融結合装置及び粉末床溶融結合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、一観点によれば、複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいることを特徴とする粉末材料の運搬部材が提供される。
また、別の観点によれば、粉末材料を収納する粉末材料収納容器と、前記粉末材料収納容器と並べて置かれ、粉末材料の薄層を形成する薄層形成容器と、前記粉末材料収納容器と前記薄層形成容器の上面を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材とを有し、前記運搬部材は、複数の横長のブレードを備え、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいることを特徴とする粉末床溶融結合装置が提供される。
【0014】
また、他の観点によれば、複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいる運搬部材を用意する工程と、前記運搬部材を粉末材料の上に移動させ、前記粉末材料を押し上げて複数の前記ブレードの間に供給する工程と、前記運搬部材を移動させて、前記複数のブレードの間に前記粉末材料を保持した状態で前記粉末材料を運ぶ工程とを有することを特徴とする粉末床溶融結合方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の横長のブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいる運搬部材を有している。
【0016】
したがって、運搬部材を移動させて粉末材料の上に配置し、粉末材料を押し上げて複数のブレードの間に粉末材料を供給するようにすることで、運搬する粉末材料を各ブレードの間に分散して配置することができる。そのため、1つのブレードが運ぶ粉末材料の量を減らすことができる。
【0017】
それによって、運搬部材を移動させて粉末材料を運搬する間に1つのブレードの前に集積する粉末材料の量と重量を減らすことができるため、粉末材料を運搬するときに下の層に部分的に大きな荷重がかかるのを防止することができる。
【0018】
したがって、結合層が形成された層の上で粉末材料を運搬中に、結合層の位置ずれを防止し、正常な造形を行うことができる。
【0019】
このように、本発明の運搬部材は、特に、結合層をサポート手段に固定せずに積層していく粉末床溶融結合方法に適用する場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る粉末床溶融結合装置を示す図である。
図2】(a)は、図1の粉末床溶融結合装置を示す上面図であり、(b)は、(a)のI−I線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るリコータを示す斜視図である。
図4図3のリコータを粉末材料収納容器の上面に配置したときの態様を示す断面図である。
図5】(a)〜(c)は、図3のリコータによる粉末材料の運搬態様を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態のリコータによる粉末材料の運搬態様と、従来例のリコータによる粉末材料の運搬態様との比較を示す断面図である。
図7】(a)〜(c)は、図3のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その1)である。
図8】(a)〜(c)は、図3のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その2)である。
図9】(a)〜(c)は、図3のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その3)である。
図10】(a)〜(c)は、図3のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その4)である。
図11】(a)〜(c)は、従来例のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その1)である。
図12】従来例のリコータを用いた粉末床溶融結合方法を示す断面図(その2)である。
図13】従来例の問題点について説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(1)粉末床溶融結合装置について
図1は、本発明の実施形態に係る粉末床溶融結合装置の構成について示す模式図である。
【0023】
