(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543203
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】窒素含有鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/00 20060101AFI20190628BHJP
C21C 7/04 20060101ALI20190628BHJP
C21C 7/072 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
C21C7/00 B
C21C7/00 101Z
C21C7/04 B
C21C7/072 J
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-27944(P2016-27944)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-145455(P2017-145455A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日鉄日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋輝
(72)【発明者】
【氏名】水本 洸太
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−137413(JP,A)
【文献】
特開2000−26913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有合金を溶鋼に投入して前記溶鋼の窒素成分を調整すること、及び
前記窒素含有合金による窒素成分の調整後に、大気圧下において上吹き浸漬ノズルで前記溶鋼に窒素ガスを吹き込むこと
を含むことを特徴とする窒素含有鋼の製造方法。
【請求項2】
前記上吹き浸漬ノズルで前記溶鋼に窒素ガスを吹き込むとき、前記上吹き浸漬ノズルの先端が前記溶鋼の表面から60cm以上の深さに位置するように、前記上吹き浸漬ノズルが前記溶鋼に浸漬される
ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有鋼の製造方法。
【請求項3】
窒素含有鋼として窒素含有ステンレス鋼を製造する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素含有鋼の製造方法。
【請求項4】
前記窒素含有合金は、大気圧下で前記溶鋼に投入され、
前記窒素含有合金が投入された前記溶鋼は、26kPa以上かつ40kPa以下の気圧下でガス攪拌される
ことを特徴とする請求項3記載の窒素含有鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素を含有する鋼を製造する窒素含有鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の窒素含有鋼の製造方法としては、ステンレス鋼を例にすると下記の特許文献1等に示されている方法を挙げることができる。すなわち、従来方法では、高窒素成分の鋼種を溶製するとき、窒素含有合金を溶鋼に投入して加窒を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−144195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来方法では、窒素含有合金を溶鋼に投入して加窒を行っている。しかしながら、窒素含有合金からの窒素ガスの発生は不安定であり、上記のような従来方法を採ると溶鋼中の窒素成分にばらつきが生じることがある。鋼中の窒素を微調整するために、取鍋の底部から溶鋼に窒素ガスを吹き込むことも考えられるが、取鍋の底部からの窒素ガスの吹き込みでは、大量の窒素ガスを短時間で溶鋼に吹き込むことができず、鋼中の窒素成分の制御に長時間を要する。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より短い時間で溶鋼中の窒素成分にばらつきを抑えることができる窒素含有鋼の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る窒素含有鋼の製造方法は、窒素含有合金を溶鋼に投入して溶鋼の窒素成分を調整すること、及び窒素含有合金による窒素成分の調整後に、大気圧下において上吹き浸漬ノズルで溶鋼に窒素ガスを吹き込むことを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の窒素含有鋼の製造方法によれば、窒素含有合金による窒素成分の調整後に、大気圧下において上吹き浸漬ノズルで溶鋼に窒素ガスを吹き込むので、より短い時間で溶鋼中の窒素成分にばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1による窒素含有鋼の製造方法を示す工程図である。
【
図2】
図1の窒素成分調整工程で用いられる加窒設備を示す説明図である。
【
図3】
図2の上吹き浸漬ノズルの浸漬深さと加窒歩留との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による窒素含有鋼の製造方法を示す工程図である。
図1に示すように、本実施の形態の窒素含有鋼の製造方法は、窒素含有鋼として窒素含有ステンレス鋼を製造する方法であり、脱炭工程S1、窒素含有合金投入工程S2、ガス攪拌工程S3、サンプリング工程S4、窒素成分調整工程S5及び出鍋工程S6を含んでいる。
