(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543315
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】缶胴の位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
B21D 51/26 20060101AFI20190628BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
B21D51/26 W
B21D51/26 B
B21D43/00 A
B21D43/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-195778(P2017-195778)
(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2019-69454(P2019-69454A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】396024819
【氏名又は名称】株式会社三友機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083633
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】徳永 朋丈
【審査官】
飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−282977(JP,A)
【文献】
米国特許第06009733(US,A)
【文献】
特開2002−263763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴(W)を金型(10)で変形に成形する前に、缶胴(W)を回転させて、前記金型(10)に対して、缶胴(W)の位置合わせ方法であって、
前記缶胴(W)には、その開口周縁をフランジ加工したフランジ部(W1)下側の周面に位置決め用カラーマーク(A)を有し、この位置決め用カラーマーク(A)が、周方向に長幅の減速用カラーマーク(A1)と、それと同色で離れた位置に、周方向に短幅の停止用カラーマーク(A2)とから少なくとも成り、前記缶胴(W)を回転し、カラーセンサ(9d)で前記位置決め用カラーマーク(A)を検出することによって前記金型(10)に対する前記缶胴(W)の位置合わせ行うことを特徴とする缶胴の位置合わせ方法。
【請求項2】
前記位置決め用カラーマーク(A)の検出が、前記缶胴(W)の回転で、前記減速用カラーマーク(A1)を前記カラーセンサ(9d)が検出したら、前記缶胴(W)の回転を減速させ、停止用カラーマーク(A2)をカラーセンサ(9d)が検出したら、前記缶胴(W)の回転を停止させる請求項1記載の缶胴の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記位置決め用カラーマーク(A)以外の前記フランジ部(W1)下側の周面を、前記位置決め用カラーマーク(A)と異なる色で着色した請求項1又は2記載の缶胴の位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板材から円筒状に形成して溶接した缶胴の外周を金型に嵌着して缶胴を変形させるエキスパンドやエンボス等の成形をする際に、缶胴を成形する金型に嵌着する前に、缶胴を回動させて、金型に対して缶胴の外周位置を合わせるための缶胴の位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶の缶胴部を変形させて外観の見栄えを良くしたり掴み易くするために、缶胴を金型によって、缶胴を真円でない加工、例えば、缶胴の途中に張り出し加工や扁平加工を施すエキスパンド成形やエンボス加工等が行われる。
このような成形においては、缶胴の外面に印刷した文字や模様の印刷デザインとエンボス加工とが一致するように、金型に対する缶胴の位置合わせ、あるいは溶接部が缶胴の外形正面からずらした成形が行われる。
つまり、金型に缶胴を嵌着する前に、缶胴を回動させて、缶胴に印刷した位置合わせマークをセンサで検出して缶胴の向きを、固定した金型に合わせるための位置合わせを行っている。
【0003】
このような、缶胴の向きを、固定した金型に合わせるための位置合わせを行う方法としては次のようなものがある。
