(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
ガイドピン穴と、幅方向に並ぶ複数のファイバ穴と、傾斜端面と、を有するフェルールと、前記フェルールを後退可能に押圧しつつ収容するハウジングと、を備えた光コネクタであって、コネクタ着脱方向及び前記幅方向と直交する方向を上下方向とし、前記傾斜端面において相手方コネクタの側に突出する側を上としたとき、前記相手方コネクタとの接続時に前記フェルールに上向きの力を付与する付与部を有することを特徴とする光コネクタが明らかとなる。このような光コネクタによれば、低損失を安定的に実現することができる。
【0012】
前記付与部は、前記相手方コネクタとの接続時にガイドピンとガイドピン穴とが嵌合した後に、前記フェルールに上向きの力を付与することが望ましい。これにより、フェルールの傾斜端面の損傷を抑制できる。
【0013】
前記付与部は、前記フェルールの前記傾斜端面が前記相手方コネクタのフェルールの傾斜端面と接触する前に、フェルールに上向きの力を付与することが望ましい。これにより、フェルールの傾斜端面に摩擦力が働く前に、フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0014】
前記付与部は、前記フェルールに上向きの力を付与した後、前記フェルールに付与した前記力を解除することが望ましい。これにより、光コネクタの耐久性が向上する。
【0015】
前記付与部は、前記フェルールの前記傾斜端面が前記相手方コネクタのフェルールの傾斜端面と接触した後、フェルールに付与した前記力を解除することが望ましい。これにより、予め見込んだ程度にフェルールが上方向にずれた状態を維持しやすくなる。
【0016】
前記付与部は、前記フェルールの本体部に接触することによって、前記フェルールに上向きの力を付与することが望ましい。これにより、傾斜端面に近い部位に力を付与することができるため、予め見込んだ程度に光ファイバの端面を上方向にずらすことができる。
【0017】
前記付与部は、前記フェルールの鍔部に接触することによって、前記フェルールに上向きの力を付与しても良い。若しくは、前記付与部は、前記フェルールの後側に配置された部材に力を付与することによって、前記フェルールに上向きの力を付与しても良い。
【0018】
前記ハウジングにはカップリングが取り付けられており、前記付与部は、前記ハウジングに対する前記カップリングの移動に連動して、前記フェルールに上向きの力を付与することが望ましい。コネクタ接続時のカップリングの移動量は比較的大きいため、フェルールの移動に連動させてフェルールに力を付与する構成よりも、フェルールに大きな力や変位を付与しやすくなる。
【0019】
前記付与部は、前記カップリングに設けられた押圧部を有し、前記押圧部は、前記カップリングが前記ハウジングに対して後退する際に、前記ハウジングに設けられたガイド面に沿って後退しつつ上側に移動し、前記フェルールを上向きに押圧することが望ましい。これにより、押圧することによって前記フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0020】
前記付与部は、前記ハウジングに設けられた押圧部を有し、前記押圧部は、前記カップリングが前記ハウジングに対して後退する際に、前記カップリングから力を受けることによって、前記フェルールを上向きに押圧することが望ましい。これにより、押圧部がカップリングに設けられていなくても、前記ハウジングに対する前記カップリングの移動に連動して、前記フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0021】
前記押圧部は、前記ハウジングのキーの設けられた側の反対側に配置されていることが望ましい。これにより、キーの配置の制約を受けずに、押圧部を配置することができる。
【0022】
前記付与部は、前記ハウジングに対する前記フェルールの移動に連動して、前記フェルールに上向きの力を付与することが望ましい。これにより、前記カップリングの移動に連動しなくても、前記フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0023】
前記付与部は、前記フェルールとともに移動する突起部と、前記ハウジングに設けられた接触部とを有し、前記ハウジングに対して前記フェルールが後退する際に、前記突起部が前記接触部と接触することによって、前記フェルールが前記突起部から上向きの力を受けることが望ましい。これにより、簡易な構成で、前記フェルールの移動に連動して、前記フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0024】
前記ハウジングに対して前記フェルールが後退する際に、前記突起部が前記接触部を乗り越えることによって、前記フェルールへの上向きの力が解除されることが望ましい。これにより、光コネクタの耐久性が向上する。
【0025】
前記フェルールの下面に凹部が形成されており、
前記突起部は、前記フェルールの前記下面よりも下側に突出しないように、前記凹部に設けられていることが望ましい。これにより、前記フェルールの前記下面を基準面として利用しやすくなる。
【0026】
前記付与部は、前記ハウジングに対して前記フェルールを前側に押圧するスプリングであり、前記スプリングの軸方向に垂直な面に対して前記スプリングの後端の台座部が傾斜していることが望ましい。これにより、簡易な構成で、前記フェルールに上向きの力を付与することができる。
【0027】
ガイドピン穴と、幅方向に並ぶ複数のファイバ穴と、傾斜端面と、を有するフェルールと、前記フェルールを後退可能に押圧しつつ収容するハウジングと、を備えた光コネクタの接続方法であって、コネクタ着脱方向及び前記幅方向と直交する方向を上下方向とし、前記傾斜端面において相手方コネクタの側に突出する側を上としたとき、前記相手方コネクタとの接続時に前記フェルールに上向きの力を付与することを特徴とする光コネクタの接続方法が明らかとなる。このような光コネクタの接続方法によれば、低損失を安定的に実現することができる。
【0028】
