(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543372
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ユニバーサルムーンフェイズ表示装置
(51)【国際特許分類】
G04B 19/26 20060101AFI20190628BHJP
G04C 3/00 20060101ALI20190628BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20190628BHJP
【FI】
G04B19/26 A
G04C3/00 B
G04G21/00 D
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-43809(P2018-43809)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2018-155747(P2018-155747A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】17161772.3
(32)【優先日】2017年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・ボネ
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−239912(JP,A)
【文献】
特開平04−370790(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3136017(JP,U)
【文献】
特表2016−508614(JP,A)
【文献】
特開2009−216547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/26
G04C 3/00
G04C 3/14
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(1000)用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、現在の日付を計算または受信するための第1の手段(1)と、場所の半球を示す位置情報信号を受信するための第2の手段(2)とを備え、前記装置(10)は、前記現在の日付に応じて、太陰暦(4)を計算するため、または受信するための第3の手段(3)を備え、前記第3の手段(3)は少なくとも前記現在の日付と前記ムーンフェイズとの関連性を備え、当日のムーンフェイズを、前記装置(10)に含まれる第1の表示部材(6)の第1の角度位置値(αL)に変換するように構成される位置計算手段(5)を備え、少なくとも前記通常の月(11)の1つの表示を備えるユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、
前記位置計算手段(5)はさらに、前記装置(10)が位置する北半球または南半球を決定し、前記装置(10)に含まれる第1の駆動手段(7)の回転方向を制御するように構成され、北半球では前記第1の表示部材(6)を第1の方向に駆動し、南半球では、反対方向の第2の方向に駆動し、
前記装置(10)は第2の表示部材(8)を備え、前記第2の表示部材(8)は水平線の少なくとも1つの表示を備え、前記第1の表示部材(6)は前記水平線に対して移動可能であり、
前記第2の表示部材(8)は、少なくとも前記第1の表示部材(6)と同心回転方向に移動可能であることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
時計(1000)用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、現在の日付を計算または受信するための第1の手段(1)と、場所の半球を示す位置情報信号を受信するための第2の手段(2)とを備え、前記装置(10)は、前記現在の日付に応じて、太陰暦(4)を計算するため、または受信するための第3の手段(3)を備え、前記第3の手段(3)は少なくとも前記現在の日付と前記ムーンフェイズとの関連性を備え、当日のムーンフェイズを、前記装置(10)に含まれる第1の表示部材(6)の第1の角度位置値(αL)に変換するように構成される位置計算手段(5)を備え、少なくとも前記通常の月(11)の1つの表示を備えるユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、
