特許第6543405号(P6543405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543405多段遠心圧縮機のための容量制御システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543405
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】多段遠心圧縮機のための容量制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20190628BHJP
   F04D 27/02 20060101ALI20190628BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20190628BHJP
   F24F 11/32 20180101ALI20190628BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190628BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20190628BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   F04D27/00 101M
   F04D27/00 N
   F04D27/02 A
   F24F11/86
   F24F11/32
   F25B1/00 361A
   F25B1/00 371B
   F25B1/00 371M
   F25B1/10 D
   F25B1/053 L
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-500395(P2018-500395)
(86)(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公表番号】特表2018-526557(P2018-526557A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016040663
(87)【国際公開番号】WO2017007708
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2018年1月24日
(31)【優先権主張番号】62/188,777
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】アルノー,ダミアン・ジャン・ダニエル
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/177582(WO,A2)
【文献】 特開2014−181905(JP,A)
【文献】 特開2005−180267(JP,A)
【文献】 特開2012−063121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
F04D 27/02
F24F 11/32
F24F 11/86
F25B 1/00
F25B 1/053
F25B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の安定を保ちながら多段圧縮機を制御する方法であって、
モータ軸の両端に配置された第1の圧縮機段及び第2の圧縮機段を有する圧縮機を提供するステップであって、前記第1の圧縮機段及び第2の圧縮機段のそれぞれは、前記それぞれの圧縮機段を通る冷媒の流量を制御するためのそれぞれの流量減少装置及び制御システムを有する、提供するステップと、
式(1)の関係を有するマッハ比及び羽根車の外径を圧縮機段ごとに定めるステップと、
現在のヘッド係数及び流量減少装置の位置について、サージ状態なしに動作するのに最低限必要なモータ駆動周波数を前記圧縮機の段ごとに計算するステップと、
排出冷水温度の設定点を実現するために、実際のモータ駆動周波数を最低許容レベルに保ちながら、前記流量減少装置の位置を前記圧縮機の段ごとに調節するステップと、
前記圧縮機の各段の前記流量減少装置の位置が完全に開いた位置に達し、前記排出冷水温度の設定点が満たされず且つ最大モータ駆動周波数を超過していない場合、前記実際のモータ駆動周波数を増やしてモータ速度を上げるステップと、
前記圧縮機の段ごとに吸込圧力及び吐出圧力を測定するステップと、
前記圧縮機の段ごとに飽和吸込温度及び飽和吐出温度を計算するステップと、
実際の最低モータ駆動周波数を計算するステップと、
