(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御分析ユニット(10)は、前記第1のパルス列と前記神経活動との前記位相同期が最大であるピッチ(C)を、前記第1のパルス列を印加したことに応じて記録された前記測定信号を参照して選択するように構成されている、請求項1に記載の装置(1)。
前記制御分析ユニット(10)は、前記第1のピッチ(C)を有する音を前記患者の前記治療用の刺激のために追加的に選択するように構成されている、請求項10に記載の装置(1)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
音響的脱同期化神経刺激を較正するための装置1を、本発明の一実施形態として、
図11に概略的に示す。装置1は、制御分析ユニット10、刺激ユニット11、および、測定ユニット12を備える。装置1の動作中、制御分析ユニット10は特に、刺激ユニット11を制御する。この目的のために、制御分析ユニット10は、刺激ユニット11によって受信される制御信号21を生成する。刺激ユニット11は、制御信号21を参照して刺激22(すなわち、音)を生成し、これら刺激22は患者に印加される。刺激ユニット11、および、特に制御分析ユニット10は、非侵襲性ユニットである(すなわち、これらユニットは、装置1の動作中に患者に体外に配置され、患者の体内に外科的に埋め込まれていない)。
【0019】
音22によって実現される刺激効果を測定ユニット12によって観察する。測定ユニット12は、患者において測定された1つ以上の測定信号23を記録し、それら測定信号23を必要に応じて電気信号24に変換し、制御分析ユニット10に供給する。特に、刺激されたターゲット領域内、または、上記ターゲット領域の神経活動に十分密接に相関している場合は、当該ターゲット領域の関連領域内の神経活動(例:筋活動)を測定ユニット12によって測定することができる。制御分析ユニット10は信号24を処理し(例えば、信号24を増幅およびフィルタリングすることができ)、処理した信号24を分析する。特に、制御分析ユニット10は、上記分析結果を参照して刺激ユニット11を制御する。一例を挙げると、制御分析ユニット11は、制御分析ユニット11の作業を行うためのプロセッサ(例えば、マイクロコントローラ)を含む。
【0020】
CR刺激の際の装置1を
図11に示す。患者の脳26内の少なくとも1つのニューロン集団27が病的に同期した発振性神経活動を有する。刺激ユニット11は、音22が患者の耳を介して受け取られ、患者の耳から神経系を介して脳26内の病的な活動状態のニューロン集団27に送られるように音22を患者に印加する。音22は、ニューロン集団27の病的に同期した活動を脱同期化するように設計されている。刺激によって影響されるニューロンの同時発生率を低下させることによって、シナプス荷重を低下させることができるため、病的に同期した活動を生じる傾向を学習させないことができる。
【0021】
音響刺激は内耳において神経インパルスに変換され、聴神経を介して聴覚野に送られる。聴覚野の特定の部分が、聴覚野の周波数局在性配置(tonotopic arrangement)によって、特定の周波数での内耳への音響刺激に基づいて活性化する。
【0022】
したがって、刺激ユニット11は、脳26の様々な領域を個別に刺激することができ、印加された刺激22は、神経導線(neural conductors)を介して脳26内の様々なターゲット領域に送られる。CR刺激時に、ターゲット領域を場合によって様々な、かつ/または、時刻をずらした刺激22で刺激することができる。
【0023】
CR刺激において、ニューロン集団27内の刺激されたニューロンの神経活動の位相をリセットする刺激22を病的に同期した発振性の活動を有するニューロン集団27に印加する。刺激されたニューロンの位相は、リセットによって現在の位相値とは無関係に特定の位相値(例えば、0°)に、または、特定の位相値に近似して設定される(実際には、正確に特定の位相値に設定することは不可能であり、また、CR刺激の成功に不要でもある)。このように、病的なニューロン集団27の神経活動の位相は、直接的な刺激によって制御される。さらに、病的なニューロン集団27の様々な箇所を刺激することができるため、病的なニューロン集団27の神経活動の位相は、様々な刺激箇所において様々な時刻でリセットされることができる。その結果、刺激の印加前にはニューロンが同期しかつ同じ周波数および位相の活動状態であった病的なニューロン集団27は、
図11に概略的に示した参照数字28,29,30,31(図示の例では一例として、4つの部分集団を示す)が付された複数の部分集団に分けられる。部分集団28〜31のそれぞれの中では、位相がリセットされた後もニューロンは依然として同期しており同じ病的な周波数で発火する。しかしながら、部分集団28〜31のそれぞれにおいて、刺激によって、神経活動に関連する位相が強制的に決定される。すなわち、位相のリセットの後、個々の部分集団28〜31の神経活動は、同じ病的な周波数の、ほぼ正弦波曲線を依然として有するが、位相が異なっている。
【0024】
ニューロン間の病的な相互作用のため、刺激によって発生した少なくとも2つの部分集団の状態は不安定であり、ニューロン集団27全体としては、完全な脱同期状態に急速に近づき、この脱同期状態では、ニューロンは相関せずに発火する。このように、望ましい状態(すなわち完全な脱同期状態)は、時刻をずらしたかまたは位相を変位させた刺激22の印加直後には得られないが、通常では、病的な周波数の2〜3周期以内にまたは場合によっては1周期経過しないうちに導入される。
【0025】
刺激の成功を説明するための1つの理論は、最終的に望まれる脱同期状態が病的に高められたニューロン間の相互作用によってのみ可能であることに基づく。この点に関し、病的な同期の原因である自己組織化プロセスが利用されている。病的に高められたニューロン間の相互作用には、集団27全体が様々な位相を有する部分集団28〜31に分けられ、次いで脱同期化が行われる効果もある。対照的に、病的に高められたニューロン間の相互作用なしには、脱同期化は行われないであろう。
【0026】
さらに、乱された神経回路網の結合性をCR刺激によって再構成することができることにより、長期間効果のある治療効果をもたらすことができる。得られるシナプス的転換(synaptic conversion)は、神経疾患または精神病の有効な治療において非常に重要である。
【0027】
