【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様によれば、
イオン源のイオン化効率を第1の値に設定し、かつ/または減衰装置の減衰係数を第1の値に設定し、かつ/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインを第1の値に設定することと、
第1の物理化学特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングし、第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングし、多次元配列データを取得することと、
多次元配列データの1つ以上のサブセット内で最も強いイオンピークを決定することと、
最も強いイオンピークがイオン検出器もしくはイオン検出システムの飽和を生じさせるか、またはさもなければイオン検出器もしくはイオン検出システムの動作に悪影響を及ぼすか否かを決定することと、を含む質量分析方法であって、
最も強いイオンピークが前記イオン検出器もしくはイオン検出システムの飽和を生じさせるか、またはさもなければイオン検出器もしくはイオン検出システムの動作に悪影響を及ぼすと決定された場合、
(i)イオン源の前記イオン化効率を第2の値に調整し、かつ/または減衰装置の減衰係数を第2の値に調整し、かつ/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインを第2の値に調整することと、
(ii)質量スペクトルデータを取得することであって、イオン源の前記イオン化効率の調整、及び/または減衰装置の減衰係数の調整、及び/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインの調整が、実質的に均等にかつ前記イオンの質量対電荷比に実質的に関係なく、イオン検出器もしくはイオン検出システムによって検出される実質的にすべてのイオン強度を変更する、取得することと、
(iii)イオン源のイオン化効率及び/または減衰装置の減衰係数及び/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインが増加または減少した程度に基づいて、質量スペクトルデータの強度を計測することと、をさらに含む、質量分析方法が提供される。
【0014】
本発明は、質量分析計のダイナミックレンジを拡張する既知の方法及び特に質量分析計のイオン検出システムを改良する。
【0015】
好適な実施形態によれば、2次元ネスト化データは、好ましくは、例えば、質量分析の前にイオン移動度分光計(「IMS」)を用いて、そのイオン移動度によって、イオンを分離することにより生成される。
【0016】
本発明は、より正確な検体の強度の制御を可能とする。これは、複数次元の分離による分離後に検体を対象とすることによって達成される(従来の方法の場合での質量対電荷比による分離のみに基づいて検体を対象にすることとは対照的に)。
【0017】
好適な実施形態による方法により、同じ対象ウィンドウ内の大きな、解消されていない背景イオンからの干渉による関心のある検体イオンの過剰な減衰の可能性が減る。
【0018】
本発明はまた、複数次元の分離間の相関に基づいて、化学的に類似した検体を対象にすることも可能とする。
【0019】
好適な実施形態では、対象イオンは、検体(複数可)の質量対電荷比及びイオン移動度ドリフト時間(「DT」)範囲特性の両方を制限することによって選択される。その強度がイオン検出システムのダイナミックレンジの限界内に調整されるよう、所定の多次元配列データ内の信号のみが制御される。
【0020】
好適な実施形態は、信号減衰の正しい値が、各対象種に対して適用されるより大きい可能性を確保する。例えば、イオン移動度分離のないシステムでは、同重体または名目同重体干渉は、実質的に同じ保持時間(「RT」)で溶出してもよい。従来の手法によれば、減衰装置は、2つの信号の内最大の信号がイオン検出システムのダイナミックレンジ内にあることを確保する。しかし、最大信号は、実際、干渉イオンを含む場合があり、その結果、減衰装置は、検体イオンの不要な減衰を生じさせる。
【0021】
好適な実施形態によれば、イオン移動度分離を加えることで、2つの信号が分離され、検体イオンの質量対電荷比及びドリフト時間(「DT」)の両方に基づいて、正しい減衰係数が適用される。
【0022】
殺虫剤または脂質などの特定の検体群は、特徴的な質量対電荷比及び/またはドリフト時間(「DT」)領域内で溶出してもよい。
【0023】
好適な実施形態によるデータ依存減衰方法は、任意のイオン信号が質量分析計のダイナミックレンジ内のこの領域内に現れるように維持するよう、対象とされてもよい。好適な実施形態による方法は、背景マトリクスイオンが必要な減衰の計算に影響を及ぼさないように除外してもよい。
【0024】
これは、従来の方法では不可能である。
【0025】
