(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543347
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】光学的関心領域を測定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-541263(P2017-541263)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-504606(P2018-504606A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】US2016016821
(87)【国際公開番号】WO2016127082
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】62/113,058
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502221282
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ヨン
【審査官】
嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−505691(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0100569(US,A1)
【文献】
特表2013−537635(JP,A)
【文献】
特表2004−535198(JP,A)
【文献】
特表2008−536092(JP,A)
【文献】
特表2013−533523(JP,A)
【文献】
特表2011−505004(JP,A)
【文献】
特表2003−508064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G01N 27/00−27/92
G01N 30/00−30/96
G01N 33/00−33/98
G01N 35/00−35/10
G01N 37/00
G01J 1/00− 1/60
G01J 3/00− 3/52
C12M 1/00− 1/42
C12M 3/00− 3/10
C12Q 1/00− 1/70
C12Q 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室用機器のキャリブレーションのための方法であって、前記方法は、
光源を備える光学系を提供することであって、前記光学系は、前記光源による励起の際に複数の生体試料からの蛍光発光をイメージングすることができ、各生体試料は、サンプルウェルプレート上の複数のサンプルウェルのうちの1つ内に含まれている、ことと、
前記光学系を使用して、各サンプルウェルからの1つ以上の蛍光閾値に関連する、前記複数のサンプルウェルにおける蛍光発光を検出することによって、少なくとも1つの初期の関心領域(ROI)を推定することと、
各ROIの1つ以上の中心位置を推定することと、
各ROIのサイズを推定することと、
前記複数のサンプルウェルから前記ROIの平均的サイズを決定することと、
1つ以上の広域グリッディングモデルを導出することであって、前記広域グリッディングモデルは、各ROIの前記推定された中心位置を分析する、ことと、
前記広域グリッディングモデルを適用して、前記推定された中心位置を前記サンプルウェルプレートのレイアウトの1つ以上の位置座標に関連付けることによって、前記ROI中心位置の精度を向上させることと、
前記広域グリッディングモデルの1つ以上のマッピング関数を用いて、見落としていたROIを回復させることと、
前記ROIのサイズを調整することであって、前記調整は、前記光学系のシグナル対ノイズ比を向上させる、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
各生体試料は、1つ以上のスペクトルで識別可能な色素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のスペクトルで識別可能な色素は、検出されることが可能なシグナルを発する1つ以上の蛍光色素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料は、前記励起に反応して所定の波長で蛍光を発する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記実験室用機器は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを通して前記1つ以上の生体試料を分析するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光源は、レーザ、発光ダイオード(LED)、または広域スペクトル光源を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記広域グリッディングモデルは、前記ROI間の中心間距離をウェルプレートレイアウトのグリッド座標と比較して、各ROIに対するXグリッド座標およびYグリッド座標を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マッピング関数を決定および適用して、各グリッド座標をROIの中心にマップすることをさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
実験室用機器における1つ以上の生体試料に対して関心領域(ROI)位置をキャリブレーションするためのシステムであって、前記システムは、
光学検出システムであって、前記光学検出システムは、
複数のフィルタと、
少なくとも1つの励起源と、
前記少なくとも1つの励起源による励起の際に前記1つ以上の生体試料からの蛍光発光の1つ以上のイメージを収集するように構成された少なくとも1つの検出器と、
複数のサンプルウェルを備えるマイクロウェルトレイであって、各生体試料は、サンプルウェル内に含まれている、マイクロウェルトレイと
を備える、光学検出システムと、
コンピュータシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記1つ以上の生体試料からの蛍光発光の前記1つ以上のイメージと、ユーザから受信される1つ以上の入力パラメータとに基づいて、1つ以上のROI中心位置の推定値を設定することと、
各ROIのサイズを推定することと、
