【文献】
Journal of Heterocyclic Chemistry,1978年,Vol.15, No.8,pp.1351-1359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
世界中で2億人を超える人が糖尿病を有する。世界保健機関は、2005年に110万の人が糖尿病で死亡したと概算し、2005年から2030年の間に世界中で糖尿病による死亡が2倍になると推定している。糖尿病を有効に治療する新規の化学的化合物は、何百万もの人命を救うことができる。
【0003】
糖尿病は、身体がグルコース濃度を有効に調節することができなくなる代謝障害を指す。全糖尿病症例のおよそ90%は2型糖尿病の結果であり、一方残りの10%は1型糖尿病、妊娠糖尿病、及び成人期の潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)の結果である。全ての形態の糖尿病が血中グルコース値上昇をもたらし、未治療のまま慢性的に放置されると、大血管(心疾患、脳卒中、循環器疾患の他の形態)及び微小血管[腎不全(腎症)、糖尿病性網膜症による失明、神経障害(糖尿病性ニューロパシー)]の合併症のリスクを増加させる恐れがある。
【0004】
1型糖尿病は、若年性又はインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)としても知られており、あらゆる年齢で発生する可能性があるが、それは小児、青年又は若年成人において最も多く診断される。1型糖尿病は、インスリン産生β細胞の自己免疫性破壊によって引き起こされ、十分なインスリンを産生することができなくなる。インスリンは、エネルギー使用のために血中グルコースを細胞中へ輸送するのを促進することによって血中グルコース値を制御する。不十分なインスリン産生は、細胞中へのグルコース取込み減少につながり、血流におけるグルコースの蓄積をもたらす。細胞における利用可能なグルコースの欠乏は、最終的に、1型糖尿病の症状:多尿(頻尿)、多飲(口渇)、常時空腹、体重減少、視覚変化及び疲労の発症につながる。1型糖尿病と診断されて5〜10年以内に、患者の膵臓インスリン産生β細胞は完全に破壊され、身体はもはやインスリンを産生することができない。結果として、1型糖尿病を有する患者は、患者の人生の残りの間インスリンの毎日の投与を必要とする。
【0005】
2型糖尿病は、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)又は成人発症型糖尿病としても知られており、膵臓が不十分なインスリンを産生する場合、及び/又は組織が正常若しくは高い濃度のインスリンに対して抵抗性(インスリン抵抗性)になる場合に発生し、過剰に高い血中グルコース値をもたらす。複数の因子が、血中グルコース値の慢性的上昇、遺伝学、肥満、運動不足、及び加齢を含めて、インスリン抵抗性につながり得る。1型糖尿病とは異なり、2型糖尿病の症状はより顕著であり、結果として、該疾患は、成人におけるピーク有病率が45歳近くである発症の後数年まで診断されないことがある。残念ながら、小児における2型糖尿病の発生率は増加している。
【0006】
2型糖尿病の治療の主要な目的は、血糖コントロールを達成及び維持することで、微小血管(糖尿病性ニューロパシー、網膜症又は腎症)及び大血管(心疾患、脳卒中、循環器疾患の他の形態)の合併症のリスクを低減することである。米国糖尿病協会(ADA)及び欧州糖尿病学会(EASD)[Diabetes Care、2008、31 (12)、1]の、2型糖尿病の治療のための現在のガイドラインは、2型糖尿病を管理するための主要な治療的手法として、体重減少及び運動増加を含めて生活様式の変更を概略している。しかし、この手法単独では、患者の大部分で最初の一年以内に失敗し、医師に長期間薬物療法を処方させることになる。ADA及びEASDは、第1a段階薬物療法として、肝臓グルコース産生を低減する薬剤のメトホルミンを推奨しているが、メトホルミンを服用しているかなりの数の患者が、胃腸管系副作用、及び稀な症例においては潜在的に致命的な乳酸アシドーシスを経験し得る。薬物療法の第1b段階クラスのための推奨には、カリウムチャネル活性モジュレーションを介して膵臓のインスリン分泌を刺激するスルホニル尿素剤、及び外因性インスリンが含まれる。両方の薬物療法は血中グルコース値を急速及び有効に低減する一方、インスリンは1日当たり1〜4回の注射が必要であり、両方の薬剤は、所望でない体重増加及び潜在的に致命的な低血糖を引き起こす可能性がある。第2a段階の推奨には、筋肉、肝臓及び脂肪のインスリン感受性を増強させるチアゾリジンジオン(TZD、ピオグリタゾン及びロシグリタゾン)など、より新しい薬剤、並びに膵臓β細胞から食後のグルコース媒介インスリン分泌を増強させるGLP-1類似体が含まれる。TZDは血中グルコース値の強力な耐久性のある制御を示す一方、有害作用には、体重増加、浮腫、女性の骨折、うっ血性心不全の悪化、及び虚血性心血管事象の潜在的なリスク増加が含まれる。