(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543124
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】カーテンウォール
(51)【国際特許分類】
E04B 2/96 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
E04B2/96
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-145343(P2015-145343)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-25591(P2017-25591A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年1月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 三協立山株式会社三協アルミ社カタログ「NL−R CURTAINWALL」
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網谷 志郎
【審査官】
土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】
実公平04−032406(JP,Y2)
【文献】
米国特許第05058344(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方立と、方立間に配置される無目と、無目の室外側に取り付けられパネル間口溝を形成するカバー部材とを備え、
無目は、無目の上方位置に配置されるパネルを載置するパネル載置部を有し、
カバー部材は、パネル載置部の室外側端に取り付けられてパネル間口溝を形成する内壁部と、内壁部の室外側に一体的に形成され無目の室外側を覆う外壁部とを有し、
内壁部のパネル載置部の上面よりも上方位置には、パネル開口溝内に外気を導入する外気導入孔が形成されるとともに、
外壁部の室内側には、外気導入孔と室外空間とを連通する連通空間が形成されており、
無目は、外気導入孔よりも下方位置かつ、パネル載置部の上面よりも上方位置において、連通空間と連通してパネル間口溝内の水を排水する排水孔が形成されている
ことを特徴とするカーテンウォール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建築物の外壁面を形成するカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に配置される方立と水平方向に配置される無目とによって形成され、その無目の室外側にカバー部材を設けてなるカーテンウォールは知られており、カーテンウォールの室内側に生じる結露水等を排水するための流通路をガラス保持溝及びカバー部材に形成して、結露水等を排水することができるカーテンウォールが公知となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−115662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術文献のカーテンウォールは、室内側から室外側に連通する流通路を形成することによって、室内側に発生する結露水を排水可能としている。
しかしながら、カーテンウォールの室内側と室外側が連通しているために、突風等が発生するなど、流通路の出口付近の圧力が急激に高まった場合などには、カバー部材等に設けた流出口の空気の流れが増大し、流通路内に存在する結露水が逆流して室内側の流出口から吹き込む可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、ガラス保持溝内に溜まる結露水等を良好に排水することができるとともに、気密性の優れたカーテンウォールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の方立と、方立間に配置される無目と、無目の室外側に取り付けられパネル間口溝を形成するカバー部材とを備え、無目は、無目の上方位置に配置されるパネルを載置するパネル載置部を有し、カバー部材は、パネル載置部の室外側端に取り付けられてパネル間口溝を形成する内壁部と、内壁部の室外側に一体的に形成され無目の室外側を覆う外壁部とを有し、内壁部のパネル載置部の上面よりも上方位置には、パネル開口溝内に外気を導入する外気導入孔が形成されるとともに、外壁部の室内側には、外気導入孔と室外空間とを連通する連通空間が形成されており、無目は、外気導入孔よりも下方位置
かつ、パネル載置部の上面よりも上方位置において、連通空間と連通してパネル間口溝内の水を排水する排水孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