なお、粉末材料を溶融して結合させる加熱用エネルギービームを出射する加熱用エネルギービーム源として、レーザ光を出射するレーザ光源、電子ビームその他の粒子ビームを出射する電子ビーム源その他の粒子ビーム源があり、本発明に適用できる。それらのうち、以下では、レーザ光源を用いて説明する。
【0024】
また、粉末材料として、鉄、ステンレス、銅合金、コバルトクロム、金、タングステン、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン或いはその他の金属粉末、又は、樹脂粉末或いはセラミック粉末があり、本発明に適用できる。樹脂は、特に、流動性の良くない樹脂や、強度を持たせるため、ガラスビーズ、がラスファイバー、ガラスフレークなどを混入し、重くなった樹脂の場合に、本発明に適用すると有効である。
【0025】
粉末床溶融結合装置は、図1に示すように、レーザ光出射部(エネルギービーム出射部)101と、リコータ(粉末材料の運搬部材)104を備え、造形が行われる薄層形成部102と、造形を制御する制御部(制御手段)103とを有している。
【0026】
制御部103は、レーザ光出射部101と、薄層形成部(リコータ104を含む)102とに接続され、各部101, 102と電気信号をやり取りして、各部101, 102を制御し、それに基づいて造形を制御する。これにより、自動的に造形を制御することが可能である。
【0027】
以下に、本粉末床溶融結合装置における各部101, 102, 103の詳細について説明する。
【0028】
図2(a)、(b)は、レーザ光出射部101と薄層形成部102の構成を示す図である。図2(a)は上面図であり、図2(b)は、図2(a)のI−I線に沿う断面図である。なお、図2(a)では、レーザ光出射部101は省いている。
【0029】
(i)レーザ光出射部201の構成
図2(b)に示すレーザ光出射部101は、レーザ光源と、光学系と、XYZドライバとを備えている。
【0030】
レーザ光源は、主に、波長1,070nm付近のレーザ光を出射するYAGレーザ光源、あるいは、ファイバレーザ光源や、波長10.6μmのレーザ光を出射する高出力のCO2レーザ光源などが用いられる。粉末材料19の波長吸収率だけでなくコストパフォーマンスなどを考慮して、使用波長を適宜使い分ける。
【0031】
なお、波長700nmから940nm程度の半導体レーザ(LD)は、将来的に高出力の半導体レーザが得られれば、それを使用することが好ましい。波長が短い方が金属粉末によるレーザ光の吸収率が高くなるためである。
【0032】
光学系は、ガルバノメータミラー(XミラーとYミラーで構成される)と、レンズとを有する。
【0033】
XYZドライバは、制御部103からの制御信号により、レーザ光源とともに、Xミラーと、Yミラーと、レンズとを動作させる制御信号を送出し、次のような動作を
行わせる。
【0034】
即ち、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、XミラーとYミラーの角度を変化させてレーザ光19を走査するとともにレーザ光源を適宜ON/OFFさせる。
【0035】
この間、レーザ光21の動きに合わせて、レーザ光21が粉末材料の薄層19aの表面に焦点を結ぶように絶えずレンズを動かす。
【0036】
このようにして、粉末材料の薄層19aにレーザ光21を選択的に照射して特定の領域を加熱する。レーザ光源に加える電力を制御することで粉末材料の薄層19aを溶融する。
【0037】
なお、「溶融する」とは、粉末粒子全体を溶融し粉末材料を流動化させることと、焼結の場合のように主に粉末粒子の表面を溶融することの両方を含むものとする。以下の説明でも同じである。
【0038】
(ii)薄層形成部102の構成
薄層形成部102は、図2(a)、(b)に示すように、粉末材料の薄層19aに対して造形が行われる薄層形成容器11と、その両側に設置された第1粉末材料収納容器12a及び第2粉末材料収納容器12bと、容器12a, 11, 12bの上面を移動して粉末材料19を運び、粉末材料の薄層19aを形成するリコータ104とを備えている。
【0039】
また、薄層形成容器11と第1粉末材料収納容器12aの間に左側フランジ13aが設けられるとともに、薄層形成容器11と第2粉末材料収納容器12bの間に右側フランジ13bが設けられている。
【0040】
第1粉末材料収納容器12aと、左側フランジ13aと、薄層形成容器11と、右側フランジ13bと、第2粉末材料収納容器12bとは、上面が面一となるように接合されている。これにより、リコータ104は、すべての容器12a, 11, 12bの上面上を全領域にわたってスムーズに移動することができる。
【0041】
薄層形成容器11では、図2(b)に示すように、容器11の底を兼ねたパートテーブル(第1昇降台)15上に粉末材料の薄層19aが形成され、その薄層19aにレーザ光20が照射されて結合層19bが形成される。薄層19aを形成する領域は、正方形の平面形状を有する。
