【文献】
MATSUURA, T. et al.,Studies on Methylglyoxal. II. Changes of Methylglyoxal Level Accompanying the Changes of Glyoxalase I and II Activities in Mice Bearing L1210 Leukemia and Srcoma 180,CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN,The pharmaceutical society of Japan,1986年,Vol.34/No.7,P2926-2930
【文献】
BISWAS, U. K. et al.,Elevation of serum methylglyoxal may be used as a screening marker in oral premalignant lesions,BIOMEDICAL RESEARCH,2011年,Vol.22/No.3,P273-278
【文献】
ANTOGNELLI, C. et al.,Overexpression of Glyoxalase System Enzymes in Human Kidney Tumor,CANCER JOURNAL,2006年 6月,Vol.12/No.3,P222-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒト又は動物のいずれかである患者から取得した生体試料中におけるMG産生レベルを測定することによって、ヒトであるか又は動物であるかに拘りなく、癌患者の疾患をステージング及び予後評価するためのインビトロ方法。
認知可能な疾患について既に治療されており、残りの亜臨床的な疾患を治療するためにアジュバント抗癌治療を必要とする癌患者に施された予防的抗癌治療の治療効果を、請求項17に記載の方法を用いてモニタリングするためのインビトロ方法。
癌患者における[インスリン/グルコース]比(I/G指数)の時間的変化と健常者におけるI/G指数の時間的変化とを比較して前記MG対照値を決定することにより、血中MGが0.2μMと推定され、これを超えるとβ膵臓細胞によるインスリン分泌レベルに欠陥があり、癌患者が悪液質又は重篤な前悪液質になっている「悪液質関連対照値」と称されるMG産生レベルの臨界点の特徴決定を可能にするインビトロ方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
生体試料:本明細書において用いるように、用語「生体試料」とは、診断モニタリングアッセイにおいて用いるために、患者又は健常な個体から取得した多様なタイプの試料をいう。生体試料は、血液、血清、血漿、尿又はその他の液体試料(例えば唾液、腹水若しくは胸水、脳脊髄液、胃液又は結腸直腸の液、リンパ液、滑液、間質液、羊水、生理的な分泌液、涙液、粘液、汗、乳、精液、膣分泌液並びに潰瘍及びその他の表面の発疹からの液)のような細胞外流体を含む。また、生体試料は、腫瘍又は臓器のような固形組織及び例えば子宮頸部、骨髄、リンパ節等から得られる細胞塗抹標本である。用語「生体試料」は、生体中において細胞外区画を構成する細胞外マトリクス及び細胞外流体も含む。生体試料は、臨床検体だけでなく、細胞培養物及び組織培養物、並びにそれらに由来する細胞及びそれらの子孫をも含む。
【0011】
メチルグリオキサール:本発明において、「メチルグリオキサール」は、癌細胞が、正常細胞と比べて著しく多量のメチルグリオキサール(MG)を産生及び放出するため、MGが癌細胞から放出された後、腫瘍において、及び生体中の細胞外流体、特に末梢血中において、MGを測定及び定量できるという発見に関連付けられる。
【0012】
MGは、生体中に自然発生的に存在する遊離MGの割合をインビトロで測定することによって;又はChaplenの技術(Chaplenら, Anal Biochem 1996; Chaplenら, PNAS 1998)と類似又は同一の技術を用いて試料を処理した後、可逆的にリガンドに結合したMGから回収できるMGに加えて、試料中に自然発生的に存在する遊離MGに対応する遊離MG全量を測定することによって、試料中において確認される。このような方法は、当初、細胞内の可逆的にリガンドに結合したMGを測定するために開発された。
【0013】
結果として、本発明の方法によって測定されるMGレベルは、腫瘍において、又は個体の体液中、より具体的には末梢血(バイオマーカーの臨床的使用が非常に容易になるため)中において測定される遊離MG分子のレベルに対応する。しかしながら、上記のように、本発明の方法は、腫瘍において、又は生体中の細胞外区画において自然発生的に存在する遊離MGの測定に排他的に依存するのではなく、可逆的にリガンドに結合したMGのインビトロ処理後に回収された遊離MGの測定にも依存する。しかしながら、更なる定義をすることなく用語「MG」、「MG産生」又は「MG産生レベル」を本明細書で用いるとき、MGレベルは、考慮される試料中において自然発生的に存在する遊離分子に対応し、試料から回収できる遊離MGの全量に対応するものではない。しかし、後者の測定も本発明に包含される。
【0014】
用語「生体試料」は、入手後に任意の方法で操作された試料を含む。生体試料は、例えば血液から血漿を調製すること、試料から細胞を除去するか若しくは細胞集団を富化すること、又は粘性の液体を希釈すること等によって、MG分析前に「処理」できる。処理方法としては、例えば、MG分析前の超音波処理、試薬の添加、細胞の固定又は固形組織の固定による濾過、蒸留、濃縮、妨害する化合物の不活性化、細胞溶解が含まれ得る。いわゆるMG分析前に処理した試料の例は、細胞内及び/又は細胞外の可逆的にリガンドに結合したMGを回収するための技術を用いる(Chaplenら, Anal Biochem 1996; Chaplenら, PNAS 1998)。
【0015】
被検者、個体、患者:本明細書で用いる用語「被検者」又は「個体」は、健常であるか疾患に罹患しているかに拘らず、任意の年齢又は性別のヒト(又は動物)をいう。一方、用語「患者」は、癌又は糖尿病のような疾患に罹患する被検者又は個体をいう。
【0016】
用語「健常な被検者」及び「健常な個体」とは、通常の医療検査を用いて検出可能な疾患がないことが確認された症状のない被検者又は個体をいう。より正確には、これらの用語は、癌、糖尿病、慢性尿毒症、動脈性高血圧及びアルツハイマー病がないことが確認された人をいう。
【0017】
癌又は白血病:これらの用語は、当該腫瘍の細胞が、主に生体中における自律的な成長及び細胞増殖制御の欠陥を含む特徴がいくつか認識及び確認されることによって特徴付けられる異常な悪性の表現型を示す腫瘍をいう。これらの特徴は、近年より正確に見直し及び分析されている(Hanahan及びWeinberg, Cell 2011)。対照的に、用語「腫瘍」は、悪性又は非悪性の表現型を示し得る細胞をいう。用語「良性腫瘍」は、細胞が悪性の表現型を有しないためにその増殖能力が制限されたままの腫瘍を特徴付けるために用いる。
【0018】
本発明の方法によって同定される癌のタイプは特に限定されない。これら癌のタイプには、上皮性又は非上皮性の両方のタイプを含む固形又は非固形の癌を含む。
上皮由来の癌は、腺癌及び扁平上皮癌のような全組織のタイプ;及び全ての部位、例えば頭及び首の癌(すなわち口腔、舌、中咽頭、咽頭、喉頭等)、気管支及び肺、胸部、胃、結腸直腸、膵臓、肝臓(及びその他の全ての消化器系)、子宮頸部及び子宮内膜、卵巣、尿生殖器(前立腺、膀胱、腎臓)等を含む。非上皮性の癌は、特に白血病、リンパ腫、黒色腫又は肉腫のいずれかのタイプからなる。
また、例えば精巣癌、未分化胚細胞腫、膠芽腫、星状細胞腫、中皮腫、ユーイング肉腫、小児癌及びHIVに関連付けられる腫瘍等のその他の癌も本発明によって特定できる。
【0019】
明細書において、癌の「早期検出」とは、症状のない被検者における、(はっきりとは診断できない)亜臨床的で既に代謝的に活性な確立した微視的癌の検出及び同定を意味するものと理解される。
癌の「スクリーニング」とは、症状のない個体の集団における代謝的に活性な癌又は前癌性の病変の体系的検出を意味するものと理解される。
【0020】
癌の「診断」とは、症状のある患者における既に巨視的な進行性の癌の検出を意味するものと理解される。よって、本発明の検出/診断方法は、組織生検で確認され得るが、必ずしも、真に代謝的に活性な微視的癌に進行するわけではない、いわゆる前癌性の病変を検出することに寄与しない。むしろ、本発明は、真に増殖性かつ進行性の癌を容易に、かつ、高い信頼性をもって検出する。これは、通常の入手可能な臨床診断ツールによって確認できるようになる前に、亜臨床的な微視的病変の形態にある症状のない被検者において、又はより進行した病変の形態にある症状のある患者において起こり得る。MGレベルは増悪中の癌細胞の代謝活性に関連するので、本発明の検出/診断方法は、通常の入手可能な臨床ツールによって癌の進行が確認されるようになる前に、症状のない被検者における代謝的に活性な癌のスクリーニングだけでなく、症状のある被検者における増殖性の癌の進行にも、したがって癌が臨床的に進行する可能性がある被検者における評価に用いることができる。
【0021】
本明細書で用いるように、用語「MG正常対照値」又は「MG基準値」は、正常な無病の、特に癌及び糖尿病でない被検者(すなわち健常なドナー)から測定された特定の値及び/又は値の間隔をいう。本明細書で用いられる0.6μM±0.02の正常対照値は、以下に記載する方法に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定された、健常なドナーからの全血試料中におけるMG産生レベルの平均値である。よって、好ましい実施態様では、上記の正常対照値は、癌又は糖尿病に罹患しておらず、その他の疾患もない被検者からの生体試料、好ましくは血液試料中において測定されたMG産生レベルである。基準値は、単一の全体的な値、例えば中央値又は平均値であり得るか、又は被検者の特定の亜集団については異なる値であり得る。当業者は、検査試料中におけるMG産生レベルとMG対照値との比が、どのタイプの対照値が用いられるかに依存し得ることを理解する。
【0022】
本発明の方法は、医学及び生物医学の専門家が、糖尿病でない被検者が癌であるリスクが高いか低いかを判定することを可能にする。この癌になる蓋然性は、正常対照値を超える値について、検査される被検者のMG産生レベルに比例すると推定される。
【0023】
