【実施例】
【0026】
以下、本発明によるSnめっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
まず、厚さ0.2mmのCu−Ni−Sn−P合金からなる平板状の導体基材(1.0質量%のNiと0.9質量%のSnと0.05質量%のPを含み、残部がCuである銅合金の基材)を用意し、この基材の表面を圧延ロール(表面を研磨して表面の算術平均粗さRaを小さくした圧延ロール)により圧延処理して表面粗さを低減させた。このように表面を処理した後の基材の表面粗さについて、接触式表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製のサーフコーダSE4000)による圧延面の圧延方向に垂直な方向の測定結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaおよび最大高さRzと算術平均うねりWaを算出した。その結果、算術平均粗さRaは0.06μm、最大高さRzは0.5μm、算術平均うねりWaは0.03μmであった。
【0028】
次に、前処理として、表面処理後の基材(被めっき材)をアルカリ電解脱脂液により10秒間電解脱脂を行った後に水洗し、その後、5質量%の硫酸に10秒間浸漬して酸洗した後に水洗した。
【0029】
次に、80g/Lのスルファミン酸ニッケルと45g/Lのホウ酸を含むNiめっき液中において、表面処理後の基材(被めっき材)を陰極とし、Ni電極板を陽極として、電流密度8A/dm
2、液温50℃で5秒間電気めっきを行うことにより、基材上に厚さ0.08μmのNiめっき層を形成した。
【0030】
次に、110g/Lの硫酸銅と100g/Lの硫酸を含むCuめっき液中において、Niめっき済の被めっき材を陰極とし、Cu電極板を陽極として、電流密度8A/dm
2、液温20℃で15秒間電気めっきを行うことにより、基材上に厚さ0.28μmのCuめっき層を形成した。
【0031】
次に、60g/Lの硫酸第一錫と75g/Lの硫酸と30g/Lのクレゾールスルホン酸と1g/Lのβナフトールを含むSnめっき液中において、Cuめっき済の被めっき材を陰極とし、Sn電極板を陽極として、電流密度7A/dm
2、液温20℃で10秒間電気めっきを行うことにより、基材上に厚さ0.45μmのSnめっき層を形成した。
【0032】
このSnめっき済の被めっき材では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.6であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.3である。
【0033】
次に、Snめっき済の被めっき材を洗浄して乾燥した後、光輝焼鈍炉(光洋リンドバーグ株式会社製)に入れ、大気雰囲気中において炉内温度700℃で5秒間保持する熱処理を行った。
【0034】
このようにして作製したSnめっき材を集束イオンビーム(FIB)により切断して、Snめっき材の圧延方向に垂直な断面を露出させ、その断面をオージェ電子分光法(AES)により分析した。その結果、Snめっき材の最表面に形成された最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とCu−Ni−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していることが確認された。なお、Snを溶解することができる電解液(株式会社中央製作所製のS−110)などの薬液により、Snめっき材の最表層のSn層を溶解させて、Cu−Sn合金層がCu−Sn合金の結晶粒から形成されていることを確認した。また、EPMAにより、Cu−Sn合金層の表面の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間に形成された凹部内にSnからなるSn層が形成されていることを確認した。
【0035】
また、これらの層の厚さを電解液(株式会社中央製作所製のS−110)を使用して電解式膜厚計(株式会社中央製作所製のThickness Tester TH−11)により測定したところ、Sn層の平均厚さは0.04μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは0.87μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaを算出したところ、0.05μmであった。なお、上記の電解液を使用すると、約0.2VでSn層が溶解し、0.4〜0.6VでCu−Sn合金層が溶解するので、Sn層とCu−Sn合金層のそれぞれの厚さを測定することができる。
【0036】
また、Snめっき材の最表層をArイオンでエッチングしてAESにより元素分析したところ、Snめっき材の基材の表面に形成された下地層はCu−Ni合金からなる層であり、Snめっき材の最表層と下地層の間の中間層の存在をAESにより分析したところ、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、最表層と中間層を薬液で除去して、下地層の平均厚さを蛍光X線膜厚計(セイコーインスツル株式会社製のSFT3300)により(下地層をNiからなる層として)測定したところ、0.06μmであった。
【0037】
また、Snめっき材の最表面にAuを約200nmの厚さに蒸着させ、集束イオンビーム(FIB)により切断して、Snめっき材の圧延方向に垂直な断面を露出させ、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)によりSnめっき材の表面に平行な長さL(=20μm)の視野において5000倍で10点観察し、それぞれ観察領域においてCu−Sn合金層がAu蒸着層と接触する長さの合計(Lm)をその領域全体の長さL(=20μm)から差し引いてその領域全体の長さLで除した値(その観察領域においてSn層がAu蒸着層と接触する長さの比率=(L−Lm)/L)を得た後、10点の観察領域におけるその値が最大値および最小値となる値を除いた8点の観察領域におけるその値の平均値に100を乗じた値をSnの面積率(最表面においてSn層が占める面積)として算出したところ、Snの面積率は20.8%であった。
【0038】
また、Snめっき材を集束イオンビーム(FIB)により切断して、Snめっき材の圧延方向に垂直な断面を露出させ、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)によりSnめっき材の表面に平行な長さ約30μmの視野において5000倍で3点観察し、最表面の凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ(純Snの存在深さ))(
