(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543352
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】動的な海中電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/14 20060101AFI20190628BHJP
H01B 9/02 20060101ALI20190628BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
H01B7/14
H01B9/02 Z
H01B7/18 D
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-552829(P2017-552829)
(86)(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公表番号】特表2018-512715(P2018-512715A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2015057795
(87)【国際公開番号】WO2016162076
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】517180578
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ ゲーエムべーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パーシュバリ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】テュルベリ, アンドレアス
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−038940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的な海中電力ケーブル(1)であって、
第1の心線(5a)と、
前記第1の心線(5a)の周りに配置される第1の絶縁システム層(7a)と、
前記第1の絶縁システム層(7a)の周りに配置される第1のシース(11a)と、
前記第1の絶縁システム層(7a)と前記第1のシース(11a)との間に配置される第1のスクリーン層(9a)であって、各々が第1の直径(D1)を有する複数の第1のスクリーンワイヤ(13a)、および、各々が前記第1の直径(D1)より大きい第2の直径(D2)を有する複数の第1のポリマーワイヤ(15a)を備える、第1のスクリーン層(9a)と、
を備え、
前記第1のスクリーンワイヤ(13a)および前記第1のポリマーワイヤ(15a)が、前記第1の心線(5a)の軸方向に沿って前記第1の絶縁システム層(7a)の周りに螺旋状に配置され、
前記動的な海中電力ケーブル(1)の任意の断面において、前記第1のスクリーンワイヤ(13a)および前記第1のポリマーワイヤ(15a)が、前記第1の絶縁システム層(7a)の周囲部に沿って互い違いに配置され、前記第1のスクリーンワイヤ(13a)のうちの任意の第1のスクリーンワイヤ(13a)の中心軸と前記第1の心線(5a)の中心軸との間の径方向距離(d1)が、前記第1のポリマーワイヤ(15a)のうちの任意の第1のポリマーワイヤ(15a)の中心軸と前記第1の心線(5a)の中心軸との間の径方向距離(d2)より小さい、
動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項2】
各第1のポリマーワイヤ(15a)が、前記第1の絶縁システム層(7a)および前記第1のシース(11a)の両方に同時に当接する、請求項1に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項3】
第1のスクリーンワイヤ(13a)の数が、第1のポリマーワイヤ(15a)の数に等しい、請求項1または2に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項4】
前記第2の直径(D2)が、前記第1の直径(D1)より少なくとも1.2倍大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項5】
各第1のスクリーンワイヤ(13a)が、金属製である、請求項1から4のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項6】
各第1のポリマーワイヤ(15a)が、ポリマー材料から構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項7】
第2の心線(5b)と、
前記第2の心線(5b)の周りに配置される第2の絶縁システム層(7b)と、