===第1実施形態===
図1A及び
図1Bは、第1実施形態の光コネクタ1の斜視図である。
図2は、第1実施形態の光コネクタ1の分解斜視図である。
【0029】
以下の説明では、
図1A及び
図1Bに示すように各方向を定義する。すなわち、光コネクタ1の着脱方向を「前後方向」とし、相手方コネクタ(不図示)の側を「前」とし、逆側を「後」とする。また、一対のガイドピン穴11の並ぶ方向や、複数の光ファイバ穴12の並ぶ方向を「左右方向」とし、後側から前側を見たときの右側を「右」とし、逆側を「左」とする。なお、左右方向のことを「幅方向」と呼ぶこともある。また、「前後方向」及び「左右方向(幅方向)と直交する方向を「上下方向」とし、フェルール10の傾斜端面13において前側(相手方コネクタの側)に突出する側を「上」とし、逆側を「下」とする。なお、光コネクタ1のキー21の設けられた側が上側となる。
【0030】
光コネクタ1は、JIS C5982やIEC 61754−7などに制定されるMPO(Multifiber Push-On)光コネクタである。光コネクタ1は、フェルール10と、ハウジング20とを備えている。
【0031】
フェルール10は、光ファイバ3の端部を保持する部材である。フェルール10は、ガイドピン穴11と、複数のファイバ穴12と、傾斜端面13とを有する。また、フェルール10は、本体部14と、鍔部15とを有する。鍔部15は、本体部14よりも後側の部位であり、本体部14よりも外側に突出した部位である。
【0032】
ガイドピン穴11は、ガイドピン111の挿入される穴である。光コネクタ1が雄型の場合には、ガイドピン穴11からガイドピン111の端部が突出するように、ガイドピン穴11に予めガイドピン111が挿入されている。光コネクタ1が雌型の場合には、ガイドピン穴11に、相手方コネクタのガイドピン111が挿入されることになる。コネクタ接続時にガイドピン111とガイドピン穴11とが嵌合することによって、フェルール10の位置合わせが行われることになる。このため、ガイドピン穴11は、ガイドピン111とともに位置決め部を構成する部位である。
【0033】
ファイバ穴12は、光ファイバ3の端部を挿入するための穴である。各ファイバ穴12には、それぞれ光ファイバ3の端部が固定されている。本実施形態では、ファイバ穴12に挿入される光ファイバ3はシングルモード型光ファイバであるが、マルチモード型光ファイバでも良い。
【0034】
傾斜端面13は、相手方コネクタのフェルールとの接続端面である。傾斜端面13は、光ファイバ3の光軸に垂直な面に対して8度ほど傾斜している。傾斜端面13は、ファイバ穴12に挿入された光ファイバ3の端面と共に斜め研磨されて形成されている。光ファイバ3の端面を傾斜させることによって、接続点での光の反射量を低減させている。
【0035】
ハウジング20は、フェルール10を後退可能に押圧しつつ収容している筒状の部材である。ハウジング20の内壁面には、内側に向かって突出する突出部22が設けられている。突出部22がフェルール10の鍔部15と接触することによって、前側に向かって押圧されているフェルール10の前抜けが防止される。ハウジング20の側面には、アダプタ90の爪部91(後述)の引っ掛かる係止部23が形成されている。
【0036】
ハウジング20の外側には、カップリング30が配置されている。カップリング30は、アダプタ90の爪部91(後述)がハウジング20の係止部23に引っ掛かった状態(ラッチ状態)を保持する結合部材である。カップリング30は、ハウジング20に対して前後方向にスライド可能に設けられている。カップリング30とハウジング20との間にはバネ20Aが配置されており、このバネ20Aによって、カップリング30は、ハウジング20に対して後退可能に前側に押圧されている。アダプタ90の爪部91(後述)がハウジング20の係止部23に引っ掛かった状態(ラッチ状態)のとき、カップリング30の内壁面によって、アダプタ90の爪部91が外側に開くことが防止され、これにより、ラッチ状態が保持される。光コネクタ1の抜去時に、ハウジング20に対してカップリング30を後側にスライドさせると、アダプタ90の爪部91が外側に開くことが許容され、ラッチ状態が解除されることになる。
【0037】
ハウジング20は、フェルール10を前側に押圧するフローティング機構40も収容している。
図2には、ハウジング20に収容されているフローティング機構40が示されている。
【0038】
フローティング機構40は、フェルール10を前側に押圧する機構である。フローティング機構40は、ピンクランプ50と、スプリング60と、スプリングプッシュ70とを有する。ピンクランプ50は、フェルール10の後方に配置される部材である。光コネクタ1が雄型の場合、ピンクランプ50は、ガイドピン111の後端を保持することになる。なお、ガイドピン111はフェルール10のガイドピン穴11を貫通して、ガイドピン111の先端が傾斜端面13から突出することになる。ピンクランプ50の後部には、スプリング60の前端部が固定されている。スプリング60は、フェルール10を前側に押圧する押圧力を付与する弾性部材である。スプリング60は、ピンクランプ50とスプリングプッシュ70との間で圧縮変形した状態でハウジング20に収容される。スプリング60の前端部はピンクランプ50に固定されており、スプリング60の後端部はスプリングプッシュ70に固定されている。スプリングプッシュ70は、スプリング60を圧縮した状態でハウジング20内に収容させる部材である。スプリングプッシュ70は、一対の腕部71を有する。一対の腕部71の間の空間にはスプリング60が収容される。腕部71の前端には、外側に向かって爪部711が形成されている。爪部711がハウジング20の側面の窓部24に引っ掛かることによって、スプリング60が圧縮された状態でハウジング20内に収容される。これにより、圧縮変形したスプリング60の反発力によって、ピンクランプ50を介してフェルール10が前側に押圧されることになる。
【0039】
図3A及び
図3Bは、フェルール10の軸ずれの説明図である。
