特許第6543175号(P6543175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000002
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000003
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000004
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000005
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000006
  • 特許6543175-調節弁の制御装置及び制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543175
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】調節弁の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/18 20060101AFI20190628BHJP
   F01D 19/00 20060101ALI20190628BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   F02C6/18 B
   F01D19/00 P
   F01K23/10 G
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-228868(P2015-228868)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-96165(P2017-96165A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】河津 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】当房 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和幸
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−021407(JP,A)
【文献】 特開2012−167571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00−21/20
F01K 23/00−27/02
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱回収ボイラ内のドラムが生成する蒸気を復水器に放出するバイパス経路における調節弁を制御する調節弁の制御装置であって、
前記ドラム内の圧力値を示す設定値を設定する設定部と、
前記設定値と前記ドラム内の圧力値との差を減少させる制御を前記調節弁に対して行う制御部であって、前記差を減少させる弁の開度を開度指令値として前記調節弁に出力する制御部と、
前記開度指令値が所定値よりも小さい場合に、前記制御部で用いる設定値を前記開度指令値を増加させる値に補正する補正部と、
を備えることを特徴とする調節弁の制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記開度指令値が所定値よりも小さい場合に、前記設定値の値を減少させることを特徴とする請求項1に記載の調節弁の制御装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記開度指令値に対してサンプリング周期の1周期前に得られた第2開度指令値を出力するサンプリング遅延器と、
前記開度指令値および前記第2開度指令値の内のいずれか一方を前記開度指令値に基づき出力する切替器と、
前記開度指令値と切替器から出力される開度指令値とを比較して、その値の小さい方を出力する低値選択器と、
前記低値選択器が出力した開度指令値に基づくゲインと前記設定値と乗算した値を補正後の設定値として出力する乗算器と、を有し、
前記制御部は、前記補正後の設定値と前記ドラム内の圧力値との差を減少させる制御を前記調節弁に対して行うことを特徴とする請求項2に記載の調節弁の制御装置。
【請求項4】
前記ゲインを決定する関数発生器を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の調節弁の制御装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記制御部からの開度指令値が所定値以上の場合に、前記補正後の設定値を初期の設定値に復帰させることを特徴とする請求項3又は4に記載の調節弁の制御装置。
【請求項6】
前記関数発生器から出力される前記ゲインを設定レートにしたがい変化させる変化率制限器を、更に備えることを特徴とする請求項4に記載の調節弁の制御装置。
【請求項7】
前記ドラムが生成する蒸気を用いた定負荷運転中は、前記補正部の出力信号を前記制御部で用いる設定値を変化させるゲインが1である信号に切替る信号切替部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の調節弁の制御装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記開度指令値が所定値よりも大きい場合に、前記制御部で用いる設定値を前記開度指令値が減少する値に補正することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の調節弁の制御装置。
