(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔多層微多孔膜〕
本実施形態の多層微多孔膜は、表層である第1微多孔層と、中間層である第2微多孔層と、を有し、前記第2微多孔層が、樹脂及び充填材を含み、前記第2微多孔層中の充填剤の含有量が、前記樹脂及び前記充填材の総量に対して、61質量%以上100質量%以下であり、前記第2微多孔層の厚みが、10μm以下であり、前記表層及び前記中間層の総厚みが、40μm以下である。
【0015】
本実施形態の多層微多孔膜は、2つの表層(第1微多孔層)の間に中間層(第2微多孔層)を有する態様であれば特に制限されない。充填材を含有する第2微多孔層が第1微多孔層に挟み込まれる形で支持されることによって、製膜過程におけるロールやガイド等との接触による摩擦により充填材が帯電することを防ぎ、さらには充填材の欠落を防止することで膜特性の向上と良好な生産性を得ることができる。
【0016】
このような構成を有する本実施形態の多層微多孔膜において、表層である第1微多孔層の厚みは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは4μm以上であり、さらに好ましくは6μm以上である。また、第1微多孔層の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは8μm以下である。表層である第1微多孔層の厚みが2μm以上であることにより、多層微多孔膜の熱機械強度がより向上する傾向にある。また、表層である第1微多孔層の厚みが15μm以下であることにより、多層微多孔膜のイオン透過性がより向上する傾向にある。
【0017】
また、中間層である第2微多孔層の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、第2微多孔層の厚みは、10μm以下であり、好ましくは8μm以下であり、より好ましくは6μm以下である。第2微多孔層の厚みが0.1μm以上であることにより、熱収縮がより抑制される傾向にある。また、第2微多孔層の厚みが10μm以下であることにより、成形性、得られる多層微多孔膜の突刺強度がより向上する。
【0018】
さらに、表層及び中間層の総厚み(多層微多孔膜の厚み)は、40μm以下であり、好ましくは5〜20μmであり、好ましくは8〜16μmである。表層及び中間層の総厚みが40μm以下であることにより、多層微多孔膜の電気抵抗が低く維持され、電池の放電特性がより向上する。また、表面層と中間層の剥離強度がより向上する。また、表層及び中間層の総厚みが5μm以上であることにより、多層微多孔膜の機械強度がより向上する傾向にある。
【0019】
多層微多孔膜を構成する各層の厚みが、それぞれ上記範囲であることにより、特に、充填剤の含有量が61質量%以上100質量%以下である第2微多孔層の厚みが10μm以下であることにより(充填剤を多く含む第2微多孔層を薄くすることにより)、多層微多孔膜の耐電圧性、イオン透過性が高度な次元で両立されるという意外な効果が実現される。従来、充填剤の含有量が多い場合、層内で充填材を均一分散させることが困難であった。そして、充填材の分散不良は、微多孔層の厚みを不均一にさせたり、耐熱性を低下させたりする要因となっていると考えられる。これに対し、本実施形態の多層微多孔膜は、上記構成を有することにより、すなわち、充填剤を多く含む微多孔層を薄くすること(充填材を微多孔層の面方向により均一に分散させること)により、耐電圧性、イオン透過性が高度な次元で両立されるという意外な効果が実現されたものである。
【0020】
次いで、以下、本実施形態の多層微多孔膜を構成する各層について説明する。
【0021】
〔第1微多孔層〕
多層微多孔膜の表層である第1微多孔層に含まれる成分は、特に限定されないが、例えば、樹脂及び充填材が挙げられる。
【0022】
(樹脂)
本実施形態において、第1微多孔層に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のα−オレフィンを重合して得られるポリオレフィン樹脂(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等);ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;スチレンの単独重合体又は共重合体であるポリスチレン樹脂;芳香族ビニル化合物の単独重合体又は共重合体などの芳香族系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリフッ化ビニル;ポリフッ化ビニリデン;(メタ)アクリル酸の単独重合体又は共重合体である(メタ)アクリル酸樹脂;グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのような(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体である(メタ)アクリル酸エステル樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;共役ジエンの単独重合体又は共重合体である共役ジエン系樹脂が挙げられる。
【0023】
上記ポリオレフィン樹脂としては、より具体的には、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(密度:0.942g/cm