前記第2の絶縁システム層(7b)の周りに配置される第2のシース(11b)と、
前記第2の絶縁システム層(7b)と前記第2のシース(11b)との間に配置される第2のスクリーン層(9b)であって、各々が前記第1の直径(D1)を有する複数の第2のスクリーンワイヤ(13b)、および、各々が前記第2の直径(D2)を有する複数の第2のポリマーワイヤ(15b)を備える、第2のスクリーン層(9b)と、
を備え、
前記第2のスクリーンワイヤ(13b)および前記第2のポリマーワイヤ(15b)が、前記第2の心線(5b)の軸方向に沿って前記第2の絶縁システム層(7b)の周りに螺旋状に配置され、
前記動的な海中電力ケーブル(1)の任意の断面において、前記第2のスクリーンワイヤ(13b)および前記第2のポリマーワイヤ(15b)が、前記第2の絶縁システム層(7b)の周囲部に沿って互い違いに配置され、前記第2のスクリーンワイヤ(13b)のうちの任意の第2のスクリーンワイヤ(13b)の中心軸と前記第2の心線(5b)の中心軸との間の径方向距離(d1)が、前記第2のポリマーワイヤ(15b)のうちの任意の第2のポリマーワイヤ(15b)の中心軸と前記第2の心線(5b)の中心軸との間の径方向距離(d2)より小さい、
請求項1から6のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項8】
各第2のポリマーワイヤ(15b)が、前記第2の絶縁システム層(7b)および前記第2のシース(11b)の両方に同時に当接する、請求項7に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項9】
第2のスクリーンワイヤ(13b)の数が、第2のポリマーワイヤ(15b)の数に等しい、請求項7または8に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項10】
各第2のスクリーンワイヤ(13b)が、金属製である、請求項7から9のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項11】
各第2のポリマーワイヤ(15b)が、ポリマー材料から構成される、請求項7から10のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項12】
第3の心線(5c)と、
前記第3の心線(5c)の周りに配置される第3の絶縁システム層(7c)と、
前記第3の絶縁システム層(7c)の周りに配置される第3のシース(11c)と、
前記第3の絶縁システム層(7c)と前記第3のシース(11c)との間に配置される第3のスクリーン層(9c)であって、各々が前記第1の直径(D1)を有する複数の第3のスクリーンワイヤ(13c)、および、各々が前記第2の直径(D2)を有する複数の第3のポリマーワイヤ(15c)を備える、第3のスクリーン層(9c)と、
を備え、
前記第3のスクリーンワイヤ(13c)および前記第3のポリマーワイヤ(15c)が、前記第3の心線(5c)の軸方向に沿って前記第3の絶縁システム層(7c)の周りに螺旋状に配置され、
前記動的な海中電力ケーブル(1)の任意の断面において、前記第3のスクリーンワイヤ(13c)および前記第3のポリマーワイヤ(15c)が、前記第3の絶縁システム層(7c)の周囲部に沿って互い違いに配置され、前記第3のスクリーンワイヤ(13c)のうちの任意の第3のスクリーンワイヤ(13c)の中心軸と前記第3の心線(5c)の中心軸との間の径方向距離が、前記第3のポリマーワイヤ(15c)のうちの任意の第3のポリマーワイヤ(15c)の中心軸と前記第3の心線(5c)の中心軸との間の径方向距離より小さい、
請求項7から11のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項13】
各第3のポリマーワイヤ(15c)が、前記第3の絶縁システム層(7c)および前記第3のシース(11c)の両方に同時に当接する、請求項12に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項14】
第3のスクリーンワイヤ(13c)の数が、第3のポリマーワイヤ(15c)の数に等しい、請求項12または13に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項15】
各第3のスクリーンワイヤ(13c)が、金属製である、請求項12から14のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項16】
各第3のポリマーワイヤ(15c)が、ポリマー材料から構成される、請求項12から15のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項17】
