(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543239
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】積層型モーター、及び積層型発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20190628BHJP
H02K 16/04 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
H02K16/02
H02K16/04
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-234887(P2016-234887)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-93617(P2018-93617A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】508098534
【氏名又は名称】モディアクリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】國井 真澄
【審査官】
若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−510677(JP,A)
【文献】
特開2009−284578(JP,A)
【文献】
特開2004−304912(JP,A)
【文献】
特開2009−033946(JP,A)
【文献】
特開2003−348805(JP,A)
【文献】
特開2000−333429(JP,A)
【文献】
実開平2−33902(JP,U)
【文献】
特開2008−99367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
H02K 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する固定子と回転子と中心軸を備えた積層型モーターであって、
前記回転子は前記中心軸の外周に固定されて所定の間隔で同心円上に設置されており、
前記固定子は前記回転子と前記回転子の間に同心円上に設置されており、
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、
前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、
前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置することを特徴とする積層型モーター。
【請求項2】
複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型モーターであって、
前記固定子は所定の間隔を置いて同心円上に設置されており、
前記回転子は前記固定子と前記固定子の間に同心円上に設置されており、
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、
前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、
前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置することを特徴とする積層型モーター。
【請求項3】
複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する固定子と回転子と中心軸を備えた積層型発電機であって、
前記回転子は前記中心軸の外周に固定されて所定の間隔で同心円上に設置されており、
前記固定子は前記回転子と前記回転子の間に同心円上に設置されており、
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、
前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、
前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置することを特徴とする積層型発電機。
【請求項4】
複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型発電機であって、
前記固定子は所定の間隔を置いて同心円上に設置されており、
前記回転子は前記固定子と前記固定子の間に同心円上に設置されており、
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、
前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、
前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置することを特徴とする積層型発電機。
【請求項5】
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の積層型モーターまたは積層型発電機。
【請求項6】
前記固定子と前記固定子との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリングを前記固定子と一体化させつつ介在させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層型モーターまたは積層型発電機。
【請求項7】
前記回転子と前記回転子との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリングを前記回転子と一体化させつつ介在させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層型モーターまたは積層型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直方向において円盤状の固定子と円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層した積層型モーター及び積層型発電機に関する。さらに言えば、固定子と回転子を垂直方向に交互に積層することにより磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現することができ、または従来の発電機よりも発電効率を向上させると共に、磁場解析に基づいた垂直方向における永久磁石の配置等により磁束密度分布を制御することで漏れ磁束の発生が殆ど無い積層型モーター、及び積層型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターの出力を向上させるためには、トルク(回転力)上げる必要がある。トルクを上げるには、磁界強度を上げる、電流値を上げる、磁束密度を上げる等の方策が考えられる。ラジアルギャップ型モーターにおいては、磁界強度は電流と巻き数に比例することから、通常はコイルの巻き数を増やしトルクを上げようとするが、その分、永久磁石とコイルの隙間(ギャップ)が大きくなり過ぎて効率が低下し、コギングトルク(トルク変動による悪影響)により効率が低下してしまう。さらに、電流を大きくすると導線の電気抵抗(=エネルギーの損失)による発熱が起こり、導線同士の絶縁が維持できなくなることから、モーターを空気や水などの冷媒により冷却する必要があり、このことも効率を低下させている。
