特許第6543154号(P6543154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543154放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543154
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/34 20060101AFI20190628BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G21F9/34 Z
   G21F9/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-193301(P2015-193301)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67607(P2017-67607A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】507106180
【氏名又は名称】環テックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515272073
【氏名又は名称】株式会社アルコム
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】赤星 公祐
(72)【発明者】
【氏名】森本 克秀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 伸康
(72)【発明者】
【氏名】亀山 敏治
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】安本 晃通
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−236486(JP,A)
【文献】 特開2001−115555(JP,A)
【文献】 米国特許第05201152(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/34
G21F 9/00
G21F 9/30
G21F 9/36
B09B 1/00
B09B 3/00
B08B 15/02
E04B 1/342−1/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質で汚染された廃棄物の掘削領域が配置された大地上に第1の方向に延在する第1の走行路を設定する工程と、
前記廃棄物の除去または埋め込み作業を実施する作業空間を取り囲む囲繞構造体を前記第1の方向に沿って移動可能な状態で前記第1の走行路上に設置する工程と、
前記囲繞構造体を前記第1の方向に沿って移動して、前記囲繞構造体内において前記廃棄物の除去または埋め込みを実施するとともに、前記囲繞構造体の移動により該囲繞構造体の外に露出する前記廃棄物の端部を第1の養生部材で覆う工程と、
前記大地上において、前記第1の方向に交差する第2の方向に隣接する位置に、前記第1の方向に延在する第2の走行路を設定する工程と、
前記第1の走行路と前記第2の走行路とを接続する第3の走行路を設定する工程と、
前記第1の走行路上の前記囲繞構造体を、前記第3の走行路を介して前記第2の走行路上に移動する工程と、
前記囲繞構造体を前記第2の走行路上に移動した後、前記第1の方向に沿って移動して、前記囲繞構造体内において前記廃棄物の除去または埋め込みを実施するとともに、前記囲繞構造体の移動により該囲繞構造体の外に露出する廃棄物の端を第2の養生部材で覆う工程と、
を有し、
前記第2の走行路を設定する場合に、前記第1の走行路上を移動する前記囲繞構造体の囲繞範囲と、前記第2の走行路上を移動する前記囲繞構造体の囲繞範囲とが、それらの隣接部で部分的に重なるように、前記第2の走行路を設定することを特徴とする放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記囲繞構造体は、分割した状態で移動させることが可能な複数の部分囲繞構造体により構成されていることを特徴とする請求項1記載の放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法に関し、例えば、敷地内に埋められた放射性物質に汚染された廃棄物を掘り起こし、フレキシブルコンテナバッグ(以下、コンテナバッグという)に詰め込む技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境省が計画している特定廃棄物等の最終処分場等への搬出準備作業において、広大な敷地内に埋められた放射性セシウム等のような放射性物質に汚染された混合焼却灰等を掘り起こし、コンテナバッグに詰め込む際には、電離則に基づいて敷地内の処理現場(作業空間)をテント等で遮蔽するようにしている。しかし、広大な敷地の全域をテントで覆うことは、技術面および経済面等から困難であるため、広大な敷地の全域よりも小さな中規模のテントを構築し、移動させながら敷地内の放射性物質に汚染された廃棄物を掘り起こしコンテナバッグに詰め込むようにしている。なお、廃棄物の処理技術については、例えば、特許文献1,2に記載があり、廃棄物を敷地内に埋め込む際に、作業空間をテントで遮蔽する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−115555号公報