前記第1のシース(11a)が、第1のコア(3a)の一部分を形成し、前記第2のシース(11b)が、第2のコア(3b)の一部分を形成し、前記第3のシース(11c)が、第3のコア(3c)の一部分を形成し、前記動的な海中電力ケーブル(1)が、
複数の外装ワイヤ(21)を備える外装層(19)と、
3つのフィラーデバイス(17)であって、各フィラーデバイス(17)が、前記第1のコア(3a)、前記第2のコア(3b)および前記第3のコア(3c)のそれぞれの対の隣接するコアの間に配置され、前記外装層(19)が、前記第1のコア(3a)、前記第2のコア(3b)、前記第3のコア(3c)および前記3つのフィラーデバイス(17)の周りに配置される、3つのフィラーデバイス(17)と、
前記外装層(19)の周りに配置される外側シース(23)と
を備える、
請求項12から16のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【請求項18】
前記動的な海中電力ケーブル(1)が、中電圧電力ケーブルまたは高電圧電力ケーブルである、請求項1から17のいずれか一項に記載の動的な海中電力ケーブル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電力ケーブルに関する。詳細には、本開示は、動的な
海中電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
海中電力ケーブルは、概して、心線および電気絶縁システムを備える。この種類の電力ケーブルは、地絡電流(earth fault)、ならびに、容量性電流および漏洩電流を運搬するための、電気絶縁システムの周りに配置されるスクリーンをさらに備えることができる。金属シースを備えない中電圧ケーブルの場合、螺旋状に配置される銅線または重なり合う銅テープがスクリーンとして通常は使用される。
【0003】
海中電力ケーブルは、動的な用途で利用されるように設計され得、その場合、ケーブルは、その使用期間において繰り返し曲げられる。動的な
海中電力ケーブルは、例えば、海洋構造物から海の中へと吊設され得る。したがって、
海中電力ケーブルは、波によって誘発される曲げ力、および多様な程度の張力に晒されることになる。したがって、スクリーンが疲労応力に晒されることになる。疲労応力の大きさは、スクリーンのデザイン、スクリーンと周りの層との間の接触力および摩擦係数によって決定される。各コア上の接触力は、ケーブル内の張力、シースからの径方向の圧力、および、ベンドスティフナまたはベルマウスなどの周りの構造との接触によって決定される。
【0004】
疲労応力が大きすぎる場合、スクリーンが疲労破損することになる。これにより、さらに、スクリーンが設けられずに露出しているエリアでコロナ放電が起こる可能性があり、最終的に電気絶縁システムが破壊される可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
スクリーンワイヤが螺旋形状であることにより、
海中電力ケーブルが曲げられるときに生じる軸方向の応力を解放するためにスクリーンワイヤが滑ることが可能となる。曲げにより生じるスクリーンワイヤ内の主な応力は、1)スクリーンワイヤの曲げを原因とする局所的な曲げ応力、および、2)電力ケーブルが曲げられるときに螺旋のスクリーンワイヤのスティックスリップ挙動により生じる摩擦応力、である。スクリーンワイヤの直径は比較的小さく、したがって、ワイヤの曲げ応力がワイヤ内の疲労応力に有意に寄与することがない。ワイヤ上の接触力および摩擦係数に関連する摩擦応力は曲げ応力と比較して有意に大きい。その理由は、これらがコアの中心からスクリーンワイヤまでの径方向の距離に関連するからである。したがって、スクリーンワイヤの疲労寿命に関しては、局所的な曲げ応力よりも摩擦応力がより重要である。摩擦応力は、スクリーンワイヤ上の接触力が大きくなるにつれて増大する。スクリーンワイヤ上の接触力は、例えばケーブル内の張力が大きくなることを原因としてコア上の力が大きくなるにつれて、増大する。
【0006】
上記に鑑みて、本開示の一目的は、従来技術の問題を解決すること、または少なくとも軽減することである。
【0007】
したがって、本開示の第1の態様によると、動的な
海中電力ケーブルであって、第1の心線と、第1の心線の周りに配置される第1の絶縁システム層と、第1の絶縁システム層の周りに配置される第1のシースと、第1の絶縁システム層と第1のシースとの間に配置される第1のスクリーン層であって、各々が第1の直径を有する複数の第1のスクリーンワイヤ、および、各々が第1の直径より大きい第2の直径を有する複数の第1のポリマーワイヤを備える、第1のスクリーン層と、を備え、第1のスクリーンワイヤおよび第1のポリマーワイヤが、第1の心線の軸方向に沿って第1の絶縁システム層の周りに螺旋状に配置され、動的な