前記位置計算手段(5)はさらに、前記装置(10)が位置する北半球または南半球を決定し、前記装置(10)に含まれる第1の駆動手段(7)の回転方向を制御するように構成され、北半球では前記第1の表示部材(6)を第1の方向に駆動し、南半球では、反対方向の第2の方向に駆動し、
前記装置(10)は第2の表示部材(8)を備え、前記第2の表示部材(8)は水平線の少なくとも1つの表示を備え、前記第1の表示部材(6)は前記水平線に対して移動可能であり、
前記第2の表示部材(8)は、少なくとも前記第1の表示部材(6)と径方向移動方向に移動可能であることを特徴とする、装置(10)。
【請求項3】
請求項1に記載の装置(10)であって、前記位置計算手段(5)は、前記装置(10)が位置する前記場所の前記緯度を計算するように構成され、前記第2の表示部材(8)を前記第1の表示部材(6)に関して駆動し、前記装置(10)に含まれる第2の駆動手段(9)を制御するように構成されることを特徴とする、装置(10)。
【請求項4】
請求項2に記載の装置(10)であって、前記位置計算手段(5)は、前記装置(10)が所在する前記場所の緯度を計算をし、前記装置(10)に含まれる第2の駆動手段(9)を制御して、前記第1の表示部材(6)に関して前記第2の表示部材(8)を駆動するように構成されることを特徴とする、装置(10)。
【請求項5】
時計(1000)用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、現在の日付を計算または受信するための第1の手段(1)と、場所の半球を示す位置情報信号を受信するための第2の手段(2)とを備え、前記装置(10)は、前記現在の日付に応じて、太陰暦(4)を計算するため、または受信するための第3の手段(3)を備え、前記第3の手段(3)は少なくとも前記現在の日付と前記ムーンフェイズとの関連性を備え、当日のムーンフェイズを、前記装置(10)に含まれる第1の表示部材(6)の第1の角度位置値(αL)に変換するように構成される位置計算手段(5)を備え、少なくとも前記通常の月(11)の1つの表示を備えるユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、
前記位置計算手段(5)はさらに、前記装置(10)が位置する北半球または南半球を決定し、
前記装置(10)は第2の表示部材(8)を備え、前記第2の表示部材(8)は水平線の少なくとも1つの表示を備え、前記第1の表示部材(6)は前記水平線に対して移動可能であり、
前記第2の表示部材(8)は、少なくとも前記第1の表示部材(6)と同心回転方向に移動可能であり
前記第1の駆動手段(7)は、回転の一方向のみに回転するように構成される少なくとも第1の電気モータを備えることを特徴とし、前記位置計算手段(5)は、前記第1の駆動手段(7)の前記速度を制御するように構成され、それによって前記第1の表示部材(6)を第1の速度で、第1の移動で駆動し、前記少なくとも1つの通常の月表示(11)は月期の開始位置と月期の終了位置との間で可視であり、それによって厳密に360°未満の限定角度移動において、1つの太陰月で1つの完全な移動を行うことができ、およびそれによって前記第1の表示部材(6)を駆動し、前記月期の終了位置では、少なくとも前記第1の速度より30倍速い第2の速度で、前記少なくとも1つの通常の月表示(11)は不可視であり、前記月期の終了位置と前記月期の開始位置との間の第2の移動で、1日以下の持続運動を行う、装置(10)。
【請求項6】
時計(1000)用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、現在の日付を計算または受信するための第1の手段(1)と、場所の半球を示す位置情報信号を受信するための第2の手段(2)とを備え、前記装置(10)は、前記現在の日付に応じて、太陰暦(4)を計算するため、または受信するための第3の手段(3)を備え、前記第3の手段(3)は少なくとも前記現在の日付と前記ムーンフェイズとの関連性を備え、当日のムーンフェイズを、前記装置(10)に含まれる第1の表示部材(6)の第1の角度位置値(αL)に変換するように構成される位置計算手段(5)を備え、少なくとも前記通常の月(11)の1つの表示を備えるユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、
前記位置計算手段(5)はさらに、前記装置(10)が位置する北半球または南半球を決定し、
前記装置(10)は第2の表示部材(8)を備え、前記第2の表示部材(8)は水平線の少なくとも1つの表示を備え、前記第1の表示部材(6)は前記水平線に対して移動可能であり、
前記第2の表示部材(8)は、少なくとも前記第1の表示部材(6)と径方向移動方向に移動可能であり、
