【実施例】
【0080】
ここに示す実施例は、本発明のさらなる理解の補助を意図するものである。具体的な使
用材料、種および条件は、さらなる実例を意図するものであって、本発明の妥当な範囲を
限定するものではない。カチオン性脂質の合成に使用した試薬は、市販のもの、または当
業者によって容易に調製されるもののいずれかである。
【0081】
新規な本カチオン性脂質の合成は、脂質酸(I)を出発物質とする線形プロセスである
。N,O−ジメチルヒドロキシルアミンにカップリングさせると、ワインレブアミドII
が得られる。グリニャール付加によりケトンIIIが生成される。チタン媒介性還元的ア
ミノ化によりIVの型の最終生成物が得られる。
【0082】
一般スキーム1
【0083】
【化5】
単一炭素ホモログ化カチオン性脂質Vの合成は、脂質ケトン(III)を出発物質とす
る線形プロセスである。該ケトンのニトリル(V)への変換は、TOSMICおよびカリ
ウムtert−ブトキシドでの処理によって行われる。該ニトリルを第1級アミンに還元
した後、還元的アミノ化を行うと最終のカチオン性脂質VIが得られる。
【0084】
一般スキーム2
【0085】
【化6】
二炭素ホモログ化カチオン性脂質IXの合成は、脂質ケトン(III)を出発物質とす
る線形プロセスである。該ケトンのα,β−不飽和アミドVIIへの変換は、ピーターソ
ン条件下で行われる。該α,β−不飽和の共役還元は、LS−セレクトリドを用いて行わ
れ、アミドVIIIが得られる。該アミドを水素化アルミニウムリチウムで還元すると、
最終のカチオン性脂質IXが得られる。
【0086】
一般スキーム3
【0087】
【化7】
シクロプロピル含有脂質は一般スキーム4に従って調製される。不飽和ワインレブアミ
ドIIをシモンズ・スミスシクロプロパン化条件に供すると、シクロプロピル含有ワイン
レブアミドXが得られる。これを、一般スキーム1〜3に概略を示したようにして最終生
成物にする。
【0088】
一般スキーム4
【0089】
【化8】
アリル型アミンカチオン性脂質XVIの合成は、アルデヒドXIを出発物質とする線形
プロセスである。酢酸t−ブチルを付加すると、β−ヒドロキシエステルXIIが生成さ
れる。該ヒドロキシル官能部をフルオロ基に変換させた後、酸処理を行うと、β−フルオ
ロ酸XIIIが生成される。この酸をワインレブアミドに変換させた後、グリニャール付
加を行うと、β−フルオロケトンXVが得られる。還元的アミノ化によって同時に脱離が
もたらされ、所望のアリル型アミンXVIが生成される。
【0090】
一般スキーム5
【0091】
【化9】
20,23−ノナコサジエン−10−アミン,N,N−ジメチル−,(20Z,23Z)
(化合物1)
【0092】
【化10】
11,14−エイコサジエン酸,(11Z,14Z)−(50g,162mmol)、
N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(31.6g,324mmol)、HOAt
(44.1g,324mmol)、Et
3N(45.2mL,324mmol)、および
EDC(62.1g,324mmol)をDCM(810mL)中で混合し、周囲温度で
一晩撹拌した。次いで、反応液を5×700mLの水で洗浄し、次いで1×600mLの
1M NaOH洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、セライトに通して濾過し、エバポレ
ートし、53.06g(93%)の11,14−エイコサジエンアミド,N−メトキシ−
N−メチル−,(11Z,14Z)を透明な金色の油状物として得た。
1H NMR(4
00MHz,CDCl
3)δ 5.35(m,4H)、3.68(s,3H)、3.18
(s,3H)、2.77(m,2H)、2.41(t,J=7Hz,2H)、2.05(
m,4H)、1.63(m,2H)、1.40−1.26(m,18H)、0.89(t
,J=7Hz,3H)。
【0093】
【化11】
11,14−エイコサジエンアミド,N−メトキシ−N−メチル−,(11Z,14Z
)−1(4g,11.38mmol)を、250mL容フラスコ内の乾燥THF(50.
0ml)に溶解させ、次いで、1Mのノニルマグネシウムブロミド(22.76ml,2
2.76mmol)を窒素下、周囲温度で添加した。10分後、過剰の飽和水性NH
4C
lで反応液をゆっくりクエンチした。反応液を分液漏斗内でヘキサンと水にて洗浄し、振
り、下側の水層を廃棄し、上側の層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、エバポレート
し、粗製ケトンを金色の油状物として得た。上記の粗製ケトンに、ジメチルアミン(TH
F中2M)(14.22ml,28.4mmol)を添加した後、Ti(O−i−Pr)
4(6.67ml,22.76mmol)を添加し、一晩撹拌状態にした。翌日、EtO
H(50ml)を添加した後、NaBH
4(0.646g,17.07mmol)を添加
した。5分間の撹拌後、全反応液を、330gシリカカラムとインラインの40gシリカ
カラムに直接注入した。10分間は100%DCMで、次の30分間は0から15%のM
eOH/DCMで溶出させると、20,23−ノナコサジエン−10−アミン,N,N−
ジメチル−,(20Z,23Z)(1)(2.45g,5.47mmol,48.1%収
率)がかすかに金色の油状物として収集された。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 5.35(m,4H)、2.78(m,2H)、2.23(m,1H)、2.2
1(s,6H)、2.05(m,4H)、1.45−1.16(m,38H)、0.89
(m,6H).HRMS C31H61Nの計算値448.4877,実測値448.4
872。
【0094】
化合物2〜30は新規なカチオン性脂質であり、上記の一般スキーム1に従って調製し
た。
【0095】
【表1】
(12Z,15Z)−N,N−ジメチル−2−ノニルヘニコサ−12,15−ジエン−1
−アミン(化合物31)
【0096】
【化12】
ケトンiii(4.0g,9.55mmol)、TOSMIC(2.4g,12.4m
mol)を含むジメトキシエタン(45mL)の溶液を0℃まで冷却し、カリウムter
t−ブトキシド(19.1mmol,19.1mLの1MのtBuOH溶液)で処理した
。90分後、反応液をヘキサンと水間に分配した。有機部分を水で洗浄し、硫酸ナトリウ
ム上で乾燥させ、濾過し、真空にてエバポレートした。この物質をフラッシュクロマトグ
ラフィーによって精製し(0から5%までのEtOAc/ヘキサン)、所望の生成物を得
た(約20%の出発物質(s.m.)を含有)。この混合物を、そのままの状態で次の工
程に持ち越した。LC/MS(M+H)=430.6。
【0097】
【化13】
水素化アルミニウムリチウム(23.9mmol,23.9mLの1MのTHF溶液)
をニトリルv(3.42g,8mmol)に直接、周囲温度で添加し、反応液を20分間
撹拌した。反応液を100mLのTHFで希釈し、0℃まで冷却し、硫酸ナトリウム十水
和物溶液を用いて注意深くクエンチした。固形物を濾別し、THFで洗浄した。濾液を真
空にてエバポレートし、直接、次の反応に粗製状態で持ち越した。LC/MS(M+H)
=434.6。
【0098】
【化14】
第1級アミン(3.45g,6.2mmol)のジクロロエタン(100mL)溶液を
ホルムアルデヒド(1.6mL,21.7mmol)で処理した後、トリアセトキシ水素
化ホウ素ナトリウム(6.6g,31mmol)で処理した。5分後、反応液をジクロロ
メタンと1N NaOH間に分配した。有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し
、真空にてエバポレートした。粗製混合物を分取用逆相クロマトグラフィー(C8カラム
)によって精製し、(12Z,15Z)−N,N−ジメチル−2−ノニルヘニコサ−12
,15−ジエン−1−アミンを得た。HRMS 計算値462.5033,実測値462
.5026。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 5.35(m,4H)、2
.78(2H,t,J=5.6Hz)、2.18(s,6H)、2.05(m,6H)、
1.3(m,39H)、0.89(m,6H)。
(13Z,16Z)−N,N−ジメチル−3−ノニルドコサ−13,16−ジエン−1−
アミン(化合物32)
【0099】
【化15】
シリルアミドのピーターソン試薬(3.1g,16.7mmol)をTHF(35mL
)に溶解させ、−63℃まで冷却した。この溶液にnBuLi(16.7mmol,6.