【0010】
脱炭工程S1は、例えば真空脱ガス処理等により行われるものであり、溶鋼から炭素成分を除く工程である。
【0011】
窒素含有合金投入工程S2は、脱炭が行われた溶鋼に対して窒素含有合金を投入する工程である。溶鋼に投入された窒素含有合金から窒素ガスが発生し溶鋼に窒素が取り込まれることで、溶鋼が加窒される。
【0012】
窒素含有合金としては、例えば窒化クロム(N:約3質量%)、窒化マンガン(N:約7質量%)、窒化珪素鉄(N:約30質量%)等を用いることができる。特に、窒化珪素鉄が多量の窒素を含有しているとともに比較的安価であることから、窒素含有合金として窒化珪素鉄を用いることが好ましい。
【0013】
ガス攪拌工程S3は、溶鋼に窒素含有合金が投入された後に、溶鋼及び窒素含有合金をガスにより攪拌する工程である。攪拌用のガスとしては、例えばアルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
【0014】
これら窒素含有合金投入工程S2及びガス攪拌工程S3は、窒素含有合金による溶鋼の窒素成分の粗調整を構成している。この粗調整では、窒素含有合金が大気圧下で溶鋼に投入され、窒素含有合金が投入された溶鋼が26kPa以上かつ40kPa以下(約200Torr〜300Torr)の弱真空の気圧下でガス攪拌されることが好ましい。窒素含有合金が大気圧下で溶鋼に投入されることで、窒素含有合金から窒素ガスが急激に発生して、取鍋から溶鋼が溢れ出ることを回避することができる。また、弱真空の気圧下でガス攪拌することで、溶鋼から窒素ガスが抜け出ることを抑えつつ攪拌効率の向上を図ることができる。
【0015】
サンプリング工程S4は、窒素含有合金による窒素成分の粗調整が行われた溶鋼の成分をサンプリング調査する工程である。この工程において、取鍋中の溶鋼の窒素成分と目標窒素成分との差が得られる。
【0016】
窒素成分調整工程S5は、窒素含有合金による窒素成分の粗調整が行われた後に、溶鋼に窒素ガスを吹き込む工程である。吹き込まれた窒素ガスが溶鋼に取り込まれることで、溶鋼の窒素成分と目標窒素成分との差を埋めるように、溶鋼の窒素成分が微調整される。
【0017】
出鍋工程S6は、窒素成分が微調整された溶鋼を次の処理工程へ移動する工程である。次の処理工程としては、例えば連続鋳造設備による連続鋳造工程等が挙げられる。
【0018】
次に、
図2は、
図1の窒素成分調整工程S5で用いられる加窒設備を示す説明図である。
図2に示すように、加窒設備には、収容容器1、ノズル保持台車2及び上吹き浸漬ノズル3が設けられている。
【0019】
収容容器1は、溶鋼が溜められた取鍋4を収容する容器である。ノズル保持台車2は、収容容器1の上部開口を覆うように移動可能に設けられた台車であり、上吹き浸漬ノズル3を上下方向に変位可能に保持している。
【0020】
上吹き浸漬ノズル3は、先端3aから窒素ガスを吹き出すノズルであり、取鍋4の上部開口から先端3aが溶鋼に浸漬される。この上吹き浸漬ノズル3からの窒素ガスの吹き出し量は周知の取鍋の底部からの窒素ガスの吹き出し量よりも多い。上吹き浸漬ノズル3の先端3aが溶鋼に浸漬されることで、溶鋼中の窒素ガスの滞在時間が長くなり、より短い時間で溶鋼を加窒することができる。また、本実施の形態の窒素含有鋼の製造方法では、上吹き浸漬ノズル3から溶鋼への窒素ガスの吹き込みは大気圧下で行われる。大気圧下で窒素ガスの吹き込みが行われることで、大気圧よりも低い圧力下で窒素ガスの吹き込みを行う場合と比較して、溶鋼の平衡窒素値を上昇させ、加窒素歩留および到達窒素値を向上させることができる。
【0021】
次に、
図3は、
図2の上吹き浸漬ノズル3の浸漬深さと加窒歩留との関係を示すグラフである。
図3の横軸は溶鋼の表面からの上吹き浸漬ノズル3の先端3aの深さ3b(浸漬深さ)(
図2参照)を示し、
図3の縦軸は加窒歩留を示している。加窒歩留は、上吹き浸漬ノズル3から吹き出された窒素ガスが溶鋼に取り込まれた割合を示している。
【0022】
図3に示すように、上吹き浸漬ノズル3の溶鋼表面からの浸漬深さが60cmに達すると、平均約80%の加窒歩留を得ることができる。このため、上吹き浸漬ノズル3で溶鋼に窒素ガスを吹き込むとき、上吹き浸漬ノズル3の先端が溶鋼の表面から60cm以上の深さに位置するように、上吹き浸漬ノズル3が溶鋼に浸漬されることが好ましい。
【0023】
このような窒素含有鋼の製造方法では、窒素含有合金による窒素成分の調整後に、大気圧下において上吹き浸漬ノズル3で溶鋼に窒素ガスを吹き込むので、より短い時間で溶鋼中の窒素成分にばらつきを抑えることができる。
【0024】
また、上吹き浸漬ノズル3で溶鋼に窒素ガスを吹き込むとき、上吹き浸漬ノズル3の先端3aが溶鋼の表面から60cm以上の深さに位置するように、上吹き浸漬ノズル3が溶鋼に浸漬されるので、良好な加窒歩留を得ることができ、より短い時間で溶鋼中の窒素成分にばらつきを抑えることができる。
【0025】
さらに、窒素含有合金が大気圧下で溶鋼に投入され、窒素含有合金が投入された溶鋼が26kPa以上かつ40kPa以下の気圧下でガス攪拌されるので、取鍋から溶鋼が溢れ出ることを回避することができるとともに、攪拌効率の向上を図ることができる。
【0026】
なお、実施の形態では、窒素成分調整工程S5において上吹き浸漬ノズル3のみで溶鋼に窒素ガスを吹き込むように説明しているが、上吹き浸漬ノズルに加えて取鍋の底部から溶鋼に窒素ガスをさらに吹き込んでもよい。
【0027】
また、実施の形態では、窒素含有鋼として窒素含有ステンレス鋼を製造するように説明しているが、窒素を含有する特殊鋼等のステンレス鋼以外の窒素含有鋼にも本発明を適用できる。