1.センサを有する測定ユニット:これらセンサは、適切なデータ分析を可能にする信号を測定する。データ分析とは、特に(a)(タイミングに関して)厳密に周期的なパルス列と病的な発振性の活動との間の位相固定(すなわち位相同期)、および、(b)病的な発振性活動の振幅の増減を検出することである。上記信号は、すなわち、脳波(EEG)信号、脳磁図(MEG)信号、局所電場電位(LEP)等である。
【0028】
侵襲性センサ:埋め込み型電極(例えば、上皮質電極、硬膜外電極、深部電極)。
【0029】
非侵襲性センサ:(非埋め込み型)EEG電極(好ましい装置形態)、MEGセンサ(SQUIDS)。あまり好ましくない形態として、付随する筋活動の筋電図検査(EMG)を使用した測定による神経活動の間接的測定がある。
【0030】
2.刺激ユニット:患者または被験者の一方のまたは両方の耳から刺激する目的(例えば、音、トーン、雑音)のために、音響信号を一方側または両側で印加し、かつ、異なる信号を両側で印加する、音響刺激のための装置である。
【0031】
3.制御分析ユニット:このユニットは、測定した信号を増幅する。制御分析ユニットは、コンピュータまたはコントローラ等のように固定され、配線された状態で設けられることができる。特に、制御分析ユニットは、周期的刺激と検査対象の神経律動との位相同期の特徴を測定するためのデータ分析プロセスを行う。
【0032】
例えば、時刻τ
1,τ
2,…,τ
Mに刺激を印加する。これは、周期的な刺激シーケンスである。換言すれば、刺激周期(すなわち刺激シーケンスの周期)は一定:T
stim=τ
j+1−τ
j(すべてのjについて、j=1,2,…,M−1であり、Mは個別の刺激の数を表す)である。関連する刺激周波数、すなわち繰返し率は、F
stim=1/T
stimである。
【0033】
刺激周波数F
stimは、当業者に知られている各疾患に対応する病的な周波数帯域(これは、CRを使用して脱同期化されるべき病的律動に一致する)の特徴に関する先行する知識に従って選択されるか、または、脱同期化対象の病的な神経活動の、センサを介した計測のフィードバック、および、当業者に知られている上記病的な周波数帯域における周波数ピークの測定によって調節される。
【0034】
(●)周期的刺激の位相:周期的な刺激周波数の位相は、
【数1】
である(例えば、非特許文献4参照)。このように選択される位相は、第1の刺激が印加される時に無くなる(
【数2】
)。または、位相変位を「組み込む」("built in")こともできる。かかる位相変位は、結果を変化させず、利点ももたらさない。位相変位を、異なる開始時を選択するか(
【数3】
、または、はっきりと位相変位θを加える
【数4】
ことにより「組み込む」ことができる。
【0035】
(●)神経発振(neural oscillation)の位相:検査対象の神経律動の位相
【数5】
は、バンドパスフィルタリングまたは経験的モード分解によって測定された、病的な発振性の活動を表す信号のヒルベルト変換によって求められる。バンドパスフィルタリングとは対照的に、経験的モード分解では、様々な周波数範囲の生理学的に関連するモードをパラメータとは無関係に求めることができる(非特許文献5参照)。経験的モード分解と、次いで行うヒルベルト変換との組合せをヒルベルト−ホアン変換と呼ぶ(非特許文献6参照)。これにより、神経発振の瞬時位相(時間依存的位相)
【数6】
に加えて、当該神経発振の瞬時振幅(時間依存的振幅)A(t)も得られる。
【0036】
刺激と神経律動の位相同期:
(●)刺激と神経律動とのn:m位相差
【数7】
(但し、nおよびmは1〜5の範囲等の小さい整数である)を考える。これにより、刺激と神経律動との位相同期を、様々な周波数帯域において検査することができる。換言すれば、神経律動に対する刺激の効果を検査するために、刺激周波数と同じ周波数範囲(n=m=1)の律動に制限する必要がない。2πを法とするn:m位相差は、
【数8】
である。
【0037】
n:m位相同期:
(●)2πを法とするn:m位相差を特に時刻t
1,t
2,…,t
nのサンプリングレートで測定・確認する。これにより、
【数9】
の関連分布
【数10】
が得られる。かかる分布は、
【数11】
の全測定値を含むこともでき、また、例えば分析から過渡効果を排除するためにサブグループ(a>t
1かつ/またはb<t
n)のみを含むこともできる。この目的のために、例えば最初の約10回の刺激が分析から除かれる。
【0038】
(●)n:m位相同期が存在しない場合、2πを法とするn:m位相差の分布は、均等分布である(または均等分布に十分近づく)。これに対し、n:m位相同期は、
【数12】
の1つ以上の集積点が生じることを特徴としている(非特許文献7および4参照)。
【0039】
n:m位相同期が生じることは、様々な変数によって測定されることができる。以下に例を示す。
【0040】
(●)(i)
【数13】
の分布が(1つの)集積値を有する場合、この分布の循環平均値(circular mean value)を計算することができる:
【数14】
(但し、0≦S
n,m≦1であり、均等分布はS
n,m=0になる)。一方、完全な位相同期は、S
n,m=1であることを特徴とする(非特許文献4参照)。この同期指数の欠点は、分布
【数15】
が2つ以上の集積値を有する場合に、通常、上記指数が検知可能な結果をもたらさないことである。一例を挙げると、上記分布が2つの異なる位相の集積値(cluster values)を有する場合に、0に近いS
n,mの値が得られる。
【0041】
(●)(ii)したがって、集積値の数とは無関係に、高い信頼性の結果をもたらす同期指数を追加的に(またはそれのみを)計算すべきである。この目的のために、カイパー検定およびコルモゴロフ-スミルノフ検定の循環変数(circular variant)(非特許文献8〜10参照)を使用して、分布
【数16】
が均等分布である確率を求める。次いで、P値を得る。P値は、観察される分布
【数17】
が均等分布である帰無仮説を却下することができる最小レベルの有意性である。
【数18】
が均等分布である場合に、P=1になる。それに対し、
【数19】
が単一の顕著な集積値を有する場合、0に近いP値が得られる。
【0042】
(●)(iii)さらなる可能性として、分布
【数20】
のシャノンエントロピーに基づくn:m同期指数
【数21】
がある。分布
【数22】
の推定値
【数23】
から
【数24】
が得られる。最大エントロピーは、
