特許第6543209号(P6543209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543209
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】調湿材及び調湿システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20190628BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20190628BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20190628BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20190628BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20190628BHJP
   B01J 20/18 20060101ALN20190628BHJP
   B01J 20/28 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   F24F3/14
   F24F7/10 Z
   E04B1/64 D
   E04B1/70 D
   B01D53/28
   !B01J20/18 E
   !B01J20/28 A
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-59421(P2016-59421)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-170344(P2017-170344A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−107073(JP,A)
【文献】 特開2001−149735(JP,A)
【文献】 特開2007−181795(JP,A)
【文献】 特開2003−114067(JP,A)
【文献】 特開2009−109143(JP,A)
【文献】 特開2012−035256(JP,A)
【文献】 特開2012−012267(JP,A)
【文献】 特開2002−001106(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F
B01D 53/26−28
E04B 1/64
E04B 1/70
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿された空気を居室に供給するための調湿システムであって、
内部に調湿材が収容されたチャンバー、
前記チャンバーに空気を供給する空気供給路、
前記チャンバーを通過した空気を前記居室に供給する換気路、並びに
前記空気供給路、及び、前記換気路を制御する制御装置を含み、
前記調湿材は、第1吸着材と、前記第1吸着材とは水蒸気の吸着性能が異なる第2吸着材とを含み、
前記第1吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.09kg/kg以上であり、
前記第2吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.2での吸着量が0.05kg/kg以上、相対蒸気圧0.5での吸着量が0.13kg/kg以上、及び、相対蒸気圧0.9での吸着量が0.21kg/kg以上であり、
前記チャンバーは、実質的に同一仕様を有する第1チャンバー及び第2チャンバーを含み、
前記空気供給路は、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーに相対湿度の高い空気を供給する第1空気供給路、並びに
前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーに相対湿度の低い空気を供給する第2空気供給路を含み、
前記制御装置は、前記第1空気供給路を制御して、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーの一方に前記相対湿度の高い空気を供給し、そのチャンバーの前記調湿材に空気中の水蒸気を吸着させる吸湿モード、並びに
前記第2空気供給路を制御して、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーの他方に 前記相対湿度の低い空気を供給し、そのチャンバーの前記調湿材が保持する水蒸気を空気中に放出させる放湿モードを、並列して行わせるものであり、
しかも、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーのそれぞれにおいて、前記吸湿モードと前記放湿モードとが交互に繰り返されて、加湿された空気が実質的に連続して前記居室に供給されるとともに、前記吸湿モード時の風量が前記放湿モード時の風量よりも大きいことを特徴とする調湿システム
【請求項2】
前記第2吸着材は、吸着材全重量に対して20%〜80%含まれる請求項1記載の調湿システム
【請求項3】
前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーのそれぞれにおいて、前記吸湿モードでの前記調湿材の水蒸気の吸着量と、前記放湿モードでの前記調湿材の水蒸気の放出量との差が10%以下とされている請求項1又は2記載の調湿システム
【請求項4】
前記第1空気供給路には、外気が供給され、
前記第2空気供給路には、空気調和機で暖められた空気が供給される請求項1ないし3のいずれかに記載の調湿システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる水蒸気を吸着及び放出しうる調湿材及び調湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の居室の壁面に、珪藻土等を用いた調湿パネルが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。この調湿パネルは、空気中に含まれる水蒸気を吸着し、また、放出しうる吸着材を含有している。これにより、調湿パネルは、例えば、居室の空気の相対湿度(即ち、相対蒸気圧)が高い場合、その水蒸気を吸収することができる。また、居室の空気の相対湿度が低い場合、調湿パネルに吸着されている水蒸気が、空気中に放出される。従って、調湿パネルは、居室の空気を調湿することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−76494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着材の水蒸気の吸着量は、空気中の相対蒸気圧に応じて変動する。