特許第6543253号(P6543253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543253ゲノムの完全性及び/又は確定的制限酵素部位全ゲノム増幅によって得られたDNA配列のライブラリの質を判定する方法及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543253
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ゲノムの完全性及び/又は確定的制限酵素部位全ゲノム増幅によって得られたDNA配列のライブラリの質を判定する方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20190628BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20190628BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C12Q1/686 ZZNA
   C12N15/11 Z
   G01N33/50 P
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-536851(P2016-536851)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-538872(P2016-538872A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】IB2014066602
(87)【国際公開番号】WO2015083121
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】13195770.6
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516164519
【氏名又は名称】メナリーニ シリコン バイオシステムズ エッセ.ピー.アー.
(73)【特許権者】
【識別番号】513002566
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツア フェーアデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クライン クリストフ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ポルツァー ベルンハルト ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】マナレージ ニコロ
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−526087(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093465(WO,A1)
【文献】 British J. Cancer, 2006年,Vol.94,p.333-337
【文献】 Cellular Oncology, 2007年,Vol.29,p.351-359
【文献】 TAIWANESE JOURNAL OF OBSTETRICS AND GYNECOLOGY,2008年 3月 1日,VOL:47 NR:1,P.32-41,URL,http://dx.doi.org/10.1016/S1028-4559(08)60052-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C12N 15/00−15/90
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列ライブラリの質を判定する方法であって、
(a)前記DNA配列ライブラリを提供する工程と、
(b)前記DNA配列のライブラリを、
1000bp〜5000bpの長さを有し、染色体5qのD5S2117領域を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第1のプライマー対、
1000bp〜5000bpの長さを有し、TRP53遺伝子のエクソン2及びエクソン3を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第2のプライマー対、及び、
1000bp〜5000bpの長さを有し、KRT19偽遺伝子1を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第3のプライマー対、
を使用するPCRによって増幅する工程であって、
該増幅工程が、50bp〜1000bpの第1のPCR産物、前記第1のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜1000bpの第2のPCR産物、並びに前記第1のPCR産物及び第2のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜1000bpの第3のPCR産物をもたらす工程と、
(c)前記第1のPCR産物、前記第2のPCR産物、及び前記第3のPCR産物を検出する工程と、