既に説明したように、コネクタ接続時には、ガイドピン111とガイドピン穴11とが嵌合することによって、フェルール10の位置合わせが行われる。但し、ガイドピン穴11の直径はガイドピン111の直径よりも大きくなるように形成されており、ガイドピン穴11とガイドピン111との間にはクリアランス(隙間)が形成されている。一方、フェルール10は傾斜端面13を有しており、コネクタ接続時には、前側に押圧された状態で、フェルール10の傾斜端面13同士が突き合わせられることになる。この結果、フェルール10が、相手方コネクタの傾斜端面13に沿って滑るように変位し、フェルール10は、上下方向に相対的にずれることになる。
【0040】
このため、本実施形態のフェルール10のファイバ穴12は、
図3Bに示す位置ズレ量を予め見込んで、ガイドピン穴11の中心軸よりも上下方向にずれて配置されている。
図3Bに示すように、ガイドピン111の下縁がガイドピン穴11の下縁に接触するまで、フェルール10が上下方向に相対的にずれることが見込まれるため、ガイドピン111の直径をD1、ガイドピン穴11の直径をD2としたとき、ファイバ穴12は、ガイドピン穴11の中心軸よりも(D2−D1)/2に相当するオフセット量の分だけ上下方向にずれて配置されている。なお、ファイバ穴12がガイドピン穴11に対して傾斜している場合には、斜め研磨時に生じる偏心分も考慮する必要があるため、オフセット量は、(D2−D1)/2に限られるものではない。
【0041】
このように光ファイバ穴12が、フェルール10の上下にずれる量を予め見込んだ位置に設けられているため、フェルール10の接続端面同士を突き合わせた際に予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にずれない場合には、光ファイバ3の接続損失が増大してしまうことになる。但し、傾斜端面13の間に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にずれないことがある。すなわち、
図3Bに示すように、ガイドピン111の下縁がガイドピン穴11の下縁に接触するほど、フェルール10が上下方向に相対的にずれないことがある。
【0042】
そこで、本実施形態の光コネクタ1は、以下に説明するように、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を付与する付与部80を備えている。付与部80がフェルール10に上向きの力を付与することによって、予め見込んだ程度にフェルール10が上下方向にずれた状態(
図3B参照)で光コネクタ1が相手方コネクタと接続できる。これにより、光ファイバ3の接続損失を抑制でき、低損失を安定的に実現することができる。
【0043】
第1実施形態の付与部80は、カップリング30に設けられた押圧部32を有する(
図1B及び
図2参照)。押圧部32は、フェルール10を押圧することによって、フェルール10に上向きの力を付与する部位である。第1実施形態の押圧部32は、フェルール10の下面に直接接触して、フェルール10に押圧力を直接付与することになる。
【0044】
本実施形態の押圧部32は、フェルール10の本体部14の下に配置されている。これにより、押圧部32は、フェルール10の本体部14に上向きの力を付与することになる。フェルール10の本体部14に上向きの力を付与することによって、フェルール10の鍔部15に上向きの力を付与する場合と比べて傾斜端面13に近い部位に力を付与することができるため、予め見込んだ程度に光ファイバ3の端面を上方向にずらすことができるので有利である。
【0045】
本実施形態では、押圧部32は、ハウジング20の前縁に配置されている(
図1B参照)。これにより、フェルール10の傾斜端面13に近い部位に力を付与することができるため、有利である。なお、仮に押圧部32がハウジング20の前縁よりも前側に突出して配置されると、コネクタ接続時に押圧部32が相手方コネクタやアダプタ90に接触するおそれがある。このため、押圧部32をできる限り前側に設ける場合には、本実施形態のように、押圧部32は、ハウジング20の前縁に配置されることが望ましい。
【0046】
ところで、フェルール10を押圧することによってフェルール10に上向きの力を付与する場合、押圧部32は、ハウジング20のキー21の設けられた側とは反対側に配置されることになる。これは、MPOコネクタでは、フェルール10の傾斜端面13においてキー21の設けられた側が、相手方コネクタの側に突出しているためである。したがって、押圧部32は、キー21の設けられていない側に形成されることになる。このため、フェルール10を押圧することによってフェルール10に上向きの力を付与する場合には、キー21の配置の制約を受けずに、押圧部32を配置することができるという利点がある。
【0047】
押圧部32は、連結部33を介して、カップリング30に連結されている。本実施形態では、押圧部32及び連結部33はカップリング30と一体的に成型されているが、押圧部32及び連結部33がカップリング30に対して別部材で構成されても良い。
【0048】
連結部33は、カップリング30の前縁から前側に延び出た板状の部位である。連結部33の後端はカップリング30に固定されており、連結部33の前端に押圧部32が形成されている。連結部33は、片持ち梁状に形成されており、弾性変形可能に構成されている。連結部33が弾性変形することによって、押圧部32が上下方向に変位可能に構成されている。
【0049】
第1実施形態の押圧部32は、スライド部321を有する。スライド部321は、ハウジング20のガイド面25と接触する部位である。押圧部32は連結部33よりも幅広に構成されており、連結部33よりも左右の外側に突出した部位がスライド部321となる。つまり、押圧部32の左右の両縁に、一対のスライド部321が形成されている。このように、左右に一対のスライド部321が形成されることにより、スライド部321が1箇所のみの場合と比べて、押圧部32の上下方向の変位を安定させることができる。
【0050】