7mLの2.5M溶液)を添加した。反応液を周囲温度まで30分間昇温させた。ケトン
(5.0g,11.9mmol)を第2のフラスコ内のTHF(25mL)に溶解させた
。このケトン溶液をピーターソン試薬に、温度を−60℃〜−40℃に維持しながら30
分間にわたって移した。反応液を−40℃まで1時間昇温させ、次いで、0℃まで30分
間昇温させた。重炭酸ナトリウムを用いて反応液をクエンチし、さらに水で希釈し、水/
ヘキサン間に分配した。有機部分をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾
過し、真空にてエバポレートした。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(0か
ら40%までのMTBE/ヘキサン)、α,β−不飽和アミドviiを得た。
1H NM
R(400MHz,CDCl
3)δ 5.75(s,1H)、5.36(m,4H)、3
.01(s,3H)、2.99(s,3H)、2.78(t,2H)、2.28(t,2
H)、2.05(m,6H)、1.35(m,34H)、0.89(m,6H)。
【0100】
【化16】
α,β−不飽和アミドvii(1g,2.1mmol)とLS−セレクトリド(4.1
mmol,4.1mLの1M溶液)を密封チューブ内で合わせ、60℃まで24時間加熱
した。反応液を周囲温度まで冷却し、塩化アンモニウム溶液とヘプタン間に分配した。有
機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空にてエバポレートし、アミドvii
iを得た。この中間体を直接、次の反応に粗製状態で持ち越した。α,β−不飽和アミド
viiの択一的な共役還元は、水素化銅での還元の使用を伴うものである。
【0101】
【化17】
5L容RB内で、銅触媒(9.77g,17.13mmol)を窒素下でトルエン(1
713ml)に溶解させた。これに、PMHS(Aldrich製)(304ml,13
71mmol)を一気に添加した。反応液を5分間熟成させた。この溶液に、α,β−不
飽和アミドvii(167.16g、343mmol)を添加した。次いで、この混合物
にt−アミルアルコール(113ml,1028mmol)をシリンジポンプによって3
時間にわたって添加した。添加終了後、この溶液に約1700mLの20%NH40Hを
少量に分けて添加して反応(rxn)させた。注意:クエンチの初めに激しい発泡および
起泡が見られ、これは、しっかりとモニタリングしなければならず、水酸化アンモニウム
は少量に分けてゆっくり添加しなければならない。反応液を水とヘキサン間に分配した。
有機部分をセライトに通して濾過し、真空にてエバポレートした。得られたゴム状固形物
質を、機械的撹拌器を用いてヘキサン中で粉砕し、小さな粒状物を得、次いで、これを濾
過し、ヘキサンで洗浄した。次いで、有機部分を真空にてエバポレートし、フラッシュク
ロマトグラフィーによって精製し(シリカ,0から15%までの酢酸エチル/ヘキサン)
、所望のアミドviiiを得た。LC/MS(M+H)=490.7。
【0102】
【化18】
アミドviii(2.85g,5.8mmol)の溶液に、水素化アルミニウムリチウ
ム(8.7mmol,8.7mLの1M溶液)を添加した。反応液を周囲温度で10分間
撹拌し、次いで、硫酸ナトリウム十水和物溶液をゆっくり添加することによってクエンチ
した。固形物を濾過し、THFで洗浄し、濾液を真空にてエバポレートした。粗製混合物
を分取用逆相クロマトグラフィー(C8カラム)によって精製し、(13Z,16Z)−
N,N−ジメチル−3−ノニルドコサ−13,16−ジエン−1−アミン(化合物32)
を油状物として得た。HRMS(M+H)計算値476.5190,実測値476.51
89。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 5.37(m,4H)、2.78
(t,2H)、2.42(m,8H)、2.05(q,4H)、1.28(m,41H)
、0.89(m,6H)。
N,N−ジメチル−1−(2−オクチルシクロプロピル)ヘプタデカン−8−アミン(化
合物33)
【0103】
【化19】
0℃まで冷却したオレイン酸(1g,3.5mmol)のDCM(500mL)溶液に
、CDI(0.63g,3.9mmol)を添加した。反応液を周囲温度まで30分間昇
温させた後、0℃まで冷却し、まずトリエチルアミン(0.39g,3.9mmol)で
、次いでジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.38g,3.9mmol)で処理した
。1時間後、反応液を水とヘプタン間に分配した。有機部分を硫酸マグネシウム上で乾燥
させ、濾過し、真空にてエバポレートし、粗製ワインレブアミドiiを得、これを直接、
次の反応に持ち越した。
【0104】
【化20】
ジエチル亜鉛(70.3mmol,70.3mLの1M溶液)のジクロロメタン(13
0mL)溶液を−1℃まで冷却し、TFA(8.0g,70.3mmol)の滴下にて処
理した。30分後、ジヨードメタン(18.8g,70.3mmol)を添加し、これを
氷浴内で30分間熟成させた。この溶液に、ワインレブアミドii(7.6g,23.4
mmol)を添加した。反応液を周囲温度まで昇温させ、1時間撹拌した。塩化アンモニ
ウム溶液(100mL)を用いて反応液をクエンチし、有機層を分配して取り出し、10
%チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空にてエバ
ポレートした。精製はフラッシュクロマトグラフィーとし(0から30%までのMTBE
/ヘプタン)、所望の生成物xを得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ
3.72(s,3H)、3.22(s,3H)、2.48(t,2H)、1.65(m,
2H)、1.39(m,22H)、1.18(m,2H)、0.91(t,3H)、0.
68(m,2H)、0.59(m,1H)、−0.32(m,1H)。
【0105】
【化21】
ワインレブアミドxの化合物33への変換は、上記の化合物1について記載のものと同
様の様式で行った(ノニルグリニャール付加の後、還元的アミノ化)。LC/MS(M+
H)=436.6.
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 2.25(s,6H
)、1.30(m,45H)、0.91(m,6H)、0.68(m,2H)、0.59
(m,1H)、−0.31(m,1H)。
【0106】
化合物34〜43は新規なカチオン性脂質であり、上記の一般スキーム1〜4に従って
調製した。
【0107】
【表2】
(11E,20Z,23Z)−N,N−ジメチルノナコサ−11,20,23−トリエン
−10−アミン(化合物44)
【0108】
【化22】
−78℃まで冷却したLDA(95mmol,47.5mLの2M溶液)のTHF(1
27mL)溶液に、酢酸t−ブチルを添加した。反応液を15分間撹拌した後、アルデヒ
ドxiを添加した。直ちに塩化アンモニウム溶液を用いて反応液をクエンチし、周囲温度
まで昇温させ、水/ペンタン間に分配した。有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾
過し、真空にてエバポレートした。LC/MS(M+H−tBu)=325.4。
【0109】
【化23】
ヒドロキシケトンxii(7g,18.4mmol)をジクロロメタン(150mL)
に溶解させ、0℃まで冷却し、デオキソフルオル(7.3g,33.1mmol)で処理
した。反応液を撹拌しながら16時間、周囲温度まで昇温させた後、重炭酸ナトリウム溶
液を用いてクエンチした。反応液を分配し、有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾
過し、真空にてエバポレートした。フラッシュカラムクロマトグラフィー(chromo
tagraphy)(0から5%までの酢酸エチル/ヘキサン)により、β−フルオロエ
ステルを得た。
【0110】
フルオロエステル中間体(6g,15.6mmol)(ジクロロメタン中)を塩化水素
(157mmol,39.2mLの4Mのジオキサン溶液)で処理し、反応液を周囲温度
で16時間撹拌した。反応液を真空にてエバポレートし、所望のβ−フルオロ酸xiii
を得た。LC/MS(M+H)=327.3。
【0111】
【化24】
フルオロカルボン酸xiii(5.1g,15.7mmol)、EDC(6.0g,3
1.4mmol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(3.1g,31.4m
mol)、トリメチルアミン(4.0g,39.2mmol)、およびHOAt(4.3
g,31.4mmol)をDCM(78mL)中で合わせ、周囲温度で16時間撹拌した
。反応液を水/DCM間に分配し、有機部分を水(3×)とNaOH溶液(1×)で洗浄
し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空にてエバポレートした。粗製物質を分取
用逆相クロマトグラフィーによって精製し、所望のワインレブアミドxivを得た。LC
/MS(M+H)=370.4。
【0112】
【化25】
ワインレブアミドxiv(4.3g,11.7mmol)のTHF(50mL)溶液を
、ノニルマグネシウムブロミド(23.4mmol,23.4mLの1M溶液)で周囲温
度にて処理した。1時間後に塩化アンモニウム溶液を用いて反応液をクエンチし、水とペ
ンタン間に分配した。有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空にてエバポ
レートした。この物質を次の工程に粗製状態で持ち越した。
【0113】
【化26】
ケトンxv(5.1g,11.7mmol)をジメチルアミン(29.3mmol,1
4.7mLの2MのTHF溶液)とチタン(IV)イソプロポキシド(6.7g,23.