GLP-1類似体も血中グルコース値を有効に制御するが、このクラスの薬物療法は注射を必要とし、多くの患者が吐き気を訴える。第2段階薬物療法一覧に最も最近加えられたのは、GLP-1類似体のように、β細胞からグルコース媒介インスリン分泌を増強させるDPP-4阻害剤である。残念ながら、DPP-4阻害剤は血中グルコース値をわずかに制御するだけであり、DPP-4阻害剤の長期安全性は依然としてしっかり確立されていない。2型糖尿病に関する他のあまり処方されない薬物療法には、α-グルコシダーゼ阻害剤、グリニド、及びアミリン類似体が含まれる。明らかに、改善された効力、耐久性及び副作用プロファイルを持つ新規の薬物療法が、2型糖尿病を有する患者に必要とされている。
【0007】
GLP-1及びGIPは、栄養素の摂取に続いて消化管から血流中にそれぞれL及びK細胞によって分泌されるインクレチンとして知られているペプチドである。この重要な生理的応答は、消化管及び他の末梢器官における栄養素(グルコース/脂肪)濃度の間の主要なシグナル伝達機として働く。分泌のすぐ後に、両方の循環ペプチドは、膵臓のβ細胞におけるシグナルを惹起することで、グルコース刺激インスリン分泌を増強させ、これが順じて血流中のグルコース濃度を制御する(概説に関して、Diabetic Medicine 2007、24(3)、223; Molecular and Cellular Endocrinology 2009、297(1-2)、127; Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes 2001、109(補足2)、S288を参照されたい)。
【0008】
インクレチンホルモンGLP-1及びGIPと2型糖尿病との間の関連性が、広範に探求されてきた。研究の大部分は、2型糖尿病がGLP-1分泌における後天性欠損並びにGIP作用に関連することを示している(Diabetes 2007、56(8)、1951及びCurrent Diabetes Reports 2006、6(3)、194を参照されたい)。2型糖尿病を有する患者の治療のための外因性GLP-1の使用は、プロテアーゼDPP-4によるその急速な分解により厳しく制限される。複数の修飾ペプチドが、DPP-4抵抗性であるGLP-1模倣体として設計され、内因性GLP-1より長い半減期を示す。2型糖尿病の治療に非常に有効であることが示されたこのプロファイルを持つ薬剤には、エクセナチド及びリラグルチドが含まれるが、しかし、これらの薬剤は注射を必要とする。シタグリプチンビルダグリプチン及びサクサグリプチンなど、DPP-4を阻害する経口剤は無傷のGLP-1を増加させ、循環グルコース濃度を適度に制御する(Pharmacology & Therapeutics 2010、125(2)、328; Diabetes Care 2007、30(6)、1335; Expert Opinion on Emerging Drugs 2008、13(4)、593を参照されたい)。GLP-1分泌を増加させる新規の経口薬物療法が、2型糖尿病の治療のために望ましい。
【0009】
胆汁酸は、消化管からのペプチド分泌を増強させることが示された。胆汁酸が各食事後に胆嚢から小腸中に放出されることで、栄養素、特に脂肪、脂質、及び脂質可溶性ビタミンの消化を促進する。胆汁酸は、核内受容体(FXR、PXR、CAR、VDR)及びGタンパク質共役受容体TGR5を介して、コレステロール恒常性、エネルギー、及びグルコース恒常性を調節するホルモンとしても機能する(概説に関して、Nature Drug Discovery 2008、7、672; Diabetes, Obesity and Metabolism 2008、10、1004を参照されたい)。TGR5は、腸、胆嚢、脂肪組織、肝臓、及び中枢神経系の選択領域において発現されるGPCR (クラスA)のロドプシン様サブファミリーのメンバーである。TGR5は、最も強力な活性化因子として、リトコール酸及びデオキシコール酸とともに複数の胆汁酸によって活性化される(Journal of Medicinal Chemistry 2008、51(6)、1831)。デオキシコール酸及びリトコール酸の両方が、部分的にTGR5を介して、腸内分泌STC-1細胞系からのGLP-1分泌を増加させる(Biochemical and Biophysical Research Communications 2005、329、386)。合成TGR5アゴニストINT-777は、マウスのin vivoにおける腸管GLP-1分泌を増加させることが示された(Cell Metabolism 2009、10、167)。胆汁塩は、血管灌流ラット大腸モデルにおける結腸L細胞からのGLP-1 (Journal of Endocrinology 1995、145(3)、521)、並びに血管灌流ラット回腸モデルにおけるGLP-1、ペプチドYY (PYY)及びニューロテンシン(Endocrinology 1998、139(9)、3780)の分泌を促進することが示された。ヒトにおいて、S状結腸へのデオキシコーレートの注入は、血漿PYY及びエンテログルカゴンの濃度における急速で著しい用量反応性増加を生み出す(Gut 1993、34(9)、1219)。回腸及び結腸の胆汁酸又は胆汁塩の濃度を増加させる薬剤は、これらに限定されないがGLP-1及びPYYを含めた腸ペプチド分泌を増加させる。