また、第1実施形態のハウジング20は、スライド部321と接触する部位にガイド面25を有する。ガイド面25は、ハウジング20の下側の内壁に形成されており、後側ほど上になるような傾斜面として形成されている。ガイド面25は、スライド部321を案内する部位である。ガイド面25に沿ってスライド部321が案内されることによって、押圧部32がフェルール10の下面に近接・離間するように変位することになる。本実施形態ではスライド部321が一対あるので、ガイド面25も一対ある。
【0051】
図4A〜
図4Dは、第1実施形態のコネクタ接続時の様子の説明図である。各図の右側には、第1実施形態の光コネクタ1が示されている。各図の左側には、相手方コネクタと、アダプタ90の爪部91が示されている。なお、アダプタ90の内部の相手方コネクタ及び爪部91を示すため、ここではアダプタ90の外形構造は透過させて点線で示している。また、各図の上側には上面図が示されており、下側には側面図が示されている。また、各図の側面図には、押圧部32のスライド部321及びハウジング20のガイド面25の拡大断面図が示されている。
【0052】
図4Aに示すように、コネクタ接続時に、作業者は、光コネクタ1をアダプタ90に挿入することになる。作業者は、光コネクタ1のキー21をアダプタ90のキー溝(不図示)に合わせることによって、光コネクタ1の上下の向きを合わせつつ、光コネクタ1のハウジング20の前部をアダプタ90の一対の爪部91の間に挿入させることになる。ここでは、
図4Aに示すように、アダプタ90に挿入する光コネクタ1を雌型とし、アダプタ90内の相手方コネクタを雄型としているが、雄雌は逆でも良い。
【0053】
光コネクタ1をアダプタ90に挿入させて、光コネクタ1を相手方コネクタに接近させていくと、
図4Bに示すように、アダプタ90の爪部91がハウジング20の係止部23を乗り上げて外側に開き、アダプタ90の爪部91がカップリング30の前端面31に接触する。本実施形態では、
図4Bに示すように、アダプタ90の爪部91がカップリング30の前端面31に接触した段階では、既に、相手方コネクタのガイドピン111は、光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合している。言い換えると、本実施形態では、相手方コネクタのガイドピン111が光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合した後に、アダプタ90の爪部91がカップリング30の前端面31に接触する。この結果、後述するように、相手方コネクタのガイドピン111が光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合した後に、フェルール10に上向きの力が付与されることになる。
【0054】
図4Bに示す状態から更に作業者が光コネクタ1をアダプタ90に挿入すると、
図4Cに示すように、アダプタ90の爪部91によってカップリング30がハウジング20に対して後側にスライドする。本実施形態では、カップリング30に押圧部32が設けられているため、押圧部32は、カップリング30とともに、ハウジング20に対して後側に相対移動する。このとき、
図4Cに示すように、押圧部32のスライド部321がハウジング20のガイド面25に沿って後退しつつ上側に移動することによって、押圧部32がフェルール10の下面に向かって変位し(連結部33が弾性変形し)、押圧部32がフェルール10の下面に接触し、押圧部32がフェルール10を押圧する。押圧部32がフェルール10を押圧することによって、フェルール10に上向きの力が付与される。
【0055】
図4Cに示すように、押圧部32がフェルール10の下面に接触した段階では、既に、相手方コネクタのガイドピン111は、光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合している。言い換えると、本実施形態では、相手方コネクタのガイドピン111が光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合した後に、押圧部32がフェルール10の下面に接触する。このため、相手方コネクタのガイドピン111が光コネクタ1のガイドピン穴11に嵌合した後に、フェルール10に上向きの力が付与される。仮にフェルール10に上向きの力が付与された後にガイドピン111とガイドピン穴11との嵌合が行われてしまうと、上下方向にずれたフェルール10の端面に向かってガイドピン111が突き当たるため、ガイドピン111によってガイドピン穴11の周辺の傾斜端面13を損傷させるおそれがある。これに対し、本実施形態では、このような傾斜端面13の損傷を抑制できる。また、本実施形態では、ガイドピン111とガイドピン穴11との嵌合後にフェルール10に上向きの力が付与されるため、
図3Bに示すように、ガイドピン111の下縁がガイドピン穴11の下縁に接触するまでフェルール10を上側に変位させることができるので、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらすことができる。
【0056】
また、
図4Cに示すように、押圧部32がフェルール10の下面に接触した段階では、未だ、フェルール10の傾斜端面13は、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触していない。このため、本実施形態では、フェルール10の傾斜端面13は、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触する前に、フェルール10に上向きの力が付与される。なお、仮にフェルール10の傾斜端面13が相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触した後にフェルール10に上向きの力が付与された場合には、フェルール10の傾斜端面13に摩擦力が働いた状態で、フェルール10に上向きの力を付与することになる。これに対し、本実施形態では、フェルール10の傾斜端面13に摩擦力が働く前に、フェルール10に上向きの力を付与することができるため、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらし易くなる。