3以上)、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン(例えば、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン)、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。前記プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0024】
このなかでも、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂が好ましい。このような樹脂を用いることにより、耐電圧性及び多層微多孔膜の機械強度がより向上する傾向にある。なお、上記共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれを使用することもできる。また、これら樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
第1微多孔層に含まれるポリエチレン樹脂の粘度平均分子量の下限は、好ましくは1.0×10
5以上であり、より好ましくは1.5×10
5以上であり、さらに好ましくは2.0×10
5以上である。また、第1微多孔層に含まれるポリエチレン樹脂の粘度平均分子量の上限は、好ましくは4.0×10
5以下であり、より好ましくは3.5×10
5以下であり、さらに好ましくは3.0×10
5以下である。ポリエチレン樹脂の粘度平均分子量が1.0×10
5以上であることにより、溶融成形の際のメルトテンションが増大し、成形性が向上する上に、第1微多孔層の強度がより向上する傾向にある。一方、ポリエチレン樹脂の粘度平均分子量が4.0×10
5以下であることにより、溶融混練の均一性、及び、Tダイによるシートの成形性がより向上する傾向にある。
【0026】
また、第1微多孔層に含まれるポリプロピレン樹脂の粘度平均分子量の下限は、好ましくは2.5×10
5以上であり、より好ましくは3.0×10
5以上であり、さらに好ましくは3.5×10
5以上である。また、第1微多孔層に含まれるポリプロピレン樹脂の粘度平均分子量の上限は、好ましくは5.5×10
5以下であり、より好ましくは5.0×10
5以下であり、さらに好ましくは4.5×10
5以下である。ポリプロピレン樹脂の粘度平均分子量が2.5×10
5以上であることにより、溶融成形の際のメルトテンションが増大し、成形性が向上する上に、第1微多孔層の強度がより向上する傾向にある。一方、ポリプロピレン樹脂の粘度平均分子量が5.5×10
5以下であることにより、溶融混練の均一性、及び、Tダイによるシートの成形性がより向上する傾向にある。
【0027】
さらに、第1微多孔層に含まれるポリオレフィン樹脂全体の粘度平均分子量の下限は、好ましくは1.0×10
5以上であり、より好ましくは2.0×10
5以上である。また、第1微多孔層に含まれるポリオレフィン樹脂全体の粘度平均分子量の上限は、好ましくは2.0×10
6以下であり、より好ましくは1.0×10
6以下である。粘度平均分子量が1.0×10
5以上のポリオレフィン樹脂を用いることにより、溶融成形の際のメルトテンションが増大し、成形性が向上する上に、第1微多孔層の強度がより向上する傾向にある。一方、粘度平均分子量が2.0×10
6以下のポリオレフィン樹脂を用いることにより、溶融混練の均一性、及び、Tダイによるシートの成形性がより向上する傾向にある。
【0028】
また、第1微多孔層に含まれる樹脂としてポリオレフィン樹脂を用いる場合は、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン樹脂の含有量の下限は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。また、ポリエチレン樹脂の含有量の上限は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは100質量%以下である。ポリエチレン含有量が70質量%以上であることにより、製膜時の膜破断を抑制し、生産性の低下を防止することができる傾向にある。
【0029】
第1微多孔層に含まれる樹脂の含有量は、第1微多孔層の総量に対して、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは30〜100質量%であり、さらに好ましくは70〜100質量%であり、よりさらに好ましくは80〜100質量%であり、さらにより好ましくは90〜100質量%であり、特に好ましくは100質量%である。
【0030】
(充填材)
第1微多孔層は充填材を含有してもよい。充填材としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、架橋ポリエチレン、架橋ゴム、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子粒子;ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの融点や加熱変形温度が150℃以上の各種熱可塑性高分子の粒子;メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性高分子の粒子;ガラス繊維やカーボン繊維やセルロース繊維など補強剤を添加することで融点及び/又は加熱変形温度が150℃以上となる各種熱可塑性及び熱硬化性高分子の粒子などが挙げられる。このなかでも、融点、もしくは熱変形温度が150℃以上である充填材がより好ましい。このような充填剤を用いることにより、多層微多孔膜の耐熱性とサイクル特性がより高度な次元で両立する傾向にある。なお、これら充填材は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
