特許第6543210号(P6543210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6543210-エレベータ制御システム 図000002
  • 特許6543210-エレベータ制御システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543210
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】エレベータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20190628BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20190628BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20190628BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B66B5/02 L
   B66B3/00 Q
   B66B1/34 A
   B66B5/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-71155(P2016-71155)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178598(P2017-178598A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳野 貴士
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−125288(JP,A)
【文献】 特開2013−203513(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/057171(WO,A1)
【文献】 特開2014−136013(JP,A)
【文献】 特開2003−259560(JP,A)
【文献】 特開2013−252957(JP,A)
【文献】 特開2014−184887(JP,A)
【文献】 特開昭55−61577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00− 3/02
B66B 1/00− 1/52
B66B 5/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの電力供給の異常発生時に当該商用電源から蓄電池のバッテリー電源に切り替えて電力供給を継続させ、建物に設備されたエレベータの昇降路における特定の階床に乗りかごを着床させる停電時自動着床装置又は自動救助装置を起動させる機能を持つ制御装置を備えたエレベータ制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記異常発生時の前記バッテリー電源に切り替えての電力供給による前記乗りかごの走行時に前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置を起動させての運転使用に伴う放電による電力消費量、及び異常発生復旧後の前記商用電源からの電力供給により充電されての蓄電量の関係に基づいて当該バッテリー電源の蓄電残量を解析演算した結果を含む蓄電状態情報を任意な階床の乗場の乗場ドア近傍の利用者が目視可能な位置に設けられた乗場表示部と当該制御装置に対して通信接続可能な端末装置の端末表示部とに表示する制御を行い、
前記制御装置による前記蓄電状態情報の表示は、前記バッテリー電源の前記蓄電残量の表示に加え、
前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置が運転中状態であることを示す起動運転中表示と、
当該バッテリー電源がフル充電状態であることを示すフル充電表示と、
当該バッテリー電源が充電中状態であることを示す充電中表示と、
当該バッテリー電源の前記蓄電残量が当該停電時自動着床装置又は当該自動救助装置による特定の運転使用回数分を下回った状態にあることを示す放電表示と、を含み、
前記端末装置は、当該エレベータを監視する監視室に配置され、
前記端末表示部には、前記起動運転中表示と、前記フル充電表示と、前記充電中表示と、前記放電表示と、が行われ、
前記乗場表示部には、前記放電表示が行われること
を特徴とするエレベータ制御システム。
【請求項2】
請求項記載のエレベータ制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記蓄電状態情報の表示に際して、現状の前記バッテリー電源の前記蓄電残量が前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置に係る運転何回分に相当するのかを表示する制御を行うことを特徴とするエレベータ制御システム。