生体試料中におけるMG産生レベルが正常対照値より大きいとき、糖尿病でない被検者は「癌になるリスクが高い」と言われる;このことは、通常の入手可能な診断ツールによって癌を検出し得るか又は未だ検出し得ないかに拘らず、被検者は、生体試料採取時において、癌になるリスクが高いことを意味する。言い換えれば、検査される被検者のMG産生レベルがMG正常対照値を超えるとき、被検者は、正常な集団と比較して、癌である蓋然性が高いと考えられる。より正確には、本発明との関連において、癌である蓋然性が50%、好ましくは70%、より良好には90%、理想的には95%よりも大きいとき、被検者は「癌になるリスクが高い」と言われる。
【0024】
対照的に、検査される被検者の生体試料中におけるMG産生レベルが正常対照値の間隔内にあるとき、及びMG産生レベルが正常対照値の間隔の下限未満であるときには尚更、癌であるリスクは低い。このことは、被検者は、生体試料採取時において、癌である蓋然性が低いか又は癌が生じていないことを意味する。
【0025】
本発明との関連において、癌である蓋然性が正常な集団と匹敵するように、10%未満、好ましくは5%未満であるとき、被検者は、癌であるリスクが低い。言い換えれば、その被検者が癌に罹らない蓋然性は90%、好ましくは95%である。本発明との関連において、MGレベルが対照値より1.5倍、より高い信頼性では2倍、最も高い信頼性では3倍大きいとき、被検者の試料中におけるMG産生レベルは、対照値「より有意に高い」又は「より高い」と言われる。MG産生レベルが正常対照値より2倍大きいとき、被検者は、癌であるリスクが高い(典型的には50%〜80%のリスク)と言われる。MG産生レベルが対照値より3倍大きいとき、癌リスクは、より一層高い(典型的には80〜100%のリスク)。対照的に、MG産生レベルが対照値の1.5分の1、好ましくは2分の1、より好ましくは3分の1とき、検査される被検者のMG産生レベルは、対照値「より有意に低い」又は「より低い」と言われる。反対に、MG産生レベルが正常対照値の2分の1のとき、被検者が癌であるリスクは低い(典型的には20%〜50%のリスク)と言われ、MG産生レベルが対照値の3分の1のとき、癌リスクはより一層低い(典型的には0〜20%のリスク)。最後に、MG産生レベルとMG対照値との比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.95〜1.05である場合、検査される被検者のMG産生レベルは「対照値と同程度」であると言われる。
【0026】
グルコースは、5つのヒドロキシ(OH)基が、通常環である6つの炭素の骨格に特異的に配置されている式C
6H
12O
6又はH-(C=O)-(CHOH)
5-Hの単糖である。流動的な鎖状の形態において、グルコース分子は、(環状とは反対に)開裂しており、C-1〜C-6の6炭素原子の非分岐の骨格を有する;ここでは、C-1は、アルデヒド基H(C=O)-の一部であり、残り5つの炭素の各々が1つのヒドロキシ基-OHを有する(骨格の炭素の残る結合手は、水素原子-Hで飽和されている)。
【0027】
水系の溶液中において、開裂した鎖状のグルコース(「D-」又は「L-」体のいずれか)は、1つの酸素原子によって閉環した炭素環を各々含むグルコースの環状異性体のいくつかと平衡して存在する。水性溶液中において、99%を超えるグルコースがピラノースとして存在する。開裂した鎖状の形態は約0.25%に限られており、フラノースは無視できる量である。用語「グルコース」及び「D-グルコース」は、これら環状の形態についても同様、一般に用いられている。環は、C-1のアルデヒド基-(C=O)HとC-4又はC-5のヒドロキシ基-OHとの求核付加反応により-C(OH)H-O-基が生じることによって、開裂した鎖状の形態から生ずる。開裂した異性体であるD-グルコースは、4つの区別可能な環状異性体:α-D-グルコピラノース、β-D-グルコピラノース、α-D-25グルコフラノース及びβ-D-グルコフラノース(これらは全てキラルである)を生ずる。
その他の開裂した鎖状の異性体であるL-グルコースも同様に、4つの区別可能な環状のL-グルコースを生ずる。
【0028】
本発明との関連において、用語「グルコース」は、環状又は開裂した鎖状のグルコース異性体のいずれをもいう。
検査される生体試料中においてMGレベル及びグルコースレベルを測定すれば、当該検査される生体試料中におけるMGレベルとグルコースレベルとの比である、いわゆるMG/G指数の算出が可能となる。次いで、μモル/gで表されるこの比と正常対照比とを比較し、患者が癌に罹患しているか否かを判定する。
【0029】
癌細胞は、本発明との関連における正常よりも多量のグルコースを消費し、より多量のMGを産生及び放出するので、生体の細胞外区画における癌細胞の代謝活性は、式:MG/G指数=MG/G (式中、MG/Gはμモル/gで表される)に従って、血中グルコースレベル(G;mモル/lで表される)に対する血中MG産生レベル(μモル/g)の比として定義されるMG/G指数によって特徴付けられる。
【0030】
非癌性の糖尿病患者においては、グルコースレベル、糖化ヘモグロビンHbA1cのパーセンテージ及び血中MG産生レベルとの間に正の相関がある(Beisswengerら, Diabetes 1999)。言い換えれば、このような患者においては、血糖が多くなれば、糖化ヘモグロビンHbA1cのパーセンテージは高くなり、循環中の血中MGレベルは高くなる。このことは、非癌性の糖尿病患者の血中において、グルコースレベル及びMGレベルが同時に増大する理由を説明する。対照的に、担癌の糖尿病患者において、MG/G指数の顕著な増大は、本発明者らが本明細書で示すように(以下参照)、グルコースの消費がより多いこと(いわゆる「グルコースポンプ」効果)及び解糖系の活性がより高いこと(Hsu及びSabatini, Cell 2008; Koppenolら, Nat Rev Cancer 2011)のために、癌細胞が血中において顕著に多量のMGを産生及び放出するという事実に関連する;一方、それらの特異的なグルコースポンプ効果に起因して、それらは、同時に、生体の細胞外グルコースを低減する傾向がある;このことは、糖尿病患者において起こっていることとは異なっており、癌患者においては、たとえ進行した状態であっても、血糖は正常なままである理由を説明する。
【0031】
好ましい実施態様において、対照比(以下「正常MG/G対照指数」という)は、生体試料、好ましくは癌でも糖尿病でもない被検者(好ましくは健常な被検者)の血液試料から測定したMG/G比の指数である。
【0032】
本発明との関連において、正常なMG/G対照比指数は約0.01であり、これは、健常なドナーの血液から得られたMG/G指数の中央値と、血糖正常治療を受けた癌でない糖尿病被検者の血液から得られたMG/G指数の中央値との中間値に相当する(
図4参照)。
【0033】
本発明との関連において、MG/G指数が正常なMG/G対照指数より1.5倍、好ましくは2倍、より高い信頼性では3倍大きいとき、糖尿病患者のMG/G指数は、正常なMG/G対照指数「より有意に高い」又は「より高い」。MG/G指数が対照指数より2倍大きいとき、癌であるリスクは高く(典型的には50%〜80%のリスク)、MG/G指数が対照指数より3倍大きいとき、リスクはより一層高い(典型的には、80〜100%のリスク)と言われる。
【0034】
対照的に、MG/G指数が正常なMG/G対照指数の1.5分の1、好ましくは2分の1、より好ましくは3分の1のとき、糖尿病患者のMG/G指数は、正常なMG/G対照指数「より有意に低い」又は「より低い」と言われる。MG/G指数が正常なMG/G対照指数の2分の1のとき、患者は、癌であるリスクが低く(典型的には20%〜50%のリスク)、MG/G指数が正常なMG/G対照指数より3分の1のとき、リスクはより一層低い(典型的には0〜20%のリスク)と言われる。最後に、MG/G指数と対象指数との比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.95〜1.05である場合、糖尿病患者のMG/G指数は「対照指数と同程度」であると言われる。
【0035】
本明細書において用いるように、用語「癌のステージング」又は「癌のステージ」は、ステージI、II、III及びIVと呼ばれる4つの国際的に認められたカテゴリへの癌の臨床的分類を指す。これら4つの予後ステージは、診断時、すなわち抗癌治療を受ける前に決定される。ステージングは、主に「TNM」癌分類(T=サイズ及び組織浸潤;N=所属リンパ節転移、M=遠位転移)に基づく。腫瘍のタイプに依存して、ステージングは、他の分類体系を用いて決定してもよい。例えば、TNM分類は、乳癌、気管支癌及び頭頸部の癌に汎用されているが;卵巣の癌腫にはFIGO分類(国際産婦人科連合;International Federation of Gynecologists and Obstetricians)が、結腸癌には修正デュークス分類が汎用されている。かくして、本発明との関連においては、本発明者らは、各癌タイプごとに最も汎用されている分類を考慮して、4つのステージI、II、III及びIVの予後分類群に癌をカテゴリ分けした。加えて、ステージ0は、インサイチュで浸潤のない癌に限った。
【0036】
本明細書で用いる用語「治療」、「治療し」、「治療する」等は、一般に、抗癌性の薬理的及び/又は生理的な応答を得ることをいう。部分的な若しくは完全な安定化又は癌の治癒のための効果は、症状のない被検者において癌の進行を予防するという意味で予防的であってもよいし、症状のある患者における狹義の治療であってもよい。
【0037】
より正確には、本明細書で用いるように、用語「抗癌治療」とは、化学的療法、放射線療法、外科手術又は医師が用いると認定された生物学的若しくは化学的な療法のいずれかをいう。現在ある治療は、例えば米国立癌研究所(NCI)のウェブサイト(http://www.cancer.gov/cancertopics/treatment/types-of-treatment)にまとめられている。
【0038】
腫瘍の増殖倍加時間は、腫瘍の体積が2倍になる(あるいは、より正確には非間質腫瘍細胞数が2倍になる)のに必要な時間と定義される。
本明細書で用いるように、用語「腫瘍応答」は、疾患が認知可能な癌患者を抗癌治療した後の腫瘍の進展についての種々の国際的に認められた様式をいう。すなわち、腫瘍応答は、腫瘍を臨床的に測定することによって直接的に、及び/又は利用可能なイメージング技術を用いて腫瘍を測定することによって間接的に評価することができる。応答のタイプは、その間に抗癌治療している間一定の時間間隔で測定する。評価は、治療前に行った測定と治療後に行った測定とを比較することにある。4つの応答カテゴリがある:(1)進行性の腫瘍(腫瘍の体積の増大が25%を超える)、(2)安定な腫瘍(腫瘍の体積の増大が25%未満であり、腫瘍の退縮が25%未満である)、(3)部分的な応答(腫瘍の退縮が25%を超えるが、100%未満である)、(4)完全な応答(測定された腫瘍の体積がゼロである、すなわち利用可能な技術によっては腫瘍の検出が不可能である)。