従って、特定の相対蒸気圧によっては、吸着材が水蒸気を十分に吸着又は放出することができない場合があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮しうる調湿材及び調湿システムを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、加湿された空気を居室に供給するための調湿システムであって、内部に調湿材が収容されたチャンバー、前記チャンバーに空気を供給する空気供給路、前記チャンバーを通過した空気を居室に供給する換気路、並びに前記空気供給路、及び、前記換気路を制御する制御装置を含み、前記調湿材は、第1吸着材と、前記第1吸着材とは水蒸気の吸着性能が異なる第2吸着材とを含み、前記第1吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.09kg/kg以上であり、前記第2吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.2での吸着量が0.05kg/kg以上、相対蒸気圧0.5での吸着量が0.13kg/kg以上、及び、相対蒸気圧0.9での吸着量が0.21kg/kg以上であり、前記チャンバーは、実質的に同一仕様を有する第1チャンバー及び第2チャンバーを含み、前記空気供給路は、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーに相対湿度の高い空気を供給する第1空気供給路、並びに前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーに相対湿度の低い空気を供給する第2空気供給路を含み、前記制御装置は、前記第1空気供給路を制御して、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーの一方に前記相対湿度の高い空気を供給し、そのチャンバーの前記調湿材に空気中の水蒸気を吸着させる吸湿モード、並びに前記第2空気供給路を制御して、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーの他方に前記相対湿度の低い空気を供給し、そのチャンバーの前記調湿材が保持する水蒸気を空気中に放出させる放湿モードを、並列して行わせるものであり、しかも、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーのそれぞれにおいて、前記吸湿モードと前記放湿モードとが交互に繰り返されて、加湿された空気が実質的に連続して前記居室に供給されるとともに、前記吸湿モード時の風量が前記放湿モード時の風量よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記第2吸着材は、吸着材全重量に対して20%〜80%含まれるのが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記第1チャンバー及び前記第2チャンバーのそれぞれにおいて、前記吸湿モードでの前記調湿材の水蒸気の吸着量と、前記放湿モードでの前記調湿材の水蒸気の放出量との差が10%以下とされているのが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記第1空気供給路には、外気が供給され、前記第2空気供給路には、空気調和機で暖められた空気が供給されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1の発明の調湿材は、吸着材を含んでいる。吸着材は、第1吸着材と、第1吸着材とは水蒸気の吸着性能が異なる第2吸着材とを含んでいる。
【0016】
第1吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.09kg/kg以上である。このような第1吸着材は、相対蒸気圧が0.2〜0.3となる低湿時において、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。
【0017】
一方、第2吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.2での吸着量が0.05kg/kg以上、相対蒸気圧0.5での吸着量が0.13kg/kg以上、及び、相対蒸気圧0.9での吸着量が0.21kg/kg以上である。このような第2吸着材は、相対蒸気圧が0.2となる低湿時から相対蒸気圧が0.9となる高湿時にかけて、水蒸気を吸着又は放出できる。
【0018】
このように、第1吸着材及び第2吸着材は、それぞれ異なる相対蒸気圧において、より多くの水蒸気を吸着又は放出することができるように設定されている。即ち、本願の第1の発明の調湿材は、低湿時の調湿性能を第1吸着材に発揮させ、かつ、中湿時から高湿時の調湿性能を第2吸着材に発揮させうる。従って、本願の第1の発明は、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮しうる。
【0019】
本願の第2の発明の調湿システムは、内部に調湿材が収容されたチャンバー、チャンバーに空気を供給する空気供給路、チャンバーを通過した空気を居室に供給する換気路、並びに、空気供給路及び換気路を制御する制御装置を含んでいる。
【0020】
このような本願の第2の発明は、例えば、相対湿度(即ち、相対蒸気圧)の高い空気をチャンバーに供給して、調湿材に空気中の水蒸気を吸着させうる。また、本願の第2の発明は、例えば、相対湿度の低い空気をチャンバーに供給して、調湿材が保持する水蒸気を空気中に放出させることができる。従って、本願の第2の発明は、加湿された空気を取り出して、居室に供給できる。
【0021】
調湿材は、第1吸着材と、第1吸着材とは水蒸気の吸着性能が異なる第2吸着材とを含んでいる。
【0022】
第1吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.09kg/kg以上である。このような第1吸着材は、相対蒸気圧が0.2〜0.3となる低湿時において、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。
【0023】
第2吸着材は、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.2での吸着量が0.05kg/kg以上、相対蒸気圧0.5での吸着量が0.13kg/kg以上、及び、相対蒸気圧0.9での吸着量が0.21kg/kg以上である。このような第2吸着材は、相対蒸気圧が0.2となる低湿時から相対蒸気圧が0.9となる高湿時にかけて、水蒸気を吸着又は放出できる。
【0024】
このように、第1吸着材及び第2吸着材は、それぞれ異なる相対蒸気圧において、より多くの水蒸気を吸着又は放出することができるように設定されている。即ち、調湿材は、低湿時の調湿性能を第1吸着材に発揮させ、かつ、中湿時から高湿時の調湿性能を第2吸着材に発揮させうる。従って、本願の第2の発明は、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮しうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の調湿材の一例を示す斜視図である。
図2図1の部分断面図である。
図3】第1吸着材及び第2吸着材について、水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線のグラフである。
図4】異なる温度環境下での第1吸着材の平衡含水率曲線のグラフである。