【0003】
一方、アキシャルギャップ型モーターにおいては、コギングトルク(トルク変動による悪影響)が発生しないことから、ラジアルギャップ型モーターより効率が良いものの、コイルの巻き方・巻き数、コイルと永久磁石の関係、発熱等の課題も多いし、従来型アキシャルギャップ型モーター(特開2002−320364)において、固定子と回転子を其々一層のみで実現しようとすると、軸線の垂直方向に広がる方向に拡大することになり小型化することができない。
【0004】
また、ラジアルギャップ型モーターもアキシャルギャップ型モーターも、永久磁石を厚くすることで磁束密度を大きくしようとするとヨークを兼ねたモーターケースも重量が増加し、さらに、ヨーク側へ流れ出る磁束は利用されることがない。そのため、磁石自体の磁束密度を上げるための開発が主流になって行くと思われるモーター技術の流れにおいて、更なる強磁性磁石の開発にも限度があるものと考えられる。尚、モーターと発電機は構造が同じであるので、モーターの出力向上は、発電機の発電効率の向上に密接な関連があると言える。
【0005】
一方、エネルギー問題や少子高齢化社会といった今後の私たちの生活を支える技術として、ハイブリッドカーや電気自動車(輸送用車両、工作機械等)、介護や人の生活支援等を行うロボットの開発が進められている。これらの製品を開発するためには、現状よりも小型で扱い易く、エネルギー効率が良く、高出力であるモーターが必要不可欠となってくると言われている。現在最も普及している電磁モーターは高出力化に伴い重量が増し、発熱量が増すために効率が悪くなるという特徴があり、将来的に自動車やロボット等に使用するモーターとしては大きな欠点となってしまうことになる。同様な観点で見れば、モーターと発電機は構造が同じであるので、モーターの高出力小型化は、発電機の発電効率の向上に密接な関連があると言える。
【0006】
特許文献1には、「軸線及び前記軸線に沿って間隔をおいて配置された複数の層を有し、それぞれの層が、前記軸線に関して一般的に放射方向に向けられた引き伸ばされた導線部を有する巻き線をもつ導線相集合体を含む固定子と、前記固定子と同軸の軸線を有する回転子であって、回転可能に前記固定子につながれた軸と、透磁率、軸線、第1及び第2の面及び複数の扇形の極、厚さを定める前記面の間の軸方向の距離を有し、前記第1の面のそれぞれの極が前記第1の面の横方向に隣接した極と反対の極性であり、前記第2の面の軸方向に隣接した極と反対の極性である、前記軸と同軸につながれた2つの環状の外部磁石と、それぞれが透磁率、軸線、第1及び第2の面及び複数の扇形の極、厚さを定める前記面の間の軸方向の距離を有し、前記第1の面のそれぞれの極が前記第1の面の横方向に隣接した極と反対の極性であり、前記第2の面の軸方向に隣接した極と反対の極性である、前記外部磁石の間に前記軸と同軸につながれた少なくとも1つの環状の中央磁石とを備え、それぞれの磁石のそれぞれの扇形の前記第1及び第2の面の1つが、反対の極性を有する隣接した磁石の極に対して固定して整列された極を有する前記回転子と、それぞれが前記外部磁石の前記透磁率より大きい透磁率を有し、外部磁石の前記第1及び第2の面の1つに隣接して配置された2つの端キャップとを備えたモーター/発電機。(特許文献1:請求項1そのまま)」が開示されている。即ち、固定子と回転子を、垂直方向における間隔を取りつつ積層した構造を有するモーター/発電機(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−510677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係るモーター/発電機(特許文献1:発明の名称)は、確かに固定子と回転子を、間隔をおいて垂直方向に積層したモーター(特許文献1:
図3等参照)であるが、固定子と回転子を垂直方向に交互に積層することにより積層された永久磁石の磁束線分布等について何らの工夫もされておらず、いわゆる漏れ磁束についての対策が全く為されていない。このため、特に磁束が外部に漏れてしまうことで何らかの影響を受けてしまうような精密機器等における使用には適していないという欠点があるものと考えられる。
【0009】
本発明の目的は、固定子と回転子を垂直方向に交互に積層することにより磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現することができると共に、磁場解析に基づいた垂直方向における永久磁石の配置等により磁束密度分布を制御することで漏れ磁束が殆ど無い積層型モーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する固定子と回転子と中心軸を備えた積層型モーターであって、前記回転子は前記中心軸の外周に固定されて所定の間隔で同心円上に設置されており、前記固定子は前記回転子と前記回転子の間に同心円上に設置されて
おり、前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置する積層型モーターであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型モーターであって、前記固定子は所定の間隔を置いて同心円上に設置されており、前記回転子は前記固定子と前記固定子の間に同心円上に設置されて
おり、前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置する積層型モーターであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する固定子と回転子と中心軸を備えた積層型発電機であって、前記回転子は前記中心軸の外周に固定されて所定の間隔で同心円上に設置されており、前記固定子は前記回転子と前記回転子の間に同心円上に設置されて
