【実施例】
【0055】
要するに、異なる染色体位置に位置するMseIフラグメントに対して設計された、様々なフラグメント長を有する幾つかのプライマー対を試験した。高い特異性及び感度で単一細胞産物の全ゲノム解析の成功を予測する3つのプライマー対を選択した(実施例1)。低品質の細胞、例えばアポトーシス性CTCのDRS−WGAの成功を示すため、より短いMseIフラグメントの第4のプライマー対を追加した(実施例2)。また、実施例ではPCR産物を「マーカー」とも呼び、また幾つかのプライマー対を含むPCR増幅反応を「マルチプレックスアッセイ」と呼ぶ。特に、試料のゲノムの完全性及び/又は試料のゲノムの確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS−WGA)によって得られたDNA配列のライブラリの質を判定するため設計された幾つかのプライマー対を含むPCR増幅反応を「品質管理アッセイ」又は「QCアッセイ」とも呼ぶ。
【0056】
実施例1
2つの選択的マーカー(alternative marker)の組合せは、癌細胞試料及び正常な核型を有する二倍体細胞の試料の両方に対するDRS−WGA(解析能(Resolution)10Mb〜20Mb)による単一細胞ゲノムDNAの増幅後の分裂中期比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)の成功を予測することを示した。
【0057】
A.試験した8個のPCRマーカーの特性
239bp〜1936bpのMseIフラグメント長に亘る8個の異なるMseIフラグメントに対するPCRを試験した(表1)。単一癌細胞におけるゲノムDNA喪失による陰性のアッセイ結果の可能性を最小化するため、7個の異なる染色体腕に位置する配列を選択した。
【0058】
ピペッティングスキーム(1回) 1.0μl バッファー+dNTP
(10mM MgCl、
100mM Tris
(pH8.5)、500mM
KCl、1mM dNTP)
0.5μl プライマー3’(8μM)
0.5μl プライマー5’(8μM)
0.25μl BSA(分子生物学用)
7.25μl PCR−H
2O
0.1μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)
0.5μl Ampli1産物(試験試料)
【0059】
熱プロファイル
工程1 94.0℃ 2分
工程2 アニーリング温度 30秒
工程3 72.0℃ 2分
工程4 94.0℃ 15秒
工程5 アニーリング温度 30秒
工程6 72.0℃ 20秒
14の追加サイクル(工程4〜6)
工程7 94.0℃ 15秒
工程8 アニーリング温度 30秒
工程9 72.0℃ 30秒
24の追加サイクル(工程7〜9)
工程10 72.0℃ 2分
工程11 4℃ 常時
【0060】
【表1】
【0061】
B.QCアッセイに対するPCRマーカーの選択
PCRマーカーの実現し得る最良の組合せを選択するため、異なる種類のヒト癌に由来する72の単一細胞ゲノム(24の乳房の播種性癌細胞(DCC)、24の前立腺DCC、24の黒色腫DCC)を再度増幅した。上記3群の各々に対して、先のCGH実験において分裂中期ハイブリダイゼーションに成功した12の細胞、及び先のCGH実験において分裂中期ハイブリダイゼーションに失敗した12の細胞を含めた。選択した全てのマーカーに対して特異的PCRを行い、分裂中期CGHの結果の予測における精度について上記アッセイを評価した。
【0062】
単一マーカーとして、長いMseフラグメントであるD5S2117、TRP53−Ex2/3及びKRT19偽遺伝子1(以下、CK19とも呼ぶ)に対するPCRは、分裂中期CGHの成功と失敗とによる増幅されたゲノムの最も良好な分離を提供した。これらの3つのフラグメントのアッセイは、分裂中期CGHの成功の予測において高いアッセイ精度を示した。最も短いMseフラグメントであるPHACTR2に対するPCRの追加は、72のDCCゲノムの集合におけるアッセイ精度をわずかに高めた。
【0063】
要約すると、Ampli1用QCキットに対する2つの選択QCアッセイが開発された(表2)。
選択1:3つのマーカー(D5S2117、TRP53−Ex2/3、及びCK19)によるQCアッセイ
選択2:4つのマーカー(D5S2117、TRP53−Ex2/3、CK19、及びPHACTR2)によるQCアッセイ
【0064】
【表2】
【0065】
可能な場合には、最高品質であり、選択した全てのマーカーに対して陽性(両方の選択的アッセイに対して100%の特異性)の試料のみを使用するべきである。しかしながら、この高水準の品質管理を適用することに対するトレードオフは、高率の偽陰性である(7/36=19.4%)。最高品質水準を有する試験試料の数が制限される場合であっても、2/3又は3/4の陽性PCRを有するDRS−WGA増幅ゲノムは分裂中期CGHに対して高い成功率を予測する(それぞれ、3つのマーカーによるアッセイに対して0.94、4つのマーカーによるアッセイに対して0.97の特異性)。