パネル間口溝に対する外気の導入は、パネル載置部の上面よりも上方位置に配置された比較的開口面積の広い外気導入孔を介して行われ、ガラス保持溝のパネル載置部の底部上に溜まった結露水は、外気導入孔よりも下方位置において無目の室外側に排水されるので、外気の導入が結露水等の排水に影響を及ぼすことを抑制することができ、結露水等が吹き込むことが防止できるとともに、パネル間口溝を外気と等圧にして気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの方立と無目との連結部分の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの方立部分の横断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの無目部分の縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの外気導入経路を説明するための図であり、外気導入部分における無目部分の縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの排水経路を説明するための図であり、排水部分における無目部分の縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの外気導入経路と排水経路との位置関係を説明するための図であり、無目を室外側から見た状態における外気導入孔と排水孔を示す正面図である(カバー部材の外壁部は省略している。)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(カーテンウォールの構成)
図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るカーテンウォールを説明する。
本発明の実施形態に係るカーテンウォールは、
図1に示されるように、建物の外周に配置された複数の方立1間に無目2を配設して構成される開口枠にガラス等のパネルpを装着して構成されている。
【0010】
方立1は、
図2、3に示すように、上下方向に延びる中空の方立本体部11と、方立本体部11の室外側面略中央より室外側に延設する方立突出片12と、方立突出片12の室外側端に連続しカーテンウォールの縦枠外面となる室外壁13とにより構成されており、方立突出片12の左右両側には、方立本体部11の室外側面と室外壁13とにより、無目2を挿入して固定する凹部が形成されている。
【0011】
前記凹部を構成する方立突出片12には無目2を支持する自重受け(図示はなし。)がボルト等により取付けられ、無目2の室内側下面を自重受けにより支持固定することで、無目2が方立1に対して支持固定されており、方立1の凹部に挿入して支持された無目2の端部と方立1の見込み面との間には、コーキング材等のシール材9が充填されている。
方立1に支持固定された無目2の室内側上面には竪補助材3が配置され、方立1の室外壁13と竪補助材3とによってカーテンウォールの縦のパネル間口溝M1が形成され、バックアップ材b及びシール材sによってパネルとしての二重ガラスGが保持されている。 なお、
図2,3において、方立本体部11の室外側面と竪補助材3との間には、気密材Sが配置されている。
【0012】
無目2は、
図4に示すように、左右方向に延びる中空部を備える無目本体部21と、無目本体部21の高さ方向略中央より室外側に延設され、無目2の上方位置に配置されるパネルとしての二重ガラスGが載置される無目突出片22とにより構成されており、無目突出片22の室外側上面には無目2の上方側のパネル間口溝M2を形成するカバー部材7が取付けられるとともに、無目突出片22の室外側下面には無目2の下方側のパネル間口溝M3を形成する押縁部材8が取付けられている。
【0013】
無目突出片22の室外側先端は、その底面が無目突出片22の上面よりも下方位置にあって上方に開口する溝部22aを備えており、溝部22aの室外側の壁部22bの上端は室内方向に屈曲して外被係合片23aを形成するとともに、無目突出片22の上面より室外方向にカギ状に立ち上がる内被係合片23bが形成され、外、内被係合片23a,23bによって、カバー部材7の係合部74が係合される上方被係合部23が構成されている。
無目突出片22の下面には、その見込み方向の2カ所位置において室内方向にカギ状に突出する外、内被係合爪24a,24bが形成されており、外、内被係合爪24a,24bによって、後述する押縁部材8の外、内係止爪82a,82bが係止される下方被係合部24が構成されている。
【0014】
カバー部材7は、無目2の室外側を覆ってカーテンウォールの横枠外面を構成する外壁部71と、無目2の上方のパネル間口溝M2を構成する内壁部72と、外壁部71と内壁部72との上端を連結する連結部73と、内壁部72の下端より室内側に延設される係合部74と、外壁部71の下方位置の室内側面に設けられる当接部75とを備えている。係合部74は、その室内側端が無目突出片22の上面に形成された上方被係合部23の内被係合片23bに係合し、その室外側端が同外被係合片23a係合することにより無目突出片22に取付けられ、当接部75を押縁部材8の室外側面に当接することで、カバー部材7の外壁部71と無目2との間に適度な間隔を保持している。
パネル間口溝M2において、無目突出片22はパネル載置部として機能し、その上面に載置されたセットブロックに対してパネルpとしての二重ガラスGが載置され、バックアップ材b及びシール材sによって保持されている。
【0015】