【請求項3】
請求項記載のエレベータ制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置に係る運転使用相当分についての前記バッテリー電源の前記蓄電残量を段階的に点灯表示する制御を行うことを特徴とするエレベータ制御システム。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載のエレベータ制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記商用電源からの電力供給に異常が発生しているか否かの判別結果と、前記停電時自動着床装置または前記自動救助装置が起動しているか否かの判別結果と、前記バッテリー電源の前記蓄電残量を解析演算した結果と、に基づき、前記蓄電状態情報を算出し、
前記商用電源からの電力供給に異常が発生し、前記停電時自動着床装置または前記自動救助装置が起動している場合、前記起動運転中表示を行い、
前記商用電源からの電力供給は通常通り行われ、かつ、前記バッテリー電源がフル充電状態である場合、前記フル充電表示を行い、
前記商用電源からの電力供給は通常通り行われ、前記バッテリー電源がフル充電状態でなく、かつ、前記バッテリー電源の前記蓄電残量が当該停電時自動着床装置又は当該自動救助装置による前記特定の運転使用回数分を下回っていない場合、前記充電中表示を行い、
前記商用電源からの電力供給は通常通り行われ、かつ、前記バッテリー電源の前記蓄電残量が当該停電時自動着床装置又は当該自動救助装置による前記特定の運転使用回数分を下回っている場合、前記充電中表示と前記放電表示とを行うこと
を特徴とするエレベータ制御システム
【請求項5】
請求項4記載のエレベータ制御システムであって、
前記端末表示部は、
前記起動運転中表示を行う起動運転中表示領域と、
前記フル充電表示を行うフル充電表示領域と、
前記充電中表示を行う充電中表示領域と、
前記放電表示を行う放電表示領域と、を備え、
前記乗場表示部は、前記放電表示領域を備え、
前記起動運転中表示領域は、前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置が運転中状態であることを意味する起動運転中表記と当該起動運転中表記の近傍に設けられた起動運転中点灯部とを備え、
前記フル充電表示領域は、前記バッテリー電源がフル充電状態であることを意味するフル充電表記と当該フル充電表記の近傍に設けられたフル充電点灯部とを備え、
前記充電中表示領域は、前記バッテリー電源が充電中であることを意味する充電中表記と当該充電中表記の近傍に設けられた充電中点灯部とを備え、
前記放電表示領域は、該バッテリー電源の前記蓄電残量が当該停電時自動着床装置又は当該自動救助装置による前記特定の運転使用回数分を下回った状態にあることを意味する放電表記と当該放電表記の近傍に設けられた放電点灯部とを備え、
前記制御装置は、
前記起動運転中表示時、前記起動運転中点灯部を青色で点灯表示し、
前記フル充電表示時、前記フル充電点灯部を緑色で点灯表示し、
前記充電中表示時、前記充電中点灯部を黄色で点灯表示し、
前記放電表示時、前記放電点灯部を赤色で点灯表示するとともに警報を出力すること
を特徴とするエレベータ制御システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおける商用電源による電力供給の異常発生時に蓄電池のバッテリー電源からの電力供給に切り替えて停電時自動着床装置や自動救助装置を起動する機能を持つエレベータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に設備されるエレベータの制御系に係るエレベータ制御システムでは、停電等で商用電源による電力供給が異常発生すると商用電源から蓄電池のバッテリー電源に切り替えて電力供給を継続させ、昇降路における特定の階床に乗りかごを着床させる停電時自動着床装置(ALP)や自動救助装置(ARD)の機能を起動させる仕組みになっている。
【0003】
このような商用電源の電力供給の異常発生への対応に関連する周知技術として、例えば計画停電のような停電開始時間および停電期間が定まった場合において、停電期間中に運行サービスを継続させることが可能な「エレベーター制御システム及び方法」(特許文献1参照)が挙げられる。
【0004】