図2においてDで示す深さ)を求めたところ、凹部の最大深さは0.38μmであり、最表面に形成された凹部の個数から(Snめっき材の圧延方向に垂直な断面上の)最表面の凹部間(隣接するSn層間)の平均間隔(
図2においてLで示すSn層の間隔の平均値)を算出したところ、1.35μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると0.28になる。
【0039】
また、得られたSnめっき材から切り出した平板状の試験片を卓上プレス機によりインデント加工(R=1.5mm)して雌端子とし、厚さ0.2mmのCu−Ni−Sn−P合金からなる平板状の導体基材(1.0質量%のNiと0.9質量%のSnと0.05質量%のPを含み、残部がCuであり、算術平均粗さRa0.15μm、最大高さRz1.65μm、算術平均うねりWa0.08μmの銅合金の基材)に厚さ3.0μmのSnめっき層を形成した後に650℃で4.3秒間保持する熱処理(リフロー処理)したSnめっき材(最表層が厚さ0.67μmのSn層からなり、最表面においてSn層が占める面積率が100%であり、最表層と基材の間に厚さ1.15μmのCu−Sn合金層が形成されたSnめっき材)から切り出した平板状の試験片を雄端子とし、横型荷重測定器(株式会社山崎精機研究所製の電気接点シミュレータと、ステージコントローラと、ロードセルと、ロードセルアンプとを組み合わせた装置)の水平台上に固定した平板上の雄端子にインデント加工した雌端子を接触させた後、それぞれ荷重2N、5Nおよび8Nで雌端子を雄端子の表面に押し付けながら、雌端子を摺動速度80mm/分で水平方向に摺動距離10mm引っ張り、1mmから4mmまでの間(測定距離3mm)に水平方向にかかる力を測定してその平均値Fを算出し、試験片同士間の動摩擦係数(μ)をμ=F/Nから算出した。その結果、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.33、0.26および0.18であった。
【0040】
[実施例2]
Niめっき層の厚さを0.09μm、Cuめっき層の厚さを0.31μm、Snめっき層の厚さを0.57μmにした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.8であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.4である。
【0041】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0042】
その結果、最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とCu−Ni−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していることが確認された。Sn層の平均厚さは0.07μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは0.85μmであった。また、下地層はNiからなり、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.07μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.05μmであった。
【0043】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は18.0%、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)は0.51μm、最表面の凹部間の平均間隔は2.10μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると0.24になる。
【0044】
また、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.28、0.22および0.15であった。
【0045】
[実施例3]
Niめっき層の厚さを0.09μm、Cuめっき層の厚さを0.45μm、Snめっき層の厚さを0.70μmにし、熱処理の保持時間を4.7秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.6であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.3である。
【0046】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0047】
その結果、最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とCu−Ni−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していることが確認された。Sn層の平均厚さは0.07μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは1.26μmであった。また、下地層はNiからなり、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.05μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.03μmであった。
【0048】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は42.9%、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)は1.00μm、最表面の凹部間の平均間隔は1.33μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると0.75になる。
【0049】
また、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.33、0.25および0.18であった。
【0050】