【特許文献2】特開2005−98099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常の廃棄物の掘削作業においては、作業空間を覆うテントを移動させるときに、テントの脚部の足場を容易に確保することができるように、テントの脚部下の廃棄物を残しておき、最後に取り除くようにしている。しかし、放射性物質に汚染された廃棄物の掘削作業においては、作業空間を覆うテントを移動させるときに、掘削部における廃棄物が外気に曝されないように、掘削部における廃棄物を養生シートで覆う等のような養生作業が必要となる。このため、通常のテントの移動では、安全性を確保する観点から養生シートで覆う養生範囲が広くなる結果、処理効率が著しく低下する、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、その目的は、放射性物質に汚染された廃棄物の処理効率を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法は、放射性物質で汚染された廃棄物の掘削領域が配置された大地上に第1の方向に延在する第1の走行路を設定する工程と、前記廃棄物の除去または埋め込み作業を実施する作業空間を取り囲む囲繞構造体を前記第1の方向に沿って移動可能な状態で前記第1の走行路上に設置する工程と、前記囲繞構造体を前記第1の方向に沿って移動して、前記囲繞構造体内において前記廃棄物の除去または埋め込みを実施するとともに、前記囲繞構造体の移動により該囲繞構造体の外に露出する前記廃棄物の端部を第1の養生部材で覆う工程と、前記大地上において、前記第1の方向に交差する第2の方向に隣接する位置に、前記第1の方向に延在する第2の走行路を設定する工程と、前記第1の走行路と前記第2の走行路とを接続する第3の走行路を設定する工程と、前記第1の走行路上の前記囲繞構造体を、前記第3の走行路を介して前記第2の走行路上に移動する工程と、前記囲繞構造体を前記第2の走行路上に移動した後、前記第1の方向に沿って移動して、前記囲繞構造体内において前記廃棄物の除去または埋め込みを実施するとともに、前記囲繞構造体の移動により該囲繞構造体の外に露出する廃棄物の端を第2の養生部材で覆う工程と、を有し、前記第2の走行路を設定する場合に、前記第1の走行路上を移動する前記囲繞構造体の囲繞範囲と、前記第2の走行路上を移動する前記囲繞構造体の囲繞範囲とが、それらの隣接部で部分的に重なるように、前記第2の走行路を設定することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1記載の発明において、前記囲繞構造体は、分割した状態で移動させることが可能な複数の部分囲繞構造体により構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、放射性物質に汚染された廃棄物の養生範囲を低減することができるので、放射性物質に汚染された廃棄物の処理効率を向上させることが可能になる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、囲繞構造体の走行路間の移動に際して、囲繞構造体を分割して小型軽量化した状態で移動することができるので、囲繞構造体の走行路間の移動を容易にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る放射性物質に汚染された混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図2】(a)は図1のI−I線の断面図、(b)は図1のII−II線の断面図である。
図3図1の後レール敷設工程およびテント組立工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図4】(a)は図3のI−I線の断面図、(b)は図3のII−II線の断面図である。
図5図4(b)のテントの破線Dで囲んだ脚部の拡大側面図である。
図6図3に続く掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図7】(a)は図6のI−I線の断面図、(b)は図7(a)に続く掘削工程における図6のI−I線の断面図である。
図8図6のII−II線の断面図である。
図9図6に続く掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図10】(a)は図9のI−I線の断面図、(b)は図10(a)に続く図9のI−I線の断面図である。
図11図9の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図12図11のI−I線の断面図である。
図13図11の後のテント移動工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図14図11のII−II線の断面図である。
図15図13の後のテント移動工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図16】(a)は図15のIII−III線の断面図、(b)は図15のII−II線の断面図である。