【0039】
第1及び第2生体試料の時間間隔、すなわち予後又は治療応答を評価するための第2生体試料が提供されなければならない時間は、腫瘍の増殖倍加時間に主に依存する;倍加時間が短くなれば、時間間隔も短くなるべきである。増殖倍加時間は、それ自体、腫瘍のタイプ及び治療効果に依存する。よって、迅速に成長する腫瘍の場合、採取の時間間隔は1、2又は3か月であり得る一方、ゆっくりと成長する腫瘍の場合、4、5、6か月又はそれ以上であり得る。
【0040】
ここでは、第2生体試料が、腫瘍の倍加時間に依存して、第1生体試料の1、2、3又は6か月以上後に提供されるときに、MG産生レベルが第1試料中のMG産生レベルより2倍、より好ましくは3倍大きい場合、抗癌治療は患者に有効でないと考える。対照的に、第2試料が、腫瘍増殖倍加時間に依存して、第1試料の例えば1、2、3又は6か月以上後に得られるときに、第2MG産生レベルが第1試料中のMG産生レベルの2分の1、より好ましくは3分の1であるとき、抗癌治療は患者に有効であると言える。
【0041】
生存は、腫瘍のタイプ、ステージ及び治療に依存する。「長期生存」とは、検査される被検者が、試料の採取を行ってから少なくとも12か月、好ましくは3年、より好ましくは5年生存することと本明細書では理解する。他方、「短期生存」は、検査される被検者が、試料の採取を行ってから5年以下、おそらくは3年未満、より確からしくは12か月未満生存することと本明細書では理解する。
【0042】
本発明との関連において、第1試料の1か月、2か月、3か月又は6か月以上後に得られた第2試料中のMG産生レベルの測定が第1試料中のMG産生レベルより2倍、より明確には3倍大きいとき、患者が治癒する蓋然性は低く、長期生存する蓋然性はなおさら低いと考えられる。対照的に、第1試料の3か月、好ましくは6か月、より好ましくは1年後に得られた第2試料中のMG産生レベルが、第1試料中のMG産生レベルの2分の1、より好ましくは3分の1であるとき、理想的には第2試料の後に複数の試料中において測定されたMG産生レベルが正常な範囲内のままであるとき、患者は長期生存の確率が高いか、又は確実に治癒し得るとさえ考えられる。
【0043】
悪液質は、癌のような慢性的な疾患において起こる複雑なメタボリックシンドロームである(Tisdale, Physiol Rev. 2009)。体重が減少している患者において、ブドウ糖負荷試験に対するインスリン応答の測定が、インスリン/グルコース比(I/G指数)が高い場合にはインスリン抵抗性の、又はI/G指数が低い場合にはβ膵臓細胞によるインスリン分泌低減の指標であり得る(Rofeら, Anticancer Res 1994)。
【0044】
結果的に、本発明者らは、癌患者及び正常な被検者においてI/G指数を測定した。本発明者らは、癌患者に特徴的な曲線と正常な被検者の曲線とを比較し、2つの曲線の交点におけるMG対応臨界値(以下「悪液質関連MG対照値」という)の存在(これを超えると、I/G指数は正常な被検者よりも低くなる)を見出した。このことは、悪液質関連MG対照値を超えるMG産生レベルを有する患者は、膵臓におけるインスリン分泌が低減しており、したがって重篤な前悪液質又は悪液質になることを意味する。
【0045】
本発明との関連において、癌患者の血中における悪液質関連MG対照値は0.2μMであり(これは健常な被検者のMG正常対照値より約3倍大きい;上記を参照)、このことは、0.2μMのMG値において、癌患者は、健常な被検者において測定されたインスリン/グルコース比とまさに同じ比を有していること、結果として、同じレベルのインスリン抵抗性及び膵臓分泌を有することを意味する。
【0046】
本発明との関連において、血中MG産生レベルが0.2μMの悪液質関連MG対照値より2倍大きいとき、患者は「悪液質症候群を発症するリスクが高い」(典型的には50〜80%のリスク)と言われ、一方、MG血中レベルが上記の悪液質関連MG対照値より約3倍大きいとき、悪液質を発症するリスクは、より高い(典型的には80〜100%のリスク)。対照的に、MG血中レベルが0.2μMの悪液質関連MG対照値より約2分の1であるとき、患者は「悪液質症候群を発症するリスクが低い」(典型的には20〜50%のリスク)と言われ、一方、MG血中レベルが悪液質関連MG対照値より約3分の1であるとき、悪液質症候群を発症するリスクは、より一層低い(典型的には0〜20%のリスク)。
【0047】
本明細書で用いるように、用語「相関」、「相関する」又は「と相関する」等は、数、データセット等から構成される2つの変量同士の統計的な関連性をいう。正の相関(又は「正に相関する」)とは、一の変量が増加するにつれ、もう一つも同様に増加することを意味する。対照的に、負の相関(又は「負に相関する」若しくは「逆に相関する」)とは、一の変量が増加するにつれ、もう一つは減少することを意味する。本発明は、MGの生化学的特徴及び生物学的特性に適した腫瘍マーカー研究のための米国立癌研究所-欧州癌研究治療機関(NCI-EORTC)のガイドラインを用いる。NCI-EORTCガイドラインは、研究計画、先験的な仮説、患者及び検体の特徴、アッセイ方法及び統計解析についての適切な推奨を含む。加えて、早期検出及びスクリーニングの評価については、バイオマーカー開発のためのNCI早期発見研究ネットワーク(EDRN)の推奨を用いた。
【0048】
本発明は、記載された具体的な実施態様に限定されないと考えなければならない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で用いる用語は具体的な実施態様のみを記載する目的であり、限定することを意図するものではない。
【0049】
発明の詳細な説明
メチルグリオキサール(MG) -式:(CH
3-CO-CH=O又はC
3H
4O
2)のピルビン酸のアルデヒド型(別名ピルブアルデヒド又は2-オキソプロパナール)-は、全ての哺乳類細胞を含む殆どの生命体において存在する独特だが普遍的な分子である(Inoue, Adv Microb Physio 1995)。これは、呼吸をする生物において代謝の重要なステップである解糖中に主に産生される、反応性が高く、用量依存的な細胞毒性の代謝産物である。
【0050】
癌細胞と正常細胞とを区別する主要な発見は、多くの癌細胞が、主に、細胞質中における解糖に用いてアデノシン三リン酸(ATP)を生成し、細胞にエネルギーを提供することである。いわゆる好気的な解糖であるこの現象は、癌細胞代謝の特徴であるワールブルク効果に関する(Hsu及びSabatini, Cell 2008)。癌細胞がミトコンドリアの機能不全及びミトコンドリアDNA(mt DNA)の変異に関連付けられることははっきりと確立されているので、この効果は、今では十分に理解されている(Copelandら, Cancer Invest 2002; Wallace, Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2005)。ミトコンドリアに関連付けられるカルボニルストレスに起因するミトコンドリアタンパク質、脂質及びmt DNAの過剰な糖化は、ミトコンドリアの機能不全及びmt DNA変異に関与することが示されている(Pun及びMurphy, Int J Cell Biol 2012)。加えて、機能不全のミトコンドリアによるmt DNA近傍における過剰なフリーラジカル産生及びmt DNA中の保護的なヒストンの不存在(Baynes, Ann N Y Acad Sci 2002)は、ミトコンドリアゲノムが核ゲノムと比べて、カルボニルストレス及び酸化ストレスの両方に対して大いにより感受性であり、よって高確率で変異すること(Yakes及びVan Houten, PNAS 1997)を説明し得る。更に、癌細胞におけるエピジェネティックな変化及び/又は変異原性の変化は、(1)2型ヘキソキナーゼの過剰発現(Goelら, J Biol Chem 2003);(2)通常はインスリン調節性のグルコース膜受容体、とりわけGLUT1、GLUT3及びGLUT5の活性化(細胞外のグルコースが癌細胞内に容易に浸透するようになる)(Merralら, Cell Signal 1993);及び、最後に、(3)好気条件下及び嫌気条件下における全ての糖分解酵素の過剰発現(腫瘍内の酸素条件に拘りなく、癌細胞による細胞内グルコースの活発な代謝が引き起こされる)(Hanahan及びWeinberg, Cell 2011)を誘導できることが示されている。
【0051】
本発明は、癌細胞が、正常細胞に比して、特徴的に顕著に多量のMGを産生するという事実(MGを癌の潜在的な代謝マーカーとすること)に向けられている。更に、反応性のアルデヒド及びケトン基の両方に起因して、MGは、強力な電子受容体であることが示されているので、独特の化学的及び生物学的特性によって特徴付けられる極端に反応性の化合物である。
【0052】
細菌を含む多くの生体において、MGは、いくつかの代謝経路の副産物として形成される。それは、トレオニン異化の中間体である3-アミノアセトンから、及び、脂質の過酸化によって、形成され得る。しかしながら、最も重要な供給源は解糖(ここでは、MGが、ジヒドロキシアセトン-ホスフェート(DHAP)及びグリセルアルデヒド-3-ホスフェート(G-3P)からホスフェートを非酵素的に除去することによって生成される)である。
【0053】
MGは細胞毒性が強いので、生体は、いくつかの解毒メカニズムを発達させている。その1つが求電子性の毒性、特にMGによって誘導される加害的な糖化から細胞を保護するうえで重要な役割を担うグリオキサラーゼ系である。このプロセスにおいて、MGは、還元グルタチオン(GSH)を補因子として用いてMGをS-D-ラクトイルグルタチオン(S-D-ラクトイルGSH;グリオキサラーゼ2 (GLO-2)によって更にD-ラクテートに分解される代謝中間体)に変換するグリオキサラーゼ1 (GLO-1)を活性化する(Thornalley, Gen Pharmacol 1996)。注目すべきことには、GLO-1活性が、大腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌及び胃癌を含むヒトの多くの癌並びに白血病及び黒色腫、より具体的には浸潤性の癌において、正常組織に比して増大することである(Jonesら, Proteomics 2002; Zhangら, Mol Cell Proteomics 2005)。また、GLO-1及びGLO-2の過剰発現は、腫瘍の多剤耐性と相関している(Sakamotoら, Blood 2000)。しかしながら、GLO-2活性は、正常細胞に比して、癌性の組織では総じて低く、このことは、癌細胞が、自然に細胞内MGを無毒化し、正常なGSHを回収する能力が正常細胞よりも低い可能性があることを示唆する。このことは、カルボニルストレス及び酸化ストレスの両方を増大し得るので、細胞内のフリーラジカルの濃度に依存して、腫瘍の促進及び進行又はアポトーシス/ネクローシスのいずれかを増大し得る(Irigaray及びBelpomme, Carcinogenesis 2010)。