図5】本実施形態に係る調湿システムを換気システムに利用した住宅(建物)の一例を概念的に示す側面図である。
図6】第1チャンバーの斜視図である。
図7】第2チャンバーの斜視図である。
図8】第1チャンバーの一実施形態の縦断面図である。
図9図8のA−A断面図である。
図10】(A)は、図9の第1基材の要部拡大図、(B)は、図9の第2基材の要部拡大図である。
図11図9のB−B断面図である
図12】調湿システムを利用した換気システムの処理手順の一例を示すフローチャートのである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
【0027】
図1は、本実施形態の調湿材4の一例を示す斜視図である。図2は、図1の部分断面図である。本実施形態の調湿材4は、例えば、建物の居室の空気中に含まれる水蒸気を吸着及び放出して、居室を調湿するのに用いられる。なお、調湿材4は、居室の調湿に限定されるわけではなく、例えば、建物の床下空間や、倉庫等の調湿等に用いられてもよい。
【0028】
本実施形態の調湿材4は、吸着材8(点状に図示されている)を含んでいる。本実施形態の吸着材8は、粉粒体状に構成されており、シート状の基材9に担持されている。
【0029】
吸着材8は、第1吸着材8Aと、第2吸着材8Bとを含んでいる。第2吸着材8Bは、第1吸着材8Aとは水蒸気の吸着性能が異なっている。図3は、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bについて、水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線のグラフである。図3のグラフにおいて、水蒸気の吸着量は、第1吸着材8A又は第2吸着材8Bを500g/m2混入したときのものである。
【0030】
本実施形態の第1吸着材8Aは、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.09kg/kg以上である。このような第1吸着材8Aは、相対蒸気圧が0.2〜0.3となる低湿時において、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。即ち、第1吸着材8Aは、低湿時において、相対蒸気圧が0.2よりも高くなれば、多くの水蒸気を吸着できる。また、第1吸着材8Aは、相対蒸気圧が0.3よりも低くなると、多くの水蒸気が放出される。さらに、第1吸着材8Aは、相対蒸気圧が中湿時及び高湿時から一時的に低下しても、相対蒸気圧が0.3以上であれば、保持している水蒸気が放出されるのを防ぐことができる。このような作用を効果的に発揮させるために、第1吸着材8Aは、25℃の環境下で、好ましくは、相対蒸気圧0.3での吸着量と相対蒸気圧0.2での吸着量との差が0.15kg/kg以上であり、より好ましくは0.17kg/kg以上である。
【0031】
第1吸着材8Aの粒径は、特に限定されるものではないが、過度に大きくなると、強度及び加工性の悪化や、比表面積の減少による吸放湿スピードの低下を招くおそれがある。このような観点より、第1吸着材8Aの粒径は、例えば、100μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0032】
また、第1吸着材8Aの細孔径も、特に限定されないが、過度に大きいと、特定の低湿域での水蒸気の吸着量が低下するおそれがある。このような観点より、第1吸着材8Aの細孔径は、0.3〜1.0nmに均一に調整されていることが望ましく、0.5〜0.8nmに均一に調整されていることがさらに望ましい。
【0033】
第1吸着材8Aとしては、上記性能を有するものであれば、適宜採用されうる。本実施形態の第1吸着材8Aとしては、ゼオライト系吸着剤(例えば、三菱樹脂(株)製のAQSOAのZ05(「AQSOA」は、三菱樹脂(株)の登録商標))が用いられている。
【0034】
また、本実施形態の第1吸着材8Aは、空気の温度に応じて、水蒸気の吸着量が変動する温度依存性を有している。図4は、異なる温度環境下での第1吸着材8Aの平衡含水率曲線のグラフである。図4の平衡含水率曲線は、第1吸着材8Aを500g/m2混入したときのものである。
【0035】
図4に示されるように、第1吸着材8Aの吸着量は、空気の温度毎に異なっている。例えば、10℃の環境下での第1吸着材8Aは、25℃の環境下での第1吸着材8Aに比べ、低い相対蒸気圧において、多くの水蒸気を吸着又は放出することができる。また、40℃の環境下での第1吸着材8Aは、25℃の環境下での第1吸着材8Aに比べ、高い相対蒸気圧において、多くの水蒸気を吸着又は放出することができる。従って、本実施形態の第1吸着材8Aは、空気の温度を異ならせることにより、水蒸気の吸着量及び放出量を、柔軟にコントロールできる。
【0036】
図3に示されるように、第2吸着材8Bは、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.2での吸着量が0.05kg/kg以上、相対蒸気圧0.5での吸着量が0.13kg/kg以上、及び、相対蒸気圧0.9での吸着量が0.21kg/kg以上である。このような第2吸着材8Bは、相対蒸気圧が0.2となる低湿時から相対蒸気圧が0.9となる高湿時にかけて、水蒸気を吸着又は放出できる。即ち、第2吸着材8Bは、相対蒸気圧が高くなるほど、多くの水蒸気を吸着できる。他方、第2吸着材8Bは、相対蒸気圧が低くなるほど、多くの水蒸気を放出することができる。さらに、第2吸着材8Bは、相対蒸気圧の変化量が大きいほど、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。このような第2吸着材8Bは、第1吸着材8Aに比べて、中湿時から高湿時の調湿性能を発揮しうる。
【0037】
第2吸着材8Bの粒径は、特に限定されるものではないが、第1吸着材8Aの粒径と同一範囲が望ましい。また、第2吸着材8Bの細孔径についても、特に限定されるものではないが、好ましくは、平均細孔径が2.4nm以下である。第2吸着材8Bとしては、上記性能を有するものであれば、適宜採用されうる。本実施形態の第2吸着材8Bとしては、A形シリカゲルが用いられている。
【0038】
このように、本実施形態の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bは、それぞれ異なる相対蒸気圧において、より多くの水蒸気を吸着又は放出することができるように設定されている。このため、本実施形態の調湿材4は、低湿時において、第1吸着材8Aに調湿性能を主として発揮させうる。また、第1吸着材8Aでは調湿性能を十分に発揮できない中湿時及び高湿時においては、第2吸着材8Bに調湿性能を発揮させうる。従って、本実施形態の調湿材4は、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮しうる。このように、本実施形態の調湿材4によれば、建物の居室や床下空間等を効果的に調湿しうる。
【0039】