前記第1の駆動手段(7)は、回転の一方向のみに回転するように構成される少なくとも第1の電気モータを備えることを特徴とし、前記位置計算手段(5)は、前記第1の駆動手段(7)の前記速度を制御するように構成され、それによって前記第1の表示部材(6)を第1の速度で、第1の移動で駆動し、前記少なくとも1つの通常の月表示(11)は月期の開始位置と月期の終了位置との間で可視であり、それによって厳密に360°未満の限定角度移動において、1つの太陰月で1つの完全な移動を行うことができ、およびそれによって前記第1の表示部材(6)を駆動し、前記月期の終了位置では、少なくとも前記第1の速度より30倍速い第2の速度で、前記少なくとも1つの通常の月表示(11)は不可視であり、前記月期の終了位置と前記月期の開始位置との間の第2の移動で、1日以下の持続運動を行う、装置(10)。
【請求項7】
請求項1または2に記載の装置(10)であって、前記第1の駆動手段(7)は、少なくとも第1の電気モータを備え、前記第1の電気モータは回転の両方向に回転して、前記第1の表示部材(6)を月期の開始位置と月期の終了位置との間の第1の方向に駆動するように構成され、それによって1つの太陰月で1つの完全な移動を行い、厳密に360°未満の限定角度移動を行い、および前記第1の表示部材(6)を、月期の終了位置で、前記月期の終了位置と前記月期の開始位置との間の前記第1の方向と反対の第2の方向に、迅速に、実質的に瞬時の逆方向移動によって駆動することを特徴とする、装置(10)。
【請求項8】
請求項1または2に記載の装置(10)であって、前記第1の表示部材(6)は、前記通常の月表示(11)である前記月の単一の表示を備えることを特徴とする、装置(10)。
【請求項9】
時計(1000)用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、現在の日付を計算または受信するための第1の手段(1)と、場所の半球を示す位置情報信号を受信するための第2の手段(2)とを備え、前記装置(10)は、前記現在の日付に応じて、太陰暦(4)を計算するため、または受信するための第3の手段(3)を備え、前記第3の手段(3)は少なくとも前記現在の日付と前記ムーンフェイズとの関連性を備え、当日のムーンフェイズを、前記装置(10)に含まれる第1の表示部材(6)の第1の角度位置値(αL)に変換するように構成される位置計算手段(5)を備え、少なくとも前記通常の月(11)の1つの表示を備えるユニバーサルムーンフェイズ表示装置(10)であって、
前記位置計算手段(5)はさらに、前記装置(10)が位置する北半球または南半球を決定し、前記装置(10)に含まれる第1の駆動手段(7)の回転方向を制御するように構成され、北半球では前記第1の表示部材(6)を第1の方向に駆動し、南半球では、反対方向の第2の方向に駆動し、
前記太陰暦(4)は皆既月食および赤い月の日の日付を含み、前記第1の表示部材(6)は明確な角度位置で、初期設定で表示される少なくとも1つの前記通常の月表示(11)と、少なくとも1つの赤い月表示(12)とを含み、前記位置計算手段(5)は、前記現在の日付が赤い月の日付に該当するとき、前記第1の駆動手段(7)を適切に回転させ、赤い月表示(12)を通常の月表示(11)と交換するように構成されることを特徴とする、装置(10)。
【請求項10】
請求項1−9のいずれか一項に記載の装置(10)であって、前記現在の日付を計算または受信するための前記第1の手段(2)は、衛星または前記時計(1000)の前記ユーザが保持する携帯テレフォニ装置(100)から送信される信号を受信するための手段であることを特徴とする、装置(10)。
【請求項11】
請求項1−10のいずれか一項に記載の装置(10)であって、位置情報信号および/または場所の地球の半球を示す信号を受信するための前記第2の手段(2)は、衛星または前記時計(1000)の前記ユーザが保持する携帯テレフォニ装置(100)から送信される信号を受信するための手段であることを特徴とする、装置(10)。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項1−11のいずれか一項に記載の装置(10)を含む時計(1000)。
【請求項13】