その他、緊急時に備えて、バッテリー電源で運転しているエレベータの利用率を低減する「エレベータ制御システム」(特許文献2参照)や、停電等の電源異常発生時、商用電源から無停電電源に切換えて電力を供給してエレベータの運転を継続する際、手動運転時に電源異常が発生した場合、無停電電源から電力を供給している間は警告音の発生を継続する報知手段を備えた「エレベータの制御装置」(特許文献3参照)が挙げられる。因みに、後者の特許文献3に係る技術は、停電時に商用電源からバッテリー電源へ切り替えを行って走行しているエレベータにおいて、保守点検作業者がこれに気付かずに手動運転を継続して無駄にバッテリー電源を消費させてしまうと、停電時自動着床や自動救助の運転を実施できない事態が起こり得るという問題を回避するため、手動運転時に商用電源が異常発生してバッテリー電源へと切り替えられている際には、警告音を鳴らす機能を持たせたものと換言することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−139098号公報
【特許文献2】特開2014−125288号公報
【特許文献3】特許5292944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、海外地域の電力供給が安定していない場所では、しばしば突然の連続した停電が発生し得る状況も少なくない。こうした状況下でのエレベータの無停電電源用蓄電池としてのバッテリー電源については、蓄電の空状態からフル充電に至るまで約24時間を要し、乗りかごの走行1回分については約6時間の充電を要する仕様を例示できる。
【0007】
しかしながら、バッテリー電源が十分に充電されないまま停電時自動着床装置や自動救助装置の機能を起動して連続的に運転すると、上述した特許文献1〜特許文献3に係る技術の何れを適用しても突然の停電により乗りかごが特定の階床に着床する前にバッテリー電源の蓄電切れが生じてしまい、乗りかご内に利用者を閉じ込めてしまうばかりでなく、商用電源が復帰して電力供給されているにも拘らずバッテリー電源がフル充電されるまでエレベータが停止され続ける事態も想定される。こうした事態については回避されることが望まれるものの、現状ではバッテリー電源の蓄電残量を利用者や管理者が明確に把握できず、利用者に乗りかご内での閉じ込めが生じ得るリスクを知らせる報知機能が持たされていないため、エレベータのバッテリー電源の蓄電状態を報知させての乗りかご利用や保守管理に係るサービスが十分に図られていないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、エレベータのバッテリー電源の蓄電状態を報知させての乗りかご利用や保守管理に係るサービスが十分に図られるエレベータ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、商用電源からの電力供給の異常発生時に当該商用電源から蓄電池のバッテリー電源に切り替えて電力供給を継続させ、建物に設備されたエレベータの昇降路における特定の階床に乗りかごを着床させる停電時自動着床装置又は自動救助装置を起動させる機能を持つ制御装置を備えたエレベータ制御システムにおいて、前記制御装置は、前記異常発生時の前記バッテリー電源に切り替えての電力供給による前記乗りかごの走行時に前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置を起動させての運転使用に伴う放電による電力消費量、及び異常発生復旧後の前記商用電源からの電力供給により充電されての蓄電量の関係に基づいて当該バッテリー電源の蓄電残量を解析演算した結果を含む蓄電状態情報を任意な階床の乗場の乗場ドア近傍の利用者が目視可能な位置に設けられた乗場表示部と当該制御装置に対して通信接続可能な端末装置の端末表示部とに表示する制御を行い、前記制御装置による前記蓄電状態情報の表示は、前記バッテリー電源の前記蓄電残量の表示に加え、前記停電時自動着床装置又は前記自動救助装置が運転中状態であることを示す起動運転中表示と、当該バッテリー電源がフル充電状態であることを示すフル充電表示と、当該バッテリー電源が充電中状態であることを示す充電中表示と、当該バッテリー電源の前記蓄電残量が当該停電時自動着床装置又は当該自動救助装置による特定の運転使用回数分を下回った状態にあることを示す放電表示と、を含み、
前記端末装置は、当該エレベータを監視する監視室に配置され、前記端末表示部には、前記起動運転中表示と、前記フル充電表示と、前記充電中表示と、前記放電表示と、が行われ、前記乗場表示部には、前記放電表示が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成により、エレベータのバッテリー電源の蓄電状態を報知させての乗りかご利用や保守管理に係るサービスが十分に図られるようになる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るエレベータ制御システムを適用したエレベータ装置の全体的な外観構成を一部破断にして示した斜視図である。
