(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の積分回路は、一端が前記比較回路の出力端子と接続され、他端が前記第1の抵抗素子と前記第1のキャパシタとの接続点の第2のノードに接続された第2の抵抗素子を備えていることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源回路。
前記第2の積分回路は、一端が前記比較回路の出力端子と接続され、他端が前記第3の抵抗素子と前記第2のキャパシタとの間の第5のノードに接続された第4の抵抗素子を備えていることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源回路。
前記帰還電圧は、前記比較結果信号の出力が遷移した場合に、所定期間に亘って前記基準電圧の電圧レベルに近づくように遷移することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路。
前記比較回路は、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも高くなった場合にはローハイレベルの前記比較結果信号を出力し、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも低くなった場合にはハイレベルの前記比較結果信号を出力し、
前記帰還電圧は、
前記スイッチ素子がオンとなったことに基づいて上昇を開始し、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも高くなって前記比較結果信号がローレベルとなった時点で低下を開始し、
前記スイッチ素子がオフとなったことに基づいて低下を開始し、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも低くなって前記比較結果信号がハイレベルとなった時点で上昇を開始することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、従来のリップル制御方式のスイッチング電源回路30を概略的に示した図である。スイッチング電源回路30は、電圧生成回路21と、積分回路22と、帰還電圧生成回路23と、比較回路24と、ドライブ回路26と、を備えている。また、スイッチング電源回路30には、電源27と負荷28とが接続されている。
【0005】
電圧生成回路21は、入力端子T21と、スイッチ素子SW21と、インダクタL21と、キャパシタC21と、出力端子T22と、ダイオードD21と、を備えている。電圧生成回路21は、電源27から供給される入力電圧Vin21からスイッチ素子SW21のオンオフに基づいてインダクタL21にて発生した電圧をキャパシタC21にて平滑化し、これを出力電圧Vout21として出力端子T21から出力する降圧コンバータとしての機能を有する。ここで、インダクタL21とスイッチ素子SW21のソース端子Sとの接続点のノードをノードN21と称し、スイッチ素子SW21のオンオフによって遷移するノードN21の電圧をスイッチング電圧Vn21と称する。ダイオードD21は、アノードが接地されており、カソードがノードN21に接続されている。
【0006】
積分回路22は、抵抗素子R21とキャパシタC22とを備え、ノードN21から供給されるスイッチング電圧Vn21を抵抗素子R21とキャパシタC22とで積分してリップル電圧VS21を生成する。ここで、抵抗素子R21とキャパシタC22との接続点のノードをノードN22と称する。なお、リップル電圧VS21は、スイッチ素子SW21のオンオフによって、例えば0V〜12Vで遷移するスイッチング電圧Vn21を積分して生成されるため、この遷移に応じたリップル成分を備えたものとなる。
【0007】
帰還電圧生成回路23は、抵抗素子R22と抵抗素子R23とを備えており、出力電圧Vout21を分圧して帰還電圧VK21を生成する。ここで、抵抗素子R22と抵抗素子R23との接続点のノードをノードN23と称する。ノードN23とノードN22とは接続されている。このため、ノードN23の帰還電圧VK21は、出力電圧Vout21を抵抗素子R22と抵抗素子R23とで分圧した電圧とリップル電圧VS21との加算値となり、リップル電圧VS21のリップル成分を備えたものとなる。
【0008】
比較回路24は、コンパレータ24aと、基準電源24bと、を備えている。コンパレータ24aは、反転端子24dと非反転端子24eとを備えている。反転端子24dは、ノードN23と接続されて帰還電圧生成回路23から帰還電圧VK21の供給を受ける。非反転端子24eは、基準電源24bから基準電圧Vref21の供給を受ける。コンパレータ24aは、反転端子24dに入力された帰還電圧VK21と非反転端子24eに入力された基準電圧Vref21とを比較し、帰還電圧VK21が基準電圧Vref21よりも高くなった場合には比較結果として例えば0Vでローレベルの比較結果信号VH21を自己の動作時間分の遅延をもって出力し、帰還電圧VK21が基準電圧Vref21よりも低くなった場合には比較結果として例えば5Vでハイレベルの比較結果信号VH21を自己の動作時間分の遅延をもって出力する。
【0009】
ドライブ回路26は、比較回路24から比較結果信号VH21の供給を受け、比較結果信号VH21の電圧レベルに応じて異なる電圧レベルを備えた制御信号VD21をスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給する。ドライブ回路26は、比較結果信号VH21がハイレベルであった場合には、例えば17Vでハイレベルの制御信号VD21をスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給し、比較結果信号VH21がローレベルであった場合には、例えば0Vでローレベルの制御信号VD21をスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給することでスイッチ素子SW21のオンオフを制御する。これにより、スイッチング電圧Vn21は、例えば0V〜12Vの間で遷移する。
【0010】
図5は、
図4に示したスイッチング電源回路30の時間変化における各部の信号波形を示した図である。
図5(a)は、帰還電圧VK21の信号波形と基準電圧Vref21との関係を示した図である。
図5(b)は、比較結果信号VH21の信号波形を示した図である。
図5(c)は、電圧Vin21の遷移を示した図である。なお、
図5(a)〜
図5(c)はそれぞれ縦軸が電圧レベルV、横軸が時間tであり、時刻t10〜t17は
図5(a)〜
図5(c)の共通の時刻として示している。
【0011】
時刻t10では、反転端子24dに入力される例えば3Vの帰還電圧VK21が、例えば2Vの基準電圧Vref21よりも高いため、比較回路24からはローレベルの比較結果信号VH21が出力されている。また、比較結果信号VH21がローレベルのため、ドライブ回路26によって制御されるスイッチ素子SW21もオフされた状態となっており、スイッチング電圧Vn21は接地電位からダイオードD21による電圧降下分低い電圧レベルとなっている。ここで、
図5(c)においては、作図の都合上、スイッチング電圧Vn21が0Vよりも低い場合においては0Vとして示している。
【0012】
時刻t11で、反転端子24dに入力される帰還電圧VK21が基準電圧Vref21以下になると、比較回路24の動作時間分遅れた時刻t12でハイレベルの比較結果信号VH21が比較回路24から出力され、ドライブ回路26に供給される。ここで、ドライブ回路26は比較回路24に比べて動作速度が遅いことから、スイッチ素子SW21がオンされるタイミングが時刻t13まで遅れる。このため、スイッチング電圧Vn21に基づく帰還電圧VK21は、時刻t12から時刻t13の期間A21、すなわち、比較結果信号VH21がハイレベルとなった後、スイッチ素子SW21がオンするまでの間、例えば1Vまで低下し続けることとなる。
【0013】