【請求項9】
排熱回収ボイラ内のドラムが生成する蒸気を復水器に放出するバイパス経路における調節弁を制御する調節弁の制御方法であって、
前記ドラム内の圧力値を示す設定値を設定する設定工程と、
前記設定値と前記ドラム内の圧力値との差を減少させる開度指令値を前記調節弁に出力し、前記調節弁の開度を制御する制御工程と、
前記開度指令値が所定値よりも小さい場合に、前記制御工程で用いる設定値を前記開度指令値を増加させる値に補正する補正工程と、
を備えることを特徴とする調節弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、調節弁の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントでは、ガスタービンの排熱を用いて排熱回収ボイラ(HRSG)内のドラムが生成した蒸気は、発電タービンの駆動用などに供給される。この発電プラントの起動運転時またはプラント停止時に、ドラム内の蒸気圧を調整するため、この蒸気を復水器に放出するバイパス経路が設けられている。このバイパス経路における調節弁の開度がPID制御される。すなわち、この調節弁の開度は、圧力センサで得られたドラム内の圧力値であるプロセス値(PV値)と、予め設定された圧力値である設定値(SV値)との差に基づきPIDコントローラによりPID制御される。このPID制御では、プロセス値と設定値の差に応じて調節弁への開度指令値(MV値)を増減させ、プロセス値と設定値との差が0に近づけられる。このように、タービンバイパス弁、および給水ポンプ再循環弁等の調節弁における開度の制御は、一般にPIDコントローラにより行われている。
【0003】
発電プラントに使用される調節弁のうち、ある種の調節弁開度指令値が0%になるとそれ以上の蒸気圧の調整が困難になる。このような調節弁として、ガスタービン、蒸気タービン、および排熱回収ボイラを組み合わせたコンバインドサイクル発電プラントにおいて使用されるタービンバイパス調節弁が知られている。このタービンバイパス調節弁は、プラント起動時、又は停止時に排熱回収ボイラで発生した余剰蒸気の復水器への放出を調整するため、中間開度で制御が行われる。このため、PID制御によってプロセス値が設定値に一致するように開度指令値が演算される。このPID制御においては、設定値を高く設定すると開度指令値は減少され、逆に設定値を低く設定すると開度指令値は増加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−021407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラント起動時における制御時において、プロセス値が設定値より低い状態が継続する場合に、調節弁が閉方向に動作され、調節弁は最終的に全閉又は微開状態にされる場合が生じてしまう。この場合、制御中に調節弁が全開または全閉となることは制御喪失状態であり、安全運転に支障をきたす。また、微開状態が続くことで調節弁前後差圧が大きくなり弁シート部における蒸気流速が上昇、蒸気と弁シート部の摩擦力が増加し、シート部の損傷、寿命の低下に繋がってしまう。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、このような点を考慮してなされたものであり、調節弁を全閉に導くことを回避した調節弁の制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る調整弁の制御装置は、排熱回収ボイラ内のドラムが生成する蒸気を復水器に放出するバイパス経路における調節弁を制御する調節弁の制御装置であって、
前記ドラム内の圧力値を示す設定値を設定する設定部と、
前記設定値と前記ドラム内の圧力値との差を減少させる制御を前記調節弁に対して行う制御部であって、前記差を減少させる弁の開度を開度指令値として前記調節弁に出力する制御部と、
前記開度指令値が所定値よりも小さい場合に、前記制御部で用いる設定値を前記開度指令値を増加させる値に補正する補正部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本実施形態に係る調整弁の制御方法は、排熱回収ボイラ内のドラムが生成する蒸気を復水器に放出するバイパス経路における調節弁を制御する調節弁の制御方法であって、
前記ドラム内の圧力値を示す設定値を設定する設定工程と、
前記設定値と前記ドラム内の圧力値との差を減少させる開度指令値を前記調節弁に出力し、前記調節弁の開度を制御する制御工程と、
前記開度指令値が所定値よりも小さい場合に、前記制御工程で用いる設定値を前記開度指令値を増加させる値に補正する補正工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
調節弁を全閉に導くことを回避した調節弁の制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るコンバインドサイクル発電プラントシステムの構成の一例を示す図。
図2】第1実施形態に係る補正部の構成を示すブロック図。
図3】第2実施形態に係る調整弁の制御装置の構成を示すブロック図。
