(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一次燃焼を行うための一次燃焼ゾーンと、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼を行うための二次燃焼ゾーンと、を有する燃焼室を備える廃棄物焼却炉に対して、
水銀に特有のエネルギー準位に基づいて放出される特有の波長の輝線を選択的に透過させる水銀輝線選択フィルタを用いて、前記燃焼室で発生した光のうち当該水銀輝線選択フィルタを透過した透過光の光強度を光検出器で検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記透過光の光強度を時系列で蓄積する蓄積工程と、
前記蓄積工程で蓄積された前記透過光の光強度及びその時間変化に基づいて判定基準を算出し、前記透過光の光強度の変化量が前記判定基準を超えた場合に、水銀多量投入事態が発生したと判定する判定工程と、
を行うことを特徴とする廃棄物焼却炉の水銀多量投入事態検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<廃棄物焼却設備の全体構成>初めに、
図1を参照して、本実施形態の焼却炉1を含む廃棄物焼却設備100について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の焼却炉1を含む廃棄物焼却設備100の概略構成図である。なお、以下の説明では、単に上流、下流と記載したときは、廃棄物、燃焼ガス、燃焼用気体、排ガス等が流れる方向の上流及び下流を意味するものとする。
【0016】
図1に示すように、廃棄物焼却設備100は、焼却炉(廃棄物焼却炉)1と、ボイラ30と、蒸気タービン発電設備35と、を備える。焼却炉1は、供給された廃棄物を焼却する。なお、焼却炉1の詳細な構成は後述する。
【0017】
ボイラ30は、廃棄物の燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成する。ボイラ30は、流路壁に設けられた多数の水管31及び過熱器管32で、炉内で発生した高温の燃焼ガスと水との熱交換を行うことにより蒸気(過熱蒸気)を生成する。水管31及び過熱器管32で生成された蒸気は、蒸気タービン発電設備35へ供給される。
【0018】
蒸気タービン発電設備35は、図略のタービン及び発電装置を含んで構成されている。タービンは、水管31及び過熱器管32から供給された蒸気によって回転駆動される。発電装置は、タービンの回転駆動力を用いて発電を行う。
【0019】
<焼却炉1の構成>焼却炉1は、廃棄物を炉内に供給するための給じん装置40を備える。給じん装置40は、廃棄物投入ホッパ41と、給じん装置本体42と、を備える。廃棄物投入ホッパ41は、炉外から廃棄物が投入される部分である。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41の底部分に位置し、水平方向に移動可能に構成されている。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41に投入された廃棄物を下流側に供給する。この給じん装置本体42の移動速度、単位時間あたりの移動回数、移動量(ストローク)、及びストローク端の位置(移動範囲)は、
図2に示す制御装置90によって制御されている。なお、給じん装置は水平方向に対し多少の角度をもって移動する型式でもよい。
【0020】
給じん装置40によって炉内に供給された廃棄物は、燃焼室2に供給される。燃焼室2は、一次燃焼ゾーン10と、二次燃焼ゾーン14と、を含んでいる。一次燃焼ゾーン10は、一次燃焼のための空間である。一次燃焼とは、投入された廃棄物を一次燃焼用気体(gas for primary combustion)と反応させて燃焼させることである。一次燃焼用気体とは、一次燃焼のために供給される酸素を含んだ気体である。一次燃焼用気体としては、一次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。一次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。従って、一次空気には、外部から取り込んだ空気を加熱等した気体も含まれる。また、一次燃焼により、CO等の未燃焼ガスを含む一次燃焼ガス(flue gas after primary combustion)が発生する。