【0042】
そして、パートテーブル15を順次下降させて結合層19bを積層し、3次元造形物が作製される。
【0043】
第1粉末材料収納容器12aでは、容器12aの底を兼ねた第1フィードテーブル(第2昇降台)17a上に粉末材料19が収納され、第2粉末材料収納容器12bでは、容器12bの底を兼ねた第2フィードテーブル(第3昇降台)17b上に粉末材料19が収納される。第1粉末材料収納容器12aと第2粉末材料収納容器12bの両方の粉末材料19を収納する領域は、同じ形状と寸法を有し、横幅よりも奥行きが長い長方形の平面形状を有する。なお、横幅とは、リコータ104の移動方向の領域の幅であり、奥行きとは、リコータ104の移動方向に直交する方向の領域の幅である。
【0044】
第1粉末材料収納容器12aと第2粉末材料収納容器12bのうち、いずれか一方を粉末材料19の供給側とした場合、他方が、粉末材料の薄層19aを形成した後に残った粉末材料19の収納側となる。
【0045】
パートテーブル15と、第1フィードテーブル17aと、第2フィードテーブル17bの各下面には、それぞれ、支持軸16、18a及び18bが取り付けられている。支持軸16、18a及び18bは、支持軸16、18a及び18bを上下に移動させる図示しない駆動装置に接続されている。
【0046】
駆動装置は、制御部103からの制御信号により制御されて、供給側のフィードテーブル17a又は17bを上昇させて粉末材料19を供給するとともに、収納側のフィードテーブル17b又は17aを下降させて残った粉末材料19を収納する。
【0047】
また、容器12a及び12b内に収納された粉末材料19や、容器11内に形成された粉末材料の薄層19aを予備加熱し、昇温するため、加熱手段を備えている。実施形態では、左側フランジ13aと右側フランジ13bの下面にのみヒータ14a及び14bを表示しているが、容器11、12a及び12bの仕切壁やパートテーブル15やフィードテーブル17a又は17bにも図示しないヒータを内蔵している。また、左側フランジ13aと右側フランジ13bの上方に赤外線照射手段を設けてもよい。
【0048】
次に、図3図6を参照してリコータ104について詳細に説明する。
【0049】
リコータ104は、図3に示すように、5つの横に長い板状のブレード52a〜52eがリコータ104の移動方向に対面しかつ相互に等間隔を空けて並んでいる。
【0050】
各ブレード52a〜52eは、各ブレード52a〜52eの面を貫通する支持部材53a〜53cによって固定されている。また、両端のブレード52aと52eは、それぞれ、ブレード52aと52eとほぼ同じ長さの板状の補強材51aと51bで補強されている。
【0051】
両端のブレード52aと52eの間隔は、粉末材料収納容器12a及び12bの粉末材料19を収納する領域の横幅(ともに約340mmである。)よりも少し広く、例えば、約344mmとなっている。それに合わせて、各ブレード52a〜52eの間隔は、それぞれ約86mmとなっている。
【0052】
これにより、図4に示すように、両端のブレード52aと52eは、それぞれ、粉末材料19を収納する領域の直ぐ外側の、粉末材料収納容器12a及び12bの横幅方向で対向する縁部Ea, Ebの上に配置することができる。したがって、中間部のブレード52b〜52dは、それぞれ、容器12a及び12bに収納された粉末材料19の上に配置される。
【0053】
また、各ブレード52a〜52eの横幅は、粉末材料収納容器12a及び12bと薄層形成容器11の奥行き(ともに約560mmである。)より少し大きく、例えば、約580mmとなっている。
【0054】
また、各ブレード52a〜52eの下端部は、第1粉末材料収納容器12aと、左側フランジ13aと、薄層形成容器11と、右側フランジ13bと、第2粉末材料収納容器12bの上面や、粉末材料或いは粉末材料の薄層の上面を移動する。そのため、移動がスムーズに行えるように、各ブレード52a〜52eの下端部は、刃先のように薄くなっている。
【0055】
リコータ104の往復移動の際にいずれかが最後部となる両端のブレード52aと52eは、その下端部によって、形成される粉末材料の薄層の厚さや表面の平坦性を決める。そのため、第1粉末材料収納容器12aと、左側フランジ13aと、薄層形成容器11と、右側フランジ13bと、第2粉末材料収納容器12bの上面に下端部を接触させるとともに、下端部の平坦度及び水平度について高い精度を持たせることが必要である。
【0056】