(d)前記第1のPCR産物、前記第2のPCR産物、及び前記第3のPCR産物の存在を、前記試料のゲノムの完全性及び/又はDNA配列のライブラリの質と関連付ける工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のプライマー対のフォワードプライマーが配列番号4であり、前記少なくとも1つの第1のプライマー対のリバースプライマーが配列番号3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2のプライマー対のフォワードプライマーが配列番号6であり、前記少なくとも1つの第2のプライマー対のリバースプライマーが配列番号5である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第3のプライマー対のフォワードプライマーが配列番号8であり、前記少なくとも1つの第3のプライマー対のリバースプライマーが配列番号7である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)にて、80bp〜300bpの長さを有する、前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第4のプライマー対を更に使用し、前記増幅工程が前記第1のPCR産物、前記第2のPCR産物、及び前記第3のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜200bpの第4のPCR産物をもたらし、
工程(c)が前記第4のPCR産物を検出することを更に含み、
工程(d)が前記第4のPCR産物の存在を前記試料のゲノムの完全性及び/又は前記DNA配列のライブラリの質と関連付けることを更に含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第4のプライマー対がハイブリダイズする前記ライブラリのDNA配列がKRAS遺伝子のコドン12及び13を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第4のプライマー対のフォワードプライマーが配列番号17であり、前記少なくとも1つの第1のプライマー対のリバースプライマーが配列番号18である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列ライブラリの質の判定のために用いられるキットであって、
1000bp〜5000bpの長さを有し、染色体5qのD5S2117領域を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第1のプライマー対と、
1000bp〜5000bpの長さを有し、TRP53遺伝子のエクソン2及びエクソン3を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第2のプライマー対と、
1000bp〜5000bpの長さを有し、KRT19偽遺伝子1を包含する前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第3のプライマー対と、
を備え、前記第1のプライマー対、前記第2のプライマー対、及び前記第3のプライマー対が、PCRによって増幅された場合に、互いに異なるサイズのPCR産物をもたらす、キット。
【請求項9】
前記キットは、80bp〜300bpの長さを有する、前記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第4のプライマー対を更に備え、
前記第1のプライマー対、前記第2のプライマー対、前記第3のプライマー対、及び前記第4のプライマー対が、PCRによって増幅された場合に、互いに異なるサイズを有するPCR産物をもたらす、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
DRS−WGAによる単一細胞のゲノムDNAの増幅後の遺伝子解析アッセイの成功の予測における請求項8又は9に記載のキットの使用。
【請求項11】
前記遺伝子解析アッセイが、突然変異解析に対するサンガーシークエンシング、特定のコピー数の変化の判断、遺伝子増幅に対する定量的PCR、分裂中期比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、及びアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
試料のゲノムの完全性の判定のために用いられる請求項8又は9に記載のキット。
【請求項13】
前記試料が5個以下の細胞からなる、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記試料が単一の細胞である、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記試料のゲノムの完全性の判定が、前記試料の細胞(単数/複数)の生物学的状態を判定することを可能とする、請求項13又は14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料、特に単一の細胞のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列ライブラリの質を判定する方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
全ゲノム増幅(WGA)は、癌患者の単一の末梢循環腫瘍細胞(CTC)の場合、又は着床前診断等の限られた開始材料のDNAにおける体細胞突然変異及びコピー数の変化の検出を可能とする。
【0003】
単一細胞解析に対するWGAの診断的使用について、目的の単一細胞試料のゲノムDNAの質(すなわち、ゲノムの完全性)は、WGA後の分子解析の成功に主な役割を果たす。
【0004】
特に、CTCは高い頻度でアポトーシス性であると記載されている(非特許文献1)
【0005】
さらに、カスパーゼ媒介アポトーシスの間、ゲノムDNAは180bp〜200bpの長さの小片へと断片化される(非特許文献2)。
【0006】
したがって、細胞自体の生物学的状態に関連する場合があり、また癌患者の全身状態について臨床上関連する情報を与え得ることから、単一細胞のゲノムの完全性の状態を判断することが重要であり、これは単にCTCを計数することによって提供される情報をしのぎ、それらCTCの分子の特性評価を補足する。
【0007】
また、DNA架橋及び/又は断片化は、生検後に必要な試料保存のため患者に由来する細胞及び組織に行われた化学処理(例えば、固定)によって生じる。
【0008】