【0054】
シグナル分子としてのMGの役割が記載されている。まず、Egyud及びSzent-Gyorgyiは、GLO-1及びその基質であるMGが細胞分裂の調節に関与することを示唆した(Egyud及びSzent-Gyorgyi, PNAS 1966)。より近年になって、MGが、転写因子NF-kBの活性及びNF-kB-誘導性レポーター遺伝子の発現を調節することが示唆されている(Ranganathanら, Gene 1999; Lagaら)。更に、終末糖化産物(AGE)の形成が、老化に関与すること、そして可能性として、糖尿病(Brownlee, Nature 2001; Brownlee, Diabetes 2005)、動脈性高血圧(Wangら, J Hypertens 2005)、体重超過/肥満に関連付けられる脂肪細胞の増殖(Jiaら, PloS One 2012)、アルツハイマー病(Smithら, PNAS 1994)及び癌(van Heijstら, Ann N Y Acad Sci 2005)のような一般的な病的状態への進展に関与し得ることが示されている。
【0055】
細胞内MGの形成は、高血糖条件下で増大する。1型及び2型糖尿病患者における細胞外MGの血中レベルの異常な増大が説明され(Beisswengerら, Diabetes 1999)、最近では、2型糖尿病において、MGによるインスリン抵抗性の誘導を可能にするメカニズムが記載されている(Ribouley-Chaveyら, Diabetes 2006)。
【0056】
いくつかのデータは、その強力な電子受容能力に起因して、MGが強力な糖化剤であり、最も反応性のAGE前駆体であることをはっきりと示している(Shinoharaら, J Clin Invest 1998)。タンパク質だけでなく脂質及び核酸もMGによる糖化に感受性である(Thornalley, Drug Metabol Drug Interact 2008)。
【0057】
したがって、一方では、MGは、強力な変異原として癌に味方し、癌の発生及び進展に関与し得ると考えられている。他方、そのアポトーシス促進性及び/又はネクローシス促進性の用量依存的な細胞毒性に起因して、抗癌剤であるとも考えられており、癌性の動物(Conroy, Ciba Found Symp 1978)及び個体(Talukdarら, Drug Metab Drug Interact 2008)にいくらかの抗癌効果を提供すると考えられている。更に、MGの潜在的な抗腫瘍効果に基づいて、化合物メチルグリオキサール-ビスシクロペンチルアミジノヒドラジン及び化合物ミトグアゾン(すなわちメチルGAG(商標登録)(NSC-32946)の名で商品化されているメチルグリオキサール-ビス(ブチルアミノヒドラゾン)のようないくつかのMGに関連付けられる化合物が癌治療のために合成されている。しかしながら、MGも、これらの合成化合物も、適切なフェーズI及びII臨床試験において実際上適切な有利な抗腫瘍効果を示さない。MGの体系的な効果の理解は前進したが、多くがわからないままである。これは、主に、MGが、その極めて高い糖化特性に起因して細胞内及び細胞外のリガンドに結合することを前提として、主にアダクトとして存在するからである(Chaplenら, PNAS 1998)。更に、この問題を複雑化するのは、MGが、これらのリガンドと可逆的又は不可逆的に相互作用することである。しかしながら、循環中の遊離MGは、1型又は2型糖尿病患者から取得した血液試料中において検出できることが示されている(Beisswengerら, Diabetes 1999)。
【0058】
1959年に、Lewis、Majane及びWeinhouseは、Neuberg及びStraussの方法を用いて、癌細胞におけるMGの検出が無視できることをはっきりと示唆した(Lewisら, Cancer Res 1959)。
【0059】
また、1978年に、Brandt及びSiegelは、活発なグリオキサラーゼ系のために、生体組織においてMGを直接定量することが困難であると推測し、そこで、血中MGに代えてD-ラクテートを定量(dose)することを提案した(Brandt及びSiegel, Ciba Found Symp 1978)。最近、いわゆる確立した悪性腫瘍を有する患者の限られた調査から、MG血中レベルが乳癌及び前立腺癌患者において有意に減少していると結論付けられた(Kumar, Biswasら. Biomedical Res 2011)一方で、MG血中レベルは、口腔の前癌性の病変、すなわち悪性癌として確立しているとは言えない口腔の病変において増大すると言われていた。事実、当時は、口腔の前癌性の病変の患者において、MG血中レベルの増大が、喫煙及び/又はアルコール中毒に起因するか否か(但し、これらのリスク要因が一般にこのような患者と関連付けられること、及びタバコの喫煙及びアルコールがMGを含むことは証明されていた(Nagaoら, Environ Health Perspect 1986));及び癌の確立を宣告された患者が抗癌治療によって以前に治療されたか否か、したがって、これらの患者が血液試料採取時において、真に臨床的及び/又は生物学的に活性な増殖性腫瘍に関連付けられるか否かは明らかではなかった。
【0060】
本発明者らは、驚くべきことに、MGの血中レベルが、確立した進行性癌を患う患者において著しく上昇する一方、代謝的に非活性な癌、すなわち前癌状態において、あるいは、インサイチュでステージ0の癌においてでさえも、MG血中レベルは著しく上昇しないことを見出した。実際、MG血中レベルは、頭頸部の癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌及びその他の消化器系の癌のような上皮性の癌において;及び白血病、リンパ腫、黒色腫及び肉腫のような非上皮性の癌において著しく上昇した。より正確には、MG血中レベルは、癌患者の腫瘍の体積及び治療応答と相関する。MG血中レベルが高くなれば、腫瘍の量(burden)も多くなる。それゆえ、重要なことに、MGレベルは、意思決定及び癌患者治療において腫瘍医らを補助する臨床的に意義深いバイオマーカーのようである。
【0061】
よって、本発明は、癌の早期検出及び担癌の被検者の診断、並びにヒト又は動物である癌患者における予後評価、モニタリング及び治療上の意思決定のために臨床的に有用なバイオマーカーとして用いるためのMGに関する。MG血中レベルは正確かつ迅速に測定できるので、本発明の診断方法は、非常に高感度の疾患モニタリング及び治療応答の評価に寄与する。最後に、癌細胞によるMG産生がこれら細胞の基本的かつ特徴的な代謝機能不全に関与するので、癌のバイオマーカーとしてのMGの使用は、現在利用可能なタイプごとの腫瘍バイオマーカーとは対照的に、全てではないかもしれないが多くの癌の検出を可能にする。本発明の別の目的は、癌の早期検出及び診断のための、癌をステージングするための、癌患者の生存可能性を予測するための、抗癌治療の応答をモニタリングするための、及び悪液質の予測及び早期検出のためのキットである。
【0062】
本発明の別の目的は、化学的又は免疫学的なMGのインビトロ測定方法(但し、MALDI-TOF/TOF質量分析又は類似の技術を用いることが好ましい)を用いて、細胞外流体、細胞及び/又は組織の試料中におけるMG産生を測定及び分析する、代謝的に活性な癌の早期検出及び診断におけるMGの使用である。
【0063】
1. 癌細胞によって産生される天然の腫瘍内バイオマーカーとしてのMG
本発明者らは、癌細胞が正常細胞より多量のMGを産生及び放出できること、腫瘍内で直接的に、次いで生体の細胞外区画において、より具体的には末梢血において、多量のMGを産生及び放出する一方、正常細胞(又は炎症細胞)が生体の組織及び細胞外区画において、より具体的には末梢血において、検出可能な量のMGを産生及び放出しないか、又は検出可能だが低量のMGしか産生及び放出しないことを見出した。
【0064】
これらの驚くべき結果は、インビトロ培養物及び動物モデル(より具体的にはインサイチュMG腫瘍分析のためのMALDI-TOF/TOF質量分析を用いて)及び患者で臨床的に確認されている。MGは、腫瘍組織において直接検出でき、MGが最も検出される腫瘍の領域は、腫瘍が活発に増殖している帯域に相当する(
図2参照)。また、培養物中の癌細胞によって産生及び放出されたMGの量は、培地中におけるグルコース濃度に依存する。すなわち、グルコース濃度が高くなれば、癌細胞によるMG産生も高くなり(
図1の2参照)、好気条件下においてでさえも、ATP産生のために癌細胞は主に解糖を用いることを確認している。加えて、本発明者らは、合成され、腫瘍から放出されたMGの量が、腫瘍量と正に相関することを示した。すなわち、腫瘍の体積が大きくなれば、末梢血中におけるMG産生レベルも高くなる(癌患者については
図3、動物モデルについては
図5を参照);一方、炎症及び/又は免疫担当細胞による腫瘍の拒絶の場合、MGレベルは非常に低いままである(
図6参照)。結果として、本発明の1つの主要な実施態様において、担癌の被検者の生体の腫瘍及び/又は細胞外区画において検出されたMG産生レベルは、癌細胞の代謝活性のレベル(被検者が罹患している腫瘍の増殖活性のレベルに対応する)に関連する。
【0065】
したがって、本発明は、化学的又は免疫学的なMGのインビトロ測定方法を用いて、細胞及び/又は組織の試料中における代謝的に活性な癌細胞によるMGのインサイチュにおける産生を測定及び分析することによる癌の早期検出及び診断のための方法を記載する。これらの方法は、MALDI-TOF/TOF質量分析又は類似の技術の使用を含む。
【0066】
結果として、本発明は、(血液癌の診断及びモニタリング(白血病、リンパ腫)及び/又はいくつかの固形癌(子宮頸部及びその他のタイプの癌)のスクリーニングのために一般に用いられる固形腫瘍及び/又は細胞塗抹標本について一般に行われるように)組織生検を用いて、組織及び/又は細胞試料中におけるMG産生及び放出を測定及び分析することによる癌の検出方法において使用するためのMGを包含する。また、癌細胞から産生及び放出されるMGの大部分は解糖系の活性増大に起因するので、本発明は、腫瘍の増殖浸潤性を判定するための方法も包含し、よって癌と良性腫瘍又は炎症のプロセスとの区別に寄与し得る。なぜならば、癌細胞の代謝活性が良性腫瘍細胞又は炎症細胞と比べて一般に増強されるからである。