図17図15の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図18図17に続く掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図19図18の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図20図19の後のテント移動工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図21】掘削工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
図22】掘削設備を撤去した後の混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
本実施の形態の放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法は、例えば、敷地内に埋設された放射性物質を含む混合焼却灰(放射性物質に汚染された廃棄物)を掘削し、コンテナバックに詰め込んで搬出する廃棄物の除去処理方法である。以下、本実施の形態の放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法について図1図22を参照して説明する。なお、図1図4および図6図22において左右横方向を掘削処理方向(第1の方向)といい、これに交差する上下縦方向をレール間移動方向(第2の方向)という。また、図1図3図6図9図11図13図15図17図20は平面図であるが、図面を見易くするため混合焼却灰の掘削領域Wにハッチングを付した。
【0013】
図1は混合焼却灰の掘削領域の平面図、図2(a)は図1のI−I線の断面図、図2(b)は図1のII−II線の断面図である。
【0014】
まず、大地G内において混合焼却灰の掘削領域Wの範囲を測量する。掘削領域Wには、例えば、放射線セシウム等のような放射性物質に汚染された混合焼却灰が埋設されている。
【0015】
次に、図3図1の後のレール敷設工程およびテント組立工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図4(a)は図3のI−I線の断面図、図4(b)は図3のII−II線の断面図、図5図4(b)のテントの破線Dで囲んだ脚部の拡大側面図である。
【0016】
まず、図3および図4に示すように、大地G上に掘削処理方向に沿って延在する一対のレール(第1の走行路)L1,L1をレール間移動方向に所定の間隔だけ離した状態で敷設する。一方のレールL1は掘削領域Wの外側に敷設され、他方のレールL1は掘削領域W上を通過するように敷設されており、一対のレールL1,L1の間には、掘削領域Wの一部が配置されている。なお、図5に示すように、レールL1,L1は、例えば、H鋼材により構成されている。
【0017】
続いて、図3および図4に示すように、大地G上にテントSA,SBを組み立てる。テントSAは、混合焼却灰の掘削作業空間を取り囲む囲繞構造体であり、例えば、同一構成の2個のテントSA1,SA2が機械的に接合されることで構成されている。テントSA1,SA2において主な骨組み部は、例えば、ボルトおよびナットにより接合されている。その他の骨組み部は、例えば、クリップにより接合しても良い。テントSA1,SA2の遮蔽シートは、例えば、面ファスナや嵌合プレートにより接合しても良い。
【0018】
テントSAを構成する2個のテントSA1,SA2の間には遮蔽シートが存在しないが、テントSAにおいて掘削処理方向の両側面、レール間移動方向の両側面および上面には掘削作業空間を取り囲むように遮蔽シートが設けられている。なお、テントSAの寸法は、特に限定されるものではないが、例えば、掘削処理方向の寸法が50m程度、レール間移動方向の寸法が40m程度、高さ(最も高い位置)が15m程度である。
【0019】
また、テントSA(SA1,SA2)は、掘削処理方向に沿って移動可能な状態で一対のレールL1,L1上に組み立てられている。図5に示すように、レールL1,L1上には幅広のガイドGLが設置されている。テントSA(SA1,SA2)の脚部SLの底面には、例えば、ボールキャスタ等のような移動部材Mが設置されている。ただし、移動部材Mは、ボールキャスタに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、チルローラを用いても良い。チルローラを用いる場合は、後述のように、テントSAの移動方向の転換に際して、基礎桁の交差点でチルローラをジャッキで支えて浮かせた状態で直角に方向転換する。また、他の構成として、例えば、小口径の鋼球をガイドGL内に敷き詰めておき、その上にテントSAの脚部SLをスライドさせる構成としても良い。
【0020】
一方、テントSAよりも小型のテントSBは、混合焼却灰を詰め込んだコンベアバッグを搬出するトラックの搬出空間を取り囲む囲繞構造体であり、テントSA2に機械的に接合された状態で大地G上に組み立てられている。テントSA2とテントSBとの接合構成は、例えば、上記したテントSA1,SA2の接合構成と同じである。テントSBにおいて、掘削処理方向の両側面、レール間移動方向の両側面および上面には、トラックを取り囲むように遮蔽シートが設けられている。ただし、掘削処理方向の両側面の遮蔽シートは、開閉可能な状態になっている。