【数25】
である。
【数26】
は相対周波数であり、この相対周波数によって、
【数27】
が第k番目の値域内にあることがわかる(非特許文献11参照)。正規化によって、
【数28】
が適用される。均等分布の場合、すなわち、n:m位相同期が完全に存在しない場合、
【数29】
が得られるのに対して、完全なn:m位相同期ではディラックの超関数(Dirac-like distribution)のようになる(すなわち、
【数30】
の全値が同じ値域内にある)ため、
【数31】
が得られる。(ii)において記載した、カイパー検定に基づくn:m同期指数に比して、シャノンのエントロピーに基づくn:m同期指数
【数32】
には、分布の集積値がより顕著な場合に、当該同期指数の値が集積値の正確な位置に依存するため、人工的な発振は
【数33】
区間における集積値の循環シフト(cyclic shift)につながる欠点がある(非特許文献10参照)。
【0043】
(●)神経律動の位相
【数34】
に対する、したがってn:m位相差
【数35】
に対する、刺激による誘発効果に加えて、神経律動の振幅A(t)に対する刺激による誘発効果をも検査する。単に、循環する神経律動を刺激によってn:mの関係にするか否かの問題ではなく、刺激によって当該神経律動の根底にあるニューロンの同期の程度も変化するか否かの問題である。刺激されたニューロン集団内の同期の高まりによって、A(t)が増大する。反対に、上記神経律動の根底にあるニューロン集団内の同期の低下は、A(t)を減少させる。したがって、比較区間における測定(例えば、刺激印加前の測定)は、振幅への効果を評価するために行われなければならない。または、パワースペクトル密度、すなわち疾患に典型的かつ当業者に知られている所定の周波数帯域のパワースペクトル密度、または、データ(上記参照)から抽出した1つ以上の経験的モードを分析することによって、振幅の効果を単純に測定することもできる。
【0044】
本発明の上記実施形態から特に2つの変形形態が得られる。
【0045】
(I)厳密に周期的なパルス列の印加中に1つ(以上)の刺激の性質を連続的に(または小さい段階的変化で)変化させる。
【0046】
この工程の重要な特徴は、周期的なパルス列の印加中に1つ以上の刺激パラメータ(例えば、ピッチ)を変化させることである。
【0047】
例:耳鳴りならびにさらなる神経疾患および精神病(例えば、ADHS、強迫性障害、うつ病)を治療するための音響的CR刺激のためのCR治療音のEEGに基づく較正。
【0048】
下位変形形態I.1:中心音を用いないCR治療音の測定
この変形形態では開始から、強力な同調を特徴とし、また、中枢神経系内の病的な同期の1つまたは複数の焦点に一致する中心領域の周囲に、治療音を左右対称に配置することを目的とする好ましい変形形態である。この工程の手順を
図1に概略的に示す。
【0049】
図1は、本発明に係わる、中心に配置された治療音(いわゆる中心音)を用いない変形形態における処理手順のフローチャートを示す。
【0050】
図2は、同調区間の(連続的にピッチを変化させた個々の周期的パルス列による)測定を示す。3つの図のすべてにおいて、X軸は時間軸である。上図は、音響刺激の大きさを概略的に示す。1つの黒色バーがピッチTの純音を表す。この純音は、ハミング窓、コサイン関数(あまり好ましくない)、または、他の好ましくは滑らかな包絡線(通常、音の時間の長さを制限する包絡線)を使用して畳み込まれている(folded)。中央の図は、周期的に印加された音のピッチTをどのように連続的に変化させるかを概略的に示す。下図は、同期指数(図では簡単にSと書く)、すなわち位相同期指数S
n,m等(上記参照)の大きさを概略的に示す。
【0051】
I.1.a 同調区間の測定
(●)パルス列と脳発振とのn:m位相同期(すなわち、n:m同調)を有する周波数範囲(すなわちピッチ範囲)を、(時間構造に対して)一定のパルス列であって、連続的に変化する(例えば、上昇および下降方向に変化する)ピッチを有するパルス列によって最初に検出する。n:m位相同期によって、病的発振のm周期が周期的刺激のn周期内に位置するように病的な神経発振に刺激を与え影響を及ぼす(非特許文献7および非特許文献4参照)。顕著な位相同期が検知されるピッチ範囲内において、特に効果的にかつ低い強度(ラウドネス)で病的な神経発振の位相ダイナミクスに影響を与えることができる。
図2に示す概略的な結果を一方で目視検査によって評価することができる。それら結果は、本発明に係わる装置によって好ましくは自動的に評価される。例えば、同期指数(
図2の下図のS)の曲線の、ピッチの大きさの上昇および下降に属する関連部分を平均することができる:
【数36】
(但し、
【数37】
であり、ピッチの上昇および下降が同じ速さで広がり、すなわち時間において左右対称であり、
【数38】
である)(
図2の中央図参照)。ピッチの上昇または下降が直線的である場合に、時間軸tを単純に経時的なピッチ軸gに変換することができる。g
0およびg
2が時刻t
0およびt
2においてパルス列のために使用されるピッチである場合、変換式は、
【数39】
である。本音響協調リセット刺激は、CR治療音のピッチ変化に対して十分にロバストであるため、
【数40】
の最大値を不適切に(すなわち非現実的に)精確に検出しなくてもよい。
【数41】
は、低域においていくぶん簡単にフィルタリングされることができる。それにより得られる曲線を
【数42】
とする。低域フィルタのパラメータによって、上記最大値が簡単に求められるべきである。
【数43】
の最大値が位置するピッチの、低域フィルタのパラメータを変化させることで生じる単純な変位は、治療の成功に影響を与えない。
【数44】
の最大値が検出される箇所のピッチを中心音Cと呼ぶ:
【数45】
。
【0052】
(●)
【数46】
が
【数47】
に対応する複数の(より正確にはK個の異なる)局所的な(複数の関連するピッチ、すなわち中心音C
1,C
2,…,C
Kを有する)最大値を有する場合、どのように進めるかについて様々な実施形態の例がある。
【0053】
(●)(i)ピッチCにおける、
【数48】
に対応する大域的な最大値のみを考慮する、すなわち
【数49】
。
【0054】
(●)(ii)主要最大値の第2のピークまたは「多数の鋸歯状の」("multi-jagged")主要ピークを考慮するために、
【数50】
に対応する
【数51】
の広がり(spread)
【数52】
を計算する:
【数53】