一方、中間部のブレード52b〜52dは、主に粉末材料19の運搬を担うため、必ずしも薄層形成容器11などの上面に接触させる必要はなく、その場合、下端部の平坦度及び水平度について高い精度は要求されない。そのような観点から、中間部のブレード52b〜52dの下端部を両端のブレード52aと52eの下端部の位置より高くし、それによって、両端のブレード52aと52eを薄層形成容器11などの上面に接触させて置いたときに、中間部のブレード52b〜52dの下端部が、その精度に応じて、薄層形成容器11などの上面から多少浮くようにした方がよい。リコータ104の移動がよりスムーズになるという利点がある。
【0057】
次に、リコータ104による粉末材料の運搬態様について説明する。次に述べるリコータ104の移動は、制御部103によって制御される。
【0058】
図5(a)は、リコータ104を粉末材料収納容器12a又は12b内に収納された粉末材料19の上に移動させ、フィードテーブル17a又は17bにより粉末材料19を押し上げて5つのブレード52a〜52eの間に粉末材料19を置いた状態を示す。
【0059】
薄層1層分より少し多い量の粉末材料19が、各ブレード52a〜52eの間の4つ空間に分散して置かれる。
【0060】
図5(b)は、図5(a)に示す状態から右側に移動するときの粉末材料の運搬態様を示す。
【0061】
この場合、一番左側のブレード52aが最後部となる。粉末材料19は各ブレード52a〜52eの間の4つの空間に分散された状態をほぼ維持しながら運搬されるため、1ブレードあたりの粉末材料19の運搬量は、従来の運搬量の四分の一程度となる。したがって、粉末材料19の運搬中に、各ブレード52a〜52dの前に集積する粉末材料19の量は、図6に示すように、従来と比べて大幅に少なくなる。したがって、下の層に部分的に大きな荷重がかかるのを防止することができる。
【0062】
図5(c)は、図5(a)に示す状態から左側に移動するときの粉末材料の運搬態様を示す。
【0063】
図5(c)では、一番右側のブレード52eが最後部となる。この場合も、1ブレードあたりの粉末材料19の運搬量は、従来の運搬量のほぼ四分の一となる。それによって、粉末材料19の運搬中に、各ブレード52b〜52eの前に集積する粉末材料19の量は大幅に少なくなるため、下の層に部分的に大きな荷重がかかるのを防止することができる。
【0064】
(2)本実施形態の粉末床溶融結合方法について
図7図10を参照して、本実施形態の粉末床溶融結合方法について説明する。
【0065】
図7図10は、制御部103の制御に従って動作する粉末床溶融結合装置を示す断面図である。
【0066】
まず、図7(a)に示すように、リコータ104を第1粉末材料収納容器12aの上に配置させる。このとき、両端のブレード52a, 52eをそれぞれ第1粉末材料収納容器12aの対向する縁部上に配置させ、中間部のブレード52b〜52dを粉末材料19の上に配置させる。
【0067】
次いで、図7(b)に示すように、粉末材料19を載せた第1フィードテーブル17aを上昇させて第1粉末材料収納容器12aから粉末材料19を突出させる。これにより、粉末材料19がリコータ104の各ブレード間に分散して置かれる。
【0068】
さらに、パートテーブル15を薄層一層分だけ下降させる。また、第2フィードテーブル17bを、薄層の形成後に残る粉末材料19が十分に収納される程度に下降させる。
【0069】
次に、図7(c)に示すように、リコータ104を右側に移動させて第1粉末材料収納容器12aから突出させた粉末材料19を押し取って薄層形成容器11まで運ぶ。
【0070】
次いで、図8(a)に示すように、リコータ104を右側に移動させて薄層形成容器11内に粉末材料19を運び入れながら表面を均してパートテーブル15上に粉末材料の薄層19aを形成させる。
【0071】
さらに、残った粉末材料19を第2粉末材料収納容器12bまで運ぶため、リコータ104を右側に移動させる。
【0072】
次に、図8(b)に示すように、リコータ104により、残った粉末材料19を第2粉末材料収納容器12bの第2フィードテーブル17b上に収納する。リコータ104は第2粉末材料収納容器12bの上に配置させる。
【0073】
次いで、図8(c)に示すように、スライスデータ(描画パターン)に基づき、粉末材料の薄層19aにレーザ光20を照射し、1層目の結合層19bを形成する。
【0074】
次に、図9(a)は、レーザ光20を照射した後の状態を示す。このとき、両端のブレード52a, 52eをそれぞれ第2粉末材料収納容器12bの対向する縁部上に置き、中間部のブレード52b〜52dを粉末材料19の上に置く。
【0075】
次いで、図9(b)に示すように、粉末材料19を載せた第2フィードテーブル17bを上昇させて第2粉末材料収納容器12b上面から粉末材料19を突出させる。これにより、粉末材料19がリコータ104の各ブレード間に分散して置かれる。
【0076】
さらに、パートテーブル15を薄層一層分だけ下降させるとともに、第1フィードテーブル17aを下降させる。
【0077】