第1微多孔層に含まれる充填材の平均粒径の下限は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。また、第1微多孔層に含まれる充填材の平均粒径の上限は、好ましくは1000nm以下である。第1微多孔層に含まれる充填材の平均粒径が上記範囲内であることにより、多層微多孔膜の高温での熱収縮がより抑制され、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0032】
第1微多孔層に含まれる充填材の含有量は、第1微多孔層の総量に対して、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0〜70質量%であり、さらに好ましくは0〜30質量%であり、よりさらに好ましくは0〜20質量%であり、さらにより好ましくは0〜10質量%であり、特に好ましくは0質量%である。充填材の含有量が、80質量%以下であることにより、表面層と中間層の接着性がより向上する傾向にある。また、充填材の含有量が上記範囲内であることにより、電池に用いられた場合に多層微多孔膜としてヒューズし易い傾向にある。
【0033】
〔第2微多孔層〕
多層微多孔膜の中間層である第2微多孔層は、樹脂及び充填材を含み、必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
【0034】
(樹脂)
第2微多孔層に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、第1微多孔層において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0035】
このなかでも、ポリオレフィン樹脂がより好ましく、ポリエチレン樹脂がさらに好ましい。主成分としてポリオレフィン樹脂を用いることにより、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、延伸工程にて破断が生じずに引き延ばすことができる傾向にある。すなわち、成形性がより向上する傾向にある。なお、これら樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。また、「主成分」とは、第2微多孔層に含まれる全樹脂中、所定の樹脂が、好ましくは51〜100質量%であり、より好ましくは75〜100質量%であり、さらに好ましくは90〜100質量%であることをいう。
【0036】
ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量の下限は、好ましくは2.0×10
5以上であり、より好ましくは3.0×10
5以上であり、さらに好ましくは4.0×10
5以上であり、よりさらに好ましくは5.0×10
5以上であり、特に好ましくは6.0×10
5以上である。また、ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量の上限は、好ましくは2.0×10
6以下であり、より好ましくは2.5×10
6以下であり、さらに好ましくは1.0×10
6以下であり、よりさらに好ましくは9.0×10
5以下であり、特に好ましくは8.0×10
5以下である。ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量が2.0×10
5以上であることにより、溶融成形の際のメルトテンションがより向上し、成形性がより向上する上に、電池安全性がより向上する傾向にある。具体的には、電池安全性試験などポリオレフィン樹脂の融点以上に多層微多孔膜を加熱した際、多層微多孔膜の電極及び充填材への溶け込みが少なくなり、収縮率が良化する傾向にある。更に、第2微多孔層と第1微多孔層との接着性もより向上する。一方、ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量が2.0×10
6以下であることにより、樹脂と充填剤をより均一に溶融混練することが可能となり、Tダイによるシート成形性がより向上し、その上、第2微多孔層中において充填材が多層微多孔膜の幅方向に均一に分散できるため、第2微多孔層と第1微多孔層の層間の接着性がより向上する傾向にある。更に、溶融時、超高分子量成分に起因する熱収縮を抑制することができるため、熱収縮率が良化する傾向にある。
【0037】
また、第2微多孔層に含まれる樹脂としてポリオレフィン樹脂を用いる場合は、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン樹脂の含有量の下限は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。また、ポリエチレン樹脂の含有量の上限は、ポリオレフィン樹脂の総量に対して、好ましくは100質量%以下である。ポリエチレン含有量が50質量%以上であることにより、充填材含有量の増加に伴う膜伸度の低下により、製膜時の膜厚みのばらつきを抑制することができ、また、製膜時の膜破断を抑制し、生産性の低下を防止することができる傾向にある。
【0038】
樹脂の含有量は、樹脂及び充填材の総量に対して、好ましくは0質量%超過であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。また、樹脂の含有量は、樹脂及び充填材の総量に対して、好ましくは39質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以下であり、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