押縁部材8は、無目2の下方のパネル間口溝M3を構成する押縁部81と、押縁部81の上端より室内側に延設され、2つの係止爪82a,82bを有する上壁部82とから構成されており、無目突出片22の下面に形成された外、内被係合爪24a,24bに係止爪82a,82bをそれぞれ係止して無目2に対して取付けられている。
押縁部材8の押縁部81と無目2の無目本体部21の室外側面とにより形成されるパネル間口溝M3には、バックアップ材b及びシール材sによってパネルpとしての二重ガラスGが保持されている。
【0016】
(カバー部材による外気導入経路及び排水経路の構成)
本発明の上記実施形態に係るカーテンウォールにおいては、パネル間口溝M1乃至M3の空間を室外空間と等圧とするための外気導入経路を形成するとともに、パネル間口溝M1乃至3に侵入した結露水等を排水するための排水経路を形成することにより、パネル間口溝M1乃至M3からの水の浸入を防止している。
以下に、外気導入経路及び排水経路について、
図5乃至7を参考に説明する。
【0017】
方立1に形成されるパネル間口溝M1及び無目2の上下に形成されるパネル間口溝M2,M3は、その四隅において連続しており、無目2の上面に形成されるパネル間口溝M2を室外空間と連通させることにより、四周に亘って室外空間とほぼ等圧状態に維持されている。無目2の上面に形成されるパネル間口溝M2の空間は他のパネル間口溝M1,M3の空間に比べて広く形成されており、水が溜まりやすい空間の圧力を安定させることで侵入した結露水等を室外にスムーズに排水し、圧力差によって室内側に吹き込むことを防止している。
【0018】
パネル間口溝M2の空間を室外空間と連通させるための外気導入経路は、
図5、7に示すように、パネル間口溝M2を構成するカバー部材7の内壁部72に形成される外気導入孔7aと、カバー部材7の外壁部71の室内側に形成され外気導入孔7aを室外空間に連通させる垂直方向の連通空間Aとによって形成される。
内壁部72に形成される外気導入孔7aは、カバー部材7の長手方向の複数位置に設けられており、無目突出片22の上面よりも高い位置、具体的には、係合部74の上方位置において所定高さを有する横長の開口により形成されている。
【0019】
そして、カバー部材7の外気導入孔7aが設けられた位置においては、押縁部材8の室外面に当接する当接部75が切り欠かれて切欠部75aが形成され、カバー部材7の下方より導入された空気は、連通空間A及び外気導入孔7aを経てパネル間口溝M2の空間内にスムーズに導入される。
【0020】
一方、パネル間口溝M2の空間から結露水等を排水する排水経路は、
図6、7に示すように、無目2の長手方向略中央位置において、無目突出片22の上面に形成された外、内被係合片23a,23bが切除されることで形成されている。
パネル間口溝M2の空間内が前記外気導入経路の効果により外気空間と等圧に維持されるので、パネル間口溝M2の空間内の結露水等は、無目突出片22の上面とカバー部材7の係合部74の下面との間の隙間を通り、無目突出片22の先端に形成された溝部22aに導かれる。その後、溝部22a内の結露水等は無目2の長手方向略中央位置において外被係合片23aが切除されてなる排水孔22cより無目2の室外側に排水される。排水された結露水等はカバー部材7の外壁部71の室内側に形成される連通空間Aを経て室外へ排水される(矢印X)。
【0021】
このように、溝部22aに導かれた結露水等を排水する排水孔22cを無目2の長手方向略中央位置に設けることで、無目2等の重量によって無目に撓みが生じた場合にも排水孔22cは他の部位よりも低い位置になりやすく、溝部22a内の水を排水孔22cによりスムーズに導くことができる。
また、無目2の排水孔22cが設けられた中央部においては、押縁部材8の室外面に当接する当接部75が形成されており、排水孔22cに対して直線的に外気が導入されないように形成されているので、排水される水が突風等により逆流して室内空間に侵入することが防止される。
【0022】
以上のように、本発明の実施形態に係るカーテンウォールにおいては、パネル間口溝を形成する押縁部(内壁部)に対して、無目の室外側を覆うカバー部(外壁部)を連結部により一体に形成しているので、押縁部の室外側が室外に直接露出せず、又、カバー部(外壁部)にメタルタッチ等の部分も存在しないので、押縁部(内壁部)に形成した外気導入孔を強度が許す範囲において大きく形成しても、パネル間口溝に対して室外側からの雨水の侵入を防止することができる。
【0023】
また、外気導入経路を構成する外気導入孔に対して、排水孔を下方に位置させるとともに、排水孔は無目の中央位置に設け、外気導入孔は排水孔と左右位置をずらして設けているので、排水孔により排水されている水が外気導入による影響を受けにくく、室内への吹き込みを抑制することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 :方立
11 :方立本体部
12 :方立突出片
13 :室外壁
2 :無目
21 :無目本体部
22 :無目突出片(パネル載置部)
22a :溝部
22b :壁部
22c :排水孔
23 :上方被係合部
24 :下方被係合部
3 :竪補助材
7 :カバー部材
7a :外気導入孔
71 :外壁部
72 :内壁部
73 :連結部
74 :係合部
75 :当接部
75a :切欠部
8 :押縁部材
81 :押縁部
82 :上壁部