サージ状態なしの所望の余裕をもたらす前記マッハ比を選択するステップと
を含む、方法。
MachRatio=Mach/ヘッド係数 (1)
但し、MachRatioはマッハ数であり、Machはマッハ数である。
【請求項2】
前記流量減少装置の位置を前記圧縮機の段ごとに調節するステップが、各流量減少装置を同一信号によって制御するステップを含む、請求項に記載の多段圧縮機を制御する方法。
【請求項3】
飽和吸込温度及び飽和吐出温度を計算するステップが、前記飽和吸込温度及び飽和吐出温度をコントローラの飽和表から抽出するステップを含む、請求項に記載の多段圧縮機を制御する方法。
【請求項4】
幾つかの個別の流量減少装置の位置に関して、速度増加値を値の表の下でコントローラ内に保存することができる、請求項に記載の多段圧縮機を制御する方法。
【請求項5】
多段圧縮機を制御するためのシステムであって、
閉冷媒ループ内で接続される、各圧縮機段が流量減少装置を有する第1の圧縮機段及び第2の圧縮機段を有する圧縮機、凝縮器、及び蒸発器と、
前記圧縮機の各段の容量を制御するように構成される制御システムであって、
最低限必要なモータ駆動周波数を計算すること、
前記流量減少装置の位置を調節すること、
前記流量減少装置の位置が完全に開いた位置に達し、排出冷水の設定点が満たされない場合、実際のモータ駆動周波数を増やすこと、
吸込圧力及び吐出圧力を測定すること、
飽和吸込温度及び飽和吐出温度を計算すること、
実際の最低モータ駆動周波数を計算すること、
式(2)の関係を有するマッハ比であって、サージ状態なしの余裕をもたらすマッハ比を選択すること、及び
サージ状態なしに動作するように前記圧縮機を制御すること
を行うように構成される、制御システムと
を含む、システム。
MachRatio=Mach/ヘッド係数 (2)
但し、MachRatioはマッハ数であり、Machはマッハ数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に援用する、2015年7月6日に出願されCAPACITY CONTROL SYSTEM AND METHOD FOR MULTI−CENTRIFUGAL COMPRESSORと題された米国仮特許出願第62/188,777号明細書の優先権及び利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本願は、一般に多段遠心圧縮機のための容量制御システム及び方法に関する。より詳細には本願は、多段遠心圧縮機内の各圧縮機の可変形状拡散器又は予旋回羽根の制御を管理して、圧縮機内のサージ状態を回避しながら圧縮機の動作効率を最適化するためのシステム及び方法に関する。
【0003】
遠心圧縮機の設計条件は、吸込及び吐出におけるガス流量、温度、及び圧力条件によって定められ得る。圧縮機は設計条件に近い条件で継続して動作することができ、又は動作環境が設計条件から長期間にわたって大幅に逸脱する場合がある。HVACシステム内で使用される圧縮機は幅広い変動の影響を受け得る。ガス流量は冷却負荷に関する需要に依存する一方、圧力条件、とりわけ凝縮圧力は周囲の温度条件に依存する。
【0004】
動作条件が設計条件から逸脱する場合、遠心圧縮機は動作中にサージや失速等の不安定な状態に直面し得る。サージ又はサージングとは、圧力及び流量の揺れを伴う過渡現象であり、圧縮機による完全な逆流を引き起こし得る。サージ時には、圧縮機が所望の圧力条件で所望の流量を供給できない場合がある。更に、サージは圧縮機の回転部品及び静止部品の両方において過度の振動を引き起こす可能性があり、圧縮機の損傷を引き起こし得る。圧縮機のサージを回避しながら圧縮機の動作を所望の流量及び圧力条件に調節するために、様々な装置及び制御パラメータを使用することができる。遠心圧縮機の流量を減らす最も簡単な方法は、遠心圧縮機速度を落とすことである。例えばタービンの駆動機構を可変速度で動作させることができ、又は変速駆動機構(VSD)によって給電される電気モータ。利用可能な場合、減速はサージを回避するために限定的にしか使用することができない。減速が可能でない場合、もう1つの解決策は、圧縮機の流量を減らすために圧縮機入口における予旋回羽根(「PRV」)や可変形状拡散器(「VGD」)等の流量減少装置(「FRD」)を使用することである。減速及び様々なFRDの可能性が使い果たされた場合、サージ状態を補正するためのもう1つの技法は、ホットガスバイパス弁を開けて圧縮機の吐出ガスの一部を圧縮機入口に戻して圧縮機入口における流量を増やすことである。機械上でのこれらの可用性にもよるが、上記の装置、つまり変速駆動機構、予旋回羽根、可変形状拡散器、及びホットガスバイパスの設定は、機械の効率を最適化しながら所望の動作条件において機械をサージなしの安定した動作に保つことを意図する安定制御アルゴリズムによって管理される。