時刻t13で、ドライブ回路26の動作時間分遅れてハイレベルの制御信号VD21がドライブ回路26からスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給されると、スイッチ素子SW21がオンする。これにより、入力電圧Vin21が電源27からスイッチ素子SW21を介してノードN21に供給されてスイッチング電圧Vn21が上昇し、これに伴い出力電圧Vout21が上昇する。また、出力電圧Vout21の上昇に伴って帰還電圧VK21が上昇する。ここで、スイッチング電圧Vn21は、例えば12Vまで上昇する。このとき、帰還電圧VK21の電位は、期間A21で低下し続けた分だけ、再び基準電圧Vref21を超えるまでに時間を要することとなる。
【0014】
時刻t14で、反転端子24dに入力される帰還電圧VK21が基準電圧Vref21を超えると、比較回路24の動作時間分遅れた時刻t15でローレベルの比較結果信号VH21が比較回路24から出力され、ドライブ回路26に供給される。ここで、ドライブ回路26は比較回路24に比べて動作速度が遅いことからスイッチ素子SW21がオフされるタイミングが時刻t16まで遅れる。このため、ノードN21の電位に基づく帰還電圧VK21の電位は、時刻t15から時刻t16までの期間B21、すなわち、比較結果信号VHがローレベルとなった後、スイッチ素子SW21がオフするまでの間、例えば3Vまで上昇し続けることとなる。このとき、帰還電圧VK21は、リップル電圧VS21のリップル成分を含むものであるため、大きく上昇する。
【0015】
時刻t16で、ドライブ回路26の動作時間分遅れてローレベルの制御信号VD21がドライブ回路26からスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給され、スイッチ素子SW21がオフする。これにより、電源27からノードN21への入力電圧Vin21の供給が停止されてスイッチング電圧Vn21が低下し、これに伴い出力電圧Vout21が低下する。また、出力電圧Vout21の低下に伴って帰還電圧VK21が低下する。このとき、帰還電圧VK21の電位は、期間B21で上昇し続けた分だけ、再び基準電圧Vref21以下となるまでに時間を要することとなる。
【0016】
以上のように、スイッチング電源回路30は、比較結果信号VH21の信号レベルが切り替わった後も一定期間に亘り帰還電圧VK21が上昇又は低下し続けるので、帰還電圧VK21が再び基準電圧Vref21となるまでに時間がかかってしまい、ひいては負荷28への出力電圧Vout21を安定して供給することができなくなってしまうという問題があった。特に、帰還電圧VK21には、スイッチング電圧Vn21の遷移の影響を受けるリップル電圧VS21のリップル成分が含まれることから、帰還電圧VK21の変動がより大きくなってしまい、帰還電圧VK21が上昇する際に発生する上記問題がより顕著となっていた。
【0017】
図6は、
図4示の従来のスイッチング電源回路30とは異なる従来のスイッチング電源回路40を概略的に示した図である。スイッチング電源回路40は、電圧生成回路31と、帰還電圧生成回路33と、比較回路34と、積分回路35と、ドライブ回路36と、を備えている。また、スイッチング電源回路40には、電源37と負荷38とが接続されている。なお、スイッチング電源回路40は、
図4に示したスイッチング電源回路30と比べて、積分回路22に相当する構成がなく、リップル成分を帰還電圧生成回路33に加算するための回路として積分回路35を有している点で異なる。
【0018】
電圧生成回路31は、入力端子T31と、スイッチ素子SW31と、インダクタL31と、キャパシタC31と、出力端子T32と、ダイオードD31と、を備えている。電圧生成回路31は、電源37から供給される入力電圧Vin31からスイッチ素子SW31のオンオフに基づいてインダクタL31に発生した電圧をキャパシタC31にて平滑化し、これを出力電圧Vout31として出力端子T32から出力する降圧コンバータとしての機能を有する。ここで、インダクタL31とスイッチ素子SW31のソース端子Sとの接続点のノードをノードN31と称し、スイッチ素子SW31のオンオフによって遷移するノードN31の電圧をスイッチング電圧Vn31と称する。ダイオードD31は、アノードが接地されており、カソードがノードN31に接続されている。
【0019】
帰還電圧生成回路33は、抵抗素子R32と抵抗素子R33とを備えており、出力電圧Vout31を分圧して帰還電圧VK31を生成する。ここで、抵抗素子R32と抵抗素子R33との接続点のノードをノードN33と称する。
【0020】
比較回路34は、コンパレータ34aと、基準電源34bと、を備えている。コンパレータ34aは、反転端子34dと非反転端子34eとを備えている。反転端子34dは、ノードN33と接続されて帰還電圧生成回路33から帰還電圧VK31の供給を受ける。非反転端子34eは、基準電源34bから基準電圧Vref31の供給を受ける。コンパレータ34aは、反転端子34dに入力された帰還電圧VK31と非反転端子34eに入力された基準電圧Vref31とを比較し、帰還電圧VK31が基準電圧Vref31よりも高くなった場合には比較結果として例えば0Vでローレベルの比較結果信号VH31を自己の動作時間分の遅延をもって出力し、帰還電圧VK31が基準電圧Vref31よりも低くなった場合には比較結果として例えば5Vでハイレベルの比較結果信号VH31を自己の動作時間分の遅延をもって出力する。
【0021】
積分回路35は、抵抗素子R36とキャパシタC32とを備え、コンパレータ34aの出力端子から供給される比較結果信号VH31を抵抗素子R36とキャパシタC32とで積分してリップル電圧VS31を生成する。ここで、抵抗素子R36とキャパシタC32との接続点のノードをノードN34と称する。ノードN33とノードN34とは接続されている。このため、ノードN33の帰還電圧VK31は、出力電圧Vout31を抵抗素子R32と抵抗素子R33とで分圧した電圧とリップル電圧VS31との加算値となる。なお、リップル電圧VS31は例えば0Vから5Vで遷移する比較結果信号VH31を積分して生成されるため、この遷移に応じたリップル成分を備えたものとなる。ここで、リップル電圧VS31が備えるリップル成分としての信号の振幅は、
図4で説明したとおり0V〜12Vで遷移するスイッチング電圧Vn21から得られるリップル電圧VS21が備えるリップル成分としての信号の振幅よりも小さいものとなる。
【0022】
ドライブ回路36は、比較回路34から比較結果信号VH31の供給を受け、比較結果信号VH31の電圧レベルに応じて異なる電圧レベルを備えた制御信号VD31をスイッチ素子SW31のゲート端子Gに供給する。ドライブ回路36は、比較結果信号VH31がハイレベルであった場合には、例えば17Vでハイレベルの制御信号VD31をスイッチ素子SW31のゲート端子Gに供給し、比較結果信号VH31がローレベルであった場合には、例えば0Vでローレベルの制御信号VD31をスイッチ素子SW21のゲート端子Gに供給することでスイッチ素子SW31のオンオフを制御する。これにより、スイッチング電圧Vn31は、例えば0V〜12Vの間で遷移する。
【0023】
図7は、
図6に示したスイッチング電源回路40の時間変化における各部の信号波形を示した図である。
図7(a)は、帰還電圧VK31の信号波形と基準電圧Vref31との関係を示した図である。
図7(b)は、比較結果信号VH31の信号波形を示した図である。
図7(c)は、スイッチング電圧Vn31の遷移を示した図である。なお、
図7(a)〜
図7(c)はそれぞれ縦軸が電圧レベルV、横軸が時間tであり、時刻t20〜t28は
図7(a)〜
図7(c)の共通の時刻として示している。
【0024】
時刻t20では、反転端子34dに入力される例えば2.1Vの帰還電圧VK31が例えば2Vの基準電圧Vref31よりも高いため、比較回路34からはローレベルの比較結果信号VH31が出力されている。また、比較結果信号VH31がローレベルのため、ドライブ回路36によって制御されるスイッチ素子SW31もオフされた状態となっており、スイッチング電圧Vn31は接地電位からダイオードD31による電圧降下分低い電圧レベルとなっている。ここで、
図7(c)においては、作図の都合上、0Vよりも低い場合においては0Vとして示している。
【0025】
時刻t21で、反転端子34dに入力される帰還電圧VK31が基準電圧Vref31以下になると、比較回路34の動作時間分遅れた時刻t22でハイレベルの比較結果信号VH31が比較回路34から出力され、ドライブ回路36に供給される。ここで、ドライブ回路36は比較回路34に比べて動作速度が遅いことから、スイッチ素子SW31がオンされるタイミングが遅れる。