【0039】
(充填材)
第2微多孔層に含まれる充填材としては、特に限定されないが、例えば、第1微多孔層において例示したものと同様のものが挙げられる。このなかでも、融点、もしくは熱変形温度が150℃以上であればどのような充填材でもよく、セラミックスがより好ましく、シリカ、アルミナ、チタニアなどの酸化物系セラミックスがさらに好ましい。このような充填剤を用いることにより、多層微多孔膜の耐熱性がより向上する傾向にある。なお、これら充填材は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。また、第2微多孔層で用いる充填剤と、第1微多孔層で用いる充填材とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
第2微多孔層に含まれる充填材の平均粒径の下限は、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは7.5nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。また、第2微多孔層に含まれる充填材の平均粒径の上限は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、よりさらに好ましくは50nm以下であり、特に好ましくは25nm以下である。第2微多孔層に含まれる充填材の平均粒径が上記範囲内であることにより、多層微多孔膜の厚さを薄くすることが可能となり、そのようなより薄い多層微多孔層でも高温における熱収縮をより抑制でき、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0041】
第2微多孔層中の充填剤の含有量の下限は、樹脂及び充填材の総量に対して、61質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは81質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。また、第2微多孔層中の充填剤の含有量の上限は、樹脂及び充填材の総量に対して、100質量%以下であり、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。充填材の含有量が61質量%以上であることにより、高温環境下における多層微多孔膜の熱収縮がより抑制され、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0042】
(その他の成分)
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類が挙げられる。また、酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
〔その他の物性〕
多層微多孔膜の気孔率の下限は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上である。また、多層微多孔膜の気孔率の上限は、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下である。気孔率が40%以上であることにより、電池特性がより向上する傾向にある。一方、気孔率が90%以下であることにより、突刺強度がより向上する傾向にある。
【0044】
多層微多孔膜の透気度の下限は、好ましくは10秒/100cc以上であり、より好ましくは40秒/100cc以上である。また、多層微多孔膜の透気度の上限は、好ましくは1000秒/100cc以下であり、より好ましくは500秒/100cc以下であり、さらに好ましくは300秒/100cc以下である。透気度が10秒/100cc以上であることにより、電池の自己放電がより抑制される傾向にある。一方、透気度が1000秒/100cc以下であることにより、イオン透過性がより向上する傾向にある。
【0045】
多層微多孔膜の突刺強度の下限は、好ましくは3.0N/20μm以上であり、より好ましくは4N/20μm以上である。また、多層微多孔膜の突刺強度の上限は、好ましくは10N/20μm以下であり、より好ましくは7N/20μm以下である。突刺強度が3.0N/20μm以上であることにより、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜がより抑制される傾向にある。一方、突刺強度が10N/20μm以下であることにより、熱収縮がより低下する傾向にある。
【0046】
多層微多孔膜のTD方向膜厚のR値の上限は、好ましくは0.25以下であり、より好ましくは0.22以下である。多層微多孔膜のTD方向膜厚のR値の下限は、好ましくは0以上である。多層微多孔膜のTD方向膜厚のR値が0.25以下であることにより、多層微多孔膜の膜特性のばらつきがより抑制される傾向にある。なお、「R値」とは、後述する方法で測定された、膜厚みのばらつきの程度を数値化したものである。
【0047】
多層微多孔膜の耐熱性の指標である熱収縮率は、MD方向、TD方向共に好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。熱収縮率が50%以下であることにより、電池の安全性がより向上する傾向にある。
【0048】