単一細胞解析に対する分子アッセイ及びかかる試料に由来して得られたデータ評価の性能を予測するため、単一細胞のゲノムの完全性を判断することは特に重要である。
【0009】
利用可能な単一細胞のWGAキットは、WGA産物のみの濃度の測定によって全ゲノム増幅の質を判断する。これらの方法に関するプロトコルは、単一細胞DNA増幅の手順の間に少なくとも1つの無作為の工程を含むことから、アポトーシス性若しくは非アポトーシス性の状態等の入力試料(通常、単一細胞)のゲノム完全性、又は更なる遺伝子解析に対する適合性等のWGA産物の出力の質を評価する特異的なアッセイは困難である。
【0010】
特定の種類のWGAは、確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(以下、DRS−WGAと呼ぶ)である。特許文献1により既知であり、Silicon Biosystems SpaによってAmpli1(商標)として市販されているDRS−WGAは、MseI部位(TTAA)における二本鎖DNAの特異的制限酵素消化及び増幅に対するユニバーサルアダプタのライゲーションに基づく。
【0011】
DRS−WGAは単一細胞の増幅により良好で(例えば、非特許文献3を参照されたい)、固定処理によるDNA分解に対してより耐性でもある(例えば、非特許文献4、非特許文献5を参照されたい)ことが示されている。
【0012】
今日まで、DRS−WGA産物に由来する入力試料のゲノム完全性又は得られたDRS−WGA産物の質を評価する具体的なアッセイはない。
【0013】
したがって、入力試料のゲノム完全性及び/又は得られたDRS−WGA産物の質の判定を可能にし、単一細胞解析及び得られたデータの評価に対するDRS−WGAの下流の分子アッセイの性能を予測することを可能にする方法及びキットの開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第1109938号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Mehes, G., et al., Circulating breast cancer cells are frequently apoptotic. Am J Pathol, 2001. 159(1): p.17-20
【非特許文献2】Wyllie, AH., Glucocorticoid-induced thymocyte apoptosis is associated with endogenous endonuclease activation. Nature, 1980. 284(5756): p.555-6
【非特許文献3】Lee YS, et al: Comparison of whole genome amplification methods for further quantitative analysis with microarray-based comparative genomic hybridization. Taiwan J Obstet Gynecol. 2008, 47(1):32-41
【非特許文献4】Stoecklein N.H. et al: SCOMP is Superior to Degenerated Oligonucleotide Primed-PCR for Global Amplification of Minute Amounts of DNA from Microdissected Archival Samples. American Journal of Pathology 2002, Vol. 161, No. 1
【非特許文献5】Arneson N. et al.: Comparison of Whole Genome Amplification methods for analysis of DNA extracted from microdissected early breast lesions in formalin-fixed paraffin-embedded tissue. ISRN Oncol. 2012; 2012;710692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、強固で信頼性のある結果を提供し、特に試料の細胞(単数/複数)の生物学的状態を判断すること及び/又はDRS−WGAの下流の分子アッセイの性能を予測することを可能とする、試料のゲノムの完全性及び/又はDRS−WGAによって得られたDNA配列のライブラリの質を判定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1に記載の方法に関するように本発明により達成される。
【0018】
本発明の更なる目的は、請求項8に記載のようなキットを提供することである。
【0019】
定義
他に特に規定がなければ、本明細書に用いられる技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
「試料」という用語は、生物学的実体の少なくとも1つの粒子を含む試料を意図するものであり、上記試料は少なくともその生物学的実体のゲノム又はゲノムの実質的なサブセットを表すDNA配列を含む。非限定的な例として、上記実体は人であってもよく、上記少なくとも1つの粒子は5個以下の細胞のセット、単一細胞、若しくは単一細胞核、又は一倍体生殖細胞、又は染色体であってもよい。
【0021】
「ゲノム」という用語は、ゲノム全体又は上記ゲノムの実質的なサブセットを意図するものである。
【0022】
ゲノムの「完全性」という用語は、ゲノムの複製又はその正常な機能性を妨げる可能性のある二本鎖切断、又はニック若しくは同様の状態等のDNA損傷の不在を意図するものである。
【0023】