図4】第3実施形態に係る調整弁の制御装置の構成を示すブロック図。
図5】全体処理の流れを説明するフローチャートを示す図。
図6】第4実施形態に係る補正部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る調整弁の制御装置は、調節弁の開度指令値が所定値未満である場合に、関数発生器の出力するゲインeを1未満にすることにより、設定部に設定された設定値bの値を減少させる補正を行い、調節弁が全閉に導かれることを回避しようとしたものである。より詳しくを、以下に説明する。
【0013】
図1に基づき第1実施形態に係るコンバインドサイクル発電プラントシステム1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るコンバインドサイクル発電プラントシステム1の構成の一例を示す図である。この図1に示すように、本実施形態に係るコンバインドサイクル発電プラントシステム1は、コンバインドサイクル発電プラント100と、調整弁の制御装置200とを、備えて構成されている。このコンバインドサイクル発電プラント100は、燃焼ガスの燃焼エネルギーと、排熱を用いて発生した水蒸気のエネルギーと、を用いて発電する発電プラントである。すなわち、このコンバインドサイクル発電プラント100は、圧縮機110と、ガスタービン120と、排熱回収ボイラ130と、高圧蒸気タービン150と、低圧蒸気タービン160と、復水器170と、を備えて構成されている。
【0014】
圧縮機110は、大気を吸い込んで高圧化した高圧空気を燃焼ガス生成用として燃焼器に供給する。ガスタービン120は、燃焼器から供給された燃焼ガスを用いて駆動する。
【0015】
排熱回収ボイラ130は、ガスタービン120から排気ガスが供給され、蒸気を発生する。すなわち、この排熱回収ボイラ130は、高圧ドラム132と、高圧蒸発器134と、高圧過熱器136と、中圧ドラム138と、中圧蒸発器140と、中圧過熱器142と、低圧ドラム144と、低圧蒸発器146と、低圧過熱器148とを備えて構成されている。排気ガスが流れる順に、高圧ドラム132、高圧蒸発器134、高圧過熱器136、中圧ドラム138、中圧蒸発器140、中圧過熱器142、低圧ドラム144、低圧蒸発器146、および低圧過熱器148が配置されている。
【0016】
高圧ドラム132は、貯留した水を排ガスで昇温させることで、蒸気を発生する。高圧蒸発器134は、両端が高圧ドラム132に接続されており、高圧ドラム132に貯留された水を循環させつつ、排ガスで昇温させる。高圧過熱器136は、高圧ドラム132が発生した高圧蒸気を過熱する。
【0017】
同様に、中圧ドラム138は、貯留した水を排ガスで昇温させることで、蒸気を発生する。中圧蒸発器140は、両端が中圧ドラム138に接続されており、中圧ドラム138に貯留された水を循環させつつ、排ガスで昇温させる。中圧過熱器142は、中圧ドラム138が発生した中圧蒸気を過熱する。
【0018】
同様に、低圧ドラム144は、貯留した水を排ガスで昇温させることで、蒸気を発生する。低圧蒸発器146は、両端が低圧ドラム144に接続されており、低圧ドラム144に貯留された水を循環させつつ、排ガスで昇温させる。低圧過熱器148は、低圧ドラム144が発生した中圧蒸気を過熱する。
【0019】
高圧蒸気タービン150は、高圧過熱器136が加熱した高圧蒸気を用いて発電機を駆動する。低圧蒸気タービン160は、高圧蒸気タービン150と同軸であり、中圧過熱器142で加熱した中圧蒸気と、低圧過熱器148で加熱した低圧蒸気とが供給され発電機を駆動する。すなわち、高圧過熱器136の過熱蒸気は、高圧加減弁B2を経て高圧蒸気タービン150の後流段落に供給される。中圧過熱器142の過熱蒸気は、中圧加減弁B4を経て低圧蒸気タービン160の初流段落に、低圧過熱器148の過熱蒸気は、低圧加減弁B6を経て低圧蒸気タービン160の後流段落に、それぞれ供給される。
【0020】
復水器170は、供給された循環水を用いて、高圧ドラム132から供給された高圧蒸気、中圧ドラム138から供給された中圧蒸気、及び低圧ドラム144から供給された低圧蒸気を水に戻す。この復水器170には、環水ポンプから循環水が供給されている。
【0021】
コンバインドサイクル発電プラント100は、起動運転時、プラント停止時、および系統事故運転時の少なくともいずれかにおいて、排熱回収ボイラ130から発生した蒸気を復水器170に直接流すタービンバイパス系を備えている。このタービンバイパス系は、高圧タービンバイパス調節弁B8を経由して高圧過熱器136からの蒸気を復水器170に流す高圧系と、中圧タービンバイパス調節弁B10を経由して中圧過熱器142からの蒸気を復水器170に流す中圧系と、低圧タービンバイパス調節弁B12を経由して低圧過熱器148からの蒸気を復水器170に流す低圧系とを、有する。なお、本実施形態では、高圧タービンバイパス調節弁B8、中圧タービンバイパス調節弁B10、および低圧タービンバイパス調節弁B12のそれぞれが調節弁に対応する。
【0022】
高圧系において、高圧蒸気タービン150が起動されて高圧加減弁B2の開弁が行われる前は、高圧タービンバイパス調節弁B8は高圧ドラム132に発生する高圧蒸気を復水器170に導くように開弁される。同様に中圧系において、低圧蒸気タービン160が起動されて中圧加減弁B4の開弁が行われる前は、中圧タービンバイパス調節弁B10は中圧ドラム138に発生する中圧蒸気を復水器170に導くように開弁され、低圧蒸気タービン160が起動されて低圧加減弁B6の開弁が行われる前は、低圧タービンバイパス調節弁B12は低圧ドラム144に発生する低圧蒸気を復水器170に導くように開弁される。