おり、
前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置する積層型発電機であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明は、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型発電機であって、前記
固定子は所定の間隔を置いて同心円上に設置されており、前記
回転子は前記固定子と前記固定子の間に同心円上に設置されて
おり、前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記複数の永久磁石は、垂直方向において磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置する、或いは、垂直方向において積層の両端部の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように配置する積層型発電機であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載した発明において、前記固定子は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えており、前記回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えている積層型モーターまたは積層型発電機であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載した発明において、前記固定子と前記固定子との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリングを前記固定子と一体化させつつ介在させる積層型モーターまたは積層型発電機であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載した発明において、前記回転子と前記回転子との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリングを前記回転子と一体化させつつ介在させる積層型モーターまたは積層型発電機であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特徴を端的に言えば、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型モーター、或いは、複数の中空円盤状の固定子と複数の中空円盤状の回転子を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型発電機である。本発明に係る積層型モーター、及び積層型発電機は以下に記載するような様々な構成を取ることができる。即ち、中心軸等に固定されたインナー側が回転子になり中心軸等に固定されないアウター側が固定子になる構成と(インナー回転仕様)、逆に、中心部筒状空間に設置した円柱構造物等に固定されたインナー側が固定子になりアウター側が回転子になる構成(アウター回転仕様)がある。さらに、回転子に永久磁石を配置し固定子に巻線コイルを配置する構成と、逆に、固定子に永久磁石を配置し回転子に巻線コイルを配置する構成がある。本発明は、上記に記載した構成の組み合わせを考慮すると種々のバリエーションを採ることができる。
【0020】
上記のバリエーションの中から一例として、インナー回転仕様で回転子に巻線コイル(固定子に永久磁石)が配置されているものについて、本発明の効果を説明すると、複数の中空円盤状の回転子が中心軸の外周に所定の間隔(垂直方向)を取りつつ同心円上に固定されている。それぞれの中空円盤状の回転子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイルを備えている。
【0021】
一方、複数の中空円盤状の固定子が中空円盤状の回転子と中空円盤状の回転子の間に同心円上に設置されており、それぞれの固定子は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石を備えている。このように固定子と回転子を垂直方向に交互に積層すること(永久磁石のS極とN極が垂直方向に交互に来るように配置)により個々の永久磁石から出る磁力線を垂直方向に合成させることにより磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現することができるようになったし、従来の発電機よりも発電効率を向上させることができるようになった。
【0022】
また本発明によれば、垂直方向に磁束密度が異なる永久磁石を配置(永久磁石のS極とN極が垂直方向に交互に来るように配置)した積層型モーター、及び積層型発電機であるので、磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現すること(従来の発電機よりも発電効率を向上させること)ができると共に、磁場解析に基づいた垂直方向における磁束密度の異なる永久磁石の配置等により磁力線分布を制御することで漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター、及び積層型発電機を実現することができるようになった。
【0023】
さらに、垂直方向に積層された中空円盤状の固定子(または回転子)と中空円盤状の固定子(または回転子)との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリングを固定子(または回転子)と一体化させつつ介在させる積層型モーター、及び積層型発電機であるので、リング形状のスペーサーリングの厚さをそれぞれの層によって変化させることで磁力線分布を制御し漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター、及び積層型発電機を実現することができるようになった。
【0024】
積層型のモーターにすることにより、一層で発生させるべきトルクを複数の層で分担することになり小型化が可能となる。モーターを小型化することができれば様々な用途の広がる可能性が出てくると考えられる。昨今は地球温暖化の原因として、CO
2排出の抑制が叫ばれるようになり、今後の世の中の流れとして、自然エネルギー活用も含めた、効率の良い、アキシャルギャップモーターの開発が主流となると考えられる。
【0025】