5mmol)で処理し、反応液を周囲温度で16時間撹拌した。反応混合物にエタノール
(50mL)を添加した後、水素化ホウ素ナトリウム(0.67g,17.6mmol)
を添加した。反応液を直接シリカカラムに負荷し、フラッシュクロマトグラフィーによっ
て精製した(0から15%までのMeOH/DCM)。この物質は、(11E,20Z,
23Z)−N,N−ジメチルノナコサ−11,20,23−トリエン−10−アミンを得
るために分取用逆相クロマトグラフィーによる2回目の精製が必要であった。HRMS
計算値446.4720,実測値446.4724。
1H NMR(400MHz,CD
Cl
3)δ 5.48(m,1H)、5.37(m,4H)、5.23(m,1H)、2
.78(t,2H)、2.58(m,1H)、2.22(s,6H)、2.04(m,6
H)、1.56(m,1H)、1.30(m,31H)、0.89(m,6H)。
【0114】
化合物45は、Nature Biotechnology,2010,28,172
−176、国際公開第2010/042877号パンフレット、同第2010/0485
36号パンフレット、同第2010/088537号パンフレット、および同第2009
/127060号パンフレットに記載のDLinKC2DMAである。
【0115】
【化27】
化合物46は、国際公開第2010/054401号パンフレット、および同第201
0/144740号パンフレットに記載のMC3である。
【0116】
【化28】
LNP組成物
以下の本発明の脂質ナノ粒子組成物(LNP):
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG 56.6/38/5.4;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG 60/38/2;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG 67.3/29/3.7;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG 49.3/47/3.7;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG 50.3/44.3/5.4;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−C−DMA/DSPC 40/48/2/
10;
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG/DSPC 40/48/2/10
;および
カチオン性脂質/コレステロール/PEG−DMG/DSPC 58/30/2/10
は、オリゴヌクレオチド、具体的にはsiRNAおよびmiRNAの送達に有用である。
LNPプロセスの説明:
脂質ナノ粒子(Lipid Nano−Particles(LNP))は、衝突噴流
プロセスによって調製される。この粒子は、アルコールに溶解させた脂質を、クエン酸バ
ッファーに溶解させたsiRNAと混合することにより形成される。siRNAに対する
脂質の混合比は、脂質が45〜55%およびsiRNAが65〜45%を目標にする。脂
質溶液は、本発明の新規なカチオン性脂質、ヘルパー脂質(コレステロール)、PEG(
例えば、PEG−C−DMA、PEG−DMG)脂質およびDSPCを、アルコール(例
えば、エタノール)中に5〜15mg/mL(目標9〜12mg/mL)の濃度で含むも
のにする。脂質の比率は、カチオン性脂質が25〜98(目標35〜65)のモルパーセ
ント範囲を有し、ヘルパー脂質は0〜75(目標30〜50)のモルパーセント範囲を有
し、PEG脂質は1〜15(目標1〜6)のモルパーセント範囲を有し、DSPCは0〜
15(目標0〜12)のモルパーセント範囲を有するようにする。siRNA溶液は、1
種類以上のsiRNA配列を、クエン酸ナトリウム緩衝塩溶液(3.5〜5の範囲のpH
を有する)中に0.3〜1.0mg/mLの(目標0.3〜0.9mg/mL)の濃度範
囲で含むものにする。この2つの溶液を15〜40℃(目標30〜40℃)の範囲の温度
まで加熱し、次いで、衝突噴流混合機内で混合すると、即座にLNPが形成される。T字
部内径(teeID)は0.25〜1.0mmの範囲であり、総流速は10〜600mL
/分にする。流速とチューブ内径の組合せは、LNPの粒径を30〜200nmに制御す
る効果を有する。次いで、この溶液を緩衝溶液と高pHで、1:1〜1:3(vol:v
ol)(だが1:2(vol:vol)を目標にする)の範囲の混合比で混合する。この
緩衝溶液を15〜40℃(目標30〜40℃)の範囲の温度にする。混合LNPを30分
間〜2時間保持した後、アニオン交換濾過工程を行う。インキュベーション中の温度は1
5〜40℃(目標30〜40℃)の範囲にする。インキュベーション後、この溶液を0.
8umフィルターに通して濾過する(アニオン交換分離工程を含む)。このプロセスでは
、1mm ID〜5mm IDの範囲のチューブ内径および10〜2000mL/分の流
速が使用される。LNPは濃縮され、限外濾過プロセスによってダイアフィルトレーショ
ンされ、このとき、アルコールが除去され、クエン酸バッファーが最終バッファー溶液(
リン酸緩衝生理食塩水など)と交換される。限外濾過プロセスには、タンジェンシャルフ
ロー濾過形式(TFF)が使用される。このプロセスでは、30〜500KDの公称分子
量カットオフ範囲の膜が使用される。膜形式は、中空繊維であってもフラットシートカセ
ットであってもよい。適正な分子量カットオフを用いたTFFプロセスにより、LNPが
保持液中に保持され、濾液または透過液中にアルコール;クエン酸バッファー;および最
終バッファー廃物が含有される。TFFプロセスは、初期濃度からsiRNA濃度1〜3
mg/mLまでの多工程プロセスである。濃縮後、LNP溶液を最終バッファーに対して
10〜20容量でダイアフィルトレーションしてアルコールを除去し、バッファー交換を
行う。次いで、この物質をさらに1〜3倍に濃縮する。LNPプロセスの最終工程は、濃
縮LNP溶液の滅菌濾過および生成物のバイアル封入である。
解析手順:
1)siRNA濃度
siRNA二本鎖の濃度は、強アニオン交換高速液体クロマトグラフィー(SAX−H
PLC)により、2996 PDA検出器を備えたWaters 2695 Allia
nceシステム(Water Corporation,Milford MA)を用い
て測定される。LNP(あるいは、RNAi送達媒体(RDV)とも称する)を、0.5
%Triton X−100で処理して全siRNAを遊離させ、SAX分離により、D
ionex BioLC DNAPac PA 200(4×250mm)カラムを用い
て解析する(254nmでUV検出)。移動相は、A:25mM NaClO
4,10m
M Tris,20%EtOH,pH7.0と、B:250mM NaClO
4,10m
M Tris,20%EtOH,pH7.0を0分から15分までの線形勾配で構成し、
流速を1ml/分とする。siRNA量は、siRNA標準曲線との比較によって求めら
れる。
2)封入速度
蛍光試薬SYBR GoldをRNA定量に使用し、RDVの封入速度をモニタリング
する。Triton X−100とともに、またはなしでRDVを使用し、遊離siRN
Aおよび全siRNAの量を調べる。アッセイは、SpectraMax M5eマイク
ロプレート分光測光器(Molecular Devices(Sunnyvale,C
A)製)を用いて行う。試料を485nmで励起し、蛍光放射を530nmで測定した。
siRNA量は、siRNA標準曲線との比較によって求められる。
【0117】
封入速度=(1−遊離siRNA/全siRNA)×100%
3)粒径および多分散性
1μgのsiRNAを内包しているRDVを、1×PBSで最終容量3mlまで希釈す
る。試料の粒径および多分散性を、動的光散乱法によりZetaPALS機器(Broo
khaven Instruments Corporation,Holtsvill
e,NY)を用いて測定する。散乱強度は、He−Neレーザーを用いて25℃にて90
°の散乱角で測定する。
4)ゼータ電位の解析
1μgのsiRNAを内包しているRDVを、1mMのTrisバッファー(pH7.
4)で最終容量2mlまで希釈する。試料の電気泳動移動度をZetaPALS機器(B
rookhaven Instruments Corporation,Holtsv
ille,NY)(電極および光源としてHe−Neレーザーを有する)を用いて調べる
。ゼータ電位の計算には、スモルコフスキー限界を想定する。
5)脂質の解析
個々の脂質濃度を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により、コロ
ナ荷電化粒子検出器(CAD)(ESA Biosciences,Inc,Chelm
sford,MA)を備えたWaters 2695 Allianceシステム(Wa
ter Corporation,Milford MA)を用いて測定する。RDV内
の個々の脂質を、CADを備えたAgilent Zorbax SB−C18(50×
4.6mm,1.8μm粒径)カラムを用いて60℃で解析する。移動相は、A:0.1
%TFA(H
2O中)とB:0.1%TFA(IPA中)で構成する。勾配は、60%の
移動相Aと40%の移動相Bで時間0から1.00分のとき40%の移動相Aと60%の
移動相Bまで;40%の移動相Aと60%の移動相Bで1.00から5.00分まで;4
0%の移動相Aと60%の移動相Bで5.00分から10.00分のとき25%の移動相
Aと75%の移動相Bまで;25%の移動相Aと75%の移動相Bで10.00分から1
5.00分のときに5%の移動相Aと95%の移動相Bまで;および5%の移動相Aと9
5%の移動相Bで15.00から20.00分のときに60%の移動相Aと40%の移動
相Bまで変化させ、流速は1ml/分にする。個々の脂質濃度は、RDV内の全脂質成分