複数のサンプルウェルから前記ROIの平均的サイズを決定することと、
前記推定されたROI中心位置を分析して、隣接するROIを求めることと、
1つ以上のマッピング関数を適用して、前記推定された中心位置を前記マイクロウェルトレイのレイアウトの1つ以上の位置座標に関連付けることによって、前記ROI中心位置の精度を向上させることと、
前記1つ以上のマッピング関数を用いて、見落としていたROIを回復させることと、
前記ROIのサイズを調整することであって、前記調整は、前記光学検出システムのシグナル対ノイズ比を向上させる、ことと
を行うように構成されている、少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのコンピュータ可読媒体と、
前記少なくとも1つのプロセッサに接続され、かつ前記ユーザからの前記1つ以上の入力パラメータを受信するように構成されている、少なくとも1つの入力装置と、
少なくとも1つのディスプレイと
を備える、コンピュータシステムと
を備える、システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコンピュータ可読媒体は、前記プロセッサに接続されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コンピュータ可読媒体は、前記プロセッサによって実行可能な命令を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサによって実行される前記命令は、ROIを決定し、前記ROI位置のキャリブレーションを自動化するための少なくとも1つのステップを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のフィルタは、少なくとも1つの励起フィルタ、少なくとも1つの発光フィルタ、および少なくとも1つのビームスプリッタを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの生体試料は、少なくとも1つの蛍光色素を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
ユーザが前記1つ以上の入力パラメータを選択することを可能にするように構成されたグラフィックユーザインタフェース(GUI)をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記1つ以上の入力パラメータは、閾値範囲およびステップ、ウェルサイズ、ウェル中心間距離、サブアレイ間の間隔、ミリメータあたりの光学画素、およびプレートレイアウトのうちの1つ以上を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの入力装置は、前記プロセッサに情報を伝達するように構成されている英数字および他のキーを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの入力装置は、前記プロセッサに方向情報を伝達するカーソル制御部をさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数のサンプルウェルは、1つ以上のプレートレイアウトパラメータを備えるグリッドパターンに配置されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つ以上のプレートレイアウトパラメータは、ウェルの数、列の数、および行の数を含み、各ウェルは、XY座標のセットを備える、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
実験室用機器の設置およびキャリブレーションは、時間がかかり高価な処理となる可能性がある。多くの場合、機器供給業者からの技術者は、現場にいてこれらの処理を行わなければならない。このコストは一般的にユーザに転嫁される。場合によっては、熟練したユーザが、多段階の手順を用いて、適切に製造された機器を首尾よくキャリブレーションすることができる。このようなキャリブレーションの間、手動での操作と組み合わせて物理的な標準器(standards)およびウェル・プレートを使用してもよい。手動でのキャリブレーション処理およびデータ検査は、誤差が生じやすい傾向にあり、特別であるか、あるいは主観的な基準に依存しがちである。最終的なシステム確認工程によって、次善の(suboptimal)キャリブレーションを承認しなおしてもよいが、自動化することによってこのような作業中の客観性および均一性が向上する。本教示は、合格状態/失敗状態を提供し、失敗が特定されるとトラブルシューティング・フィードバックを提供する自動化されたキャリブレーションおよび確認システムに、熟達者の知識を組み込むことができる。機器がキャリブレーション処理に失敗すると、ついで、サービスエンジニアを呼び出すことができる。本教示によって、設置およびキャリブレーション手順のコストと、それに必要な時間とを最小限に抑えることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本教示は、実験室用機器内の1つ以上の生体試料に関する関心領域(ROI)を測定する方法およびシステムに関する。本発明の一実施形態では、この方法が、複数のサンプル・ウェルからの蛍光発光をイメージングすることのできる光学系を含む。初期ROIは、その中心位置およびサイズを、各ウェルから検出される蛍光から推定可能である。この情報から、ROIの平均的サイズを測定可能であり、かつ、広域グリッディング・モデルを導出してROIのそれぞれをより良好に配置することが可能である。ついで、この広域グリッディング・モデルをROIに適用して、ROIの中心位置の精度を向上させることができる。マッピング関数を用いることにより本来蛍光ROIを示さないサンプル・ウェルを復元することができる。ついで、各ROIの半径を調整して、光学系のシグナル対ノイズ比を向上させることができる。
【0003】
別の実施形態では、各サンプル・ウェルが生体試料を含む。
【0004】
別の実施形態では、各生体試料が光源によって励起される。
【0005】
別の実施形態では、生体試料が励起に反応して所定の波長で蛍光を発する。
【0006】
別の実施形態では、蛍光が光学系によって検出される。
【0007】
別の実施形態では、生体試料がスペクトルで識別可能な色素を含む。
【0008】
別の実施形態では、広域グリッディング・モデルが、ROI間の中心間距離とウェル・プレート・レイアウトのグリッド座標とを比較して、各ROIに対するXグリッド座標およびYグリッド座標を決定することを含む。