さらに積層型のモーターにすることにより、導線の巻き数も各層其々で変化させることができることから、モーターのトルク出力も現状のモーターよりも細かく制御できるようになったので、製品の設計上の問題等により、モーターの出力において過不足が生じた場合も、回転子と固定子の積層枚数を調整することによる対応が可能となり、モーターそのものを交換しなくてもよく、設計変更にかかる工数も削減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施例に係る積層型モーター、及び発電機の基本構造を説明するための図である。
【
図2】永久磁石を所定の間隔を置いて配置した中空円盤状の回転子(または固定子)を示した図である。
【
図3】巻線コイルを所定の間隔を置いて配置した中空円盤状の回転子(または固定子)を示した図である。
【
図4】垂直方向に磁場の大きさの異なる永久磁石を配置する構成について説明するための図である。
【
図5】インナー回転仕様の積層型モーターの断面図である。
【
図6】具体例としての積層型発電機の全体上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<積層型モーター、及び積層型発電機の基本構造>
以下、本発明に係る積層型モーター10、及び積層型発電機11の基本構造について、
図1〜
図3に基づいて詳細に説明する。本発明の技術的思想を具現化した実施例として、
図1に記載したような中心軸50が回転するインナー回転仕様の積層型モーター10を中心に発明の詳細を説明することとする。尚、アウター回転仕様の積層型モーター10(各符号はカッコ書きとして記入)として
図1を見ると、中心部筒状空間40に設置した円柱構造物等に固定された固定子20と回転子30が交互に積層された状態になっている。また、本発明に係る積層型発電機11における基本構造は、積層型モーター10と全く同じである。
【0028】
図1は、本実施例に係る積層型モーター10の基本構造を説明するための図である。
図2は、本実施例に係る積層モーター10において永久磁石70を所定の間隔を置いて配置した中空円盤状の回転子30(または固定子20)を示した図である。
図3は、本実施例に係る積層モーター10において巻線コイル60を所定の間隔を置いて配置した中空円盤状の回転子30(または固定子20)を示した図である。
【0029】
図1に記載したように、本発明に係る積層型モーター10を端的に表現すれば、複数の中空円盤状の固定子20と複数の中空円盤状の回転子30を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型モーター10である(アウター回転仕様では、複数の中空円盤状の固定子(30)と複数の中空円盤状の回転子(20)を同芯円上に交互に積層することにより形成する積層型モーター10となる)。
【0030】
そして、
図2に記載したように、其々の固定子20は周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石70を備えており、
図3に記載したように、其々の回転子30は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイル60を備えている。尚、本発明に係る積層型モーター10の固定子20は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイル60を備えた構成にしても良く、本発明に係る積層型モーター10の回転子30は、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石70を備えた構成にしても良い。
【0031】
図4は、本発明に係る積層型モーター10における垂直方向に磁場の大きさの異なる永久磁石70を配置する構成について説明するための図である。要するに、本発明におけるさらなる特徴を説明するために、永久磁石70を周方向に配置した複数の固定子20(または回転子30)のみを抽出した図である。
【0032】
本発明は、固定子20と回転子30を垂直方向に交互に積層すること(永久磁石70のS極とN極が垂直方向に対面するように配置)により個々の永久磁石70から発生する磁力線を垂直方向において合成させることにより、全体として磁束密度を大きくするという特徴に加え、さらなる特徴として、磁場解析に基づいて垂直方向における磁束密度の異なる永久磁石70の配置等により磁力線分布を制御することで漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター10、及び積層型発電機11を実現することができる。
【0033】
上記の磁力線分布を制御することについて具体的に説明する。
図4に記載したように、永久磁石70を周方向に配置した複数の固定子20(または回転子30)のみを抽出して見ると、本発明に係る積層型モーター10は、垂直方向において磁束密度の異なる永久磁石70を所定の間隔を置いて積層したものであることが分かる。
図4の部分拡大図においては説明容易化のため、磁束密度の大小を永久磁石70の厚さで表現している。即ち、永久磁石70の厚さが厚いほど磁束密度が大きいことを表している。
図4の右上の部分拡大図には磁束密度が、上から順に小、中、大、中、小、の順になるように配置しており、言い換えると、磁束密度が中心に向かって次第に大きくなり、積層の中心部において最大値をとるように配置している。一方、右下の部分拡大図には、磁束密度が上から順に大、小、小、小、大の順になるように配置しており、言い換えると、積層の両端部(上端部、下端部)の磁束密度を最大にして、それ以外の部分において磁束密度は小さくなるように永久磁石を配置している。
【0034】
上記に記載した永久磁石70の配置の根拠としては、磁場解析による解析結果を考慮しているのであるが、現状の磁場解析の結果においては、特に磁束漏れが少ないとされる永久磁石70の配置である。しかしながら、本発明の思想からすれば、上記のような永久磁石70の配置に限定されるのでは無く、さらに、より磁場漏れが少ない永久磁石70の配置が見つかれば、上記のような永久磁石70の配置に拘束されずに、これらを採用するべきであることは言うまでもない。
【0035】
<積層型モーター、及び積層型発電機の実施形態>
以下、本発明に係る積層型モーター10、及び積層型発電機11の一実施形態について、
図5〜
図6に基づいて詳細に説明する。
図5は、本実施例に係るインナー回転仕様の積層型モーター10の断面図である。
図6は、本実施例に係る積層型発電機11の全体上面図である。
【0036】