質量対電荷比が同じだが、電荷状態が異なる種が、2次元イオン移動度質量対電荷比配列内のまったく別個の帯域にあることが知られている。一価のイオンが、実質的に除外されるよう、この配列内の対象領域を選択することによって、複数の荷電イオンにのみ作用するよう、強度制御がなされてもよい。この場合、質量対電荷比ウィンドウは、分離空間の任意の領域または複数の領域がデータ依存減衰に対して対象とされるよう、イオン移動度ドリフト時間の関数であってもよい。これにより、簡単な半対象化ダイナミック強度補正が提供される。
【0026】
好適な実施形態による方法は、減衰方法を制御するのに用いられる対象種の強度が、特定の質量対電荷比範囲内だけでなく、特定のクロマトグラフ保持時間(「RT」)範囲及び/またはイオン移動度ドリフト時間(「DT」)範囲内でも監視されうるよう、拡張されてもよい。
【0027】
例えば、対象検体のクロマトグラフ保持時間ウィンドウが既知の場合、一連の3次元配列が、各検体に対して決定されてもよい。各配列は、保持時間ウィンドウ、質量対電荷比ウィンドウ及びドリフト時間ウィンドウからなってもよい。各次元内のウィンドウは、従来の手法では得られない高い柔軟度及び特異性を提供する、1つ以上のその他の分離次元の関数であってもよい。
【0028】
GB−2489110(Micromass)は、イオンに2次元分離を行い、特定のイオン移動度及び特定の質量対電荷比を有する特定のイオンを減衰することを開示している。GB−2489110(Micromass)は、均等にかつイオンの質量対電荷比に関係なく、イオン検出器もしくはイオン検出システムによって検出される実質的にすべてのイオン強度を変更するよう、減衰装置の減衰係数を調整することは開示していない。
【0029】
US2010/108879(Micromass)は、一価の背景イオンを除去する問題に関係しており、イオン検出器もしくはイオン検出システムの飽和を回避する問題には関係していない。
【0030】
第1の物理化学特性は、好ましくは、イオン移動度または微分イオン移動度を含む。
【0031】
第2の物理化学特性は、好ましくは、質量、質量対電荷比または飛行時間を含む。
【0032】
第1及び/または第2の物理化学的特性は、質量、質量対電荷比、飛行時間、イオン移動度、微分イオン移動度、保持時間、液体クロマトグラフィー保持時間、ガスクロマトグラフィー保持時間またはキャピラリー電気泳動保持時間を含んでいてもよい。
【0033】
減衰装置の減衰係数を調整するステップは、好ましくは、イオン透過が実質的に0%である期間ΔT
1中の第1の動作モードとイオン透過が>0%である期間ΔT
2中の第2の動作モードとの間で減衰装置を繰り返し切り替えることを含む。
【0034】
減衰装置の減衰係数を調整するステップは、好ましくは、減衰装置の透過または減衰を調整するまたは変化させるために、マークスペース比ΔT
2/ΔT
1を調整することを含む。
【0035】
該方法は、(i)<1Hz、(ii)1〜10Hz、(iii)10〜50Hz、(iv)50〜100Hz、(v)100〜200Hz、(vi)200〜300Hz、(vii)300〜400Hz、(viii)400〜500Hz、(ix)500〜600Hz、(x)600〜700Hz、(xi)700〜800Hz、(xii)800〜900Hz、(xiii)900〜1000Hz、(xiv)1〜2kHz、(xv)2〜3kHz、(xvi)3〜4kHz、(xvii)4〜5kHz、(xviii)5〜6kHz、(xix)6〜7kHz、(xx)7〜8kHz、(xxi)8〜9kHz、(xxii)9〜10kHz、(xxiii)10〜15kHz、(xxiv)15〜20kHz、(xxv)20〜25kHz、(xxvi)25〜30kHz、(xxvii)30〜35kHz、(xxviii)35〜40kHz、(xxix)40〜45kHz、(xxx)45〜50kHz、及び(xxxi)>50kHzの周波数で第1の動作モードと第2の動作モードとの間を切り替えることをさらに含む。
【0036】
1つの実施形態によれば、ΔT
1>ΔT
2である。別の実施形態によれば、ΔT
1≦ΔT
2である。
【0037】
期間ΔT
1は、好ましくは、(i)<0.1μs、(ii)0.1〜0.5μs、(iii)0.5〜1μs、(iv)1〜50μs、(v)50〜100μs、(vi)100〜150μs、(vii)150〜200μs、(viii)200〜250μs、(ix)250〜300μs、(x)300〜350μs、(xi)350〜400μs、(xii)400〜450μs、(xiii)450〜500μs、(xiv)500〜550μs、(xv)550〜600μs、(xvi)600〜650μs、(xvii)650〜700μs、(xviii)700〜750μs、(xix)750〜800μs、(xx)800〜850μs、(xxi)850〜900μs、(xxii)900〜950μs、(xxiii)950〜1000μs、(xxiv)1〜10ms、(xxv)10〜50ms、(xxvi)50〜100ms、及び(xxvii)>100msからなる群から選択される。
【0038】
期間ΔT