多層微多孔膜のイオン透過性の指標である電気抵抗の上限は、好ましくは1.0Ω以下であり、より好ましくは0.8Ω以下である。電気抵抗の測定値が1.0Ω以下であることにより、電池の出力がより向上する傾向にある。多層微多孔膜の電気抵抗の下限は、特に限定されず、0Ω以上が好ましい。
【0049】
多層微多孔膜の絶縁性能の指標である耐電圧の下限は、好ましくは1.0kV以上であり、より好ましくは1.2kV以上である。耐電圧の測定値が1.0kV以上であることにより、電池の安全性がより向上する傾向にある。多層微多孔膜の耐電圧の上限は、特に限定されない。
【0050】
多層微多孔膜は、共押出成形によって得られるものであることが好ましい。共押出成形により製造することにより、2層間での接着性、多層微多孔膜のイオン透過性がより向上する傾向にある。
【0051】
〔多層微多孔膜の製造方法〕
本実施形態の多層微多孔膜の製造方法としては、共押出法によって積層シートを形成する方法であれば特に限定されない。例えば、第1微多孔層を形成するための第1樹脂組成物と、第2微多孔層を形成するための第2樹脂組成物と、を共押出しして、表層である第1微多孔層と、中間層である第2微多孔層と、を有する積層シートを形成する共押出工程と、得られた積層シートを、面倍率20〜200倍の条件で、少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程と、該延伸工程前又は後に、第1樹脂組成物及び/又は第2樹脂組成物から可塑剤を抽出する可塑剤抽出工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0052】
なお、共押出工程前においては、樹脂、充填材、及び可塑剤を含む各原料(第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物)を予備混練し、予備混練後の樹脂組成物を押出機で溶融混練する混練工程を有していてもよい。
【0053】
また、多層微多孔膜の製造方法は、延伸前又は延伸後のシートを厚み方向に潰すプレス工程や、第2微多孔層に含まれる樹脂を抽出する樹脂抽出工程を有していてもよい。
【0055】
〔混練工程〕
混練工程で用いる可塑剤としては、樹脂と混合した際に樹脂の融点以上において均一溶融樹脂を形成しうる不揮発性溶媒であることが好ましく、常温において液体であることが好ましい。可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチルやフタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0056】
樹脂組成物に対する可塑剤の配合割合としては、均一な溶融混練が可能な比率であり、シート状の微多孔膜前駆体を成形しうるのに充分な比率であり、かつ生産性を損なわない程度であることが好ましい。具体的には、可塑剤の含有率(可塑剤量比)は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。可塑剤の含有率が80質量%以下であることにより、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、成形性がより向上する傾向にある。一方、可塑剤の含有率が20質量%以上であることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0057】
樹脂と充填材と可塑剤を押出機へ投入する前に予備混練する方法としては、樹脂と充填材と可塑剤を、混練組成値が式(1)の範囲となるようにヘンシェルミキサー等で混練する方法が好ましい。
混練組成値=可塑剤重量/(可塑剤吸油量×充填材重量×可塑剤密度)×100
0.2≦混練組成値≦0.7 (1)
【0058】
混練組成値が0.2以上の場合、充填材が適度に可塑剤を保持し樹脂との嵩密度の差が小さくなるために各成分が均一に分散する。混練組成値が0.7以下の場合、大量の可塑剤中に充填材が入り込むことで発生する充填材の凝集を防ぐことができる。つまり、混練組成値を上記範囲内で予備混練することで、充填材含有量が多い組成でも充填材分散性の良好なシートを得ることができる。
【0059】
樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練する方法としては、複数の押出機を用いて、樹脂と、必要に応じて充填材粒子及び各種添加剤を投入し、樹脂組成物を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入し、さらに組成物を混練することにより、均一溶融樹脂を得る方法が好ましい。
【0060】
〔共押出工程〕
共押出工程における共押出しの方法としては、複数の押出機からの溶融物を一つのダイリップから押し出すダイ内接着が好ましく、多数マニホールド法、フィードブロック法を用いるのが好ましい。ここで、ダイはTダイ、コートハンガーダイ等のフラットダイを用いるのが好ましい。
【0061】
また、共押出工程における冷却固化は、シート状に成形したものを熱伝導体に接触させて樹脂の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却すること等の方法により行うことが好ましい。
【0062】
〔延伸工程〕
延伸工程において、延伸方向は少なくとも一軸延伸である。二軸方向に高倍率延伸した場合、面方向に分子配向するため裂けにくく安定な構造となり、高い突刺強度が得られる傾向にあるため好ましい。延伸方法は同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等のいずれの方法を単独もしくは併用することも構わないが、延伸方法が同時二軸延伸であることが突刺強度の増加や膜厚均一化の観点から特に好ましい。