【0067】
2. 糖尿病でない被検者の早期検出、診断及び予後評価のための、細胞外流体中の癌細胞によって放出された天然のバイオマーカーとしてのMG
本発明の第2の主要な実施態様では、本発明は、生体の細胞外区画の生体試料中において、より好ましくは末梢血中においてMG産生レベルを測定し;測定されたMG産生レベルと正常対照値とを比較することによる、被検者における腫瘍の存在を判定するための方法を包含する。
【0068】
また、本発明は:
a) 細胞外流体から被検者の生体試料中におけるMG産生レベルを測定する工程と、
b) 上記のMG産生レベルと、対照値、すなわち癌でない被検者におけるMGレベルとを比較する(ここで、生体試料中におけるMG産生レベルが上記の対照値より高い場合には、被検者は癌に罹患しているか、又は癌であるリスクが高い)工程と
を含む、糖尿病でない被検者における癌の早期検出、スクリーニング及び診断のためのインビトロ方法も記載する。
【0069】
対照的に、生体試料中におけるMG産生レベルが正常対照値の範囲内であるとき、被検者は癌に罹患していないか、又はそのリスクが低い。本発明は、ヒト又は動物の被検者、すなわち7%未満の糖化ヘモグロビンHbA1cレベルを有する被検者における癌の検出及び診断を可能にする。好ましい実施態様では、本発明の診断方法は、卵巣及び子宮内膜の癌、腎臓及び膀胱の癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、黒色腫及び肉腫に加えて、頭部及び頸部、気管支及び肺、胸部、前立腺、結腸直腸、膵臓及びその他の消化管系の癌の検出を可能にする。好ましい実施態様では、MG正常対照値は、健常な個体の生体試料において測定されたMG産生レベルである。好ましくは、全血についてのこの値は、0.06μM±0.02である(信頼区間0.02μM〜0.11μM)。また、本発明は、被検者の生体試料中においてMGを測定する工程と、測定したMG産生レベルと正常対照値とを比較する工程とを含む腫瘍の増殖浸潤性を判定するための方法も包含する。
【0070】
3. 癌の早期検出及び診断:糖尿病患者
30人の治療されていない1型及び2型糖尿病患者において、癌の発生率は統計的に有意に高い。しかしながら、MG産生レベルは、高血糖状態、すなわち治療されていないか、又は正しく治療されていない糖尿病において増大することが知られている(McLellan, Clin Sci 1994)。したがって、本発明のMG癌バイオマーカーは、これらの患者においてまぎらわしいであろう。
【0071】
したがって、本発明の目的は、MG/G指数が、癌であり得る患者と、癌ではあり得ない人(たとえ糖尿病患者であっても)との区別を可能にすることである。したがって、この指数の評価は、糖尿病患者における癌の早期検出及び診断を可能にし、結果として、これらの患者の癌の予後を改善する。
【0072】
したがって、本発明は、
a) 糖尿病の被検者の第1生体試料中におけるMG産生レベルを測定する工程と、
b) 被検者の第2生体試料中におけるグルコースレベルを測定する工程と、
c) これら2つのレベルのMG/G比(MG/G指数)と、健常な個体及び血糖正常治療を受けた糖尿病被検者において測定された対応する対照比とを比較する工程であって、ここで、工程(C)で得られたMG/G指数が対応する対照比より大きい場合、被検者は、癌に罹患しているか、又は癌リスクが増大していると考えられ;工程(C)で得られたMG/G指数が対応する対照比と同程度である場合、被検者は癌に罹患しておらず、かつ、癌リスクは増大していないと考えられる、糖尿病の被検者において癌を早期検出、スクリーニング及び診断するためのインビトロ方法を記載する。
【0073】
重要なことに、この方法は、糖尿病でない動物又はヒトの被検者、好ましくは正しく治療された糖尿病患者に対して、正しく治療されていない糖尿病患者、すなわち7%未満の糖化ヘモグロビンHbA1cレベルを有する糖尿病でない被検者に対してでさえも用いることができる。
【0074】
上述のように、(同一の個体におけるMGレベル及びグルコースレベルの測定にそれぞれ用いる)第1及び第2液体生体試料は、好ましくは、例えば血液、血清、血漿、尿、腹水又は胸水及び髄液から選択される液体生体試料である。本発明の方法において、第1及び第2試料は、同じ性質のもの(すなわち、血液同士、腹水又は胸水同士等)でなければならない。
【0075】
第1及び第2試料は、被検者から順次採取できる。好ましい態様では、試料は同時に採取される。より良好な実施態様では、1つの試料を2つに分け、MGレベル及びグルコースレベルを同一の試料中で測定する。いくつかの方法をルーチンで用いて、生体試料中におけるグルコースレベルを測定する。当業者は、生体試料のタイプに応じて、如何にしてグルコースレベルを測定するかについて熟知している。例えば、血液試料を用いるとき、グルコースは、全血、血漿又は血清についてルーチンの技術によって測定できる。しかしながら、信頼性をもってMGを測定しようとするならば、試料を4℃で保持しなければならない。
【0076】
しかし、本発明との関連においては、電気的又は酵素的なグルコース測定技術が好ましい。最も汎用される2つの酵素がグルコースオキシダーゼ及びヘキソキナーゼである。好ましい実施態様では、グルコースがグルコースオキシダーゼと反応するときに形成される過酸化水素(H2O2)のレベルを測定することによって、グルコースを測定する。
【0077】
上記のように、MGレベルは、生体試料中において測定する。
好ましい実施態様では、健常な個体又は血糖正常治療を受けた糖尿病被検者の生体試料から測定及び決定されたMG/G指数は、好ましくは約0.01μモル/gの値であり、健常なドナーの血液から取得したMG/G指数の中央値と、血糖正常治療を受けた非癌性の糖尿病患者の血液から取得したMG/G指数の中央値との中間値であるMG/G指数値に対応する(
図4参照)。
【0078】
4. 癌患者のステージング、予後評価、モニタリング及び治療の評価
イメージング技術は、初期の癌性状態を検出すること及び国際的に認められた4つのカテゴリ(I〜IV)に癌を正しくステージングすることにおいて正確ではない。実際、臨床腫瘍専門医にとって重大な関心事は、亜臨床的状態にある生体において、癌の進行及び拡大を正しく評価することである。
【0079】
本発明は、動物において、MG産生レベルが腫瘍の体積と相関すること(
図5参照)、及び患者において、末梢血中におけるMG産生レベルが、腫瘍のステージと(
図3参照)、及び治療後における腫瘍の応答と(表3参照)相関することを示す。
【0080】
したがって、本発明は、ヒトであるか又は動物であるかに拘らず、患者から取得した生体試料、好ましくは血液試料中におけるMG産生レベルを測定することによる、癌患者における疾患のステージング及び予後評価のための、並びに癌患者の治療効果をモニタリングするための、以下の工程を含むインビトロ方法を記載する:
・ステージング及び予後評価のため:
a) 患者から取得した治療前の第1生体試料中におけるMG産生レベルを測定する工程、
b) 治療前MGレベルと正常MG対照値とを比較する工程、
c) ステージ分類の4ステージのうち1つに従って治療前MGレベルを分類する工程、
・抗癌治療の効果をモニタリングするため:
a) 患者から取得した第1生体試料中における治療前の第1MG産生レベルを測定する工程、
b) 第1試料の取得後所定の時点において治療後に患者から取得した第2生体試料中におけるMG産生レベルを測定する工程、
c) 第1及び第2MG産生レベルを比較する工程であって、第2MG産生レベルが第1MG産生レベルより大きい場合、治療は患者に対して有効ではないと考えられ;一方、第2MG産生レベルが第1MG産生レベルより小さい場合、治療は患者に対して有効であり、優先して続けるべきと考えられる工程。
このモニタリング方法は、癌を呈しているヒト又は動物の被検者に用いることができる。
【0081】
本発明のインビトロ方法は、本方法を用いて、亜臨床的な癌が検出された症状のない被検者に投与された予防的抗癌治療の治療効果をモニタリングするためにも用いることができる。
本発明のインビトロ方法は、認知可能な疾患を既に治療されており、好ましくは本発明の方法を用いて、残りの亜臨床的な疾患を治療するためにアジュバント抗癌治療を必要とする癌患者に施した予防的抗癌治療の治療効果をモニタリングするためにも用いることができる。
【0082】
上述のように、第1及び第2生体試料(すなわち、それぞれ治療前及び治療後の試料)は、好ましくは、例えば全血、血清、血漿、尿、胸水又は腹水及び髄液から選択される液体生体試料であり、互いにできる限り同一にすべきである。この方法では、第1及び第2試料は、それぞれの試料採取の間に行われる抗癌治療が効果を表すのに十分な時間をとり、得られた結果を本発明に従って測定及び解釈するために、時間をおいて(in a staggered manner)採取しなければならない。より正確には、上記のとおり、第2生体試料は、「第1試料後所定の時点で」、すなわち癌の増殖倍加時間に依存して、第1試料の後;好ましくは治療が完全になされたか、又は治療を開始してから解釈可能な結果を出すのに十分長期間を経てから少なくとも1月;好ましくは2若しくは3月又は6月で取得しなければならない。
【0083】
また、本発明は、
a) 患者から取得した第1生体試料中における第1MG産生レベルを測定する工程と、
b) 第1試料の取得後所定の時点で前記患者から取得した第2生体試料中における第2MG産生レベルを測定する工程と、
c) 前記第1及び第2産生レベルを比較する工程であって、第2MG産生レベルが第1MG産生レベルより大きい場合、患者の生存可能性は短期間であると予測され;一方、第2産生レベルが第1産生レベルより小さい場合、患者の生存可能性は延長されていると予測される工程と
を含む、患者の生体試料を用いて、癌患者の生存可能性を予測するためのインビトロ方法も記載する。
この治療効果予測方法は、癌を呈するヒト又は動物の被検者に用いることができる。
【0084】
上記のとおり、第1及び第2生体試料(すなわち、それぞれ治療前及び治療後の試料)は、好ましくは、例えば全血、血清、血漿、尿、胸水又は腹水及び髄液から選択される液体生体試料であり;同じ性質のものでなければならない。繰り返すが、この方法では、第1及び第2試料は、順次、すなわち癌の増殖倍加時間に依存して(増殖倍加時間が短くなれば時間間隔も短い)、第1試料後1月、2月、3月又は6月に採取すべきである。
好ましくは、方法は、血液試料を用いて行う。
注目すべきは、第2試料中におけるMG産生レベルが第1試料中におけるMG産生レベルと同程度である場合;すなわち、これらの比が0.7〜1.3、より一層好ましくは0.9〜1.1である場合、第1及び第2試料が例えば1月間隔で採取されると、患者が増殖中の、安定な、又は崩壊中の癌を有するかについて正確に予測することはできないことである。よって、同じ治療を行って、数週又は数月後に測定を繰り返し、結果を確認することが必要である。