【0026】
ここで、時刻t23にて反転端子34dに対して外来ノイズが入った場合には、反転端子34dに入力される帰還電圧VK31は、時刻t23を境に一時的に上昇して時刻t24で基準電圧Vref31を超えて、例えば2.3Vまで上昇してしまう。このため、比較回路34の動作速度分遅れた時刻t25にて比較結果信号VH31がローレベルとなってしまう。その後、一時的に上昇した帰還電圧VK31の電圧レベルが低下し、時刻t26で基準電圧Vref31以下となると、時刻t27にて再び比較回路34からハイレベルの比較結果信号VH31がドライブ回路36に対して出力され、時刻t28でドライブ回路36がハイレベルの制御信号VD31をスイッチ素子SW31のゲート端子Gに供給する。これにより、ノードN31の電位が上昇して帰還電圧VK31の電位が上昇する。
【0027】
以上のように、スイッチング電源回路40においては、帰還電圧VK31が備えるリップル成分がスイッチング電源回路30の帰還電圧VK21よりも小さいため、外来ノイズが入って帰還電圧VK31が一時的に上昇した場合、スイッチング電源回路30に比べて帰還電圧VK31が基準電圧Vref31を超えてしまう可能性が高い。帰還電圧VK31が一時的に上昇して基準電圧Vref31を超えてしまうと、比較回路34からドライブ回路36に供給される比較結果信号VH31が一時的にローレベルとなってドライブ回路36の動作が一時的に停止してしまい、これによりノードN31の電位の上昇が遅れて所望の電位になるまでに時間がかかってしまう。このため、スイッチング電源回路40が生成する出力電圧Vout31が不安定になってしまうという問題があった。
【0028】
上記に鑑み、本発明では、電源電圧を降下又は昇圧して生成する出力電圧をより安定的に供給可能なスイッチング電源回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明のスイッチング電源回路は、電源から供給される入力電圧からスイッチ素子のオンオフに基づいてインダクタにて発生した電圧をキャパシタにて平滑化して出力電圧を生成する電圧生成回路と、前記スイッチ素子のオンオフによって発生するスイッチング電圧を積分して第1のリップル成分を備えた第1のリップル電圧を生成する第1の積分回路と、前記出力電圧を分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成回路と、第1の入力端子に入力された前記帰還電圧と第2の入力端子に入力された前記基準電圧とを比較し、前記比較の結果を比較結果信号として出力する比較回路と、前記比較結果信号を積分して第2のリップル成分を備えた第2のリップル電圧を生成する第2の積分回路と、前記比較結果信号に基づいて前記スイッチ素子のオンオフを制御するドライブ回路と、を備え、前記第1の入力端子に入力される前記帰還電圧には、前記第1のリップル成分と前記第2のリップル成分とが加算されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のスイッチング電源回路によれば、電源電圧を降下又は昇圧して生成する出力電圧をより安定的に供給できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態につき説明する。なお、以下で説明する数値や回路等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜選択可能である。
[実施形態]
【0033】
図1は、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10を概略的に示した図である。スイッチング電源回路10は、非同期方式の降圧型DC−DCコンバータである。スイッチング電源回路10は、電圧生成回路1と、第1の積分回路としての積分回路2と、帰還電圧生成回路3と、比較回路4と、第2の積分回路としての積分回路5と、ドライブ回路6と、を備えている。また、スイッチング電源回路10には、電源7と負荷8とが接続されている。
【0034】
電圧生成回路1は、入力端子T1と、スイッチ素子SW1と、インダクタL1と、キャパシタC1と、出力端子T2と、整流素子としてのダイオードD1と、を備えている。
【0035】
入力端子T1には、電源7から例えば12Vの入力電圧Vin1が供給される。スイッチ素子SW1は、一端としてのドレイン端子Dが入力端子T1と接続されている。インダクタL1は、第1の端子としての端子L1aと第2の端子としての端子L1bとを備え、端子L1aがスイッチ素子SW1の他端としてのソース端子Sと接続されてスイッチ素子SW1と直列に接続されている。ここで、スイッチ素子SW1は、入力端子T1からインダクタL1への電流の流入を制御する。また、インダクタL1の端子L1aとスイッチ素子SW1のソース端子Sとの接続点のノードを、第1のノードとしてのノードN1と称し、スイッチ素子SW1のオンオフによって遷移するノードN1の電圧をスイッチング電圧Vn1と称する。
【0036】
キャパシタC1は、一端がインダクタL1の端子L1bに接続され、他端が接地されており、スイッチ素子SW1のオンオフに基づいてインダクタL1に発生した電圧を平滑化する。出力端子T2は、インダクタL1の端子L1bとキャパシタC1の一端との接続点に接続されており、キャパシタC1によって平滑化された電圧を出力電圧Vout1として出力する。
【0037】
電圧生成回路1は、以上の構成を備えて、入力端子T1から入力された12Vの入力電圧Vin1を降圧して例えば5Vの出力電圧Vout1を生成して出力端子T2から出力する降圧型DC−DCコンバータとしての機能を備えている。ここで、電圧生成回路1による降圧動作は、スイッチ素子SW1の制御に基づいてインダクタL1が入力電圧Vin1を変換させることによって行われ、詳しくは、スイッチ素子SW1がオンされてインダクタL1に入力電圧Vin1に基づく電流Iin1が流入することで、インダクタL1が入力端子T1に入力された入力電圧Vin1を打ち消す自己誘電を発生させることによって行われる。このようにして降圧された電圧は、上述のとおりキャパシタC1にて平滑化されて電圧Vout1として出力端子T2から出力される。
【0038】
ダイオードD1は、スイッチ素子SW1のソース端子SとインダクタL1との間のノードN1に接続されており、スイッチ素子SW1がオフの場合にインダクタL1が蓄えたエネルギーを電流として放出する際に該電流をキャパシタC1に安定的に供給する役割を備えている。これにより、出力電圧Vout1はスイッチ素子SW1がオフされている場合においても安定する。なお、整流素子としては、ダイオードD1の代わりとして、スイッチ素子SW1と相補的にオンオフされる例えばNMOSトランジスタで構成されたスイッチ素子をノードN1と接地電位との間に接続して設け、該スイッチ素子のゲート端子にドライブ回路6からスイッチ素子SW1に供給する信号とは相補的な信号を与えて制御するいわゆる同期方式の降圧型DC−DCコンバータとしても良い。
【0039】
積分回路2は、第1の抵抗素子としての抵抗素子R1と第1のキャパシタとしてのキャパシタC2とを備えている。抵抗素子R1は、一端がインダクタL1の端子L1a側のノードN1に接続されている。キャパシタC2は、一端がインダクタL1の端子L1bと出力端子T2とに共通接続されており、他端が抵抗素子R1の他端に接続されている。積分回路2は、抵抗素子R1とキャパシタC2とが互いに直列に接続されており、且つインダクタL1に並列に接続されている。なお、抵抗素子R1は例えば100kΩの抵抗値を備え、キャパシタC2は例えば10pFの容量値を備えている。ここで、抵抗素子R1とキャパシタC2との接続点を第2のノードとしてのノードN2と称する。
【0040】
積分回路2は、入力端子T1とインダクタL1との間のノードN1から抵抗素子R1に供給されるスイッチング電圧Vn1を積分して第1のリップル電圧としてのリップル電圧VS1aを生成する。これにより、ノードN2の電位はリップル電圧VS1aを備えたリップル電圧VS1となる。なお、リップル電圧VS1aは、スイッチ素子SW1のオンオフによって例えば0V〜12Vで遷移するスイッチング電圧Vn1を積分して生成されるため、この遷移特性に基づく第1のリップル成分を備えたものとなる。
【0041】