請求項12に記載の時計(1000)と、携帯テレフォニ装置(100)とを備える携帯型アセンブリ(2000)であって、前記携帯テレフォニ装置(100)は、位置情報信号またはデータおよび/または場所の地球の半球を示す信号またはデータ、および/または日付信号またはデータを前記時計(1000)に含まれる前記装置(10)に提供するように構成されることを特徴とする、携帯型アセンブリ(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置に関し、該ユニバーサルムーンフェイズ表示装置は、現在の日付を計算する、または受信するための第1の手段と、位置情報信号および/または場所の地球の半球を示す信号を受信するための第2の手段とを備える。該装置は、太陰暦を現在の日付に応じて計算するため、または太陰暦を受信するための第3の手段を備える。第3の手段は、少なくとも現在の日付とムーンフェイズとの相関関係と、その日のムーンフェイズを第1の表示部材の第1の角度位置値に変換するように構成される位置計算手段とを備える。第1の表示部材は本装置に含まれ、少なくとも1つの通常の月の表示を備える。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのユニバーサルムーンフェイズ表示装置を含む時計に関する。
【0003】
本発明は、このような時計および携帯テレフォニ装置を備える携帯型アセンブリに関する。携帯テレフォニ装置は、位置情報信号またはデータおよび/または場所の地球の半球を示す信号またはデータ、および/または日付信号またはデータを時計に含まれる装置に提供するように構成される。
【0004】
本発明は時計用のムーンフェイズ表示装置の分野に関連する
【背景技術】
【0005】
時計のムーンフェイズ表示は複雑なものであり、古くから用いられ非常に人気があるものの、非常に大まかな表示を提示することも多い。一般に、欧州のユーザまたは北緯45度線に近い領域のユーザ向けに設計される。月の見かけが逆になる南半球のユーザ向けのムーンフェイズ表示装置は特別であり、したがって費用がかかるため、両半球用のユニバーサル表示装置は極めて高価である。
【0006】
月相は北半球と南半球または赤道付近では見え方が異なる。
【0007】
月を表示する多くの時計では、温帯に適した表示を提供するが、この表示では熱帯または赤道地域で見られる月の見え方とは適合しない。
【0008】
Sembritzkiによる特許文献1では、月相を表示するための表示装置を備える着用可能な装置を開示している。1または複数の月の画像がダイヤルに提示され、回転要素がダイヤル上に設けられ、満月、三日月、新月および二十六夜の月の画像を提供する。同装置は、回転要素の片方または両方向への回転を提供する。同装置は、同時に、または選択的に、北半球および/または南半球からの見かけと一致するムーンフェイズを表示することができる。
【0009】
Kitaによる特許文献2は、信号受信機能を有する電子時計を開示する。ユーザが所在する場所の現在の時刻が地域名を特定せずに表示され得る。衛星と信号受信点との間の準距離データは、衛星から送信された信号の遅延時間に基づいて計算される。信号受信点に関する位置データは4つの準距離データから得られる。次に、この位置データはROMに事前に保存されている経度/緯度データと比較され、この信号受信点に最も近い都市を検索する。さらに、現在の受信点が以前の受信点に最も近い都市と一致するかを判断する。これらの都市が互いに一致すると、計時レジスタに保存されている都市の現在の時刻が直接表示される。一致が成立しない場合は、計時ユニットによる計時は現在の信号受信点に最も近い都市に関する時間差データに基づいて修正され、修正された時間はこの都市名に関連付けられる。
【0010】
Druggeによる特許文献3は、時計または腕時計を開示する。同時計または腕時計は、時計の地理的位置に関連する計算および条件に基づいた天体の「複雑さ」および気象事象を表示する。メモリ記憶装置、マイクロプロセッサ、機械およびソフトウェアが制御する図表表示システムおよびネットワーク接続性によって、ユーザが選択する複雑さの入力、表示オプション、地理的議論およびその他の変形が容易になる。時計は事前にプログラムされた地域または事前に定義された複雑さに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第2014/0247699号A1
【特許文献2】米国特許番号第5408444号
【特許文献3】米国特許出願第2010/0226213号A1
【発明の概要】
【0012】
本発明は、ユーザの所在地と一致するムーンフェイズ表示をユーザに提供することを提案する。
【0013】
そのため、本発明は、請求項1に記載の時計用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置に関する。
【0014】
本発明は少なくとも1つの前述の装置を含む時計に関する。
【0015】