での標準曲線と比較して二次曲線フィットにより求める。各脂質のモル百分率を、その分
子量に基づいて計算する。
化合物32の配合物の一般的なLNPプロセスの説明:
脂質ナノ粒子を衝突噴流プロセスによって調製した。この粒子は、アルコールに溶解さ
せた脂質を、クエン酸バッファーに溶解させたsiRNAと混合することにより形成した
。脂質溶液は、カチオン性脂質、ヘルパー脂質(コレステロール)、PEG(例えば、P
EG−C−DMA、PEG−DMG)脂質およびDSPCを、アルコール(例えば、エタ
ノール)中に5〜15mg/mL(目標9〜12mg/mL)の濃度で含むものとした。
脂質の比率は、カチオン性脂質が25〜98(目標35〜65)のモルパーセント範囲を
有し、ヘルパー脂質は0〜75(目標30〜50)のモルパーセント範囲を有し、PEG
脂質は1〜15(目標1〜6)のモルパーセント範囲を有し、DSPCは0〜15(目標
0〜12)のモルパーセント範囲を有するようにした。siRNA溶液は、1種類以上の
siRNA配列を、クエン酸ナトリウム緩衝塩溶液(3.5〜5の範囲のpHを有する)
中に0.3〜0.6mg/mLの(目標0.3〜0.9mg/mL)の濃度範囲で含むも
のとした。この2つの溶液を15〜40℃(目標30〜40℃)の範囲の温度まで加熱し
、次いで、衝突噴流混合機内で混合すると、即座にLNPが形成された。T字部内径(t
eeID)は0.25〜1.0mmの範囲とし、総流速は10〜600mL/分とした。
流速とチューブ内径の組合せは、LNPの粒径を30〜200nmに制御する効果を有し
た。次いで、LNP懸濁液を緩衝溶液と高pHで、1:1〜1:3(vol:vol)(
だが1:2(vol:vol)を目標にする)の範囲の混合比で混合した。この緩衝溶液
を15〜40℃(目標30〜40℃)の範囲の温度にした。さらに、このLNP懸濁液を
緩衝溶液と高pHで、1:1〜1:3(vol:vol)(だが1:2(vol:vol
)を目標にする)の範囲の混合比で混合した。この緩衝溶液を15〜40℃(目標30〜
40℃)の範囲の温度にした。混合LNPを30分間〜2時間保持した後、アニオン交換
濾過工程を行った。インキュベーション中の温度は15〜40℃(目標30〜40℃)の
範囲にした。インキュベーション後、LNP懸濁液を0.8umフィルターに通して濾過
した(アニオン交換分離工程を含む)。このプロセスでは、1mm ID〜5mm ID
の範囲のチューブ内径および10〜2000mL/分の流速を使用した。LNPを濃縮し
、限外濾過プロセスによってダイアフィルトレーションし、このとき、アルコールが除去
され、クエン酸バッファーが最終バッファー溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)と交換さ
れた。限外濾過プロセスには、タンジェンシャルフロー濾過形式(TFF)を使用した。
このプロセスでは、30〜500KDの公称分子量カットオフ範囲の膜を使用した。膜形
式は、中空繊維またはフラットシートカセットとした。適正な分子量カットオフを用いた
TFFプロセスにより、LNPが保持液中に保持され、濾液または透過液中にアルコール
;クエン酸バッファー;および最終バッファー廃物が含有された。TFFプロセスは、初
期濃度からsiRNA濃度1〜3mg/mLまでの多工程プロセスである。濃縮後、LN
P懸濁液を最終バッファーに対して10〜20容量でダイアフィルトレーションしてアル
コールを除去し、バッファー交換を行った。次いで、この物質をさらに1〜3倍に濃縮し
た。LNPプロセスの最終工程は、濃縮LNP溶液の滅菌濾過および生成物のバイアル封
入とした。
解析手順:
siRNA濃度
siRNA二本鎖の濃度を、強アニオン交換高速液体クロマトグラフィー(SAX−H
PLC)により、2996 PDA検出器を備えたWaters 2695 Allia
nceシステム(Water Corporation,Milford MA)を用い
て測定した。LNP(あるいは、RNAi送達媒体(RDV)とも称する)を、0.5%
Triton X−100で処理して全siRNAを遊離させ、SAX分離により、Di
onex BioLC DNAPac PA 200(4×250mm)カラムを用いて
解析した(254nmでUV検出)。移動相は、A:25mM NaClO
4,10mM
Tris,20%EtOH,pH7.0と、B:250mM NaClO
4,10mM
Tris,20%EtOH,pH7.0を0分から15分までの線形勾配で構成し、流
速を1ml/分とした。siRNA量を、siRNA標準曲線との比較によって求めた。
封入速度
蛍光試薬SYBR GoldをRNA定量に使用し、RDVの封入速度をモニタリング
した。Triton X−100とともに、またはなしでRDVを使用し、遊離siRN
Aおよび全siRNAの量を調べた。アッセイは、SpectraMax M5eマイク
ロプレート分光測光器(Molecular Devices(Sunnyvale,C
A)製)を用いて行う。試料を485nmで励起し、蛍光放射を530nmで測定した。
siRNA量は、siNA標準曲線との比較によって求められる。
【0118】
封入速度=(1−遊離siNA/全siNA)×100%
粒径および多分散性
1μgのsiRNAを内包しているRDVを、1×PBSで最終容量3mlまで希釈し
た。試料の粒径および多分散性を、動的光散乱法によりZetaPALS機器(Broo
khaven Instruments Corporation,Holtsvill
e,NY)を用いて測定した。散乱強度は、He−Neレーザーを用いて25℃にて90
°の散乱角で測定した。
ゼータ電位の解析
1μgのsiRNAを内包しているRDVを、1mMのTrisバッファー(pH7.
4)で最終容量2mlまで希釈した。試料の電気泳動移動度をZetaPALS機器(B
rookhaven Instruments Corporation,Holtsv
ille,NY)(電極および光源としてHe−Neレーザーを有する)を用いて調べた
。ゼータ電位の計算には、スモルコフスキー限界を想定した。
脂質の解析
個々の脂質濃度を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により、コロ
ナ荷電化粒子検出器(CAD)(ESA Biosciences,Inc,Chelm
sford,MA)を備えたWaters 2695 Allianceシステム(Wa
ter Corporation,Milford MA)を用いて測定した。RDV内
の個々の脂質を、CADを備えたAgilent Zorbax SB−C18(50×
4.6mm,1.8μm粒径)カラムを用いて60℃で解析した。移動相は、A:0.1
%TFA(H
2O中)とB:0.1%TFA(IPA中)で構成した。勾配は、60%の
移動相Aと40%の移動相Bで時間0から1.00分のとき40%の移動相Aと60%の
移動相Bまで;40%の移動相Aと60%の移動相Bで1.00から5.00分まで;4
0%の移動相Aと60%の移動相Bで5.00分から10.00分のとき25%の移動相
Aと75%の移動相Bまで;25%の移動相Aと75%の移動相Bで10.00分から1
5.00分のときに5%の移動相Aと95%の移動相Bまで;および5%の移動相Aと9
5%の移動相Bで15.00から20.00分のときに60%の移動相Aと40%の移動
相Bまで変化させ、流速は1ml/分とした。個々の脂質濃度は、RDV内の全脂質成分
での標準曲線と比較して二次曲線フィットにより求めた。各脂質のモル百分率を、その分
子量に基づいて計算した。
表1の種々の配合物のための一般的なLNP調製物
表1のsiRNAナノ粒子懸濁液は、siRNAおよび/または担体分子を20mMク
エン酸ナトリウムバッファー(pH5.0)に約0.40mg/mLの濃度で溶解させる
ことにより調製される。脂質溶液は、カチオン性脂質(例えば、32,表2の構造参照)
、DSPC、コレステロールおよびPEG−DMG(表1に示した比率)の混合物を無水
エタノールに、約8mg/mLの濃度で溶解させることにより調製される。リン酸部に対
する窒素の比率は6:1と概算される。
【0119】
ほぼ等容量のsiRNA/担体溶液と脂質溶液を、2つのFPLCポンプを同じ流速で
用いて混合T字コネクタに送達する。背圧弁を使用し、所望の粒径に調整する。得られた
乳状混合物を滅菌ガラスビン内に収集する。次いで、この混合物を等容量のクエン酸バッ
ファーで、続いて等容量のPBS(pH7.4)で希釈し、イオン交換膜に通して濾過し
、混合物中の遊離siRNA/担体(あれば)を除去する。PBS(7.4))に対する
限外濾過を使用し、エタノールを除去してバッファーを交換する。所望の容量まで濃縮し
、0.2μmフィルターに通して滅菌濾過することにより最終LNPを得る。得られたL
NPを、粒径、ゼータ電位、アルコール含量、総脂質含量、封入核酸および総核酸濃度に
関して特性評価する。
LNP製造プロセス
非限定的な例において、LNPは、バルクで以下のようにして調製される。このプロセ
スは、(1)脂質溶液の調製;(2)siRNA/担体溶液の調製;(3)混合/粒子の
形成;(4)インキュベーション;(5)希釈;(6)限外濾過および濃縮からなる。
脂質溶液の調製
2L容のガラス試薬ビンとメスシリンダーを脱パイロジェン処理する。脂質を室温まで
昇温させる。このガラス試薬ビン内に、8.0gの化合物32をピペットで移し、1.2
gのDSPC、3.5gのコレステロール、0.9gのPEG−DMGを添加する。この
混合物に1Lのエタノールを添加する。試薬ビンを、加熱した水浴(50℃を超えない温
度)中に入れる。脂質懸濁液を撹拌バーで撹拌する。この懸濁液中に、丸底フラスコの口
の1つから密封アダプターを付けて熱電対プローブを入れる。懸濁液を透明になるまで3
0〜40℃で加熱する。この溶液を室温まで放冷する。
siRNA/担体溶液の調製
滅菌容器内(Corning保存ビンなど)に、水補正率(およそ1.2)の0.4倍
のg数のsiRNA−1粉末を量り入れる。このsiRNAを、脱パイロジェン処理した
2L容ガラス試薬ビンに移す。この秤量容器をクエン酸バッファー(20mM,pH5.