次に、図9(c)に示すように、リコータ104を左側に移動させて第2粉末材料収納容器12bから突出させた粉末材料19を押し取って薄層形成容器11まで運ぶ。
【0078】
次いで、図10(a)に示すように、リコータ104をさらに左側に移動させ、リコータ104により薄層形成容器11内に粉末材料19を運び入れながら表面を均して1層目の結合層19bの上に粉末材料の薄層19aを形成させる。
【0079】
次に、図10(b)に示すように、リコータ104をさらに左側に移動させて、残った粉末材料19を第1粉末材料収納容器12aまで運び、第1フィードテーブル17a上に収納する。リコータ104は第1粉末材料収納容器12aの上に配置させる。
【0080】
次に、図10(c)に示すように、スライスデータ(描画パターン)に基づき、粉末材料の薄層19aにレーザ光20を照射し、2層目の結合層19bを形成する。
【0081】
その後、図7(a)〜図10(c)に示す工程を繰り返して、所要数の結合層19bを積層させ、3次元造形物を作製させる。
【0082】
以上説明した本発明の実施形態によれば、5つの横長のブレード52a〜52eが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいるリコータ104を有している。
【0083】
そして、リコータ104を粉末材料収納容器12a或いは12bの上に移動させ、フィードテーブル17a或いは17bを上昇させて粉末材料19を押し上げ、リコータ104の5つのブレード52a〜52eの間に粉末材料19を供給するようにしている。
【0084】
したがって、運搬する粉末材料19を各ブレードの間に分散して配置することができるため、1つのブレードが運ぶ粉末材料19の量を減らすことができる。
【0085】
それによって、リコータ104を移動させて粉末材料19を運搬する間に、1つのブレード52a〜52eの前に集積する粉末材料19の量、ひいてはその重量を減らすことができる。
【0086】
このため、薄層形成容器11で粉末材料19を運搬中、下の層に部分的に大きな荷重がかかるのを防止することができる。これによって、下層に形成された結合層19bの位置ずれを防止し、正常な造形を行うことができる。
【0087】
このように、本発明のリコータ104を用いた粉末床溶融結合方法は、特に、結合層19bをベースに固定せずに積層していくような場合に、有効である。
【0088】
以上、実施形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0089】
例えば、リコータ104のブレード52a〜52eの横幅や間隔は、上述の数値にかぎられない。粉末材料収納容器12a, 12bの粉末材料19を収納する領域の大きさに応じて適宜変更可能である。
【0090】
また、リコータ104の中間部に設けられたブレード52b〜52dの下端部を両端に設けられたブレード52a, 52eの下端部よりも高くしているが、すべてのブレード52a〜52eの下端部を同じ高さにしてもよい。
【0091】
また、リコータ104のブレード52a〜52eを等間隔で並べているが、一部或いはすべてを異なる間隔で並べてもよい。
【0092】
また、図4に示すように、リコータ104の両端のブレード52a, 52eを、それぞれ粉末材料収納容器12a, 12bの対向する縁部Ea, Ebの上に配置するようにしているが、これに限られない。
【0093】
すべてのブレード52a〜52eを粉末材料19の上に配置するようにしてもよい。
【0094】
或いは、移動方向に対して最後部のブレード52a或いは52eを粉末材料収納容器12a, 12bの対向する縁部Ea, Ebのいずれかの上に配置したとき、残りの1以上のブレード52b〜52e、或いは52a〜52dが粉末材料19の上に配置されるようにしてもよい。
【0095】
また、リコータ104のブレードの個数を5つとしているが、2つ以上、実用的な範囲で適宜変更可能である。
【0096】
このとき、特に、リコータ104のブレードの個数が2つの場合には、移動方向に対して後部のブレードを粉末材料収納容器12a, 12bの対向する縁部Ea, Ebのいずれかの上に配置したとき、前部のブレードは粉末材料19の上に配置されるようにすることが必要である。
【0097】
最後に、上記実施形態で説明した発明を以下に付記としてまとめる。
【0098】
(付記1)
薄層形成部の上面を移動して粉末材料を運ぶ運搬部材を備え、粉末材料の薄層を形成する前記薄層形成部を有し、
前記運搬部材は、複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいることを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0099】
(付記2)