【0021】
一次燃焼ゾーン10は、乾燥部11と、燃焼部12と、後燃焼部13と、から構成されている。廃棄物は、搬送部20によって、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13の順に供給されていく。搬送部20は、乾燥部11に設けられた乾燥火格子21と、燃焼部12に設けられた燃焼火格子22と、後燃焼部13に設けられた後燃焼火格子23と、で構成されている。従って、搬送部20は複数段の火格子から構成されている。それぞれの火格子は、各部の底面に設けられており、廃棄物が載置される。火格子は、廃棄物搬送方向に並べて配置された可動火格子と固定火格子とから構成されており、可動火格子が間欠的に前進及び後進を行うことで、廃棄物を下流側へ搬送するとともに、廃棄物を攪拌することができる。なお、火格子の動作は、制御装置90によって制御されている。また、火格子には、気体が通過可能な大きさの隙間が形成されている。
【0022】
乾燥部11は、焼却炉1に供給された廃棄物を乾燥させる部分である。乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21の下から供給される一次空気及び隣接する燃焼部12における燃焼の輻射熱によって乾燥する。その際、熱分解によって乾燥部11の廃棄物から熱分解ガスが発生する。また、乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21によって燃焼部12に向かって搬送される。
【0023】
燃焼部12は、乾燥部11で乾燥した廃棄物を主に燃焼させる部分である。燃焼部12では、廃棄物が主に火炎燃焼を起こし火炎が発生する。燃焼部12における廃棄物及び燃焼により発生した灰及び燃焼しきれなかった未燃物は、燃焼火格子22によって後燃焼部13に向かって搬送される。また、燃焼部12で発生した一次燃焼ガス及び火炎は、絞り部17を通過して後燃焼部13に向かって流れる。なお、燃焼火格子22は、乾燥火格子21と同じ高さに設けられているが、乾燥火格子21よりも低い位置に設けられていてもよい。
【0024】
後燃焼部13は、燃焼部12で燃焼しきれなかった廃棄物(未燃物)を燃焼させる部分である。後燃焼部13では、一次燃焼ガスの輻射熱と一次空気によって、燃焼部12で燃焼しきれなかった未燃物の燃焼が促進される。その結果、未燃物の殆どが灰となって、未燃物は減少する。なお、後燃焼部13で発生した灰は、後燃焼部13の底面に設けられた後燃焼火格子23によってシュート24に向かって搬送される。シュート24に搬送された灰は、廃棄物焼却設備100の外部に排出される。なお、本実施形態の後燃焼火格子23は、燃焼火格子22よりも低い位置に設けられているが、燃焼火格子22と同じ高さに設けられていてもよい。
【0025】
上述したように、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13では、生じる反応が異なるため、それぞれの壁面等は、生じる反応に応じた構成となっている。例えば、燃焼部12では火炎燃焼が生じるため、乾燥部11よりも耐火レベルが高い構造が採用されている。
【0026】
以上で説明したように、本実施形態の焼却炉1の一次燃焼ゾーン10では、投入された廃棄物に対して、乾燥、燃焼、及び後燃焼が行われる。本実施形態の焼却炉1では、各構成段が明確に分かれているため、上記の3つの処理が段階的に行われる。なお、本発明は、様々な構成の焼却炉に適用可能である。例えば、本発明は、各構成段が明確に区分されていない焼却炉にも適用可能である。また、本発明は、乾燥段及び後燃焼段の少なくとも一方が存在しない焼却炉にも適用可能である。また、本発明は、火格子を備えない焼却炉、例えば、流動床式焼却炉又は固定床式焼却炉等にも適用可能である。
【0027】