例えば、特許文献1(特開2001−47165号)では、缶胴の外面に予め施された印刷デザインに合わせて缶胴を加工する前に、印刷デザインの位置がランダムな状態で連続的に搬送されている缶のそれぞれについて、先ず缶胴の円周方向に高速で回転させて、缶胴に施された大きいマークをセンサにより検出した時点で缶の回転速度を低速に落としてから、次いで缶胴に施された小さいマークをセンサにより検出した時点で缶の回転を停止させることによって、印刷デザインの位置合わせを行うことが開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−340539号)では、円筒状の外周面に模様が印刷された缶胴の開口周縁にネック部及びフランジ部を形成したのち、模様に設けられ又は模様とは別に設けられた位置決めマークを検出することによって缶胴の位置合わせを行い、その後、缶胴の内部にインナローラを挿入するとともに缶胴の外部にアウタローラを配置し、アウタローラを缶胴に押し付け、インナローラ及びアウタローラを回転させて、模様の少なくとも一部に、模様と位置合わせして凹部及び/又は凸部のエンボス加工を施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−47165号公報
【特許文献2】特開2003−340539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の位置合わせ方法に於いては、センサで検出する位置決めマークが缶胴部に印刷しているため、そのマークが製造缶の表面から露出し見栄えが悪く、印刷デザインとの違和感を呈しデザイン性を損ない、商品価値を低下させていた。
また、マークが白黒の場合、大きいマークは良いとしても、小さいマークは缶の汚れや溶接部等との判別が付き難く、センサが誤認し、特に缶胴を高速で回転するため、マークを正確に読み取ることが出来ず、時として缶の位置合わせが不正確になる問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、センサで検出する位置決めマークが完成した缶製品の表面から露出せず、しかもマークの検知が確実で高速で正確な位置決めできる缶胴の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、缶胴(W)を金型(10)で変形に成形する前に、缶胴(W)を回転させて、前記金型(10)に対して、缶胴(W)の位置合わせ方法であって、前記缶胴(W)には、その開口周縁をフランジ加工したフランジ部(W1)下側の周面に位置決め用カラーマーク(A)を有し、この位置決め用カラーマーク(A)が、周方向に長幅の減速用カラーマーク(A1)と、それと同色で離れた位置に、周方向に短幅の停止用カラーマーク(A2)とから少なくとも成り、前記缶胴(W)を回転し、カラーセンサー(9d)で前記位置決め用カラーマーク(A)を検出することによって前記金型(10)に対する前記缶胴(W)の位置合わせ行うことを特徴とする。
【0009】
前記位置決め用カラーマーク(A)の検出が、前記缶胴(W)の回転で、前記減速用カラーマーク(A1)を前記カラーセンサ(9d)が検出したら、前記缶胴(W)の回転を減速させ、停止用カラーマーク(A2)をカラーセンサ(9d)が検出したら、前記缶胴(W)の回転を停止させる。
【0010】
前記位置決め用カラーマーク(A)以外の前記フランジ部(W1)下側の周面を、前記位置決め用カラーマーク(A)と異なる色で着色している。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、缶胴の開口周縁をフランジ加工したフランジ部に印刷した複数色の位置決め用をセンサで検出するため、後工程でカラーマークが巻締められ、位置決めマークが完成した缶製品の表面から露出せず、しかもカラーマークの色でセンサが検知するため、缶の汚れや溶接部等に対しても誤検知することなく、高速で正確な缶胴の位置決めができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のエキスパンド成形装置本体を示す説明図である。
【
図3】本発明のリニア駆動装置、リニアガイドレール及びチャックユニットの装着状態を示す説明図である。
【
図4】本発明のチャックユニットを示す説明図である。
【
図5】本発明の缶胴に印刷した位置決めマークの説明図である。
【
図6】本発明の缶胴の位置決め手順の説明図である。