また、本実施例のSnめっき材の(圧延方向に垂直な)断面をオージェ電子分光分析装置(FE−AES)により観察したところ、その走査イオン顕微鏡(SIM)像のコントラストから、Cu−Sn合金層とSn層とCu−Ni−Sn合金層を明確に区別することができた。また、これらの層にそれぞれ集束電子線を照射(Cu−Sn合金層とCu−Ni−Sn合金層では2か所に照射)して組成分析したところ、Sn層は、95.92原子%のSnと4.08原子%のCuからなる層であった。また、Cu−Sn合金層の一方の照射部分は、39.44原子%のSnと60.56原子%のCuからなる部分であり、他方の照射部分は、27.01原子%のSnと72.99原子%のCuからなる部分であった。また、Cu−Ni−Sn合金層の一方の照射部分は、27.17原子%のSnと66.53原子%のCuと6.30原子%のNiからなる部分であり、他方の照射部分は、26.23原子%のSnと52.31原子%のCuと21.45原子%のNiからなる部分であった。
【0051】
[実施例4]
表面を処理した後の基材の算術平均粗さRaを0.07μm、最大高さRzを0.53μm、算術平均うねりWaを0.04μmにし、Niめっき層の厚さを0.11μm、Cuめっき層の厚さを0.29μm、Snめっき層の厚さを0.38μmにし、熱処理の保持時間を6.8秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.3であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.0である。
【0052】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0053】
その結果、最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とCu−Ni−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していることが確認された。Sn層の平均厚さは0.04μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは0.75μmであった。また、下地層はNiからなり、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.07μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.05μmであった。
【0054】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は16.3%、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)は0.52μm、最表面の凹部間の平均間隔は2.38μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると0.22になる。
【0055】
また、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.17、0.13および0.10であった。
【0056】
[比較例1]
表面を処理した後の基材の算術平均粗さRaを0.15μm、最大高さRzを1.65μm、 算術平均うねりWaを0.08μmにし、NiめっきとCuめっきを行わず、Snめっき層の厚さを1.0μmにし、熱処理の温度を650℃として保持時間を4.3秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。
【0057】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0058】
その結果、最表層の構成は、Snからなり、Sn層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなるCu−Ni−Sn合金層が存在していないことが確認された。Sn層の平均厚さは0.67μmであった。また、下地層はCu−Sn合金からなり、下地層と最表層の間の中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは1.15μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.13μmであった。
【0059】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は100%であり、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.44、0.35および0.23であった。
【0060】
[比較例2]
Niめっき層の厚さを0.09μm、Cuめっき層の厚さを0.49μm、Snめっき層の厚さを0.95μmにし、熱処理の保持時間を4.7秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.9であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.6である。
【0061】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0062】
その結果、最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とCu−Ni−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していることが確認された。Sn層の平均厚さは0.23μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは1.27μmであった。また、下地層はNiからなり、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.06μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.03μmであった。
【0063】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は73.8%、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)は3.15μm、最表面の凹部間の平均間隔は1.34μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると2.35になる。
【0064】
また、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.43、0.30および0.20であった。
【0065】
[比較例3]
