(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543325
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】電磁振動型ダイヤフラムポンプ及び電磁振動型ダイヤフラムポンプシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 43/04 20060101AFI20190628BHJP
F04B 45/047 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
F04B43/04 A
F04B45/047 A
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-241552(P2017-241552)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-108828(P2019-108828A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006286
【氏名又は名称】株式会社テクノ高槻
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100138232
【弁理士】
【氏名又は名称】野間 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡村 孝男
(72)【発明者】
【氏名】長岡 浩之
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−215317(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201535239(CN,U)
【文献】
特開2000−297752(JP,A)
【文献】
実開平06−047745(JP,U)
【文献】
実公昭64−004301(JP,Y2)
【文献】
特公昭41−007667(JP,B1)
【文献】
米国特許第5678309(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記支点部と前記動点部とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に一直線上に配置されている、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記支点部と前記動点部とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に一直線上に配置され、
前記板バネは、前記第一方向から見た形状がU字状又はコ字状に形成されている、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記板バネは、前記支点部を支点とし、前記動点部に対し前記第一方向の力を作用させた場合に、前記一対の延在部における前記第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成されている、請求項1又は2記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記板バネは、前記支点部を支点とし、前記動点部に対し前記第一方向の力を作用させた場合に、前記一対の延在部における前記第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成されている、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記板バネは、前記支点部を支点とし、前記動点部に対し前記第一方向の力を作用させた場合に、前記一対の延在部における前記第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成され、
前記板バネは、前記第一方向から見た形状がU字状又はコ字状に形成されている、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
前記板バネは、前記第一方向に複数配列されている、請求項1〜5の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
互いに隣接する前記板バネの間に配置され、互いの折返部のそれぞれにおける少なくとも一部に固着されている保持部を更に備えており、
複数の前記板バネは、前記保持部によって一体化している、請求項6記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記支点部と前記動点部とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に一直線上に配置されている、
前記板バネは、前記第一方向に複数配列されており、
互いに隣接する前記板バネの間に配置され、互いの折返部のそれぞれにおける少なくとも一部に固着されている保持部を更に備えており、
複数の前記板バネは、前記保持部によって一体化している、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項9】
磁石が固定された振動子と、前記振動子の磁石と対向して設けられると共に前記振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、前記振動子の前記第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子、前記電磁石及び前記ダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、
前記板バネは、
前記板バネの厚み方向が前記第一方向と一致するように配置されており、
前記第一方向から見たときに、前記第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、前記一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、
前記一対の延在部のうち一方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記筐体に固定される支点部と、