【0010】
胆汁酸は肝臓中のコレステロールから合成され、次いで、カルボン酸とタウリン及びグリシンのアミン官能性とのコンジュゲーションを受ける。コンジュゲートされた胆汁酸は、食事が消費されるまで蓄積が発生する胆嚢中に分泌される。摂食のすぐ後に、胆嚢が収縮し、その内容物を十二指腸に流入させ、ここで、コンジュゲートされた胆汁酸は、近位小腸におけるコレステロール、脂肪、及び脂肪可溶性ビタミンの吸収を促進する(概説に関して、Frontiers in Bioscience 2009、14、2584; Clinical Pharmacokinetics 2002、41(10)、751; Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 2001、32、407を参照されたい)。コンジュゲートされた胆汁酸は小腸を通って遠位回腸まで流れ続け、ここで、90%は頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT、iBATとしても知られている)を介して腸細胞中に再吸収される。残りの10%は末端の回腸及び大腸中の腸管細菌によって胆汁酸に脱コンジュゲートされ、そのうち5%は次いで大腸中に受動的に再吸収され、残りの5%は糞便中に排泄される。ASBTによって回腸に再吸収された胆汁酸は、次いで、肝臓への再循環のための門脈中に輸送される。この高度に調節されたプロセスは、腸肝再循環と呼ばれ、肝臓において合成される胆汁酸の量は糞便中に排泄される胆汁酸の量に相当するため、総胆汁酸プールの身体の全体的維持にとって重要である。ASBTの阻害剤による胆汁酸再吸収の薬理的崩壊は、大腸及び糞便中の胆汁酸の濃度増加につながり、生理的結果として、胆汁酸の糞便減少を補うために肝臓のコレステロールから胆汁酸への変換が増加する。多くの製薬会社が脂質異常症/高コレステロール血症を有する患者における血清コレステロールを低下させるための戦略としてこの機序を追求してきた(概説に関し、Current Medicinal Chemistry 2006、13、997を参照されたい)。重要なことに、結腸の胆汁酸/塩濃度におけるASBT-阻害剤媒介増加は、腸管のGLP-1、PYY、GLP-2、及び他の腸のペプチドホルモン分泌も増加させる。したがって、ASBTの阻害剤は、2型糖尿病、1型糖尿病、脂質異常症、肥満、短腸症候群、慢性特発性便秘症、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病及び関節炎の治療に有用であり得る。
【0011】
特定の1,4-チアゼピンが、例えばWO 94/18183及びWO 96/05188に開示されている。これらの化合物は、回腸胆汁酸再取込み阻害剤(ASBT)として有用であると言われている。
【0012】
国際特許公開WO2011/137,135は、他の化合物の中でもとりわけ、次の化合物を開示している。この国際特許公開はまた、化合物の合成の方法も開示している。
【0013】
【化1】
【0014】
上記化合物の調製はまた、J.Med.Chem、Vol 56、pp5094〜5114(2013年)においても開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他の態様では、本発明の方法は、3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールを
【0019】
【化4】
に転換し、次いで、リッター反応によって、
【0020】
【化5】
に転換するステップを含む。
【0021】
好ましくは、前記リッター反応は、ClCH
2CNを用いる。
【0022】
他の態様では、本発明の方法は、例えば、(R)-2-アンモニオ-2-エチルヘキシルスルフェートとの反応により、3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールを
【0023】
【化6】
に転換するステップを含む。
【0024】
一態様では、本発明の方法は、2-メトキシフェニルアセテートから3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールを調製するステップと、3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールを
【0028】
【化10】
に転換するステップとを含む。
【0029】
[実施例]