2は、好ましくは、(i)<0.1μs、(ii)0.1〜0.5μs、(iii)0.5〜1μs、(iv)1〜50μs、(v)50〜100μs、(vi)100〜150μs、(vii)150〜200μs、(viii)200〜250μs、(ix)250〜300μs、(x)300〜350μs、(xi)350〜400μs、(xii)400〜450μs、(xiii)450〜500μs、(xiv)500〜550μs、(xv)550〜600μs、(xvi)600〜650μs、(xvii)650〜700μs、(xviii)700〜750μs、(xix)750〜800μs、(xx)800〜850μs、(xxi)850〜900μs、(xxii)900〜950μs、(xxiii)950〜1000μs、(xxiv)1〜10ms、(xxv)10〜50ms、(xxvi)50〜100ms、及び(xxvii)>100msからなる群から選択される。
【0039】
減衰装置は、好ましくは、1つ以上の静電レンズを備える。
【0040】
第1の動作モードでは、好ましくは、電圧は、減衰装置の1つ以上の電極に印加され、電圧が、イオンビームを遅らせ、かつ/または屈折させ、かつ/または反射し、かつ/または迂回させるように作用する電界を発生させる。
【0041】
減衰装置の前記減衰係数を調整するステップは、好ましくは、減衰装置をオンとオフに繰り返し切り替えることによって、減衰装置によって前方に透過されるイオンの強度を制御することを含み、減衰装置のデューティサイクルは、イオンの減衰度を制御するために変化し得る。
【0042】
本発明の別の態様によれば、質量分析計であって、
第1の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングする第1の装置と、
第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングする第2の装置と、
イオン検出器もしくはイオン検出システムと、
制御システムと、を備え、この制御システムは、
(i)イオン源のイオン化効率を第1の値に設定し、かつ/または減衰装置の減衰係数を第1の値に設定し、かつ/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインを第1の値に設定し、その後、
(ii)第1の装置内でイオンが第1の物理化学的特性に従って分離またはフィルタリングされ、イオンが第2の物理化学的特性に従って分離またはフィルタリングされ、多次元配列データを取得し、
(iii)多次元配列データの1つ以上のサブセット内で最も強いイオンピークを決定し、
(iv)最も強いイオンピークが、イオン検出器もしくはイオン検出システムの飽和を生じさせるか、またはさもなければイオン検出器もしくはイオン検出システムの動作に悪影響を及ぼすか否かを決定するように配置及び適合され、
最も強いイオンピークがイオン検出器もしくはイオン検出システムの飽和を生じさせるか、またはさもなければイオン検出器もしくはイオン検出システムの動作に悪影響を及ぼすと決定された場合、制御システムが、
(v)イオン源のイオン化効率を第2の値に調整し、かつ/または減衰装置の減衰係数を第2の値に調整し、かつ/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインを第2の値に調整し、
(vi)イオン源のイオン化効率の調整、及び/または減衰装置の減衰係数の調整、及び/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインの調整が、実質的に均等にかつイオンの質量対電荷比に実質的に関係なく、イオン検出器もしくはイオン検出システムによって検出される実質的にすべてのイオン強度を変更する、質量スペクトルデータを取得し、
(vii)イオン源のイオン化効率及び/または減衰装置の減衰係数及び/またはイオン検出器もしくはイオン検出システムのゲインが増加または減少した程度に基づいて、質量スペクトルデータの強度を計測するようにさらに配置及び適合される、質量分析計が提供される。
【0043】
第1の装置は、好ましくは、イオン移動度または微分イオン移動度分離器またはフィルターを備える。
【0044】
第2の装置は、好ましくは、質量、質量対電荷比、または飛行時間分離器またはフィルターを備える。
【0045】
第1及び/または第2の装置は、質量、質量対電荷比、飛行時間、イオン移動度、微分イオン移動度、保持時間、液体クロマトグラフィー保持時間、ガスクロマトグラフィー保持時間またはキャピラリー電気泳動保持時間分離器またはフィルターを備えてもよい。
【0046】
制御システムは、好ましくは、イオン透過が実質的に0%である期間ΔT
1中の第1の動作モードとイオン透過が>0%である期間ΔT
2中の第2の動作モード間で減衰装置を繰り返し切り替えることにより、減衰装置の減衰係数を調整するように配置及び適合される。
【0047】
制御システムは、好ましくは、減衰装置の透過または減衰を調整するまたは変化させるために、マークスペース比ΔT
2/ΔT
1を調整することにより、減衰装置の減衰係数を調整するように配置及び適合される。
【0048】