前記一対の延在部のうち他方の延在部における前記一方の端部とは反対側の端部に設けられ、前記振動子に固定される動点部と、を有し、
前記板バネは、前記支点部を支点とし、前記動点部に対し前記第一方向の力を作用させた場合に、前記一対の延在部における前記第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成されている、
前記板バネは、前記第一方向に複数配列されており、
互いに隣接する前記板バネの間に配置され、互いの折返部のそれぞれにおける少なくとも一部に固着されている保持部を更に備えており、
複数の前記板バネは、前記保持部によって一体化している、電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項10】
前記保持部は、弾性部材である、請求項7〜9の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項11】
複数の前記板バネは、前記支点部及び前記動点部において、互いの間隔を保持する間隔保持部材を介して配置されている、請求項7〜10の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項12】
前記振動子と前記電磁石とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向において互いに対向している、請求項1〜11の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項13】
前記板バネの前記第一方向から見た形状は、前記第二方向に対して線対称である、請求項1〜12の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項14】
前記支点部と前記電磁石とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向において前記振動子を挟んで配置されている、請求項1〜13の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項15】
前記筐体は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向の一方に開口部を有する本体部と、前記開口部を覆う蓋部と、を有しており、
前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向は鉛直方向であり、前記開口部は前記筐体の鉛直方向上方に開口を有し、
前記板バネと前記振動子と前記蓋部とは、振動ユニットとして一体的に構成されており、
前記蓋部には、前記板バネの支点部が固定されている、請求項1〜14の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項16】
前記支点部と前記電磁石とは、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向において前記振動子に対して同じ側に配置されている、請求項1〜13の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項17】
前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向は鉛直方向であり、
前記電磁石及び前記動点部は、前記振動子の下方に配置されている、請求項16記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項18】
前記動点部及び前記支点部の一方に設けられる電流の入力部と、
前記動点部及び前記支点部の他方に設けられる電流の出力部と、
前記板バネにおける前記入力部と前記出力部との間に流れる電流を検知する電流検知部と、
前記電流検知部における前記電流の検知の有無に基づいて、前記板バネの損傷の有無を判定する判定部と、を更に備えている、請求項1〜17の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項19】
前記動点部及び前記支点部の一方に設けられる電流の入力部と、
前記動点部及び前記支点部の他方に設けられる電流の出力部と、
前記板バネにおける前記入力部と前記出力部との間に流れる電流を検知する電流検知部と、を更に備えている、請求項1〜17の何れか一項記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプと、
前記電流検知部における前記電流の検知の有無に基づいて、前記板バネの損傷の有無を判定する判定部と、を備えている、電磁振動型ダイヤフラムポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁振動型ダイヤフラムポンプ及び電磁振動型ダイヤフラムポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁石を有する振動子を電磁石の交流駆動により振動させて、振動子の両端に固定されたダイヤフラムを振動させることにより、気体又は液体等の流体を吸入して吐出する、例えば、電磁振動型ダイヤフラムポンプが知られている。例えば、特許文献1には、永久磁石等からなる磁石が固定された振動子と、振動子の両端に設けられたゴム等からなるダイヤフラムと、磁石と対向するように配置される電磁石と、を備え、これらが筐体の内部に収容されている電磁振動型ダイヤフラムポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−225200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、振動子と電磁石との空隙が狭くなると、振動子と電磁石とが接触し、破壊又はポンプ性能が低下する場合がある。このため、電磁振動型ダイヤフラムポンプに用いられるダイヤフラムは、振動子と、振動子に対向する電磁石との空隙が略一定になるように、前述ダイヤフラムの厚さ又は材料が選択されて配置される。