国際特許公開WO2011/137,135は、本化合物を調製するための一般的な方法を開示している。さらに、本化合物の詳細な合成は、実施例26に開示されている。J.Med.Chem、Vol 56、pp5094〜5114(2013年)はまた、本化合物を合成するための方法を開示している。
【0030】
本発明は、化合物の改善された合成を開示している。
【0031】
本発明の合成スキームを、スキーム1に示す。2-メトキシフェニルアセテートを一塩化硫黄で処理し、その後、エステル加水分解し、亜鉛で還元することにより、チオフェノール(A)を生じる。(±)-2-ブチル-エチルオキシランをチオフェノール(A)でエポキシド開環し、その後、酸性条件下で第三級アルコール(B)をクロロアセトニトリルで処理し、クロロアセトアミド(C)を得、次いで、クロロアセトアミドをチオ尿素で開裂させ、その後、ジベンゾイル-L-酒石酸で古典的な分割を行うことにより、中間体(E)に転換した。中間体(E)をトリフリン酸及び塩化ベンゾイルによってベンゾイル化することにより、中間体(H)を得た。中間体(H)を環化させ、その後、硫化物をスルホンに酸化させ、その後、イミン還元を行い、(+)-カンファースルホン酸で古典的な分割を行うことにより、中間体(G)を生成し、次いで、これを中間体(H)に転換した。中間体(H)を、国際特許公開WO2011/137,135に開示される方法を用いて目標化合物に転換させた。
【0033】
本発明はまた、スキーム2に示す通り、第4のキラル中心の構成のための代替法も開示している。中間体(A)を(R)-2-アンモニオ-2-エチルヘキシルスルフェート(K)と反応させ、その後ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を形成して、中間体(L)を得た。
【0035】
本発明はまた、スキーム3に例示される通り、中間体(H)の代替の合成も開示している。中間体(F)を酸触媒によって環化させ、その後、トリフレート化(triflation)し、イミン(M)を得、触媒Ir(COD)
2BArF及びリガンド(N)で不斉還元を行って、中間体(O)を得た。中間体(O)における硫化物の酸化によって、スルホン中間体(H)を得た。
【0037】
本発明は、本発明における中間体(H)が、新規な、より短時間の及びより費用効率の高い合成によって調製される一方で、中間体(H)からの目標化合物の合成が変化しないという点において、WO2011/137,135及びJ.Med.Chem、Vol56、pp5094〜5114(2013年)に開示される合成と異なる。
【0038】
本発明の利点:
1)改善された合成において、合成ステップの数が減る。
2)改善された合成は、有意に、より費用効率が高い。
3)改善された合成は、いかなるクロマトグラフの精製も必要としない。
【0039】
略語
Bz ベンゾイル
TfOH トリフルオロメタンスルホン酸
PhCOCl 塩化ベンゾイル
Tf
2O 無水トリフルオロ酢酸
Py ピリジン
DME ジメトキシエタン
MTBE メチルt-ブチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
HOAc 酢酸
EtOH エタノール
MeCN アセトニトリル
DCM ジクロロメタン
【0040】
中間体A:3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノール
【0042】
反応容器に、2-メトキシフェニルアセテート(60g、0.36mol)、塩化亜鉛(49.2g、0.36mol)及びDME(600mL)を充填した。混合物を撹拌し、S
2Cl
2(53.6g、0.40mol)を加えた。混合物を周囲温度で2時間撹拌した。濃縮したHCl(135.4mL、1.63mol)を水(60mL)で希釈し、60℃未満の温度を保ちながら、rxn混合物にゆっくりと加えた。混合物を、60℃で2時間撹拌し、次いで、周囲温度まで冷却した。60℃未満の温度を保ちながら、亜鉛粉末(56.7g、0.87mol)を分割して加えた。混合物を、20〜60℃で1時間撹拌し、次いで、真空下で約300mLまで濃縮した。MTBE(1.2L)及び水(180mL)を加え、混合物を10分間撹拌した。これらの層を分離し、有機層を水(2×240mL)で2回洗浄した。これらの層を分離し、有機層を真空下で濃縮して、油を得た。この油を110〜115℃/2mbarで蒸留して、無色の油として表題化合物(42g、75%)を得、これを放置して固化させて、白色の固体として表題化合物を得た。M.P.41〜42℃。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ ppm 3.39 (s, 1H), 3.88 (s, 3H), 5.65 (br. S, 1H), 6.75 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.84 (ddd, J = 8.3, 2.2, 0.6 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.2 Hz).