【0023】
調整弁の制御装置200は、高圧センサ202と、中圧センサ204と、低圧センサ206と、設定部208と、補正部210と、制御部212と、を備えて構成されている。この調整弁の制御装置200は、分散制御装置(DCS:Distributed Control System)と呼ばれる場合もある。
【0024】
高圧センサ202は、高圧ドラム132内の圧力値を検出し、中圧センサ204は、中圧ドラム138内の圧力値を検出し、低圧センサ206は、低圧ドラム144内圧力値を検出する。設定部208は、ドラム内の圧力値を示す設定値を設定する。すなわち、この設定部208は、高圧ドラム132内の圧力値、中圧ドラム138内の圧力値、および低圧ドラム144内の圧力値、それぞれに対応する設定値(SV値)を設定する。ここでは、高圧タービンバイパス調節弁B8の制御を例に説明するが、中圧タービンバイパス調節弁B10、および低圧タービンバイパス調節弁B12それぞれに対しても高圧タービンバイパス調節弁B8に対する制御と同等の制御を行う。また、圧力値がプロセス値(PV値)に対応する。補正部210は、開度指令値(MV値)が所定値よりも小さい場合に、開度指令値が増加する値に設定値を補正する。
【0025】
制御部212は、設定部208で設定された設定値と高圧ドラム132内の圧力値との差を減少させる制御を高圧タービンバイパス調節弁B8に対して行う。すなわち、この制御部212は、減算器214と、PIDコントローラ216と、を備えて構成されている。減算器214は、高圧センサ202で検出された圧力値と補正部210で補正された設定値との差を演算する。
【0026】
PIDコントローラ216は、減算器214で得られた差の値に基づき、設定値と高圧ドラム132内の圧力値との差を減少させる制御を高圧タービンバイパス調節弁B8に対して行う。つまり、このPIDコントローラ216は、補正部210が補正した設定値と対応する高圧ドラム132内の圧力値との差を減少させる弁の開度を開度指令値として高圧タービンバイパス調節弁B8に出力する。例えば、設定値よりも対応する高圧ドラム132内の圧力値が小さい場合には、高圧タービンバイパス調節弁B8の開度指令値を減少させることで圧力値を増加させる。一方で、設定値よりも高圧ドラム132内の圧力値が大きい場合には、高圧タービンバイパス調節弁B8の開度指令値を増加させることで圧力値を減少させるのである。
【0027】
次に図2に基づき補正部210の構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る補正部210の構成を示すブロック図である。この図2に示すように補正部210は、関数発生器218と、変化率制限器220と、乗算器222と、を備えて構成されている。
【0028】
関数発生器218は、PIDコントローラ216の出力値を入力としてゲインeを出力する。このグラフにおいて横軸(X軸)は、開度指令値を示し、縦軸(Y軸)は、ゲインeを示している。ここでは、開度指令値が0%である場合に、高圧タービンバイパス調節弁B8が全閉状態であることを示している。一方で開度指令値が100%である場合に、高圧タービンバイパス調節弁B8が全開状態であることを示している。開度指令値からゲインeへの変換は、例えば(X軸、Y軸)が(0%、0.5)、(10%、0.5)、(20%、1.0)、(50%、1.0)、および(100%、1.0)の4点の折れ点を有する関数により行なわれる。
【0029】
この関数に従い、関数発生器218は、PIDコントローラ216の出力値が20%より小さいときに、ゲインeとして1.0未満の値を出力する。変化率制限器220は、単位時間あたりにおける出力値の変化を設定レート以内に制限する。この設定レートは、パラメータSに基づき設定され、Sが大きくなるにしたがい単位時間あたりの変化率は減少する。乗算器222は、設定値bとゲインeとの乗算を行い、得られた乗算値を設定値の補正値として出力する。
【0030】
以上がコンバインドサイクル発電プラントシステム1の構成の説明であるが、次に、制御装置200の処理例について説明する。
【0031】
まず、設定部208に設定値として例えば6.0Mpaが設定される。次に、PIDコントローラ216から出力された開度指令値aは関数発生器218に入力される。このとき開度指令値が所定の値(例えば20%)より低い場合には、その開度指令値に応じて補正後の設定値bを低下させるゲインeが出力される。続いて、ゲインeはパラメータSで定まる単位時間あたりの変化率にしたがい変化させられる。補正後の設定値が低下することで、減算器214で得られる差が減少しPIDコントローラ216の出力値が増加する。
【0032】
一方で開度指令値が所定の値(例えば20%)より高い場合には、ゲインeとして1が出力される。乗算器222は、設定値を同じ値に維持した状態で減算値に出力する。この場合、設定部208で設定された初期の設定値であるSVSET6.0MPaと、高圧センサ202で得られた圧力値との差に基づきPIDコントローラ216が開度指令値を出力する。
【0033】