図5に記載したように、本実施例に係る積層型モーター10は、中心軸50に固定されて中心軸50の回転に連動して回転する回転子30と、中心軸50に固定されていない固定子20から構成されている。固定子20と回転子30の位置関係は、固定子20が回転子30と回転子30の間に、回転子30が、固定子20と固定子20の間にというように、其々が垂直方向において互い違いに、回転子30の回転が妨げられないように所定の間隔を開けて設置されている。ある回転子30と、その回転子30の上側(固定子20を挟んで)、又は下側(固定子20を挟んで)、或いは上下(固定子20を挟んで)に設置された回転子30は、スペーサーリング80を介して一体化されており、其々の回転子30がバラバラにならないようになっている。
【0037】
図6は、本実施例に係る積層型発電機11の全体上面図である。本発明に係る積層型発電機11は、複数の中空円盤状の固定子20と複数の中空円盤状の回転子30を同芯円上に交互に積層することにより形成されている。
図6に記載したように、複数の中空円盤状の固定子20と複数の中空円盤状の回転子30を同芯円上に交互に積層することにより、同時に形成される中心部筒状空間40に回転子30と接続した複数の羽根が設置されている。中心部筒状空間40に設置した複数の羽根に水等が流れることにより羽根を回転させ、羽根の回転と連動させて回転子30を回転させることにより、積層型の水力発電機として使用することができる。
<積層型モーター、及び積層型発電機の効果>
【0038】
本発明の特徴を端的に言えば、複数の中空円盤状の固定子20と、複数の中空円盤状の回転子30を、其々同芯円上に交互に積層することにより形成することにある。本発明に係る積層型モーター10、及び積層型発電機11は、中心軸50(中心部筒状空間40に設置した円柱構造物等)に固定されたインナー側が回転子30になるインナー回転仕様、アウター側が回転子30になるアウター回転仕様がある。其々の仕様においてさらに、回転子30に永久磁石70を配置し固定子20に巻線コイル60を配置する構成と、逆に、固定子20に永久磁石70を配置し回転子30に巻線コイル60を配置する構成があるので、組み合わせて4種類の仕様が考えられる。これらに加え、中心軸50とするか中心部筒状空間40にするかを選択できる。
【0039】
本実施例においては、複数の固定子20が中心軸50(または中心部筒状空間40に設置した円柱構造物等)の外周に所定の間隔を置いて同心円上に固定され、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の巻線コイル60を備えており、回転子30は固定20と固定子20の間に同心円上に設置されており、周方向に沿って所定の間隔を置いて配置された複数の永久磁石70を備えているので、固定子20と回転子30を垂直方向に交互に積層すること(S極とN極が垂直方向に交互に来るように配置)により個々の永久磁石70から出る磁力線を垂直方向に合成させることにより磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現することができるようになったし、従来の発電機よりも発電効率を向上させることができるようになった。
【0040】
また本発明によれば、垂直方向に磁場の大きさの異なる永久磁石70を配置(S極とN極が垂直方向に交互に来るように配置)する積層型モーター10、及び積層型発電機111であるので、磁束密度を大きくし、従来のモーターよりも高出力を実現することができると共に、磁場解析に基づいた垂直方向における永久磁石70の配置等により(垂直方向に磁場の大きさの異なる永久磁石を配置する)磁束密度分布を制御することで漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター10、及び積層型発電機11を実現することができるようになった。
【0041】
そして、固定子20(または回転子30)と固定子20(または回転子30)との間に生じる隙間の外端部にリング形状のスペーサーリング80を固定子20(または回転子30)と一体化させつつ介在させる積層型モーター10、及び積層型発電機11であるので、リング形状のスペーサーリング80の厚さをそれぞれの層によって変化させることで磁束密度分布を制御して、漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター10、及び積層型発電機11を実現することができるようになった。
【0042】
さらに、アウター回転仕様の積層型モーター10、及び積層型発電機11において、ある回転子30と、その回転子30の上側(固定子20を挟んで)、又は下側(固定子20を挟んで)、或いは上下(固定子20を挟んで)に設置された回転子30は、スペーサーリング80を介して一体化されており、其々の回転子30がバラバラにならないようになっている。即ち、回転子30同士が、スペーサーリング80を介して固定されているので永久磁石70の垂直方向における配置がバラつくことが無い。即ち、垂直方向における位置関係のズレがないので、回転によっても磁束漏れが最小限に押さえられた永久磁石同士の垂直方向における配置が崩れることが無い。
【0043】
<積層型モーター、及び積層型発電機の変更例>
本発明に係る積層型モーター、及び積層型発電機は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、固定子、回転子、中心部筒状空間、中心軸、巻線コイル、永久磁石、スペーサーリング等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、垂直方向における永久磁石の磁束密度を変化させることにより磁束密度分布を制御よる方式では無く、磁場解析を基に、垂直方向における巻線コイルの巻き数を変化させることにより磁束密度分布を制御して、漏れ磁束が殆ど無い積層型モーター、及び積層型発電機を実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る積層型モーター、及び積層型発電機は上記の如く優れた効果を奏するものであるので、従来のモーターよりも高出力を実現することができ、または従来の発電機よりも発電効率を向上させる、モーターの分野及び発電機の分野において、高出力かつ小型化モーター及び発電機として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10・・積層型モーター
11・・積層型発電機
20・・固定子
30・・回転子
40・・中心部筒状空間
50・・中心軸
60・・巻線コイル
70・・永久磁石
80・・スペーサーリング