【0021】
次に、図6図3の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図7(a)は図6のI−I線の断面図、図7(b)は図7(a)に続く掘削工程における図6のI−I線の断面図、図8図6のII−II線の断面図である。
【0022】
ここでは、掘削領域Wの混合焼却灰を掘削する作業、掘削した混合焼却灰をコンベアバッグCBに詰め込む作業、そのコンベアバッグCBをトラックDtに載せる作業およびコンベアバッグCBを載せたトラックDtを搬出する作業等の各作業をテントSA,SB内において並列で実施する。例えば、以下のようにする。
【0023】
まず、掘削領域Wの混合焼却灰を、油圧シャベルE1,E2等により掘削する。大地Gにおいて混合焼却灰が掘削された場所は窪み部Cとなる。続いて、掘削された混合焼却灰を、油圧シャベルE2によりホッパHに投入し、そのホッパHの下方の空のコンベアバッグCB内に投入する。コンベアバッグCBはベルトコンベア等により掘削処理方向に沿って移動し、その途中でホッパHの下方を通過するようになっている。その後、混合焼却灰が詰め込まれたコンベアバッグCBを、クレーンE3等によりトラックDtの荷台上に搭載する。荷台に所定数のコンベアバッグCBを搭載したらトラックDtをテントSA内からテントSB内に移動する。この際、本実施の形態においては、掘削処理の進行に従ってテントSA,SBをレールL1,L1に沿って移動し、各作業を常にテントSA,SB内で実施することにより、作業空間を遮蔽することができるので、作業時に放射性物質を含む混合焼却灰が外部に漏れるのを防止することができる。また、テントSBを設けたことにより、テントSA内のトラックDtが外部に出る際に、テントSA内の放射性物質を含む混合焼却灰を巻き込んでしまっても、その混合焼却灰が外部に漏れてしまうのを防止することができる。
【0024】
また、図6に示すように、掘削作業によって大地Gに生じる窪み部Cの側面において、テントSAの移動により混合焼却灰が露出してしまう側面(法面)を防護用の養生シートCS1で覆う。これにより、テントSAの移動により、放射性物質を含む混合焼却灰が存在する窪み部Cの側面部がテントSAの外部に位置したとしても、その側面部から放射性物質を含む混合焼却灰が飛散してしまうのを防止することができる。
【0025】
また、図7に示すように、掘削作業の進行により、テントSA1の脚部と窪み部Cの底面との間に隙間が生じるが、その隙間を無くすように、テントSA1の掘削処理方向の片側の側面(テントSA2が接続されていない側面)に、テントSA1の脚部から窪み部Cの底面に延びる遮蔽シートSSを設ける。これにより、掘削作業の進行により生じる隙間を無くすことができるので、その隙間を通じて放射性物質を含む混合焼却灰が外部に漏れてしまうのを防止することができる。
【0026】
次に、図9図6に続く掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図10(a)は図9のI−I線の断面図、図10(b)は図10(a)に続く図9のI−I線の断面図、図11図9の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図12図11のI−I線の断面図である。
【0027】
図9図12に示すように、テントSA,SBを移動して、掘削領域Wの混合焼却灰を掘削する作業、掘削した混合焼却灰をコンベアバッグCBに詰め込む作業、そのコンベアバッグCBをトラックDtに載せる作業およびコンベアバッグCBを載せたトラックDtを搬出する作業等の各作業を上記と同様に実施する。また、図9および図11に示すように、テントSA,SBの移動に伴って、養生シートCS1を掘削処理方向に延長する。
【0028】
また、図11および図12に示すように、混合焼却灰の掘削作業が進んだところで、クレーンE4およびテント分割用の重機E5を搬入路R(図11参照)から窪み部C内に搬入する。そして、クレーンE4により、新しい一対のレール(第2の走行路)L2,L2、複数本の接続レール(第3の走行路)LjおよびこれらのレールL2,Ljを支持する複数本の支持柱PをクレーンE4等により敷設する。また、テント分割用の重機E5をテントSA内に配置する。なお、図11においては、最初のレールL1と新しいレールL2との区別するために、新しいレールL2にハッチングを付した。
【0029】
一対のレールL2,L2は、図11において一対のレールL1,L1よりもレール間移動方向の下段に位置しており、互いにレール間移動方向に所定の間隔だけ離れた状態で、掘削処理方向に延在している。ただし、この段階では、一対のレールL2,L2は完成されておらず、掘削処理方向の途中位置(掘削領域W内)で終端している。
【0030】