【0009】
別の実施形態では、マッピング関数が決定され、各ROIに対するX座標およびY座標に適用されて、各座標を各ROIの中心にマップする。
【0010】
さまざまな実施形態によると、関心領域(ROI)の位置をキャリブレーションするためのシステムが示されている。このシステムは、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータ・システムを含んでいてもよい。このシステムは、少なくとも1つの入力装置と、少なくとも1つのディスプレイと、1つの光検出システムとをさらに備えていてもよい。光検出システムが、複数のフィルタと、少なくとも1つの励起源と、少なくとも1つの検出器と、1つのマイクロウェル・トレイとをさらに備えていてもよい。
【0011】
さまざまな実施形態では、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体が少なくとも1つのプロセッサに接続されており、プロセッサによって実行可能な命令を含む。
【0012】
さまざまな実施形態では、プロセッサによって実行可能な命令が、ROIを測定する少なくとも1つの工程を含み、ROIのキャリブレーションを自動化する。
【0013】
さまざまな実施形態では、複数のフィルタが、少なくとも1つの励起フィルタと、少なくとも1つの放出フィルタと、少なくとも1つの分光器とを含む。
【0014】
さまざまな実施形態では、マイクロウェル・トレイが、少なくとも1つの蛍光色素を含む少なくとも1つの生体試料を含む。
【0015】
別の実施形態では、少なくとも1つのディスプレイが、ユーザに情報を提供する。
【0016】
別の実施形態では、少なくとも1つの入力装置が、プロセッサに情報を伝達するように構成されている英数字および他のキーと、プロセッサに方向情報を伝達するカーソル制御部とを含む。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
実験室用機器のキャリブレーションの方法であって、
複数のサンプル・ウェルからの蛍光発光をイメージングすることのできる光学系を設けることと、
前記サンプル・ウェルのそれぞれからの蛍光閾値から初期の関心領域(ROI)を推定することと、
前記ROIのそれぞれの中心位置を推定することと、
前記ROIのそれぞれのサイズを推定することと、
前記複数のサンプル・ウェルから前記ROIの平均的サイズを測定することと、
広域グリッディング・モデルを導出することであって、前記広域グリッディング・モデルが前記ROIのそれぞれの位置をより良好に配置することと、
前記広域グリッディング・モデルを前記ROIに適用することであって、前記広域グリッディング・モデルの適用が前記ROIの中心位置の精度を向上させることと、
マッピング関数を用いて、見落としていたROIを回復させることと、
前記ROIの半径を調整することであって、前記調整によって光学系のシグナル対ノイズ比を向上させることができる、方法。
(項目2)
前記サンプル・ウェルのそれぞれが生体試料を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記生体試料が前記光源によって励起される、項目1および2に記載の方法。
(項目4)
前記生体試料が励起に反応して所定の波長で蛍光を発する、項目1から3に記載の方法。
(項目5)
前記蛍光が光学系によって検出される、項目1から4に記載の方法。
(項目6)
前記生体試料がスペクトルで識別可能な色素を含む、項目1および2に記載の方法。
(項目7)
前記広域グリッディング・モデルが、前記ROI間の中心間距離とウェル・プレート・レイアウトのグリッド座標とを比較して、前記ROIのそれぞれに対するXグリッド座標およびYグリッド座標を決定することを含む、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
マッピング関数を決定し適用して、各座標を各ROIの中心にマップすることをさらに備える、項目1および7に記載の方法。
(項目9)
関心領域(ROI)をキャリブレーションするシステムであって、前記システムは、
コンピュータ・システムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのコンピュータ可読媒体と、を備えるコンピュータ・システムと、
少なくとも1つの入力装置と、
少なくとも1つのディスプレイと、
1つの光検出システムであって
複数のフィルタと、
少なくとも1つの励起源と、
少なくとも1つの検出器と、
1つのマイクロウェル・トレイと、を備える、1つの光検出システムと、
を備える、コンピュータ・システム。
(項目10)
前記少なくとも1つのコンピュータ可読媒体が、前記プロセッサに接続されている、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記少なくとも1つのコンピュータ可読媒体が、前記プロセッサによって実行可能な命令を含む、項目9および10に記載のシステム。
(項目12)
前記プロセッサによって実行可能な前記命令が、前記ROIを測定する少なくとも1つの工程を含み、前記ROIのキャリブレーションを自動化する、項目9から11に記載のシステム。
(項目13)
前記複数のフィルタが、少なくとも1つの励起フィルタと、少なくとも1つの放出フィルタと、少なくとも1つの分光器とを含む、項目9に記載のシステム。
(項目14)
前記マイクロウェル・トレイが、少なくとも1つの蛍光色素を含む少なくとも1つの生体試料を含む、項目9に記載のシステム。
(項目15)
前記少なくとも1つの検出器が、少なくとも1つの蛍光色素を含む前記少なくとも1つの生体試料をイメージングする、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記少なくとも1つのディスプレイが、ユーザに情報を提供する、項目9に記載のシステム。
(項目17)
前記少なくとも1つの入力装置が、前記プロセッサに情報を伝達するように構成されている英数字および他のキーを備える、項目9に記載のシステム。
(項目18)
前記少なくとも1つの入力装置が、前記プロセッサに方向情報を伝達するカーソル制御部をさらに備える、項目17に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本教示の実施形態が実施可能なコンピュータ・システムを示す図である。
【
図2】本教示の実施形態が実施可能な実験室用機器を示す図である。
【
図3】定量PCR機器のキャリブレーションで使用される工程順序を示す図である。