。さらなる評価のために、十分に顕著な局所的最大値のみを考慮すべきである。これは例えば、広がりの半分よりも大きい(すなわち、
【数54】
よりも大きい)局所的最大値のみを考慮する場合に達成されることができる。γの他の値を選択することもできる。また、広がりを扱うのではなく、標準偏差を使用する値を扱うこともできる。
【0055】
(●)局所的最大値
【数55】
(すなわち、個々のピッチC
jに対応する
【数56】
の値)を考慮するためだけでなく、むしろ局所的最大値に対応する代表値を使用するために、
【数57】
の
【数58】
がσより大きく、かつ、
【数59】
および
【数60】
(εは十分に小さい)の
【数61】
がσ以下である場合に、ピッチの広範囲にわたるピッチ知覚の相対的特性によって、連続的区間
【数62】
における広がりσの半分よりも大きいすべての値を考慮することもできる:
【数63】
(但し、通常
【数64】
が選択され、すなわち
【数65】
は区間
【数66】
に関し
【数67】
%の範囲内の広がりσの半分より大きくなくてもよい)。連続的な区間
【数68】
の代わりに、いくつかの用途ではサブ区間
【数69】
を含む区間
【数70】
を使用することもできる。このサブ区間
【数71】
は、十分小さい
【数72】
および
【数73】
を満たす:
【数74】
(但し、μが十分に大きい(すなわちμ>1)
【数75】
を満たす)。サブ区間
【数76】
を例外として、
【数77】
内のどこでも、
【数78】
は広がりσの半分よりも大きい。
【0056】
(●)加重算術平均
【数79】
(但し、
【数80】
は第j番目の区間
【数81】
の添字の集合である)をここで例えば、連続的区間
【数82】
内の、広がりσの半分よりも大きい
【数83】
の全値のために(または同様に、サブ区間
【数84】
を有する区間
【数85】
内の全値のために)計算することができる。
【数86】
内の添字jは、式が加重され過ぎないように省略されている。したがって、
【数87】
が適用される。このように、1つ以上のピッチ
【数88】
における1つ以上の(より正確には、L個の異なる)局所的最大値が得られる。
【0057】
ここで、様々な進め方を採ることができる。
【0058】
(●)(a)CR治療音を最大中心音
【数89】
のみに調節する。かかるピッチ範囲における治療が成功し次第、次のより低い中心音(すなわち、
【数90】
)に調節する。
【0059】
(b)臨床的基準に従ってCR治療音を調節する。この調節を例えば、ラウドネスが最大の耳鳴りまたは最も患者を苛立たせる耳鳴りの音部分または雑音部分に属する中心音から開始することができる。治療成功後、次にラウドネスが大きいかまたは次に苛立たせる音部分または雑音部分に対応する中心音に調節する。
【0060】
(c)治療のための第1の中心音を、本発明に係わる装置を使用して行われる試験の枠組み内で得られる動的マーカによって選択する。例えば、以下の動的マーカを使用することができる。
【0061】
(●)(I)
【数91】
が広がりσの半分よりも大きい、最大区間
【数92】
に属する中心音から開始する。サブ区間
【数93】
の領域は、
【数94】
が広がりσの半分よりも大きくならない区間範囲
【数95】
から導き出されるべきである。かかる中心音の範囲内での治療の成功後、上記閾値より上の(すなわち、広がりσの半分よりも大きい)
【数96】
を有する、次の広いピッチ区間に属する次の中心音を治療する。
【0062】
(●)(II)関連する上述の閾値区間
【数97】
において総和的に(すなわち全体的にまたは概して)最大の顕著な同調を有する中心音から開始する。この目的のために、同調の関連する全体の力Λ
jを、全中心音
【数98】
について計算する:
【数99】
。治療成功後、次に強力な同調を有する中心音を扱う。
【0063】
(●)(III)関連する上記閾値区間
【数100】
における最大の顕著な(上記閾値範囲に対する)相対的同調を有する中心音から開始する。この目的のために、かかる同調の関連する相対的力
【数101】
を、全中心音
【数102】
について計算する:
【数103】
(但し、B
jは第j番目の中心音に属する上記閾値範囲の大きさである)。
【数104】
がサブ閾値区間
【数105】
を含まない単純な場合に、
【数106】
が当てはまる。治療成功後、次に強力な同調を有する中心音を扱う。
【0064】
(●)(IV)関連するCR治療音を、全中心音について測定し、全中心音を時間的に互いに別々にかつ逐次的に治療する。この場合、臨床的マーカ(すなわち、耳鳴りにおける対応する音部分または雑音部分のラウドネス、または、対応する音部分または雑音部分による苛立たせる刺激)に、または、上述の動的マーカ
【数107】
に、個別の中心音の治療時間を線形相関(linear correlation)等によって調節することができる。すなわち、対応する中心音のラウドネスが大きいほど、当該中心音の治療時間は長くなる。換言すると、中心音1を、特定の時間、関連するCR治療音で治療する。次いで、中心音2を任意で他の長さの時間、治療する。様々な中心音を治療する順序を確率論的に、または決定論的に(例えば無秩序に)、または、確率論的方法および無秩序な方法を合わせて変化させることができる。しかしながら、上記順序はまた、臨床的マーカ(ラウドネスおよび/または苛立たせる刺激)および/または動的マーカ
【数108】
による無作為の工程における状況等によって提供される特定の枠組みにおいて常に影響されることも、予め規定されることもできる。
【0065】
(●)(V)関連するCR治療音を、全中心音
【数109】
について測定する。さらなる機能的検査において、機能的基準(下記参照)を実際に満たすCR治療のためのCR治療音のみを使用する。換言すれば、様々な上記閾値区間に(および様々な中心音
【数110】
に)属する様々な脳の領域が解剖学的に十分にかつシナプスによって十分に相互接続していることによって、機能的検査(下記参照)において対応する所見が見られる場合、関連する全CR治療音を治療に使用する。脳の2つ以上の、異なる中心音に属する領域がシナプスによって十分に相互接続していない場合(下記参照)、かかる2つの中心音の一方のみを治療する。各中心音の治療の優先順位付けは、上述のように行われる。
【0066】
(●)最大値を測定するための上述の方法の代替として、
【数111】
の1つ以上の最大値を、当業者に知られている他の検査方法によって測定することもできる。一例として、「変化点アナライザ」("change-point analyzer")の用語で、文献および使用において知られている方法が挙げられる(例えば、非特許文献12参照)。