【0043】
中間体E:(R)-5-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-2-メトキシフェノール、ジベンゾイル-L-酒石酸塩
【0045】
反応容器に3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノール(5.0g、25.2mmol)、(±)-2-ブチル-2-エチルオキシラン(3.56g、27.7mmol)及びEtOH(30mL)を充填した。混合物を、NaOH(2.22g、55.5mmol)の水(20mL)溶液で処理し、40℃まで加熱し、40℃で5時間撹拌した。混合物を周囲温度まで冷却し、トルエン(25mL)で処理し、10分間撹拌した。これらの層を分離し、有機層を捨てた。水層を、2N HCl(27.8mL、55.6mmol)で中和させ、トルエン(100mL)で抽出した。有機層を、水(25mL)で洗浄し、真空中で濃縮して、油を得た。油を、クロロアセトニトリル(35.9mL)及びHOAc(4.3mL)で処理し、0℃まで冷却した。H
2SO
4(6.7mL、126mmol、水2.3mLで予備希釈した(pre-diluted))を、10℃未満の温度を保つ速度で加えた。0℃で0.5時間撹拌した後、反応混合物を20%Na
2CO
3水溶液で処理して、pHを7〜8に調整し、次いで、MTBE(70mL)で抽出した。抽出物を、水(35mL)で洗浄し、真空中で濃縮して、油を得た。次いで、油をEOH(50mL)に溶解し、HOAc(10mL)及びチオ尿素(2.30g、30.2mmol)で処理した。混合物を、還流下で終夜加熱し、次いで、周囲温度まで冷却した。これらの固体を濾過し、EtOH(10mL)で洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせ、真空中で濃縮し、MTBE(140mL)で処理し、10%Na
2CO
3水溶液及び水で連続的に洗浄した。混合物を、真空中で濃縮して、油を得た。油をMeCN(72mL)に溶解し、約50℃まで加熱し、次いで、アセトニトリル(22mL)中のジベンゾイル-L-酒石酸(9.0g、25.2mmol)をゆっくりと加えた。種結晶を約50℃で加えた。得られたスラリを45〜50℃で5時間撹拌し、次いで、周囲温度まで冷却し、周囲温度で終夜撹拌した。これらの固体を濾過し、MeCN(2×22mL)で洗浄した。湿潤ケークをMeCN(150mL)で処理し、50℃まで加熱した。スラリを50℃で5時間撹拌し、周囲温度まで1時間にわたって冷却し、周囲温度で終夜撹拌した。これらの固体を濾取し、MeCN(2×20mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、白色の固体として表題化合物(5.5g、全収率34%、純度99.5%、93.9% ee)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ ppm 0.78 (m, 6H), 1.13 (m, 4H), 1.51 (m, 2H), 1.58 (q, J = 7.7 Hz, 2H), 3.08 (s, 2H), 3.75 (s, 3H), 5.66 (s, 2H), 6.88 (m, 2H), 6.93 (m, 1H), 7.49 (m, 4H), 7.63 (m, 2H), 7.94 (m, 4H). EI-LCMS m/z 284 (遊離塩基のM
++1).