一方のレールL2は、一対のレールL1,L1の間の窪み部Cの領域内に複数本の支持柱Pに支持された状態で敷設され、他方のレールL2は、混合焼却灰の掘削領域Wを通過するように大地G上に敷設されている。そして、一対のレールL1,L1の間の領域と一対のレールL2,L2の間の領域とが一部重なっており、その重なり部分に、窪み部Cと、残された掘削領域Wとの境界が位置している。一対のレールL1,L1と一対のレールL2,L2との一部を平面的に重ねずに、一対のレールL2,L2の足場を残すため、レールL2,L2を図11の下側のレールL1から下方に離れた位置に配置すると、隣接するレールL1とレールL2との間に混合焼却灰が残されるが、その残された部分が一対のレールL2,L2のラインでの掘削処理に際して、テントSAから露出するので、その部分にも養生シートを被せる必要が生じる。また、レールL2の足場のために残された混合焼却灰部分を後ほど掘削除去する必要が生じる。これらにより、掘削除去の処理効率が下がり、作業期間が長くなる上、作業コストも高くなる。これに対して、本実施の形態においては、一対のレールL1,L1と一対のレールL2,L2との隣接間を部分的に重ねることで、養生シートの範囲を小さくすることができる。また、一対のレールL2,L2のラインでの混合焼却灰の掘削除去後に、一対のレールL1,L1と一対のレールL2,L2との間に混合焼却灰が残されない。これらにより、放射性物質を含む混合焼却灰の除去処理の効率を向上させることができる。したがって、放射性物質を含む混合焼却灰の除去作業の期間を短縮できる。また、作業コストを低減することができる。
【0031】
接続レールLjは、最初の一対のレールL1,L1と新しい一対のレールL2,L2とを接続するレールであり、一対のレールL1,L1と一対のレールL2,L2との間に、これらのレールL1,L2に交差するレール移動間方向に沿って延在した状態で設けられている。窪み部Cの領域内の接続レールLjは複数本の支持柱Pにより支持されている。一方、掘削領域W上の接続レールLjは大地G上に敷設されている。支持柱Pは、例えば、H鋼材からなり、窪み部Cの底面に立設されている。
【0032】
次に、図13図11の後のテント移動工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図14図11のII−II線の断面図、図15図13の後のテント移動工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図、図16(a)は図15のIII−III線の断面図、図16(b)は図15のII−II線の断面図である。
【0033】
まず、図13および図14に示すように、テントSA1,SA2をテント分割用の重機E5等により分割した後、その重機E5によりテントSA1をレールL1,L1および接続レールLjを介して一対のレールL2,L2上に移動する。その後、図15および図16に示すように、同様に、テントSA2をレールL1,L1および接続レールLjを介して一対のレールL2,L2上に移動した後、テントSA1,SA2を再び接合する。テントSA1,SA2の移動に際しては、例えば、2つのウィンチの巻き取りと送り出しとを制御することで所定の位置に移動させた後、チェーンブロック等によりテントSA1,SA2の位置を微調整する。このようにしてテントSAを一対のレールL2,L2上に移動する。また、テントSBもテントSA2の位置に移動して接合する。その後、図15に示すように、一対のレールL2,L2を掘削処理方向の掘削領域Wの端部を超える位置まで延長する。また、支持柱Pおよび接続レールLjを撤去する。
【0034】
このように本実施の形態においては、テントSAを複数のテントSA1,SA2で構成し、テントSAの移動に際してはテントSA1,SA2を分割して移動することにより、テントSAの移動を容易にすることができる。また、テントSAを分割して移動することにより、移動時のテントの重量を軽くすることができるので、接続レールLjおよび支持柱Pの構造も簡単化することができる。したがって、放射性物質を含む混合焼却灰の除去処理の時間やコストを低減することができる。
【0035】
次に、図17図15の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図18図17に続く掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図、図19図18の後の掘削工程における混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
【0036】
ここでは、上記一対のレールL1,L1の掘削と同様に,図17図18および図19に示すように、テントSA,SBを移動して、テントSA,SB内において、掘削領域Wの混合焼却灰を掘削する作業、掘削した混合焼却灰をコンベアバッグCBに詰め込む作業、そのコンベアバッグCBをトラックDtに載せる作業およびコンベアバッグCBを載せたトラックDtを搬出する作業等の各作業を上記と同様に実施する。
【0037】
また、テントSA,SBの移動に伴って、養生シートCS1を取り外す一方、窪み部Cと残りの掘削領域Wとの境界の養生シートCS2を掘削処理方向に敷き、延長する。これにより、テントSAの移動により、放射性物質を含む混合焼却灰が存在する窪み部Cの側面部がテントSAの外部に位置したとしても、その側面部から放射性物質を含む混合焼却灰が飛散してしまうのを防止することができる。
【0038】