上記作用を効果的に発揮させるために、第2吸着材8Bは、吸着材全重量(即ち、第1吸着材8Aの重量及び第2吸着材8Bの重量の総和)に対して20%〜80%含まれるのが望ましい。なお、第2吸着材8Bが20%未満であると、調湿材4は、第2吸着材8Bの含有量が小さくなり、中湿時及び高湿時において、調湿性能を十分に発揮できないおそれがある。逆に、第2吸着材8Bが80%を超えると、調湿材4は、第1吸着材8Aの含有量が小さくなり、低湿時において、調湿性能を十分に発揮できないおそれがある。このような観点より、第2吸着材8Bは、吸着材全重量に対して、好ましくは30%以上が望ましく、また、好ましくは70%以下である。
【0040】
図1及び図2に示されるように、基材9は、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを表面に保持しうるものであれば、あらゆる材料のものが採用されうる。好ましい態様では、パルプ繊維で構成される紙材、不織布や織布といった布材、樹脂等のバインダーによって成形されたシート体、さらには、塗料などが好適に採用できる。本実施形態の基材9は、正面視略矩形の形状を有しているが、このような態様に限定されない。
【0041】
本実施形態の調湿材4は、パルプ繊維と吸着材8との混合材料を抄いた混抄紙が用いられている。これにより、吸着材8は、基材9の両方の表面のみならず、その内部にも多数配置され得る。また、基材9としては、布材や樹脂材料が用いられる場合、接着材やバインダーなどを用いて、それらの表面に吸着材8を付着させることができる。
【0042】
基材9は、基材9の全域において、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを満遍なく保持している。これにより、調湿材4は、水蒸気を効果的に吸着又は放出することができる。
【0043】
図5は、本実施形態に係る調湿システム100を換気システムに利用した住宅(建物)20の一例を概念的に示す側面図である。なお、この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0044】
調湿システム100は、加湿された空気を住宅20の居室25に供給するためのものである。本実施形態の調湿システム100は、冬期において、居室25を換気しながら、空調及び加湿している。本実施形態の調湿システム100は、チャンバー1、空気供給路19、排気路23、換気路24及び制御装置27を含んでいる。
【0045】
チャンバー1は、その内部に、上記した調湿材4(図1に示す)を収容するためのものである。本実施形態のチャンバー1としては、実質的に同一仕様を有する第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bが並列的に用いられている。即ち、本実施形態では、チャンバー1として、形状、容積、及び、調湿能力が互いに同一である第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bが用いられている。以下、代表的に、第1チャンバー1Aの一例が説明されるが、第2チャンバー1Bも同様の構造を具えている点が指摘される。
【0046】
図6は、第1チャンバー1Aの斜視図である。図7は、第2チャンバー1Bの斜視図である。図6及び図7に示されるように、各チャンバー1A及び1Bは、内部に空間2を区画するケーシング3と、ケーシング3内の空間2に収容される調湿材4とを含んでいる。
【0047】
本実施形態において、ケーシング3は、例えば、略直方体形状の空間2を区画しており、その一端側に空気が供給される入口5が形成される一方、その他端側には空気が排出される出口6が形成されている。本実施形態において、各チャンバー1A及び1Bには、下面側に2つの入口5が、上面側には2つの出口6がそれぞれ設けられている。これにより、ケーシング3は、空間2の内部において、入口5から出口6に向かう空気流れを提供することができる。本実施形態において、ケーシング3の空間2には、入口5から出口6に向かう上下方向の空気流れが提供される。
【0048】
ケーシング3の形状については、内部に空間2を区画しうるものであれば、任意の形状が採用され得る。好ましい態様では、ケーシング3は、空間2側の内層3aと、その外側の外層3bとを含む多層構造を具えている。内層3aは、例えば、断熱材料で構成される。これにより、ケーシング3の内部の空間2が外部と断熱され、ひいては、内部の空気の温度(ひいては、相対湿度(即ち、相対蒸気圧))の低下を最小限に抑えることができる。これは、調湿材4に安定した吸湿機能又は放湿機能を発揮させるのに有効である。
【0049】
本実施形態の調湿材4は、図2に示したように、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを含んでいる。本実施形態の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bは、シート状の基材9に担持されている。本実施形態の調湿材4は、パルプ繊維と、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bとの混合材料を抄いた混抄紙が用いられている。
【0050】
図8は、本実施形態の第1チャンバー1Aの一実施形態の縦断面図である。図9は、図8のA−A断面図である。図8及び図9に示されるように、調湿材4の基材9は、その表面が、ケーシング3内の空気流れに沿うようにケーシング3内に間隔をあけて複数配置されている。即ち、基材9の表面は、ケーシング3内の上下方向に沿って配置されており、かつ、基材9の平面と直角な方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0051】
以上のように構成された第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bは、ケーシング3の入口5に、相対湿度(即ち、相対蒸気圧)の高い空気(例えば、冬期では、低温の外気)を供給することで、調湿材4の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bに、空気中の水蒸気を吸着させることができ、ケーシング3の出口6から放湿した空気(即ち、相対湿度の低い空気)を取り出すことができる(以下、「吸湿モード」という。)。
【0052】
図4に示したように、第1吸着材8Aは、温度依存性を有しており、周囲の温度が低いほど、より低湿域で水蒸気を吸着しやすくなる。従って、本実施形態の第1吸着材8Aは、低温の外気が第1吸着材8Aに供給されることにより、より多くの水蒸気を吸着することができる。
【0053】
なお、外気温の変動等により、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bには、相対湿度(即ち、相対蒸気圧)が低い外気が供給される場合がある。このとき、中湿時及び高湿時に調湿性能を主として発揮しうる第2吸着材8Bは、空気中の水蒸気を十分に吸着できなくなる。このような場合でも、低湿時に調湿性能を主として発揮しうる第1吸着材8Aは、空気中の水蒸気の吸着を維持できるため、吸湿モードにおいて、調湿材4の水蒸気の吸着量が低下するのを防ぎうる。
【0054】