【0063】
MDとTDの延伸倍率比は0.5以上2以下が好ましい。また、延伸倍率は、面倍率で好ましくは20倍以上200倍未満であり、20倍以上100倍以下がより好ましく、25倍以上50倍以下がさらに好ましい。総面積倍率が20倍以上の場合は、膜に十分な突刺強度を付与できる傾向にあり、200倍未満の場合は、膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にあるので好ましい。なお、「MD」とはセパレータの長さ方向、もしくは製膜時の原料樹脂吐出方向を意味し、「TD」とはセパレータの幅方向を意味する。
【0064】
延伸温度は樹脂の融点−50℃以上であることが好ましく、融点未満が好ましい。より好ましくは樹脂の融点−30℃以上、融点−2℃以下であり、更に好ましくは樹脂の融点−15℃以上、融点−3℃以下である。延伸温度を樹脂の融点−50℃以上とすることは、高突刺強度の観点から好ましい。樹脂の融点未満とすることは、延伸ムラ低減の観点から好ましい。
【0065】
〔可塑剤抽出工程〕
可塑剤抽出工程は、バッチ式、連続式のいずれでもよいが、抽出溶剤に多層シートを浸漬することにより可塑剤を抽出し、充分に乾燥させ、可塑剤を微多孔膜から実質的に除去することが好ましい。多層シートの収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中に多層シートの端部を拘束することが好ましい。また、抽出後の多層シート中の可塑剤残存量は1質量%未満にすることが好ましい。添加剤が含まれている場合、添加剤は、可塑剤の抽出工程で可塑剤と共に抽出されることが好ましく、膜中の残存量としては実質的に0%であることが好ましい。
【0066】
抽出溶剤は、第1微多孔膜及び第2微多孔膜に含まれる、樹脂及び充填材に対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いことが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフロロエーテルやハイドロフロロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノールやイソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
【0067】
〔その他の工程〕
また、前記工程に加えて熱固定や熱緩和といった熱処理工程を加えることは、得られる多層セパレータの収縮がさらに抑制される傾向にあるため好ましく、シートを厚み方向に潰すプレス工程を加えることは、充填材含有層を緻密にし、高温環境下での熱収縮を抑制する観点から好ましい。
【0068】
〔蓄電デバイス用セパレータ〕
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、多層微多孔膜からなるものである。蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池等の各種電池が挙げられる。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、イオン透過性、耐電圧性、耐熱性、各層の剥離強度のバランスに優れる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0070】
(1)粘度平均分子量(Mv)
微多孔膜に溶解抽出除去可能な充填材が含有している場合は、デカヒドロナフタリンに、試料の劣化防止のため、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1w%の濃度となるように溶解させ、得られた溶液(以下DHNと略す)を試料溶媒として用いる。試料をDHNに0.1w%の濃度となるように150℃で溶解させ試料溶液を作成する。作成した試料溶液を10ml採取し、キャノンフェンスケ粘度計(SO100)により135℃での標線間通過秒数(t)を計測する。
【0071】
微多孔膜に充填材が含有している場合は、あらかじめ充填材を溶解抽出除去した後に洗浄乾燥し試料を採取する。溶解困難な充填材を含有する場合は微多孔膜をDHNに溶解させた溶液をろ過し、充填材を除去した後に試料を採取する。また、DHNを150℃に加熱した後、10ml採取し、同様の方法により粘度計の標線間を通過する秒数(t
B)を計測する。得られた通過秒数t及びt
Bを用いて次の換算式により極限粘度[η]を算出する。
[η]=((1.651t/t
B−0.651)
0.5−1)/0.0834
求められた[η]より、次式によりMvを算出する。
[η]=6.77×10
-4Mv
0.67
【0072】
また、溶解困難な充填材を含有する場合は、微多孔膜から得た試料をDHNに溶解させた溶液をろ過した。この際、充填材を除去した後の試料の濃度が0.1wt%となるように調整した。
【0073】
(2)全体膜厚(μm)
多層微多孔膜の多層微多孔膜は、微小測厚器(東洋精機製 タイプKBM)を用いて室温23℃で測定した。
【0074】
(3)表面層膜厚(μm)
表面層(第1微多孔層)膜厚(μm)は、走査型電子顕微鏡等の断面観察方法にて断面を観察することにより測定した。
【0075】
(4)中間層膜厚(μm)
中間層(第2微多孔層)膜厚(μm)は、走査型電子顕微鏡等の断面観察方法にて断面を観察することにより測定した。
【0076】
(5)気孔率(%)
多層微多孔膜の気孔率(%)は、10cm×10cm角の試料を多層微多孔膜から切り取り、その体積(cm