【
図4】
図4は、96ウェル・サンプル容器に対する関心領域を示す図である。
【
図5】回転した96ウェル・サンプル容器に対する関心領域を示す図である。
【
図6】関心領域が不正確に配置されたサンプル・アレイを示す図である。
【
図7】関心領域が正確に配置されたサンプル・アレイを示す図である。
【
図8】関心領域が正確に配置されたサンプル・アレイのより近い図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
さまざまな実施形態の以下の記載は、本質的には単なる例示であり、本教示、応用分野、または用途を制限することを意図するものではない。本教示が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのポリヌクレオチド増幅に関連するような、いくつかの実施形態において考察されることがあっても、このような考察は、本教示をそれらの応用分野にのみ制限するとみなすべきでない。
【0019】
図1は、本教示の実施形態が実行され得るコンピュータ・システム100を示すブロック図である。コンピュータ・システム100は、情報を伝達するバス102または他の伝達機構と、バス102に接続されており、情報を処理するプロセッサ104とを含む。コンピュータ・システム100はまた、ランダムアクセスメモリ(RAM)や他の動的記憶装置であってもよく、バス102に接続されているメモリ106と、プロセッサ104によって実行される命令とを含む。メモリ106はまた、方法および本教示に対応し、プロセッサ104によって実行される命令の実行中に、一時的変数または他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータ・システム100は、プロセッサ104への静的情報および命令を記憶するバス102に接続されている読取り専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶装置をさらに含む。たとえば、固体ディスク、磁気ディスク、または光ディスクであるがこれらに限定されない記憶装置110が設けられており、情報および命令を記憶するためにバス102に接続されている。
【0020】
コンピュータ・システム100は、バス102を介して、陰極線管(CRT)または液晶式表示装置(LCD)などであるがこれらに限定されないディスプレイ112に、コンピュータユーザへの情報を表示するために接続されていてもよい。ユーザ入力装置114は、英数字および他のキーを含み、プロセッサ104に情報およびコマンド選択を伝達するためにバス102に接続されている。ユーザ入力装置の別のタイプは、たとえばマウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどであるが、これらに限定されないカーソル制御部116であり、プロセッサ104に方向情報およびコマンド選択を伝達し、かつディスプレイ112上でカーソル移動を制御する。この入力装置は、一般的に、2軸、すなわち第1の軸(xなど)および第2の軸(yなど)に2つの自由度を有し、この装置が平面上の位置を特定することができる。
【0021】
本教示の特定の実施形態に一貫して、メモリ106に含まれている1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ104に対応して、コンピュータ・システム100によって実験室用機器の設定およびキャリブレーションを実行することができる。このような命令は、記憶装置110などの別のコンピュータ可読媒体からメモリ106に読み込まれてもよい。メモリ106に含まれている命令のシーケンスを実行することによって、プロセッサ104が本願明細書に記載されているプロセスの状態を実行する。あるいは、ハードワイヤード回路を、ソフトウェア命令の代わりに、あるいはそれと組み合わせて使用して、本教示を実施してもよい。したがって、本教示の実施は、ハードウェア回路とソフトウェアとの任意の特定の組合せに限定されるものではない
【0022】
「コンピュータ可読媒体」という本明細書で用いられる用語は、実行するためにプロセッサ104に命令を送ることに関与する任意の媒体を指す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体などを含むが、これらに限定されない多くの様態を取ってもよい。不揮発性媒体は、記憶装置110などの光学ディスクや磁気ディスクを含んでいてもよいが、これらに限定されない。揮発性媒体は、メモリ106などの動的メモリを含んでいてもよいが、これに限定されない。伝送媒体は、バス102を備えたワイヤを含む同軸ケーブル、銅線、およびファイバー・オプティクスを含んでいてもよいが、これらに限定されない。伝送媒体はまた、電波および赤外線のデータ通信中に発生する音波または光波という形をとることもできる。
【0023】
たとえば、コンピュータ可読媒体の共通の様態は、以下を含んでいてもよいが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、またはその他の磁気媒体、CDROM、他のいかなる光媒体、せん孔カード、紙テープ、孔のパターンを備えたその他の物理的媒体、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、プログラマブル読出し専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読出し専用メモリ(EPROM)、消去可能なプログラマブル読出し専用フラッシュメモリ(FLASH−EPROM)、USBドライブ、ジャンプ・ドライブ、またはその他のメモリチップ、またはカートリッジ、搬送波、またはコンピュータ可読のその他の媒体。
【0024】
コンピュータ可読媒体のさまざまな様態は、プロセッサ104への1つ以上の命令のうちの1つ以上のシーケンスを実行するために行うことに関係していてもよい。たとえば、命令は、遠隔コンピュータの磁気ディスクで最初に伝送されてもよい。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリに読み込ませて、モデムまたはワイヤレス・ネットワークを使用してたとえば電話線を通じて命令を送信してもよい。コンピュータ・システム100に対してローカルなモデムは、電話線に関するデータを受信して、赤外線送信機を使用してそのデータを赤外線信号に変換してもよい。バス102に接続されている赤外線検出器が、赤外線信号に伝送したデータを受信して、そのデータをバス102に位置付けしてもよい。バス102はデータをメモリ106に伝送し、そこからプロセッサ104が命令を検索して実行する。メモリ106が受信した命令は、プロセッサ104による実行の前後のどちらかで、記憶装置110に任意選択的に記憶されてもよい。