しかしながら、このような観点で選択されたダイヤフラムは、一般的にダイヤフラムを介した往復運動に多くのエネルギーが必要となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、エネルギー効率に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプ及び電磁振動型ダイヤフラムポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁振動型ダイヤフラムポンプは、磁石が固定された振動子と、振動子の磁石と対向して設けられると共に振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、振動子の第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、振動子、電磁石及びダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、板バネは、板バネの厚み方向が第一方向と一致するように配置されており、第一方向から見たときに、第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、一対の延在部のうち一方の延在部における一方の端部とは反対側の端部近傍に設けられ、筐体に固定される支点部と、一対の延在部のうち他方の延在部における一方の端部とは反対側の端部近傍に設けられ、振動子に固定される動点部と、を有し、支点部と動点部とは、第一方向及び第二方向に直交する方向に一直線上に配置されている。
【0007】
上記電磁振動型ダイヤフラムポンプは、板バネによって振動子が支持されるので、往復運動以外の方向への動きを規制する機能をダイヤフラムにのみに持たせた場合と比べて、ダイヤフラムの強度を小さくすることができる、したがって、振動子に往復運動を作用させる場合のエネルギーを少なくすることができる。更に、上記電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、筐体に固定される支点部と振動子に固定される動点部とが、第一方向及び第二方向に直交する方向に一直線上に配置されているので、振動子が往復運動をする際の支点部に生じる回転モーメントが小さくなる。これにより、振動子に往復運動を作用させる場合のエネルギーをより少なくすることができる。これらの結果、エネルギー効率に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。なお、ここでいう「平行」、「一致」、及び「一直線上」は、「略平行」、「略一致」、及び「略一直線上」を含む概念である。また「端部」は「端部近傍」を含む概念である。
【0008】
板バネは、第一方向に作用する力に対して、支点部を支点とし、動点部に対し第一方向の力を作用させた場合に、一対の延在部における第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成されていてもよい。この電磁振動型ダイヤフラムポンプは、振動子の往復運動において、往復運動方向である第一方向に直交する方向への動き(運動)が抑制される。これにより、エネルギーを第一方向への往復運動に効果的に変換することができる。この結果、より一層エネルギー効率に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0009】
本発明の電磁振動型ダイヤフラムポンプは、磁石が固定された振動子と、振動子の磁石と対向して設けられると共に振動子を第一方向に往復運動させる電磁石と、振動子の第一方向における少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、振動子、電磁石及びダイヤフラムを収容する筐体と、を備える、電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、振動子を支持する板状部材からなる板バネを備え、板バネは、板バネの厚み方向が第一方向と一致するように配置されており、第一方向から見たときに、第一方向に直交する第二方向に延在すると共に互いに平行に配置された一対の延在部と、一対の延在部における一方の端部同士を接続する折返部と、一対の延在部のうち一方の延在部における一方の端部とは反対側の端部に設けられ、筐体に固定される支点部と、一対の延在部のうち他方の延在部における一方の端部とは反対側の端部に設けられ、振動子に固定される動点部と、を有し、板バネは、第一方向に作用する力に対して、支点部を支点とし、動点部に対し第一方向の力を作用させた場合に、一対の延在部における第一方向へのそれぞれの変形量が互いに等しくなるように形成されている。
【0010】
上記電磁振動型ダイヤフラムポンプは、板バネによって振動子が支持されるので、往復運動以外の方向への動きを規制する機能をダイヤフラムにのみに持たせた場合と比べて、ダイヤフラムの強度を小さくすることができる、したがって、振動子に往復運動を作用させる場合のエネルギーを減少させることができる。更に、上記電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、振動子の往復運動において、往復運動方向である第一方向に直交する方向への動き(運動)を抑制することができる。これにより、エネルギーを第一方向への往復運動に効果的に変換することができる。これらの結果、エネルギー効率に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。なお、ここでいう「平行」、「一致」、及び「等しい」は、「略平行」、「略一致」、及び「略等しい」を含む概念である。
【0011】
振動子と電磁石とは、第一方向及び第二方向に直交する方向において互いに対向していてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプは、第一方向及び第二方向に直交する方向と磁界方向とを一致させることができる。
【0012】
板バネの第一方向から見た形状は、第二方向に対して線対称であってもよい。この電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、支点部を支点とし、動点部に対し第一方向の力を作用させた場合に、一対の延在部における第一方向への変形量が互いに等しくなるような板バネを容易に形成することができる。
【0013】