【0046】
中間体F:(R)-(2-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)(フェニル)メタノン
【0048】
(R)-5-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-2-メトキシフェノール、ジベンゾイル-L-酒石酸塩(29g、45.2mmol)のDCM(435mL)懸濁液を、水(116mL)及び10%Na
2CO
3水溶液(116mL)で処理した。すべての固体が溶解するまで(30分)、混合物を周囲温度で撹拌した。これらの層を分離した。有機層を水(2×60mL)で洗浄し、真空下で濃縮して、オフホワイト色の固体(13.0g、定量的)として(R)-5-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-2-メトキシフェノール(遊離塩基)を得た。容器に、TfOH(4.68ml、52.9mmol)及びDCM(30mL)を充填し、混合物を0℃まで冷却した。(R)-5-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-2-メトキシフェノール(遊離塩基)5g(17.6mmol)を、DCM(10mL)に溶解し、10℃未満の温度を保つ速度で加えた。塩化ベンゾイル(4.5mL、38.8mmol)を、10℃未満の温度を保つ速度で加えた。次いで、混合物を加熱還流し、還流下で48時間撹拌した。混合物を30℃まで冷却した。水(20mL)を加え、混合物を濃縮して、DCMを除去した。EtOH(10mL)を加えた。混合物を40℃まで加熱し、50%NaOH水溶液(10mL)で処理し、55℃で撹拌した。1時間後、混合物を周囲温度まで冷却し、濃縮したHClでpHを6〜7に調整した。混合物を真空中で濃縮して、EtOHを除去した。EtOAc(100mL)を加えた。混合物を5分間撹拌し、これらの層を分離した。有機層を、10%Na
2CO
3水溶液(25mL)及び水(25mL)で連続的に洗浄し、次いで、真空中で濃縮した。得られた油をDCM(15mL)で処理した。得られた濃厚スラリを、DCM(15mL)でさらに希釈し、その後、ヘキサン(60mL)を加えた。スラリを5分間撹拌し、濾過し、DCM/ヘキサン(1:2、2×10mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、黄色の固体として表題化合物(7.67g、80%)を得た。
1NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ ppm 0.70 (t, 7.1 Hz, 3 H), 0.81 (t, 7.1 Hz, 3H), 1.04-1.27 (m, 8H), 2.74 (s, 2H), 3.73 (s, 3H), 6.91 (s, 1H), 7.01 (s, 1H), 7.52 (dd, J = 7.8, 7.2 Hz, 2H), 7.63 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 7.8 Hz, 2H). EI-LCMS m/z 388 (M
++1).
【0049】
中間体G:(3R,5R)-3-ブチル-3-エチル-8-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン1,1-ジオキシド、(+)-カンファースルホン酸塩
【0051】
容器に、(R)-(2-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)(フェニル)メタノン(1.4g、3.61mmol)、トルエン(8.4mL)及びクエン酸(0.035g、0.181mmol、5mol%)を充填した。混合物を、ディーン・スタークトラップで終夜加熱還流して、水を除去した。混合物を、減圧下で濃縮して、溶媒を除去した。メタノール(14.0mL)及びオキソン(2.22g、3.61mmol、1.0当量)を加えた。混合物を、穏やかな還流下で2時間撹拌した。混合物を周囲温度まで冷却し、濾過して、固体を除去した。濾過ケークを少量のメタノールで洗浄した。濾液を5℃まで冷却し、少量ずつ水素化ホウ素ナトリウム(0.410g、10.84mmol、3.0当量)で処理した。混合物を5℃で2時間撹拌し、次いで、濃縮して、溶媒の過半を除去した。混合物を水(28.0mL)で急冷し、EtOAc(28.0mL)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物をMeCN(14.0mL)に溶解し、再度濃縮して溶媒を除去した。残留物を、40℃でMeCN(7.00mL)及びMTBE(7.00mL)に溶解し、40℃で30分間(+)-カンファースルホン酸(0.839g、3.61mmol、1.0当量)で処理した。混合物を周囲温度まで冷却し、2時間撹拌し、濾過して固体を収集した。濾過ケークをMTBE/MeCN(2:1、3mL)で洗浄し、50℃で乾燥して白色の固体として表題化合物(0.75g、全収率32%、純度98.6、97% de、99.7% ee)を得た。
1NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm 0.63 (s, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 0.97 (m, 6H), 1.29-1.39 (m, 5H), 1.80-1.97 (m, 6H), 2.08-2.10 (m, 1H), 2.27 (d, J = 17.3 Hz, 1H), 2.38-2.44 (m, 3H), 2.54 (b, 1H), 2.91 (b, 1H), 3.48 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 4.05 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 6.45 (s, 1H), 6.56 (s, 1H), 7.51-7.56 (m, 4H), 7.68 (s, 1H), 7.79 (b, 2H), 11.46 (b, 1H). EI-LCMS m/z 404 (遊離塩基のM
++1).