DNA配列のライブラリの「質」という用語は、非限定的な例として、点突然変異、欠失、挿入、コピー数多型の存在等の幾つかの特徴の遺伝学的特性評価に使用されるDNA配列のライブラリの適合性を意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好ましい実施形態による単一マーカーPCR、並びに4−マルチプレックスアッセイ及び3−マルチプレックスアッセイのアガロースゲル写真を示す図である。
図2】PIK3CAのホットスポット1及びホットスポット2に対するPCRのアガロースゲル写真を示す図である(M=サイズマーカー、01=乳房13、02=乳房15、03=乳房17、04=乳房20、05=前立腺14、06=前立腺16、07=前立腺24、08=黒色腫13、09=黒色腫14、10=黒色腫16)。
図3図1の好ましい4−マルチプレックスアッセイによって試験した8つの試料のアガロースゲル写真を示す図である。
図4】乳癌患者に由来する単一の末梢循環腫瘍細胞(CTC)と単一の白血球(WBC)との間のゲノムの完全性指標の分布のヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列のライブラリの質を判定する本発明による方法は、工程(a)〜(d)を含む。
【0026】
また、試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムのDRS−WGAによって得られたDNA配列のライブラリの質の判定を可能とすることにより、上記方法は、試料の細胞(単数/複数)の生物学的状態の判断を可能とし、及び/又はDNA配列のライブラリに対する遺伝子解析アッセイの成功率の予測を可能とする。
【0027】
上記試料は5個以下の細胞からなるのが好ましく、上記試料は単一の細胞であるのがより好ましい。単一の細胞は、末梢循環腫瘍細胞(CTC)、末梢循環胎児細胞、末梢循環内皮細胞(CEC)、卵母細胞、卵丘細胞、精子、卵割球、又は栄養外胚葉細胞であることが好ましい。
【0028】
工程(a)では、DNA配列のライブラリが提供される。
【0029】
工程(b)では、1000bp〜5000bp、好ましくは1000bp〜2000bpの長さを有し、第1の染色体腕に位置するゲノムの配列に対応する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第1のプライマー対を使用するPCRによってDNA配列のライブラリを増幅し、該増幅工程は50bp〜1000bpの第1のPCR産物をもたらす。
【0030】
上記第1のプライマー対がハイブリダイズするライブラリのDNA配列は、染色体5qのD5S2117領域を包含することが好ましい。
【0031】
上記第1のプライマー対のフォワードプライマーは配列番号4であり、上記第1のプライマー対のリバースプライマーは配列番号3であることがより好ましい。
【0032】
工程(c)では、第1のPCR産物を検出する。アガロースゲル電気泳動を使用して該PCR産物を分離及び検出してもよく、同様に、当該技術分野で既知の他の方法を使用してもよい。
【0033】
工程(d)では、第1のPCR産物の存在を上記試料のゲノムの完全性及び/又はDNA配列のライブラリの質と関連付ける。
【0034】
有利には、工程(b)では、1000bp〜5000bp、より好ましくは1000bp〜2000bpの長さを有し、第1の染色体腕以外の第2の染色体腕に位置するゲノムの配列に対応するライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第2のプライマー対を使用し、該増幅工程は第1のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜1000bpの第2のPCR産物をもたらす。
【0035】
また、上記第2のPCR産物は工程(c)で検出され、また工程(d)では、該第2のPCR産物の存在を試料のゲノムの完全性及び/又はDNA配列のライブラリの質と関連付ける。
【0036】
上記第2のプライマー対がハイブリダイズする上記ライブラリのDNA配列はTRP53遺伝子のエクソン2及びエクソン3を包含することが好ましい。
【0037】
上記第2のプライマー対のフォワードプライマーは配列番号6であり、上記第2のプライマー対のリバースプライマーは配列番号5であることがより好ましい。
【0038】
有利には、工程(b)では、1000bp〜5000bp、より好ましくは1000bp〜2000bpの長さを有し、上記第1の染色体腕及び第2の染色体腕以外の第3の染色体腕に位置するゲノムの配列に対応する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第3のプライマー対を使用し、該増幅工程は、上記第1のPCR産物及び第2のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜1000bpの第3のPCR産物をもたらす。
【0039】
また、上記第3のPCR産物は工程(c)で検出され、また工程(d)では、該第3のPCR産物の存在を試料のゲノムの完全性及び/又はDNA配列のライブラリの質と関連付ける。
【0040】
上記第3のプライマー対がハイブリダイズする上記ライブラリのDNA配列はKRT19偽遺伝子1(CK19と略記される)を包含することが好ましい。
【0041】
上記第3のプライマー対のフォワードプライマーは配列番号8であり、上記第3のプライマー対のリバースプライマーは配列番号7であることがより好ましい。
【0042】
工程(b)では、80bp〜300bpの長さを有する、上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第4のプライマー対を使用し、該増幅工程は、上記第1のPCR産物、上記第2のPCR産物、及び上記第3のPCR産物以外のサイズを有する50bp〜200bpの第4のPCR産物をもたらすことが更により好ましい。
【0043】
工程(b)が少なくとも1つの第4のプライマー対を使用する場合、第4のPCR産物もまた工程(c)で検出され、該第4のPCR産物の存在もまた工程(d)において、試料のゲノムの完全性及び/又はDNA配列のライブラリの質と関連付けられる。