制御システムは、好ましくは、(i)<1Hz、(ii)1〜10Hz、(iii)10〜50Hz、(iv)50〜100Hz、(v)100〜200Hz、(vi)200〜300Hz、(vii)300〜400Hz、(viii)400〜500Hz、(ix)500〜600Hz、(x)600〜700Hz、(xi)700〜800Hz、(xii)800〜900Hz、(xiii)900〜1000Hz、(xiv)1〜2kHz、(xv)2〜3kHz、(xvi)3〜4kHz、(xvii)4〜5kHz、(xviii)5〜6kHz、(xix)6〜7kHz、(xx)7〜8kHz、(xxi)8〜9kHz、(xxii)9〜10kHz、(xxiii)10〜15kHz、(xxiv)15〜20kHz、(xxv)20〜25kHz、(xxvi)25〜30kHz、(xxvii)30〜35kHz、(xxviii)35〜40kHz、(xxix)40〜45kHz、(xxx)45〜50kHz、及び(xxxi)>50kHzの周波数で第1の動作モードと第2の動作モードとの間を切り替えるように配置及び適合される。
【0049】
1つの実施形態によれば、ΔT
1>ΔT
2である。別の実施形態によれば、ΔT
1≦ΔT
2である。
【0050】
期間ΔT
1は、好ましくは、(i)<0.1μs、(ii)0.1〜0.5μs、(iii)0.5〜1μs、(iv)1〜50μs、(v)50〜100μs、(vi)100〜150μs、(vii)150〜200μs、(viii)200〜250μs、(ix)250〜300μs、(x)300〜350μs、(xi)350〜400μs、(xii)400〜450μs、(xiii)450〜500μs、(xiv)500〜550μs、(xv)550〜600μs、(xvi)600〜650μs、(xvii)650〜700μs、(xviii)700〜750μs、(xix)750〜800μs、(xx)800〜850μs、(xxi)850〜900μs、(xxii)900〜950μs、(xxiii)950〜1000μs、(xxiv)1〜10ms、(xxv)10〜50ms、(xxvi)50〜100ms、及び(xxvii)>100msからなる群から選択される。
【0051】
期間ΔT
2は、好ましくは、(i)<0.1μs、(ii)0.1〜0.5μs、(iii)0.5〜1μs、(iv)1〜50μs、(v)50〜100μs、(vi)100〜150μs、(vii)150〜200μs、(viii)200〜250μs、(ix)250〜300μs、(x)300〜350μs、(xi)350〜400μs、(xii)400〜450μs、(xiii)450〜500μs、(xiv)500〜550μs、(xv)550〜600μs、(xvi)600〜650μs、(xvii)650〜700μs、(xviii)700〜750μs、(xix)750〜800μs、(xx)800〜850μs、(xxi)850〜900μs、(xxii)900〜950μs、(xxiii)950〜1000μs、(xxiv)1〜10ms、(xxv)10〜50ms、(xxvi)50〜100ms、及び(xxvii)>100msからなる群から選択される。
【0052】
減衰装置は、好ましくは、1つ以上の静電レンズを備える。
【0053】
第1の動作モードで、制御システムは、好ましくは、電圧を減衰装置の1つ以上の電極に印加させ、電圧が、イオンビームを遅らせ、かつ/または屈折させ、かつ/または反射し、かつ/または迂回させるように作用する電界を発生させる。
【0054】
制御システムは、好ましくは、減衰装置をオンとオフに繰り返し切り替えることによって、減衰装置によって前方に透過されるイオンの強度を制御することにより、減衰装置の減衰係数を調整するように配置及び適合され、減衰装置のデューティサイクルは、イオンの減衰度を制御するために変化し得る。
【0055】
本発明の別の態様によれば、質量分析方法であって、
第1の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングすることと、
第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングすることと、
イオン検出器または質量分析計のその他の構成要素の飽和を回避するために、第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御または変更することと、を含む、質量分析方法が提供される。
【0056】
第1の物理化学特性は、好ましくは、イオン移動度または微分イオン移動度を含む。
【0057】
第2の物理化学特性は、好ましくは、質量、質量対電荷比または飛行時間を含む。
【0058】
第1及び/または第2の物理化学的特性は、好ましくは、質量、質量対電荷比、飛行時間、イオン移動度、微分イオン移動度、保持時間、液体クロマトグラフィー保持時間、ガスクロマトグラフィー保持時間またはキャピラリー電気泳動保持時間を含む。
【0059】
第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御及び変更するステップは、好ましくは、(i)減衰レンズの減衰係数を制御することと、(ii)イオン検出システムのゲインを調整することと、(iii)質量分析計の透過を調整することと、(iv)イオン源のイオン化効率を調整することと、(v)質量分析計内のイオンの透過または反応の程度を調整することと、または(vi)質量分析計のデューティサイクルを調整することを含む。