【0057】
図4Cに示す状態から更に作業者が光コネクタ1をアダプタ90に挿入すると、
図4Dに示すように、フェルール10の傾斜端面13が、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触する。このとき、フェルール10は、相手方コネクタのフェルールから力を受けて、スプリング60(
図2参照)の弾性力に抗してハウジング20に対して後退する。フェルール同士は、スプリング60によって、所定の力で突き合わせられることになる。本実施形態では、フェルール10に上向きの力が付与されたため、予め見込んだ程度にフェルール10が上方向にずれた状態(
図3B参照)で、光コネクタ1が相手方コネクタと接続できる。
【0058】
光コネクタ1が相手方コネクタに接続されるとき、
図4Dに示すように、アダプタ90の爪部91は、ハウジング20の係止部23を乗り越えて、係止部23に引っ掛かり、外側に開いた状態(
図4B参照)から元に戻り、内側に閉じた状態になる。このとき、アダプタ90の爪部91によって後側にスライドしていたカップリング30は、バネ20Aによって元の位置に戻り、ハウジング20に対して前側にスライドする。カップリング30が前側にスライドすることによって、カップリング30の内壁面によって、アダプタ90の爪部91が外側に開くことが防止され、ラッチ状態が保持される。
【0059】
本実施形態では、カップリング30に押圧部32が設けられているため、
図4Dに示すように、カップリング30がハウジング20に対して前側に相対移動すると、押圧部32も、カップリング30とともに、ハウジング20に対して前側に相対移動する。このとき、
図4Dに示すように、押圧部32のスライド部321がハウジング20のガイド面25に案内されながら、押圧部32がフェルール10から離れ(連結部33の弾性変形が戻り)、押圧部32によってフェルール10に付与されていた力が解除される。このように、本実施形態では、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を一旦付与した後、フェルール10に付与した力を解除している。なお、仮にフェルール10に付与した上向きの力を解除せずに、押圧部32がフェルール10に上向きの力を付与し続ける場合には、ガイドピン111がガイドピン穴11の内壁面を摩耗するため、光コネクタ1の耐久性が低下しやすくなる。これに対し、本実施形態では、フェルール10に付与した力を解除することによって、ガイドピン穴11の摩耗を抑制することができるため、光コネクタ1の耐久性が向上する。
【0060】
本実施形態では、フェルール10の傾斜端面13が、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触した後に、押圧部32によってフェルール10に付与されていた上向きの力が解除される。これにより、フェルール10に付与されていた上向きの力が解除された後も、予め見込んだ程度にフェルール10が上方向にずれた状態を維持しやすくなる。但し、フェルール10に付与する力を解除した後もフェルール10の上方向にずれた状態が維持されるのであれば、フェルール10の傾斜端面13が、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触する前に、押圧部32によってフェルール10に付与されていた上向きの力を解除しても良い。
【0061】
===第2実施形態===
図5Aは、第2実施形態の光コネクタ1の斜視図である。
図5Bは、第2実施形態の光コネクタ1のカップリング30を外した分解斜視図である。第2実施形態の光コネクタ1(MPOコネクタ)は、フェルール10と、ハウジング20と、カップリング30とを備えている。
【0062】
第2実施形態においても、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を付与する付与部80を備えている。第2実施形態の付与部80は、ハウジング20に設けられた押圧部27Aを有する。第2実施形態の押圧部27Aも、フェルール10に上向きの力を付与する部位である。但し、第2実施形態では、押圧部27Aは、フェルール10に接触してフェルール10に力を直接付与する代わりに、ピンクランプ50(フェルール10の後側に配置されている部材)に上向きの力を付与することによって、間接的にフェルール10に上向きの力を付与する。
【0063】
第2実施形態のハウジング20には、押圧部材27が取り付けられている。押圧部材27は、押圧部27Aと固定部27Bとを有する。固定部27Bは、押圧部材27をハウジング20に固定するための部位である。本実施形態では、ハウジング20と押圧部27Aとを別部材で構成しているが、ハウジング20と押圧部27Aとを一体的に形成することも可能である。
【0064】
ハウジング20には、押圧用穴26が形成されている。押圧用穴26は、ハウジング20の下壁に形成された貫通穴である。押圧用穴26には、押圧部27Aが配置されている。押圧部27Aは、押圧用穴26の内部で上下方向に変位(変形)可能である。
【0065】
カップリング30には、逃げ部34が形成されている。逃げ部34は、押圧部27Aを待避させる空間を形成する部位である。ここでは、逃げ部34は、貫通穴であるが、凹部のように非貫通穴でも良い。逃げ部34よりも前側のカップリング30の前縁35は、押圧部27Aを押圧する部位となる。
【0066】
図6A及び
図6Bは、第2実施形態のコネクタ接続時の様子の説明図である。
【0067】
図6Aに示すように、コネクタ接続前の状態では、圧縮変形したスプリング60(不図示)の反発力によってピンクランプ50を介してフェルール10が前側に押圧されているため、ハウジング20の内壁面の突出部22がフェルール10の鍔部15と接触している。この段階では、カップリング30の逃げ部34によって形成された空間に押圧部27Aが位置しており、ピンクランプ50のフランジ部51は押圧部27Aよりも前側に配置されており、押圧部27Aは、ピンクランプ50に接触していない。
【0068】
コネクタ接続時には、