図2図1に示すエレベータ装置に備えられる制御盤によるホールインジケータや監視室の監視端末の端末表示部への表示制御に際してのバッテリー電源の蓄電状態情報表示に係る簡易例、並びに蓄電状態情報表示の動作処理に係るフローチャートとその結果で決定される表示パターンとを例示した図である。
図3図1に示すエレベータ装置に備えられる制御盤によるホールインジケータや監視室の監視端末の端末表示部への表示制御に際しての時間経過に対するバッテリー電源の蓄電残量変化に応じたイベントと点灯及び警告を含む表示パターンのステータスとを対応させた相関表示を突然の連続した停電が発生し得る状況で例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のエレベータ制御システムについて、実施例を挙げて図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係るエレベータ制御システムを適用したエレベータ装置の全体的な外観構成を一部破断にして示した斜視図である。
【0014】
図1を参照すれば、このエレベータ装置は、乗りかご1と釣合い錘2とが昇降路11上部に設けられた機械室12の巻上機4を介して主ロープ7で釣瓶式に懸垂され、巻上機4の電動式モータにより駆動されて略図するガイドレールに沿って昇降するように構成されている。また、機械室12内には乗りかご1の昇降走行における調速を行う調速機6、地震等の発生時に振動量を計測する振動計5、通常状態で各部へ電力供給を行う商用電源16、停電等で商用電源16による電力供給が異常発生して停止したときに自動的に切り替えられて各部へ電力供給を継続させる無停電電源用蓄電池としてのバッテリー電源17、商用電源16による電力供給の異常発生時にバッテリー電源17から電力供給されて特定の階床に乗りかご1を着床させる自動救助装置(ARD)18、乗りかご1の昇降や停止の運転を制御する他、通常時は商用電源16による各部への電力供給を行わせ、停電等で商用電源16による電力供給が異常発生して停止したときにバッテリー電源17に切り替えて各部への電力供給を継続させ、自動救助装置18を起動させて運転させる制御装置としての制御盤3等が配置されており、調速機6には昇降路11からピッドに延在するように調速機ロープ8が巻き掛けられている。因みに、以下も同様であるように、ここでの自動救助装置18に代えて、同等な機能の停電時自動着床装置(ALP)を備えるようにしても良い。
【0015】
更に、このエレベータ装置では、巻上機4側から見て乗りかご1側と釣合い錘2側との主ロープ7の重量差を補償するコンペンロープ9が設置されている他、乗りかご1への給電を行うためにテールコード10が敷設されている。このように、昇降路11内には主ロープ7、調速機ロープ8、コンペンロープ9、及びテールコード10等の長尺物が設けられている。加えて、昇降路11内にはガイドレールやエレベータの昇降路内機器等を支持する略図するブラケットが設置され、建物の昇降路11における各階床の乗場に設けられた乗場ドア近傍の利用者が目視可能な位置には、乗場操作盤の役割を担う乗場表示部としてのホールインジケータ13が設けられ、利用者がホールインジケータ13の呼び釦を押下操作することにより、乗りかご1のかご呼びが行われる。その他、機械室12と隔たった場所の監視室14にはPC(パーソナルコンピュータ)機能の監視端末15が設置され、制御盤3から得られるエレベータに係る各種情報を監視端末15の端末表示部15aに表示できるようになっている。因みに、ここでは制御盤3から得られるエレベータに係る各種情報を建物の監視室14に設置されてエレベータの監視者が所持する監視端末15の端末表示部15aに表示可能な構成を示しているが、制御盤3に対して通信接続可能な端末装置であれば同様に表示させることができる。例えばその他に建物を所有する所有者が所持する端末装置の端末表示部や保守点検作業員が所持して乗りかご内の操作盤の所定箇所に接続して使用される保守点検用携帯端末19の端末表示部19aへエレベータに係る各種情報を表示するようにしても良い。
【0016】