本発明はこのような時計および携帯テレフォニ装置などを備えるように構成される携帯型アセンブリに関する。携帯型アセンブリは、位置情報信号またはデータおよび/または場所の地球の半球を示す信号またはデータ、および/または日付信号またはデータを前述の装置に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のその他の特徴および有利点は、添付図を参照して以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【0017】
【
図1】ブロック図で携帯型アセンブリを表す。携帯型アセンブリは、時計および携帯テレフォニ装置を備える。携帯テレフォニ装置は、位置情報信号および/または場所の地球の半球を示す信号またはデータ、および/または日付信号またはデータを本発明による装置に提供するように構成され、時計に含まれる。
【
図2】
図1と類似する方法で、本装置およびその主要構成要素を図示する。
【
図3】
図3Nは、北半球の月の移動の方向を例示し、
図3Sは、南半球の月の移動の方向を例示する。月の表示は、本明細書ではディスクである第1の表示部材に張り付けられ、本明細書では固定カバーである第2の表示部材に関して移動可能である。
【
図4】
図4Nは、同一の方法で、北半球における月の様々な表示を同時に例示する。
図4Sは、同一の方法で、南半球における月の様々な表示を同時に例示する。
【
図5】月の単一の表示を有する第1の表示部材の正面概略図を示す。
【
図6】第2の表示部材の後方にある、同一の第1の表示部材を表す。第2の表示部材は、図示するように中心を外れた水平線を一定の緯度で有する。
【
図7】類似する方法で、通常の月および赤い月という、月の2つの表示を有する第1の表示部材を表す。
【
図8】モータによって同一方向であるが、可変速度で移動される、
図5の第1の表示部材を表す。第1の表示部材は、北半球および南半球の両方で用いることができる第2の表示部材の背後にある。
【
図9】同時に、様々な緯度における同一のムーンフェイズの様々な見かけを例示する。
【
図10】北半球および南半球両方における月相の連続、およびその方向を例示する。
【
図11】ムーンフェイズ表示制御アルゴリズムである。
【
図13】赤い月を管理するためのアルゴリズムである。
【
図14】第1の表示部材に関して第2の表示部材を移動するためのアルゴリズムである。
【
図15】加速動作を有する表示用の速度制御アルゴリズムである
【
図16A-16B】熱帯での表示に適した特定の第2の表示部材を備え、月相の連続を例示する。
【
図17A-17B】熱帯での表示に適した特定の第2の表示部材を備え、月相の連続を例示する。
【
図18】所定の緯度範囲によりよく適応するように、横方向に移動するように考案される第2の表示部材上に組み合わせたマスク部材の例を例示する。
【
図19】組み合わせたマスク部材の別の例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、本発明は、時計1000用のユニバーサルムーンフェイズ表示装置10に関する。
【0019】
本装置10は、現在の日付を計算または受信するための第1の手段1と、位置情報信号を受信するための第2の手段2とを備える。
【0020】
装置10は、従来から、通常の月11の少なくとも1つの表示を備える少なくとも第1の表示部材6を含む。装置10は、第1の表示部材6を駆動するための第1の駆動手段7を備える。
【0021】
本装置10は、太陰暦4を計算または受信するための第3の手段30を備える。第3の手段30は、少なくとも日付とムーンフェイズとの間の関連性を備える。
【0022】
本装置10は、位置計算手段5をさらに備える。位置計算手段5は、具体的には、その日のムーンフェイズを第1の表示部材6の第1の角度位置値αLに変換するように構成されるが、月のディスクには限定されない。
【0023】
本発明によれば、これらの位置計算手段5はさらに、装置10が所在するのが北半球または南半球かを決定するため、第1の駆動手段7の回転方向を制御するように構成され、それによって、第1の表示部材6を北半球では第1の方向に回転させ、または南半球では第2の反対方向に回転させる。
【0024】
図3Nおよび3Sはそれぞれ、北半球および南半球における月の移動方向を例示する。
【0025】
図4Nおよび4Sは同様に、2つの半球における、同じ瞬間の、月の異なる描写を例示する。
【0026】
より具体的には、第1の駆動手段7は、少なくとも第1の電気モータを備える。第1の電気モータは、回転の両方向に回転するように構成され、それによって第1の表示部材6を月期の開始位置と月期の終了位置との間の第1の方向に駆動して、厳密に360°未満の限定角度移動により、太陰月で1周期を完了する。また、第1の表示部材6を月期終了時に、迅速に、実質的に瞬時の逆方向移動によって、月期の終了位置と月期の開始位置との間の第1の方向とは反対の第2の方向に駆動する。
【0027】