帰還電圧生成回路3は、抵抗素子R2と抵抗素子R3とを備えている。抵抗素子R2は、一端が出力端子T2に接続されている。抵抗素子R3は、一端が抵抗素子R2の他端に接続されており、他端が接地されている。ここで、抵抗素子R2と抵抗素子R3との接続点のノードを第3のノードとしてのノードN3と称する。帰還電圧生成回路3は、出力端子T2から出力された出力電圧Vout1を分圧して帰還電圧VK1を生成する。これによりノードN3の電位は帰還電圧VK1となる。ここで、ノードN3とノードN2とは接続されている。このため、ノードN3の帰還電圧VK1は、出力電圧Vout1を抵抗素子R2と抵抗素子R3とで分圧した電圧とリップル電圧VS1との加算値となり、リップル電圧VS1aの第1のリップル成分を備えたものとなる。なお、抵抗素子R2は例えば10kΩ、抵抗素子R3は例えば5kΩの抵抗値をそれぞれ備えている。また、互いに接続されているノードN2とノードN3との間には図示しない直流成分カット用のコンデンサが設けられていても良い。
【0042】
比較回路4は、コンパレータ4aと、基準電源4bと、ヒステリシス回路4cとを備えている。コンパレータ4aは、第1の入力端子としての反転端子4dと第2の入力端子としての非反転端子4eと、第1の出力端子としての出力端子4fと、を備えている。反転端子4dは、ノードN3と接続されて帰還電圧生成回路3から帰還電圧VK1の供給を受ける。非反転端子4eは、基準電源4bから、ヒステリシス回路4cによって決まる基準電圧Vref1の供給を受ける。コンパレータ4aは、反転端子4dに入力された帰還電圧VK1と非反転端子4eに入力された基準電圧Vref1とを比較し、比較結果として比較結果信号VH1を出力する。コンパレータ4aは、帰還電圧VK1が基準電圧Vref1よりも高くなった場合には比較結果として例えば0Vでローレベルの比較結果信号VH1を出力端子4fから自己の動作時間分の遅延をもって出力し、帰還電圧VK1が基準電圧Vref1よりも低くなった場合には比較結果として例えば5Vでハイレベルの比較結果信号VH1を自己の動作時間分の遅延をもって出力する。
【0043】
なお、ヒステリシス回路4cは、抵抗素子R4と抵抗素子R5とを備えている。抵抗素子R4は、一端がコンパレータ4aの出力端子4fに接続され、他端が非反転端子4eに接続されている。抵抗素子R5は、一端が抵抗素子R4の他端と非反転端子4eとに接続されており、他端が基準電源4bに接続されている。ヒステリシス回路4cは、基準電源4bから供給される電圧から抵抗素子R4と抵抗素子R5との抵抗比によって決まる基準電圧Vref1を生成して非反転端子4eに供給するいわゆるヒステリシス特性を備えている。ただし、本発明においては、比較回路4はヒステリシス回路4cを備えていなくてもよく、この場合には基準電源4bが非反転端子4eと接続されて直接的に基準電圧Vref1を非反転端子4eに供給する構成となっていても良い。なお、抵抗素子R4の抵抗値は例えば1kΩであり、抵抗素子R5の抵抗値は例えば10Ωである。
【0044】
積分回路5は、第2の抵抗素子としての抵抗素子R6とキャパシタC2とを備えている。抵抗素子R6は、一端がコンパレータ4aの出力端子4fに接続されており、他端がノードN2に接続されている。積分回路5は、積分回路2のキャパシタC2と共に積分回路を構成し、出力端子4fから出力されて抵抗素子R6に供給される比較結果信号VH1を積分して第2のリップル電圧としてのリップル電圧VS1bをノードN2に供給する。これにより、ノードN2の電位としてのリップル電圧VS1は、リップル電圧VS1aとリップル電圧VS1bとの加算値となる。また、ノードN3とノードN2とは接続されているので、ノードN3の帰還電圧VK1は、リップル電圧VS1aとリップル電圧VS1bとを含むリップル電圧VS1との加算値となり、この帰還電圧VK1が反転端子4dに入力される。なお、抵抗素子R6は、積分回路2の抵抗素子R1よりも抵抗値が小さいことが好ましく、例えば10kΩの抵抗値をそれぞれ備えている。
【0045】
ここで、リップル電圧VS1bは、コンパレータ4aの出力の遷移によって例えば0V〜5Vで遷移する比較結果信号VH1を積分して生成されるため、この遷移特性に基づく第2のリップル成分を備えたものとなる。このため、リップル電圧VS1のリップル成分は、リップル電圧VS1aの第1のリップル成分とリップル電圧VS1bの第2のリップル成分との加算値となり、これにより帰還電圧VK1には、第1のリップル成分と第2のリップル成分とが加算されることとなる。なお、リップル電圧VS1bの第2のリップル成分としての信号の振幅は、リップル電圧VS1aが備える第1のリップル成分としての信号の振幅よりも小さいものとする。
【0046】
ここで、積分回路5は、上述のとおり積分回路の構成要素であるキャパシタC2を積分回路2と併用している。これによれば、積分回路5に専用のキャパシタが不要となるので、積分回路5を設けるにあたって回路面積の増大を抑制することができる。さらに、積分回路5が併用するキャパシタC2は、出力端子T2とノードN2との間に接続され、これらの端子及びノードはいずれも接地されていない。このため、積分回路5は、接地電位を介して電圧生成回路1が取り扱う大電圧や大電流の影響を受けるという不具合を排除することができるので、高精度なリップル電圧VS1bを生成することができる。
【0047】
ドライブ回路6は、スイッチ素子SW1と比較回路4と接続されている。ドライブ回路6は、比較回路4から比較結果信号VHの供給を受け、比較結果信号VH1の電圧レベルに応じて異なる電圧レベルを備えた制御信号VD1をスイッチ素子SW1のゲート端子Gに供給する。ドライブ回路6は、比較結果信号VH1がハイレベルであった場合には、例えば17Vのハイレベルの制御信号VD1をスイッチ素子SW1のゲート端子Gに供給し、比較結果信号VH1がローレベルであった場合には、例えば0Vのローレベルの制御信号VD1をスイッチ素子SW1のゲート端子Gに供給することでスイッチ素子SW1のオンオフを制御する。これにより、スイッチング電圧Vn1は例えば0V〜12Vの間で遷移する。なお、ドライブ回路6は、比較結果信号VH1に応じて動作すればよく、比較回路4から直接的に比較結果信号VH1が供給される構成に限定されるものではない。
【0048】
(スイッチング電源回路10の動作)
図2は、
図1に示したスイッチング電源回路10の時間変化における各部の信号波形を示した図である。
図2(a)は、帰還電圧VKの信号波形と基準電圧Vref1との関係を示した図である。
図2(b)は、比較結果信号VH1の信号波形を示した図である。
図2(c)は、スイッチング電圧Vn1の電圧レベルの遷移を示した図である。なお、
図2(a)〜
図2(c)はそれぞれ縦軸が電圧レベルV、横軸が時間tであり、時刻t0〜t7は
図2(a)〜
図2(c)の共通の時刻として示している。なお、本実施形態においては、基準電圧Vref1はヒステリシス回路4cにより電圧レベルが変動するが、作図の都合上、
図2(a)では基準電圧Vref1は一定としてその変動の様子を示していない。
【0049】
時刻t0では、反転端子4dに入力される例えば2.5Vの帰還電圧VK1が例えば2Vの基準電圧Vref1よりも高いため、比較回路4からはローレベルの比較結果信号VH1が出力されている。また、比較結果信号VH1がローレベルのため、ドライブ回路6によって制御されるスイッチ素子SW1もオフされた状態となっており、スイッチング電圧Vn1は接地電位からダイオードD1による電圧降下分低い電位となっている。ここで、
図2(c)においては、作図の都合上、スイッチング電圧Vn1が0Vよりも低い場合においては0Vとして示している。
【0050】
時刻t1で、反転端子4dに入力される帰還電圧VK1が基準電圧Vref1以下になると、比較回路4の動作時間分遅れた時刻t2でハイレベルの比較結果信号VH1が比較回路4から出力され、ドライブ回路6に供給される。ここで、ドライブ回路6は動作速度が比較的遅いことからスイッチ素子SW1がオンされるタイミングが時刻t3まで遅れる。このため、従来のスイッチング電源回路では、スイッチング電圧Vn1に基づく帰還電圧VK1の電位は、比較結果信号VH1がハイレベルとなった後も低下し続けることとなっていた。
【0051】