【0025】
本教示を、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)機器を参照しつつ記載する。特に、本教示の実施形態は、ウェル・プレートの光学イメージングを利用するRT−PCR機器に対して実施される。この種の機器は、分析目的のために、複数の試料またはスポットからシグナルを同時に、または順次に、測定することが可能となり得るものであり、たいてい、キャリブレーションを必要とする。このキャリブレーションは以下に関するプロセスを含むが、これらに限定されない:ROI(関心領域)を識別することと、多成分分析のために、バックグラウンド・シグナル、均一性、および純色素スペクトル・キャリブレーションを測定すること。キャリブレーションはまた、予想される結果を備えた既知のサンプル・プレートを使用した、RT−PCR確認反応を含んでいてもよい。当業者が理解するであろうことは、本教示がRT−PCR機器に関する例を用いて記載されてきたが、それらの原理は、結果の精度および/または最適性を確実にするためにキャリブレーションおよび確認が必要となり得る実験室用機器の他の様態に、広く適用可能であることである。
【0026】
本教示は、RT−PCR機器システムに適用可能である。このようなRT−PCR機器は、当業者に周知である。たとえば、本教示は、Applied Biosystems社のSequence Detection Systems 7500/ 7900/ViiA7、およびQuant Studio systems、Roche Applied Science社のLightCycler(登録商標)2.0 PCR増幅検出システム、Bio−Rad社のMyiQ 単色リアルタイムPCR検出システム、およびStratagene社のMx3000P(商標)リアルタイムPCRシステムなどの機器に適用可能であるが、これらに限定されるものではない。このような機器は、一般にイメージング・システムのいくつかの様態を使用する。本教示がCCD(電荷結合素子)イメージング・システムに関連して述べられているが、本教示は、イメージング・システムの任意の様態に容易に適合可能である
【0027】
CCDイメージング・システムを備えたシステムでは、CCDカメラが、PCRの動作中に、さまざまな選択された色素蛍光発光波長で、サンプル・プレート(他の数のウェルを備えたプレートが使用可能であり、あるいは、個々のチューブを含むサンプル・ブロックもまた使用可能であるが、一般的には96ウェル・プレート)をイメージングする。このような機器では、通常、励起光によってそれぞれの色素に適切な波長でウェルが照射される。RT−PCRシステムを使用して、ウェル発光強度を用いたPCR増幅を正確にモニタするために、このシステムは、各色素発光に対してキャリブレーションされなければならない。
【0028】
図2は、本発明の実施態様による、蛍光発光検出に使用されるシステムの概略図である。検出システム200は、本発明の態様と組み合わせてRT−PCRデータの収集および処理に使用可能なスペクトル検出システムの一例である。図示されているように、検出システム200は、励起光源202と、タレット204として描かれている少なくとも1つのフィルタ・タレットと、検出器208と、マイクロウェル・トレイ210と、ウェル・オプティクス212とを含む。タレット204は、特定の色素のために対をなしている複数の励起フィルタ、または複数の放出フィルタ、または複数の励起放出フィルタを含んでいてもよい。図示されるように、タレット204はフィルタ・キューブ206を含む。第1のフィルタ・キューブ206Aは、励起フィルタ214Aと、分光器216Aと、検出されるスペクトルで識別可能な種の組から選択される1つのスペクトル種に対応する放出フィルタ218Aとを含んでいてもよい。第2のフィルタ・キューブ206Bは、励起フィルタ214Bと、分光器216Bと、検出されるスペクトルで識別可能な種の組から選択される異なるスペクトル種に対応する放出フィルタ218Bとを含んでいてもよい。
【0029】
励起光源202は、たとえば以下であってもよいが、これらに限定されない:レーザ、広域スペクトル光源、LED、または、システム200によって検出されるスペクトル種と相互作用する、スペクトルを発光させることのできる他のタイプの励起源。この図示されている例では、光源202は、励起フィルタ214Aまたは励起フィルタ214Bによって濾波され、分光器216Aまたは分光器216Bを通過して1つ以上のスペクトル種を含むマイクロウェル・トレイ210に到達する光の広域スペクトルを発する。
【0030】
光源202が発する光は、励起フィルタ214A、励起フィルタ214B、または1つ以上のスペクトル種に細密に対応している他のフィルタを通って濾波されてもよい。本教示は、たとえば、以下などのスペクトルで識別可能な複数の色素で使用可能であるが、これらに限定されない:FAM、SYBR Green、VIC、JOE、TAMRA、NED、CY−3、Texas Red、CY−5、Mustang Purple、ROX(パッシブ・リファレンス)、または検出されることが可能なシグナルを発するその他の蛍光色素のうちの1つ以上。選択された励起フィルタのターゲット・スペクトル種が最大シグナル反応を示す一方で、他のフィルタの帯域通過領域にあるシグナル強度の低いスペクトル種は、シグナル反応にあまり寄与しない。複数の蛍光色素がこの重複する励起放出スペクトルを有していてもよいので、少量の「クロス・トーク」(1つを超えるフィルタセットで検出される1つの色素からのシグナル)を修正するために純色素マトリックスを適用することは有用である。このプロセスは、たいてい、マルチコンポーネンティングと称されている。
【0031】
以上で示したように、本教示は、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)機器を参照しつつ記載されている。特に、本教示の一実施形態は、サンプル・ウェル・プレートの光学イメージングを利用して、RT−PCR機器に対して実施される。このような機器は、分析目的で複数の試料またはスポットから同時にシグナルを測定することが可能となり得るものであり、たいてい、キャリブレーションを必要とする。キャリブレーションを必要とし得るプロセスの一例は、ROI、すなわち関心領域の識別である。
【0032】