【0005】
動作中にロータ及び軸を浮上させることによって自由な回転運動を可能にしながら摩擦を減らすために、モータ、圧縮機、タービン等の一部のターボ機械の動力伝達系統内で電磁軸受形式のアクティブ磁気技術が現在利用されている。電磁軸受は、かかる回転機器の動作内でころ軸受や流体膜軸受等の従来技術に取って代わるが、電磁軸受内の軸の心出しを必要とする。圧縮機が正常に動作している場合、動力伝達系統の回転軸と静止部品との間に機械的接触はない。ターボ機械内でサージ等の異常な過負荷状態が生じた場合、軸受の負荷容量を超える可能性があり、圧縮機軸を電磁軸受によってそれ以上支えることができず、磁気軸受のセーフティトリップを引き起こす。
【0006】
変速モータを含むHVACシステムでは、安定制御アルゴリズムが変速駆動機構と共に使用される。例えば安定制御アルゴリズムがサージ反応状態にある間にサージが検出されるとき圧縮機を更に高速で動作させるために、システムの動作パラメータ及び圧縮機のFRDの位置情報を利用する適応容量制御ロジックを使用することができる。適応容量制御ロジックによって将来のサージ状態を回避するために、過去の性能パラメータをマッピングし、メモリ内に記憶することができる。例示的な適応容量制御プロセスについての説明が、参照によって本明細書に援用する米国特許第4,608,833号明細書の中で示されている。
【0007】
しかし、圧縮機内で磁気軸受が利用される場合、迷惑なトリップを引き起こすシステム停止のリスクが増加することをサージ状態が招く限りにおいて、サージ状態に突入している圧縮機に依存する適応制御ロジックは望ましくなく、軸受の寿命を減らす可能性がある。
【0008】
開示するシステム及び/又は方法の意図する利点は、これらの需要の1つ又は複数を満たし、又は他の有利な特徴を提供する。他の特徴及び利点が本明細書から明らかにされる。開示する教示は、上記の需要の1つ又は複数を遂げるかどうかに関係なく、特許請求の範囲に含まれる実施形態に及ぶ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、VSDドライブを有する2段遠心圧縮機に関し、各圧縮機段は単一軸上に装着され、同じ速度で動作する。
【0010】
別の実施形態は、単一軸上に装着される多段圧縮機に関する。
【0011】
別の実施形態は、各圧縮機が独立した速度を有する状態で、直列に又は並列に配置される幾つかの圧縮機を制御することに関する。
【0012】
本明細書に記載する実施形態の利点は、圧縮機の流量を減らすことでの更なる利益を伴う、圧縮機の性能を最適化することである。
【0013】
代替的な例示的実施形態は、特許請求の範囲の中で概して列挙され得る他の特徴及び特徴の組合せに関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】暖房、換気、及び空調(HVAC)、冷房、又は液体冷却システム用の例示的な蒸気圧縮システムである。
図2】PRVを備える圧縮機の回転速度を計算し制御する例示的方法を示す。
図3】例示的な圧縮機に関するΩsurge対Machの例示的比例グラフである。
図4】共通のモータ軸の両端に1つの圧縮機段がある例示的な多段圧縮機システムである。
図5】VGDを備える2段遠心圧縮機用のコントローラをプログラミングするための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、暖房、換気、及び空調(HVAC)、冷房、又は液体冷却システム内で使用され得る例示的な蒸気圧縮システム100を概略的に示す。蒸気圧縮システム100は、冷媒蒸気を圧縮し、それを配管114経由で凝縮器112に送る遠心圧縮機108を含む。圧縮機108は、2つの段107、109を含む。凝縮器112は、冷却塔122に接続される入口118及び出口120を有する熱交換器コイル116を含む。凝縮器112からの凝縮液体冷媒が配管124経由で蒸発器126に流れる。蒸発器126は、冷却負荷130に接続される供給配管128S及び戻り配管128Rを有する熱交換器コイル128を含む。蒸発器126内の蒸気冷媒が吸込管132経由で圧縮機108に戻る。第1の圧縮機段107が吸込管132から蒸気冷媒を受け付け、第1の圧縮機段のVGD131を含む配管経由で圧縮蒸気冷媒を第2の圧縮機段109の入口に送る。第2の圧縮機段109がその蒸気冷媒を更に圧縮し、それを第2の圧縮機段のVGD133を含む配管経由で吐出管114に送る。圧縮機108の出口からVGD133の入口に達する配管136と配管138との間にホットガスバイパス(HGBP)弁134を相互接続することができる。