【0066】
C.正常な核型を有する100の二倍体細胞セットに対するPCRマーカーの試験
QCアッセイに対するPCRマーカーセットを更に試験するため、正常な核型を有する二倍体細胞に由来する100の単一細胞ゲノムを再度増幅した。全ての試料を8つの異なるPCRマーカーについて試験した。さらに、予測された質の良好な22のゲノム、及び予測された質の良くない10のゲノムについて分裂中期CGHの成功を確認した。アッセイ精度の統計学的評価の結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
D.DRS−WGA増幅試料に対する選択したQCマーカーの更なる検証
B及びCで試験した試料は既存の単一細胞ゲノムの既存のバイオバンクから採取されたことから、それらの試料を関連する研究室のDRS−WGAに合わせた試薬(異なる供給元によって提供される)によって増幅した。Ampli1キット(Silicon Biosystemsによって供給される)によって増幅された試料を用いて提案されたQCアッセイの性能を確認するため、健康なドナーの単一の単核PBL及び細胞プール、並びに乳癌細胞株SKBR3の単一の細胞及び細胞プールを単離した。QCアッセイに対してB及びCで提案されたマーカーを使用して増幅したゲノムの質を予測した。その後、二倍体血液細胞、またSKBR3細胞について、一組の試料(5つの単一細胞、1つの細胞プール及び1つのAmpli1陰性対照)に対し分裂中期CGH実験を行い、QCアッセイの予測精度を確認した。
SKBR:10/11の単一細胞及び両細胞プールは4/4の陽性バンドマーカーPCRを示した。
1/11の細胞は試験した全てのマーカーについて陰性であった。
陰性対照は全ての試験したPCRにおいてクリーン(clean)。
PBL:11/11の単一細胞及び両細胞プールは4/4の陽性バンドマーカーPCRを示した。
陰性対照は全ての試験したPCRにおいてクリーン。
【0069】
実施例2
他の下流の解析、例えば特定のフラグメントに対するサンガーシークエンシングは単一細胞のDNAの定量的及び定性的に非常に高い増幅に依存しないため、第4のフラグメントを含めた。この配列の増幅の成功だけで同等のMseフラグメント(ここでは、PIK3CAのホットスポット1及びホットスポット2)のサンガーシークエンシングの成功を予測するのに十分であるかどうかを試験するため実験を行った。
【0070】
A.4マルチプレックスアッセイに対するプロトコル
既に確立された3マルチプレックスアッセイとの適合性を備えるため、コドン12及びコドン13をコードする頻繁に変異が導入されるヌクレオチドを包含するKRAS Mseフラグメントに対して新たなプライマーを設計した。これらのプライマーは、他の3つのバンド(D5S2117、CK19及びTP53−Exon2/3、
図1を参照されたい)と明確に区別することができる91bp長のPCRフラグメントを増幅する。
【0071】
下記KRASのプライマーを4μMの濃度で上記プライマーミックスに加えて、以下のピペッティングスキーム及び熱プロファイルを使用した。
KRAS91bp-F ATAAGGCCTGCTGAAAATGAC(配列番号17)
KRAS91bp-R CTGAATTAGCTGTATCGTCAAGG(配列番号18)
【0072】
ピペッティングスキーム(1回) 1.0μl Ampli1(商標)PCR反応バッファー
(20mM MgCl
2を含む)
0.2μl dNTP(10mM)
1.0μl プライマーミックス
(8つのプライマー、各々4μM)
0.2μl BSA(20mg/ml)
6.5μl PCR−H
2O
0.1μl Ampli1(商標)Taqポリメラーゼ
(5U/μl)
1.0μl Ampli1(商標)産物(試験試料)
【0073】
熱プロファイル
工程1 95.0℃ 4分
工程2 95.0℃ 30秒
工程3 58.0℃ 30秒
工程4 72.0℃ 90秒
32のサイクル(工程2〜4)
工程5 72.0℃ 7分
工程6 4.0℃ 常時
【0074】
各PCR産物5μlを1.2%アガロースゲルに充填した。表4に示されるように、得られたアンプリコンのbp長を予想されるアンプリコンのbp長と比較することにより結果を確認した。
【0075】
【表4】
【0076】
上述の通り、マーカーBは多形部位にマッピングするため、PCR産物は、
ホモ接合の場合があり、記載される範囲(108〜166)に含まれるbpの1つのバンドを示し、