また、この場合も、掘削作業の進行により、テントSA1の脚部と窪み部Cの底面との間に生じた隙間を無くすように、テントSA1の掘削処理方向の片側の側面(テントSA2が接続されていない側面)に、テントSA1の脚部から窪み部Cの底面に延びる遮蔽シートSS(図7等参照)を設ける。これにより、掘削作業の進行により生じる隙間を無くすことができるので、その隙間を通じて放射性物質を含む混合焼却灰が外部に漏れてしまうのを防止することができる。
【0039】
また、この場合も、図19に示すように、混合焼却灰の掘削作業が進んだところで、クレーンE4により、新しい一対のレールL3,L3、複数本の接続レールLjおよびこれらのレールL3,Ljを支持する複数本の支持柱PをクレーンE4等により敷設する。
【0040】
一対のレールL3,L3は、図19において一対のレールL2,L2よりもレール間移動方向の下段に位置しており、互いにレール間移動方向に所定の間隔だけ離れた状態で、掘削処理方向に延在している。ただし、この段階では、一対のレールL3,L3は完成されておらず、掘削処理方向の途中位置(掘削領域W内)で終端している。
【0041】
一方のレールL3は、一対のレールL2,L2の間の窪み部Cの領域内に複数本の支持柱P(図12参照)に支持された状態で敷設され、他方のレールL3は、混合焼却灰の掘削領域Wの外側の大地G上に敷設されている。そして、一対のレールL2,L2の間の領域と一対のレールL3,L3の間の領域とが一部重なっており、その重なり部分に、窪み部Cと、残された掘削領域Wとの境界が位置している。これにより、上記したように、放射性物質を含む混合焼却灰の除去処理の効率を向上させることができる。したがって、放射性物質を含む混合焼却灰の除去作業の期間を短縮できる。また、作業コストを低減することができる。
【0042】
接続レールLjは、一対のレールL2,L2と新しい一対のレールL3,L3とを接続するレールであり、一対のレールL2,L2と一対のレールL3,L3との間に、これらのレールL2,L3に交差するレール移動間方向に沿って延在した状態で設けられている。窪み部Cの領域内の接続レールLjは複数本の支持柱P(図12参照)により支持されている。一方、掘削領域W上の接続レールLjは大地G上に敷設されている。
【0043】
次に、図20図19の後のテント移動工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図、図21は掘削工程後の混合焼却灰の掘削領域の平面図、図22は掘削設備を撤去した後の混合焼却灰の掘削領域の平面図である。
【0044】
ここでは、図21に示すように、上記と同様に、テントSA(SA1,SA2)を一対のレールL2,L2から一対のレールL3,L3上に移動した後、テントSA,SBを移動して、テントSA,SB内において、掘削領域Wの混合焼却灰を掘削する作業、掘削した混合焼却灰をコンベアバッグCBに詰め込む作業、そのコンベアバッグCBをトラックDtに載せる作業およびコンベアバッグCBを載せたトラックDtを搬出する作業等の各作業を実施する。
【0045】
また、この場合も、掘削作業の進行により、テントSA1の脚部と窪み部Cの底面との間に生じた隙間を無くすように、テントSA1の掘削処理方向の片側の側面(テントSA2が接続されていない側面)に、テントSA1の脚部から窪み部Cの底面に延びる遮蔽シートSS(図7等参照)を設ける。これにより、掘削作業の進行により生じる隙間を無くすことができるので、その隙間を通じて放射性物質を含む混合焼却灰が外部に漏れてしまうのを防止することができる。
【0046】
また、図20および図21に示すように、テントSA,SBの移動に伴って、一方のレールL3の近傍側の養生シートCS2を取り外す。なお、この場合は、他方のレールL3の近傍側には、混合焼却灰が無いので、養生シートを敷く必要はない。
【0047】
その後、図21に示すように、混合焼却灰を除去し終えたら、図22に示すように、一対のレールL3,L3、テントSA,SBを撤去する処理を終了する。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0049】
例えば、テントの脚部に電動式の車輪を設けても良い。また、その電動式の車輪を無線で操作することが可能な構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、前記実施の形態においては、本発明に係る放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法を、放射性物質を含む混合焼却灰の除去処理に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、放射性物質に汚染された廃棄物を大地に形成された窪み部内に埋め込む場合の処理にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
G 大地
W 掘削領域
C 窪み部
L1,L2,L3 レール
Lj 接続レール
SA,SA1,SA2 テント
SB テント
SL 脚部
SS 遮蔽シート
P 支持柱
GL ガイド
M 移動部材
CS1,CS2 養生シート
E1,E2 油圧シャベル
E3,E4 クレーン
E5 重機
H ホッパ
CB コンベアバッグ
Dt トラック
図1
図2
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