表面を処理した後の基材の算術平均粗さRaを0.09μm、最大高さRzを0.66μm、 算術平均うねりWaを0.08μmにし、Niめっき層の厚さを0.30μm、Cuめっき層の厚さを0.30μm、Snめっき層の厚さを0.70μmにし、熱処理の温度を650℃として保持時間を4.0秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は2.3であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.2である。
【0066】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0067】
その結果、最表層の構成は、Snからなり、Sn層内の下側(下地層側)にCu−Sn合金からなる複数のCu−Sn合金層が中間層として存在していることが確認された。Sn層の平均厚さは0.34μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは0.77μmであった。また、下地層はNiからなり、下地層と中間層の間にCu層が存在しておらず、下地層の表面に中間層を介して最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.30μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.08μmであった。
【0068】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は100%であり、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.42、0.32および0.22であった。
【0069】
[比較例4]
表面を処理した後の基材の算術平均粗さRaを0.13μm、最大高さRzを0.86μm、算術平均うねりWaを0.08μmにし、Niめっき層の厚さを0.09μm、Cuめっき層の厚さを0.29μm、Snめっき層の厚さを0.56μmにし、熱処理の保持時間を6.0秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、Snめっき材を作製した。なお、このSnめっき済の被めっき材(熱処理前のSnめっき材)では、Cuめっき層の厚さに対するSnめっき層の厚さの比は1.9であり、Cuめっき層の厚さとNiめっき層の厚さの和に対するSnめっき層の厚さの比は1.5である。
【0070】
このようにして作製したSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、めっき層を分析し、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)を算出し、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)を求めるとともに、凹部間の平均間隔、摩擦係数を算出した。
【0071】
その結果、最表層の構成は、SnとCu−Sn合金とからなり、Cu−Sn合金の結晶粒から形成されたCu−Sn合金層の表面(の隣接するCu−Sn合金の結晶粒間)に凹部が形成され、この凹部内にSnからなるSn層が形成されて、最表面にCu−Sn合金層とSn層が存在するとともに、Cu−Sn合金層内の下側(下地層側)にCu−Ni−Sn合金からなる複数のCu−Ni−Sn合金層が離間して存在していいないことが確認された。Sn層の平均厚さは0.07μmであり、Cu−Sn合金層の平均厚さは0.92μmであった。また、下地層はNiからなり、中間層としてCu層が存在しておらず、下地層の表面に最表層が形成されていた。また、下地層の平均厚さは0.07μmであった。また、Sn層剥離後の算術平均うねりWaは0.13μmであった。
【0072】
また、最表面においてSn層が占める面積(Snの面積率)は18.4%、凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)は0.95μm、最表面の凹部間の平均間隔は4.18μmであった。なお、最表面の凹部間の平均間隔(b)に対する凹部の最大深さ(Sn層の最大厚さ)(a)の比(a/b)を算出すると0.23になる。
【0073】
また、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数は、それぞれ0.38、0.29および0.20であった。
【0074】
これらの実施例および比較例のSnめっき材の製造条件および特性を表1〜表4に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
[実施例5]
実施例1と同様の雌端子を使用し、厚さ0.2mmのCu−Ni−Sn−P合金からなる平板状の導体基材(1.0質量%のNiと0.9質量%のSnと0.05質量%のPを含み、残部がCuであり、算術平均粗さRa0.09μm、最大高さRz0.66μm、算術平均うねりWa0.08μmの銅合金の基材)に厚さ0.3μmのNiめっき層を形成し、このNiめっき層上に厚さ0.3μmのCuめっき層を形成し、このCuめっき層上に厚さ0.7μmのSnめっき層を形成した後に650℃で4秒間保持する熱処理(リフロー処理)したSnめっき材(最表層が厚さ0.34μmのSn層からなり、最表面においてSn層が占める面積率が100%であり、基材上に下地層として厚さ0.3μmのNi層が形成され、最表層と下地層の間に厚さ0.77μmのCu−Sn合金およびCu−Ni−Sn合金からなる中間層が形成されたSnめっき材)から切り出した平板状の試験片を雄端子とし、実施例1と同様の方法により、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数を算出したところ、それぞれ0.26、0.14および0.14であった。
【0080】
[実施例6]
実施例1と同様の雌端子を使用し、厚さ0.2mmのC2680合金(黄銅)からなる平板状の導体基材(65質量%のCuを含み、残部がZnであり、算術平均粗さRa0.09μm、最大高さRz0.73μm、算術平均うねりWa0.06μmの銅合金の基材)に厚さ0.5μmのCuめっき層を形成し、このCuめっき層上に厚さ1.2μmのSnめっき層を形成した後に650℃で4秒間保持する熱処理(リフロー処理)したSnめっき材(最表層が厚さ0.98μmのSn層からなり、最表面においてSn層が占める面積率が100%であり、基材上に下地層として厚さ0.82μmのCu−Sn合金層が形成されたSnめっき材)から切り出した平板状の試験片を雄端子とし、実施例1と同様の方法により、荷重2N、5Nおよび8Nの場合の動摩擦係数を算出したところ、それぞれ0.34、0.17および0.18であった。