二次燃焼ゾーン14は、二次燃焼のための空間である。二次燃焼とは、一次燃焼ガスに含まれる未燃焼ガスを二次燃焼用気体と反応させて燃焼させることである。二次燃焼用気体とは、二次燃焼のために供給される酸素を含んだ気体である。二次燃焼用気体としては、二次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。二次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。二次燃焼を行うことにより、燃焼完結性を進めることができる。二次燃焼ゾーン14は、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13から上方に向かって延び、その途中に二次空気が供給される。これにより、一次燃焼ガスは二次空気と混合及び撹拌され、一次燃焼ガスに含まれる未燃ガスが二次燃焼ゾーン14で燃焼される。
【0028】
二次燃焼で排出される高温の二次燃焼ガスは、上述したようにボイラ30を通過した後に、排ガスとして排出される。焼却炉1から排出された排ガスは、下流側に配置されたろ過式の集じん器6で浄化される。また、排ガスが集じん器6に到達するまでの経路(煙道)には、排ガスに含まれる気体の有害物質(HCl、SOx、及びダイオキシン類等)の濃度を低減するための薬剤が投入される。
【0029】
また、この薬剤を投入するための構成として、廃棄物焼却設備100は、薬剤タンク7と、バルブ8と、を備える。薬剤タンク7には、低減する有害物質に応じた複数種類の薬剤が個別に貯留されている。バルブ8は、煙道へ供給される薬剤の量を調整する機構を有している。バルブ8は、薬剤の種類毎に設けられている。制御装置90は、排ガスの性状の検出結果及び目標値等に基づいて、使用する薬剤の種類及び量を決定し、それに応じてバルブ8の開度をそれぞれ変更する制御を行う。なお、この薬剤には、排ガス中の水銀を吸着させて除去する機能を持つ消石灰又は活性炭等の薬剤が含まれている。水銀多量投入事態が生じた場合に水銀を吸着する機能を持つ薬剤を増量投入することで、集じん器6が水銀に深刻に汚染されることを抑制できる。
【0030】
<一次燃焼用気体と二次燃焼用気体の供給>気体供給装置50は、燃焼室2内に気体(一次燃焼用気体、二次燃焼用気体)を供給する装置である。本実施形態の気体供給装置50は、一次空気供給部51と、二次空気供給部52と、排ガス供給部53と、を有している。それぞれの供給部は、気体を誘引又は送出するための送風機によって構成されている。
【0031】
一次空気供給部51は、一次供給経路71を介して燃焼室2に一次空気を供給する。一次供給経路71は、乾燥火格子21の下方に設けられた乾燥段風箱25、燃焼火格子22の下方に設けられた燃焼段風箱26、及び後燃焼火格子23の下方に設けられた後燃焼段風箱27にそれぞれ一次空気を供給するための経路である。一次供給経路71には、乾燥段風箱25に供給する一次空気の供給量を調整する第1ダンパ81と、燃焼段風箱26に供給する一次空気の供給量を調整する第2ダンパ82と、後燃焼段風箱27に供給する一次空気の供給量を調整する第3ダンパ83と、がそれぞれ設けられている。
図2に示すように、第1ダンパ81、第2ダンパ82、及び第3ダンパ83は制御装置90によって制御されている。
【0032】
また、一次供給経路71にヒータを設け、燃焼室2に供給する一次空気の温度を調整できるようにしてもよい。また、上述のように、一次燃焼用気体には、循環排ガス及び混合ガスも含まれるため、それらが燃焼室2に供給される構成であってもよい。また、本実施形態では、一次燃焼用気体は、一次燃焼ゾーン10に下方から供給されるが、一次燃焼ゾーン10の側方等から供給されてもよい。また、一次燃焼用気体は、一次燃焼に用いられるのであれば、一次燃焼ゾーン10よりも上流側に供給されてもよい。
【0033】
二次空気供給部52は、二次供給経路72を介して、二次空気を燃焼室2に供給する。具体的には、二次空気供給部52は、焼却炉1の空気ガス保有空間16にその上部(天井部)から二次空気を供給するとともに、絞り部17によって燃焼ガスが方向を転換する部分(絞り部17の近傍)に二次空気を供給するとともに、二次燃焼ゾーン14に二次空気を供給する。二次供給経路72には、空気ガス保有空間16及び絞り部17の近傍に供給する二次空気の供給量を調整する第5ダンパ85と、がそれぞれ設けられている。