ヘテロ接合の場合があり、記載される範囲(108〜166)に含まれる異なるbpの2つのバンドを示す。
【0077】
図3は、上に開示される4マルチプレックスアッセイを使用して異なる試料から得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動の例を示す。
【0078】
例えば、
図3の試料1は、3/4の陽性マーカーを示す。マーカーBのヘテロ接合性又はホモ接合性(1又は2のバンド)を、マーカーBに対する陽性の評価においては1として数えなければならない。例えば、試料2及び8は、4/4の陽性マーカーを示す。
【0079】
B.単一フラグメントPCR反応の結果を有する4マルチプレックスアッセイと確立された3マルチプレックスとの比較
実施例1の3マルチプレックスアッセイによって既に試験された乳房、前立腺、及び黒色腫のDCCの72のDRS−WGAライブラリを選択した。残念ながら、乳房01の試料は反応チューブの亀裂により失われた。他の71のDRS−WGA産物を全てKRAS 91bpの単一PCR及び新たな4マルチプレックスアッセイにより更に試験した。要約すると、53/71の試料が単一マーカーPCRにおいて91bpに予想されたバンドを示し、1つ(乳房24)以外の全ての試料が4マルチプレックスアッセイにおいて同じバンドを示した。D5S2117、CK19、及びTP53−Exon2/3に対する他の全てのバンドが3マルチプレックスアッセイによるものと同じ試料において検出された。さらに、ここで使用された3マルチプレックスで1又は複数のバンドを示した38の全ての試料において、KRAS 91bpアンプリコンを検出した。さらに、15の試料が、D5S2117、CK19、及びTP53−Exon2/3に対して陰性であったが、KRAS 91bpのみに対して陽性であったと同定された。最後に、18の試料は試験した4つ全てのアンプリコンに対して陰性であった。
【0080】
C.選択した10の試料のPIK3CAシークエンシング
KRAS 91bpアンプリコンのみを示した15の試料のうち10の試料をPIK3CAシークエンシング解析に選択した(4の乳房DCC試料、3の前立腺DCC試料、及び3の黒色腫DCC試料)。Ampli1(商標) PIK3CA Seqキット(イタリアのSilicon Biosystems SpA)を使用し、製造業者の指示書に従ってHS1及びHS2のフラグメントに対してPIK3CAのPCRを行った。PCRの後、全ての試料を1.5%アガロースゲルに充填し、電気泳動の後アンプリコンを可視化した。4つのDCC試料(前立腺DCC16、黒色腫DCC13、14及び16)においてHS1に対してのみ、5つのDCC試料(前立腺DCC14及び16、黒色腫DCC13、14及び16)においてHS2に対してのみ強いバンドが得られた。また、更に2つの試料(乳房DCC13、前立腺DCC24)及び3つの試料(乳房DCC13及び15、前立腺DCC24)に対して、それぞれ弱いものの明らかなバンドが検出された(
図2)。1つの試料(黒色腫DCC16)は、この試料の先の全てのゲルでも明らかであった1kb以上のDNAフラグメントに対する強いスメアを示した。しかしながら、全ての試料に対してPCRアンプリコンを精製し、配列決定をした。
【0081】
PIK3CA突然変異ホットスポットに対するサンガーシークエンシングは、黒色腫DCC16の試料を含むゲル電気泳動において強い増幅を示す試料(
図2を参照されたい)に対して非常に強く明確な配列を生じた。より低濃度のアンプリコンを含む他のほとんどの試料は高いバックグラウンドノイズを示したが、HS1に対する2つの追加試料(乳房DCC13、前立腺DCC24)及びHS2に対する4つの追加試料(乳房DCC13、15及び20、前立腺DCC24)について配列を容易に編集することができた。残りの試料については、完全配列の確実な編集にはバックグラウンドシグナルが高すぎた(HS1に対して乳房DCC15、17及び20、前立腺DCC14;HS2に対して乳房DCC15)。
【0082】
CellSearch(商標)(Jannsen Diagnostics LLC)で富化された乳癌患者末梢血からDEPArray(商標)(Silicon Biosystems SpA)を用いて採取したCTC及び白血球(WBC)の集合に対し、本発明によるAmpli1(商標)WGA産物の質を分析することによってゲノム完全性を判断した。マルチプレックスPCR反応(ゲノム完全性指標(Genome Integrity Index)、すなわちGII)に従って検出されて得られたPCR産物の数は、同じ富化ソーティング処理及びAmpli1(商標)WGAを経た同じ患者から収集された正常なWBCに関して、CTCにおいてより低い値のGIIに対し、
図4に示されるように、著しく歪んでいることがわかった。
【0083】