【0060】
該方法は、好ましくは、第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度が制御または変更される程度に応じて質量スペクトルデータの強度を計測することをさらに含む。
【0061】
該方法は、好ましくは、第3の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングすることをさらに含み、イオン検出器または質量分析計のその他の構成要素の飽和を回避するために、イオンの強度を制御または変更するステップが、第1の範囲内の第1の物理化学的特性と、第2の範囲内の第2の物理化学的特性と、第3の範囲内の第3の物理化学的特性とを有するイオンの強度を制御または変更することをさらに含む。
【0062】
本発明の別の態様によれば、質量分析計であって、
第1の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングする第1の装置と、
第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングする第2の装置と、
イオン検出器と、
制御システムであって、
(i)イオン検出器または質量分析計のその他の構成要素の飽和を回避するために、第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御または変更するように配置及び適合される、制御システムと、を備える、質量分析計が提供される。
【0063】
第1の装置は、好ましくは、イオン移動度または微分イオン移動度分離器またはフィルターを備える。
【0064】
第2の装置は、好ましくは、質量、質量対電荷比、または飛行時間分離器またはフィルターを備える。
【0065】
第1及び/または第2の装置は、好ましくは、質量、質量対電荷比、飛行時間、イオン移動度、微分イオン移動度、保持時間、液体クロマトグラフィー保持時間、ガスクロマトグラフィー保持時間またはキャピラリー電気泳動保持時間分離器またはフィルターを備える。
【0066】
制御システムは、好ましくは、(i)減衰レンズの減衰係数を制御することと、(ii)イオン検出システムのゲインを調整することと、(iii)質量分析計の透過を調整することと、(iv)イオン源のイオン化効率を調整することと、(v)質量分析計内のイオンの透過または反応の程度を調整することと、または(vi)質量分析計のデューティサイクルを調整することによって、第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御及び変更するように配置及び適合される。
【0067】
制御システムは、好ましくは、第1の範囲内の第1の物理化学的特性及び第2の範囲内の第2の物理化学的特性を有するイオンの強度が制御または変更される程度に応じて質量スペクトルデータの強度を計測するように配置及び適合される。
【0068】
質量分析計は、好ましくは、第3の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングする第3の装置をさらに含み、イオン検出器または質量分析計のその他の構成要素の飽和を回避するために、制御システムが、第1の範囲内の第1の物理化学的特性と、第2の範囲内の第2の物理化学的特性と、第3の範囲内の第3の物理化学的特性とを有するイオンの強度を制御または変更するように配置及び適合される第3の装置をさらに含む。
【0069】
本発明の別の態様によれば、質量分析方法であって、
少なくとも第1及び第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングすることと、
質量分析計の構成要素が必要なダイナミックレンジ内で動作するよう、特定の第1及び第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御または変更することと、を含む、質量分析方法が提供される。
【0070】
該構成要素は、好ましくは、イオン源、質量分析計またはイオン検出システムを備える。
【0071】
本発明の別の態様によれば、質量分析計であって、
少なくとも第1及び第2の物理化学的特性に従ってイオンを分離またはフィルタリングするように配置及び適合された装置と、
質量分析計の構成要素が必要なダイナミックレンジ内で動作するように、特定の第1及び第2の物理化学的特性を有するイオンの強度を制御または変更するように配置及び適合された制御システムと、を備える、質量分析計が提供される。
【0072】
該構成要素は、好ましくは、イオン源、質量分析計またはイオン検出システムを備える。
【0073】
本発明の別の態様によれば、質量分析方法であって、
多次元配列データを取得することと、
多次元配列データのサブセット内で最も強いイオンピークを決定し、それに応じて、イオンの強度とイオン検出器のゲインを増加または減少させることと、
イオンの強度とイオン検出器のゲインが増加または減少した程度に基づいて、その後の多次元データの強度を計測することと、を含む、質量分析方法が提供される。