図2に示すように、第5ダンパ85は制御装置90によって制御されている。
【0034】
排ガス供給部53は、循環排ガス供給経路73を介して、廃棄物焼却設備100から排出された排ガスを炉内に供給する(再循環させる)。廃棄物焼却設備100から排出されて集じん器6で浄化された排ガスの一部が排ガス供給部53によって燃焼部12の両側面(紙面手前側及び紙面奥側の面)から焼却炉1へ供給される。なお、排ガスが供給される位置は、特に限定されない。例えば、排ガスは焼却炉1の上方(天井部)から供給されてもよく、一方の側面のみから供給されていてもよい。排ガスを焼却炉1に供給することで、焼却炉1内の酸素濃度が低下し、燃焼温度の局所的な過上昇を抑えることができる。その結果、NOxの発生を抑えることができる。また、循環排ガス供給経路73には、循環排ガスの供給量を調整する第4ダンパ84が設けられている。
図2に示すように、第4ダンパ84は制御装置90によって制御されている。
【0035】
<各種センサ及び制御装置>焼却炉1には、
図1及び
図2に示すように、燃焼状態等を把握するための複数のセンサが設けられている。具体的には、焼却炉1には、焼却炉内ガス温度センサ91と、焼却炉出口ガス温度センサ92と、COガス濃度センサ93と、NOxガス濃度センサ94と、光検出器95と、が設けられている。
【0036】
焼却炉内ガス温度センサ91は、焼却炉1内(例えば空気ガス保有空間16よりも下流かつ後燃焼部13よりも上流)に配置されており、焼却炉内ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。焼却炉出口ガス温度センサ92は、焼却炉1出口近傍(例えば二次燃焼ゾーン14よりも下流かつボイラ30よりも上流)に配置されており、焼却炉出口ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。COガス濃度センサ93は、集じん器6の下流に配置されており、排ガスに含まれるCOガス濃度(焼却炉排出COガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。NOxガス濃度センサ94は、集じん器6の下流に配置されており、排ガスに含まれるNOxガス濃度(焼却炉排出NOxガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。
【0037】
光検出器95は、水銀に特有のエネルギー準位に基づいて放出される特有の波長の輝線(以下、水銀輝線)を検出することを目的としている。更に説明すると、水銀輝線とは、水銀の発光をスペクトル分析した場合に、輝線スペクトルとして観測される光である。以下、燃焼室2の内部で発生した水銀輝線を検出する構成について説明する。
【0038】
水銀は加熱によりエネルギー準位が上がるため、燃焼室2の内部の何れの位置であっても、水銀輝線が発生する可能性がある。そのため、光検出器95は、燃焼室2の内部の何処で発生した光を検出する構成であってもよい。ただし、高温の火炎では特に水銀輝線が発生し易いため、本実施形態では、火炎の光を検出対象とする。ここで、燃焼室2では上述したように一次燃焼において火炎が発生する。この火炎は、一次燃焼ゾーン10から二次燃焼ゾーン14へ流れる燃焼ガス流の影響等により上方に延びるため、この火炎は二次燃焼ゾーン14においても存在する。そして、二次燃焼ゾーン14では、未燃焼の多種多様な廃棄物が存在する一次燃焼ゾーン10と比較して、他の元素の輝線が発生しにくいため、水銀輝線をより正確に検出できる。以上により、本実施形態では、二次燃焼ゾーン14において、火炎の光に含まれる水銀輝線を検出することを目的とする。
【0039】
図3に示すように、光検出器95は、二次燃焼ゾーン14の炉壁2aの近傍に配置されている。具体的には、
図3に示すように、燃焼室2の炉壁2aには、貫通孔2bが形成されている。また、貫通孔2bのうち燃焼室2側の開口している部分(燃焼室2と炉壁2aの境界部分)を開口部2cと称する。また、貫通孔2bには、耐熱ガラス61と、水銀輝線選択フィルタ62と、が配置されている。
【0040】
耐熱ガラス61は、水銀輝線選択フィルタ62よりも燃焼室2側に配置されている。耐熱ガラス61は、光を透過させるとともに、耐熱特性を有する部材である。