【0044】
第4のプライマー対がハイブリダイズする上記ライブラリのDNA配列はKRAS遺伝子のコドン12及びコドン13を包含することが好ましい。
【0045】
上記第4のプライマー対のフォワードプライマーは配列番号17であり、上記第4のプライマー対のリバースプライマーは配列番号18であることが更により好ましい。
【0046】
また、本発明によれば、試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列ライブラリの質の判定のために用いられるキットであって、
1000bp〜5000bpの長さを有し、第1の染色体腕に位置する上記ゲノムの配列に対応する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第1のプライマー対と、
1000bp〜5000bpの長さを有し、上記第1の染色体腕以外の第2の染色体腕に位置する上記ゲノムの配列に対応する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第2のプライマー対と、
1000bp〜5000bpの長さを有し、上記第1の染色体腕及び上記第2の染色体腕以外の第3の染色体腕に位置する上記ゲノムの配列に対応する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第3のプライマー対と、
を備え、上記第1のプライマー対、上記第2のプライマー対、及び上記第3のプライマー対が、PCRによって増幅された場合に、互いに異なるサイズのPCR産物をもたらす、キットが提供される。
【0047】
上記キットは、80bp〜300bpの長さを有する、上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズする少なくとも1つの第4のプライマー対を更に備え、上記第1のプライマー対、上記第2のプライマー対、上記第3のプライマー対、及び上記第4のプライマー対が、PCRによって増幅された場合に、互いに異なるサイズを有するPCR産物をもたらすことが好ましい。
【0048】
上記キットは、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対、及び第4のプライマー対を備えることがより好ましい。
【0049】
上記キットを使用してDRS−WGAによる単一細胞のゲノムDNAの増幅後の遺伝子解析アッセイの成功を予測することができる。上記遺伝子解析アッセイは、突然変異解析に対するサンガーシークエンシング、特定のコピー数の変化の判断、遺伝子増幅に対する定量的PCR、分裂中期比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、又はアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)であることが好ましい。
【0050】
突然変異解析に対するサンガーシークエンシング等の遺伝子特異的アッセイについては、4つのPCR産物のうちの少なくとも1つ〜2つを含む試料を使用することができる。4つのPCR産物のうちの少なくとも3つに対する陽性は、分裂中期CGHによるゲノムワイド解析の成功の予測である。アレイCGHについては、4つの陽性PCR産物のうち4つを含む試料を使用することが得策である。
【0051】
また、上記キットを使用して試料のゲノムの完全性を判定し、そのようにして試料の細胞(単数/複数)の生物学的状態を判定することができる。上記試料は5個以下の細胞からなることが好ましく、上記試料は単一の細胞であることがより好ましい。
【0052】
実際のところ、試料の細胞のDNAが非常に断片化されていても、試料中に多数の細胞が存在すれば、第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物(及び任意に第4のPCR産物)をそれぞれ増幅するための第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対(及び任意に第4のプライマー対)に対する全体的に十分なテンプレートコピーが存在することになる。その結果は、上記方法の識別力の不足である。
【0053】
一方、非常に損傷されたDNA細胞試料の場合であっても、5つの細胞が上記方法による信頼性のある結果を可能とする量、すなわち、過剰なテンプレートコピーの結果を伴わずに、工程(d)のPCR産物を得ることを可能とする量であることが実験的に特定されている。
【0054】
さらに、非常に損傷されたDNA細胞試料(単一細胞が増幅されていないPCR産物をもたらす可能性がある)の解析について、2以上、すなわち2〜5の数の細胞の使用が、ゲノム完全性を数量化して上記方法の解析力を増すことを可能とする。
【実施例】
【0055】
要するに、異なる染色体位置に位置するMseIフラグメントに対して設計された、様々なフラグメント長を有する幾つかのプライマー対を試験した。高い特異性及び感度で単一細胞産物の全ゲノム解析の成功を予測する3つのプライマー対を選択した(実施例1)。低品質の細胞、例えばアポトーシス性CTCのDRS−WGAの成功を示すため、より短いMseIフラグメントの第4のプライマー対を追加した(実施例2)。また、実施例ではPCR産物を「マーカー」とも呼び、また幾つかのプライマー対を含むPCR増幅反応を「マルチプレックスアッセイ」と呼ぶ。特に、試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列のライブラリの質を判定するため設計された幾つかのプライマー対を含むPCR増幅反応を「品質管理アッセイ」又は「QCアッセイ」とも呼ぶ。
【0056】
実施例1
2つの選択的マーカー(alternative marker)の組合せは、癌細胞試料及び正常な核型を有する二倍体細胞の試料の両方に対するDRS−WGA(解析能(Resolution)10Mb〜20Mb)による単一細胞ゲノムDNAの増幅後の分裂中期比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)の成功を予測することを示した。