しかしながら、本実施形態では、ノードN1とノードN2とが積分回路2を介して接続されていることに加えて、比較回路4のコンパレータ4aの出力端子4fとノードN2とが積分回路5を介して接続されていることから、時刻t2以降においては、ハイレベルの比較結果信号VH1に基づいて生成されたリップル電圧VS1bがノードN2を介して帰還電圧VK1に加算されることとなる。このため、
図2(a)に示されているように、時刻t2から時刻t3までの期間A1、すなわち、比較結果信号VH1がハイレベルになった時点からスイッチ素子SW1がオンするまでの間、帰還電圧VK1を例えば1.5Vで維持して帰還電圧VK1のさらなる低下を抑制することができる。なお、
図2(a)においては期間A1で帰還電圧VK1がその電位を維持している様を示しているが、これに限られず、抵抗素子R6の抵抗値をより小さくすることで帰還電圧VK1に加算するリップル電圧VS1bの第2のリップル成分の影響を大きくして、比較結果信号がハイレベルとなった時点からスイッチ素子SW1がオンするまでの期間A1で帰還電圧VK1を上昇させて帰還電圧Vk1を基準電圧Vref1の電圧レベルに近づけるようにしても良い。
【0052】
時刻t3で、ドライブ回路6の動作時間分遅れてハイレベルの制御信号VD1がドライブ回路6からスイッチ素子SW1のゲート端子Gに供給され、スイッチ素子SW1がオンする。これにより、入力電圧Vin1が電源7からスイッチ素子SW1を介してノードN1に供給されてスイッチング電圧Vn1が上昇し、これに伴い出力電圧Vout1が上昇する。また、出力電圧Vout1の上昇に伴って、帰還電圧VK1が上昇する。このとき、帰還電圧VK1は、リップル電圧VS1aにリップル電圧VS1bが加算されたリップル成分を備えることとなるため、リップル電圧VS1a又はリップル電圧VS1bのいずれかのリップル成分のみがノードN3に供給される場合に比べて単位時間当たりの電位の上昇を大きく得ることができる。さらに、本実施形態においては、時刻t2以降の期間A1においてハイレベルの比較結果信号VH1に基づくリップル電圧VS1bの第2のリップル成分をノードN2に供給して帰還電圧VK1のさらなる電位の低下を抑制しているので、より早く帰還電圧VK1を高い電位に上昇させることができる。
【0053】
時刻t4で、反転端子4dに入力される帰還電圧VK1が基準電圧Vref1を超えると、比較回路4の動作時間分遅れた時刻t5でローレベルの比較結果信号VH1が出力され、ドライブ回路6に供給される。ここで、ドライブ回路6は動作速度が比較的遅いことからスイッチ素子SW1がオンされるタイミングが遅れるため、従来のスイッチング電源回路では、スイッチング電圧Vn1に基づく帰還電圧VK1の電位は比較結果信号VH1がローレベルとなった後も上昇し続けることとなっていた。
【0054】
しかしながら、本実施形態では、ノードN1とノードN2とが積分回路2を介して接続されていることに加えて、比較回路4のコンパレータ4aの出力端子4fとノードN2とが積分回路5を介して接続されていることから、時刻t5以降においては、ローレベルの比較結果信号VH1に基づいて生成されたリップル電圧VS1bがノードN2を介して帰還電圧VK1に加算されることとなる。このため、
図2(a)に示されているように、時刻t5から時刻t6の期間B、すなわち、比較結果信号VH1がローレベルになった時点からスイッチ素子SW1がオフするまでの間、帰還電圧VK1を例えば2.5Vに維持して帰還電圧VK1のさらなる上昇を抑制することができる。なお、
図2(a)においては期間B1で帰還電圧VK1がその電位を維持している様を示しているが、これに限られず、抵抗素子R6の抵抗値をより小さくすることで帰還電圧VK1に加算するリップル電圧VS1bの第2のリップル成分の影響を大きくして、比較結果信号がローレベルとなった時点からスイッチ素子SW1がオフするまでの期間B1で帰還電圧VK1を低下させて帰還電圧Vk1を基準電圧Vref1の電圧レベルに近づけるようにしても良い。
【0055】
時刻t6で、ドライブ回路6の動作時間分遅れてローレベルの制御信号VD1がスイッチ素子SW1のゲート端子Gに供給され、スイッチ素子SW1がオフする。これにより、電源7からノードN1への入力電圧Vin1の供給が停止されてスイッチング電圧Vn1の低下が開始され、これに伴い、出力電圧Vout1、ひいては帰還電圧VK1の低下が開始される。このとき、帰還電圧VK1には、第1のリップル成分を備えたリップル電圧VS1aと第2のリップル成分を備えたリップル電圧VS1bとが加算されるため、リップル電圧VS1a又はリップル電圧VS1bの第2のリップル成分のみがノードN3に供給される場合に比べて単位時間当たりの電位の低下を大きく得ることができる。さらに、時刻t5以降の期間Bにおいてローレベルの比較結果信号VH1に基づくリップル電圧VS1bの第2のリップル成分をノードN2に供給して帰還電圧VK1のさらなる電位の上昇を抑制しているので、より早く帰還電圧VK1を低い電位に降下させることができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、上述のとおり、帰還電圧VK1がスイッチング電圧Vn1を積分して得られたリップル電圧VS1aの第1のリップル成分を備えているため、帰還電圧Vk1が、リップル電圧VS1bの第2のリップル成分のみを備えている場合に比べて単位時間当たりの電位の上昇及び低下、ひいては帰還電圧VK1の振幅をより大きく得ることができる。このため、反転端子4dに多少のノイズが入った場合であっても、帰還電圧VK1がリップル電圧VS1bのみを備えている場合に比べてスイッチング電源回路10が誤動作してしまうおそれを低減できる。また、本実施形態においては、帰還電圧VK1がスイッチング電圧Vn1を積分して得られたリップル電圧VS1aの第1のリップル成分を備えているため、RFパワーアンプやCPUに見られるように、負荷8が必要とする駆動電圧や駆動電流が大きく変動した場合であっても、変動後の駆動電圧・駆動電流に高速に追従することができる。
【0057】
また、上述したように、積分回路5の抵抗素子R6は、積分回路2の抵抗素子R1よりも抵抗値が小さいことが好ましい。これは、抵抗素子R6の抵抗値の方が低い場合に、帰還電圧VK1に対してより比較結果信号VH1の電圧レベルの影響を与えることができるためである。
【0058】
(実施形態の効果)
本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10によれば、スイッチング電圧Vn1を積分して第1のリップル成分を備えたリップル電圧VS1aを生成する積分回路2と、比較結果信号VH1を積分して第2のリップル成分を備えたリップル電圧VS1bを生成する積分回路5と、を有し、リップル電圧VS1aとリップル電圧VS1bとを帰還電圧VK1に加算して反転端子4dに入力するようにしたので、帰還電圧VK1に第1のリップル成分及び第2のリップル成分を与えて単位時間当たりの電位の変動を大きくしてノイズの影響を低減することができ、且つ、比較結果信号VH1がハイレベルになった後の帰還電圧VK1の電位の低下を抑制することができるとともに、比較結果信号VH1がローレベルになった後の帰還電圧VK1の電位の上昇を抑制することができる。これにより、より安定した出力電圧Vout1を負荷8に対して供給することができる。
[変形例]
【0059】
図3は、本発明の実施形態の変形例にかかるスイッチング電源回路20を概略的に示した図である。スイッチング電源回路20は、非同期方式の昇圧型DC−DCコンバータである。スイッチング電源回路20は、電圧生成回路11と、第1の積分回路としての積分回路12と、帰還電圧生成回路13と、比較回路14と、第2の積分回路としての積分回路15と、ドライブ回路16と、を備えており、電圧生成回路11が本発明の実施形態に示した電圧生成回路1と大きく異なる。また、スイッチング電源回路20には、電源17と負荷18とが接続されている。
【0060】
電圧生成回路11は、入力端子T11と、スイッチ素子SW11と、インダクタL11と、キャパシタC11と、出力端子T12と、整流素子としてのダイオードD11と、を備えている。
【0061】
入力端子T11は、例えば12Vの電源17と接続されて電源17の電源電圧が入力電圧Vin11として供給される。インダクタL11は、第3の端子としての端子L11aと第4の端子としての端子L11bとを備え、端子L11aが入力端子T11と接続されている。スイッチ素子SW11は、一端としてのドレイン端子がインダクタL11bと接続されており、他端としてのソース端子Dが接地電位に接続されている。スイッチ素子SW11は、入力端子T11からインダクタL11へ流入する電流の大きさを制御する。