例えば、開度指令値aが20%から10%へ低下した時、関数発生器218から出力されるゲインは1から0.5へと切り替わり、乗算器222はSVSET6.0MPaとゲインeを乗算して設定値3.0MPを補正後の設定値bとして算出する。続いて、補正後の設定値bは6.0MPaから3.0MPaへと切り替わる。このため、高圧センサ202で得られた圧力値と補正後の設定値bとの差は減少し、調節弁は開方向へ動作する。このように、開度指令値aが20%よりも小さくなる場合には、設定値の値を1より小さいゲインを乗算して補正する。これにより、調節弁が全閉、微開状態となることなく中間開度にて制御を行うことができる。
【0034】
以上のように本実施形態における調整弁の制御装置200によれば、調節弁B8の開度指令値aが所定値未満である場合に、関数発生器218の出力するゲインeを1未満にすることにした。これにより、設定部208に設定された設定値bの値を減少させる補正が行われ、調節弁B8を全閉に導くことをを回避することができる。
【0035】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る調整弁の制御装置は、調節弁の開度指令値aが所定値未満である場合に、低値選択器から所定期間の間で最も低い開度指令値であるMIN_MV値を出力させることより、設定部に設定された設定値bの値を減少させる補正を行い、バイパス調節弁が全閉に導かれるのを回避しようとしたものである。
【0036】
図3に基づき第2実施形態に係る制御装置200の構成を説明する。図3は、第2実施形態に係る調整弁の制御装置200の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る調整弁の制御装置200は、所定のサンプリング周期で演算されるディジタル演算方式を採用したものである。ここでは、制御装置200は、200m秒のサンプリング周期で演算するのである。この図3に示すように第2実施形態に係る補正部210は、比較器224と、サンプリング遅延器226と、切替器228と、低値選択器230と、を更に備えて構成されることで第1実施形態に係る補正部210と相違する。
【0037】
比較器224は、PIDコントローラ216から開度指令値aが入力され、開度指令値aが60%以下の時f=1を出力し、60%以上の時はf=0を出力する。
【0038】
サンプリング遅延器226は、関数発生器218への出力値を現在のMIN_MV値dとして入力し、1周期前、つまり200m秒前のMIN_MV値d’を出力する。
【0039】
切替器228は、比較器224からの入力に従い2つの入力端子S,Rの内の一方に端子を切り替える。すなわち、この切替器228は、比較器224の出力値がf=1の場合に入力端子Rに切り替え、比較器224の出力値がf=0の場合に入力端子Sに切り替える。そして、入力端子Sには、PIDコントローラ216から出力された開度指令値aが入力される。入力端子Rには、サンプリング遅延器226からの1周期前、つまり200m秒前のMIN_MV値d’が入力される。切替器228の出力値gは、出力端子Tを介して低値選択器230に出力される。
【0040】
低値選択器230は、現在の開度指令値aと切替器228の出力値gとの内の小さい方の値をMIN_MV値dとして関数発生器218へ出力する。結果として、低値選択器230が起動されてからの期間内で一番小さな値を示した開度指令値aがMIN_MV値dとして出力される。
【0041】
次に、処理動作の一例として、各サンプリング周期の時間をtとしてt=0、t=200m秒、t=400m秒という200m秒きざみの処理動作について説明する。ここでは、6.0MPaに設定される設定値bが補正後に4.5MPaに減少したことにより、次のサンプリング周期で開度指令値aが増加する場合について説明する。
【0042】
まず、t=0の時、設定部208には設定値bとして6.0MPaが設定される。この時、PIDコントローラ216から開度指令値aとして61%が出力される。このt=0の時点では切替器228が入力端子S側の開度指令値a=61%を出力し、低値選択器230はPIDコントローラ216からの開度指令値a=61%をMIN_MV値d=61%として出力する。
【0043】
次に、関数発生器218において、開度指令値a=61%に対応するゲインe1.00を出力する。続いて、乗算器222は、設定値である6.0MPaとゲインeを乗算して補正後の設定値6.0MPaを算出する。
【0044】
次のサンプリング周期であるt=200m秒の時、排熱回収ボイラ130の収熱が悪く圧力値が上昇しないとする。このため、例えばPIDコントローラ216から開度指令値15%が出力される。比較器224は、PIDコントローラ216から開度指令値15%が入力され、開度指令値aが60%以下の時であるのでf=1を出力する。
【0045】
このt=200m秒の時点で、f=1であるので、切替器228が入力端子R側に切り替わる。サンプリング遅延器226から出力されるd’は61%であるので、低値選択器230はPIDコントローラ216からの開度指令値a=15%をMIN_MV値d=15%として出力する。続いて、関数発生器218において、開度指令値a=15%に対応するゲインe0.75を出力する。乗算器222は設定値bとゲインeを乗算し、設定値bとして4.5MPaを算出する。これによりPIDコントローラ216は補正された設定値bと圧力値cとの差に基づき、開方向に動作する開度指令値aを、例えば30%として算出する。この処理動作によれば、開度指令値aが60%以上のときは、設定値bは初期の設定値である6.0Mpaを維持する。一方、開度指令値aが60%未満に減少したときは、補正部210の作用により設定値bを減少させることで、開度指令値aを増加させる。これにより、高圧タービンバイパス調節弁B8の全閉という事態が回避される。すなわち、この処理動作によれば、圧力値が設定値を上回り、調節弁は開方向へ動作する。これにより、調節弁が全閉、微開状態となることなく中間開度にて制御を行うことができる。