ところで、このエレベータ装置における制御盤3は、商用電源16からの電力供給の異常発生時に商用電源16から蓄電池のバッテリー電源17に切り替えて電力供給を継続させ、建物に設備されたエレベータの昇降路11における特定の階床に乗りかご1を着床させる自動救助装置18を起動させる機能を持つ。また、ここでの制御盤3は、異常発生時のバッテリー電源17に切り替えての電力供給による乗りかご1の走行時に自動救助装置18を起動させての運転使用に伴う放電による電力消費量、及び異常発生復旧後の商用電源16からの電力供給により充電されての蓄電量の関係に基づいてバッテリー電源17の蓄電残量を解析演算した結果を含む蓄電状態情報を任意な階床(各階床とすることが望ましい)の乗場の乗場ドア近傍の利用者が目視可能な位置に設けられたホールインジケータ13と監視室14に設置された監視端末15の端末表示部15a(以下も同様であるように、上述した所有者が所持する端末装置の端末表示部や保守点検作業員が所持する保守点検用携帯端末19の端末表示部19aでも良い)との少なくとも一方へ表示する制御を行う。このエレベータ装置における制御盤3、バッテリー電源17、自動救助装置18、及びホールインジケータ13や監視端末15の端末表示部15aを含む構成は、処理機能上で商用電源16の電力供給の異常発生時にバッテリー電源17の電力供給に切り替えて自動救助装置18を起動する機能を持つエレベータ制御システムと呼ばれても良い。
【0017】
図2は、このエレベータ装置に備えられる制御盤3によるホールインジケータ13や監視室14の監視端末15の端末表示部15aへの表示制御に際してのバッテリー電源17の蓄電状態情報表示に係る簡易例、並びに蓄電状態情報表示の動作処理に係るフローチャートとその結果で決定される表示パターンP1〜P5を例示した図である。
【0018】
制御盤3によるバッテリー電源17の蓄電状態情報表示では、バッテリー電源17の蓄電残量をホールインジケータ13や監視端末15の端末表示部15aに点灯表示して乗りかご利用や保守管理へ報知させることに加え、図2中の右上位置に示す簡易例として、自動救助装置18が起動運転中状態であるときを示す起動運転中(UNDER ARD)表記、バッテリー電源17がフル充電状態であるときを示すフル充電(FULL CHARGE)表記、バッテリー電源17が充電中状態であるときを示す充電中(CHARGING)表記、及びバッテリー電源17の蓄電残量が特定の自動救助装置18の運転使用回数分(ここでは3回分とする)を下回った状態であるときを示す放電(DISCHARGE)表記を含むもので、それぞれの表記近傍に設けられた点灯部を蓄電状態に応じて点灯表示する場合を示している。因みに、監視室14の監視端末15の端末表示部15aに対してはこれらの蓄電状態の全てを表示できるようにすることが望ましいが、利用者向けのホールインジケータ13に対しては放電(DISCHARGE)表記のみの点灯部を点灯表示させ、乗りかご1内での閉じ込めが発生し得る危険性を報知させることが好ましい。
【0019】
また、表記パターンP1〜P5付きで示す制御盤3によるバッテリー電源17の蓄電状態情報表示の動作処理を示すフローチャートは、実施態様としてより好ましい表示制御の形態を示している。具体的に云えば、最初に商用電源16の電力供給が通常通り行われているか否か(Under normal power?)の判定(ステップS1)を行う。この判定の結果、商用電源16の電力供給が通常通り行われていなければ引き続いて自動救助装置18が起動中であるか否か(Under ARD)の判定(ステップS2)を行う。この判定(ステップS2)の結果、自動救助装置18が起動中でなければ待機状態とみなして何れの表記における点灯部についても点灯表示しない(To turn off the light)の表示パターンP1とするが、自動救助装置18が起動中であればUNDER ARD表記の点灯部を青色で点灯表示(To light Blue LED)する表示パターンP2とする。
【0020】
一方、先の商用電源16の電力供給が通常通り行われているか否かの判定(ステップS1)の結果、商用電源16の電力供給が通常通り行われていれば引き続いてバッテリー電源17がフル充電であるか否か(FULL CHARGE?)の判定(ステップS3)を行う。この判定の結果、バッテリー電源17がフル充電であればFULL CHARGE表記の点灯部を緑色で点灯表示(To light Green LED)する表示パターンP5とするが、バッテリー電源17がフル充電でなければ引き続いてバッテリー電源17の蓄電残量が自動救助装置18の運転使用回数分の3回分あるか否か(Able to operate 3 time?)の判定(ステップS4)を行う。この判定の結果、バッテリー電源17の蓄電残量が自動救助装置18の運転使用回数分の3回分あればCHARGING表記の点灯部を黄色で点灯表示(To light Yellow LED)する表示パターンP4とするが、バッテリー電源17の蓄電残量が自動救助装置18の運転使用回数分の3回分なければ(3回分を下回れば)DISCHARGE表記の点灯部を赤色で点灯表示すると共に、CHARGING表記の点灯部を黄色で点灯表示した上でDISCHARGE表記に対して警報を発する(To light Red&Yellow LED and an alarm)表示パターンP3とする。