0)で3回すすぎ洗浄し、すすぎ液をこの2L容ガラスビンに入れ、1Lになるまでクエ
ン酸バッファーで分量供給(QS)する。siRNA溶液の濃度は、UV分光計により以
下の手順を用いて測定される。該溶液から20μLを取り出し、50倍に希釈して100
0μLにし、クエン酸バッファーでのブランク測定後にUV読み値をA260nmで記録
する。これを繰り返す。2つの試料の読み値が整合している場合は、平均をとり、siR
NAの消散係数に基づいて濃度を計算する。最終濃度が0.40±0.01mg/mLの
範囲外である場合、さらにsiRNA/担体粉末を添加すること、またはさらにクエン酸
バッファーを添加することにより濃度を調整する。適用可能な場合は、このプロセスを第
2のsiRNAで反復する。
【0120】
あるいはまた、siRNA/担体溶液を、2種類以上のsiRNA二本鎖および/また
は担体のカクテルではなく1種類のsiRNA二本鎖および/または担体で構成した場合
、siRNA/担体を20mMクエン酸バッファー(pH5.0)に溶解させ、終濃度を
0.4mg/mLにする。
【0121】
次いで、脂質溶液とエタノール溶液をPall Acropak 20 0.8/0.
2μm滅菌フィルターPN 12203に通して滅菌濾過し、Master Flex
Peristaltic Pump Model 7520−40を用いて脱パイロジェ
ン処理済ガラス槽内に入れ、封入プロセスのための滅菌出発物質を得る。濾過プロセスは
、20cm
2の膜面積で80mL規模にて実施する。流速は280mL/分とする。この
プロセスは、チューブ直径と濾過面積を増大させることによりスケールアップ可能である
。
粒子の形成−混合工程
ツーバレルシリンジ駆動型ポンプ(Harvard 33 Twin Syringe
)を使用し、滅菌脂質/エタノール溶液と、滅菌siRNA/担体またはsiRNA/担
体カクテル/クエン酸バッファー(20mMクエン酸バッファー,pH5.0)溶液を、
0.5mm ID T−混合機(混合ステージI)内で、等しいまたはほぼ等しい流速で
混合する。得られた排出LNP懸濁液には、40〜50vol%のエタノールが含まれて
いた。45vol%エタノール排出懸濁液が所望される場合、滅菌脂質/エタノールと、
滅菌siRNA/担体またはsiRNA/担体カクテル/クエン酸バッファー溶液を、そ
れぞれ、54mL/分および66mL/分の流速で、排出混合物の総流速が120mL/
分となるように混合する。
希釈
混合ステージIの排出流は直接、4mm ID T−混合機(混合ステージII)内に
供給され、ここで、高pHの緩衝溶液(20mMクエン酸ナトリウム,300mM塩化ナ
トリウム,pH6.0)により1:1(vol:vol%)の比率で希釈される。この緩
衝溶液は30〜40℃の範囲の温度であり、4mm T−混合機に蠕動ポンプ(Cole
Parmer MasterFlex L/S 600 RPM)によって120mL
/分の流速で送達される。
【0122】
混合ステージIIの排出流は直接、6mm ID T−混合機(混合ステージIII)
内に供給され、ここで、高pH緩衝溶液(PBS,pH7.4)により1:1(vol:
vol%)の比率で希釈される。この緩衝溶液は15〜25℃の範囲の温度であり、6m
m T−混合機に蠕動ポンプ(Cole Parmer MasterFlex L/S
600 RPM)によって240mL/分の流速で送達される。
インキュベーションおよび遊離siRNAの除去
混合ステージIIIの排出流は、30分間のインキュベーションのための混合後、保持
される。インキュベーションは35〜40℃の温度で行われ、プロセス内懸濁液を光から
保護した。インキュベーション後、遊離の(封入されていない)siRNAを、Must
ang Qクロマトグラフィーフィルター(カプセル)でのアニオン交換によって除去す
る。使用前、クロマトグラフィーフィルターを、逐次、1N NaOH、1M NaCl
、および最後に12.5vol%エタノール溶液(PBS中)のフラッシュ液で前処理す
る。最後のフラッシュ液のpHは、pH<8が確実であることを確認する。次いで、イン
キュベーションしたLNP流を、Mustang Qフィルターによって蠕動ポンプ(C
ole Parmer MasterFlex L/S 600 RPM)によっておよ
そ100mL/分の流速で濾過する。濾過流を、以下の限外濾過および濃縮のために滅菌
ガラス容器内に受容する。
限外濾過、濃縮および滅菌濾過
限外濾過プロセスは時限的プロセスであり、流速は注意深くモニタリングしなければな
らない。これは2工程プロセスであり;最初は、希釈物質を採取し、siRNAをおよそ
0.3〜0.6mg/mLの濃度までおよそ8倍に濃縮する濃縮工程である。
【0123】
第1の工程では、限外濾過膜100kDa PES(Spectrum Labs)を
備えたリングスタンドを蠕動ポンプ(Spectrum KrosFloII Syst
em)に装着する。9.2Lの滅菌蒸留水をレザーバに添加し;3Lをドレイン排出して
廃棄し、残りを透過液中にドレイン排出して廃棄する。5.3Lの0.25N水酸化ナト
リウムをレザーバに添加し、1.5Lをドレイン排出して廃棄し、3.1Lを透過液中に
ドレイン排出して廃棄する。残りの水酸化ナトリウムを、消毒のために系内に保持し(少
なくとも10分間)、次いでポンプをドレイン排出する。9.2Lの70(v/v)%イ
ソプロピルアルコールをレザーバに添加し、1.5Lをドレイン排出して廃棄し、残りを
透過液中にドレイン排出して廃棄する。6Lのコンディショニングバッファー(リン酸緩
衝生理食塩水中12.5%エタノール)を添加し、1.5Lをドレイン排出して廃棄し、
残りを、廃液が中性pH(7〜8)になるまで透過液中にドレイン排出する。膜の流出値
を記録し、次いでポンプをドレイン排出する。
【0124】
希釈LNP溶液をレザーバ内に1.1Lの印まで入れる。ポンプを2.3L/分で作動
させる。5分間の再循環後、透過液ポンプを62.5mL/分で作動させ、液レベルをレ
ザーバ内で、およそ950mLに一定にする。希釈LNP溶液を9.8Lから1.1Lま
で140分間で濃縮し、希釈LNP溶液がすべてレザーバに移されたらポンプを一時停止
する。
【0125】
第2工程は、エタノール/水性バッファーをリン酸緩衝生理食塩水に交換するダイアフ
ィルトレーション工程である。この工程中、およそ10〜20ダイアフィルトレーション
容量のリン酸緩衝生理食塩水を使用する。ダイアフィルトレーション後、2回目の濃縮を
行い、LNP懸濁液を、siRNAがおよそ1〜1.5mg/mLになるまで3倍に濃縮
する。濃縮された懸濁液は、滅菌プラスチックPETGビン内に収集する。次いで、最終
懸濁液を、逐次、Pall 0.45um PESフィルターおよびPall 0.2u
m PESフィルターによって最終滅菌のために濾過した後、バイアル充填する。
【0126】
一実施形態において、本発明のLNP組成物は、式Aのカチオン性脂質、コレステロー
ル、DSPCおよびPEG−DMGを含むものである。
【0127】
別の実施形態において、本発明のLNP組成物は、さらに抗凍結剤を含むものである。
【0128】
別の実施形態において、抗凍結剤は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタ
キオース、ベルバスコース、マンニトール、グルコース、ラクトース、マルトース、マル
トリオース−ヘプタオース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、インスリン、ソ
ルビトール、グリセロール、アルギニン、ヒスチジン、リシン、プロリン、ジメチルスル
ホキシドまたはその任意の組合せである。
【0129】
別の実施形態において、抗凍結剤はスクロースである。
【0130】
別の実施形態において、抗凍結剤はトレハロースである。
【0131】
別の実施形態において、抗凍結剤はスクロースとトレハロースの組合せである。
【0132】
別の実施形態において、LNP組成物は、カチオン性脂質(13Z,16Z)−N,N
−ジメチル−3−ノニルドコサ−13,16−ジエン−1−アミン(化合物32)、コレ
ステロール、DSPCおよびPEG−DMGを含むものである。
【0133】
得られたLNPを、粒径、ゼータ電位、アルコール含量、総脂質含量、封入核酸および
総核酸濃度に関して特性評価する。
【0134】
当業者には、本発明が、課題を遂行するため、ならびに記載の目的および利点ならびに
本発明に固有の目的および利点を得るのに充分適合したものであることが容易に認識され
よう。現時点で代表的な好ましい実施形態である本明細書に記載の方法および組成物は例
示的であり、本発明の範囲に対する限定を意図しない。当業者には、本発明の精神に包含
され、特許請求の範囲によって規定される本発明の変形例および他の使用が思いつくであ
ろう。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
上記のLNPプロセスを使用し、以下の比率の具体的なLNPを特定した。
【0137】
【化29】
オリゴヌクレオチドの合成は当該技術分野でよく知られている(米国特許出願:米国特
許出願公開第同第2006/0083780号明細書、同第2006/0240554号
明細書、同第2008/0020058号明細書、同第2009/0263407号明細