図6Bに示すように、フェルール10が相手方コネクタのフェルールから力を受けることによって、フェルール10及びピンクランプ50は、スプリング60の弾性力に抗してハウジング20に対して後退する。この結果、ピンクランプ50のフランジ部51が、押圧部27Aの位置まで後退する。また、コネクタ接続時には、
図4B及び
図4Cにおいて説明したのと同様に、アダプタ90の爪部91によってカップリング30がハウジング20に対して後側にスライドする。カップリング30がハウジング20に対して後側にスライドすると、押圧部27Aがカップリング30の前縁35から力を受けて上側に変位する。これにより、押圧部27Aがピンクランプ50のフランジ部51を押圧する。このように、第2実施形態では、カップリング30から力を受けた押圧部27Aがピンクランプ50を押圧することによって、フェルール10に上向きの力が付与される。
【0069】
第2実施形態では、フェルール10の傾斜端面13が相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触した後に、フェルール10に上向きの力が付与される。フェルール10の傾斜端面13に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にずれていなくても、フェルール10に上向きの力を付与することによって、傾斜端面13に働く摩擦力に抗して、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらすことができる。
【0070】
ところで、第2実施形態では、押圧部27Aは、カップリング30から力を受けるため、少なくとも一部をハウジング20よりも外側に配置しなければならないが、その一方、押圧部27Aは、ハウジング20に収容されているピンクランプ50を押圧する必要がある。本実施形態では、ピンクランプ50のフランジ部51の外縁を押圧するように押圧部27Aを構成することによって、押圧部27Aの小型化を図っている。
【0071】
===第3実施形態===
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、フェルール10を下側から押圧することによって、フェルール10に上向きの力が付与されていた。但し、フェルール10に上向きの力を付与する方法は、フェルール10を下側から押圧する方法に限られるものではない。
【0072】
図7A及び
図7Bは、第3実施形態の光コネクタ1の概略説明図である。第3実施形態の光コネクタ1は、フェルール10と、ハウジング20と、カップリング30とを備えている。
【0073】
第3実施形態においても、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を付与する付与部80を備えている。第3実施形態の付与部80は、引っ張り部材36を有する。引っ張り部材36は、一端がカップリング30に固定され、他端がフェルール10の上面に固定されている部材である。本実施形態では、引っ張り部材36は、糸状・紐状の部材であるが、シート状の部材でも良い。
【0074】
コネクタ接続時には、
図4B及び
図4Cにおいて説明したのと同様に、アダプタ90の爪部91によってカップリング30がハウジング20に対して後側にスライドする。
図7Bに示すように、カップリング30がハウジング20に対して後側にスライドすると、引っ張り部材36の一端(カップリング30に固定された端部)が後側に移動し、引っ張り部材36からフェルール10の上面に張力がかかり、この結果、フェルール10の傾斜端面13においてフェルール10に上向きの力が付与される。
【0075】
本実施形態では、引っ張り部材36は弾性部材で構成されている。本実施形態では、引っ張り部材36は、紐状のゴム部材である。引っ張り部材36を弾性部材で構成することにより、
図7Aに示すようにカップリング30が後退して、引っ張り部材36に張力がかかったときに、引っ張り部材36が伸び変形することによって、相手方コネクタのフェルールとの接触前にフェルール10が後退してしまうことを抑制できる。
【0076】
ところで、上記の第1実施形態〜第3実施形態では、付与部80は、ハウジング20に対するカップリング30の移動に連動して、フェルール10に上向きの力を付与している。コネクタ接続時のカップリング30の移動量(約1.5mm)は、フェルール10の移動量(約0.7mm)と比べて大きいため、カップリング30の移動に連動させてフェルール10に力を付与する構成であれば、フェルール10の移動に連動させてフェルール10に力を付与する構成よりも、フェルール10に大きな力や変位を付与しやすい。但し、後述する実施形態のように、付与部80が、フェルール10の移動に連動させてフェルール10に力を付与するように構成しても良い。
【0077】
===第4実施形態===
図8は、第4実施形態の光コネクタ1の斜視図である。
図9Aは、第4実施形態のフェルール10の斜視図である。第4実施形態の光コネクタ1は、フェルール10と、ハウジング20とを備えている。
【0078】
第4実施形態においても、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を付与する付与部80を備えている。第4実施形態の付与部80は、フェルール10に設けられた突起部161と、ハウジング20に設けられた接触部28とを有する。
【0079】
突起部161は、フェルール10の下側に設けられ、下に向かって突出した部位である。本実施形態では、突起部161は、幅方向に沿った突条として形成されているが、ピン状のような形状でも良い。突起部161は、左右方向から見たときに、下側ほど狭まるように、先鋭に形成されている。これにより、後述するように、突起部161が接触部28を乗り上げた後に、接触部28を乗り越えやすい形状になっている。本実施形態では、突起部161は、左右方向から見た断面形状が三角形状であるが、丸みを帯びた半円形状であっても良い。また、突起部161が接触部28を乗り越えなくても良いのであれば、突起部161は、下側ほど狭まるような形状で無くても良い。
【0080】
本実施形態では、