海中電力ケーブルの任意の断面において、第1のスクリーンワイヤおよび第1のポリマーワイヤが、第1の絶縁システム層の周囲部に沿って互い違いに配置され、第1のスクリーンワイヤのうちの任意の第1のスクリーンワイヤの中心軸と第1の心線の中心軸との間の径方向距離が、第1のポリマーワイヤのうちの任意の第1のポリマーワイヤの中心軸と第1の心線の中心軸との間の径方向距離より小さい、動的な
海中電力ケーブルが提供される。
【0008】
第1のポリマーワイヤの直径を基準としてより小さい直径の第1のスクリーンワイヤにより達成可能となり得る効果は、第1のスクリーンワイヤが受けることになる径方向の接触力の方が小さく、したがって摩擦応力が低減されることである。これは具体的には、より大きい直径の第1のポリマーワイヤの位置の結果として、第1のスクリーンワイヤが第1のシースに接触しないことが理由である。したがって、第1のポリマーワイヤが、任意の径方向の力の大部分をコアに伝達することになる。ポリマーは、大きいひずみに耐えることができるということに関して、遮蔽するための手段として機能する金属スクリーンワイヤと比較して高い機械的強度を有する。そのため、第1のスクリーンワイヤの疲労破損のリスクが大きく低減される。
【0009】
動的な
海中電力ケーブルというのは、その使用期間全体で動的負荷に一定して対処するように設計される電力ケーブルを意味する。対照的に、静的な電力ケーブルというのは、ケーブル配置プロセス中には動的負荷に対処するように設計されるが、それらの使用期間中には動的負荷に対処しない。
【0010】
一実施形態によると、各第1のポリマーワイヤが、第1の絶縁システム層および第1のシースの両方に同時に当接する。
【0011】
一実施形態によると、第1のスクリーンワイヤの数が、第1のポリマーワイヤの数に等しい。
【0012】
一実施形態によると、第2の直径が、第1の直径より少なくとも1.2倍大きい。
【0013】
一実施形態によると、各第1のスクリーンワイヤが、金属製である。
【0014】
一実施形態によると、各第1のポリマーワイヤが、ポリマー材料から構成される。
【0015】
一実施形態は、第2の心線と、第2の心線の周りに配置される第2の絶縁システム層と、第2の絶縁システム層の周りに配置される第2のシースと、第2の絶縁システム層と第2のシースとの間に配置される第2のスクリーン層であって、各々が前記第1の直径を有する複数の第2のスクリーンワイヤ、および、各々が前記第2の直径を有する複数の第2のポリマーワイヤを備える、第2のスクリーン層と、を備え、第2のスクリーンワイヤおよび第2のポリマーワイヤが、第2の心線の軸方向に沿って第2の絶縁システム層の周りに螺旋状に配置され、動的な
海中電力ケーブルの任意の断面において、第2のスクリーンワイヤおよび第2のポリマーワイヤが、第2の絶縁システム層の周囲部に沿って互い違いに配置され、第2のスクリーンワイヤのうちの任意の第2のスクリーンワイヤの中心軸と第2の心線の中心軸との間の径方向距離が、第2のポリマーワイヤのうちの任意の第2のポリマーワイヤの中心軸と第2の心線の中心軸との間の径方向距離より小さい。
【0016】
一実施形態によると、各第2のポリマーワイヤが、第2の絶縁システム層および第2のシースの両方に同時に当接する。
【0017】
一実施形態によると、第2のスクリーンワイヤの数が、第2のポリマーワイヤの数に等しい。
【0018】
一実施形態によると、各第2のスクリーンワイヤが、金属製である。
【0019】
一実施形態によると、各第2のポリマーワイヤが、ポリマー材料から構成される。
【0020】
一実施形態は、第3の心線と、第3の心線の周りに配置される第3の絶線システム層と、第3の絶縁システム層の周りに配置される第3のシースと、第3の絶縁システム層と第3のシースとの間に配置される第3のスクリーン層であって、各々が前記第1の直径を有する複数の第3のスクリーンワイヤ、および、各々が前記第2の直径を有する複数の第3のポリマーワイヤを備える、第3のスクリーン層と、を備え、第3のスクリーンワイヤおよび第3のポリマーワイヤが、第3の心線の軸方向に沿って第3の絶縁システム層の周りに螺旋状に配置され、動的な
海中電力ケーブルの任意の断面において、第3のスクリーンワイヤおよび第3のポリマーワイヤが、第3の絶縁システム層の周囲部に沿って互い違いに配置され、第3のスクリーンワイヤのうちの任意の第3のスクリーンワイヤの中心軸と第3の心線の中心軸との間の径方向距離が、第3のポリマーワイヤのうちの任意の第3のポリマーワイヤの中心軸と第3の心線の中心軸との間の径方向距離より小さい。
【0021】
一実施形態によると、各第3のポリマーワイヤが、第3の絶縁システム層および第3のシースの両方に同時に当接する。
【0022】
一実施形態によると、第3のスクリーンワイヤの数が、第3のポリマーワイヤの数に等しい。
【0023】
一実施形態によると、各第3のスクリーンワイヤが、金属製である。
【0024】