この表示パターンP3が表示されて警報が発せられると、バッテリー電源17の蓄電残量が少ない状態であることが報知されることになるため、利用者が乗りかご1内での閉じ込めリスクを承知の上で乗車の判断を行うことができ、更に管理者(管理者以外の保守点検作業者や建物の所有者でも良い)側が商用電源16の電力供給復旧後も十分な蓄電量となるまでバッテリー電源17への充電を行わせてエレベータを停止させるのかを決定することになる。通常は利用者の乗りかご1内での閉じ込めリスクを回避するため、表示パターンP3で示されるようにバッテリー電源17の蓄電残量が少ない状態であれば、商用電源16の電力供給復旧後に十分な蓄電量となるまでバッテリー電源17への充電を行わせてエレベータを停止させる対処が運用上で採択される。
【0021】
図3は、このエレベータ装置に備えられる制御盤3によるホールインジケータ13や監視室14の監視端末15の端末表示部15aへの表示制御に際しての時間経過Timeに対するバッテリー電源17の蓄電残量変化(Battery Charging Rate[%])に応じたイベントと点灯及び警告(LED&alarm)を含む表示パターンのステータスとを対応させた相関表示を突然の連続した停電が発生し得る状況で例示した図である。
【0022】
図3を参照すれば、ここでは初期的にバッテリー電源17がフル充電状態にあり、表示パターンP5のFULL CHARGE表記の点灯部が緑色で点灯表示されている状態から1回目の停電(Power filure)状態になると、上述した待機状態に該当する一旦何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態となった後に自動救助装置18が起動(ARD start)して表示パターンP2のUnder ARD表記の点灯部が青色で点灯表示されるように推移して動作終了(ARD finish)した時点では、再び上述した待機状態に該当する何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態となる。このとき、バッテリー電源17の蓄電残量は、一度の自動救助装置18の運転使用により約20%分消費される。
【0023】
この後、商用電源16が復旧(Power recover)してバッテリー電源17が充電(CHARGING)される状態となると、CHARGING表記の点灯部が黄色で点灯表示される表示パターンP4に至り、バッテリー電源17が約10%充電アップした状態で2回目の停電(Power filure)状態になったとする。こうした場合、何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態になった後に自動救助装置18が再起動(ARD start)して表示パターンP2のUnder ARD表記の点灯部が青色で点灯表示されるように推移して動作終了(ARD finish)した時点では、再び何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態となる。このとき、バッテリー電源17の蓄電残量は、二度の自動救助装置18の運転使用により約30%分消費される。
【0024】
更に、商用電源16が再度復旧(Power recover)してバッテリー電源17が再度充電(CHARGING)される状態となると、CHARGING表記の点灯部が黄色で点灯表示される表示パターンP4に至り、バッテリー電源17が約10%充電アップした状態で3回目の停電(Power filure)状態になったとする。こうした場合、何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態になった後に自動救助装置18が再々度起動(ARD start)して表示パターンP2のUnder ARD表記の点灯部が青色で点灯表示されるように推移して動作終了(ARD finish)した時点では、再び何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態となる。このとき、バッテリー電源17の蓄電残量は、三度の自動救助装置18の運転使用により約40%分消費される。
【0025】
この後、商用電源16が再々度復旧(Power recover)してバッテリー電源17が再々度充電(CHARGING)される状態となると、CHARGING表記の点灯部が黄色で点灯表示される表示パターンP4に至り、バッテリー電源17が約10%充電アップした状態で4回目の停電(Power filure)状態になったとする。こうした場合、何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態になった後に自動救助装置18が4回目の起動(ARD start)を行って表示パターンP2のUnder ARD表記の点灯部が青色で点灯表示されるように推移して動作終了(ARD finish)した時点では、再び何れの表記における点灯部についても点灯表示しない表示パターンP1の状態となる。このとき、バッテリー電源17の蓄電残量は、三度の自動救助装置18の運転使用により約50%分消費される。