【0085】
5. 悪液質の予測及び早期検出
悪液質は、腫瘍量及び転移の有無に拘りなく、癌患者の大部分において(とりわけ膵臓癌、胃癌、大腸癌及び肺癌患者において)起こると推定され、クオリティ・オブ・ライフの乏しさ及び生存期間の短縮に関連付けられる。それは、臨床的には食物摂取量の減少及び体重減少によって、生物学的にはsの炎症、脂肪動員及び酸化の増大、全身のタンパク質分解及び代謝回転の増大、及び炭水化物の代謝障害によって特徴付けられる。悪液質患者において、炭水化物の代謝の変化は、耐糖能、全身のインスリン抵抗性、宿主のグルコース酸化の低減、グルコース新生の増大、及びグルコースの代謝回転及びリサイクリングの増大を含む;これら全てのプロセスにおいて、インスリンが重要な役割を担う(Tayek, J Am Coll Nutr 1992)。
【0086】
本発明者らは、BMIに関連してMGを測定し、血中MG産生レベルは、正常な被検者のBMIではなく、癌患者のBMIと有意に逆相関すること(
図7参照);及び18未満のBMIを有する癌患者、すなわち前悪液質症候群又は悪液質症候群の患者において、MG産生レベルは、悪液質でない癌患者と比べて著しく増大されていることを見出した(表4参照)。このことは、癌患者においてMGを測定することが、悪液質を予測及びその診断を確認するための価値あるツールであり得ることを意味する。また、悪液質の癌患者では、耐糖能、より具体的にはインスリン抵抗性は、体重減少開始の随分前に起こる初期の生化学的事象であり(Tayekら, J Am Coll Nutr 1992)、体重が減少している患者では、ブドウ糖負荷試験に対するインスリン応答の測定が、インスリン/グルコース比(I/G指数)が大きい場合にはインスリン抵抗性の、又はI/G指数が小さい場合にはインスリン分泌低減の指標であり得る(Rofeら, Anticancer Res 1994)。結果として、本発明者らは、MG産生レベルに従って、癌患者及び正常な被検者におけるI/G指数を測定し、癌患者の血液中の悪液質関連MG対照値が0.2μMであることを確かめた。このことは、0.2μMのMG値において、癌患者は健常な被検者において測定したものとまさに同一の比を有し、結果的に、彼らが同一レベルのインスリン抵抗性及び膵臓分泌を有することを意味する(
図8参照)。
【0087】
よって、本発明は、
a) 患者から取得した生体試料中におけるMG産生レベルを測定する工程と、
b) MG産生レベルと悪液質関連MG対照値とを比較する工程とを含み、ここで、生体試料中におけるMG産生レベルが悪液質関連MG対照値より大きい場合、患者は悪液質又は重篤な前悪液質になっており、したがって、有効な抗悪液質治療がない場合には生存は短期間になると予測され、
一方、生体試料中におけるMG産生レベルが悪液質関連MG対照値より小さい場合、患者は悪液質にも重篤な前悪液質にもなっておらず、したがって、生存はより延長されていると予測される、癌の被検者又は患者において、悪液質又は前悪液質を予測、検出及び診断するためのインビトロ方法にも関する。
【0088】
この方法では、MG対照値は、癌患者のインスリン/グルコース比(I/G指数)の時間的変化(evolution)と、正常な被検者のI/G指数の時間的変化とを比較することによって測定される。このことによって、血中で約0.2μM (この値を超えると、β膵臓細胞によるインスリン分泌レベルが不全であり、癌患者が悪液質又は重篤な前悪液質になることを意味する)のMGと推定されるMG産生レベルの臨界点の特徴決定が可能になる。
これは、健常な被検者におけるMG正常対照値より約3倍大きい。
繰り返すが、この予測方法は、癌を呈するヒト又は動物の被検者に用いることができる。
【0089】
メチルグリオキサール測定法
直接的なインサイチュMG分析/検出は、固形組織、より具体的には腫瘍の試料中におけるマトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)と飛行時間質量分析計(TOF)とを組み合わせたMALDI-TOF/TOF質量分析を用いて行うことができる。
【0090】
MALDI-TOF/TOF質量分析による固形組織生検及び細胞塗抹標本中における直接的なインサイチュ測定及び分析の手順を以下の「実施例」に記載する。簡潔には、固形組織に関する限りでは、まず、固形組織を−80℃で凍結し、クライオスタットの手順中、超純水によって固定し、厚さ12μmの切片とする。次に、切片を特定のMALDIプレートに置き、エタノールで処理し、α-フェニレンジアミン(o-PD)で処理する。その後、調製物を湿潤室中で、暗中室温で一晩インキュベートし、(デシケーターを用いて)乾燥させ、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(HCCA)マトリクス溶液でコーティングする。MALDI-TOF/TOF質量分析によって得られた、2MQXに対する効果を分析することにより、本発明者らは、2つの2MQX分子フラグメント(一方は91Da及び他方は118Da)が、最も良好に選択されたMGの特徴(これは、MS/MSイメージング解析の後、固形組織中のMGを検出及び定量するのに用いることができた)であることを見出した。細胞塗抹標本において細胞内MGを検出及び測定するために、類似の手順を設計し、実施した。液体試料中における遊離MGの分析/検出は、当業者に公知の慣用の手段によって、例えば逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、ELISA試験又は提案されているその他の方法によって行うことができる(Ohmoriら, J Chromatogr. 1987; McLellanら, Anal Biochem 1992; Nemetら, Clin Biochem 2004; Chaplenら, Anal Biochem 1996を参照)。
【0091】
本発明の好ましい実施態様では、液体生体試料は、全血、血清、血漿、尿、胸水又は腹水、髄液又は消化液から選択される。好ましい実施態様では、天然に生じる遊離MGの検出は、1,2-ジアミノベンゼン誘導体、好ましくはo-フェニレンジアミン(o-PD)を血液試料に添加することによって行われる。実際に、MGとo-PDとの反応により、RP-HPLCによって容易に定量される強力な発色団若しくは蛍光団又はその両方であるキノキサリン類が形成される。しかしながら、本発明は、McLellanらによって記載された方法(McLellanら, Anal Biochem 1992)に従って、1,2-ジアミノ-4,5-ジメトキシベンゼン(DDBとも呼ばれるDMN)も用いる。これにより、得られるキノキサリンをRP-HPLCによっても測定する。
【0092】
全血試料中におけるMGレベルを定量するための単純な方法を以下の実験の部分に記載する。具体的な実施態様では、全血試料は、慣用の手段によって被検者から採取し、直ちに氷上で保持し、MG測定まで−80℃で凍結させる。MGは非常に反応性かつ不安定であるため、解凍後、誘導体化手順の温度とするまで、試料を4℃で保持する。第一のステップにおいて、瞬時のタンパク質の沈降のため、トリフルオロ酢酸(TFA)を、解凍した全血試料に添加する。その後、試料を4℃で遠心分離し、上清を回収する。第二のステップにおいて、o-PD又はDMBを上清に添加することによって誘導体化を行い、混合物を暗中室温(23℃)で4〜6時間保持する。最後の遠心分離を行い、上清を回収し、検出システムと組み合わせたRP-HPLC又はガスクロマトグラフィー(いずれもMGレベルを正確に定量する)を用いて分析する。
【0093】
この手順の代替法として、本発明者らは、試料の採取及び処理、及びMG測定を簡略化するための改良法を提案する。この代替法では、試料採取のためにTFAを既に含むバイアルを用いて、試料を直ちに転倒混和し、4℃で保存し、−80℃で凍結する。そして、解凍後、直ちに試料を4℃で遠心分離し、上清を取得し、MG定量のために上記のとおり誘導体化できる。
【0094】
また、MGの測定は、MG特異的抗体の調製に基づく定量的「サンドイッチ」酵素結合免疫吸着測定法(「サンドイッチ」ELISA)を用いることによっても行うことができる。遊離MGに特異的な抗体の調製は、この試験の信頼性にとって重要である。いくつかのヒトMGのELISAキットが商品化されている。
【0095】
本発明の好ましい実施態様では、MGに特異的な抗体は、マイクロプレートに予めコーティングされる。次いで、較正した試料を導入し、試料中に存在する遊離MGを、予めコーティングされた抗体に結合させる。結合していない物質を除去した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)-コンジュゲート抗MG抗体をウェルに直接添加する。洗浄後、3,3’,5,5’-テトラメチル-ベンジジン(TMB)基質溶液(用いた酵素コンジュゲートの特異的基質)を各ウェルに添加する。MGを含むウェルのみが、分光分析によって測定することができる色の変化を示す。最後に、基準との比較によって試料中のMGレベルを測定する。この定量的「サンドイッチ」酵素免疫測定法は、例えばアビジンコンジュゲートHRPと組み合わせたビオチンコンジュゲート抗体の系を用いる入手可能な商品化されたELISA「サンドイッチ」試験を簡略化したものである。「サンドイッチ」ELISA試験の信頼性は、抗MG抗体の特異性及び品質に依存するので、このような試験は、基本的に、新たにストックされた試薬各々についてのRP-HPLCコントロールチェックを含むべきである。
【0096】
偽陰性及び偽陽性の結果の低減
本明細書に提示するデータ(