書および同第2009/0285881号明細書ならびにPCT特許出願:国際公開第2
009/086558号パンフレット、同第2009/127060号パンフレット、同
第2009/132131号パンフレット、同第2010/042877号パンフレット
、同第2010/054384号パンフレット、同第2010/054401号パンフレ
ット、同第2010/054405号パンフレットおよび同第2010/054406号
パンフレット参照)。本実施例において開示し、使用したsiRNAは標準的な固相手順
によって合成した。
【0138】
実施例1
マウスでの有効性のインビボ評価
化合物1〜44を使用したすぐ上に示した公称組成のLNPを、インビボ有効性につい
て評価した。siRNAは、ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラー
ゼ遺伝子(受託番号M15077)のmRNA転写物を標的化するものである。ルシフェ
ラーゼsiRNAの一次配列と化学修飾パターンは上記に示している。インビボルシフェ
ラーゼモデルには、ホタルルシフェラーゼコード配列がすべての細胞内に存在するトラン
スジェニックマウスを使用する。ROSA26−LoxP−Stop−LoxP−Luc
(LSL−Luc)トランスジェニックマウス(Dana Farber Cancer
Instituteから実施許諾を得た)を、最初に組換えAd−Creウイルス(V
ector Biolabs)を用いてLSL配列を除去することにより、ルシフェラー
ゼ遺伝子が発現されるように誘導する。該ウイルスの臓器向性の性質のため、尾静脈注射
によって送達すると、発現は肝臓に限定される。肝臓内ルシフェラーゼ発現レベルを、ル
シフェリン基質(Caliper Life Sciences)の投与後にIVIS撮
像装置(Xenogen)を用いて光出力を測定することにより定量する。RDVの投与
前に投与前発光レベルを測定する。ルシフェリン(PBS中(15mg/mL))を15
0μLの容量で腹腔内(IP)注射する。4分間のインキュベーション期間後、マウスを
イソフルランで麻酔し、IVIS撮像装置内に置く。RDV(siRNAを含有)(PB
Sビヒクル中)を0.2mLの容量で尾静脈注射した。最終用量レベルを0.1〜0.5
mg/kg siRNAの範囲とした。対照としてPBSビヒクル単独を投与した。投与
の48時間後、上記の方法を用いてマウスの画像を撮影した。ルシフェリンの光出力の変
化は、ルシフェラーゼのmRNAレベルと直接的に相関しており、ルシフェラーゼsiR
NA活性の間接的は尺度を表す。インビボ有効性の結果を投与前発光レベルに対する発光
阻害%として示す。ルシフェラーゼsiRNA RDVを全身投与すると、ルシフェラー
ゼ発現が用量依存的様式で減少した。RDVを内包している化合物1を投与したマウスで
は、RDV含有オクチル−CLinDMA(OCD)カチオン性脂質の場合よりも大きな
有効性が観察された(
図1)。OCDは既知であり、国際公開第2010/021865
号パンフレットに記載されている。RDVを内包している化合物32および33を投与し
たマウスでも、MC3(化合物46)カチオン性脂質を含有するRDVと比べて同様の有
効性が観察された(
図11)。
【0139】
実施例2
インビトロApoE結合アッセイ
LNPを、90%アカゲザル血清中、4ug/mLの最終LNP濃度で37℃にてイン
キュベートする。インキュベーションは、軌道回転により20分間とする。インキュベー
ション後、試料をPBS中で1:20に希釈し、100uLの各希釈試料を、抗PEG抗
体コート96ウェルプレート(Life Diagnosticsカタログ番号P−00
01PLのウェルにアリコートに分ける。室温で1時間のインキュベーション後、プレー
トを300uLのPBSで5回洗浄する。洗浄後、50uLの0.2%Triton X
−100を各ウェルに添加し、プレートを37℃で10分間インキュベートした後、プレ
ート振盪機で750rpmにて1分間振盪する。試料のApoE ELISAおよびステ
ムループPCR解析を行う前に、試料を凍結させる。
【0140】
ApoE ELISAアッセイを行い、インキュベーション後、LNPに結合している
アカゲザル血清中のApoEを定量する。抗ApoE抗体(Milipore,カタログ
番号AB947)をPBS中で1:1000に希釈し、100uLの希釈抗体を、ポリス
チレン製の高結合プレートの各ウェルに添加する。抗体を有するこのプレートを4℃で一
晩インキュベートした後、プレートを200uLのPBSで2回洗浄する。次に、1%B
SAおよび0.05%Tween−20をPBS中に含む200uLのバッファー(イン
キュベーションバッファー)を各ウェルに添加した後、室温で1時間インキュベーション
する。プレートを0.05%Tween−20含有PBSで5回洗浄する。凍結Trit
on溶解試験試料を解凍し、インキュベーションバッファーで1:6に希釈し、100u
Lの試験試料を、ApoE抗体プレートのウェルにアリコートに分ける。インキュベーシ
ョンを室温で1時間した後、0.05%Tween−20含有PBSで5回洗浄する。洗
浄後、100uLのビオチン化抗ApoE抗体(Mabtech,カタログA番号E88
7−ビオチン)(インキュベーションバッファー中で1:500に希釈)を各ウェルに添
加し、室温で1時間インキュベートした後、0.05%Tween−20含有PBSで5
回洗浄する。次いで、100uL/ウェルのストレプトアビジン−HPR(Thermo
,カタログ番号TS−125−HR)を添加し、室温で1時間インキュベートする。0.
05%Tween−20含有PBSで5回洗浄後、100uLのTMB基質(Therm
o,カタログ番号34028)を各ウェルに添加した後、暗所で室温にて20分間インキ
ュベーションする。100uLのTMB停止溶液(KPL,カタログ番号50−85−0
4)で比色定量反応を停止させ、450nmにおける吸光度を測定する。アカゲザル組換
えApoEを、0.03%Triton X−100(100ng/mL〜0.78ng
/mLの範囲の濃度)を有するインキュベーションバッファーで希釈することによりAp
oE標準曲線を作成する。ApoE標準を、ELISAにおいて試験試料とパラレルで評
価する。ELISAにおける非LNP依存性ApoEシグナルのバックグラウンド減算を
得るため、アカゲザル血清のみ(LNPなし)対照を使用する。
ステムループRT−PCRプロトコル
抗PEG抗体プレートに結合させた量のLNPに結合しているApoEに対して標準化
するため、抗PEG抗体ウェル内に保持されたsiRNAの量をステムループPCRによ
って定量し、LNP1つあたりに封入されたsiRNA数と関連付け、ウェル1つあたり
の結合LNP粒子の総数の概算測定値を得る。
スパイク標準曲線試料の調製:
標準曲線は、siRNAの分子量(ApoB 17063は13693g/mol)を
用いてコピー数を計算して作成する。高度標準は10
11コピー/3μlを含むものとす
るのがよい。一連のアッセイプレートにおいて、最低標準が10
2コピー/3μ1を含む
まで10倍連続希釈を行う。0.2%Triton X−100を水中で1:80に希釈
し、20uLの希釈Triton X−100を96ウェルプレートの10個のウェル内
にピペッティングする。30uLの連続希釈標準曲線およびミックスをプレートの各ウェ
ルに添加する。10uLのスパイク標準曲線を逆転写反応に使用する。
ステムループRT−PCR−試験試料および標準曲線:
PEG抗体プレート捕捉によるTritonライセートをヌクレアーゼ無含有水中で1
対2000に希釈する。10μLの‘RT−Primer Mix’(Applied
Biosystem’s TaqMan MicroRNA Reverse Tran
scription Kitカタログ番号4366596)を96ウェルMicro−A
mp QPCRプレート(ABI カタログ番号N801−0560)の各ウェルに添加
する。
【0141】
【表5】
10uLの各試験試料(1対2000に希釈)またはスパイク標準曲線(上記)を96
ウェルプレート内にアリコートに分ける。プレートをマット(ABI カタログ番号N8
01−0550)で覆い、蒸発を最小限にする。プレートを800rpmで1分間、手短
に遠心分離する。次に、このプレートに対して、サーモサイクラーにおいて以下のサイク
ルパラメータを用いて操作する。
【0142】
【表6】
次に、10uLの‘RT Mix’を各ウェル(Applied Biosystem
’s TaqMan MicroRNA Reverse Transcription
Kitカタログ番号4366596)に添加する。
【0143】
【表7】
RTサイクル反応液は、10uLの試験試料、10uLのRTプライマーミックスおよ
び10uLのRTミックス成分で総容量30uLで構成する。総量30uLの総RTミッ
クス中のRT−プライマーの終濃度は200nMとする。次いで、プレートを同じプレー
トマットで封止し、800rpmで1分間、手短に遠心分離し、次いで、サーモサイクラ
ーで以下のサイクルパラメータを用いて実施する。
【0144】
【表8】
次に、15uLの高速酵素/プライマー−プローブミックスを、新たな高速96ウェル
プレート(Applied Biosystem’s TaqMan Fast Uni