一実施形態によると、各第3のポリマーワイヤが、ポリマー材料から構成される。
【0025】
一実施形態によると、第1のシースが、第1のコアの一部分を形成し、第2のシースが、第2のコアの一部分を形成し、第3のシースが、第3のコアの一部分を形成し、動的な
海中電力ケーブルが、複数の外装ワイヤ(armouring wire)を備える外装層(armouring layer)と、3つのフィラーデバイスであって、各フィラーデバイスが、第1のコア、第2のコアおよび第3のコアのそれぞれの対の隣接するコアの間に配置され、外装層が、第1のコア、第2のコア、第3のコアおよび3つのフィラーデバイスの周りに配置される、3つのフィラーデバイスと、外装層の周りに配置される外側シースと、を備える。
【0026】
一実施形態によると、動的な
海中電力ケーブルは、中電圧電力ケーブルまたは高電圧電力ケーブルである。
【0027】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書において、特に明確に定義しない限り、本技術分野でのそれらの一般的な意味に従って解釈されるものとする。「ある/1つの/その要素、装置、構成要素、手段など」へのあらゆる言及は、特に明記しない限り、要素、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例に言及するものとして、オープンに解釈されるものとする。
【0028】
次に、添付図面を参照して、例として、本発明の概念の特定の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】3つのコアを有する動的な
海中電力ケーブルの断面の約120度の一部分を示す図である。
【
図2】
図1の動的な
海中電力ケーブルのコアのうちの1つのコアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、以下で、例示の実施形態を示している添付図面を参照して、本発明の概念をより完全に説明する。しかし、本発明の概念は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書に明記される実施形態のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的で完全なものとし、本開示により本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供されるものである。本記述を通して、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0031】
本開示は、その使用期間全体で動的負荷に対処するように設計される動的な
海中電力ケーブルに関連する。動的な
海中電力ケーブルは標準の動的な
海中電力ケーブルであってよいか、または、アンビリカルケーブル、つまり、電力を伝達することが可能であることに加えて、海底上に位置する機械に例えば水力を提供することも可能であり得るようなケーブルであってもよい。動的な
海中電力ケーブルが中電圧電力ケーブルまたは高電圧電力ケーブルであってよい。動的な
海中電力ケーブルが、交流(AC)の動的な
海中電力ケーブルまたは直流(DC)の動的な
海中電力ケーブルであってよい。
【0032】
一般に、動的な
海中電力ケーブルは、心線と、絶縁システム層を備える、心線の周りに配置される絶縁システムと、絶縁システム層の周りに配置されるシースと、絶縁システム層とシースとの間に配置されるスクリーン層と、を備える。したがって、心線、絶縁システム層、スクリーン層およびシースが、同心に、または実質的に同心に、配置される。スクリーン層が心線を電気的に遮蔽するように構成される。絶縁システム層が、例えばカーボンブラックを含む架橋ポリエチレン(XLPE:cross−linked polyethylen)層などの、例えば半導体層であってよい。絶縁システム層が電気絶縁システムの一部を画定または形成することができる。したがって、電気絶縁システムが1つまたは複数の絶縁システム層を備えることができる。複数の絶縁システム層を有する変形形態の場合、絶縁システム層が多様であってもよく、1つの層が例えば電気的に絶縁する層であってよく、1つまたは複数の層が例えば半導体層であってよい。例として、電気絶縁システムは、同心に配置される3つの絶縁システム層、つまり、内側半導体層、外側半導体層、および、内側半導体層と外側半導体層との間に配置される電気的に絶縁する層を備えることができる。
【0033】
心線、絶縁システム層、スクリーン層およびシースは、動的な
海中電力ケーブルのコアを形成するかまたはその一部分を形成する。動的な
海中電力ケーブルは、スクリーン層の周りに配置される1つまたは複数の外装層、および、外側シースをさらに備える。
【0034】