第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bは、ケーシング3の入口5に、相対湿度(即ち、相対蒸気圧)の低い空気(例えば、冬期では、暖房空調された空気)を供給することで、調湿材4の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bが、その空気中に水蒸気を放出し、ケーシング3の出口6から加湿された空気を取り出すことができる(以下、「放湿モード」という。)。
【0055】
図4に示したように、第1吸着材8Aは、温度依存性を有しており、周囲の温度が高いほど、より高湿域で水蒸気を放出しやすくなる。従って、本実施形態の第1吸着材8Aは、高温の外気が第1吸着材8Aに供給されることにより、より多くの水蒸気を放出することができる。
【0056】
なお、空気調和機のデフロスト等により、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bには、相対湿度の高い空気が供給される場合がある。このとき、低湿時に調湿性能を主として発揮しうる第1吸着材8Aは、水蒸気を十分放出できなくなる。このような場合でも、中湿時及び高湿時に調湿性能を主として発揮しうる第2吸着材8Bは、水蒸気の放出を維持できるため、放湿モードにおいて、調湿材4の水蒸気の放出量が低下するのを防ぐことができる。
【0057】
このように、本実施形態の調湿システムは、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を効果的に発揮することができる。このような作用を効果的に発揮させるために、第2吸着材8Bは、好ましくは、吸着材全重量に対して20%〜80%であり、より好ましくは、30%〜70%である。
【0058】
本実施形態の第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bに配された第1吸着材8A及び第2吸着材8Bは、複数の基材9の表面に配されているため、ケーシング3内の空気との接触機会を高め、湿気交換面積を増大させ得る。従って、本実施形態の第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bは、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸湿能力及び放湿能力を最大限に高めることができる。
【0059】
さらに、発明者らの種々の実験の結果、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿速度は、それを保持する担体(基材9)の熱容量の影響を受け、一般に、前記熱容量が小さいほど、吸放湿速度が向上することが判明している。この点に関し、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを保持している基材9は、厚さが小さいため、熱容量も小さく構成される。従って、本実施形態の第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bは、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿速度を高めることもできる。
【0060】
図9に良く表されているように、基材9は、例えば、第1基材9aと、第2基材9bとを含んでいる。
【0061】
第1基材9aは、両側の表面がケーシング3の空間2に面している。空間2に面するとは、空間2の空気と実質的に接触するように配置されていることを意味する。一方、第2基材9bは、一方の表面のみがケーシング3の空間2に面し、かつ、他方の表面は、ケーシング3の内面3i(即ち、本実施形態では、内層3aの内面)と接し、空間2の空気と実質的に接触していない。
【0062】
図10(A)は、図9の第1基材9aの要部拡大図である。第1基材9aは、前記空気流れと直角な横断面において、空間2をのびる本体部10と、ケーシング3の内面3iに沿うように本体部10から折れ曲げられてケーシング3に固着された端部分11とを含んでいる。このような第1基材9aは、本体部10の長手方向に沿った面と、本体部10と直交する面(端部分11の表面)の双方に、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを配置することができる。従って、ケーシング3の内面に、より効率的に第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを配置することができる。
【0063】
また、第1基材9aの本体部10は、ケーシング3の内層3aに接触していないので、そこに保持されている第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿速度を効果的に高めることができる。従って、このような位置には、より多くの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを配置することが望ましい。
【0064】
一方、図10(B)には、図9の第2基材9bの要部拡大図が示される。第2基材9bは、他方の表面は、ケーシング3の断熱材からなる内層3aの内面3iと接触している。このため、第2基材9bは、ケーシング3によって保持されるので、その第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿速度が低下する。このような位置には、相対的に少ない第1吸着材8A及び第2吸着材8Bを配置することが望ましい。
【0065】
このような観点より、本実施形態の第1基材9aは、図10(A)に示されるように、第1吸着材8A及び第2吸着材8B付きの厚さtの単位シート材12を複数枚(この例では2枚)積層して形成されている一方、本実施形態の第2基材9bは、図10(B)に示されるように、厚さtの単位シート材12が、第1基材9aよりも少ない枚数用いられて形成されている。本実施形態の第2基材9bは、単位シート材12の1枚で形成されている。各単位シート材12は、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの配置量(重量)が、実質的に同一となるように構成されている。従って、本実施形態の第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bにおいては、第2基材9bでの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの配置量(重量)は、第1基材9aでの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの配置量(重量)よりも小さく、それらの比は約1:2とされている。
【0066】
単位シート材12の厚さtは、特に限定されないが、極力小さいことが望ましい。これにより、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿性能を高めながら、より多くの単位シート材12、ひいては、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bをケーシング3の空間2の中に配置することができる。一方、単位シート材の厚さtが小さすぎると、強度や耐久性が低下するおそれがある。このような観点より、前記厚さtは、好ましくは0.5〜2.0mm程度が望ましい。
【0067】