【0062】
ダイオードD11は、アノードがインダクタL11の端子L11bとスイッチ素子SW11のドレイン端子Dと接続されている。ここで、ダイオードD11のアノードとインダクタL11の端子L11bとの接続点のノードを、第4のノードとしてのノードN11と称し、ノードN11の電圧をスイッチング電圧Vn11と称する。
【0063】
キャパシタC11は、一端がダイオードD11のカソードと直列に接続され、他端が接地されており、スイッチ素子SW11のオンオフによってインダクタL11に発生した電圧を平滑化する。出力端子T2は、ダイオードD11のカソードとキャパシタC11の一端との接続点に接続されており、キャパシタC11によって平滑化された電圧を出力電圧Vout11として出力する。
【0064】
電圧生成回路11は、以上の構成を備えて、入力端子T11から入力された例えば12Vの入力電圧Vin11を昇圧して例えば20Vの出力電圧Vout11を生成して出力端子T12から出力する昇圧型DC−DCコンバータとしての機能を備えている。ここで、電圧生成回路11による昇圧動作としては、スイッチ素子SW11の制御に基づいてインダクタL11が入力電圧Vin11を変換させることによって行われ、詳しくは、まずスイッチ素子SW11をオンして入力電圧Vin11に応じた電流IinをインダクタL11に流してインダクタL11に磁気エネルギーを蓄えさせた後、スイッチ素子SW11をオフしてインダクタL11の磁気エネルギーを放出させて高電圧を発生させることで行う。このようにして昇圧された電圧は、上述のとおりキャパシタC11にて平滑化されて出力電圧Vout11として出力端子T12から出力される。なお、ダイオードD11は、スイッチ素子SW11がオフの場合にインダクタL11にて生成されたエネルギーを出力端子T12に安定的に供給する役割を備えている。
【0065】
積分回路12は、第3の抵抗素子としての抵抗素子R11と第2のキャパシタとしてのキャパシタC12とを備えている。抵抗素子R11は、一端がインダクタL11の端子L11a側のノードN11に接続されている。キャパシタC12は、一端がダイオードD11のカソードと出力端子T12とに接続されており、他端が抵抗素子R11の他端に接続されている。積分回路12は、抵抗素子R11とキャパシタC12とが互いに接続されており、且つインダクタL11に並列に接続されている。なお、抵抗素子R11は例えば100kΩの抵抗値を備え、キャパシタC12は例えば10pFの容量値を備えている。ここで、抵抗素子R11とキャパシタC12との接続点を第5のノードとしてのノードN12と称する。
【0066】
積分回路12は、インダクタL11とダイオードD11との間のノードN11から抵抗素子R11に供給されるスイッチング電圧Vn11を積分して第1のリップル電圧としてのリップル電圧VS11aを生成する。これにより、ノードN12の電位はリップル電圧VS11aを備えたリップル電圧VS11となる。なお、リップル電圧VS11aは、スイッチ素子SW11のオンオフによって例えば0V〜12Vで遷移するスイッチング電圧Vn11を積分して生成されるため、この遷移特性に基づく第1のリップル成分を備えたものとなる。
【0067】
ここで、昇圧型DC−DCコンバータにおいて、リップル電圧VS11aを生成する基となる電圧が、例えばインダクタL11の端子L11aと電源17との接続点の入力端子T11の電位である入力電圧Vin11によるものである場合には、リップル電圧VS11aを生成する基となる電圧がノードN11のスイッチング電圧Vn11である場合に比べて十分なリップル成分を得ることができない。この理由としては、電源17とインダクタL11の端子L11aとの間には、安定化容量としてコンデンサを接続しておくことが好ましく、そうすると該コンデンサによりスイッチング電圧Vn11がスイッチ素子SW11のオンオフによって得られる遷移が大きく制限されてしまうためである。したがって、リップル電圧VS11aを生成する基となる電圧は、ノードN11のスイッチング電圧Vn11であることが好ましい。
【0068】
帰還電圧生成回路13は、抵抗素子R12と抵抗素子R13とを備えている。抵抗素子R12は、一端が出力端子T12に接続されている。抵抗素子R13は、一端が抵抗素子R12の他端に接続されており、他端が接地されている。ここで、抵抗素子R12と抵抗素子R13との接続点のノードを第6のノードとしてのノードN13と称する。帰還電圧生成回路13は、出力端子T12から出力された出力電圧Vout11を分圧して帰還電圧VK11を生成する。これによりノードN13の電位は帰還電圧VK11となる。ここで、ノードN13とノードN12とは接続されている。このため、ノードN13の帰還電圧VK11は、出力電圧Vout11を抵抗素子R12と抵抗素子R13とで分圧した電圧とリップル電圧VS11との加算値となり、リップル電圧VS11aの第1のリップル成分を備えたものとなる。なお、抵抗素子R12は例えば10kΩ、抵抗素子R13は例えば5kΩの抵抗値をそれぞれ備えている。また、互いに接続されているノードN12とノードN13との間には図示しない直流成分カット用のコンデンサが設けられていても良い。
【0069】
比較回路14は、コンパレータ14aと、基準電源14bと、ヒステリシス回路14cとを備えている。コンパレータ14aは、第1の入力端子としての反転端子14dと第2の入力端子としての非反転端子14eと、第2の出力端子としての出力端子14fと、を備えている。反転端子14dは、ノードN13と接続されて帰還電圧生成回路13から帰還電圧VK11の供給を受ける。非反転端子14eは、基準電源14bから、ヒステリシス回路14cによって決まる基準電圧Vref11の供給を受ける。コンパレータ14aは、反転端子14dに入力された帰還電圧VK11と非反転端子14eに入力された基準電圧Vref11とを比較し、帰還電圧VK11が基準電圧Vref11よりも高くなった場合には比較結果として例えば0Vでローレベルの比較結果信号VH11を出力端子14fから自己の動作時間分の遅延をもって出力し、帰還電圧VK11が基準電圧Vref11よりも低くなった場合には比較結果として例えば5Vでハイレベルの比較結果信号VH11を自己の動作時間分の遅延をもって出力する。
【0070】
なお、ヒステリシス回路14cは、抵抗素子R14と抵抗素子R15とを備えている。抵抗素子R14は、一端がコンパレータ14aの出力端子14fに接続され、他端が非反転端子14eに接続されている。抵抗素子R15は、一端が抵抗素子R14の他端と非反転端子14eとに接続されており、他端が基準電源14bに接続されている。ヒステリシス回路14cは、基準電源14bから供給される電圧から抵抗素子R14と抵抗素子R15との抵抗比によって決まる基準電圧Vref11を生成して非反転端子14eに供給するいわゆるヒステリシス特性を備えている。ただし、本発明においては、比較回路14はヒステリシス回路14cを備えていなくてもよく、この場合には基準電源14bが非反転端子14eと接続されて直接的に基準電圧Vref11を非反転端子14eに供給する構成となっていても良い。なお、抵抗素子R14の抵抗値は例えば1kΩであり、抵抗素子R15の抵抗値は例えば10Ωである。
【0071】
積分回路15は、第4の抵抗素子としての抵抗素子R16とキャパシタC12とを備えている。抵抗素子R16は、一端がコンパレータ14aの出力端子14fに接続されており、他端がノードN12に接続されている。積分回路15は、積分回路12のキャパシタC12と共に積分回路を構成し、出力端子14fから出力されて抵抗素子R16に供給される比較結果信号VHを積分して第2のリップル電圧としてのリップル電圧VS11bをノードN12に供給する。これにより、ノードN12の電位としてのリップル電圧VS11は、リップル電圧VS11aとリップル電圧VS11bとの加算値となる。また、ノードN13とノードN12とは接続されているので、ノードN13の帰還電圧VK11は、リップル電圧VS11aとリップル電圧VS11bとを含むリップル電圧VS11との加算値となり、この帰還電圧VK11が反転端子14dに入力される。なお、抵抗素子R16は例えば100kΩの抵抗値をそれぞれ備えている。
【0072】