versal PCR Master Mix,カタログ番号4352042)の各ウェ
ルに添加する。
【0145】
【表9】
5uLの各RT反応液を高速酵素ミックスプレートに添加する。プレートを1000r
pmで1分間遠心分離し、高速ブロック(Fast Block)を有するABI790
0でQPCR解析を行う。サイクルパラメータは:1サイクル−95℃で20秒間、続い
て40サイクル−95℃で1秒間、60℃で20秒間とする。
【0146】
QPCRの結果を使用し、PEG抗体捕捉プレートのTritonライセート中のsi
RNA濃度を計算する。LNP粒子1個あたりsiRNAは500個という推定に基づき
、抗PEG抗体プレートの各ウェル内に保持されたLNPの数が算出され得る。ウェル1
つあたりのApoE濃度(ApoE ELISAおよびウェル1つあたりのLNP粒子数
によって測定)を使用し、LNP粒子1つあたりに結合しているApoE分子の個数の概
算値が算出され得る。
LNP1つあたりに結合しているApoE分子の数
【0147】
【表10】
実施例3
ヘパリンセファロースHI−TRAP
TM結合アッセイ
中性表面電荷を有する脂質ナノ粒子(LNP)は、ヘパリンセファロース(泳動バッフ
ァーとして1×ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を含む)への注入後、保持
されずにカラム空隙容積内に溶出される。血清アポリポタンパク質E(ApoE)は、ヘ
パリン硫酸との高親和性結合を示し、LNPは、精製および/または組換えヒトApoE
または血清試料とのインキュベーション後、ヘパリンセファロースに、ApoEに結合す
るその固有の能力(脂質ナノ粒子の組成とApoEの濃度の両方に依存)に依存する程度
に結合することが示された。表面にApoEが結合している脂質ナノ粒子は、ヘパリンセ
ファロースに高親和性で結合し、高塩度(1M NaCl)でのみ溶出される。
【0148】
ヘパリンセファロース結合アッセイは、ApoE−LNP複合体がヘパリンセファロー
スに対して示す高親和性相互作用に基づいて、脂質ナノ粒子に対する血清ApoE結合を
評価するために開発された。
インキュベーション
脂質ナノ粒子を、37℃で20分間、50μg/mLの最終siRNA濃度で、種々の
濃度の精製もしくは組換えヒトアポリポタンパク質Eまたは0.1〜50%のラット/マ
ウス/アカゲザル/ヒト血清(1×ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中)の
いずれかとともにインキュベートした。ApoEまたは血清とのインキュベーション後、
LNP試料を1×DPBSを用いて10倍に希釈し、ヘパリンセファロースクロマトグラ
フィーによって解析した。保持されたLNPのピーク面積(適切なブランクシグナルの減
算後)をApoEおよび/または血清とのインキュベーションなしのLNP対照の総ピー
ク面積と比較し、ApoE/血清とのインキュベーション後に高親和性ヘパリン相互作用
へのシフトが起こったLNPのパーセンテージを求める。
ヘパリンセファロースHI−TRAP
TMクロマトグラフィー条件
ヘパリンセファロースHI−TRAP
TMクロマトグラフィーカラム(GE Heal
thcare;1mLの床容量)を1倍または2倍いずれかのダルベッコPBSで平衡化
する;高い方の2倍塩濃度を、ヘパリンセファロース上への固有保持力が高い方(おそら
く、プラスの表面電荷が高いため)のLNPに使用する。
移動相A:1×または2×DPBS
移動相B:1M NaCl含有10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)
100%のAを定組成的に10分間送達後、100%のBまでの段階的勾配;さらに10
分間保持;段階的勾配で100%のAに戻し、さらに10分間再平衡化した後、次の試料
のインジェクション
流速:1mL/分
試料のインジェクション容量:50μL
検出:UV(260nm)
アカゲザル血清とのインキュベーション(2×DPBS条件)でのHI−TRAP
TM結
合の結果
【0149】
【表11】
実施例4
ラットでの有効性および毒性のインビボ評価
該化合物を上記の公称組成で用いたLNPを、インビボ有効性ならびにアラニンアミノ
トランスフェラーゼおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増大について、S
prague−Dawley(Crl:CD(SD)雌ラット(Charles Riv
er Labs)において評価した。siRNAは、ApoB遺伝子(受託番号NM01
9287)のmRNA転写物を標的化するものである。ApoB siRNAの一次配列
と化学修飾パターンは上記に示している。RDV(siRNAを含有)(PBSビヒクル
中)を1〜1.5mLの容量で尾静脈注射した。注入速度はおよそ3ml/分にする。各
投与群には5匹のラットを使用した。LNP投与後、ラットを、通常の飼料と水を存在さ
せたケージ内に入れる。投与の6時間後、食糧をケージから除く。LNP投与の24時間
後、動物の剖検を行う。ラットをイソフルラン下で5分間麻酔し、次いで、イソフルラン
の送達を継続しながらノーズコーン内に入れることにより、放血が完了するまで麻酔下に
維持する。大静脈からの血液を、23ゲージのバタフライ型静脈穿刺セットを用いて収集
し、血清化学解析のために血清分離器バキュテイナーにアリコートに分ける。切除した肝
臓の尾状葉の円筒形切片(punch)を作製し、mRNA解析のためにRNALate
r(Ambion)内に入れる。保存した肝臓組織をホモジナイズし、Qiagenビー
ズミルおよびQiagen miRNA−Easy RNA単離キットを製造業者の使用
説明書に従って用いて全RNAを単離した。肝臓ApoB mRNAレベルを定量的RT
−PCRによって測定した。メッセージを精製RNAから、ラットApoBの市販のプロ
ーブセット(Applied Biosystemsカタログ番号RN01499054
_ml)を用いて増幅した。PCR反応は、96ウェル高速ブロックを有するABI 7
500機器で行った。ApoB mRNAレベルをハウスキーピングPPIB(NM01
1149)mRNAに対して標準化する。PPIB mRNAレベルは、RT−PCRに
より、市販のプローブセット(Applied Biosytemsカタログ番号Mm0
0478295_ml)を用いて測定した。結果をApoB mRNA/PPIB mR
NA比として示す。mRNAのデータはすべて、PBS投与対照に相対して示したもので
ある。血清ALTおよびAST解析はSiemens Advia 1800 Clin
ical Chemistry Analyzerで、Siemensアラニンアミノト
ランスフェラーゼ(カタログ番号03039631)およびアスパラギン酸アミノトラン
スフェラーゼ(カタログ番号03039631)試薬を用いて行った。RDVを内包して
いる化合物32または33を投与したラットにおいて、RDVを内包しているカチオン性
脂質DLinKC2DMA(化合物45)またはMC3(化合物46,
図2)の場合より
も、同様の有効性および耐容性の改善が観察された。
【0150】
実施例5
ラット/サルの肝臓内カチオン性脂質レベルの測定
肝臓組織を20ml容バイアル内に量り入れ、9v/wの水中でGenoGrinde
r 2000(OPS Diagnostics,1600ストローク/分,5分間)を
用いてホモジナイズした。各組織ホモジネートの50μLアリコートを300μLの抽出
/タンパク質析出溶媒(500nMの内部標準を含有する50/50のアセトニトリル/
メタノール)と混合し、プレートを遠心分離して析出し、タンパク質を沈降させた。次い
で、200μL容量の各上清みを96ウェルプレートの別々のウェルに移し、10μLの
試料をLC/MS−MSによって直接解析した。
【0151】
既知量の該化合物のメタノールストック溶液を未処理のラット肝臓ホモジネート(9容
量の水/肝臓重量)にスパイクすることにより、標準を調製した。各標準/肝臓ホモジネ
ートのアリコート(50μL)を300μLの抽出/タンパク質析出溶媒(500nMの
内部標準を含有する50/50のアセトニトリル/メタノール)と混合し、プレートを遠
心分離して析出し、タンパク質を沈降させた。200μL容量の各上清みを96ウェルプ
レートの別々のウェルに移し、10μLの各標準をLC/MS−MSによって直接解析し
た。
【0152】
肝臓ホモジネートから調製および抽出した標準に対する絶対定量を、API 4000
トリプル四重極質量分析計(Applied Biosystems)に連結したAri
a LX−2 HPLCシステム(Thermo Scientific)を用いて行っ
た。各操作では、総量10μLの試料をBDS Hypersil C8 HPLCカラ
ム(Thermo,50×2mm,3μm)に周囲温度でインジェクションした。
【0153】
移動相A:95%H2O/5%メタノール/10mMギ酸アンモニウム/0.1%ギ酸
移動相B:40%メタノール/60%n−プロパノール/10mMギ酸アンモニウム/
0.1%ギ酸 流速は0.5mL/分とし、勾配溶出プロフィールは以下のとおり:80
%Aで0.25分間保持、100%Bまで1.6分間にわたって線形漸増、100%Bで
2.5分間保持、次いで、80%Aに戻して1.75分間保持とした。全操作時間は5.