【0026】
こうした状態から更に商用電源16が4回目の復旧(Power recover)となってバッテリー電源17が4回目の充電(CHARGING)状態となると、CHARGING表記の点灯部が黄色で点灯表示されると共に、DISCHARGE表記の点灯部が赤色で点灯表示されて警報が発せられる表示パターンP3の状態となった後、充電を継続させる過程で自動救助装置18の運転使用回数分の3回分(Charged for 3 oprations)超えになるとCHARGING表記の点灯部が黄色で点灯表示される表示パターンP4に至り、フル充電に至った時点でFULL CHARGE表記の点灯部が緑色で点灯表示される表示パターンP5となり、最終的に初期状態と同様な状態に至る。
【0027】
ところで、実施例に係るエレベータ装置におけるエレベータ制御システムでは、制御盤3が解析演算した結果のバッテリー電源17の蓄電状態情報の表示に際して、現状のバッテリー電源17の蓄電残量が自動救助装置18に係る運転何回分に相当するのかをホールインジケータ13や監視室14の監視端末15の端末表示部15aへ表示するように制御を行わせることもできる。こうした場合、図3中のバッテリー電源17の蓄電残量変化(Battery Charging Rate[%])を参照すれば、自動救助装置18による運転使用可能回数は初期状態で5回分、1回目の停電後には4回分、2回目の停電後には3.5回分、3回目の停電後には3回分、4回目の停電後には2回分を表示することになる。更に、こうした上で制御盤3が自動救助装置18による運転使用相当分についてのバッテリー電源17の蓄電残量を図3を参照して説明したように段階的に点灯表示する制御を行えば、バッテリー電源17の蓄電残量が自動救助装置18の運転使用回数分の3回分を切ると、商用電源16の復旧時にCHARGING表記及びDISCHARGE表記の点灯部の点灯表示が行われると共に、DISCHARGE表記に対する警報が発せられるため、バッテリー電源17の蓄電残量が少ない状態であることを乗りかご1の利用者やエレベータの監視者が認識することができる。尚、バッテリー電源17の蓄電残量の自動救助装置18の運転使用回数分として示した3回分はあくまでも一例であり、例えば2回分とする等、他の形態にしても良い。
【0028】
以上に説明した通り、実施例に係るエレベータ装置におけるエレベータ制御システムでは、制御盤3が異常発生時のバッテリー電源17に切り替えての電力供給による乗りかご1の走行時に自動救助装置18を起動させての運転使用に伴う放電による電力消費量、及び異常発生復旧後の商用電源16からの電力供給により充電されての蓄電量の関係に基づいてバッテリー電源17の蓄電残量を解析演算した結果を含む蓄電状態情報を任意な階床(各階床)の乗場の乗場ドア近傍の利用者が目視可能な位置に設けられたホールインジケータ13と監視室14に設置された監視端末15の端末表示部15aとの少なくとも一方へ表示する制御を行うため、エレベータのバッテリー電源17の蓄電状態を報知させての乗りかご1の利用者による利用や監視室14の管理者の保守管理に係るサービスが十分に図られるようになる。この結果、エレベータのバッテリー電源17の蓄電残量を利用者や管理者に表示し、利用者の乗りかご1内での閉じ込めが生じるリスクを報知させることができるため、乗りかご1内での閉じ込めリスクを承知の上で乗車の判断を利用者に任せるのか、或いは商用電源16の電力供給復旧後も十分な蓄電量となるまでバッテリー電源17への充電を行わせてエレベータを停止させるのかを管理者側が決定でき(管理者以外の保守点検作業者や建物の所有者に委ねられることもある)、非常時における適用性の高いエレベータ利用が具現される。
【0029】
尚、図1を参照して説明した実施例に係るエレベータ制御システムを適用したエレベータ装置は、昇降路11を昇降する乗りかご1が1系統である構成を説明したが、乗りかご1が2系統以上併設される多系統のエレベータ装置でも同様に適用できるため、本発明のエレベータ制御システムは実施例で開示した形態に限定されない。
【符号の説明】
【0030】
1 乗りかご
2 釣合い錘
3 制御盤
4 巻上機
5 振動計
6 調速機
7 主ロープ
8 調速機ロープ
9 コンペンロープ
10 テールコード
11 昇降路
12 機械室
13 ホールインジケータ(乗場表示部)
14 監視室
15 監視端末
15a、19a 端末表示部
16 商用電源
17 バッテリー電源
18 自動救助装置(ARD)
19 保守点検用携帯端末
図1
図2
図3