ここで、リップル電圧VS11bは、コンパレータ14aの出力の遷移によって例えば0V〜5Vで遷移する比較結果信号VH11を積分して生成されるため、この遷移特性に基づく第2のリップル成分を備えたものとなる。このため、リップル電圧VS11のリップル成分は、リップル電圧VS11aの第1のリップル成分とリップル電圧VS11bの第2のリップル成分との加算値となり、これにより帰還電圧VK11には第1のリップル成分と第2のリップル成分とが加算されることとなる。なお、リップル電圧VS11bの第2のリップル成分としての信号の振幅は、リップル電圧VS11aが備える第1のリップル成分としての信号の振幅よりも小さいものとする。
【0073】
ここで、積分回路15は、上述のとおり積分回路の構成要素であるキャパシタC12を積分回路12と併用している。これによれば、積分回路15に専用のキャパシタが不要となるので、積分回路15を設けるにあたって回路面積に増大を抑制することができる。さらに、積分回路15が併用するキャパシタC12は、出力端子T12とノードN12との間に接続され、これらの端子及びノードはいずれも接地されていない。このため、積分回路15は接地電位を介して電圧生成回路1が取り扱う大電圧や大電流の影響を受けるという不具合を排除することができるので、高精度なリップル電圧VS11bを生成することができる。
【0074】
ドライブ回路16は、スイッチ素子SW11と比較回路14と接続されている。ドライブ回路16は、比較回路14から比較結果信号VH11の供給を受け、比較結果信号VH11の電圧レベルに応じて異なる電圧レベルを備えた制御信号VD11をスイッチ素子SW11のゲート端子Gに供給する。ドライブ回路16は、比較結果信号VH11がハイレベルであった場合には、例えば30Vのハイレベルの制御信号VD11をスイッチ素子SW11のゲート端子Gに供給し、比較結果信号VH11がローレベルであった場合には、例えば0Vのローレベルの制御信号VD11をスイッチ素子SW11のゲート端子Gに供給することでスイッチ素子SW11のオンオフを制御する。これにより、スイッチング電圧Vn11は例えば0V〜12Vの間で遷移する。なお、ドライブ回路16は、比較結果信号VH11に応じて動作すればよく、比較回路14から直接的に比較結果信号VH11が供給される構成に限定されるものではない。
【0075】
(実施形態の変形例の効果)
本発明の実施形態の変形例にかかるスイッチング電源回路20によれば、本発明の実施形態と同様に、スイッチング電圧Vn11を積分して第1のリップル成分を備えたリップル電圧VS11aを生成する積分回路12と、コンパレータ14aの出力端子14fから出力される第2の遷移成分を備えた比較結果信号VH11を積分して第2の遷移成分に基づく第2のリップル成分を備えたリップル電圧VS11bを生成する積分回路15と、を有し、リップル電圧VS11aとリップル電圧VS11bとを帰還電圧VK11に加算して反転端子14dに入力するようにしたので、帰還電圧VK11に第1のリップル成分を与えて単位時間当たりの電位の変動を大きくしてノイズの影響を低減することができ、且つ、比較結果信号VH11がハイレベルになった後の帰還電圧VK11の電位の低下を抑制することができるとともに、比較結果信号VH11がローレベルになった後の帰還電圧VK11の電位の上昇を抑制することができる。これにより、より安定した出力電圧Vout11を負荷18に対して供給することができる。
【0076】
図8は、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、及び31に適用可能なスイッチ素子のひとつとしてのトランジスタTr1を概略的に示した図である。トランジスタTr1は、GaNの特性を利用したトランジスタであって、未使用時には自然状態でその動作がオフとなってソース電極とドレイン電極との電気的な接続が抑制されるノーマリーオフタイプのトランジスタである。
【0077】
(トランジスタTr1の構成)
図8(a)は、トランジスタTr1の平面視図であり、
図8(b)は、
図8(a)の斜線I−Iの断面図である。なお、トランジスタTr1は平面視においてその外周を矩形状としているが、これに限られない。また、
図8では便宜上1つのトランジスタTr1を示しているが、これはスイッチ素子SW1、11、21、又は31が、複数のトランジスタTr1が互いに並列又は直列に接続されて構成されることを妨げるものではない。
【0078】
支持基板Subは、例えば半導体基板でありシリコン基板であるが、これに限られず、シリコンカーバイド(SiC)やサファイアなども適用できる。
【0079】
バッファ層Bは、支持基板Sub上に形成されており、アルミニウムナイトライド(AlN)を主材料として構成されているが、これに限られず、支持基板Sub側からアルミニウムナイトライド(AlN)、アルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)が順次積層された構成とすることもできる。
【0080】
窒化物半導体層NSは、バッファ層B上に形成されており、ガリウムナイトライド(GaN)を主材料として構成されている。
【0081】
電子供給層DS1は、窒化物半導体層NS上に形成されており、アルミニウムナイトライド(AlN)を主材料として構成されているが、これに限られずアルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)とすることもできる。電子供給層DS1は、その一部において窒化物半導体層NSを開口TH1により露出させている。開口TH1は、平面視した場合に矩形状となっているがこれに限られない。
【0082】
絶縁層Z1は、電子供給層DS1上に形成されており、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)から構成されているが、これに限られず、シリコン窒化膜や、支持基板Sub側からシリコン酸化膜とシリコン窒化膜と順次積層された2層構造によるものであっても良い。絶縁層Z1は、その一部が開口されており、これを開口TH2と称する。絶縁層Z1は、窒化物半導体層NSを開口TH1と共に開口TH2により露出させている。開口TH2は、平面視において開口TH1と一致している。開口TH2は、平面視した場合に矩形状となっているが、平面視において開口TH1部と一致していればこれに限られない。
【0083】
また、絶縁層Z1は、その一部において電子供給層DS1を開口TH1以外の複数の開口によっても露出させている。ここで、
図8(a)において開口TH1を挟んで右側に配置された開口を開口TH3と称し、左側に配置された開口を開口TH4と称する。なお、開口TH3部および開口TH4は、平面視した場合に円形状となっておりそれが複数設けられているが、これに限られない。
【0084】
ソース電極SDは、例えばアルミニウム(Al)から構成されており、絶縁層Z1の表面上から開口TH3内を介して電子供給層DS1まで延在して形成されている。なお、
図8(b)では、ソース電極SDは、絶縁層Z1の表面から開口TH3を介して電子供給層DS1に達するまでを連続した一部材として示しているが、これに限られず、開口TH3内と絶縁層Z1の表面上とで異なる部材により構成するようにしても良い。また、ソース電極SDは、上記に限られず、支持基板Sub側から、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)が順次積層された構成でもよく、Ti/AlSiCu/Ti/TiNの積層構造でも良い。
【0085】
ドレイン電極DDは、例えばアルミニウムから構成されており、絶縁層Z1の表面上から開口TH4部内を介して電子供給層DS1まで延在して形成されている。なお、
図8(b)では、ドレイン電極DDは、絶縁層Z1の表面から開口TH4を介して電子供給層DS1に達するまでを連続した一部材として示しているが、これに限られず、開口TH4内と絶縁層Z1の表面上とで異なる部材により構成するようにしても良い。
【0086】
絶縁層Z2は、絶縁層Z1とソース電極SDとドレイン電極DDとの上にこれらを覆って形成されている。絶縁層Z2は、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)から構成されているが、これに限られない。絶縁層Z2は、その一部が開口されており、これを開口TH3と称する。絶縁層Z2は、窒化物半導体層NSを開口TH1及び開口TH2と共に開口TH5により露出させている。開口TH5は、平面視において開口TH1および開口TH2と一致している。開口TH5は、平面視した場合に矩形状となっているが、平面視において開口TH1および開口TH2と一致していればこれに限られない。