【0041】
水銀輝線選択フィルタ62は、光検出器95よりも燃焼室2側に配置されている。水銀輝線選択フィルタ62は、通過帯域の波長の光のみを透過させ、それ以外の波長の光を透過させないフィルタである。水銀輝線選択フィルタ62の通過帯域は、水銀輝線の波長を含む非常に狭い範囲である。主な水銀輝線の波長は、365.483 nm, 366.288 nm, 366.328 nm, 390.641 nm, 398.398 nm, 404.656 nm・407.781 nm・435.835 nm・491.604 nm・546.074 nm・576.969 nm・597.065 nmである。このように、例えば366 nm帯において複数の水銀輝線が存在するため、水銀輝線選択フィルタ62の通過帯域は、これらの複数の水銀輝線の波長を含んでいてもよい。当然、1つの水銀輝線の波長のみを含んでいてもよい。なお、水銀輝線の波長は上記以外にも存在するため、水銀輝線選択フィルタ62の通過帯域は、上記以外の波長を含んでいてもよい。
【0042】
光検出器95は、二次燃焼ゾーン14で観測できる火炎の光のうち、水銀輝線選択フィルタ62を透過した光(以下、透過光)を検出する。本実施形態の光検出器95は、撮像素子を有する撮像装置である。この撮像素子は、水銀輝線選択フィルタ62の通過帯域の波長を検出できるように構成されている。光検出器95が撮像装置である場合、撮像範囲における透過光の光強度の分布を示す映像を作成できる。また、燃焼室2の内部を撮影する撮像装置が既に配置されており、現在使用されていない場合等において、この既存の撮像装置を活用して水銀多量投入事態を検出できる。
【0043】
なお、光検出器95は、透過光を検出可能であれば、他の構成であってもよい。例えば光検出器95は光電池又はフォトダイオード等であってもよい。光検出器95が光電池の場合、発生した起電力に基づいて透過光の光強度を検出できる。光検出器95がフォトダイオードの場合、出力された電気信号に基づいて(具体的には出力電流の電流値に基づいて)透過光の光強度を検出できる。なお、光検出器95が光電池又は単一のフォトダイオードである場合、透過光の光強度の大きさは検出できるが、その分布までは検出できない。しかし、撮像装置を用いる場合と比較して、コストを下げることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、水銀輝線選択フィルタ62及び光検出器95は、貫通孔2b及びその軸方向の直線状に配置されているが、異なる位置に配置されていてもよい。例えば、耐熱ガラス61を透過した光を光ファイバーの一端から入力し、当該光ファイバーの他端に水銀輝線選択フィルタ62及び光検出器95を配置する場合、水銀輝線選択フィルタ62及び光検出器95の位置の自由度を向上させることができる。
【0045】
制御装置90は、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、焼却炉1全体を制御する。以下、制御装置90が行う制御のうち、水銀多量投入事態を検出する制御について
図4のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態では、制御装置90が
図4の全ての処理を行うが、少なくとも1つの処理を別の制御装置が行う構成であってもよい。
【0046】
光検出器95は、透過光(即ち、水銀輝線)の光強度を検出する(検出工程)。この検出工程は常時行われている。制御装置90は、光検出器95が検出した透過光の光強度の検出値を取得する(S101)。
【0047】
次に、制御装置90は、透過光の光強度を時系列で蓄積する(S102、蓄積工程)。具体的には、制御装置90は、時刻と、透過光の光強度と、を対応付けて、制御装置90が備える記憶装置又は外部の記憶装置に記憶する。また、光検出器95が撮像装置である場合、撮像位置に応じた光強度の分布が得られるため、各画素の光強度を積算したり平均を計算したりすることで、この分布から光強度を算出する。
【0048】