3)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm
3)より、次式を用いて計算した。なお、混合組成物の密度は、用いた樹脂と、充填材の各々の密度と、それらの混合比と、により計算で求められる値を用いた。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
【0077】
(6)透気度(sec/100cc)
多層微多孔膜の透気度(sec/100cc)は、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて測定した。
【0078】
(7)突刺強度(N/20μm)
カトーテック製、商標、KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(N)とした。これに20(μm)/膜厚(μm)を乗じることにより20μm膜厚換算の突刺強度(N/20μm)を算出した。
【0079】
(8)TD膜厚 R値
作製した多層微多孔膜をTD方向1mあたり20分割し、20箇所の膜厚みを微小測厚器(東洋精機製 タイプKBM)を用いて室温23℃で測定して得られた最大値(T
MAX)、最小値(T
MIN)、平均値(T
AVE)を用いて、以下の式よりR値を算出した。
R値=(T
MAX―T
MIN)/T
AVE
【0080】
(9)熱収縮試験
〈MD熱収縮率〉
多層微多孔膜をTD方向に50mm、MD方向に26mmに切り取り、100mm四方のガラス板上に置いた。その後、多層微多孔膜をガラス板に固定するようにTD方向の両端部12mmずつに耐熱テープを貼り、多層微多孔膜の露出部分が26mm四方となるようサンプルを作製した。このサンプルを150℃のオーブン中に10分静置した。このとき、温風が直接サンプルにあたらないよう、サンプルを2枚の紙にはさんだ。サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、MD方向の長さが最も短い部分(mm)を測定し、以下の式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=100―(加熱後のMDの長さ/26)×100
【0081】
〈TD熱収縮率〉
多層微多孔膜をMD方向に50mm、TD方向に26mmに切り取り、100mm四方のガラス板上に置いた。その後、多層微多孔膜をガラス板に固定するようにMD方向の両端部12mmずつに耐熱テープを貼り、多層微多孔膜の露出部分が26mm四方となるようサンプルを作製した。このサンプルを150℃のオーブン中に10分静置した。このとき、温風が直接サンプルにあたらないよう、サンプルを2枚の紙にはさんだ。サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、TD方向の長さが最も短い部分(mm)を測定し、以下の式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=100―(加熱後のTDの長さ/26)×100
【0082】
(10)電気抵抗
多層微多孔膜を、22mm径のサイズに6枚切り出し、電解液(プロピレンカーボネートとジメトキシエタンの混合溶液(50/50容量%)中に過塩素酸リチウム1mol/リットルを溶解)を含浸させた。含浸させた多孔膜のうち1枚を、NCセル(京浜理化工業社製)内にセットし、NCセルを組み立てた。トルクレンチ(締め付けトルク:0.8Nm)を使用し、蓋を閉めた。組み立てたNCセルを、25℃の雰囲気下にさせた低温恒温槽内に入れ、LCRメーター(安藤電機社製)を用いて、周波数100kHz、解放電圧0.01Vの条件下で膜抵抗を測定した。次に、測定したNCセルを分解し、含浸させていた残りの多孔膜5枚をNCセル内に重ねてセットし、再度組立てた後、同様の条件にて、6枚での抵抗を測定した。6枚での抵抗値と、1枚での抵抗値を引算し、多層膜1枚あたりの膜抵抗(Ω)を算出した。
【0083】
(11)耐電圧
直径3cmのアルミニウム製電極で多層微多孔膜を挟み15gの荷重をかけ、これを菊水電子工業製の耐電圧測定機(TOS9201)に繋いで測定を実施した。測定条件は、交流電圧(60Hz)を1.0KV/secの速度でかけていき、短絡した電圧値を微多孔膜の耐電圧測定値とする。この操作を幅方向に10回測定し、平均値を耐電圧とした。
【0084】
(12)表面剥離試験
多層微多孔膜を幅24mm、長さ300mmに切り出し、同じく幅24mm、長さ300mmに切り出したセロハンテープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29)をサンプルの端から100mmだけ貼り合せた。その後、セロハンテープを背面が重なるように折り曲げて端を島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)の上側のチャックで掴み、セパレータのテープが貼られていない一端を下側のチャックで掴んだ。この状態から200mm/minの速度で引張試験を行って剥がされたテープに無機充填材やセパレータの一部が付着していないか確認し、付着していなければ○、わずかに付着していれば△、付着していれば×と評価した。
【0085】
(13)融点
融点をJIS K−7121に準拠した方法により測定した。この測定を少なくとも3
回実施し、その平均値を融点の値とした。
【0086】
(14)可塑剤吸油量