複数の前記ブレードのうち少なくとも前記移動方向に対して最後部の前記ブレードの下端部は、前記薄層形成部の上面に接して移動することを特徴とする付記1に記載の粉末床溶融結合装置。
【0100】
(付記3)
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部をさらに有することを特徴とする付記1に記載の粉末床溶融結合装置。
【0101】
(付記4)
前記薄層形成部は、
粉末材料を収納する粉末材料収納容器と、
前記粉末材料収納容器と並べて置かれ、前記粉末材料の薄層を形成する薄層形成容器とを有することを特徴とする付記1記載の粉末床溶融結合装置。
【0102】
(付記5)
前記粉末材料収納容器は、底に前記粉末材料を載せる昇降台を有し、複数の前記ブレードのうち前記移動方向に対して最後部の前記ブレードを前記粉末材料収納容器の縁に配置したときに、残りの1以上の前記ブレードが前記粉末材料の上に配置される大きさを有する
ことを特徴とする付記4に記載の粉末床溶融結合装置。
【0103】
(付記6)
制御手段をさらに有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動させて、前記粉末材料を収納した前記粉末材料収納容器の縁に前記最後部のブレードを配置するとともに、残りの1以上の前記ブレードを前記粉末材料の上に配置する工程と、
前記昇降台を上昇させて前記粉末材料を押し上げ、前記複数のブレードの間に供給する工程と、
前記運搬部材を移動させ、前記複数のブレードの間に前記粉末材料を保持した状態で前記粉末材料を運ぶ工程と
を有することを特徴とする付記5に記載の粉末床溶融結合装置。
【0104】
(付記7)
複数の横長のブレードを有し、各前記ブレードが移動方向に対面しかつ相互に間隔を空けて並んでいる運搬部材を用意する工程と、
前記運搬部材を粉末材料の上に移動させ、前記粉末材料を押し上げて複数の前記ブレードの間に供給する工程と、
前記運搬部材を移動させて、前記複数のブレードの間に前記粉末材料を保持した状態で前記粉末材料を運ぶ工程と
を有することを特徴とする粉末床溶融結合方法。
【0105】
(付記8)
前記粉末材料は、底に前記粉末材料を載せる昇降台を備えた粉末材料収納容器に収納され、
前記粉末材料収納容器は、前記複数のブレードのうち前記移動方向に対して最後部のブレードを前記粉末材料収納容器の縁に配置したときに、残りの1以上の前記ブレードが前記粉末材料の上に配置される大きさを有することを特徴とする付記7に記載の粉末床溶融結合方法。
【0106】
(付記9)
前記運搬部材を粉末材料の上に移動させ、前記粉末材料を押し上げて複数の前記ブレードの間に供給する工程は、前記運搬部材を移動させて前記最後部の前記ブレードを前記粉末材料収納容器の縁に配置するとともに、残りの1以上の前記ブレードを前記粉末材料の上に配置し、前記昇降台を上昇させて前記粉末材料を押し上げ、前記複数のブレードの間に供給する工程であることを特徴とする付記8に記載の粉末床溶融結合方法。
【0107】
(付記10)
前記粉末材料を運ぶ工程の後、
粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層にエネルギービームを照射して、前記粉末材料の薄層を溶融して結合し、固めて結合層を形成する工程と
を有することを特徴とする付記7に記載の粉末床溶融結合方法。
【0108】
(付記11)
前記粉末材料の薄層を形成する工程は、前記運搬部材を移動させて薄層形成容器に前記粉末材料を運び入れながら、表面を均して前記粉末材料の薄層を形成する工程であることを特徴とする付記10に記載の粉末床溶融結合方法。
【0109】
(付記12)
前記複数のブレードのうち少なくとも前記移動方向に対して最後部の前記ブレードの下端部は、前記粉末材料収納容器と前記薄層形成容器の上面に接して移動することを特徴とする付記11に記載の粉末床溶融結合方法。
【符号の説明】
【0110】
11・・・薄層形成容器、12a・・・第1粉末材料収納容器、12b・・・第2粉末材料収納容器、13a・・・左側フランジ、13b・・・右側フランジ、14a, 14b・・・ヒータ、15・・パートテーブル(第1昇降台)、16, 18a, 18b・・・支持軸、17a・・・第1フィードテーブル(第2昇降台)、17b…第2フィードテーブル(第3昇降台)、19…粉末材料、19a…粉末材料の薄層(又は、薄層)、19b…結合層、 20…レーザ光、51a, 51b…補強材、52a〜52e…ブレード、53a〜53c…支持部材、101…レーザ光出射部(エネルギービーム出射部)、102…薄層形成部、103…制御部(制御手段)、104, 105…リコータ(運搬部材)、Ea, Eb…粉末材料収納容器の横幅方向で対向する縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13