通常、すべてのフィルタに対応しているそれぞれのセルにおいて強い色素発光があるサンプル・ウェル・プレートを使用して、ROIキャリブレーションを実行することが可能である。有用となる得る、というのは、ROIが色素フィルタごとに同じでなくてもよいからである。フィルタ間のROIの差異は、わずかなフィルタの角度差や、他のフィルタのスペクトル特性によって生じる可能性がある。したがって、さまざまな実施形態は、フィルタあたり/ウェルあたり(PFPW)のROIキャリブレーションを実行する。これらのPFPW−ROIキャリブレーションは、各フィルタに対して、96ウェル・プレート、384ウェル・プレート、または3072ウェル・アレイ内のウェルの位置を決定するのに有用である。ROIキャリブレーションは、米国特許第6,518,068号にて説明されているようなAdaptive Mask Making社の教示などの方法を使用して実行可能であり、米国特許第6,518,068号はその全体が参照により本願明細書に組み込まれている。本教示は、ユーザの相互干渉を最小化するかなくすことにより、ROIキャリブレーションを自動化することができる。さまざまな実施形態が、たとえばヒストグラム解析やバイナリー・サーチパターンを使用してフィルタあたりの最適露光時間を決定することが可能なソフトウェアを提供することによって、プロセスを自動化することができる。露光時間は、サンプル・ウェル・プレートの画像を取得するのに必要な時間である。さらに、この値は、フィルタのスペクトル特性によって可変である。通常、ROIキャリブレーションは、検出器の視野におけるウェルの位置を定義する情報を生成することができる。この情報は、グローバル・マスクまたは異なるフィルタに対応する複数マスクのどちらかを備えるマスク・ファイルとして記憶可能である。
【0033】
上述のようなキャリブレーション・プロセスは、たとえば、行列のプロジェクションおよび強度プロファイルを使用してもよい。このことは、結果として、ROIの測定が、これらに限定されないが、たとえばアーチファクトおよびウェル内部の飽和度、グリッド回転、拡大倍率の変化および径方向の光学的歪みの影響を受けやすくなり得る。したがって、ROIをより頑健性をもって測定して、このような感受性を最小限に抑え、たとえば検出された発光データ中の歪みや他の不必要なバックグラウンド・ノイズを除去することが有利となり得る。
【0034】
バックグラウンド・ノイズは、たとえば、固有のシステム・ノイズならびに他の不必要なシグナルを示す。たとえば、データにおけるバックグラウンド・ノイズのいくつかは、ダスト粒子またはすりきずなどの基板上の物理的原因に起因する可能性がある。バックグラウンド・ノイズが生じる別の物理的原因例は、ホルダや、ケースの保持またはサンプルの封入である。データ内の他のバックグラウンド・ノイズは、反射や自然蛍光などの、機器の表面からの自然な放射線に起因する可能性がある。他のバックグラウンド・ノイズもまた、たとえば発光データを検出する光学系または光源から生じる結果となる可能性がある。
【0035】
この生物系は、数百または数千の試料を検出していてもよく、これらはすべて、1ナノリットル未満など極めて体積が小さくてもよい。よって、他のバックグラウンド・ノイズの除去方法は、単独で使用されてもよく、または、この文献に記載されているさまざまな実施形態によるキャリブレーション方法と組み合わせて使用されてもよく、サンプル体積から発光データを測定し分析することができる。いくつかの実施形態では、サンプルの位置を基板内でより正確に決定して、より正確な分析を実行することが可能である。たとえば、ディジタルPCR分析では、サンプル体積の反応対非反応をより正確に区別することができることによって、より正確な結果が得られる。さらに、本願明細書において記載されているさまざまな実施形態によると、空のウェルまたはスルーホールを、反応しなかったウェルまたはスルーホール内のサンプル体積と区別してもよく、反応したウェルまたはスルーホール内のサンプル体積と区別してもよい。
【0036】
本願明細書において記載されているさまざまな実施形態によれば、バックグラウンド・ノイズ除去は、画像データの分析および処理を含んでいてもよい。この方法は、画像データの強度値を分析して、基板の画像から除去され得るバックグラウンド・ノイズを補間することを含んでいてもよい。このようにして、画像内の関心領域の位置を測定してもよい。バックグラウンド・ノイズ除去が、関心領域を含むと知られている画像の領域からデータを補間することを含んでいてもよい。画像にわたりバックグラウンド・ノイズを決定した後に、バックグラウンド・ノイズを画像データから差し引いてもよい。当業者には明らかなように、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを使用してさまざまな実施形態を適宜実施されてもよい。たとえば、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードワイヤード・ロジックの制御下で、プロセッサまたは他のディジタル回路を用いて、いくつかのプロセスを実行することができる。(列挙された機能を実行するために当業者によって認識されるであろうように、本願明細書での「ロジック」という用語は、固定ハードウェア、プログラマブル・ロジック、および/またはそれらの適切な組み合わせに関する。)すでに定義されているように、ソフトウェアおよびファームウェアは、コンピュータ可読媒体に記憶されることができる。当業者にとって周知のように、いくつかの他のプロセスは、アナログ回路を使用して実施可能である。加えて、メモリまたは他の記憶装置、ならびに伝送要素を本発明の実施形態で利用してもよい。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態による例示的なインシリコ方法30を示す図である。インシリコ方法300は、コンピュータ可読フォーマットにおける、バイオテクノロジ・プロセス用サブルーチンを含んでいてもよい複数の設定ワークフロー・サブルーチンを含む。