図11は、図9のB−B断面図である。図11に示されるように、基材9は、入口5側の端部15及び出口6側の端部16が、それぞれ、入口5及び出口6から、空気流れに沿って距離Lを隔てた位置に設けられている。このような構成により、入口5から供給された空気は、各基材9の間の空隙に満遍なく供給され、かつ、出口6から取り出すことができ、広い範囲で吸放湿作用を保証することができる。好ましい態様では、前記距離Lは、50〜200mm程度が好適である。
【0068】
図5に示されるように、空気供給路19は、チャンバー1に空気を供給するためのものである。本実施形態の空気供給路19は、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bに相対湿度の高い空気を供給する第1空気供給路21と、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bに相対湿度の低い空気を供給する第2空気供給路22とを含んで構成されている。
【0069】
第1空気供給路21は、第1チャンバー1Aの一方の入口5に、相対湿度(即ち、相対蒸気圧)の高い空気を供給する。一般に、冬期では、外気は、居室25内の空気よりも温度が低く、ひいては相対湿度が高い。従って、本実施形態では、第1空気供給路21は、冬期において相対湿度の高い外気を第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bに供給して吸湿モードを実行させる。第1空気供給路21は、例えば、一端側が、住宅20の基礎26に設けられた基礎換気口28を通じて外気と連通している。
【0070】
また、第1空気供給路21は、その途中に、切替ダンパー30によって、いずれかに択一的に切り替えられる第1分岐路21A及び第2分岐路21Bを含んでいる。本実施形態では、第1分岐路21Aが第1チャンバー1Aの一方の入口5に、第2分岐路21Bが第2チャンバー1Bの一方の入口5にそれぞれ接続されている。従って、第1空気供給路21は、切替ダンパー30を切替制御することにより、第1チャンバー1A又は第2チャンバーのいずれか一方にのみ外気を供給し、吸湿モードで運転させることができる。
【0071】
第2空気供給路22は、第1チャンバー1Aのもう一方の入口5に、相対湿度の低い空気を供給する。本実施形態の第2空気供給路22は、居室25を空調(暖房)しながら換気するための空気を第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bに搬送するための流路として構成され、例えば、一端側が、熱源チャンバー40に接続されている。
【0072】
熱源チャンバー40は、内部に断熱された空間を区画するケーシングを具えており、その内部には空気調和機の室内機50が配置されている。熱源チャンバー40には、室内機50の空気吸込口側に、基礎換気口28から床下空間に導入された外気が取り込まれる第1入口40aと、居室25の換気出口25bから居室25の空気(内気)を導入する第2入口40bとがそれぞれ設けられている。また、熱源チャンバー40には、室内機50の空気吹出口側に、室内機50で熱交換された空気が吹き出される出口40cが設けられている。この出口40cには、第2空気供給路22の一端が接続されている。なお、熱源チャンバー40内で、室内機50の空気吸込口と空気吹出口とは、互いの空気が混合しないように隔てられている。
【0073】
従って、空気調和機を運転することにより、熱源チャンバー40内の室内機50は、新鮮な外気と居室25の空気との混合気を所望の温度に高め(即ち、相対湿度を低下させ)、換気用の空気として、出口40cから排出することができる。なお、本実施形態では、外気として、基礎換気口28から床下空間に導入され、この床下空間で、一旦、地熱と熱交換されたものが利用されているが、ダクト等で直接導かれたものが利用されても良く、外気として種々のものが採用できる。
【0074】
第2空気供給路22は、その途中に、切替ダンパー32によって、いずれかに択一的に切り替えられる第1分岐路22A及び第2分岐路22Bを含んでいる。本実施形態では、第1分岐路22Aが第1チャンバー1Aのもう一つの入口5に、第2分岐路22Bが第2チャンバー1Bのもう一つの入口5にそれぞれ接続されている。従って、第2空気供給路22は、切替ダンパー32を切替制御することにより、第1チャンバー1A又は第2チャンバー1Bのいずれか一方にのみ、熱源チャンバー40内で暖められた(即ち、空気調和機で暖められた)相対湿度の低い換気空気を供給し、放湿モードで運転させることができる。これにより、換気空気が供給された第1チャンバー1A又は第2チャンバー1Bの出口6からは、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bから水蒸気を受け取って加湿された換気空気を取り出すことができる。
【0075】
第1チャンバー1Aの一方の出口6には、排気路23が接続されている。排気路23は、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bを通った空気を住宅20の外部に排出するための流路であって、例えば、一端側が、住宅20の小屋裏又は軒天井等を通して外気と連通している。
【0076】
本実施形態の排気路23は、その途中に、切替ダンパー34によって、いずれかに択一的に切り替えられる第1分岐路23A及び第2分岐路23Bを含んでいる。第1分岐路23Aは、第1チャンバー1Aの一方の出口6に接続されている。第2分岐路23Bは、第2チャンバー1Bの一方の出口6に接続されている。さらに、排気路23には、第1分岐路23A及び第2分岐路23Bを負圧にするための排気用のファン35が設けられている。
【0077】
排気路23は、切替ダンパー34を切替制御されることにより、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bのいずれか一方の空気を住宅20の外部に排出することができる。本実施形態では、吸湿モードで運転中のチャンバーにのみ、排気路23が接続されるように、切替ダンパー34が制御される。これにより、チャンバー内の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bに水蒸気を奪われ、相対湿度の低下した空気が住宅20の外気へと排出される。
【0078】
換気路24は、チャンバー1(第1チャンバー1A又は第2チャンバー1B)を通過した空気を居室25に供給するための流路である。換気路24の一端は、第1チャンバー1Aのもう一方の出口6に接続されている。換気路24の他端は、居室25の換気入口25aに連通している。
【0079】
本実施形態の換気路24は、その途中に、切替ダンパー36によって、いずれかに択一的に切り替えられる第1分岐路24A及び第2分岐路24Bを含んでいる。第1分岐路24Aは、第1チャンバー1Aのもう一つの出口6に接続されている。第2分岐路24Bは、第2チャンバー1Bのもう一つの出口6に接続されている。本実施形態では、換気路24の切替ダンパー36は、放湿モードで運転されている第1チャンバー1A又は第2チャンバー1Bが、居室25に連通するように、切替制御される。
【0080】