図5は、第1の表示部材6を例示する。第1の表示部材6は、通常の月表示11である単一の月表示を備える。
【0028】
この具体的な構成により、第1の電気モータは回転の両方向に回転するように構成されるため、複数の月の表示を備える同一の表示部材6を用いることも可能となる。たとえば、
図7のように、通常の月表示11と、赤い月の表示12とを備えることが可能となり、
図7の具体的な例では径方向に正反対となる。適切な月表示とは反対の要素を表示しないように、第1の表示部材6は、復帰運動を行うが、これは第1の電気モータの両方向への回転によって可能となる。
【0029】
特定の変形では、太陰暦4は、皆既月食および赤い月の日の日付を含む。第1の表示部材6は次に、明確な角度位置において、初期設定として表示される少なくとも1つの通常の月表示11と、少なくとも1つの赤い月表示12とを備える。位置計算手段5は、現在の日付が赤い月の日付に該当する場合、通常の月表示11の代わりに赤い月表示12となるように第1の駆動手段7を適切に回転するように構成される。たとえば、通常の月表示11は同一の月のディスク上に、赤い月表示12の直径方向反対側にある。位置計算手段5は、赤い月の場合、通常の月に対して行う計算に関して180°相殺するように回転を行う。赤い月は、皆既月食後かつ、4月の満月後に予測可能であり、太陰暦4は容易に日付を管理することができる。月食および赤い月は長期に予測可能な事象であるため、前もって最終的に計算されている場合は、太陰月において日付の位置を計算することは必須ではない。日付は外部資源または、内部メモリから決定することができる。
【0030】
特定の変形では、装置10は、第2の表示部材8を備える。第2の表示部材8は、少なくとも1つの水平線表示を含み、第1の表示部材6は水平線に対して移動可能である。より具体的には、第2の表示部材8は、第1の表示部材6の一部分と重なって、カバーを形成する。第2の表示部材8は、従来の静的マスク部材を形成することができる。より具体的には、第2の表示部材8は少なくとも第1の表示部材6と同心回転で移動可能であり、ムーンフェイズの現実的なレンダリングを提供する。より具体的には、さらに、第2の表示部材8は、第1の表示部材6に関して少なくとも横方向に移動可能であって、具体的には非限定的に径方向に移動可能である。
【0031】
図3および
図4は、温帯の通常のムーンフェイズ表示装置で用いられる第2の表示部材8の従来の側面を表す。
図6は、別の変形表示を例示する。実際に、熱帯、赤道地域および極地では、これらの地域の様々な相で、月の実際の見かけをより詳細に表示するために、具体的には、熱帯向けの
図16および17で示すように、異なる形態のカバーが必要となる。
図18は、所定の緯度範囲で最善に適合するように横方向に移動するように考案される第2の表示部材8上のマスク部材の例を示す。本例は、連続して
図3および
図4のマスク部材および
図16および17のマスク部材を備える。
図19は、連続して
図6および
図3のマスク部材を備える、組み合わせたマスク部材の別の例を例示する。
【0032】
位置計算手段5は、有利には第2の位置情報信号受信手段2を利用して、場所の緯度を判断することができる。このパラメータを利用することによって、月の見かけのさらに現実的なレンダリングを用いて表示を提供することができる。本現実的な表示は、
図16または
図17に示すように、一定の緯度に対して、第2の具体的な表示部材8を用いることによって得ることができる。第2の表示部材8は、第1の表示部材6と重ねて配置されると、移動しない。第1の表示部材6のみでは具体的には回転して、移動可能である。
【0033】
特定の変形では、第2の表示部材8は第1の表示部材6に関して、回転および/または横方向に移動可能である。より具体的には、第2の表示部材8は、少なくとも第1の表示部材6の径方向移動に関して移動可能である。
【0034】
このように、有利な変形では、位置計算手段5は、装置10が位置する場所の緯度を計算するように構成され、装置10に含まれる第2の駆動手段9を制御して、第1の表示部材6に関して第2の表示部材8を駆動するように構成される。
【0035】
16.1から16.12まで連続して採番される
図16、および17.1から17.12まで連続して採番される
図17は、第2の表示部材8の具体的な構成の2つの非限定例を例示する。
【0036】
したがって、好ましくは、装置10は、水平線を移動するための電子機械機構を備える。具体的な単純な実施形態では、ラックはモータに結合するピニオンによって駆動される。また、水平線を枢動するだけで、またはパンタグラフ型のシステムを用いて、(移動せずに)騒動のみを用いる別の原理を実装することも可能である。