【0067】
パルス列と脳発振とのn:m位相同期の高さは、刺激に使用されるラウドネスに依存する。ここで、本発明に係わる装置がどのように動作することができるかに関し、複数の変形形態がある。
【0068】
1.時間をかけずにかつ単純に実行されることができることから実用性能の点で有利な変形形態の枠組み内では、全検査中(かつ、特に
図2ffに概説したステップの間)ラウドネスを予め設定し、一定に保つ。かかる変形形態は、耳鳴りの患者においては特に好ましいアプローチではない。このような時間のかからないアプローチが考慮されることができる患者は、(通常は聴覚障害を伴う)耳鳴りの患者ではなくうつ病等の患者であって、発語範囲(speech range)において刺激されず(また、聴覚障害がより多く見られる高周波数帯域において刺激されず)、かつ、病的所見(すなわち聴覚障害)が先の閾値聴力検査で排除されることができる患者である。予め設定されるラウドネスは、上記閾値に近い大きさか、もしくは、可聴域より大きい20dBまでの大きさ、または(同調が起こりにくい場合は)任意のさらなる大きさを選択すべきである。
【0069】
2.刺激に使用されるラウドネスを、古典的な閾値のオージオグラムに基づき内挿および外挿によって測定する。この変形形態はまた、時間をかけずに、そのため、非常に実用的に実行されることができる。古典的な閾値のオージオグラムによって、比較的少ないサンプリングポイントで可聴域が測定される。このアプローチには、内挿に関するエラーの可能性がある。頻繁ではないがわずかな聴覚ディップ(hearing dip)が原理的に存在するからである。かかる聴覚障害の範囲は、周波数空間において非常に狭く限局され得るため、わずかな聴覚ディップを、上記閾値のオージオグラムのサンプリングポイントが少ないことにより検知することができない。上記のような聴覚ディップの範囲内の周波数における刺激のラウドネスを、上記聴覚障害を補償するために高めなければならないことがある。このように、特に、聴覚ディップの範囲内において可聴域に比して低すぎる刺激が使用され得る。この聴覚ディップの範囲は、例えば耳鳴り患者の場合、耳鳴りの周波数範囲であることも多い。それにより、同調(
図2参照)が観察されることができない。この変形形態では、外挿に関し、閾値のオージオグラムの最も高いサンプリングポイントより上に高周波数難聴(high-frequency amblyacousia)が存在する欠点がある。この場合、刺激音はまた、かかる(外挿により求めた)範囲において十分な大きさではなく、判断を誤らせる結果を生じ得る。
【0070】
3.十分詳細にまたは十分な密度で可聴域を調べる(測定する)ために、(例えば、標準的な閾値聴力検査に従った)聴力低下または聴覚障害を有する患者、または、上述の2つの変形形態で十分良い結果を達成することができなかったかもしくは他の医学的理由から狭帯域の聴覚ディップの疑いがある患者に、次の変形形態を特に使用することができる:すなわち、
図2に示す測定の前に、ベーケーシー聴力検査(非特許文献13および14参照)を行い、周波数軸に亘って可聴域を調べる。この目的のために、周波数を、聴力測定の際に、例えば100Hz〜10,000Hzまで無段階に連続的に変化させる。高周波(例えば8000Hzより高周波)の耳鳴りを有する耳鳴り患者または高周波の聴覚障害を有する耳鳴り患者の場合、周波数を、例えば400秒以内または200秒以内で、さらに高い周波数(例えば130,000Hzまたは16,000Hzまでの周波数)に変化させる。強度は120dBまで、0.25dBずつの小さな段階的変化で、かつ、例えば2.5dB/秒または5dB/秒の速さで調節される。音は、連続トーンまたは(例えば200msまたは150msの持続時間の)パルストーンとして印加される。好ましい変形形態は、パルストーンの方法である。パルストーンの方法がパルストーンの可聴域を決定し、パルストーンが同調のさらなる検査のために使用されるからである。1:1または1:3等の比を、パルス休止比(pulse break ratio)(すなわち、個別のパルストーンの持続時間とその後の休止との比)として選択することができる。パルスの変形形態では、刺激周波数(パルストーンを印加する繰返し率)を、センサ(例えばEEG電極)を介して測定された、小さい整数のn:m比(nおよびmは小さい整数)の病的発振の主スペクトル周波数ピークに調節することもできる。
【0071】
患者は、ハンドスイッチを介してラウドネス低減装置(loudness reducer)(dBレギュレータ)を調整する。ハンドスイッチを押下する間、音のラウドネスは低下する。ハンドスイッチを押下しなければ、音のラウドネスは再び上昇する。この場合、強度(ラウドネス)は、例えば、0.25dBずつの段階的変化で、2.5dB/秒または5dB/秒の速さで(上述のように)調節される。2dBずつの段階的変化等の他の値を選択することもできる。あまり好ましくないが、完全に無段階で強度を調節することを選択することもできる。これにより、鋸歯状に伸長する曲線が得られる。患者が調節した可聴域が、ちょうど可聴である強度レベルと、もはや可聴でない強度レベルとを往き来するからである。
【0072】
図2に概説した同調検査前に別途ベーケーシー聴力検査を行う場合、周波数(すなわちピッチT上の周波数)に応じた連続的可聴域が測定される。この場合、ちょうど可聴域である強度レベルの局所的最大値が内挿される(また、任意で高い値の後に外挿される)。可聴域の強度レベルは連続的可聴域と呼ばれ、
図2の周期的パルス列の強度値として選択される。代替として、例えば2dB、3dB、もしくは、5dB、または、10dBもしくは20dB以上等のより大きな値の一定の強度レベルを、対応する周波数(すなわちピッチT)とは無関係に可聴域に追加することができる。かかる曲線を連続的強度閾値と呼ぶ。連続的強度閾値を、
図2の周期的パルス列の強度値として使用する。そのような増大した強度値は、十分に強力な同調が可聴域に対応する強度値を使用して引き起こされない場合に有利であることができる。
【0073】
連続的強度閾値の代わりに等音線(isophone)を測定することもできる。しかしながら、この測定は通常、限られた数の周波数において行われるのみであることにより、内挿および外挿(上限値における外挿)が必要であるため、等音線の値は通常、時間を費やし詳細に準備されない限り、限定されている。本発明に係わる装置の目的のためには、連続的強度閾値が通常、完全に十分である。