制御装置27は、空気供給路19(即ち、第1空気供給路21及び第2空気供給路22)、排気路23、及び、換気路24を制御するためのものである。本実施形態の制御装置27は、上記した切替ダンパー30、32、34及び36、ファン35及び空気調和機を、予め定められた処理手順で切り替え制御している。制御装置27は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。
【0081】
図12は、調湿システム100(図5に示す)を利用した換気システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0082】
制御装置27は、先ず、計時を開始した後(ステップS1)、第1チャンバー1Aを放湿モードに切り替える(ステップS2)。これにより、第1チャンバー1Aで加湿された換気空気が居室25へと供給される。
【0083】
図5に示されるように、第1チャンバー1Aの放湿モード時、制御装置27は、切替ダンパー32の切替により、第2空気供給路22の第1分岐路22Aと第1チャンバー1Aの入口5とを連通させる。また、制御装置27は、切替ダンパー36の切替により、換気路24の第1分岐路24Aと、第1チャンバー1Aの出口6とを連通させる。これにより、熱源チャンバー40で空調された換気空気は、第2空気供給路22を通り、第1チャンバー1Aの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bで加湿され、換気路24を経て居室25へと供給される。この際、制御装置27は、例えば、居室25の換気入口25aに設けたダンパー33を制御することで、第1チャンバー1Aを通過する風量を「風量A」に設定する。これにより、放湿モードは、風量Aで行われる。
【0084】
次に、図5及び図12に示されるように、制御装置27は、第2チャンバー1Bを吸湿モードに切り替える(ステップS3)。これにより、第2チャンバー1Bの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bに、外気の水蒸気を吸収させることができる。
【0085】
第2チャンバー1Bの吸湿モード時、制御装置27は、切替ダンパー30の切替により、第1空気供給路21の第2分岐路21Bと第2チャンバー1Bの入口5とを連通させる。また、制御装置27は、切替ダンパー34の切替により、排気路23の第2分岐路23Bと、第2チャンバー1Bの出口6とを連通させる。これにより、相対湿度の高い外気は、第1空気供給路21を通り、第2チャンバー1Bの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bで吸湿され、排気路23を経て住宅20の外部に排出される。この際、制御装置27は、例えば、排気用のファン35を制御することで、第1空気供給路21の風量を「風量B」に設定する。これにより、吸湿モードは、風量Bで行われる。この風量Bは、放湿モードの風量Aよりも大きく設定される。
【0086】
第1吸着材8Aの吸湿速度は、その放湿速度よりも小さい傾向がある。その原因の一つとして、図4に示した第1吸着材8Aの温度依存性が挙げられる。吸湿モードと放湿モードとでは、供給される空気の温度が異なっている。この空気の温度の違いが、第1吸着材8Aの吸湿速度と放湿速度との差に影響していると考えられる。
【0087】
従って、本発明のように、吸湿モード時の風量Bを、放湿モード時の風量Aよりも大きく設定することにより、例えば、放湿モードにある第1チャンバー1Aの第1吸着材8Aの放湿量と、吸湿モードにある第2チャンバー1Bの第1吸着材8Aの吸湿量とをバランス、乃至、実質的に一致させることができ、ひいては、各々の第1吸着材8Aの吸放湿能力を最大限に活用することが可能になる。
【0088】
好ましい態様では、第1チャンバー1A及び第2チャンバー1Bのそれぞれにおいて、吸湿モードでの調湿材4(即ち、第1吸着材8A及び第2吸着材8B)の水蒸気の吸湿量と、放湿モードでの調湿材4の水蒸気の放出量との差が10%以下、好ましくは7%以下となるように、前記風量の比B/Aを調節することが望ましい。この比は、使用する第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸湿速度及び放湿速度の比に基づいて、適宜決定することができる。本実施形態では、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸湿速度が、放湿速度の約2/3である。このため、吸湿モード時の風量Bは、放湿モード時の風量Aの1.5±0.2倍、好ましくは1.5±0.1倍に設定される。
【0089】
次に、制御装置27は、予め定められた時間が経過したか否かを判断し(ステップS4)、結果が否定的である場合(ステップS4で、「N」)、ステップS2及びS3をループする。従って、予め定められた時間が経過するまで、第1チャンバー1Aは、放湿モードで運転される一方、第2チャンバー1Bは、吸湿モードで運転される。上記「時間」は、任意に設定しうるが、例えば、各チャンバー1A及び1Bに収容されている第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿性能、並びに、通過風量等に基づいて、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bが完全に放湿を終えるまでのぎりぎりの時間として設定することができる。
【0090】
次に、ステップS4の結果が肯定的である場合(ステップS4で、「Y」)、制御装置27は、これまでの計時をリセットし(ステップS5)、新たな計時を開始する(ステップS6)。
【0091】
次に、制御装置27は、第1チャンバー1Aを吸湿モードに切り替える(ステップS7)。これにより、第1チャンバー1Aの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bに、外気の水蒸気を吸収させることができる。
【0092】
第1チャンバー1Aの吸湿モード時、制御装置27は、切替ダンパー30の切り替えにより、第1空気供給路21の第1分岐路21Aと第1チャンバー1Aの入口5とを連通させる。また、制御装置27は、切替ダンパー34の切り替えにより、排気路23の第1分岐路24Aと、第1チャンバー1Aの出口6とを連通させる。これにより、相対湿度の高い外気は、第1空気供給路21を通り、第1チャンバー1Aの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bで吸湿され、排気路23を経て住宅20の外部に排出される。なお、第1空気供給路21の風量は、先に調節された風量Bに維持されており、第1チャンバー1Aの吸湿モードも風量Bで行われる。
【0093】
次に、制御装置27は、第2チャンバー1Bを放湿モードに切り替える(ステップS8)。これにより、今度は、第2チャンバー1Bで加湿された換気空気が居室25へと供給される。
【0094】