【0057】
A.試験した8個のPCRマーカーの特性
239bp〜1936bpのMseIフラグメント長に亘る8個の異なるMseIフラグメントに対するPCRを試験した(表1)。単一癌細胞におけるゲノムDNA喪失による陰性のアッセイ結果の可能性を最小化するため、7個の異なる染色体腕に位置する配列を選択した。
【0058】
ピペッティングスキーム(1回) 1.0μl バッファー+dNTP
(10mM MgCl、
100mM Tris
(pH8.5)、500mM
KCl、1mM dNTP)
0.5μl プライマー3’(8μM)
0.5μl プライマー5’(8μM)
0.25μl BSA(分子生物学用)
7.25μl PCR−H
0.1μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)
0.5μl Ampli1産物(試験試料)
【0059】
熱プロファイル
工程1 94.0℃ 2分
工程2 アニーリング温度 30秒
工程3 72.0℃ 2分
工程4 94.0℃ 15秒
工程5 アニーリング温度 30秒
工程6 72.0℃ 20秒
14の追加サイクル(工程4〜6)
工程7 94.0℃ 15秒
工程8 アニーリング温度 30秒
工程9 72.0℃ 30秒
24の追加サイクル(工程7〜9)
工程10 72.0℃ 2分
工程11 4℃ 常時
【0060】
【表1】
【0061】
B.QCアッセイに対するPCRマーカーの選択
PCRマーカーの実現し得る最良の組合せを選択するため、異なる種類のヒト癌に由来する72の単一細胞ゲノム(24の乳房の播種性癌細胞(DCC)、24の前立腺DCC、24の黒色腫DCC)を再度増幅した。上記3群の各々に対して、先のCGH実験において分裂中期ハイブリダイゼーションに成功した12の細胞、及び先のCGH実験において分裂中期ハイブリダイゼーションに失敗した12の細胞を含めた。選択した全てのマーカーに対して特異的PCRを行い、分裂中期CGHの結果の予測における精度について上記アッセイを評価した。
【0062】
単一マーカーとして、長いMseフラグメントであるD5S2117、TRP53−Ex2/3及びKRT19偽遺伝子1(以下、CK19とも呼ぶ)に対するPCRは、分裂中期CGHの成功と失敗とによる増幅されたゲノムの最も良好な分離を提供した。これらの3つのフラグメントのアッセイは、分裂中期CGHの成功の予測において高いアッセイ精度を示した。最も短いMseフラグメントであるPHACTR2に対するPCRの追加は、72のDCCゲノムの集合におけるアッセイ精度をわずかに高めた。
【0063】
要約すると、Ampli1用QCキットに対する2つの選択QCアッセイが開発された(表2)。
選択1:3つのマーカー(D5S2117、TRP53−Ex2/3、及びCK19)によるQCアッセイ
選択2:4つのマーカー(D5S2117、TRP53−Ex2/3、CK19、及びPHACTR2)によるQCアッセイ
【0064】
【表2】
【0065】
可能な場合には、最高品質であり、選択した全てのマーカーに対して陽性(両方の選択的アッセイに対して100%の特異性)の試料のみを使用するべきである。しかしながら、この高水準の品質管理を適用することに対するトレードオフは、高率の偽陰性である(7/36=19.4%)。最高品質水準を有する試験試料の数が制限される場合であっても、2/3又は3/4の陽性PCRを有するDRS−WGA増幅ゲノムは分裂中期CGHに対して高い成功率を予測する(それぞれ、3つのマーカーによるアッセイに対して0.94、4つのマーカーによるアッセイに対して0.97の特異性)。
【0066】
C.正常な核型を有する100の二倍体細胞セットに対するPCRマーカーの試験
QCアッセイに対するPCRマーカーセットを更に試験するため、正常な核型を有する二倍体細胞に由来する100の単一細胞ゲノムを再度増幅した。全ての試料を8つの異なるPCRマーカーについて試験した。さらに、予測された質の良好な22のゲノム、及び予測された質の良くない10のゲノムについて分裂中期CGHの成功を確認した。アッセイ精度の統計学的評価の結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
D.DRS−WGA増幅試料に対する選択したQCマーカーの更なる検証
B及びCで試験した試料は既存の単一細胞ゲノムの既存のバイオバンクから採取されたことから、それらの試料を関連する研究室のDRS−WGAに合わせた試薬(異なる供給元によって提供される)によって増幅した。Ampli1キット(Silicon Biosystemsによって供給される)によって増幅された試料を用いて提案されたQCアッセイの性能を確認するため、健康なドナーの単一の単核PBL及び細胞プール、並びに乳癌細胞株SKBR3の単一の細胞及び細胞プールを単離した。QCアッセイに対してB及びCで提案されたマーカーを使用して増幅したゲノムの質を予測した。その後、二倍体血液細胞、またSKBR3細胞について、一組の試料(5つの単一細胞、1つの細胞プール及び1つのAmpli1陰性対照)に対し分裂中期CGH実験を行い、QCアッセイの予測精度を確認した。
SKBR:10/11の単一細胞及び両細胞プールは4/4の陽性バンドマーカーPCRを示した。
1/11の細胞は試験した全てのマーカーについて陰性であった。
陰性対照は全ての試験したPCRにおいてクリーン(clean)。
PBL:11/11の単一細胞及び両細胞プールは4/4の陽性バンドマーカーPCRを示した。
陰性対照は全ての試験したPCRにおいてクリーン。
【0069】
実施例2
他の下流の解析、例えば特定のフラグメントに対するサンガーシークエンシングは単一細胞のDNAの定量的及び定性的に非常に高い増幅に依存しないため、第4のフラグメントを含めた。この配列の増幅の成功だけで同等のMseフラグメント(ここでは、PIK3CAのホットスポット1及びホットスポット2)のサンガーシークエンシングの成功を予測するのに十分であるかどうかを試験するため実験を行った。