板バネは、第一方向に複数配列されていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムにおける往復運動以外の方向への動きを規制する機能の負担を、より一層軽減することができる。
【0014】
電磁振動型ダイヤフラムポンプは、互いに隣接する板バネの間に配置され、互いの折返部のそれぞれにおける少なくとも一部に固着されている保持部を更に備えており、複数の板バネは、保持部によって一体化している。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプは、板バネにおいて異常振動が発生することを低減することができる。
【0015】
保持部は、弾性部材であってもよい。この場合、板バネにおいて異常振動が発生することを、より効果的に低減することができる。
【0016】
複数の板バネは、支点部及び動点部において、互いの間隔を保持する間隔保持部材を介して配置されていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、互いに隣接する板バネ同士が接触することを回避できる。
【0017】
支点部と電磁石とは、第一方向及び第二方向に直交する方向において振動子を挟んで配置されていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、支点部において発生する振動と電磁石において発生する振動との共振等の不具合を抑制することができる。
【0018】
筐体は、第一方向及び第二方向に直交する方向の一方に開口部を有する本体部と、開口部を覆う蓋部と、を有しており、第一方向及び第二方向に直交する方向は鉛直方向であり、開口部は筐体の鉛直方向上方に開口を有し、板バネと振動子と蓋部とは、振動ユニットとして一体的に構成されており、蓋部には、板バネの支点部が固定されていてもよい。電磁石と磁石を配置した振動子を組み立ては、磁力を受けながらの作業となるため困難であることが多い。上記構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、電磁石が組み付けられた筐体の開口部に、振動ユニットの板バネ及び振動子を挿入し、蓋部を筐体に固定するだけの容易な作業で、ダイヤフラムポンプを組み立てることができる。これにより、組み立て時の作業性に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0019】
支点部と電磁石とは、第一方向及び第二方向に直交する方向において振動子に対して同じ側に配置されていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、支点部において発生する振動の発生位置と電磁石において発生する振動の発生位置とを互いに近づけることができる。このため、振動点が重心に近くなり、振動の影響の発生する部位が広範囲に及ぶことを抑制できる。
【0020】
第一方向及び第二方向に直交する方向は鉛直方向であり、電磁石及び支点部は、振動子の下方に配置されていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、振動の発生源を筐体下方とすることができるので、振動の発生源が筐体上方にある場合と比べて、稼働時の安定性に優れる。特に、出力が大きなダイヤフラムポンプにおいて効果が大きい。
【0021】
電磁振動型ダイヤフラムポンプは、動点部及び支点部の一方に設けられる電流の入力部と、動点部及び支点部の他方に設けられる電流の出力部と、板バネにおける入力部と出力部との間に流れる電流を検知する電流検知部と、電流検知部における電流の検知の有無に基づいて、板バネの損傷の有無を判定する判定部と、を更に備えていてもよい。この構成の電磁振動型ダイヤフラムポンプでは、簡易な構成によって板バネの損傷の有無を判定することができるので、メンテナンス性に優れる。ここでいう「動点部」及び「支点部」には、「動点部の近傍」及び「支点部の近傍」が含まれる概念である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エネルギー効率に優れた電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第一実施形態の電磁振動型流体ポンプを示す断面図である。
【
図3】
図1の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図1の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す正面図である。
【
図5】
図1の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す側面図である。
【
図6】
図1の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図1の変形時の板バネを上方から見た平面図である。
【
図8】第二実施形態の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す平面図である。
【
図9】第二実施形態の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す側面図である。
【
図10】第二実施形態の振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す斜視図である。
【
図11】変形例に係る振動子支持体、振動子、ダイヤフラム及び電磁石を拡大して示す側面図である。
【
図12】変形例に係るダイヤフラムポンプの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】変形例に係る振動子支持体、振動子及び電磁石を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
以下、図面を参照して第一実施形態に係る電磁振動型ダイヤフラムポンプ1(以後、単に「ダイヤフラムポンプ1」と示す。)について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下、
図1に示されるように、振動子4の延在方向(往復運動方向)をX軸方向と定義して、板バネ51の延在方向をY軸方向と定義して、また、