【0046】
次に、処理動作の一例として、t=200m秒に引き続き発生する処理動作について説明する。ここでは、開度指令値aが60%以上になり、切替器228が入力端子S側に切り替わる場合について説明する。
【0047】
t=200m秒に引き続き、t=400m秒の時、およびt=600m秒の時の動作例を説明する。t=200m秒時において設定値b4.5MPaが算出されたことで、開度指令値aは30%となる。
【0048】
t=400m秒の時、t=200m秒で設定値bが4.5MPaに低下していたので、高圧センサ202で得られた圧力値Cとの差が減少し、開度指令値aは30%に上昇する。低値選択器230には、サンプリング遅延器226から出力されるt=200m秒のときのMIN_MV値d’=15%とt=400m秒のときの開度指令値a=30%が入力される。この場合、低値選択器230では、低値である15%が選択される。このため、t=200m秒と同様に、MIN_MV値d=15%の値が保持され、設定値bも4.5MPaが保持される。これよりPIDコントローラ216は、補正された設定値b=4.5MPaに基づき開度指令値a=30%を算出する。
【0049】
t=600m秒の時、高圧センサ202で得られた圧力値C、すなわち圧力値Cが上昇し高圧タービンバイパス調節弁B8の開度指令値a、すなわち開度指令値aが61%になったとする。比較器224に入力される開度指令値aが60%以上になったため、比較器224からf=0が出力される。切替器228は、比較器224からの出力f=0に従い、R−TからS−Tの端子に切替える。その結果、切替器228からは出力gとして開度指令値a=61%が出力される。低値選択器230には、切替器228からの出力値(61%)と、PIDコントローラ216からの開度指令値a(61%)とが入力される。この2つの値は同じ値であるため、低値選択器230からは、MIN_MV値d=61%が出力される。
【0050】
切替器228を、比較器224からの出力f=0に従い、S−Tの端子に切替える。この場合、サンプリング遅延器226側の回路は切断されるため、サンプリング遅延器226には、低値選択器230から出力されるMIN_MV値dが入力されないこととなる。これにより、PIDコントローラ216の開度指令値が、比較器224の出力をf=0とする値以上に上昇した場合に、設定値を初期の設定値に復帰させることが可能となる。この処理例によれば、制御過渡状態(設定値切替)においても安定した制御を継続して行うことが可能となる。
【0051】
以上のように本実施形態における調整弁の制御装置200によれば、調節弁の開度指令値aが所定値(60%)未満である場合に、低値選択器230から起動期間の間で最も低い開度指令値であるMIN_MV値を出力させることにした。これにより、設定部208に設定された設定値bの値を減少させる補正が行われ、バイパス調節弁の全閉を回避することができる。また、調節弁の開度指令値aが所定値(60%)以上である場合に、設定部208に設定された設定値設定値bの値に基づきPIDコントローラ216に調節弁を制御させることにした。これにより、高圧ドラム132内の蒸気圧を設定部208に設定された設定値bの値に制御することができる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る調整弁の制御装置は、HP/IPローディング許可条件、およびSTアンローディング開始条件に基づき補正部を有効或いは無効にすることより、より安定した制御を行おうとしたものである。
【0053】
図4に基づき第3実施形態に係る調整弁の制御装置200の構成を説明する。図4は、第3実施形態に係る調整弁の制御装置200の構成を示すブロック図である。この図4に示すように第3実施形態に係る補正部210は、HP/IPローディング許可条件入力部232と、STアンローディング開始条件入力部234と、信号発生器236と、NOT回路238と、AND条件回路240と、信号切替器242と、を更に備えて構成されることで第2実施形態に係る補正部210と相違する。
【0054】
上述のように制御装置200は、設定値を下げることにより調節弁を開動作させる。この場合、圧力値が急変し、安定制御に支障をきたす恐れがある。このため、補正部210を有効とする運転パターンと、無効にする運転パターンとを分けることでより安定した制御を行おうとしたものである。
【0055】
HP/IPローディング許可条件入力部232は、HP/IPローディング許可条件未成立時に0を出力し、HP/IPローディング許可条件成立時に1を出力する。ここでは、HP/IPローディング許可条件未成立は、高圧加減弁B2、および中圧加減弁B4による圧力制御の開始条件が未成立を意味する。
【0056】
STアンローディング開始条件入力部234は、STアンローディング開始条件未成立時に0を出力し、STアンローディング開始条件成立時に1を出力する。信号発生器236は、信号Aとして1を出力する。
【0057】
NOT回路238は、STアンローディング開始条件未成立時に0が入力され、1を出力する。一方で、NOT回路238は、STアンローディング開始条件成立時に1が入力され、0を出力する。