【0087】
また、絶縁層Z2は、その一部においてソース電極SDの一部およびドレイン電極DDの一部を開口TH5以外の複数の開口により露出させている。ここで、
図8(a)において開口TH5を挟んで右側に配置された開口を開口TH6と称し、左側に配置された開口を開口TH7と称する。
【0088】
絶縁層Z3は、窒化物半導体層NS上において、窒化物半導体層NSの一部を露出させ且つ窒化物半導体層NSに接すると共に窒化物半導体層NSから開口TH1と開口TH2とを介して開口TH5まで跨って延在して形成されている。また、絶縁層Z3は、電子供給層DS1、絶縁層Z1、および絶縁層Z2の側面に密着して形成されている。平面視において、絶縁層Z3は矩形状であり、その内部において窒化物半導体層NSの表面を露出させるように形成されている。絶縁層Z3は、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)から構成されているが、これに限られない。
【0089】
絶縁層Z4は、絶縁層Z2上から絶縁層Z3上を通って開口TH1、開口TH2、及び開口TH5を介して窒化物半導体層NS上まで延在して形成されている。絶縁層Z4は、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)から構成されているが、これに限られず、HfO
2膜、AlON膜、HfSiO膜、SiN膜、SiON膜などが用いられても良い。
【0090】
ここで、開口TH1、開口TH2、及び開口TH5を総じてゲート開口GTHと称する。また、絶縁層Z4のうち窒化物半導体層NSと密着して形成された部分をゲート開口の「底面」と称し、絶縁層Z3と密着して形成された部分をゲート開口の「側壁」と称する。
【0091】
また、絶縁層Z4は、平面視において開口TH6と一致し、開口TH6と共にソース電極SDを露出させる開口TH8と、平面視において開口TH7と一致し、開口TH7と共にドレイン電極DDを露出させる開口TH9と、を備えている。
図8(a)において、開口TH6は円形状にて示されているが、平面視において開口TH8と一致していれば同形状に限られない。また、
図8(a)において、開口TH9は円形状にて示されているが、平面視において開口TH7と一致していれば同形状に限られない。
【0092】
ゲート電極GDは、絶縁層Z4上からゲート開口GTDを介してゲート開口GTHの底面まで延在して形成されている。ゲート電極GDは、例えばモリブデン(Mo)から構成されているが、これに限られず、タングステンなどが適用でき、Ti/TiN/Wの積層構造であっても良い。ゲート電極GDは、ゲート開口GTHの底面と側壁とに密着して形成されている。
【0093】
絶縁層Z5は、絶縁層Z4とゲート電極GDとを覆って形成されている。絶縁層Z5は、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)から構成されているが、これに限られない。絶縁層Z5は、平面視において、開口TH6および開口TH8と一致し開口TH6及び開口TH8と共にソース電極SDを露出させる開口TH10と、開口TH7および開口TH9と一致し開口TH7及び開口TH9と共にドレイン電極DDを露出させる開口TH11と、を備えている。
図8(a)において、開口TH10は円形状にて示されているが、平面視において第6および8の開口と一致していれば同形状に限られない。また、
図8(a)において、開口TH11は円形状にて示されているが、平面視において第7および9の開口と一致していれば同形状に限られない。
【0094】
また、絶縁層Z5は、平面視において、開口TH10及び11以外の複数の開口によりゲート電極GDを露出させている。ここで、この複数の開口を総じて開口TH12と称する。
【0095】
ここで、開口TH6、8、及び10を総じて開口STHと称する。また、開口TH7、9、及び11を総じて開口DTHと称する。
【0096】
導電層DS1は、絶縁層Z5上から、開口STHを介してソース電極SDに接続されている。導電層DS1は、例えばアルミニウム(AL)から構成されているが、これに限られず、支持基板Sub側からTi/TiN/AlSiCu/Ti/TiNの積層構造となっていてもよい。なお、
図8(b)では、導電層DS1は、絶縁層Z5の表面から開口STHを介してソース電極SDに達するまでを連続した一部材として示しているが、これに限られず、開口STH内と絶縁層Z5の表面上とで異なる部材により構成するようにしても良い。
【0097】
導電層DS2は、絶縁層Z5上から、開口DTHを介してドレイン電極DDに接続されている。導電層DS2は、例えばアルミニウム(AL)から構成されているが、これに限られず、支持基板Sub側からTi/TiN/AlSiCu/Ti/TiNの積層構造となっていてもよい。なお、
図8(b)では、導電層DS2は、絶縁層Z5の表面から開口DTHを介してドレイン電極DDに達するまでを連続した一部材として示しているが、これに限られず、開口DTH内と絶縁層Z5の表面上とで異なる部材により構成するようにしても良い。
【0098】
導電層DS3は、絶縁層Z5上から開口TH12を介してゲート電極GDに接続されている。導電層DS3は、例えばアルミニウム(AL)から構成されているが、これに限られず、支持基板Sub側からTi/TiN/AlSiCu/Ti/TiNの積層構造となっていてもよい。なお、
図8(b)では、導電層DS3は、絶縁層Z5の表面から開口TH12を介してゲート電極GDに達するまでを連続した一部材として示しているが、これに限られず、開口TH12内と絶縁層Z5の表面上とで異なる部材により構成するようにしても良い。
【0099】
トランジスタTrは、以上の構成となっている。なお、トランジスタTrのソース電極SDは、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、及び31の各々のソース端子Sに対応し、トランジスタTrのドレイン電極DDは、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、及び31のドレイン端子Dに対応している。
(トランジスタTrの動作)
【0100】
トランジスタTrは、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、及び31に適用できる。トランジスタTrは、ゲート電極GDとソース電極SDとの間に所定の閾値以上の電位差が発生した場合にオン状態となり、該電位差が閾値以下であればオフ状態となる。
【0101】
ここで、トランジスタTrにおいて、電子供給層DS1に面した窒化物半導体層NSの表面には、電子供給層DS1と窒化物半導体層NSとの電気分極により、常時電子が発生しトラップされた状態となっている。また、トランジスタTrにおいて、ゲート電極GDとソース電極SDとに何ら電圧が印加されていない場合、絶縁層Z3に面した窒化物半導体層NSの表面には、絶縁層Z3が電気分極を有していないことから、電子が自然発生した状態となっていなおらず、ソース電極SDとドレイン電極DDとが電気的に絶縁された状態となっている。このようなトランジスタTrは、一般にノーマリーオフ型のGaNトランジスタと称されている。
【0102】
以上のように、GaN特性を備えたトランジスタTrを、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、又は31に適用した場合には、一般的なNMOSトランジスタやPMOSトランジスタに比べてスイッチング速度を速くすることができるので、スイッチ素子SW1、11、21、又は31によって調整される電圧Vout1、11、21、又は31をより高精度に調整でき、ひいては、負荷18をより安定的に動作させることができる。
【0103】
なお、
図8においてはGaN特性を備えたトランジスタTrのうちノーマリーオフ型のトランジスタを示したが、本発明の実施形態にかかるスイッチング電源回路10が備えるスイッチ素子SW1、11、21、又は31に適用できるGaN特性を備えたトランジスタとしては、自然状態でソース電極とドレイン電極とが電気的に接続されるノーマリーオン型もあり、これに限られない。