図2に示されるように、磁石4B,4Bと電磁石3とが互いに対向する方向(鉛直方向)をZ軸方向と定義して、第一実施形態の説明を行う。なお、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する直交座標系を構成する。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、ダイヤフラムポンプ1は、電磁石3と、振動子4と、ダイヤフラム5と、フレーム(筐体)10と、ポンプケーシング30と、振動子支持部50と、を備えている。
【0026】
電磁石3は、振動子4の平板部材4Cにおける主面に対向して配置されている。電磁石3は、例えば、交流電流により駆動する。電磁石3は、鉄心(コア)の周りに電線が巻回されることにより励磁コイルが形成されている。励磁コイルは、交流電流が流れることにより、コアに現れる極性が交流電流の位相により変化する。一対の電磁石3,3は、互いに逆の極性となるように形成されている。電磁石3は、フレーム10に固定されている。
【0027】
振動子4は、電磁石3に対してX軸方向(第一方向)及びY軸方向(第二方向)に直交するZ軸方向(鉛直方向)において対向するように配置されている。振動子4は、X軸方向に延在する軸部材4A,4Aと、磁石4B,4Bと、平板部材4Cと、挟持部材4D,4Dと、を有している。軸部材4A,4Aは、例えば非磁性体材料からなる棒状体である。磁石4B,4Bは、例えば永久磁石であり、平板部材4Cの一方の主面にS極及びN極が現れるように二個配置されている。平板部材4Cは、例えば非磁性体材料からなる板状体である。挟持部材4D,4Dは、後段にて詳述するダイヤフラム5を挟持する。挟持部材4D,4Dは、穴部5Aの外縁よりもサイズが大きな外縁を有する円形の板状体である。
【0028】
ダイヤフラム5は、X軸方向における振動子4の両端に設けられている。具体的には、ダイヤフラム5は、挟持部材4D,4Dに挟持された状態で、ポンプケーシング30に固定されている。ダイヤフラム5は、例えば、ポリエチレンプロピレンゴム(EPDM)又はフッ素ゴム等の弾力性のある材料により形成されている。ダイヤフラム5は、略中心部に形成された穴部5Aを有する円環形状の板状体である。
【0029】
フレーム10は、例えば、アルミニウム等の金属、又はポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の樹脂からなり、電磁石3、振動子4及びダイヤフラム5を収容可能に形成されている。フレーム10は、上方に形成された開口部11Aと、振動子4の往復運動方向、すなわち、X軸方向における両端に形成されている開口部11B,11Bとを有する本体部11と、開口部10Aを覆う蓋部13と、を有している。開口部11B,11Bは、後段にて詳述するポンプケーシング30により覆われる。蓋部13には、鉄等の金属材料からなる平板14が接触されている。平板14は、主に蓋部13の補強を目的として配置される。平板14は、平面視において蓋部13の全体を覆うように配置されてもよいし、蓋部13の一部を覆うように配置されてもよい。
【0030】
ポンプケーシング30は、例えば、アルミニウム等の金属、又はPBT樹脂等の樹脂からなり、吐出管48Aと、吐出室48と、吸入室49と、を有している。また、ポンプケーシング30は、フレーム10に接続されることにより圧縮室47が形成される。また、吸入室49と圧縮室47との間には吸入弁45が配置されている。吸入弁45は、吸入室49に比べ圧縮室47の圧力が低くなったら開く弁であり、吸入室49から圧縮室47へ流体を一方向に流す。吐出弁46は、吐出室48と圧縮室47との間に配置されている。吐出弁46は、吐出室48に比べ圧縮室47の圧力が高くなったら開く弁であり、圧縮室47から吐出室48へ流体を一方向に流す。すなわち、振動子4の往復運動により振動するダイヤフラム5によって、吸入管(図示せず)を経て吸入された流体は、吸入室49から吸入弁45を介して圧縮室47に入る。次に、圧縮室47に吸入された流体は、圧縮室47から吐出弁46を介して吐出室48に入り、吐出室48から吐出管48Aを経て外部に吐出される。
【0031】
振動子支持部50は、振動子4を支持する板状部材からなる複数の板バネ51を含んで構成されている。第一実施形態では、振動子4がダイヤフラム5のみによって支持されているのではなく、振動子支持部50、すなわち、複数の板バネ51によって支持されている点に一つの特徴がある。
【0032】
図5に示されるように、板バネ51は、例えば、ステンレス等の金属材料からなり、全体が均一の厚みを有する板状部材である。板バネ51は、板バネ51の厚み方向(板バネ51の主面に直交するX軸方向)から見たときに、厚み方向に直交するY軸方向(第二方向)に延在すると共に互いに平行(略平行も含む)に配置された一対の延在部51A,51Bと、一対の延在部51A,51Bにおけるそれぞれの一方の端部51F,51G同士を接続する折返部51Cと、を有している。言い換えれば、板バネ51は、Y軸方向に沿って端部51Dから端部51Fに向かって延在し、端部51Fから折り返し、再びY軸方向に端部51Gから端部51Eに向かって延在する、延在部51A、折返部51C及び延在部51Bから形成されている。更に言い換えれば、板バネ51は、厚み方向から見た形状がコの字状に形成されている。なお、厚み方向から見た板バネ51の形状は、例えば、U字状であってもよい。
【0033】
板バネ51は、更に、一対の延在部51A,51Bのうち一方の延在部51Aにおける一方の端部51Fとは反対側の端部51D近傍に設けられ、フレーム10に固定される支点部FPと、一対の延在部51A,51Bのうち他方の延在部51Bにおける一方の端部51Gとは反対側の端部51E近傍に設けられ、振動子4に固定される動点部MPと、を有している。
図7に示されるように、板バネ51は、支点部FPを支点とし、動点部MPに対して振動子4の軸方向(X軸方向)に作用する力Fに対して、一対の延在部51A,51Bにおける振動子4の軸方向への変形量L1,L2が互いに等しくなるように形成されている。支点部FPは、延在部51AのY軸方向における中心位置よりも端部51D側に設けられ、動点部MPとは、延在部51BのY軸方向における中心位置よりも端部51E側に設けられる。