【0058】
AND条件回路240は、HP/IPローディング許可条件未成立時に1が入力され、且つNOT回路238の出力値が1である場合に1を出力する。一方、HP/IPローディング許可条件成立時に0が入力され、NOT回路238の出力値にかかわらず0を出力する。
【0059】
信号切替器242は、AND条件回路240から1が入力された場合に、入力端子1側に入力される信号を出力し、0が入力された場合に、入力端子2側に入力される信号を出力する。すなわち、この信号切替器242は、任意の条件が成立した場合に入力端子1側に入力される信号A、つまり1を出力する。一方で、任意の条件が成立しない場合に入力端子2側に入力される信号、つまり変化率制限器220から入力される信号を出力する。
【0060】
次に、信号切替器242を用いた信号切替の処理動作を説明する。まず、HP/IPローディング許可条件未成立の場合、HP/IPローディング許可条件入力部232は、0をAND条件回路240に出力する。続いて、AND条件回路240は、入力信号の一方が0であるので0を出力する。これにより、信号切替器242は、入力端子2側の信号に切り替える。すなわち、関数発生器218から入力されたゲインeを乗算器222へ出力し、再度補正部210が有効となる。
【0061】
次に、HP/IPローディング許可条件成立、かつSTアンローディング開始条件未成立の場合、HP/IPローディング許可条件入力部232は、1をAND条件回路240に出力する。STアンローディング開始条件入力部234は、0をNOT回路238に出力する。続いてNOT回路238は、1をAND条件回路240に出力する。これにより、信号切替器242は、入力端子1側の信号に切り替える。すなわち、信号発生器236が出力するゲイン1が乗算器222へ入力され、補正部210が無効となる。このように、コンバインドサイクル発電プラントシステム1が定格負荷で運転中は、補正部210が無効となる。
【0062】
次に、HP/IPローディング許可条件成立、かつSTアンローディング開始条件成立の場合、HP/IPローディング許可条件入力部232は、1をAND条件回路240に出力する。また、STアンローディング開始条件入力部234は、1をNOT回路238に出力する。続いてNOT回路238は、0をAND条件回路240に出力する。さらに続いてAND条件回路240は、入力信号の一方が0であるので0を出力する。これにより、信号切替器242は、入力端子2側の信号に切り替える。すなわち、関数発生器218から入力されたゲインeの値を乗算器222へ出力し、再度補正部210が有効となる。このように、補正回路の有効、無効の切替えが可能となり、発電プラント201の多様な運転パターンを考慮した制御が可能となる。
【0063】
次に、図5に基づき本実施形態の全体処理の流れを説明する。図5は、全体処理の流れを説明するフローチャートを示す図である。この図5に示すように、まずガスタービン120が起動される(ステップS10)。
【0064】
次に、設定部208の設定値と高圧センサ202で得られた圧力値であるプロセス値との差に基づき調節弁への開度指令値が調節弁へ出力され、開度が制御される(ステップS12)。続いて、PIDコントローラ216が出力する開度指令値が20%未満か否で関数発生器218のゲインeが変更される(ステップS14)。20%未満でない場合(ステップS14:NO)、ステップS12からの処理を繰り返す。一方で、20%未満である場合(ステップS14:YES)、補正部210を有効にし、補正された設定値に基づく開度指令値が調節弁へ出力され、開度を増加させる制御を行う(ステップS16)。この場合、ゲインeは1未満であり、設定部208の設定値の値がより低い値に補正され、PIDコントローラ216が出力する開度指令値は増加し、調節弁の開度はより大きくなる。
【0065】
次に、HP/IPローディング許可条件が成立しているか、否かに従いAND条件回路240の出力信号が変更される(ステップS18)。HP/IPローディング許可条件が成立していない場合(ステップS18:NO)、AND条件回路240の出力信号は0であり、補正部210の出力は有効に維持され(ステップS20)、ステップS12からの処理を繰り返す。一方、HP/IPローディング許可条件が成立している場合(ステップS18:YES)、HP/IPローディング許可条件入力部232は、1をAND条件回路240に出力する。
【0066】
次に、STアンローディング開始条件が成立しているか、否かに従いAND条件回路240の出力信号が変更される(ステップS22)。STアンローディング開始条件が成立していない場合(ステップS22:NO)、STアンローディング開始条件入力部234は、0をNOT回路238に出力する。続いてNOT回路238は、1をAND条件回路240に出力する。AND条件回路240の出力信号は1であり、補正部210の出力は無効に維持され(ステップS24)、ステップS22からの処理を繰り返す。一方、STアンローディング開始条件が成立している場合(ステップS22:YES)、STアンローディング開始条件入力部234は、1をNOT回路238に出力する。続いてNOT回路238は、0をAND条件回路240に出力する。AND条件回路240の出力信号は0であり、補正部210は再度有効になる(ステップS26)。
【0067】