スクリーン層は、各々が第1の直径を有する複数のスクリーンワイヤと、各々が第1の直径より大きい第2の直径を有する複数のポリマーワイヤと、を備える。各スクリーンワイヤは、通常は、断面が円形であるかまたは実質的に円形であり、概して、単一のワイヤから構成されるか、または、円形のもしくは実質的に円形の断面を有するスクリーンワイヤを一体に形成する複数のより薄い平行ワイヤから構成される。各ポリマーワイヤは、概して、断面が円形であるかまたは実質的に円形である。他の断面形状のポリマーワイヤも企図され、ポリマーワイヤが、例えば、正方形断面、または、六角形もしくは八角形断面形状などの他の多角形断面形状を有することもできる。第2の直径が、好適には、第1の直径より少なくとも1.2倍大きく、例えば、第1の直径より、1.5倍大きいか、1.7倍大きいか、または、2倍大きい。スクリーンワイヤおよびポリマーワイヤが絶縁システム層の周りに螺旋状に配置される。スクリーンワイヤおよびポリマーワイヤが、好適には、張力を受けるように配置され、その結果、スクリーンワイヤおよびポリマーワイヤが、絶縁システム層に当接するようになる。スクリーンワイヤおよびポリマーワイヤが、隣接する対のポリマーワイヤごとの間に配置される1つまたは複数のスクリーンワイヤと互い違いに配置される。そのため、各スクリーンワイヤの中心軸が、任意のポリマーワイヤの中心軸よりも心線の中心軸に近い。
【0035】
スクリーンワイヤは、銅などの好適には金属の、電気伝導性材料で作られてよい。ポリマーワイヤは、ポリマーを備えことができ、またはポリマーから構成され得る。ポリマーワイヤに適する重合体材料の例には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンなどの、ポリエチレンがある。重合体ワイヤは、別法として、カーボンブラックと混合されるポリエチレンなどの半導体材料で作られてもよい。ポリマーワイヤは、有利には、絶縁システム層またはシースのいずれかと同じ材料で作られ得る。この手法においては、動的な
海中電力ケーブルとの関連で総合的な試験を行う必要があるような新しい材料が、この動的な
海中電力ケーブルのデザインに導入されない。
【0036】
動的な
海中電力ケーブルは、電気的位相の数と、動的な
海中電力ケーブルがAC用途またはDC用途のいずれであるかと、に応じて、2つ以上のコアを備えることができる。複数のコアの場合、各心線が、上述と同じ手法で、それぞれの絶縁システム層、シースおよびスクリーン層によって囲まれ、それによりそれぞれのコアを形成するかまたはその一部を形成する。
【0037】
図1を参照して、次に、動的な
海中電力ケーブルの実施例を説明する。例示の動的な
海中電力ケーブル1は、3つのコアを備える。動的な
海中電力ケーブル1は、第1のコア3a、第2のコア3bおよび第3のコア3cを備える。第1のコア3aは、第1の心線と、電気絶縁システム7の一部を形成することができる第1の絶縁システム層7aと、第1のスクリーン層9aと、第1のシース11aと、を備え、第1のシース11aが1つまたは複数の層を備えることができる。
【0038】
第1の絶縁システム層7aは、第1の心線5aの周りに配置される。第1のスクリーン層9aは、第1の絶縁システム層7aと第1のシース11aとの間に配置される。第1のスクリーン層9aは、複数の第1のスクリーンワイヤ13aと、複数の第1のポリマーワイヤ15aとを備える。複数の第1のスクリーンワイヤ13aおよび複数の第1のポリマーワイヤ15aは、第1の絶縁システム層7aの周囲部の周りに均等に分布される。動的な
海中電力ケーブル1の任意の断面において、第1のスクリーンワイヤ13aおよび第1のポリマーワイヤ15aは、第1の絶縁システム層7aの周囲部の周りに互い違いの形で配置される。さらに、第1のスクリーンワイヤ13aおよび第1のポリマーワイヤ15aは、第1の心線5aの軸方向において第1の絶縁システム層7aの周りに螺旋状に配置される。第1のスクリーンワイヤ13aおよび第1のポリマーワイヤ15aは、張力を受けるように配置され、その結果、それらのすべてが、第1の絶縁システム層7aの外側表面に接触するように配置され、つまり、第1の絶縁システム層7aの外側表面に支承される。
【0039】
図1の実施例によると、隣接する対の第1のポリマーワイヤ15aごとの間に配置される1つの第1のスクリーンワイヤ13aのみが存在する。これは、第1のスクリーン層9aの側面の視点から、断面で適用される。したがって、第1のスクリーンワイヤ13aの数は、第1のポリマーワイヤ15aの数に等しい。したがって、各第1のスクリーンワイヤ13aが、2つの第1のポリマーワイヤ15aに当接し、2つの第1のポリマーワイヤ15aの間で圧迫され、それにより、各第1のスクリーンワイヤ13aが、実質的に固定されて第1の絶縁システム層7aに物理的に接触した状態で確実に配置されるようになる。
【0040】
各第1のスクリーンワイヤ13aは、第1の直径D1を有し、各第1のポリマーワイヤ15aは、第2の直径D2を有し、