【0034】
上述したように、変形量L1,L2が互いに等しくなるような板バネとして、第一実施形態では、
図5に示されるように、X軸方向から見たときに、Y軸方向に延びる直線BLに対して線対称となるように形成された板バネ51を採用する。なお、上記第一実施形態の板バネ51は、一例であり、例えば、板状部材の厚み、厚み方向から見た形状、及び材質等を適宜組み合わせることにより、上記変形量L1,L2が互いに等しくなるように形成された板バネを用いてもよい。
【0035】
図2に示されるように、板バネ51は、第一固定部15を介してフレーム10の蓋部13に固定されている。支点部FPが第一固定部15に固定された板バネ51は、板バネ51の厚み方向がX軸方向と一致するように配置されている。また、板バネ51は、X軸方向に複数配列されている。
図4及び
図6に示されるように、第一実施形態では、第一固定部15を挟んで三枚ずつの板バネ51(合計六枚の板バネ51)が配置されている。X軸方向において第一固定部15の両方にそれぞれ配置された三枚の板バネ51は、支点部FPにおいて、すなわち、第一固定部15と固定される部位において、互いの間隔を保持する第一間隔保持部材57を介して配置されている。第一間隔保持部材57は、例えば、ポリアセタール樹脂等の材料により形成されている。
【0036】
板バネ51は、第二固定部17を介して振動子4の平板部材4Cに固定されている。動点部MPが第二固定部17に固定された板バネ51は、板バネ51の厚み方向がX軸方向と一致するように配置されている。X軸方向における一方に配置された三枚の板バネ51は、動点部MPにおいて、すなわち、第二固定部17と固定される部位において、互いの間隔を保持する第二間隔保持部材55を介して配置されている。第二間隔保持部材55は、例えば、ポリアセタール樹脂等の材料により形成されている。
【0037】
図3に示されるように、互いに隣接する板バネ51の間には、互いの折返部51Cのそれぞれにおける一部に保持部53が固着されている。保持部53と板バネ51とは、例えば、互いに嵌合されること(嵌め込み構造)により互いに固着されている。X軸方向において第二固定部17の両方にそれぞれ配置された三枚の板バネ51は、保持部53によって一体化されている。保持部53は、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成されている。
【0038】
図4に示されるように、六枚の板バネ51におけるそれぞれの支点部FPと動点部MPとは、振動子4の停止時(ダイヤフラムポンプ1が稼働していない時)に、X軸方向(第一方向)及びY軸方向(第二方向)に直交する方向、すなわち、Z軸方向(鉛直方向)に一直線上に配置されている。
【0039】
複数の板バネ51を含んで構成される振動子支持部50と振動子4と蓋部13とは、振動ユニット7として一体的に構成されている。板バネ51の支点部FPは、第一固定部15を介して蓋部13に固定されている。第一固定部15は、例えば、PBT樹脂等の材料から形成されている。板バネ51の支点部FPは、第二固定部17を介して振動子4に固定されている。第二固定部17は、例えば、PBT樹脂等の部材から形成されている。また、
図5及び
図6に示されるように、複数の板バネ51におけるそれぞれの支点部FPと電磁石3とは、Z軸方向(鉛直方向)において振動子4を挟んで配置されている。
【0040】
ダイヤフラムポンプ1では、電磁石3が固定されたフレーム10の開口部11Aから振動ユニット7が挿入される。詳細には、振動ユニット7は、開口部11Aを上方に向けて配置されたフレーム10の上方から、振動子4が下方に配置された状態で挿入される。そして、蓋部13が本体部11に固定される。これにより、電磁石3に対して振動子4の位置決めが完了する。次に、振動子4の両端に配置された挟持部材4D.4Dにダイヤフラム5が固定される。詳細には、ダイヤフラム5は、挟持部材4D.4Dによって穴部5Aが覆われるように挟持されて固定される。次に、ダイヤフラム5の外縁5Bをポンプケーシング30に固定し、固定された状態のポンプケーシング30をフレーム10に固定する。これにより、ダイヤフラムポンプ1が完成する。
【0041】
次に、第一実施形態のダイヤフラムポンプ1の作用効果について説明する。第一実施形態のダイヤフラムポンプ1は、板バネ51によって振動子4が支持されるので、往復運動(X軸方向)以外の方向への動きを規制する機能(役割)をダイヤフラム5にのみに持たせた場合と比べて、ダイヤフラム5の強度を小さくすることができる、したがって、振動子4に往復運動を作用させる場合のエネルギーを少なくすることができる。更に、上記ダイヤフラムポンプ1では、フレーム10に固定される支点部FPと振動子4に固定される動点部MPとが、X軸方向(第一方向)及びY軸方向(第二方向)に直交するZ軸方向(鉛直方向)に一直線上に配置されているので、振動子4が往復運動をする際の支点部FPに生じる回転モーメントを小さくなる。これにより、振動子4に往復運動を作用させる場合のエネルギーをより少なくすることができる。これらの結果、エネルギー効率に優れたダイヤフラムポンプ1を提供することができる。
【0042】
また、板バネ51は、支点部FPを支点とし、動点部MPに対しX軸方向に力Fを作用させた場合に、一対の延在部51A,51BにおけるX軸方向への変形量が互いに等しくなるように形成されている。このため、振動子4の往復運動において、往復運動方向であるX軸方向(第一方向)に直交する方向への動き(運動)が抑制される。これにより、エネルギーをX軸方向(第一方向)への往復運動に効果的に変換することができる。この結果、より一層エネルギー効率に優れたダイヤフラムポンプ1を提供することができる。
【0043】
また、第一実施形態の板バネ51のX軸方向(第一方向)から見た形状は、Y軸方向(第二方向)の直線BLに対して線対称に形成されている。これにより、支点部FPを支点とし、動点部MPに対しX軸方向に力Fを作用させた場合に、一対の延在部51A,51BにおけるX軸方向への変形量L1,L2が互いに等しくなるような板バネ51を容易に形成することができる。
【0044】
また、第一実施形態の板バネ51は、X軸方向(第一方向)に複数配列されているので、ダイヤフラム5における往復運動以外の方向への動きを規制する機能の負担が、より一層軽減される。