【0037】
緯度を考慮して現実的な表示を考えると、移動可能な水平線を用いて、少なくとも月ディスクに関する回転のみならず、特定の変形では、月ディスクの軸に関する径方向移動において、ムーンフェイズ表示装置では一般にうまく処理されていない機能を提示することができる。
【0038】
特定の変形では、第1の駆動手段7は、少なくとも第1の電気モータを備える。第1の電気モータは、回転の一方向のみに回転するように構成される。その場合には、位置計算手段5は、第1の駆動手段7の速度を制御し、それによって第1の表示部材6を、第1の移動において第1の速度で駆動するように構成される。第1の移動では、月期の開始位置と月期の終了位置との間で少なくとも1つの通常の月表示11が可視であり、それによって、厳密に360°未満の限定角度移動において太陰月において1つの完全な移動が行われる。さらに、それによって第1の表示部材6は、月期の終了時に、少なくとも第1の速度より30倍速い第2の速度で駆動される。第2の移動では、少なくとも1つの通常の月表示11は1日以下の移動において、月期の終了位置と月期の開始位置との間で、不可視である。
【0039】
図8は、第1の表示部材6を有し、常に同一の方向に回転する単一の通常の月表示11を備える構成を例示する。北半球では、表示するように、通常の月表示11は、第2の表示部材8のカバーAからカバーBまで移動し、月期の終了時には部分B下部に隠れたままであり、次に直接カバーA下部に再度移動し、新月期を再度開始する。南半球では、反対になる。通常の月表示11は、第2の表示部材8のカバーBからカバーAに移動し、月期の終了時には部分A下部に隠れたままであり、次に直接カバーB下部に移動し、新月期を再度開始する。
【0040】
変形では、現在の日付を計算または受信するための第1の手段1は、衛星または、携帯テレフォニ装置100から送信される信号を受信するための手段である。携帯テレフォニ装置100は、時計1000のユーザが保持するように構成される。
【0041】
変形では、位置情報信号および/または場所の地球の半球を示す信号を受信するための第2の手段2は、衛星または、携帯テレフォニ装置100から送信される信号を受信するための手段である。携帯テレフォニ装置100は、時計1000のユーザが保持するように構成される。
【0042】
変形では、太陰暦4を計算または受信するための第3の手段3は、衛星または、携帯テレフォニ装置100から送信される信号を受信するための手段である。携帯テレフォニ装置100は、時計1000のユーザが保持するように構成される。
【0043】
このような携帯テレフォニ装置100は、「スマートフォン」または同等のものからなっていてもよく、時計1000は、ユーザからの行動を必要とせずに携帯テレフォニ装置100と情報を交換することができる。
【0044】
より具体的には、携帯テレフォニ装置100と時計1000との間で伝達するためのWOP(時計の光学プログラミング)方法によって、ユーザの所在地を時計に送信し、ムーンフェイズ表示、または日の出および日没または潮などの、その他の表示を修正することが可能となる。Bluetooth(登録商標)低消費電力またはNFCなどの他のプロトコルを用いて、本情報を時計に送信することもできる。
【0045】
携帯テレフォニ装置100は、様々な技術によってユーザの所在地を認識する。
経度および緯度を提供するGPS;
−GPSと電話が接続する携帯電話ネットワークの両方から判断される国に存在する。
【0046】
携帯テレフォニ装置100は、本情報を様々なフォーマットで送信することができる。
−緯度:北半球では正、南半球では負;
−符号化ビットで(2ビット):北半球−南半球−赤道−極地。
−夏時間(DST)修正を行う必要があるかを判断するために用いる国コード。
【0047】
ムーンフェイズ計算では、WOPプロトコルが日付を送信することによって、月ディスクは正しいムーンフェイズを表示することができる。月齢周期は29.53日であり、月の見かけは、通常1から29までの月周期で記載される。月齢周期は通常8相に分割され、各相は約88時間を有する。
【0048】
これらの相を、北半球においてこの順番で、
図10に示す。新月:10.1、三日月:10.2、上弦の月:10.3、十三夜:10.4、満月:10.5、十八夜:10.6、下弦の月:10.7、二十六夜:10.8。
【0049】
南半球では、同一の
図10において、三日月:10.8、上弦の月:10.7、十三夜:10.6、満月:10.5、十三夜:10.4、下弦の月:10.3、三日月:10.2、新月:10.1、の順番で示される。
【0050】
特定の日付の太陰日を計算するためには、規定の一日の太陰日を知らなければならず、関与する日付までの日数を計算し、次に29.53を除として計数操作を実行するように構成され、その結果が太陰日の日数を表す。