図3は、単なる例示的方法であり、当業者は、この開示の観点から、理解するであろうことは、サブルーチンの実際の数が、少なくとも2つのサブルーチンから多数まで(たとえば2−10、2−20、2−30、2−n(ただし、nは3−100、3−1000などの任意の数のサブルーチンであってもよい))可変なことである。各設定サブルーチン310〜370は、単一のステップまたはタスクを含んでいてもよく、あるいは、コンピュータ可読フォーマットにも、任意選択的に、1つを超えるステップまたはタスクを含んでいてもよく、各ステップは、さらなる任意選択的なカスタマイズ可能なステップまたはタスクをさらに含んでいてもよい。任意選択的/カスタマイズ可能なステップまたはタスクのそれぞれは、1つ以上の任意選択的パラメータ(オプション)を有していてもよく、このパラメータは、ユーザが確認したり見直したり設定したりカスタマイズすることができる。いくつかの実施形態では、本発明のインシリコ方法は、グラフィック・ユーザ・インタフェース(GUI)を使用して、バイオテクノロジ・プロセスの各任意選択/カスタマイズ可能なステップのそれぞれに対する少なくとも1つのパラメータをユーザによって選択して、任意選択/カスタマイズ可能なステップごとに少なくとも1つのパラメータを選択することを含む。特定の実施形態では、ワークフローのサブルーチンのあらゆるステップおよびあらゆるパラメータは、確認し、任意選択的に編集するために、ユーザが利用可能である。従来技術において周知であるように、バイオテクノロジ・プログラムは、一般的に、これらのパラメータおよび/またはステップのいくつかをユーザから見えなくしており、それによって、特にコンピュータで設計された実験結果がユーザの予想した結果でない場合に、ユーザのフラストレーションを引き起こし、役に立たなくなる。
【0038】
図3において概略的に示されている本開示のインシリコ方法は、以下によって、実行、実施、または履行することができる:コンピュータ・システム内の少なくとも1つの方法ファイルを生成することであって、この方法ファイルは、カスタマイズ可能な工程(A、B、C)の複数のサブルーチン(10、20、30..)に対するコンピュータ可読命令を含み、その工程はそれぞれ、たとえば、調査したり選択したり変更したり入力したりできる1つ以上のパラメータを有していてもよく;コンピュータ・システムによるコンピュータ可読命令を備えた少なくとも1つの方法ファイルを実行することを含むインシリコでのバイオテクノロジ・プロセスを実施して、少なくとも1つのバイオテクノロジ生成物を得ること。
【0039】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのカスタマイズ可能/任意選択的パラメータは、デフォルトパラメータから選択され、このデフォルトパラメータは、コンピュータ・システムの構成要素(記憶装置、データベースなど)に記憶されている。
【0040】
再度
図3を参照する。ROI位置を算出する第1の工程は、初期ROIの中心をステップ310の蛍光閾値から推定することである。複数の生体試料を含むよう構成されているサンプル・プレートを設け、PCR処理によって生体試料を分析することが可能な分析機器に挿入する。各生体試料がサンプル・ウェルに含まれおり、光源によって励起することができ、励起に反応して、所定の波長で蛍光を発することができ、この波長は蛍光検出器によって検出可能である。
図2に関して上述したように、光源202は、レーザ、LED、または、システム200によって検出されるスペクトル種と相互作用するスペクトルを発光することが可能な他のタイプの励起源であってもよい。加えて、生体試料は、FAM、SYBR Green、VIC、JOE、TAMRA、NED、CY−3、Texas Red、CY−5、ROX(パッシブ・リファレンス)、または検出可能なシグナルを発するその他の蛍光色素のうちの1つ以上など、スペクトルで識別可能な色素を含んでいてもよい。
【0041】
生体試料を励起させる前に、入力パラメータおよびアルゴリズム・パラメータを設定して、ROI測定の開始点を設ける。入力パラメータは、たとえば、以下を含んでいてもよいが、以下に制限されない:閾値の範囲およびステップ、ウェルのサイズ、ウェルの中心間距離、サブアレイ間の間隔、ミリメータあたりの光学画素、およびプレート・レイアウト。プレート・レイアウトは、ウェルの総数およびサンプル・ウェルの構成を含んでいてもよい。頻繁に使用される構成は、複数行および複数列を含む矩形アレイあってもよいが、当業者が理解するであろうことは、この構成は、使用されている機器に適した任意の幾何学的形状であってもよいということである。さらに、ウェルの総数は可変である。当業者は、単一のサンプル・プレートまたはサンプル封入構造において合計で1つウェルから何千のウェルまでになる構成に精通しているであろう。このROIを求めるアルゴリズム・パラメータは、ウェルのサイズ、ウェルの中心間距離、および最小真円度に対する許容範囲を設定することができる。真円度は、算出値であり、たとえば外周と面積の比であってもよい。
【0042】
一度入力パラメータおよびアルゴリズム・パラメータを決定すると、複数の試料を適切な光源からのエネルギによって励起することができ、サンプル・プレート内の各サンプル・ウェルから発される蛍光イメージを収集することができる。サンプル・プレートの蛍光イメージをさらに分析して、入力パラメータおよびアルゴリズム・パラメータに基づいて、ROI候補を選択することができる。パラメータを満たすROI候補は、さらに分析するために保存することが可能であり、各ウェルのサイズおよび真円度をステップ320で測定する。パラメータを満たさないROI候補は、蛍光を発しなかった任意の位置とともに破棄可能である。この保持されたROI候補をさらに評価して、ウェル間の間隔パラメータおよびウェル間の間隔に対する許容範囲パラメータに基づいて、ROI間の距離を測定することができる。ROIには、ウェル間のパラメータに基づいて互いに近接している中心があるが、同じサンプル・ウェルであると考えることができ、最良の真円度を有するものをそのウェルのROIとして選択する。一度すべてのROI候補を測定すると、平均的ウェル・サイズを計算することができ、その平均値は、ステップ330で各サンプル・ウェルROIに割当てることができ、初期推定ROIを保存することができる。
【0043】
予想されるウェル位置をグリッド・パターンに配置することができる。グリッド・パターンは、プレート・レイアウト・パラメータに基づいて決定可能である。このパラメータは、ウェル数、および、プレートまたはサブアレイにおける列の数および行の数を含んでいてもよい。このプレートまたはサブアレイでは、各ウェルがプレート・レイアウト・パラメータに基づいて予想される1組のXYグリッド座標を有する。ここで、初期推定ROIのさらなる分析を開始して、各々初期ROIの位置をより正確に定義してもよく、広域グリッディング(global gridding)と称されてもよい。広域グリッディングの第1の工程は、初期推定ROIの中心を分析して、隣接するROIを求めることである。このことは、プレート・レイアウトに基づいて、ROI間の中心間距離とグリッド座標とを比較することで測定可能である。ついで、ROI間の空間的関係に基づいて、XYグリッド座標を初期推定ROIのそれぞれに関して測定することができる。