図2に示されるように、第2の直径D2は、第1の直径D1より大きい。したがって、各第1のポリマーワイヤ15aが、例えば第1の絶縁システム層7aおよび第1のシース11aである、第1のスクリーン層9aの径方向内側にある層および第1のスクリーン層9aの径方向外側にある層の両方に同時に当接する。しかし、第1のスクリーンワイヤ13aは、通常は、それらが張力を受ける状態であることにより、第1の絶縁システム層7aのみに当接する。したがって、第1のスクリーンワイヤ13aが、径方向の接触荷重を受けないかまたは少なくとも大幅に低い径方向の接触荷重を受けることになり、それにより、動的負荷状態中のスティックスリップを原因とした摩擦応力の発生が低減される。
【0041】
第1のポリマーワイヤ15aのボリマー材料は、第1のスクリーンワイヤ13aよりも良好に、曲げさらには摩擦力を原因とするひずみの大きい変化に耐えることができ、ここでの第1のスクリーンワイヤ13aは、電気伝導性材料で作られており、第1の心線5aを電気的に遮蔽する。
【0042】
第2の直径D2は、第1の直径D1より少なくとも1.2倍大きく、一実施例によると、第1の直径D1より少なくとも1.5倍大きい。別の実施例によると、第2の直径D2は、第1の直径D1より少なくとも1.7倍または2倍大きい。一般に、第1の直径D1および第2の直径D2の比は、例えば第1のコアが動的な
海中電力ケーブルの動作で典型的なものである径方向の荷重を受けるときに、任意の第1のポリマーワイヤの、第1のスクリーン層内での、径方向の寸法が、楕円化および隣接する層への侵入を原因として、第1の直径D1よりも大きくなる、ということに基づいて選択されるものである。したがって、第1のポリマーワイヤが、第1のシースに物理的に接触する唯一のワイヤである。したがって、第1のポリマーワイヤが、すべての径方向の荷重を支える。第1のスクリーンワイヤは、シースに接触しない。したがって、第1の直径D1および第2の直径D2の間の比は、くつかの設計パラメータによって決定されることになり、例えば、コアのシース材料、シース材料の硬さ、第1のポリマーワイヤ15aの材料、および、動的な
海中電力ケーブル1の動作中のコア上の径方向の力の大きさによって決定される。
【0043】
第2のコア3bは、第1のコア3aおよび第3のコアと同じである。そのため、第2のコア3bが、例えば、第2の心線5bと、第2の心線5bの周りに配置される第2の絶縁システム層7bと、複数の第2のスクリーンワイヤ13bおよび複数の第2のポリマーワイヤ15bを備える第2のスクリーン層9bと、第2のシース11bと、を備える。第2のコア3bおよび第3のコア3cが第1のコア3aと同じであることから、第2のコア3bおよび第3のコア3cは本明細書でさらに詳細には説明されない。
【0044】
動的な
海中電力ケーブル1は、3つのフィラーデバイス17をさらに備え、各フィラーデバイス17が、第1のコア3a、第2のコア3bおよび第3のコア3cのそれぞれの対の2つの隣接するコアの間に配置される。
図1に示されるフィラーデバイス17が、第1のコア3aと第2のコア3bとの間に配置される。
【0045】
動的な
海中電力ケーブル1は、外装層19と、外装層19の周りに配置される外側シース23とを備える。外装層19が、第1のコア3a、第2のコア3b、第3のコア3cおよび3つのフィラーデバイス17によって形成される周囲部の周りに配置される螺旋状に巻かれる複数の外装ワイヤ21を備える。外装ワイヤ21は、概して、3つのコア3a、3b、3cおよび3つのフィラーデバイス17の周りに配置される中間シースの周囲部の周りに配置され得る。
【0046】
図2は、第1のコア3aの半分を断面で示す。図からわかるように、第1のスクリーンワイヤ13aのうちの任意の第1のスクリーンワイヤ13aの中心軸と第1の心線5aの中心軸との間の径方向距離d1は、第1のポリマーワイヤ15aのうちの任意の第1のポリマーワイヤ15aの中心軸と第1の心線5aの中心軸との間の径方向距離d2より小さい。そのため、第1のスクリーンワイヤ13aは、第1のスクリーン層9aを囲む2つの層の内側層のみに物理的に接触し、つまり、第1の絶縁システム層7aに物理的に接触する。したがって、動作中のコア上の径方向の荷重が、第1のポリマーワイヤ15aによって吸収される。
【0047】
図2に示されるコアの構成は、コアの数が電気的位相の数によって決定されるACの用途のための動的な
海中電力ケーブルで使用され得、または、DCの用途のための動的な
海中電力ケーブルでも使用され得る。
【0048】
上記でいくつかの実施例を参照して本発明の概念を主として説明してきた。しかし、当業者には容易に認識されるように、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内で、上記で開示される実施形態以外の他の実施形態も同様に可能である。