【0045】
また、第一実施形態の複数の板バネ51は、保持部53によって一体化されている。これにより、板バネ51における異常振動の発生を低減することができる。
【0046】
また、第一実施形態の保持部53は、弾性部材であるので、板バネ51における異常振動の発生を、より効果的に低減することができる。
【0047】
また、第一実施形態の複数の板バネ51は、支点部FPにおいて、互いの間隔を保持する第一間隔保持部材57を介して配置されていると共に、動点部MPにおいて、互いの間隔を保持する第二間隔保持部材55を介して配置されている。これにより、互いに隣接する板バネ51,51同士が接触することを回避できる。
【0048】
また、支点部FPと電磁石3とは、Z軸方向(鉛直方向)において振動子4を挟んで配置されているので、支点部FPにおいて発生する振動と電磁石3において発生する振動との共振等の不具合を抑制することができる。
【0049】
また、板バネ51と振動子4と蓋部13とは、振動ユニット7として一体的に構成されており、蓋部13には、板バネ51の支点部FPが固定されている。上記構成のダイヤフラムポンプ1では、電磁石3が組み付けられたフレーム10の開口部11Aに、振動ユニット7の板バネ51及び振動子4を挿入し、蓋部13を本体部11に固定するだけの容易な作業で、ダイヤフラムポンプ1を組み立てることができる。これにより、組み立て時の作業性に優れたダイヤフラムポンプ1を提供することができる。
【0050】
また、支点部FPと電磁石3とは、振動子4に対して同じ側に配置されている。この構成のダイヤフラムポンプ1では、支点部FPにおいて発生する振動の発生位置と電磁石3において発生する振動の発生位置とを互いに近づけることができるので、振動の影響の発生する部位が広範囲に及ぶことを抑制できる。
【0051】
(第二実施形態)
以下、主に
図8〜
図10を参照して第二実施形態に係る電磁振動型ダイヤフラムポンプ1について説明する。なお、ここでは、第一実施形態に係る電磁振動型ダイヤフラムポンプ1と同じ構成の部分については説明を省略する。第一実施形態に係る電磁振動型ダイヤフラムポンプ1では、
図5に示されるように、支点部FPと電磁石3とはZ軸方向(支点部FPと動点部Mとを結ぶ直線方向)に振動子4を挟んで配置されているのに対し、第二実施形態に係る電磁振動型ダイヤフラムポンプ1では、
図10に示されるように、支点部FPと電磁石3とが振動子4に対してZ軸方向において同じ側に配置されている。以下、詳細に説明する。
【0052】
図9に示されるように、振動子4は、X軸方向に延在する軸部材4A,4Aと、磁石4B,4Bと、平板部材4Cと、挟持部材4D,4Dと、接続部材4E,4Eと、を有している。接続部材4E,4Eは、例えば非磁性体材料からなる板状体であり、軸部材4Aと平板部材4Cとを接続する。なお、軸部材4A,4A、磁石4B,4Bは、平板部材4C、及び挟持部材4D,4Dは、第一実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
図10に示される板バネ51の材料、形状、厚み、及び作用する力F(
図7参照)に対する変形量等は、第一実施形態と同様である。板バネ51は、一対の延在部51A,51Bのうち一方の延在部51Aにおける一方の端部51Fとは反対側の端部51D近傍に設けられ、電磁石3に固定される支点部FPと、一対の延在部51A,51Bのうち他方の延在部51Bにおける一方の端部51Gとは反対側の端部51E近傍に設けられ、振動子4に固定される動点部MPと、を有している。
【0054】
図9に示されるように、支点部FPが電磁石3に固定された板バネ51は、板バネ51の厚み方向がX軸方向と一致するように配置されている。また、板バネ51は、X軸方向に複数配列されている。
図8及び
図9に示されるように、第二実施形態では、電磁石3を挟んで三枚ずつの板バネ51(合計六枚の板バネ51)が配置されている。X軸方向において電磁石3の両方にそれぞれ配置された三枚の板バネ51は、支点部FPにおいて、すなわち、電磁石3と固定される部位において、互いの間隔を保持する第一間隔保持部材57を介して配置されている。第一間隔保持部材57は、例えば、ポリアセタール樹脂等の材料により形成されている。
【0055】
板バネ51は、接続部材4Eを介して振動子4の平板部材4Cに固定されている。動点部MPが接続部材4Eに固定された板バネ51は、板バネ51の厚み方向がX軸方向と一致するように配置されている。X軸方向における一方に配置された三枚の板バネ51は、動点部MPにおいて、すなわち、接続部材4Eと固定される部位において、互いの間隔を保持する第二間隔保持部材55を介して配置されている。第二間隔保持部材55は、例えば、ポリアセタール樹脂等の材料により形成されている。
【0056】
図8に示されるように、互いに隣接する板バネ51の間には、互いの折返部51C(
図10参照)のそれぞれにおける一部に保持部53が固着されている。保持部53と板バネ51とは、例えば、互いに嵌合されること(嵌め込み構造)により互いに固着されている。
図9に示されるように、X軸方向において電磁石3の両方にそれぞれ配置された三枚の板バネ51は、保持部53によって一体化されている。保持部53は、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成されている。
【0057】
図10に示されるように、六枚の板バネ51におけるそれぞれの支点部FPと動点部MPとは、振動子4の停止時(ダイヤフラムポンプ1が稼働していない時)に、X軸方向(第一方向)及びY軸方向(第二方向)に直交する方向、すなわち、Z軸方向(鉛直方向)に一直線上に配置されている。
【0058】
複数の板バネ51を含んで構成される振動子支持部50と振動子4と電磁石3とは、振動ユニット7として一体的に構成されている。板バネ51の支点部FPは、電磁石3を介してフレーム10に固定されている。板バネ51の動点部MPは、接続部材4Eを介して振動子4に固定されている。接続部材4Eは、例えば、例えば非磁性体材料等から形成されている。
【0059】
第二実施形態のダイヤフラムポンプ1についても、第一実施形態のダイヤフラムポンプ1と同様の作用効果を得ることができる。また、
図10に示されるように、支点部FPと電磁石3とが振動子4に対してZ軸方向において同じ側に配置されている構成の第二実施形態のダイヤフラムポンプ1には、