補正部210はガスタービン120の状態信号に基づき処理を終了するか判定する(ステップS28)。処理を継続する場合(ステップS28:NO)、ステップS12からの処理を繰り返す。一方、処理を終了する場合(ステップS28:YES)、全体処理を終了する。
【0068】
このように、HP/IPローディング許可条件成立、かつSTアンローディング開始条件未成立の場合に、HP/IPローディング許可条件入力部232は、1をAND条件回路240に出力する。続いて、STアンローディング開始条件入力部234は、0をNOT回路238に出力する。これにより、補正部210が無効となる。すなわち、コンバインドサイクル発電プラントシステム11が定格負荷で運転中は、補正部210が無効となる。
【0069】
以上のように本実施形態における調整弁の制御装置200によれば、HP/IPローディング許可条件、およびSTアンローディング開始条件に基づき補正部210を有効或いは無効にすることにした。これにより、補正部210を有効とする運転パターンと、無効にする運転パターンとを分けることでより安定した制御を行おうことができる。
【0070】
(第4実施形態)
第1実施形態に係る関数発生器は、開度指令値aが所定値を超えるとゲインeの値を一定値にしていたのに対し、第4実施形態に係る関数発生器2180は、開度指令値aが所定値を超えるとゲインeの値を増加させることで相違する。以下に第1実施形態に係る調節弁の制御装置と相違する部分を説明する。
【0071】
図6は、第4実施形態に係る補正部210の構成を示すブロック図である。この図6に示すように関数発生器2180の関数が関数発生器218と相違する。すなわち、開度指令値からゲインeの値への変換は、例えば(X軸、Y軸)が(0%、0.5)、(10%、0.5)、(20%、1.0)、(50%、1.0)、(80%、1.0)、(90%、1.5)、および(100%、1.5)の8点の折れ点を有する関数により行なわれる。
【0072】
この関数に従い、関数発生器2180は、PIDコントローラ216の出力値が20%より小さいときに、ゲインeとして1.0未満の値を出力する。一方で、PIDコントローラ216の出力値が80%より大きいときに、ゲインeとして1.0より大きな値を出力する。
【0073】
次に、この関数発生器2180を用いた処理動作を説明する。まず、設定部208に設定値として例えば6.0Mpaが設定される。次に、PIDコントローラ216から出力された開度指令値aは関数発生器218に入力される。このとき開度指令値が所定の値(20%)より低い場合には、その開度指令値に応じて補正後の設定値bを低下させるゲインeが出力される。続いて、ゲインeはパラメータSで定まる単位時間あたりの変化率にしたがい変化させられる。補正後の設定値が低下することで、減算器214で得られる差が減少しPIDコントローラ216の出力値が増加する。
【0074】
一方で開度指令値が20%以上、且つ80%以下の場合には、ゲインeとして1が出力される。乗算器222は、設定値を同じ値に維持した状態で減算値に出力する。この場合、設定部208で設定された初期の設定値と、高圧センサ202で得られた圧力値との差に基づきPIDコントローラ216が開度指令値を出力する。
【0075】
開度指令値が80%より大きい場合、その開度指令値に応じて補正後の設定値bを増加させるゲインeが出力される。続いて、ゲインeはパラメータSで定まる単位時間あたりの変化率にしたがい変化させられる。補正後の設定値が増加することで、減算器214で得られる差が減少しPIDコントローラ216の出力値が減少する。
【0076】
例えば、設定値(SVSET)がフロア圧力である6.0MPa、変化率制限器220の設定レートが1/sとする。この場合、MV値aが80%から90%へ上昇した時、関数発生器2180から出力されるゲインeは1から1.5へと変わる。続いて、乗算器222はSVSET6.0MPaとゲインeを乗算して設定値7.5MPaを算出する。よって、設定値bは6.0MPaから7.5MPaへと切り替わる。これにより、補正後の設定値bが1.5MPa増加し、PIDコントローラ216の出力値が減少する。
【0077】
本実施例によれば、全閉状態回避に加え、例えば設定値が圧力値を下回り、調節弁を閉方向に動作することが可能になる、よって調節弁が全開となることなく中間開度にて制御を行うことが可能である。なお、第2又は第3実施形態の関数発生器218も本実施形態の関数発生器2180に置換可能である。
【0078】
以上のように本実施形態における調整弁の制御装置200によれば、開度指令値aが所定値より大きな値である場合に、関数発生器2180の出力するゲインeを1より大きくすることにした。これにより、設定部208に設定された設定値bの値を増加させる補正が行われ、バイパス調節弁の全開を回避することができる。
【0079】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0080】
1:コンバインドサイクル発電プラントシステム、120:ガスタービン、130:排熱回収ボイラ、150:高圧蒸気タービン、160:低圧蒸気タービン、170:復水器、B8:高圧タービンバイパス調節弁、B10:中圧タービンバイパス調節弁、B12:低圧タービンバイパス調節弁、200:調整弁の制御装置、202:高圧センサ、204:中圧センサ、206:低圧センサ、210:補正部、212:制御部、218:関数発生器、220:変化率制限器
図1
図2
図3
図4
図5
図6