次に、制御装置90は、蓄積された透過光の光強度及びその時間変化に基づいて判定基準を算出する(S103)。判定基準とは、水銀多量投入事態の発生を判定する基準である。また、水銀多量投入事態が発生していない通常状態において検出される透過光の光強度は、焼却炉1の構成及び制御等によって異なる。そのため、本実施形態では、予め定められた判定基準を使い続けることはせず、過去の検出値に基づいて判定基準を算出するとともに、この判定基準を更新する。
【0049】
また、ここで問題としている「水銀多量投入事態」とは、水銀が定常的に多量に投入される事態ではなく、通常はごく微量しか投入されない水銀が、一時的に多量に投入されてしまう事態であることを踏まえて、単純な光強度の大きさだけでなく、その時間変化を考慮した判定基準が算出される。例えば、判定基準は、光強度の変化量に関する第1閾値と、光強度の大きさに関する第2閾値と、を含む。つまり、所定時間あたりの光強度の変化量が第1閾値以上であって、かつ、所定時間における平均の光強度の大きさが第2閾値以上である場合に、判定基準が満たされることとなる。なお、所定時間及び第1閾値の値によっては、第2閾値を省略することもできる。
【0050】
次に、制御装置90は、透過光の光強度(詳細には光強度の大きさと変化量)が判定基準を超えたか否かを判定する(S104、判定工程)。制御装置90は、透過光の光強度が判定基準を超えていない場合、水銀多量投入事態が発生していないため、再びステップS101からS103の処理を行って、判定基準を更新する。
【0051】
一方、制御装置90は、透過光の光強度が判定基準を超えたと判定した場合、水銀多量投入事態が発生したため、バルブ8を制御して、水銀を吸着する機能を持つ薬剤の増量投入を開始する(S105)。なお、水銀多量投入事態が発生した場合の対処方法は様々であるため、水銀を吸着する機能を持つ薬剤を増量投入する処理は一例である。つまり、水銀を吸着する機能を持つ薬剤の増量投入に代えて又は加えて、アラーム音を発生させる処理、及び、焼却炉1を停止させる処理の少なくとも一方の処理を更に行ってもよい。
【0052】
ここで、従来の排ガスを分析する方法では、排ガスをチューブ等で水銀分析装置まで引込む時間が必要であるとともに、分析手法にも依るが水銀濃度を分析する処理にも時間が掛かる。これに対し、本実施形態の構成では、水銀多量投入事態が発生し焼却炉1内で大量の水銀輝線が発生すると同時に、この水銀輝線が水銀輝線選択フィルタ62を透過して光検出器95に入力されるため、従来と比べて早期に水銀濃度の異常上昇を検出できる。また、光検出器95は水銀に接触することなく水銀濃度の異常上昇を検出するため、高濃度水銀による汚染の影響がない。
【0053】
また、本実施形態では、1つの光検出器95で水銀輝線を検出して水銀多量投入事態の判定を行う構成であるが、複数の光検出器95で水銀輝線を検出してもよい。この場合、それぞれの光検出器95で、検出対象の水銀輝線の波長を異ならせても良い。具体的に説明すると、光検出器95毎に異なる通過帯域を有する水銀輝線選択フィルタ62を配置する。これにより、波長が異なる複数の水銀輝線を個別に検出できる。そのため、例えば、別元素の輝線であって、その波長が第1の水銀輝線に近似する光が燃焼室2で発生していた場合、第1の水銀輝線を検出対象とする光検出器95では、水銀多量投入事態が発生していないにもかかわらず光強度の検出値が高くなる可能性がある(誤検出が発生する可能性がある)。しかし、この別元素の輝線は、第1以外の水銀輝線を検出対象とする光検出器95の検出結果には影響がない。従って、複数の水銀輝線をそれぞれ検出して、検出結果を比較することで、水銀輝線の検出精度を向上させることができる。
【0054】
更に、この構成を採用する場合、水銀輝線の誤検出を一層確実に防止するために、燃焼室2の同じ箇所で発生した光を複数の光検出器95で検出できるように、水銀輝線選択フィルタ62及び光検出器95等を配置することが好ましい。例えば、光検出器95が2つ配置される場合、同じ炉壁2aで隣接するように2つの開口部2cを形成し、それぞれの開口部2cに水銀輝線選択フィルタ62及び光検出器95を配置することが好ましい。