【0051】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような装置10を含む時計1000に関する。
【0052】
本発明は、携帯型アセンブリ2000に関する。携帯型アセンブリ2000は、このような時計1000と、携帯テレフォニ装置100とを備える。携帯テレフォニ装置100は、位置情報信号またはデータおよび/または場所の地球の半球を示す信号またはデータ、および/または日付信号またはデータを時計1000に含まれる装置10に提供するように構成される。
【0053】
図11は、ムーンフェイズ表示制御アルゴリズムの非限定例を例示する。時計1000では、機能110は時計の時間を管理し、ステップ111では、テストを深夜に実施する。太陰日計算はステップ112で、携帯テレフォニ装置100から受信する要素に基づいて実施される。ステップ116では、GPSまたは類似するローカル作業を行う。ステップ17では、メモリまたはサーバを用いて、皆既月食および赤い月を判断する。ステップ118では、判断を時計に送信する。ステップ113は月相計算ステップであり、日付および所在地を考慮し、具体的にはステップ114で半球を考慮して、必要な場合は月食または赤い月の発生によって補充する。ステップ115で適切な種類の月(通常の月または赤い月)を備えて、ムーンフェイズを表示する。
【0054】
図12は、別の非限定例アルゴリズムを例示する。120:半球検索、121:位置情報および/または場所の地球の半球の表示の利用、123:半球の決定、124:第1の表示部材のモータの回転方向、124:ステップ125の月を正しく判断するために緯度を考慮、126:直接内部計算によって、または1260の外部手段によって日付を検索し、ステップ127で日付を判断、ステップ128で内部太陰暦検索、またはステップ1280で外部手段によって検索し、ステップ129で、モータ7に伝わる回転の角度αLを判断。
【0055】
図13は赤い月制御アルゴリズムを例示する。アルゴリズムは、ステップ130:内部、またはステップ1300で外部手段によって赤い月検索を実施し、ステップ131で、月の見え方を判断し、ステップ132で、白い月のためにステップ133でモータの角度制御を維持するか、または角度相シフトをステップ134で伝えるかを選択するステップを含む。
【0056】
図14は、第2の表示部材8を第1の表示部材6に対して移動させるアルゴリズムを例示する。配向および緯度を決定後、ステップ140で相殺計算を実施し、141で回転結合し、142で相対移動する。
【0057】
図15は、加速運動する表示部材の速度制御アルゴリズムを例示する。ステップ150では月期の終了テスト、151ではモータの加速、152は通常の速度への復帰を例示する。
【0058】
要するに、アルゴリズムによって、日付によるムーンフェイズの見かけを正確に予測することができる。位置情報および/または場所の地球の半球の表示によって、第1の表示部材6、つまり月ディスクの見かけおよび回転方向を変更することが可能になる。
【0059】
携帯テレフォニ装置100と時計1000との接続によって、ユーザが介入せずに自動設定が可能になる。
【0060】
本発明は様々な有利点を提供する。
−ムーンフェイズ表示は現在の日付および時計が位置する場所の半球に関して正確である。
−設定が簡潔である;
−赤い月を扱わない簡潔な変形では、単一の月を有する1つのディスクのみが必要である;
−赤い月の表示を扱う変形では、赤い月の表示を追加することによって、適応する月ディスクのみが必要とされる;
−位置情報から送信される所在地の緯度を利用することによって、今まで非常に高価で、希少な高級時計でのみ可能であった赤道、熱帯および極地のムーンフェイズ表示装置を改良することができる。
−潮表示は月表示と結合することもできる。特別な沿岸の特徴を考慮することが可能なため、外部資源は特に有利である。事前に計算した満潮時間と干潮時間および潮の範囲を転送するか、または現在の日付の値を送信して、係数が時計に送信されている多項式を用いて将来の値を再計算することが可能である。
【0061】
−夏時間の修正は携帯テレフォニ装置と時計との接続によって考慮され、潮の時間を管理するために必要である。
【符号の説明】
【0062】
1 :第1の手段
2 :第2の手段
3 :第3の手段
4 :太陰暦
5 :位置計算手段
6 :表示部材
7 :モータ
8 :表示部材
10 :ユニバーサルムーンフェイズ表示装置
11 :月表示
100 :携帯テレフォニ装置
1000 :時計
2000 :携帯型アセンブリ
αL :第1の角度位置値