【0070】
A.4マルチプレックスアッセイに対するプロトコル
既に確立された3マルチプレックスアッセイとの適合性を備えるため、コドン12及びコドン13をコードする頻繁に変異が導入されるヌクレオチドを包含するKRAS Mseフラグメントに対して新たなプライマーを設計した。これらのプライマーは、他の3つのバンド(D5S2117、CK19及びTP53−Exon2/3、図1を参照されたい)と明確に区別することができる91bp長のPCRフラグメントを増幅する。
【0071】
下記KRASのプライマーを4μMの濃度で上記プライマーミックスに加えて、以下のピペッティングスキーム及び熱プロファイルを使用した。
KRAS91bp-F ATAAGGCCTGCTGAAAATGAC(配列番号17)
KRAS91bp-R CTGAATTAGCTGTATCGTCAAGG(配列番号18)
【0072】
ピペッティングスキーム(1回) 1.0μl Ampli1(商標)PCR反応バッファー
(20mM MgClを含む)
0.2μl dNTP(10mM)
1.0μl プライマーミックス
(8つのプライマー、各々4μM)
0.2μl BSA(20mg/ml)
6.5μl PCR−H
0.1μl Ampli1(商標)Taqポリメラーゼ
(5U/μl)
1.0μl Ampli1(商標)産物(試験試料)
【0073】
熱プロファイル
工程1 95.0℃ 4分
工程2 95.0℃ 30秒
工程3 58.0℃ 30秒
工程4 72.0℃ 90秒
32のサイクル(工程2〜4)
工程5 72.0℃ 7分
工程6 4.0℃ 常時
【0074】
各PCR産物5μlを1.2%アガロースゲルに充填した。表4に示されるように、得られたアンプリコンのbp長を予想されるアンプリコンのbp長と比較することにより結果を確認した。
【0075】
【表4】
【0076】
上述の通り、マーカーBは多形部位にマッピングするため、PCR産物は、
ホモ接合の場合があり、記載される範囲(108〜166)に含まれるbpの1つのバンドを示し、
ヘテロ接合の場合があり、記載される範囲(108〜166)に含まれる異なるbpの2つのバンドを示す。
【0077】
図3は、上に開示される4マルチプレックスアッセイを使用して異なる試料から得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動の例を示す。
【0078】
例えば、図3の試料1は、3/4の陽性マーカーを示す。マーカーBのヘテロ接合性又はホモ接合性(1又は2のバンド)を、マーカーBに対する陽性の評価においては1として数えなければならない。例えば、試料2及び8は、4/4の陽性マーカーを示す。
【0079】
B.単一フラグメントPCR反応の結果を有する4マルチプレックスアッセイと確立された3マルチプレックスとの比較
実施例1の3マルチプレックスアッセイによって既に試験された乳房、前立腺、及び黒色腫のDCCの72のDRS−WGAライブラリを選択した。残念ながら、乳房01の試料は反応チューブの亀裂により失われた。他の71のDRS−WGA産物を全てKRAS 91bpの単一PCR及び新たな4マルチプレックスアッセイにより更に試験した。要約すると、53/71の試料が単一マーカーPCRにおいて91bpに予想されたバンドを示し、1つ(乳房24)以外の全ての試料が4マルチプレックスアッセイにおいて同じバンドを示した。D5S2117、CK19、及びTP53−Exon2/3に対する他の全てのバンドが3マルチプレックスアッセイによるものと同じ試料において検出された。さらに、ここで使用された3マルチプレックスで1又は複数のバンドを示した38の全ての試料において、KRAS 91bpアンプリコンを検出した。さらに、15の試料が、D5S2117、CK19、及びTP53−Exon2/3に対して陰性であったが、KRAS 91bpのみに対して陽性であったと同定された。最後に、18の試料は試験した4つ全てのアンプリコンに対して陰性であった。
【0080】
C.選択した10の試料のPIK3CAシークエンシング
KRAS 91bpアンプリコンのみを示した15の試料のうち10の試料をPIK3CAシークエンシング解析に選択した(4の乳房DCC試料、3の前立腺DCC試料、及び3の黒色腫DCC試料)。Ampli1(商標) PIK3CA Seqキット(イタリアのSilicon Biosystems SpA)を使用し、製造業者の指示書に従ってHS1及びHS2のフラグメントに対してPIK3CAのPCRを行った。PCRの後、全ての試料を1.5%アガロースゲルに充填し、電気泳動の後アンプリコンを可視化した。4つのDCC試料(前立腺DCC16、黒色腫DCC13、14及び16)においてHS1に対してのみ、5つのDCC試料(前立腺DCC14及び16、黒色腫DCC13、14及び16)においてHS2に対してのみ強いバンドが得られた。また、更に2つの試料(乳房DCC13、前立腺DCC24)及び3つの試料(乳房DCC13及び15、前立腺DCC24)に対して、それぞれ弱いものの明らかなバンドが検出された(図2)。1つの試料(黒色腫DCC16)は、この試料の先の全てのゲルでも明らかであった1kb以上のDNAフラグメントに対する強いスメアを示した。しかしながら、全ての試料に対してPCRアンプリコンを精製し、配列決定をした。
【0081】
PIK3CA突然変異ホットスポットに対するサンガーシークエンシングは、黒色腫DCC16の試料を含むゲル電気泳動において強い増幅を示す試料(図2を参照されたい)に対して非常に強く明確な配列を生じた。より低濃度のアンプリコンを含む他のほとんどの試料は高いバックグラウンドノイズを示したが、HS1に対する2つの追加試料(乳房DCC13、前立腺DCC24)及びHS2に対する4つの追加試料(乳房DCC13、15及び20、前立腺DCC24)について配列を容易に編集することができた。残りの試料については、完全配列の確実な編集にはバックグラウンドシグナルが高すぎた(HS1に対して乳房DCC15、17及び20、前立腺DCC14;HS2に対して乳房DCC15)。