第1チャンバー1Aの放湿モード時、制御装置27は、切替ダンパー32の切り替えにより、第2空気供給路22の第2分岐路22Bと第2チャンバー1Bの入口5とを連通させる。また、制御装置27は、切替ダンパー36の切り替えにより、換気路24の第2分岐路24Bと、第2チャンバー1Bの出口6とを連通させる。これにより、熱源チャンバー40で空調された換気空気は、第2空気供給路22を通り、第2チャンバー1Bの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bで加湿され、換気路24を経て居室25へと供給される。なお、第2空気供給路22の風量は、先に調節された風量Aに維持されており、第2チャンバー1Bの放湿モードも風量Aで行われる。
【0095】
次に、制御装置27は、予め定められた前記時間が経過したか否かを判断し(ステップS9)、結果が否定的である場合(ステップS9で、「N」)、ステップS7及びS8をループする。従って、予め定められた時間が経過するまで、第2チャンバー1Bは、放湿モードで運転される一方、第1チャンバー1Aは、吸湿モードで運転される。次に、ステップS9の結果が肯定的である場合(ステップS9で、「Y」)、制御装置27は、これまでの計時をリセットし(ステップS10)、新たな計時を開始する(ステップS1)。以後、ステップS2以降が繰り返される。
【0096】
以上述べたように、本実施形態では、第1チャンバー1Aと第2チャンバー1Bとは、常に、異なる運転モードとされる。従って、第1チャンバー1Aが放湿モードで運転されている間、第2チャンバー1Bは吸湿モードで運転され、第1チャンバー1Aが吸湿モードで運転されている間、第2チャンバー1Bは放湿モードで運転される。従って、本実施形態のシステムでは、第1チャンバー1A又は第2チャンバー1Bのそれぞれにおいて、吸湿モードと放湿モードとが交互に繰り返されることで、加湿された空気が実質的に連続して居室25に供給されうる。
【0097】
しかも、本実施形態では、吸湿モード時の風量Bを、放湿モード時の風量Aよりも大きく設定することにより、例えば、放湿モードにある第1チャンバー1Aの第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの放湿量と、吸湿モードにある第2チャンバー1Bの調湿材4の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸湿量とをバランス、乃至、実質的に一致させることができ、ひいては、各々の第1吸着材8A及び第2吸着材8Bの吸放湿能力を最大限に活用することが可能になる。
【0098】
従って、本実施形態の調湿システム100を用いた換気システムによれば、居室25に、空調及び加湿された外気を連続的に、かつ、効率よく供給することができる。
【0099】
これまでの実施形態の調湿材4は、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bが基材9に担持されるものが例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、第1吸着材8A及び第2吸着材8Bは、基材9等に担持されることなく、それぞれ単体で配置されてもよい。このような調湿材4も、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮しうる。
【0100】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0101】
図5に示した調湿システムを有する住宅を想定し、寝室への水蒸気の供給量の1時間当たりの平均値が、下記の仕様及び条件、図3及び図4のグラフ、並びに、表1に示した条件に基づいて、コンピュータを用いて計算された。結果は、水蒸気の供給量が45g/m2以上であれば良好であり、さらに52g/m2以上であれば、18℃の寝室の湿度を10%RH以上加湿でき、より良好である。テスト結果を表1に示す。
調湿材:500g/m3
第1吸着材:ゼオライト系吸着剤(三菱樹脂(株)製のAQSOAのZ05(「AQSOA」は、三菱樹脂(株)の登録商標))
第2吸着材:シリカゲル(JIS Z0701に規定のA形シリカゲル)
第1チャンバー及び第2チャンバー:2.5m×0.45m×0.15m
第1条件:
外気(温度:14℃、相対蒸気圧:0.3)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.25)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.08)
第2条件:
外気(温度:14℃、相対蒸気圧:0.3)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.4)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.11)
第3条件:
外気(温度:10℃、相対蒸気圧:0.4)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.25)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.08)
第4条件:
外気(温度:10℃、相対蒸気圧:0.4)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.4)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.11)
第5条件:
外気(温度:2℃、相対蒸気圧:0.7)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.25)
チャンバー(温度25℃、相対蒸気圧:0.18)
第6条件:
外気(温度:2℃、相対蒸気圧:0.7)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.25)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.08)
第7条件:
外気(温度:2℃、相対蒸気圧:0.7)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.4)
チャンバー(温度25℃、相対蒸気圧:0.26)
第8条件:
外気(温度:2℃、相対蒸気圧:0.7)
室内(温度:20℃、相対蒸気圧:0.4)
チャンバー(温度40℃、相対蒸気圧:0.11)
【0102】
【表1】
【0103】
テストの結果、実施例は、相対蒸気圧等が異なる全ての条件において、水蒸気の供給量が45g/m2以上であった。従って、実施例は、寝室を十分に加湿することができた。また、第2吸着材の割合が70%である実施例2や、第2吸着材の割合が30%である実施例3は、水蒸気の供給量が52g/m2以上であり、寝室を効果的に加湿できた。
【0104】
第1吸着材のみから構成される比較例1は、チャンバー内の相対蒸気圧が高い第7条件において、水蒸気の供給量が45g/m2を下回った。さらに、第2吸着材のみから構成される比較例2は、外気及びチャンバー内の相対蒸気圧が低い第1条件及び第2条件において、水蒸気の供給量が45g/m2を下回った。従って、比較例1及び比較例2は、実施例に比べて、寝室を十分に加湿できなかった。
【符号の説明】
【0105】
4 調湿材
8 吸着材
8A 第1吸着材
8B 第2吸着材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12