【
図7】本発明のフランジ部に標示した位置決め用カラーマークの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、先ず、金型に対する缶胴の位置合わせ方法の装置として、エキスパンド成形を例に、その装置の概略を
図1〜3を基に説明すると、
(1)はエキスパンド成形装置本体であり、エキスパンド成形装置本体(1)は、その上下方向の中心に回転自在に設けた回転軸(2)と、その回転軸(2)に装着した上部のスピンドルホルダ(4)及び下部の金型ホルダ(5)と、このスピンドルホルダ(4)と金型ホルダ(5)間に設けると共に、外周に向けて放射状に延びる複数の取付部(6a)を有する取付スリーブ(6)と、前記各取付部(6a)の先端側に、リニア駆動装置(7)及びリニアスライドレール(8)を介して設けたチャックユニット(9)と、これら各チャックユニット(9)のマグネットチャック(9b)と対向し前記金型ホルダ(5)に装着した複数の金型(10)と、を少なくとも備え、この金型(10)はエキスパンド成形をするために拡径、縮径ができる。
【0014】
回転軸(2)は下方の基台(3)に回転自在に設けられ、回転軸(2)の下端が駆動モーター(14)と接続され、この駆動モーター(14)で回転駆動される。
【0015】
取付スリーブ(6)はスピンドルホルダ(4)と金型ホルダ(5)との間で、回転軸(2)に設け、この取付スリーブ(6)には、その外周に向けて放射状に伸びる複数の取付部(6a)を形成し、その各取付部(6a)の先端側には、リニア駆動装置(7)及びリニアガイドレール(8)を装着し、これらリニア駆動装置(7)及びリニアガイドレール(8)を介してチャックユニット(9)を装着させている。
また、スピンドルホルダ(4)上には、リニア駆動装置(7)、ステッピングモーター(9c)等を制御する制御装置(17)が装着されている。
【0016】
(11)は前記金型ホルダ(5)の下部で基台(3)に固定して設けた円柱又はドラム状の昇降用固定カムであり、この昇降用固定カム(11)の外周面にカム溝(11a)を形成し、そのカム溝(11a)に挿入したカムフォロア(12)がカム溝(11a)に沿って移動し、それと連結した作動軸(13)を上下に移動させて金型(10)を拡径又は縮径させる。
【0017】
更に説明すると、回転軸(2)は、その下端の駆動モーター(14)で回転され、その 回転軸(2)とキーで連結固定した前記スピンドルホルダ(4)、金型ホルダ(5)及び取付スリーブ(6)が、回転軸(2)と一体で回転させられる。
それに伴って、前記リニア駆動装置(7)、リニアガイドレール(8)、前記チャックユニット(9)等も回転軸(2)を中心に一体で回転するのである。
【0018】
また、チャックユニット(9)の無制御による移動、つまり、リニア駆動装置(7)の制御が停電時や外乱による誤動作により、チャックユニット(9)が勝手に落下したり、上方への暴走移動を起した場合、これに対し、リニアガイドレール(8)上に設けた下側ストッパー(15)と上側ストッパー(16)の何れかにチャックユニット(9)のチャックホルダ(9a)が当接して停止させ、それ以上チャックユニット(9)が移動しないように移動範囲を規制し、装置の安全性を確保している。
【0019】
チャックユニット(9)は、
図4に示すように、L型のチャックホルダ(9a)と、そのチャックホルダ(9a)に設けたマグネットチャック(9b)、そのマグネットチャック(9b)を回転駆動するステッピングモーター(9c)、位置決め用カラーマークを検出するカラーセンサ(9d)とから成り、マグネットチャック(9b)は有底の円筒状で、その開口側の一部が割金型(10)に嵌入でき、円筒状の下端面には永久磁石が埋め込まれている。
これにより、前工程から搬送された缶胴(W)の上端をマグネットチャック(9b)の下端面で磁着した状態で割金型(10)に供給できる。
【0020】
このマグネットチャック(9b)に磁着された缶胴ワーク(W)は、リニア駆動装置(7)の駆動により、チャックユニット(9)がリニアガイドレール(8)の案内で下方に移動し、下方の割金型(10)に嵌着し供給されると同時に割金型(10)が拡径し、エキスパンド成形が行われる。
【0021】
また、
図5に示すように、缶胴(W)は、少なくとも一端部が外側に折曲させ、約2〜3mmの淵幅にフランジ加工されており、フランジ部(W1)の下側(缶胴側)の周面には、色付きの位置決め用カラーマーク(A)を印刷している。