8分間であった。API 4000ソースパラメータは、CAD:4、CUR:15、G
S1:65、GS2:35、IS:4000、TEM:550、CXP:15、DP:6
0、EP:10とした。
【0154】
RDVを内包している化合物32または33を投与したラットでは、肝臓内レベルは、
RDVを内包しているカチオン性脂質DLinKC2DMA(化合物45)またはMC3
(化合物46,
図3)と同様であるか、またはより低いかのいずれかであった。RDVを
内包している化合物32または33を投与したサルでは、肝臓内レベルは、RDVを内包
しているカチオン性脂質DLinKC2DMA(化合物45)またはMC3(化合物46
,
図7)よりも低かった。
【0155】
実施例6
アカゲザルでのApoB有効性のインビボ評価
化合物を上記の公称組成で用いたLNPを、インビボ有効性について、雄または雌のア
カゲザル(Macaca mulatta(rhesus)monkey)において評価
した。siRNAは、ApoB遺伝子(受託番号XM 001097404)のmRNA
転写物を標的化するものである。ApoB siRNAの一次配列と化学修飾パターンは
上記に示している。RDV(siRNAを含有)(PBSビヒクル中)を静脈内注射によ
って伏在静脈に、20mL/分の注入速度で0.25mg/キログラムsiRNAの用量
レベルまで投与した。注射容量は1.9〜2.1mL/キログラムとし、サルの体重は2
.5〜4.5キログラムの範囲であった。RDVまたはPBS対照を3匹のサルに投与し
た。投与後、複数の日に、血清化学検査用解析のために1mLの血液試料を大腿動脈から
採取した。サルは、血液採取の前に一晩絶食させた。有効性の尺度として、LDL−Cを
、ApoB mRNA減少の下流サロゲートマーカーとしてモニタリングした。RDVを
内包している化合物32および33(0.25mg/kg)の全身投与の4日後、LDL
−Cの血清レベルは、投与前レベルの30%未満まで低減された(
図4)。
【0156】
実施例7
アカゲザルでのβ−カテニンの有効性のインビボ評価
試験の−7日目、投与前肝臓生検試料(約0.5〜lグラム/試料)を雄アカゲザルか
ら、腹腔鏡下での外科的切除によって収集した(サル1匹あたり、無作為に選択した肝葉
の1つの外縁から1例の生検試料を切除)。各投与前生検からの約50mgの3つの非隣
接試料の標本抽出には、5mmの組織円筒形切片を使用した。試料は、後のCTNNB1
mRNA解析のためにRNAlater
TM(Ambion)中に保存した。
【0157】
試験の0日目、サルに、脂質ナノ粒子(LNP)試験品のリン酸緩衝生理食塩水懸濁液
(0.05〜0.1mg siRNA/mL)を、単回用量静脈内ボーラス注射によって
目標用量0.67、1.34または3.34mg siRNA/m
2で投与した。投与目
的のため、体表面積(m
2)を体重から、以下に示す確立されたアロメトリックスケーリ
ングの関係(1):
BSA(m
2)=0.11
*BW(単位:kg)
0.65
にしたがって推定した。
【0158】
試験の2日目と7日目(LNP投与後、48時間目と168時間目)、肝臓生検試料(
約0.5〜1グラム/試料)をサルから、腹腔鏡下での外科的切除によって収集した(サ
ル1匹あたり、無作為に選択した2つの別々の肝葉を切除した)。48時間目と168時
間目の各外科的生検試料について、約50mgの3つの非隣接試料の標本抽出には、5m
mの組織円筒形切片を使用した。試料は、後のCTNNB1 mRNA解析のためにRN
Alater
TM(Ambion)中に保存した。
【0159】
CTNNB 1 mRNAレベルを相対的定量的RT−PCRによって、CTNNB1
に対して検証済のプライマー/プローブセットを用いて測定し、ペプチジルプロリルイソ
メラーゼB(PPIBまたはシクロフィリンBとしても知られている)のmRNAレベル
、および18SリボソームRNA(18S rRNA)のRNAレベルに対して標準化し
た。CTNNB1 mRNA肝臓発現の変化を、投与後試料と対応する各投与前サル肝臓
試料とのPCRのサイクル数閾値の差(ΔΔCt)として測定した。
【0160】
CTNNB1 mRNAノックダウン(処置前レベルに対して)の計算値は、ΔΔCt
から以下の関係:
mRNA(ノックダウン%)=100−(100/2
−ΔΔCt)
を用いて算出した。
【0161】
RDVを内包している化合物32および33ならびにβ−カテニンsiRNAを投与し
たサルでは、0.67〜3.34mg/m
2の範囲の用量でロバストなKDが示された(
図5)。
(1)FDA指針書:「Guidance for Industry:Estimat
ing the Maximum Safe Starting Dose in In
itial Clinical Trials for Therapeutics i
n Adult Healthy Volunteers」2005年7月,米保健社会
福祉省,食品医薬品局−医薬品評価センター(Center for Drug Eva
luation and Research)(CDER)
実施例8
アカゲザルでのALT増加のインビボ評価
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を、サル全血の血餅から遠心分離後に収
集した血清において測定する。Roche Modular System自動化学検査
用解析装置により、該血清中のALTの酵素活性を、国際臨床化学連合(Interna
tional Federation of Clinical Chemistry)
の標準化された手順および試薬を使用することにより測定する。解析者のコンピュータで
吸光度の測定値を用いて、標準曲線と比較したときの試料中のALT活性を算出する。A
LT活性を1リットルあたりの国際単位(IU/L)で報告する。
【0162】
RDVを内包している化合物32および33を投与したサルでは、RDVを内包してい
るカチオン性脂質DLinKC2DMA(化合物45)またはMC3(化合物46,
図6
)を投与したサルよりもピークALTの上昇が低かった。
【0163】
実施例9
肝細胞癌マウスモデルにおける評価
肝細胞癌へのβ−カテニンsiRNA(siRNAβ−cat)の送達におけるLNP
活性を、TRE−METと命名されたマウス肝細胞癌(HCC)モデルにおいて評価した
。TRE−METマウスは、ヒトMET導入遺伝子が、七量体化上流tet−オペレータ
を有するhCMVプロモーター下で発現されるFVB/N遺伝的背景のトランスジェニッ
クマウスである。TRE−METマウスをLAP−tTA系統と交配すると、ダブルトラ
ンスジェニック(TRE−MET/LAP−tTA)マウスは、METを肝臓特異的様式
で発現し、これはドキシサイクリンの投与によって抑制され得る。このマウスは、約3ヶ
月齢のときにHCCを発症し、肝臓表面上に目視で確認可能な腫瘍小結節があり、腫瘍は
、HCCに典型的な散在性で小柱状の増殖パターンを示し、HCC腫瘍マーカーであるα
−フェトプロテイン(AFP)を発現する。また、TRE−METマウスの腫瘍における
変異解析によっても、腫瘍のおよそ95%においてβ−カテニン遺伝子の変異の活性化が
確認されている。このような特徴のため、TRE−MET HCCマウスモデルは、β−
カテニンsiRNAのLNP媒介性送達およびその結果もたらされる腫瘍増殖に対する有
効性の評価に適している。
【0164】
肝臓および腫瘍組織の両方でのβ−カテニンmRNAのサイレンシングにおけるβ−カ
テニン含有LNPの効果を、まず、腫瘍を有するTRE−METマウスでの薬力学的(P
D)試験において評価した。種々の用量のLNPまたは高用量のLNP対照siRNAを
静脈内投与し、72時間後、剖検を行い、Taqmanによるβ−カテニンmRNAレベ
ルの測定のために肝臓と腫瘍組織を収集した。
図8と9に示されるように、化合物33で
は、ロバストで用量依存性のβ−カテニンmRNAのノックダウンが肝臓と腫瘍組織の両
方において誘導されたが、対照siRNAまたはPBSを受けた動物ではβ−カテニンノ
ックダウンは観察されなかった。0.1mpkおよび0.05mpkのLNPでは、それ
ぞれ、正常肝臓において88%および69%のKDが誘導された。腫瘍内でのKDは70
%(2mpk)〜約40%(0.1または0.05mpk)の範囲である。
図12と13
に示されるように、化合物32では、ロバストで用量依存性のβ−カテニンmRNAのノ
ックダウンが肝臓と腫瘍組織の両方において誘導されたが、対照siRNAまたはPBS
を受けた動物ではβ−カテニンノックダウンは観察されなかった。0.1mpkおよび0
.05mpkのLNPでは、それぞれ、正常肝臓において76%および78%のKDが誘
導された。腫瘍内でのKDは47%(0.25mpk)〜約20ないし30%(0.1ま
たは0.05mpk)の範囲である。
【0165】
腫瘍増殖に対するLNPの効果を反復用量有効性試験において評価した。TRE−ME
T HCCマウスに化合物33/siRNAβ−cat、化合物32/siRNAb−c
at、対照siRNAまたはPBSを毎週、3週間投与し(3回投与)、各動物の腫瘍体
積を、1回目の投与の7日前と最終投与の3日後に、マイクロCTスキャンによって測定
した(
図10および14)。また、最終投与の7日後に、β−カテニンmRNAレベルの
評価のために肝臓および腫瘍組織を収集した。PBSまたは対照siRNAを受けたマウ
スでは、全身腫瘍組織量において360〜470%の増殖が示されたが、化合物33/s
iRNAβ−catで処置したマウスでは、用量依存的様式での著しい腫瘍の増殖阻害ま
たは退縮が示された(
図10)。2mpkおよび0.5mpkの化合物33/siRNA
β−catでは、それぞれ、60%および40%の腫瘍退縮が誘導され、0.05mpk
では腫瘍の安定(stasis)が引き起こされた。PBSまたは対照siRNAを受け
たマウスでは、全身腫瘍組織量において約350%の増殖が示された、化合物32/si
RNAβ−catで処置したマウスでは、用量依存的様式での著しい腫瘍の増殖阻害また
は退縮が示された(
図14)。0.5、0.25および0.1mg/kgの化合物32/
siRNAβ−catでは、それぞれ、37、58および37%の腫瘍退縮が誘導され、
0.05mpkでは腫瘍の安定が引き起こされた。