【0074】
(●)ベーケーシー聴力検査を、
図2に概説した同調検査と同時に行う場合、ベーケーシー聴力検査のみの場合よりも長い検査時間が(刺激周波数F
stimに応じて)選択され得る。これは、各ピッチ区間(同調が検知されるピッチ区間)に対応する位相同期指数S
n,mの計算のための十分な数の刺激周期T
stimを得るために必要である。周波数分解能(すなわちピッチ分解能)の目的精度を特に、窓幅(window width)
【数112】
(窓の最大ピッチ(Hz)と最小ピッチ(Hz)との差分)あたりの刺激周期数N
stimのパラメータによって求める。このパラメータによって、検査周期T
gesが求められる。
【0075】
(●)刺激周波数(繰返し率)F
stim、したがって、刺激周期T
stimは、脱同期化対象の病的なニューロンの集合的な(同期した)発振の主周波数
【数113】
(すなわちスペクトル内の周波数ピーク)に基づく。最も好ましくは、刺激周期F
stimを、当該刺激周期が主周波数に可能な限り類似するように(すなわち、
【数114】
(式中、F
stimは
【数115】
と実質的に5%、10%、または、20%より高い割合異なるべきではない)となるように)選択する。刺激のラウドネスの増分による2つの周波数の偏差を実用のために十分な程度に補正することができるため、本方法はロバストである。しかしながら、最小限のラウドネスによって、作業を行うべきである。その場合にのみ脳内の空間的な刺激の影響が空間的に非常に選択的であり、患者によっては音の大きすぎる刺激に不快感を覚え、疲労を感じる患者もいるからである。
【0076】
(●)本発明に係わる装置のあまり好ましくない実施形態では、F
stimを
【数116】
に適合させず、むしろ、周波数を当業者に知られている周波数帯域として事前に選択する。刺激周波数F
stimの主周波数
【数117】
からの偏差が大きすぎることにより、同調の結果が十分に顕著ではない場合、ラウドネスの増大によってこれを補償することができる。この目的のために、5dB等の定量を可聴域(下記のように測定される可聴域)に加えることができる。
【0077】
(●)ピッチをF
bottom〜F
top(例えば、F
bottom=100Hzから、F
top=13,000Hz)まで無段階的に、連続的に、かつ、直線的に(すなわち一定の速さで)変化させる。ピッチは他の実施形態では、非直線的に、例えば対数的に増加することもできる。ピッチが直線的に増加する場合、検査時間T
gesは、
【数118】
(但し、N
stimT
stimは、時間T
stimの刺激周期N
stimを有する窓幅
【数119】
を通る時間である)のように計算される。
【0078】
(●)例:N
stim=100、
【数120】
、F
bottom=100Hz、F
top=13,000Hzのパラメータで、主周波数
【数121】
の場合に刺激周波数F
stim=1.5Hz、したがって、刺激周期T
stim=0.666sが得られる。この場合、検査時間T
gesは、
【数122】
分となる。対照的に、窓幅
【数123】
を刺激周期
【数124】
のみで調べる場合、同調を有する周波数範囲と同調を有しない周波数範囲とのあまり良好ではない定義が得られるが、検査時間は半分になる:T
ges=14.3分。
【0079】
(●)主周波数
【数125】
は、いわゆるデルタ周波数帯域(1Hz〜4Hz)の低い範囲内にある。主周波数がより大きい場合、検査時間はずっと短くなる。
【数126】
(およびその他の同一のパラメータ)等の場合、N
stim=100に対応する検査時間はT
ges=14.3分、また、N
stim=50に対応する検査時間はT
ges=7.2分となる。主周波数がシータ周波数帯域(5Hz〜8Hz)内であり、かつ、例えば
【数127】
の場合、
【数128】
によってN
stim=100に対応する関連する検査時間はT
ges=7.2分、また、N
stim=50に対応する検査時間はT
ges=3.6分となる。
【0080】
(●)刺激周波数によって、検査時間が非常に明確に求められる。検査時間T
gesを最小限に保つために、一方では、窓幅あたりの刺激周期数
【数129】
を小さく設定することができる。他方ではまたは追加として、主周波数
【数130】
より大きい刺激周波数F
stimを選択することもできる。これにより特に、主周波数
【数131】
がシータ周波数帯域(5Hz〜8Hz)内ではなく、デルタ周波数帯域(1Hz〜4Hz)内である場合に、検査時間T
gesが短縮される。主周波数
【数132】
が測定される場合、刺激周波数F
stimを、
【数133】
との小さい整数の関係になるように選択することができる:
【数134】
(但し、nおよびmは小さい整数である)。しかしながら、検査時間が減少するにつれ、可聴域を調べる質が低下し得る。しかしながら、これは実際、重大な問題ではない。刺激音のラウドネスの変化に対して、結果が十分に安定しているからである。
【0081】
要約すると、パルス列と脳発振とのn:m位相同期を測定するための本発明に係わる装置によって実現される方法の、以下の変形形態が結果として生ずる。
【0082】
− 刺激のラウドネスを予め設定する(あまり好ましくない)。
【0083】
− ラウドネスを従来の(少ないサンプリングポイントで測定される)オージオグラムに適合させる。この目的のために、おおよその可聴域の連続的範囲を内挿および外挿によって求めることができる。
【0084】
− ベーケーシーオージオグラムは、準連続的可聴域を提供する。ベーケーシーオージオグラムを同調検査と並行して実施しない場合、(鋸歯状の)ベーケーシーオージオグラムの、ちょうど可聴と知覚される局所的極値を内挿することによって(および、上限において任意で外挿することによって)、連続的可聴域を準備することができる。しかしながらベーケーシーオージオグラムはまた、同調検査と並行して簡潔に実行することもできる。このように、検査時間を相対的に短くすることができる。
【0085】
− 可聴域(古典的なオージオグラムまたはベーケーシー聴力検査によって測定された可聴域)の強度値(ラウドネス値)によって、十分に強力な同調が得られない(すなわち、パルス列と脳発振とのn:m位相同期が十分に強力ではない)場合、(好ましくは)連続的強度閾値または等音線(上記参照)を使用して強力な刺激強度を選択することができる。結果に応じて、可聴域からの、連続的強度閾値または等音線の偏差を、最終的に十分強力な同調が得られるまで増大することができる。