そして、平面のフランジ部(W1)がマグネットチャック(9b)に磁着するため、缶胴(W)を高速で回動させてもマグネットチャック(9b)から離脱することがない。
【0022】
位置決め用カラーマーク(A)は、
図7(a)に示すように、フランジ部(W1)の周方向に長幅の減速用カラーマーク(A1)と、それと離れた位置に、減速用カラーマーク(A1)と同色で周方向に短幅の停止用カラーマーク(A2)とから少なくとも成る。
減速用カラーマーク(A1)の幅は、フランジ部(W1)全周(360度)に対し、約45度分の周方向範囲にわたって長幅にカラー印刷されたものであり、カラーの色は、例えば赤色である。
他方、停止用カラーマーク(A2)は、減速用カラーマーク(A1)よりも缶胴(W)の回転方向後方に位置し、その周方向の幅が約2〜3mmである。
この停止用カラーマーク(A2)の位置は、金型(10)に対し、缶胴(W)が正しいセット位置になるように設定している。
これにより、缶胴(W)を回転し、カラーセンサ(9d)で位置決め用カラーマーク(A)を検出することによって金型(10)に対する缶胴(W)の位置合わせを行う。
【0023】
また、
図7(b) に示すように、前記位置決め用カラーマーク(A)以外の前記フランジ部(W1)下側の周面が、前記位置決め用カラーマーク(A)と異なる色、例えば緑色に印刷されている。
尚、フランジ部(W1)下側の周面に印刷した色は、上記の色に必ずしも限定されず、他の色でもよい。
この位置決め用カラーマーク(A)以外の部分に異なる色を印刷したことにより、位置決め用カラーマーク(A)との区別が明確になり、検出の際に、汚れや溶接部に対しても誤認することがない。
【0024】
カラーセンサ(9d)は、位置決め用カラーマーク(A)を斜め下方から検出できる位置に配置され、チャックホルダ(9a)から下方に伸びるため取付板(9e)に設けている。
このカラーセンサ(9d)は、例えば、キーエンス社製のホワイトスポット光電センサが使用され、位置決め用カラーマーク(A)を斜めから検出する場合にも誤検出がなく、また、白色のスポットを投射して色を検出するため、暗い場所でも安定した検出が出来るので好ましい。
【0025】
このカラーセンサ(9d)による位置決めは、
図6に示す位置決め手順で行われる。図で、(a)は缶胴(W)の回転速度の変化を示すグラフ、(b)は(a)のグラフと対応したセンサと位置決め用カラーマーク(A)との位置関係を示す図である。
この図(a)に示すように、供給された缶胴(W)がマグネットチャック(9b)に磁着したと同時に、ステッピングモーター(9c)が駆動し、時間T1で缶胴(W)の回転速度を設定された回転速度V1まで上げる。
そしてカラーセンサ(9d)が赤色の減速用カラーマーク(A1)を検出するまで、缶胴(W)の回転速度をV1で回転させる。
そしてカラーセンサ(9d)が赤色の減速用カラーマーク(A1)を検出した時間T2で、徐々に回転を減速(イ)し、時間T3で赤色の停止用カラーマーク(A2)をカラーセンサ(9d)が検出したら、缶胴(W)の回転を停止(ロ)させて、金型(10)に対する缶胴(W)の位置決めが完了する。
これにより、エキスパンド成形において、変形した缶胴(W)の正面(見栄えが良い面)に溶接部が位置せず、また、印刷デザインが正面に位置し、良好な缶体を生産できる。
尚、位置決め用カラーマーク(A)は上記赤色に限らず他の色でもよく、またカラーセンサ(9d)が位置決め用カラーマーク(A)以外の色を検出しても、減速用カラーマーク(A1)を検出するまで缶胴(W)の回転速度をV1で回転させ、以後上記の検出方法で缶胴(W)の位置決めが行われる。
【0026】
カラーセンサ(9d)の検出信号は、エキスパンド成形においては、エキスパンド成形装置本体(1)上部の制御装置(17)に送られ、この検出信号を基に、制御装置(17)でステッピングモーター(9c)の回転を制御させている。
【0027】
尚、本発明の缶胴の位置合わせ方法は、エキスパンド成形に限らず、エンボス加工、バジル加工、缶胴の加工において、缶胴の正面位置を要求される他の加工にも適用できる。
また、缶胴を回転させるステッピングモーターについても、サーボモーター等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 金型
W 缶胴
W1 フランジ部
A 位置決め用カラーマーク
A1 減速用カラーマーク
A2 停止用カラーマーク
9d カラーセンサ