【0082】
CellSearch(商標)(Jannsen Diagnostics LLC)で富化された乳癌患者末梢血からDEPArray(商標)(Silicon Biosystems SpA)を用いて採取したCTC及び白血球(WBC)の集合に対し、本発明によるAmpli1(商標)WGA産物の質を分析することによってゲノム完全性を判断した。マルチプレックスPCR反応(ゲノム完全性指標(Genome Integrity Index)、すなわちGII)に従って検出されて得られたPCR産物の数は、同じ富化ソーティング処理及びAmpli1(商標)WGAを経た同じ患者から収集された正常なWBCに関して、CTCにおいてより低い値のGIIに対し、図4に示されるように、著しく歪んでいることがわかった。
【0083】
説明として、0の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物又は第4のPCR産物がいずれも増幅されない状況に対応し、1の値のGIIは第4のPCR産物のみが増幅される状況に対応し、2の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、及び第3のPCR産物のうち1つと第4のPCR産物とが増幅される状況に対応し、3の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、及び第3のPCR産物のうち2つと第4のPCR産物とが増幅される状況に対応し、4の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物、及び第4のPCR産物が増幅される状況に対応する。
【0084】
PIK3CAのエクソン9及びエクソン20の突然変異ホットスポットに対して標的化したサンガーシークエンシング、ERBB2遺伝子の増幅を特定する慣例のqPCRアッセイ、並びにアレイCGHの成功率を判断するため、GIIを更に使用した。表5は結果の一覧を示す。
【0085】
【表5】
【0086】
上の実施例は、本発明による方法が、強固で信頼性のある結果による試料のゲノムの完全性及び試料のゲノムのDRS−WGAによって得られたDNA配列のライブラリの質の判定を可能とし、特に、DRS−WGAの下流である分裂中期及びアレイの比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、サンガーシークエンシング、及びqPCR等の分子アッセイの性能を予測することを可能とすることを示す。
【0087】
本発明の方法及びキットの特徴の解析より、得られる利益が明らかである。
【0088】
特に、DRS−WGAがMseI部位(TTAA)における二本鎖DNAの特異的制限酵素消化及び増幅に対する1つのユニバーサルアダプタのライゲーションに基づくという事実により、原則としては、増幅中に生成されたWGAライブラリを表す全てのフラグメントが既知である。そのため、単一細胞WGAライブラリにおいて1000bp超の長さを有する具体的なMseIフラグメントの同定により、単離された細胞のDNAのゲノム完全性を測定することができ、したがって、異なる種類の成功する分子解析について試料の質を判定することができる。
【0089】
第1のプライマー対、第2のプライマー対、及び第3のプライマー対が、DNA断片化の場合には増幅がより困難なDRS−WGAのDNA消化酵素であるMseIの長いアンプリコンに対応するゲノムの標的領域において特異的に選択されたことから、それらの増幅は所与の試料に対するDRS−WGAの良好な全体的成功の指標である。
【0090】
さらに、第1のプライマー対、第2のプライマー対、及び第3のプライマー対が異なる染色体腕に対して設計されるという事実により、上記方法は、試料のゲノムの完全性及び/又はゲノムの最も幅広い領域に亘って得られるDNA配列のライブラリの質を判断することを可能とする。
【0091】
さらに、第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物、及び第4のPCR産物が異なるサイズを有するという事実により、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対、及び第4のプライマー対をマルチプレックス反応において共に使用することができる。
【0092】
さらに、第4のプライマー対が80bp〜300bpの長さを有する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズするという事実により、低品質の細胞、例えばアポトーシス性CTCに対してもDRS−WGAの下流の分子アッセイの性能を予測することができる。例えば、PIK3CAエクソン9(30%)及びエクソン20(34%)の標的化サンガーシークエンシングにおける成功率、又はHer2 CNV解析に対するqPCRにおける成功率(25%)についてはこの第4のPCR産物が増幅されることのない細胞と少なくとも第4のPCR産物が増幅可能である細胞との間に実際、性能に有意な差が存在し、その成功率はおおよそ2倍になる(それぞれ、56%、72%、50%)。上記2集団は、DRS−WGAの長いアンプリコンにハイブリダイズする3つのプライマー対のみを使用する場合には区別がつかない。
【0093】
最後に、添付の特許請求の範囲の保護の範囲から逸脱することなく、開示され、示される方法及びキットに対する変更及び変形を行ってもよいことが明らかである。
【0094】
特に、上記方法は、第1のプライマー、第2のプライマー、第3のプライマー、及び場合によっては第4のプライマーを用いるPCR増幅を干渉しない更なるプライマー対を使用することにより多重化されてもよい。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]