【0044】
ROI位置の精度を向上させるために、有利となり得るのは、中心間ROI座標をプレート・レイアウトのグリッド座標と関連付けることである。このことは、マッピング関数を決定し適用することによって、達成可能である。マッピング関数は、1対の多項式二次関数である。これらの関数は、X(またはY)グリッド位置をX(またはY)方向のROI中心位置にマップするために算出される。一度マッピング関数が決定されると、これらを予想されるグリッド座標に適用していくつかの利益をもたらすことができる。まず、ROI中心位置の精度を向上させることができる。第2に、初期ROIを求める間に見落としていたROIを回復することができ、イメージ内のウェル間の中心距離を計算することができ、これを、イメージ内の実際のウェルのサイズを測定するのに使用可能である。
【0045】
ROIのさらに調整することによって、光学的性能にさらなる利益をもたらすことができる。発明者らが発見したのは、ROIのサイズと光学系のシグナル対ノイズ比(SNR)と間にある関係が存在したことである。当業者が知っているであろうことは、電気光学系のSNRを計算する数学的関数がいくつかあることである。この発明者らは、以下の方程式1を用いてSNRを特徴づけた。
【数1】
ただし、SNR=シグナル対ノイズ比
S
dye plate=S
dye
S
BG=バックグラウンド・イメージからのROI内の全画素強度合計
S
dye=色素画像からのROI内の全画素強度合計
N=ROI内の画素数
offset=カメラオフセット
G=カメラ利得
δ
2R,y=リードノイズ
【0046】
6対のフィルタを含む光学系を使用して、実験を行った。各フィルタ対は、励起フィルタ(Xn)および放出フィルタ(Mn)を含むものであった。各フィルタは、PCRプロセスと互換性のあるように構成されている蛍光色素に対応する励起周波数および放射周波数に対応する狭波長帯に対して感受性が高かった。さらに、この文献で示されている教示に従って、ROIを最適化した。シグナル対ノイズへのROIサイズの効果を研究するために、6対のフィルタを使用して、96ウェルサンプル・プレートから蛍光を検出した。各ROIの半径を、逐次1画素だけ伸張した。等式1を使用して、6つのフィルタ対のそれぞれと各画素増分とに対するSNRを計算した。実験の結果を、下記に表1で示す:
【表1】
太字の記載は、6つのフィルタ対のそれぞれに対する最大SNRを特定し、半径を2画素伸張(△R=2)すると、6つのフィルタ対全体にわたりSNRが全体的に約6%改良される。
【0047】
図4は、96ウェル410を有するサンプル・プレートの画像を示す。96ウェル410のそれぞれが、蛍光イメージを生成した。この文献の教示を適用した後、ROIを最適化した。青い円が、ウェル位置ごとにROIを識別する。本教示のロバストネスをテストするために、いくつかのテストケースを行った。
【0048】
テストケース1を、
図5に示す。ROIチャネル画像を手動で1度だけ反時計回りに回転し、ROIの教示をこの画像に適用した。
図5の結果が示しているのは、回転にもかかわらず、ROIアルゴリズムが96個のROIすべてを位置決めしたことである。
【0049】
テストケース2が
図6に示されており、照光が不均一であり光学的ひずみのために、3072個のウェル位置を備えたアレイに対するROIの測定の失敗を描いている。ROIの位置合わせの失敗は、ROIの列の右側への屈曲として画像の最上部に見られる。同じ画像が、本文献において教示されるアルゴリズムに送られ、その結果が
図7に示されている。明らかに理解されるのは、本発明の本教示が前に
図6で示す歪みを修正したことである。ROI位置の精度もまた、
図8に描かれている。
【0050】
本願明細書および添付の特許請求の範囲のために、特に明記しない限り、成分量、材料の百分率または比率、反応条件を表現するすべての数、および明細書および請求項において使用される他の数値は、すべての例において「約」という用語によって修飾されていると理解するべきである。したがって、反対に示さなければ、明細書および添付の請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明によって得られるべき所望の特性に依存して変動し得る概数である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用に制限しようとするのではなく、報告される有効数字の数を考慮し、通常の端数計算技術を適用することによって、各数値パラメータを少なくとも解釈するべきである。
【0051】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲および数値パラメータが概数であるにもかかわらず、特定例に記載される数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、あらゆる数値は、本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含有するものである。さらに、本願明細書において開示されるすべての範囲は、そこに包含される任意のあらゆるサブ範囲を含むと理解されるべきである。たとえば、「1〜10」の範囲は、最小値の1と最大値の1との間の(およびそれを含む)ありとあらゆるサブ範囲を含む、すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有するすべてのサブ範囲を含み、たとえば5.5〜10である。
【0052】
留意されたいのは、本願明細書および添付の特許請求の範囲において用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」が、明示的かつ明確に1つの指示物に制限されない限り、複数の指示物を含むことである。したがって、たとえば、「モノマー」に対する言及には、2つ以上のモノマーを含む。
【0053】
当業者には、本願明細書に記載されているさまざまな実施形態に対して、本願明細書の教示の精神または範囲から逸脱することなくさまざまな改変、変更、および最適化をなし得ることが明らかであろう。したがって、本願明細書に記載されているさまざまな実施形態は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内における他の改変、変更、および最適化を網羅すると企図される。