【0052】
中間体H:(3R,5R)-3-ブチル-3-エチル-7-メトキシ-1,1-ジオキシド-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン-8-イルトリフルオロメタンスルホネート
【0054】
方法1:(3R,5R)-3-ブチル-3-エチル-8-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン1,1-ジオキシド、(+)-カンファースルホン酸塩(0.5g、0.786mmol)、EtOAc(5.0mL)、及び10%のNa
2CO
3水溶液(5mL)の混合物を15分間撹拌した。これらの層を分離し、水層を捨てた。有機層を、希薄ブラインで2回洗浄し、濃縮して溶媒を除去した。EtOAc(5.0mL)を加え、混合物を濃縮して、淡黄色の固体遊離塩基を得た。1,4-ジオキサン(5.0mL)及びピリジン(0.13mL、1.57mmol)を加えた。混合物を5〜10℃まで冷却し、トリフリン酸無水物(0.199mL、1.180mmol)を15℃未満の温度を保ちながら加えた。HPLCによって終了したと考えられるまで(1時間)、混合物を周囲温度で撹拌した。トルエン(5mL)及び水(5mL)を加えた。層を分離した。有機層を水で洗浄し、濃縮して溶媒を除去した。トルエン(1.0mL)を加えて、残留物を溶解し、その後、イソオクタン(4.0mL)を溶解した。混合物を室温で終夜撹拌した。これらの固体を濾過し、イソオクタン(4.0mL)で洗浄して、わずかに黄色の固体として表題化合物(0.34g、81%)を得た。
1NMR (400 MHz, CDCl
3) δppm 0.86 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.94 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.12-1.15 (m, 1H), 1.22-1.36 (m, 3H), 1.48-1.60 (m, 2H), 1.86-1.93 (m, 2H), 2.22 (dt, J = 4.1 Hz, 12 Hz, 1H), 3.10 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 3.49 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H), 6.11 (s, 1H), 6.36 (s, 1H), 7.38-7.48 (m, 5), 7.98 (s, 1H).
【0055】
方法2:DCM(10.0mL)中の(R)-3-ブチル-3-エチル-7-メトキシ-5-フェニル-2,3-ジヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン-8-イルトリフルオロメタンスルホネート(0.5g、0.997mmol)、リガンド(N)(0.078g、0.110mmol)及びIr(COD)
2BArF(0.127g、0.100mmol)の混合物を窒素で3回パージし、次いで、水素で3回パージした。混合物を、Parr shaker中でH
210Bar下で24時間振盪した。(R)-3-ブチル-3-エチル-7-メトキシ-5-フェニル-2,3-ジヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン-8-イルトリフルオロメタンスルホネート1.0g(1.994mmol)の投入量で前述の実験をくり返した。2バッチの反応混合物を合わせ、濃縮して溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=9:1)により精製して、わずかに黄色の油として硫化物(O)を得た(0.6g、収率40%、純度99.7%)。油(0.6g、1.191mmol)をTFA(1.836mL、23.83mmol)に溶解し、40℃で撹拌した。H
2O
2(0.268mL、2.62mmol)を30分にわたってゆっくりと加えた。混合物を、40℃で2時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。水(10mL)及びトルエン(6.0mL)を加えた。層を分離し、有機層を炭酸ナトリウム水溶液及び水で連続的に洗浄し、濃縮乾固した。トルエン(6.0mL)を加え、混合物を濃縮乾固した。残留物を、トルエン(2.4mL)に溶解し、イソオクタン(7.20mL)を加えた。混合物を加熱還流し、次いで、室温まで冷却した。混合物を、室温で30分間撹拌した。固体を濾過し、イソオクタンで洗浄して、表題化合物(0.48g、75%)を得た。
【0056】
中間体L:(R)-5-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-2-メトキシフェノール、ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩
【0058】
水(23.1mL)中の硫酸水素(R)-2-アミノ-2-エチルヘキシル(11.1g、49.3mmol)の混合物に、NaOH(5.91g、148mmol)を加えた。混合物を還流下で2時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、MTBE(30.8mL)で抽出した。抽出物をブライン(22mL)で洗浄し、真空下で濃縮し、メタノール(30.8mL)で処理した。混合物を窒素下で撹拌し、3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノール(7.70g、49.3mmol)で処理した。混合物を、窒素下で室温で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、アセトニトリル(154mL)で処理し、次いで、45℃まで加熱した。撹拌した混合物に、(2R,3R)-2,3-ビス((4-メチルベンゾイル)オキシ)コハク酸(19.03g、49.3mmol)を加えた。得られたスラリを45℃で撹拌した。2時間後、スラリを室温まで冷却し、5時間撹拌した。これらの固体を濾過し、アセトニトリル(30mL)で2回洗浄し、乾燥して、白色の固体として表題化合物(28.0g、85%)を得た。
1NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ(ppm): 0.70-0.75 (m, 6H), 1.17 (b, 4H), 1.46-1.55 (m, 4H), 2.30 (s, 6H), 3.71 (s, 3H), 5.58 (s, 2H), 6.84 (s, 2H), 6.89 (s, 1H), 7.24 (d, J = 11.6 Hz, 4H), 7.76 (d, J = 11.6 Hz, 4H).