【0074】
本発明の別の態様によれば、質量分析計であって、
制御システムであって、
(i)多次元配列データを取得し、
(ii)多次元配列データのサブセット内で最も強いイオンピークを決定し、それに応じて、イオンの強度とイオン検出器のゲインを増加または減少させ、
(iii)イオンの強度とイオン検出器のゲインが増加または減少した程度に基づいて、その後の多次元データの強度を計測するように配置及び適合される、制御システムを備える、質量分析計が提供される。
【0075】
本発明の1つの態様によれば、質量分析計のダイナミックレンジを拡張する方法であって、
(i)第1の期間内での複数の実質的に直交の分離方法、または複数の実質的に直交の分離方法によってイオンが分離された多次元配列データまたは複数の配列データを収集すること、
(ii)所定の領域または配列及び/または複数の前の配列の領域内の信号の強度に基づいて、質量分析計の運転パラメータを調整して、信号の強度を変更する必要があるかを決定すること、
(iii)所定の範囲(複数可)内の最大信号が、第2の次の期間でのデータの取得中に、検出器またはデータ記録システムのダイナミックレンジ内にあるように、第2の期間内の信号強度が変化されるように、質量分析計の運転パラメータを調整すること、
(iv)質量分析計の運転パラメータの既知の変化または状態に基づいて、次の多次元配列データの強度を計測することによって、質量分析計のダイナミックレンジを拡張する方法が提供される。
【0076】
好適な実施形態では、多次元配列は、第1の分離次元が質量対電荷比で、第2の次元がイオン移動度ドリフト時間(「DT」)である、2次元配列データを含む。
【0077】
運転パラメータは、最大ピークの強度がイオン検出システムのダイナミックレンジ内に留まるように、該強度が減少(または増加)されるように、調整されてもよい。
【0078】
運転パラメータは、好ましくは、質量分析計またはイオンの、イオン検出器への透過が、質量対電荷比及び/またはドリフト時間配列の所定のまたは対象となる領域内のピークの強度に基づいて調整されるように、イオン検出器の上流に配置された減衰レンズである。
【0079】
しかし、その他の運転パラメータは、同じ効果を与えるよう調整されてもよい。例えば、イオン検出器のゲインまたはイオン源のイオン化効率または衝突エネルギーをすべて用いて、強度を調整してもよい。
【0080】
1つの実施形態によれば、質量分析計は、
(a)イオン源であって、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリクス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)フィールドイオン化(「FI」)イオン源、(xi)フィールド脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源イオン源、(xvii)大気圧マトリクス支援レーザー脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気圧サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、(xx)グロー放電(「GD」)イオン源、(xxi)インパクタイオン源、(xxii)リアルタイム直接質量分析(「DART」)イオン源、(xxiii)レーザースプレーイオン化(「LSI」)イオン源、(xxiv)ソニックスプレーイオン化(「SSI」)イオン源、(xxv)マトリクス支援流入イオン化(「MAII」)イオン源、及び(xxvi)溶媒支援流入イオン化(「SAII」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、及び/または、
(b)1つ以上の連続またはパルス状イオン源、及び/または、
(c)1つ以上のイオンガイド、及び/または
(d)1つ以上のイオン移動度分離装置及び1つ以上の非対称場イオン移動度分光計装置、及び/または、
(e)1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラップ領域、及び/または、
(f)1つ以上の衝突、断片化、または反応セルであって、(i)衝突誘起解離(「CID」)断片化装置、(ii)表面誘起解離(「SID」)断片化装置、(iii)電子移動解離(「ETD」)断片化装置、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)断片化装置、(v)電子衝突または衝撃解離断片化装置、(vi)光誘起解離(「PID」)断片化装置、(vii)レーザー誘起解離断片化装置、(viii)赤外線放射誘起解離装置、(ix)紫外線放射誘起解離装置、(x)ノズル−スキマーインターフェイス断片化装置、(xi)インソース断片化装置、(xii)インソース衝突誘起解離断片化装置、(xiii)熱源または温源断片化装置、(xiv)電界誘起断片化装置、(xv)磁界誘起断片化装置、(xvi)酵素消化または酵素分解断片化装置、(xvii)イオン−イオン反応断片化装置、