図3及び「実施例」を参照)から、本発明者らは、RP-HPLCを用いて癌患者の全血中におけるMGを測定するときに、そのときの結果の10〜15%が偽陰性の可能性があると推定した。このような場合、組織又は細胞中においてMGを直接測定する本発明の方法のような、その他の方法を用いなければならない。偽陽性の誤りは、慢性尿毒症(Nakayamaら, Am J Nephrol 2008)並びに1型及び2型糖尿病で起こり得るが、慢性尿毒症及び糖尿病は容易に認知及び診断することができ、本発明者らは、糖尿病患者において癌を検出するためにMG/G指数を用いることを提案している。上記のように、糖尿病に加えて、AGEは、老化及び動脈性高血圧、体重超過/肥満又はアルツハイマー病のような癌でないいくつかの年齢に関連する疾患に関連付けられる。MGレベル増大は、動脈壁において、及び高血圧のラットの血液において検出されているが(Wu及びJuurlink Hypertension 2002)、一般的な動脈性高血圧患者の血液中においては、MG産生レベルの増大はこれまで証明されていない。アルツハイマー病患者の髄液中におけるタンパク質の糖化及びMGレベルの増大は報告されているが、アルツハイマー病患者の末梢血中におけるMG増大は観察されていない。また、アルツハイマー病患者の末梢血中において検出される、終末糖化産物に関連付けられるパラメータは、認知症でない対照に比して、より低い値であることが見出された(Thorne Jら, Life Science 1996)。この発見は、このような患者において、血中MGレベルが増大され得ることを示唆するものではない。実際、慢性尿毒症並びに1型及び2型糖尿病を例外として、動脈性高血圧又はアルツハイマー病のような年齢に関連する疾患を患うヒトにおいて、遊離MGの血中レベルが高いことを支持するデータはない。また、正常で健常な被検者においては、老化が血中MG産生レベルに影響するとは考えられておらず、年齢に関連するMG血中レベルは正常な値の範囲内に含まれるので、老化それ自体は偽陽性を構成し得ない。加えて、幾人かの慢性炎症性疾患患者の血中MG産生レベルの増大は観察されていない。
【0097】
別の態様では、本発明は:
- 生体試料を採取するための手段
- MG産生レベルを測定するための手段
- キットを使用するための取扱説明書
- 任意に、対照(参照)試料
を含む、癌の早期検出及び診断のための、癌のステージングのための、癌患者の生存可能性を予測するための、抗癌治療に対する応答をモニタリングするための、及び悪液質を予測及び早期検出するためのキットを記載する。
【0098】
本発明の好ましい実施態様では、上記のキットは、取扱説明書、及びMALDI-TOF/TOF質量分析又は類似の技術による細胞塗抹標本又は組織においてMGをインサイチュで検出及び測定し、利用可能な方法の1つである:
・細胞外流体中におけるRP-HPLC分析のための、o-PD又はDMB、2MQX又はDMQ、MQX又はDDQを含む化学的試験
を用いてMGを定量するための手段を含む。
【0099】
化学的試験に関し、上記のキットは、以下の試薬:
- タンパク質沈殿のためのトリフルオロ酢酸(TFA)
- 誘導体化のためのo-フェニレンジアミン(o-PD)又は1,2-ジアミノ-4,5-ジメトキシベンゼン(DDBとも呼ばれるDMB)
- 検量線のために用いられる誘導体化剤である2-メチルキノキサリン(2-MQX)又は6,7-ジメトキシ-2-メチルキノキサリン(DMQ)に相当する特定のキノキサリン産物
- 内部基準のための、キノキサリン誘導体である5-メチルキノキサリン(5-MQX)又は6,7-ジメトキシ-2,3-ジメチル-キノキサリン(DDQ)からなる基準
・任意に、固形組織又は細胞塗抹標本中におけるMG測定のための、MALDI-TOF/TOF質量分析のための化学的試薬を用いる化学的試験
・任意に、細胞外流体中におけるMG測定のための、遊離MGを特異的に認識するモノクローナル又はポリクローナル抗体に基づく定量的「サンドイッチ」酵素免疫試験
を含む。
【0100】
別の好ましい実施態様では、本発明のキットは、更に、グルコース産生レベルを検出するための手段、及びグルコースオキシダーゼ又はヘキソキナーゼ酵素試験に基づくMG/G指数を決定するための取扱説明書を含む。
【0101】
実施例1:固形組織試料の調製及び腫瘍中におけるMGの測定
腫瘍検体は、90匹の雄性及び雌性BD-IXラット(Charles River, France)に、PRO腫瘍形成性結腸癌細胞をグラフトし、6週間後に取得した(Charles Riverから提供された45匹のメス及び45匹のオス)。腫瘍を−80℃で凍結し、クライオスタットの手順中、超純水によって−20℃で固定し、12μmの厚みの切片に切断した。次いで、特定のMALDIプレート(Brukerから提供)に切片を置き、調製物をエタノールで処理し、次いでo-PD (0.01%) (Sigma Aldrich, France)で処理し、湿潤室中で、暗中室温で一晩インキュベートした。インキュベーション後、(デシケーターを用いて)切片を乾燥させ、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(HCCA)(Sigma Aldrichから提供)マトリクス溶液でコーティングした。MALDI-TOF/TOF質量分析計(Bruker UltraFlex III)を用いて2MQX (2-メチルキノキサリン)(Sigma Aldrichから提供)に対する効果を分析することによって、2つの2MQX分子フラグメント(一方は91Da及び他方は118Da)を選択し、腫瘍中におけるMGを検出し、MS/MSイメージング解析を行った。
【0102】
対照の範囲は、以下のようにして調製した:内部基準である5MQX (5-メチルキノキサリン)(Sigma Aldrichから提供)を0.4μMで用いて、この最終濃度で、0〜1.6μMの濃度範囲に調製した2MQXの各アリコートと混合した。超純水で希釈を行った。MALDI-TOF/TOF質量分析を用いて分析を行った。
【0103】
実施例2:細胞外流体試料の調製及び血中MGの測定
食べ物及び飲み水にMGが存在し得るので、試料採取前8〜12時間被検体を絶食にしなければならない。血液試料を4℃で採取し、MGは赤血球細胞中で一定濃度であるため、全血について分析を行うことができる。このことは、おそらくは、赤血球細胞において、グリセロンホスフェート及びグリセルアルデヒド-3-ホスフェートからMGが非酵素的に一定速度で生成されるという事実に由来する(Thornalley, Biochem 1989)。
【0104】
簡単な誘導体化の手順及びその後のガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)に基づく方法を用いる。質量分析と組み合わせたo-PD又はDMBのいずれかを用いる誘導体化を含む逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて、MGの調製及び定量を行う。簡潔には、4℃における全血の遠心分離後の処理は、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いるタンパク質の沈降、暗中23℃で4〜6時間の誘導体化剤(o-PD又はDMB)と上清とのインキュベーション、及びo-PDについては2MQX、又はDMBについては6,7-ジメトキシ-2-メチルキノキサリン(DMQ)への変換後におけるMGの定量的分析を必要とする。
【0105】
標準溶液は、以下のようにして調製する:エンドポイントアッセイによりMGのストック水溶液の濃度を酵素的に測定する。MGの定量は、還元グルタチオン(GSH)存在下におけるグリオキサラーゼIによるS-D-ラクトイルグルタチオンへの転換を含む。1 mlの水中に0.0625〜1.6 nmolのMGを含む較正のための標準を調製する。誘導体化を上記の手順で実施する。o-PD誘導体化剤についてはMG濃度に対する2MQXと5MQX(内部基準)とのピーク面積比をプロッティングすることによって、又はDMB誘導体化剤についてはMG濃度に対するDMQと6,7-ジメトキシ-2,3-ジメチルキノキサリン(DDQ)(内部基準)とのピーク面積比をプロッティングすることによって、検量線を構築する。
【0106】
血中MGを同定し、その濃度を測定するために、RP-HPLCによって、キノキサリン誘導体(すなわち、o-PDについては2MQX及び5MQX、及びDMBについてはDMQ及びDDQを分離し、エレクトロスプレーイオン化/選択イオンモニタリング(ESI/SIM)によって分析する。最後に、選択イオンモニタリングモード(SIM)において、プロトン化分子内部基準イオンピーク強度(5MQXについてはm/z 145及びDDQについてはm/z 218)に対するプロトン化分子イオンピーク強度(2MQXについてはm/z 145及びDMQについてはm/z 205)のピーク面積比を算出することによってMGを定量する。
【0107】
実施例3:インビトロ実験
正常細胞と比較した癌細胞によるMG産生の測定は、インビトロ組織培養物を用いて行った。細胞培養物を用いる典型的な実験では、HCT116ヒト結腸直腸癌腫細胞株の馴化培地(CM)中における癌細胞によるMG産生は、LC-MS/MSを用いて行った。低グルコース条件(5.6 mM)下又は高グルコース条件(25 mM)下のいずれかで細胞を培養し、48時間後に回収した。
【0108】
CM中におけるMG産生は、高グルコース条件下(0.05917μMのMG濃度)において、低グルコース条件下(0.00515μMのMG濃度)よりも10倍多いことが見出された。このことは、癌細胞がグルコースからMGを合成し、ATP産生のために主に解糖を用いることを示す。
【0109】
更なる実験は、この用量依存性が様々なタイプの癌細胞に関する一方で、グルコース消費がより少ないこと及び解凍のために、正常細胞がより少ないMGを合成及び放出することを示した。
【0110】
実施例4:インビボ実験
様々なタイプ及び位置の種々のステージの癌に罹患する101人の継続患者の組の血中MGの存在を分析し、癌患者において得られたレベルを年齢及び性別を合わせた36人の正常な対照及び(試験の陽性対照として用いた6人の治療していない2型糖尿病患者に加えて)12人の血糖正常治療を受けた2型糖尿病患者の組で得られたレベルと比較した。癌患者に包含する基準は、癌の病理学的診断、以前に治療していないこと、臨床的及び/又は生物学的に認知可能な疾患の存在、糖尿病、腎不全及びその他の慢性疾患がないこととした。
【0111】
正常な対照に包含する基準は、癌、糖尿病、動脈性高血圧、アルツハイマー病及び腎不全がないこと;インスリン非依存性2型糖尿病患者については、糖尿病に関連付けられる合併症がないこと、治療した糖尿病患者については糖化ヘモグロビンHbA1cが7%以下、かつ、血糖正常であることとした。包含された全ての被検者について、包含する基準は、試料採取時の24時間前に喫煙、アルコール摂取及びコーヒー消費がないことであり、ヘビースモーカー及び/又はアルコール中毒者は全て本研究から除外した。BMI並びに血中グルコース及びインスリンは、最初に包含された66人の患者及び全対照において、標準的な手順に従って連続的に測定した。
【0112】
実施例5:インビボ動物モデル
実験動物、具体的には同系BDIXラットの1-2ジメチルヒドラジンで誘導された移植可能な結腸癌モデルを用いて、一連の実験を行った。これについて、2つの癌腫細胞クローン(DHD-K12/SRb及びDH-K12/JSb)を予めインビトロで選択し、ラットにグラフトしたときに、それぞれ進行性腫瘍(PROb)及び退縮性腫瘍(REGb)を形成した。これらの実験では、MG並びにグルコース及びインスリンのようなその他の分子を測定するための血液試料を第2週、第3週、第4週、第6週及び第9週に採取した。同時に、腫瘍を評価するために、腫瘍の質量(mass)を測定した。JMP 7(SAS Software, NC, USA)を用いて統計解析を行った。統計的有意性は、Fisher正確検定及び両側スチューデントt検定を用いて決定した。