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の水銀多量投入事態検出方法の対象となる焼却炉1は、一次燃焼を行うための一次燃焼ゾーン10と、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼を行うための二次燃焼ゾーン14と、を有する燃焼室2を備える。水銀多量投入事態検出方法は、検出工程と、蓄積工程と、判定工程と、を焼却炉1に対して行う。検出工程では、水銀に特有のエネルギー準位に基づいて放出される特有の波長の輝線を選択的に透過させる水銀輝線選択フィルタ62を用いて、燃焼室2で発生した光のうち当該水銀輝線選択フィルタ62を透過した透過光の光強度を光検出器95で検出する。蓄積工程では、検出工程で検出された透過光の光強度を時系列で蓄積する。判定工程では、蓄積工程で蓄積された透過光の光強度及びその時間変化に基づいて判定基準(第1閾値)を算出し、透過光の光強度の変化量が判定基準を超えた場合に、水銀多量投入事態が発生したと判定する。
【0056】
これにより、燃焼室2で発生した光に含まれる水銀輝線を検出することで、水銀多量投入事態を早期に検出できる。また、この方法では、水銀輝線選択フィルタ及び光検出器を水銀に接触させる必要がないため、水銀の汚染の影響を受けない。更に、水銀輝線選択フィルタを用いることで、分光器を用いる構成と比較して、分光器の分解能の影響を受けないため、水銀輝線を正確に検出できる。
【0057】
また、本実施形態の水銀多量投入事態検出方法において、検出工程では、一次燃焼ゾーン10から二次燃焼ゾーン14へ到達した火炎の光のうち当該水銀輝線選択フィルタ62を透過した透過光の光強度を検出する。
【0058】
これにより、火炎では水銀輝線が発生し易く、特に二次燃焼ゾーン14へ到達した火炎では他の元素の輝線が比較的少ない等の理由により、水銀輝線を良好に検出することができる。
【0059】
また、本実施形態の水銀多量投入事態検出方法において、水銀輝線選択フィルタ62は、二次燃焼ゾーン14を構成する炉壁2aに形成された開口部2cを通過した光が通る領域に配置されている。
【0060】
これにより、一次燃焼ゾーン10から二次燃焼ゾーン14へ到達した火炎の光を直接的に検出することができる。
【0061】
また、本実施形態の水銀多量投入事態検出方法において、検出工程では、映像を検出する撮像装置を用いて、透過光の光強度を検出する。
【0062】
これにより、撮像範囲における透過光の光強度の分布を検出することができる。また、既存の撮像装置を活用して水銀多量投入事態を検出できる。
【0063】
また、本実施形態の水銀多量投入事態検出方法においては、検出工程では、照射された光の光強度に応じた起電力を発生させる光電池、又は、照射された光の光強度に応じた信号を発生させるフォトダイオードを用いて、透過光の光強度を検出することが好ましい。
【0064】
これにより、簡単かつ低コストな構成で透過光の光強度を検出することができる。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0066】
耐熱ガラス61と水銀輝線選択フィルタ62の間に、水銀輝線選択フィルタ62ではブロックしきれない帯域の光をブロックするための別の帯域フィルタを配置してもよい。
【0067】
上記実施形態では、撮像装置等の光検出器95と水銀輝線選択フィルタ62が別々に配置されているが、一体的に構成されていてもよい。例えば、撮像装置の光入射口に水銀輝線選択フィルタ62が取り付けられていてもよい。
【課題】廃棄物焼却炉で水銀多量投入事態が発生したことを早期かつ正確に検出可能であって、水銀多量投入事態が発生しても水銀の汚染の影響を受けない水銀多量投入事態検出方法を提供する。
【解決手段】水銀多量投入事態検出方法は、検出工程と、蓄積工程と、判定工程と、を廃棄物焼却炉に対して行う。検出工程では、水銀に特有のエネルギー準位に基づいて放出される特有の波長の輝線を選択的に透過させる水銀輝線選択フィルタを用いて、燃焼室で発生した光のうち当該水銀輝線選択フィルタを透過した透過光の光強度を光検出器で検出する。蓄積工程では、検出工程で検出された透過光の光強度を時系列で蓄積する。判定工程では、蓄積工程で蓄積された透過光の光強度及びその時間変化に基づいて判定基準を算出し、透過光の光強度の変化量が判定基準を超えた場合に、水銀多量投入事態が発生したと判定する。