【0086】
かかる手順によって中心音C、すなわち、中心周波数(ピッチの意味における周波数)Cが提供される。中心音Cを中枢聴覚系(例えば聴覚野)における同期焦点の解剖学的中心と考えることができる。
【0087】
I.1.b 振幅の最小値を使用した区間の測定
隣接する治療音間の理想的距離を求めることがこのステップの目的である。かかる目的のために、2つの(時間的に)一定の周期的な、位相を変位させた、特に、異なる位相のパルス列を印加する。この場合、両パルス列のピッチを連続的にかつ正反対に変化させる(
図3参照)。両パルス列のピッチが互いに近い場合、両パルス列によって、脳内の聴覚野の同じ領域(または中心聴覚路の異なる下流領域における同じ領域)が実質的に(すなわち広く空間的に重なり合って)刺激される。上記重なり合いは、いわゆる同調曲線によって説明されるように、隣接するニューロンは異なる周波数の音によって明らかに理想的に刺激されるが、隣接する周波数の音によっても、通常は強力ではなくなるが、刺激されることに起因する。この場合、刺激周波数F
stimの実質的に2倍の周期の刺激が行われる。両パルス列のピッチが離れすぎているため、距離によって解剖学的結合性の強さが低下していることにより、2箇所の刺激された脳領域はもはや十分強力に相互に作用しない(解剖学的に結合しない)場合、脳内の2箇所の異なる部位が位相を変位させて(異なる位相で)刺激される。両方の刺激されたニューロン集団によって発生する電界の大きさが正確に同じである場合、両ニューロン集団の電界は、双極性を有するように配置されたニューロンの解剖学的位置に応じて、互いに少なくとも部分的に打ち消し合うことができる。この場合、第1の推定では、全電界が単一の2倍の刺激周波数F
stimのバンドパス周波数範囲において消滅する。2つのニューロン集団の刺激によって等しい強さの電界が生じない(例えば、ニューロン集団の大きさの違いおよび/または各関連するニューロンの解剖学的配置の違い等によって生じない)場合、全体としてゼロではなく、ニューロン集団の刺激に応じて単一の2重の刺激周波数F
stimのバンドパス範囲においてゼロではない値を生じる電界が形成される(
図3b参照)。2つのニューロン集団が解剖学的に相互作用し(すなわち互いの位置が離れすぎておらず)、異なる位相の刺激(すなわち、CR刺激)によって脱同期化される時に、両ニューロン集団によって発生した電界の振幅の、したがって単一の2重の刺激周波数F
stimに対応するバンドパス範囲の振幅の最小値が得られる(
図3aおよび
図3b参照)。
【0088】
最大値を検出した上記問題(
図2参照)に類似して、最小値(
図3b)または小さい値の範囲の縁(
図3a)をここで(同じ方法によって)検出する。この検出は、当業者に知られているデータ分析方法によって行われることができる。例えば、最大値の検出(
図2)に使用される平均化技術を使用することができ、(
図2のように)最大値を検出する代わりに変曲点を検出することができる。
【0089】
図3aは、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図3aでは、両パルス列のピッチを連続的にかつ正反対に変化させる。3つの図すべてにおいて、X軸は時間軸である。上図は、両音響刺激シーケンスの大きさを概略的に示す。1つの黒いバーがピッチTの純音を表す。この純音は、ハミング窓、コサイン関数(あまり好ましくない)、または、他の好ましくは滑らかな包絡線(通常、音の時間の長さを制限する包絡線)を使用して畳み込まれている。中央図は、2つの周期的刺激シーケンスのピッチT
1およびT
2をどのように連続的に変化させるかを概略的に示す。下図は、刺激周波数F
stim(A
1)または2倍の刺激周波数(A
2)の振幅(例えば、ヒルベルト振幅または検査した周波数バンドパスにおける全電力)の大きさを概略的に示す。
【0090】
図3bは、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図3bでは、両パルス列のピッチを連続的かつ正反対に変化させる。
図3aと同様のフォーマットである。
【0091】
かかるアプローチによって、中心音Cよりも高い治療音U
1および中心音Cよりも低い治療音L
1を得る。
【0092】
中心音Cよりも高いさらなるあり得る治療音(U
2,U
3,…)または中心音Cよりも低いさらなるあり得る治療音(L
2,L
3,…)をここで、2つの異なる位相のパルスシーケンスを印加することにより反復して求める。この場合、一方のパルスシーケンスのピッチは、対応する出力治療音(例えば
図4のU
1)の位置で一定であり、他方のパルスシーケンスのピッチは最初に高くなり、次いで、次に高い治療音を検出するために再び下落する(
図4参照)。
図3aまたは
図3bに類似して、単一のまたは2倍の刺激周波数F
stimに対応するバンドパスの振幅の最小値(
図4)を検出する(上記参照)。これを、関連する最小値(
図5)または変曲点を検出できるまで反復する。この検出に関し、関連性についての異なる基準を使用することができる。一例を挙げると、平均値および標準偏差から十分大きく異なる最小値のみを受け入れる。当業者には、複数のデータ分析方法および統計テスト方法が利用可能である。
【0093】
次に高い各治療音U
2,U
3,…と同様に、次に低い各治療音L
2(
図6),L
3(
図7)…をまた、検出する。
【0094】
図4は、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図4では、2つのパルス列の一方のみのピッチ(U
2)を、当該ピッチが上昇し、次いで下降するように連続的に変化させる。他方のパルス列のピッチ(U
1)は、一定のままである。
図3aと同様のフォーマットである。
【0095】
図5は、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図5では、2つのパルス列の一方のみのピッチ(U
3)を、当該ピッチが上昇し、次いで下降するように連続的に変化させる。他方のパルス列のピッチ(U
2)は、一定のままである。
図3aと同様のフォーマットである。
【0096】
図6は、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図6では、2つのパルス列の一方のみのピッチ(L
2)を、当該ピッチが下降し、次いで上昇するように連続的に変化させる。他方のパルス列のピッチ(L