説明として、0の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物又は第4のPCR産物がいずれも増幅されない状況に対応し、1の値のGIIは第4のPCR産物のみが増幅される状況に対応し、2の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、及び第3のPCR産物のうち1つと第4のPCR産物とが増幅される状況に対応し、3の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、及び第3のPCR産物のうち2つと第4のPCR産物とが増幅される状況に対応し、4の値のGIIは第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物、及び第4のPCR産物が増幅される状況に対応する。
【0084】
PIK3CAのエクソン9及びエクソン20の突然変異ホットスポットに対して標的化したサンガーシークエンシング、ERBB2遺伝子の増幅を特定する慣例のqPCRアッセイ、並びにアレイCGHの成功率を判断するため、GIIを更に使用した。表5は結果の一覧を示す。
【0085】
【表5】
【0086】
上の実施例は、本発明による方法が、強固で信頼性のある結果による試料のゲノムの完全性及び試料のゲノムのDRS−WGAによって得られたDNA配列のライブラリの質の判定を可能とし、特に、DRS−WGAの下流である分裂中期及びアレイの比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、サンガーシークエンシング、及びqPCR等の分子アッセイの性能を予測することを可能とすることを示す。
【0087】
本発明の方法及びキットの特徴の解析より、得られる利益が明らかである。
【0088】
特に、DRS−WGAがMseI部位(TTAA)における二本鎖DNAの特異的制限酵素消化及び増幅に対する1つのユニバーサルアダプタのライゲーションに基づくという事実により、原則としては、増幅中に生成されたWGAライブラリを表す全てのフラグメントが既知である。そのため、単一細胞WGAライブラリにおいて1000bp超の長さを有する具体的なMseIフラグメントの同定により、単離された細胞のDNAのゲノム完全性を測定することができ、したがって、異なる種類の成功する分子解析について試料の質を判定することができる。
【0089】
第1のプライマー対、第2のプライマー対、及び第3のプライマー対が、DNA断片化の場合には増幅がより困難なDRS−WGAのDNA消化酵素であるMseIの長いアンプリコンに対応するゲノムの標的領域において特異的に選択されたことから、それらの増幅は所与の試料に対するDRS−WGAの良好な全体的成功の指標である。
【0090】
さらに、第1のプライマー対、第2のプライマー対、及び第3のプライマー対が異なる染色体腕に対して設計されるという事実により、上記方法は、試料のゲノムの完全性及び/又はゲノムの最も幅広い領域に亘って得られるDNA配列のライブラリの質を判断することを可能とする。
【0091】
さらに、第1のPCR産物、第2のPCR産物、第3のPCR産物、及び第4のPCR産物が異なるサイズを有するという事実により、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対、及び第4のプライマー対をマルチプレックス反応において共に使用することができる。
【0092】
さらに、第4のプライマー対が80bp〜300bpの長さを有する上記ライブラリのDNA配列にハイブリダイズするという事実により、低品質の細胞、例えばアポトーシス性CTCに対してもDRS−WGAの下流の分子アッセイの性能を予測することができる。例えば、PIK3CAエクソン9(30%)及びエクソン20(34%)の標的化サンガーシークエンシングにおける成功率、又はHer2 CNV解析に対するqPCRにおける成功率(25%)についてはこの第4のPCR産物が増幅されることのない細胞と少なくとも第4のPCR産物が増幅可能である細胞との間に実際、性能に有意な差が存在し、その成功率はおおよそ2倍になる(それぞれ、56%、72%、50%)。上記2集団は、DRS−WGAの長いアンプリコンにハイブリダイズする3つのプライマー対のみを使用する場合には区別がつかない。
【0093】
最後に、添付の特許請求の範囲の保護の範囲から逸脱することなく、開示され、示される方法及びキットに対する変更及び変形を行ってもよいことが明らかである。
【0094】
特に、上記方法は、第1のプライマー、第2のプライマー、第3のプライマー、及び場合によっては第4のプライマーを用いるPCR増幅を干渉しない更なるプライマー対を使用することにより多重化されてもよい。