【0059】
中間体M:(R)-3-ブチル-3-エチル-7-メトキシ-5-フェニル-2,3ジヒドロベンゾ[f][1,4]チアゼピン-8-イルトリフルオロメタンスルホネート
【0061】
フラスコに、(R)-(2-((2-アミノ-2-エチルヘキシル)チオ)-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)(フェニル)メタノン(3.5g、9.03mmol)、クエン酸(0.434g、2.258mmol)、1,4-ジオキサン(17.50mL)及びトルエン(17.50mL)を充填した。混合物をディーン・スタークトラップで加熱還流して、共沸により水を蒸留した。混合物を20時間還流し、次いで、室温まで冷却した。EtOAc(35.0mL)及び水(35.0mL)を加え、層を分離した。有機層を炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、濃縮して溶媒を除去して、褐色の油として粗イミンを得た。油をEtOAc(35.0mL)に溶解し、0〜5℃まで冷却した。混合物にトリエチルアミン(1.888mL、13.55mmol)を加え、その後、0〜5℃でTf
2O(1.831mL、10.84mmol)をゆっくりと加えた。混合物を、室温で1時間撹拌した。水を加え、層を分離した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で脱水し、真空下で濃縮した。粗トリフレートを、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=90:10)により精製して、琥珀色の油として表題化合物(3.4g、75%)を得た。
1NMR (400 MHz, CDCl
3) δppm 0.86 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.92 (t, J = 7.9 Hz, 3H), 1.19-1.34 (m, 4H), 1.47-1.71 (m, 4H), 3.25 (s, 2H), 3.75 (s, 3H), 6.75 (s, 1H), 7.35-7.43 (m, 3H), 7.48 (s, 1H), 7.54 (d, J = 7.6 Hz, 2H).
(付記)
(付記1)
化合物
【化21】
を調製するための方法であって、3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールから化合物
【化22】
を調製するステップを含む方法。
(付記2)
前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールが、2-メトキシフェニルアセテートから調製される、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールが、
【化23】
に転換される、付記1又は付記2に記載の方法。
(付記4)
示された構造が、対応するジベンゾイル-L-酒石酸塩として調製される、付記3に記載の方法。
(付記5)
示された構造が、対応するジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩として調製される、付記3に記載の方法。
(付記6)
前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールが、
【化24】
に転換され、
次いで、リッター反応によって、
【化25】
に転換される、付記1から5のいずれか一つに記載の方法。
(付記7)
前記リッター反応が、ClCH2CNを用いる、付記6に記載の方法。
(付記8)
前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールが、
【化26】
に転換される、付記1から5のいずれか一つに記載の方法。
(付記9)
前記転換が、前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールの(R)-2-アンモニオ-2-エチルヘキシルスルフェートとの反応を含む、付記8に記載の方法。
(付記10)
前記3-ヒドロキシ-4-メトキシチオフェノールが、
【化27】
に転換され、次いで、
【化28】
に転換され、次いで、
【化29】
に転換され、次いで、
【化30】
に転換される、付記1から9のいずれか一つに記載の方法。