図9Aに示すように、突起部161は、フェルール10の下面14Aから下側に突出するように構成されている。但し、フェルール10の下面14Aを基準面としてフェルール10の位置合わせに用いる場合には、突起部161が邪魔になることがある。
【0081】
図9Bは、第4実施形態の第1変形例のフェルール10の斜視図である。第1変形例のフェルール10の下面14Aには、凹部14Bが形成されている。そして、第1変形例では、突起部161は、凹部14Bの底面から下側に突出するように構成されている。第1変形例では、突起部161は、フェルール10の下面14Aから突出しないように、凹部14Bに形成されている。これにより、フェルール10の下面14Aを基準面としてフェルール10の位置合わせに用いる場合に、突起部161が邪魔にならずに済む。
【0082】
接触部28は、突起部161と接触する部位である。接触部28は、ハウジング20の下部に設けられている。本実施形態では、接触部28は、幅方向に沿った柱状に形成されているが、ピン状のような形状でも良い。
【0083】
図10A〜
図10Cは、第4実施形態のコネクタ接続時の様子の説明図である。
【0084】
既に説明したように、フェルール10は、後退可能に前側に押圧されつつハウジング20に収容されている。コネクタ接続前の段階では、
図10Aに示すように、フェルール10は、鍔部15がハウジング20の突出部22と接触する位置にある。鍔部15がハウジング20の突出部22と接触する位置では、フェルール10の突起部161は、ハウジング20の接触部28よりも前側に位置している。
【0085】
また、既に説明したように、作業者が光コネクタ1をアダプタ90に挿入すると、
図10Bに示すように、フェルール10の傾斜端面13が、相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触する。このとき、フェルール10は、相手方コネクタのフェルールから力を受けて、スプリング60(
図2参照)の弾性力に抗してハウジング20に対して後退する。
【0086】
図10Bに示すように、フェルール10が後退すると、フェルール10の突起部161がハウジング20の接触部28に接触する。そして、更にフェルール10が後退すると、フェルール10の突起部161が接触部28を乗り上げて、この結果、フェルール10に上向きの力が付与される。
【0087】
第4実施形態では、フェルール10の傾斜端面13が相手方コネクタのフェルールの傾斜端面に接触した後に、フェルール10に上向きの力が付与される。フェルール10の傾斜端面13に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にずれていなくても、フェルール10に上向きの力を付与することによって、傾斜端面13に働く摩擦力に抗して、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらすことができる。
【0088】
光コネクタ1が相手方コネクタに接続されたとき、
図10Cに示すように、フェルール10の突起部161は、ハウジング20の接触部28よりも後側に位置している。つまり、コネクタ接続時にフェルール10がハウジング20に対して後退する際に、フェルール10の突起部161がハウジング20の接触部28を乗り越える。このように、フェルール10の突起部161がハウジング20の接触部28を乗り越えれば、フェルール10に付与されていた上向きの力が解除される。このように、第4実施形態では、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を一旦付与した後、フェルール10に付与した力を解除している。なお、仮にフェルール10に付与した上向きの力を解除せずに、付与部80(突起部161及び接触部28)がフェルール10に上向きの力を付与し続ける場合には、ガイドピン111がガイドピン穴11の内壁面を摩耗するため、光コネクタ1の耐久性が低下しやすくなる。これに対し、第4実施形態では、フェルール10に付与した力を解除することによって、ガイドピン穴11の摩耗を抑制することができるため、光コネクタ1の耐久性が向上する。
【0089】
本実施形態の突起部161は、フェルール10の本体部14の下に配置されている。これにより、接触部28は、フェルール10の本体部14の突起部161に接触することによって、フェルール10の本体部14に上向きの力を付与することができ、傾斜端面13に近い部位に力を付与することができるため、予め見込んだ程度に光ファイバ3の端面を上方向にずらすことができるので有利である。但し、突起部161の配置は、これに限られるものではない。
【0090】
図11Aは、第4実施形態の第2変形例の説明図である。第2変形例では、突起部162は、フェルール10の鍔部15に配置されている。第2変形例によれば、接触部28は、フェルール10の鍔部15の突起部162に接触することによって、フェルール10に上向きの力を付与することができる。第2変形例においても、フェルール10に上向きの力を付与しない場合と比べると、光ファイバ3の端面を上方向にずらすことができるので有利である。
【0091】
図11Bは、第4実施形態の第3変形例の説明図である。第3変形例では、突起部511は、フェルール10の後側に配置された部材(ピンクランプ50)に配置されている。第3変形例によれば、接触部28は、ピンクランプ50の突起部511に接触することによって、ピンクランプ50を介してフェルール10に上向きの力を付与することができる。第3変形例においても、フェルール10に上向きの力を付与しない場合と比べると、光ファイバ3の端面を上方向にずらすことができるので有利である。
【0092】
上記の第4実施形態(第1〜第3変形例を含む)では、付与部80は、フェルール10の移動に連動させて、フェルール10に上向きの力を付与している。コネクタ接続時のフェルール10の移動量は0.7mm程度であり、コネクタ接続時のカップリング30の移動量(約1.5mm)と比べると小さいが、フェルール10の移動時に接触部28を乗り上げられるように(更には乗り越えられるように)突起部及び接触部28を構成すれば、フェルール10に上向きの力を付与することが可能である。