商品名:FRONTEX S410(FRONTEX製)吸油量測定器を用いて測定を行った。無機粒子5gを投入し、混練しながら可塑剤を滴下した。混練時のトルクが上昇し、最大トルクの70%に減少するときの可塑剤添加量(ml)を求め、それと無機粒子重量(g)より、次式を用いて計算した。
可塑剤吸油量(ml/100g)=可塑剤添加量/無機粒子重量×100
【0087】
[実施例1]
Mv2.5×10
5の高密度ポリエチレン(融点137℃)を95質量部と、Mv4.0×10
5のポリプロピレン(融点163℃)を5質量部と、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.1質量部と、を混合して第1微多孔層を構成する第1樹脂組成物を調製した。
【0088】
一次粒径が15nm、可塑剤吸油量が200ml/100gであるSiO
2を44.8質量部(樹脂と無機粒子との総量中の割合として81質量%)と、Mv7.0×10
5の高密度ポリエチレン樹脂(融点135℃)を10.4質量部(樹脂と無機粒子との総量中の割合として19質量%)と、可塑剤として密度が0.857g/cm
3の流動パラフィンを、混練組成値が0.58となるように44.8質量部と、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.1質量部と、をヘンシェルミキサーにて予備混合して、第2微多孔層を構成する第2樹脂組成物を調製した。
【0089】
第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とをフィーダーにより2台の二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。また、第1微多孔層の溶融混練し押し出される全混合物中に占める可塑剤量比が65質量%となり、第2微多孔層の溶融混練し押し出される全混合物中に占める可塑剤量比が60質量%となるように流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードした。押出機における溶融混練条件は、第1微多孔層の原料は設定温度200℃、20rpm、吐出量8kg/hで行い、第2微多孔層の原料は設定温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量14kg/hで行った。
【0090】
続いて、溶融混練物をそれぞれ、200℃に温度設定されたギアポンプ、導管、2種3層の共押出が可能なTダイを経て、表面温度30℃に制御されたロールに押出し、表面温度80℃のロールにて冷却させ、第1樹脂組成物からなる第1微多孔層が表層となり、第2樹脂組成物からなる第2微多孔層が中間層となっているシート状の組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に6倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は123℃であった。次に抽出槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに横テンターに導き設定温度130℃で熱固定を行った。得られた膜のMvは5.0×10
5であった。得られた積層セパレータの特性を表1に示す。
【0091】
[実施例2〜15、比較例1〜8]
表1、表2に記載の条件以外は実施例1と同様にして多層微多孔膜を得た。得られた多層微多孔膜(積層セパレータ)の特性を表1、表2に示す。
【0092】
[比較例9]
Mvが7.0×10
5のポリエチレン樹脂(融点135℃)を50質量部と、Mvが3.0×10
5のポリエチレン樹脂(融点137℃)を50質量部と、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部と、を混合して第2樹脂組成物を調製した。この原料をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。
【0093】
また溶融混練し押し出される全混合物中に占める可塑剤量比が65質量%となるように流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードした。押出機における溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量12kg/hで行った。続いて、溶融混練物を200℃に温度設定されたギアポンプ、導管、ダイを経て、表面温度30℃に制御されたロールに押出し、表面温度80℃のロールにて冷却させ、1層のみからなるシート状の組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に6倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は123℃であった。次に抽出槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに横テンターに導き設定温度130℃で熱固定を行った。
【0094】
その後、得られた微多孔膜の表面に、コロナ放電処理(放電量50W)を実施した。その後、微多孔膜の表面に粒子径700nmのアルミナとポリビニルアルコールとの混合物を塗工した。得られた単層微多孔膜(セパレータ)の特性を表2に示す。
【0095】
[参考例1]
実施例1に記載の積層セパレータに比較例9に記載の無機塗工処理を行い、厚さ2μmの多孔層が形成した総膜厚16μmの積層セパレータを得た。得られた積層セパレータの特性を表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】