(xviii)イオン−分子反応断片化装置、(xix)イオン−原子反応断片化装置、(xx)イオン−準安定原子反応断片化装置、(xxi)イオン−準安定原子分子反応断片化装置、(xxii)イオン−準安定原子反応断片化装置、(xxiii)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxv)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、(xxvii)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子分子反応装置、(xxviii)イオンを反応させ、付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、及び(xxix)電子イオン化解離(「EID」)断片化装置からなる群から選択されるセル、及び/または、
(g)質量分析器であって、(i)四極子質量分析器、(ii)2次元または直線四極子質量分析器、(iii)ポール3次元四極子質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)四対数電位分布を有する静電場を生成するように配置された静電質量分析器、(x)フーリエ変換静電質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間質量分析器、及び(xiv)直線加速飛行時間質量分析器からなる群から選択される質量分析器、及び/または
(h)1つ以上のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器、及び/または、
(i)1つ以上のイオン検出器、及び/または、
(j)1つ以上の質量フィルターであって、(i)四極子質量フィルター、(ii)2次元または直線四極子イオントラップ、(iii)ポール3次元四極子イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルター、(vii)飛行時間質量フィルター、及び(viii)ウィーンフィルターからなる群から選択される、質量フィルター、及び/または、
(k)イオンをパルス化する装置またはイオンゲート、及び/または、
(l)実質的に連続するイオンビームをパルス状のイオンビームに変換する装置をさらに備えてもよい。
【0081】
質量分析計は、
(i)四対数電位分布で静電場を形成する外部の樽状電極と同軸内部のスピンドル状電極を備えるCトラップ及び質量分析器であって、第1の動作モードで、イオンが、Cトラップに透過され、次に質量分析器に注入され、第2の動作モードで、イオンが、Cトラップに透過され、次に衝突セルまたは電子移動解離装置に透過され、少なくとも一部のイオンが断片イオンに断片化され、次に、質量分析器に注入される前に、断片イオンがCトラップに透過される、Cトラップ及び質量分析器、及び/または、
(ii)使用時、イオンがそれを通って透過される開口部をそれぞれが有する複数の電極を備える積層リングイオンガイドであって、電極の間隔がイオン経路の長さに沿って増加し、イオンガイドの上流にある電極内の開口部が、第1の直径を有し、イオンガイドの下流にある電極内の開口部が、第1の直径よりも小さい第2の直径を有し、使用時、ACまたはRF電圧の逆位相が連続する電極に印加される、積層リングイオンガイドのいずれかをさらに備えてもよい。
【0082】
1つの実施形態によれば、質量分析計は、電極にACまたはRF電圧を印加するように配置及び適合される装置をさらに備えてもよい。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、及び(x)450〜500Vピークトゥピーク、(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有する。
【0083】
ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する。
【0084】
質量分析計はまた、イオン源の上流にあるクロマトグラフィーまたはその他の分離装置も備えてもよい。1つの実施形態によれば、クロマトグラフィー分離装置は、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィー装置を備える。別の実施形態によれば、分離装置は、(i)キャピラリー電気泳動(「CE」)分離装置、(ii)キャピラリー電気クロマトグラフィー(「CEC」)分離装置、(iii)実質的に固定されたセラミックベースの多層マイクロ流体基板(「セラミックタイル」)分離装置、または(iv)超臨界流体クロマトグラフィー分離装置を備えてもよい。
【0085】
イオンガイドは、好ましくは、(i)<0.0001mbar、(ii)0.0001〜0.001mbar、(iii)0.001〜0.01mbar、(iv)0.01〜0.1mbar、(v)0.1〜1mbar、(vi)1〜10mbar、(vii)10〜100mbar、(viii)100〜1000mbar、及び(ix)>1000mbarからなる群から選択される圧力で維持される。