図5に示されるように、支点部FPと電磁石3とが、Z軸方向(鉛直方向)において振動子4を挟んで配置されている第一実施形態の構成にはない特有の作用効果を有している。すなわち、第二実施形態のダイヤフラムポンプ1では、支点部FPにおいて発生する振動の発生位置と電磁石3において発生する振動の発生位置とを互いに近づけることができる。このため、振動の影響の発生する部位が広範囲に及ぶことを抑制できる。また、電磁石3及び動点部MPは、振動子4の下方に配置されているので、振動の発生源をフレーム10の下方とすることができる。このため、振動の発生源がフレーム10の上方にある場合と比べて、稼働時の安定性に優れる。特に、出力が大きなダイヤフラムポンプにおいて効果が大きい。
【0060】
支点部FPと電磁石3とが振動子4に対してZ軸方向において同じ側に配置されている構成のダイヤフラムポンプ1の一例として、上述の第二実施形態のダイヤフラムポンプ1を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。上述の第二実施形態のダイヤフラムポンプ1の動点部MPは、振動子4の下方に設けられているが、例えば、
図11に示されるように、振動子4の上方に設けられてもよい。また、上記第二実施形態では、支点部FPが電磁石3に設けられる例を挙げて説明したが、フレーム10の本体部11に直接固定される構成であってもよい。
【0061】
以上、第一及び第二実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
(変形例1)
上記第一又は第二実施形態では、
図7に示されるように、振動子支持部50を構成する複数の板バネ51として、支点部FPを支点とし、動点部MPに対しX軸方向に力Fを作用させた場合に、一対の延在部51A,51BにおけるX軸方向への変形量が互いに等しくなるように形成されている板バネを採用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。支点部FPと動点部MPとが、板バネ51の厚み方向(第一方向)及び板バネ51の延在方向(第二方向)に直交する方向に一直線上に配置されてさえいれば、振動子4に往復運動を作用させる場合のエネルギーをより少なくすることができるので、エネルギー効率に優れたダイヤフラムポンプ1を提供することができる。
【0063】
(変形例2)
上記第一実施形態、第二実施形態、又は変形例では、
図4に示されるように、六枚の板バネ51におけるそれぞれの支点部FPと動点部MPとは、振動子4の停止時(ダイヤフラムポンプ1が稼働していない時)に、X軸方向(第一方向)及びY軸方向(第二方向)に直交する方向、すなわち、Z軸方向(鉛直方向)に一直線上に配置されている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。上述のように支点部FPと動点部MPとが一直線上に配置されていなくても、振動子支持部50を構成する複数の板バネ51が、X軸方向一対の延在部51A,51BにおけるX軸方向への変形量が互いに等しくなるように形成されてさえいれば、振動子4に往復運動を作用させる場合のエネルギーをより少なくすることができるので、エネルギー効率に優れたダイヤフラムポンプ1を提供することができる。
【0064】
(変形例3)
上記第一実施形態、第二実施形態、又は変形例の構成に加えて、
図12に示されるように、ダイヤフラムポンプ1は、動点部MP近傍及び支点部FP近傍の一方に設けられる電流の入力部91と、動点部MP近傍及び支点部FP近傍の他方に設けられる電流の出力部92と、板バネ51における入力部91と出力部92との間に流れる電流を検知する電流検知部93と、電流検知部93における電流の検知の有無に基づいて、板バネ51の損傷の有無を判定する判定装置(判定部)94と、を備えていてもよい。
【0065】
判定装置94は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される。判定装置94は、ダイヤフラムポンプ1における各種制御処理を実行する。このような各種制御処理は、例えば、ROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されることにより行われる。電流検知部93と判定装置(判定部)94とは有線又は無線により互いに通信可能に接続されている。この構成のダイヤフラムポンプ1では、簡易な構成によって板バネ51の損傷の有無を判定することができるので、メンテナンス性に優れる。
【0066】
更に、上記判定装置94は、ダイヤフラムポンプ1として組み込まれるだけでなく、ダイヤフラムポンプ1とは別体の判定装置94とし、全体で電磁振動型ダイヤフラムポンプシステムを構成してもよい。この場合、遠隔からダイヤフラムポンプ1の状態を監視することが可能になる。また、このような構成とした場合、一台のダイヤフラムポンプ1に対して1台の判定装置94を接続する構成とするだけでなく、複数台のダイヤフラムポンプ1に対して1台の判定装置94を接続する構成とすることもできる。
【0067】
(その他の変形例)
上記第一実施形態、第二実施形態、又は変形例では、板バネ51における動点部MPが、第二固定部17を介して振動子4の平板部材4Cに固定されている例を挙げて説明したが、例えば、
図13に示されるように、振動子4の軸部材4A,4Aに固定される構成であってもよい。
【0068】
以上説明した種々の上記第一実施形態、第二実施形態、及び変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々、一部又は全部が組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…電磁振動型ダイヤフラムポンプ、3…電磁石、4…振動子、5…ダイヤフラム、7…振動ユニット、10…フレーム(筐体)、11…本体部、13…蓋部、30…ポンプケーシング、50…振動子支持部、51,51…板バネ、51A,51B…延在部、51C…折返部、53…保持部、55…第二間隔保持部材(間隔保持部材)、57…第一間隔保持部材(間隔保持部材)、91…入力部、92…出力部、93…電流検知部、94…判定装置(判定部)、FP…支点部、MP…動点部。