1)は、一定のままである。
図3aと同様のフォーマットである。
【0097】
図7は、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列の適用について示す。
図7では、2つのパルス列の一方のみのピッチ(L
3)を、当該ピッチが下降し、次いで上昇するように連続的に変化させる。他方のパルス列のピッチ(L
2)は、一定のままである。
図3aと同様のフォーマットである。
【0098】
下位変形形態I.2:中心音を用いないCR治療音の測定
強力な同調を特徴とする(また、中枢神経系内の病的同期の小さい1つまたは複数の焦点に対応する)領域が小さいと、好ましくない場合には、強力な同調を有する当該領域内にさらなる治療音を中心音の次に位置づけることができないため、これはあまり好ましくない変形形態である。これに対し、左右対称に配置された2つの治療音を通常、中心音を用いない場合に位置付けることができる。
【0099】
図8は、中心に配置した治療音(C、いわゆる中心音)を有する変形形態における、本発明に係わる方法の手順のフローチャートを示す。
【0100】
中心音Cを測定した後、当該中心音Cを治療音として選択する。次に高い治療音U
1または次に低い治療音L
1を検出する(同様に、中心音を用いない変形形態(上記参照)の場合、U
2またはL
2を測定する)。この場合、2つの異なる位相の刺激シーケンスの一方のみの刺激シーケンスのピッチを増大する(それによりU
1を測定する(
図10参照))か、または、減少させる(それによりL
1を測定する)。他方の刺激シーケンスの対応するピッチは、一定にCに設定されたままである。振幅の各最小値または変曲点の測定を、上述のように行う(下位変形形態I.1参照)。次に高いさらなる治療音U
2,U
3,…または次に低い治療音L
2,L
3,…を上述のように(下位変形形態I.1参照)、同様にさらに反復的に求める。
【0101】
図9は、同調区間の(連続的に変化させたピッチを有する個々の周期的パルス列による)検出について示す。このステップは、中心音を用いた場合および中心音を用いない場合の本発明に係わる方法において同一である。したがって、
図9および
図2は同一である。
【0102】
図10は、2つの異なる位相の一定の周期的なパルス列(R
1およびR
2)の適用について示す。これらパルス列は、各ピッチT
1およびT
2を有する純音を含む。2つのパルス列の一方のみのピッチ(実線)を、当該ピッチが上昇し、次いで下降するように連続的に変化させる。他方のパルス列のピッチ(C,破線)は、一定のままである。
図3aと同様のフォーマットである。
【0103】
最小の変形形態
本発明に係わる装置の、および、本発明に係わる方法の変形形態が存在する。本方法では、2つのステップ(
図1に概略的に示すステップ)、すなわち、同調区間の(個々の周期的パルス列による)検出および(2つの周期的パルス列による)振幅の最小値を有する区間の検出は実行されず、むしろ2つのステップの一方のみが実行される。
【0104】
最小の変形形態1
同調区間の検出のみを(単一の周期的パルス列によって)実行する。これにより測定された最大値に、例えば4つの治療音を所定の周波数比で調節する。例えば、上記最大値がピッチCの場合(
図1参照)、対数的に等距離の治療音を、Cの77%〜140%等の区間内で選択することができる。この場合、かかる変形形態では、振幅の最小値を有する区間を、(2つの周期的パルス列による)追加的な後続の検出ステップを有する変形形態よりも時間がかからない点で有利である。
【0105】
最小の変形形態2
治療音の適切な距離の推定のみを実行する。この推定に求められる開始周波数を、疾患の特定の基準(下記参照)に従って事前に選択する。振幅の最小値を有する区間の検出のみを(2つの周期的なパルス列によって)実行する。この形態は、聴覚障害に関する領域内の聴覚野において(または中枢聴覚系において)同期焦点が予期されない疾患、すなわち、ADHS、うつ病、統合失調症等の場合に有利である。開始周波数を例えば、発語範囲において定める。かかる開始周波数は、聴覚の幻覚を有する統合失調症患者の場合に有利であり得る。統合失調症患者が、関連する聴覚野に病的な活動状態を有するからである。上記開始周波数は、ピッチC(
図1参照)に一致する。このようにピッチCから開始し、適切な距離の治療音を、振幅の最小値を有する区間の(2つの周期的パルス列による)検出によって求める。最小の変化形態2では、同調区間を(単一の周期的パルス列によって)事前に検出する変形形態よりも時間がかからない。
【0106】
2つ以上の同期焦点の発生
最大値の検出時(
図2参照)に部分区間[z
0,z
2]において2つ以上の最大値が得られる場合、本明細書に記載のアルゴリズムを、全最大値について作業が完了し、したがって関連するピッチの部分区間すべてを網羅するまで、各局所的な最大値について開始する。
【0107】
(II)厳密に周期的なパルス列印加時の、1つ(または複数)の刺激の性質の離散的な(または大まかな段階的変化による)変化
上述の、1つ以上の刺激の性質の連続的変化の代わりに、(周期的に印加する刺激による)上記同調分析または(2つの異なる位相の周期的刺激による)振幅分析等を、1つ以上の刺激の性質の値の離散集合を求めるために実行することもできる。そのような大まかな段階的変化によるアプローチは、場合によっては、限局性の聴覚ディップおよび関連する限局性の同期焦点が検出されないために不利であり得る。これを回避するために、段階的変化の規模を十分小さくすることができる。しかしながら、この場合、刺激の性質の連続的変化は通常、より時間のかからない方法である。刺激の性質の特定の値を離散的に変化させる場合、分析を実行することができるように周期的刺激シーケンスにおいて多くの回数(例えばN回)の同一の個別の刺激が印加されなければならないからである(上記参照)。連続的変化の場合の変形形態では、これらN回の複数の刺激を、分析区間において評価する。この分析区間は、刺激の性質の値の区間に対応するデータ集合に亘って時間的に変位されている。すなわち、離散的に変化させる変形形態の場合、刺激のピッチ等(上記参照)の刺激の性質に関する分解能は不鮮明になる。しかしながら、かかる不鮮明化が実質的に時間節約になり、かつ、治療の刺激方法が一方では同期焦点の検出において、また、治療音間の刺激の性質(例えばピッチ)間の適切な距離の推定において、高い精度を必要としていない点で、上記不鮮明化は有利である。