【0113】
結腸の腫瘍は、PRO腫瘍形成性結腸癌細胞(上記参照)の移植後6週間のBDIXラットから取得した腺癌である。
図2の1及び2において、腫瘍は、中央及び下部において支配的である大きな壊死の帯域に明らかに関連付けられる。これは、特に、ヘマトキシリン-エオシン-サフラン染色した腫瘍に相当する
図2の2において十分に証明されている。
【0114】
MALDI-TOF/TOFによるMS/MSイメージング解析後に2つの2MQX分子フラグメント(一方は91Da及び他方は118Da)を検出することによって、腫瘍中のMGの局在を観る。これにより、
図2の3及び4にそれぞれ示した腫瘍のスキャンが得られる。
【0115】
3及び4のスキャンは、悪性腫瘍が多量のMGを産生できる一方、この方法を用いる正常な対照の組織の分析はMGを検出しないか、又は検出可能なMGが少量であることを示す。
図2のスキャン3及び4に報告したように、MGが細胞内、細胞外又はその両方のどこで検出されたのかは明らかではなかった。しかし、
図2のスキャン3(91 Daの2MQXフラグメントに対応)では、MG量は、腫瘍の壊死の帯域ではより豊富ではないようである一方、腫瘍が活発に増殖している部分で主に検出されるようである。
【0116】
実施例6:癌患者
表1の結果は、癌患者におけるMG血中レベルの平均値及び極値が、男女両方の正常な対照及び2型糖尿病を治療した血糖正常の患者よりも有意に高いことを示す。対照として用いる健常な被検者と血糖正常治療を受けた2型糖尿病患者との間では、有意差は見られなかった。
【0117】
血中MG測定に加えて、病理学的に立証された癌患者の抗癌治療前の血中グルコース及びインスリンを前向きかつ連続的に調査した。同様の調査を正常な被検者において行った。癌患者において、MG血中レベルと血糖との有意な相関は見られなかったが、MG血中レベルは、インスリン血症と逆相関する傾向が見られた(データ示さず)。このことは、癌患者では、MG血中レベルが、相対的に非依存的なパラメータであることを意味する。有意な結果は正常な対照では見られなかった。したがって、このようなデータは、正しく治療された糖尿病患者、すなわち正常な血糖値及び正常化したHbA1cを有する患者のMG血中レベルの増大の検出が、健常な糖尿病でない被検者についてと同様に、癌転帰に起因し得ることを意味する。
【0118】
したがって、血糖正常治療を受けた糖尿病患者におけるMGの系統的な測定は、直腸結腸癌、膵臓癌、肝癌、乳癌及び膀胱癌を含む特定タイプの癌の高い発生率が1型又は2型糖尿病と有意に関連付けられることが示されたために正当である。
【0119】
表2の結果は、腫瘍タイプごとに、癌患者のMG血中レベルの比較を示す。
実際、正常な対照(及び血糖正常治療を受けた2型糖尿病患者)との比較において、MG血中レベルは頭頸部、肺、胸部、前立腺、直腸結腸、膵臓及び消化器系の癌の患者で有意に増大し、これらの患者において、種々のMG値は、腫瘍のタイプに依存して、正常対照値よりも1.5倍〜2倍大きいことを示す。注目すべきは、最も頻繁な癌である乳癌及び前立腺癌について得られた、正常な対照からのMGレベルの統計的に有意な差;肺、直腸結腸、膵臓、頭頸部の癌(これらについては、現在のところ、利用可能な早期検出バイオマーカーがない)についてのMGレベルの大いに統計的に有意な差がある。
【0120】
実施例7:癌患者の血中MGレベルとステージとの統計的に有意な関係
腫瘍の体積が予後値であることが十分に実証されているので、ステージングにおけるMG血中レベルは予後指標と考えることができる。また、本発明者らは、MG血中レベルが腫瘍の体積をはっきりと反映することが示されているので、MG血中レベルはまた、後の、疾患の進展の間の予後の指標である。
【0121】
インサイチュの癌(ステージ0)について、正常対照値(0.06μM)と比較してMG血中レベルの有意な増大はなく、この発見は、ステージ0のいくつかの癌は、代謝的に活性ではあり得ない一方、ステージI〜IVの癌については、有意な正の相関がある(P=0.0109)ことを確認している。このことは、癌患者の血中MGの系統的な測定が、癌を診断及びステージングするための、及び予後評価のための有能なツールであることを意味する。
【0122】
実施例8:動物実験におけるMG血中レベル及び腫瘍の体積
図5は、PROb腫瘍形成性結腸癌細胞の移植後のBD-IXラットにおけるMG血中レベルの時間的変化を示し、
図6は、REGb非腫瘍形成性結腸癌細胞の移植後のBD-IXラットにおけるMG血中レベルの時間的変化を開示する。これらのデータから実証されるように、PROb腫瘍細胞をグラフトしたラットにおいて、MG血中レベルと腫瘍の体積との間には、はっきりとした統計的に有意な正の相関がある。対照的に、REGb腫瘍細胞を移植したが、グラフトが定着できないラットにおいては、移植後4週目の一過的な増大後のMG血中レベルは更に検出することができなかった。このことは、腫瘍グラフトが定着しなかった動物においては、循環MG量の有意な増大は証明されないことを意味する。この実験は、増殖中の腫瘍が、増殖していない腫瘍よりも高いMG血中レベルに有意に関連付けられること、すなわち増殖性の癌細胞が非増殖性の癌細胞又は正常細胞よりも多い循環MG量を産生及び放出することを示す。このことは、MG血中レベルの増大が癌患者において検出可能である一方、癌でない被検者、より正確には活発に増殖する癌のない被検者においては、よりMG血中レベルが有意に低いか、又はMG血中レベルが検出されないことの理由さえ説明する。
【0123】
実施例9:治療した癌患者において取得した臨床的応答ごとのMG血中レベルの平均値及び極値(μM)
表3に示すように、癌を治療した複数の患者の長期的研究は、抗癌治療後の完全な応答について臨床的に評価された患者が正常なMG血中レベルと関連付けられた一方、治療に応答しなかった患者又は治療後に部分的な応答又は安定な疾患を有していた患者は、MG血中レベルの高止まりを示した。よって、癌患者では、MGは、疾患の進展及び治療応答のマーカーである。しかしながら、現在入手可能なバイオマーカー及び応答を評価するためのイメージング技術を用いることによって、治療に完全に応答すると考えられた複数の患者では、なお検出可能な血中MGレベルの増大が見られ、更に、それらのレベルが早期の腫瘍再発に関連付けられた。この発見は、治療した癌患者におけるMG検出が、腫瘍治療に対する応答の評価のための、古典的なバイオマーカー及び/又はイメージング技術に基づく現在利用可能な臨床的アプローチと比べてより良好なツールであり得ることを強く示唆している。
【0124】
実施例10:癌患者、正常な被検者及び治療を受けた2型糖尿病患者のMG/G指数
図4で示すように、血中において測定したMG/G指数は、健常な被検者及び血糖正常治療を受けた2型糖尿病患者と比べて、癌患者において殆ど2倍有意に増大する。この結果は、糖尿病患者が潜在的にMGをまぎらわしいものとするグルコース調節異常であるにも拘らず、(MG/G指数の低い)癌でない糖尿病患者と区別して、(MG/G指数の高い)癌を患う糖尿病患者を認識することが可能であることを強く示唆する。
【0125】
実施例11:癌患者及び健常な被検者におけるMG血中レベルとBMIとの相関
体重超過/肥満の患者は、癌発生率の有意な増大に関連することが示されているので、癌患者 対 正常な対照において、MG血中レベルとBMIとの相関研究を行った。
【0126】
a. 体重超過/肥満の癌患者におけるMG血中レベル
表4に示すように、体重超過/肥満(BMI>25)の癌患者は、正常な体重(18<BMI<25)の癌患者と比べて、より低い(がなお高い)MG血中レベルに関連付けられる。しかしながら、健常な被検者とは異なり、癌患者では、BMIとMG血中レベルとの統計的に有意な逆相関があり(
図7)、このことは、体重超過/肥満の癌患者における0.1μMより高いMG血中レベルの検出が癌に起因している蓋然性が高いことを意味する。したがって、体重超過/肥満の患者におけるMG測定は正当である。
【0127】
b. 前悪液質又は悪液質の癌患者におけるのMG血中レベル
表4に示すように、18未満のBMI (すなわち、低体重又は悪液質)の癌患者は、正常なBMI (18<BMI<25)の患者よりも有意に高いMG血中レベルである。また、MG血中レベルは、アルブミン血中レベルに有意に逆相関することも見出された(データ示さず)。低アルブミン血症が悪液質に関連付けられることが示されているので、このことは、癌患者において、高いMG血中レベルが悪液質に関連付けられることを間接的に確認する。この結果は、上記したように、癌患者におけるMG血中レベルがBMIと有意に逆相関することを示す一方(
図7B)、健常な被検者においては、MG血中レベル及びBMIは相関しない(
図7A)ことを示す
図7に示されている。
【0128】
低体重-悪液質は、腫瘍の体積及び転移の有無に拘りなく、生存期間の短縮に関連付けられるので、これらのデータは、癌患者におけるMGの反復的な測定が、悪液質を予測及び早期検出し、したがって患者の予後を客観的に評価するための新たなツールを構成することを強く示唆する。
【0129】
実施例12:悪液質関連血中MG対照値の決定
悪液質において、I/G指数は、悪液質の進行度に依存して、25%の症例でそれぞれ増大されているか又は正常であり、50%の症例で低減されており、指数が低ければ悪液質の重篤度はより低い。実際、I/G指数の増大がインスリン抵抗性に関連する一方、I/G指数の低減がβ膵臓細胞によるインスリン分泌不全に関連することは周知である。
図8に示すように、健常な被検者においては、MG血中レベルの値が何であれ、I/G指数は一定であるが、癌患者においては、それはMG血中レベルに有意に逆相関する。上記の考察に基づき(上記参照)、2つの曲線の交点を、癌患者のI/G指数が健常な被検者よりも低くなる臨界点と定義する。この交点は、MG臨界値(いわゆる「悪液質関連MG対照値」)といい、これを超えると、癌患者において、健常な被検者よりも少ないインスリン分泌が起こる。このことは、グラフ上で決定された0.2μMの血中MG対照値がMG臨界値に対応し、これを超えると、癌患者は、悪液質又は重篤な前悪液質になる(
図8)。
膵臓におけるインスリン分泌との比較においてインスリン抵抗性レベルを測定するための、及び、これらの患者における悪液質又は重篤な前悪液質の状態になっていることを客観的に認識するための、癌患者における血中MGの測定は正当なようである。