【0093】
===第5実施形態===
図12A及び
図12Bは、第5実施形態の説明図である。第5実施形態の光コネクタ1(MPOコネクタ)は、フェルール10と、ハウジング20と、を備えている。また、第5実施形態の光コネクタ1は、ハウジング20の外側にカップリング30を備えるとともに、ハウジング20の内部にフローティング機構40(ピンクランプ50、スプリング60、スプリングプッシュ70)を収容している。
【0094】
スプリング60の両端には、台座部61が形成されている。台座部61は、スプリング60の両端に設けられた部位であり、スプリング60の台座になる部位である。台座部61は、スプリング60の自然状態(伸縮させていない状態)では、スプリング60の軸方向(伸縮方向)に垂直な面を有する。
【0095】
第5実施形態では、スプリングプッシュ70は、傾斜部72を有する。傾斜部72は、スプリング60の後端の台座部61を傾斜させる部位であり、一対の腕部71(
図2参照)の間に配置されている。傾斜部72の傾斜面(台座部61と接触する面)の法線ベクトルは、前方向成分だけでなく、上方向成分を有する。このため、スプリング60の後端の台座部61を傾斜部72にあてると、スプリング60の後端の台座部61は、前後方向に対して垂直ではなく、上下方向及び左右方向に平行な面に対して傾斜することになる。したがって、スプリング60の後端の台座部61を傾斜部72にあてたとき、
図12Bに示すように、スプリング60の前端の台座部61は、自然状態ではコネクタ収容時よりも上側に位置することになる。
【0096】
図12Bに示すスプリング60をハウジング20に収容するためには、
図12Bに示すスプリング60の前端の台座部61を後方向に変位させるとともに、下側にも変位させることになる。ハウジング20に収容されたスプリング60は、前後方向に圧縮変形しているとともに、スプリング60の後端の台座部61は、スプリング60の軸方向(ここでは前後方向)に対して垂直ではなく、スプリング60の軸方向に垂直な面(上下方向及び左右方向に平行な面)に対して傾斜している。このようにハウジング20に収容されたスプリング60(
図12Aに示すスプリング60)は、ピンクランプ50を介して、フェルール10を前側へ押圧するとともに上向きの力を付与することになる。
【0097】
第5実施形態においても、付与部80(スプリング60)がフェルール10に上向きの力を付与することができるため、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらし易くなる。
【0098】
===第6実施形態===
図13A及び
図13Bは、第6実施形態の説明図である。第6実施形態のハウジング20は、前述の第1実施形態〜第5実施形態のいずれかのハウジング20に用いられる。
【0099】
図13Bの一点鎖線は、ハウジング20の後部の収容部(フローティング機構40を収容する収容部)の中心位置を示している。図中のX11は、一点鎖線と、ハウジング20の下側の内壁面の突出部22(突出部22の上面)との上下方向の間隔である。また、X12は、一点鎖線と、ハウジング20の上側の内壁面の突出部22(突出部22の下面)との上下方向の間隔である。通常のハウジング20では、X11とX12とを異ならせずに、同じ長さになるように設計されている。つまり、通常のハウジング20では、上下の突出部22の中心位置は、一点鎖線の位置になる。これに対し、第6実施形態では、X12がX11に対して長くなるように、設計されている。つまり、第6実施形態では、上下の突出部22の中心位置が一点鎖線の位置よりも上側になるように、突出部22が設計されている。これにより、
図13Aに示すようにハウジング20にフェルール10を収容したときに、フェルール10が通常よりも上方向にずれ易くなる。このため、前述の付与部80がフェルール10に上向きの力を付与したときに、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらし易くなる。
【0100】
また、
図13Aに示すように、ハウジング20の突出部22の後方には、フェルール10の鍔部15の前縁を収容する鍔収容部29が形成されている。図中のX21は、一点鎖線と、鍔収容部29の下側の内壁面との上下方向の間隔である。また、X22は、一点鎖線と、鍔収容部29の上側の内壁面との上下方向の間隔である。通常のハウジング20では、X21とX22とを異ならせずに、同じ長さになるように設計されている。つまり、通常のハウジング20では、鍔収容部29の上下の内壁面の中心位置は、一点鎖線の位置になる。これに対し、第6実施形態では、X22がX21に対して長くなるように、設計されている。つまり、第6実施形態では、鍔収容部29の上下の内壁面の中心位置が一点鎖線の位置よりも上側になるように、鍔収容部29が設計されている。これにより、
図13Aに示すようにハウジング20にフェルール10を収容したときに、フェルール10が通常よりも上方向にずれ易くなる。このため、前述の付与部80がフェルール10に上向きの力を付与したときに、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらし易くなる。
【0101】
===第7実施形態===
前述の実施形態では、相手方コネクタとの接続時に、光コネクタ1の付与部80がフェルール10に上向きの力を付与していた。但し、相手方コネクタとの接続時に、作業者が、指先でフェルール10に上向きの力を付与しても良い。このような光コネクタの接続方法であっても、フェルール10に上向きの力を付与することができるため、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらすことができる。但し、光コネクタ1が付与部80を備え、相手方コネクタとの接続時に付与部がフェルール10に上向きの力を付与する方が、作業者が力を付与する場合と比べて、安定した力で所定の場所に確実に力を付与できるため、低損失を安定的に実現することができる。
【0102】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。