【0016】
蒸気圧縮システム100は、モータ152によって駆動される圧縮機108、凝縮器112、膨張装置(不図示)、及び蒸発器126によって流体、例えば冷媒を循環させることができる。システム100は、アナログ/デジタル(A/D)変換器148、マイクロプロセッサ150、不揮発性メモリ144、及びインタフェースボード146を有し得る制御パネル140も含むことができる。蒸気圧縮システム100内の冷媒として使用できる流体の一部の例は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)ベースの冷媒(例えばR−410A)、二酸化炭素(CO2、R−744)、及び他の任意の適切な種類の冷媒である。
【0017】
制御パネル140は、HGBP弁134を開閉するためのインタフェースモジュール146を含む。制御パネル140は、アナログ/デジタル(A/D)変換器148、マイクロプロセッサ150、不揮発性メモリ144、及びインタフェースモジュール146を含む。
【0018】
圧縮機108と共に使用される駆動機構152は変速機能を有する。駆動機構152は、変速エンジン若しくはタービンとすることができ、或いは電気モータは、変速駆動機構(VSD)によって給電されるか、又は交流(AC)電源若しくは直流(DC)電源から直接給電され得る。使用する場合、VSDは(許容範囲内の)一定の線間周波数(fixed line frequency)及び一定の線間電圧(fixed line voltage)を有するAC電力をAC電源から受け付け、可変の電圧及び周波数を有する電力をモータに与える。モータ152は、VSDによって又はAC電源若しくはDC電源から直接給電され得る任意の種類の電気モータとすることができる。圧縮機108は冷媒蒸気を圧縮し、その圧縮蒸気を吐出管によって凝縮器112に送る。例示的実施形態では、圧縮機108を遠心圧縮機とすることができる。圧縮機108によって凝縮器112に送られる冷媒蒸気は熱を例えば水又は空気とすることができる適切な流体に伝える。流体との熱伝達の結果、凝縮器112内で冷媒蒸気が冷媒液へと凝縮する。凝縮器112からの液体冷媒は、膨張装置(不図示)を通って蒸発器126に流れる。蒸発器126に送られる液体冷媒は、空気又は水とすることができる適切な流体から熱を吸収し冷媒蒸気へと相変化する。蒸気冷媒は蒸発器126を出て、吸込管によって圧縮機108に戻ってサイクルを完了する。
【0019】
図1に示す例示的実施形態では、凝縮器112内の冷媒蒸気が、冷却塔122に接続される熱交換器116を流れる水との熱交換関係に入る。熱交換器コイル内の水との熱交換関係の結果、凝縮器112内の冷媒蒸気が冷媒液へと相変化する。蒸発器126は、冷却負荷130に接続される供給配管128S及び戻り配管128Rを有する熱交換器128を含み得る。熱交換器128は、蒸発器126内の複数のチューブバンドルを含み得る。二次液体、例えば水、エチレン、塩化カルシウムブライン、塩化ナトリウムブライン、又は他の任意の適切な二次液体が戻り配管128R経由で蒸発器126内に入り、供給配管128S経由で蒸発器126を出ていく。蒸発器126内の液体冷媒が熱交換器128内の二次液体と熱交換関係に入り、熱交換器コイル128内の二次液体の温度を冷やす。熱交換器コイル128内の二次液体との熱交換関係の結果、蒸発器126内の冷媒液が冷媒蒸気へと相変化する。
【0020】
第1の圧縮機段107の吐出には、圧縮機段107の冷媒の流量を制御するために使用されるVGD131がある。第2の圧縮機段109の吐出には、圧縮機段109の冷媒の流量を制御するために使用されるVGD133がある。圧縮機108の流量は、圧縮機段107及び109両方による流量の結果である。VGD131及び133を制御するためにアクチュエータが使用される。
【0021】
ヘッド係数(Ω)及び流量係数(Θ)によって定められる圧縮機の動作点が圧縮機の動作限界内にある場合、速度及びVGD131、133の位置の様々な組合せにおいてこの動作点を得ることが概して可能である。圧縮機をサージなしに可能な最低速度で動作させることによって最適な動作効率が実現される。制御パネル140は、可能な最低速度を決定し、VGD131、133を所要の容量に調節するようにプログラムされる。更に、任意の圧縮機速度に関して、圧縮機はサージに突入することなしに最大ヘッド係数Ωsurgeを超えることができない。圧縮機の寸法、圧縮ガス及び動作条件が定められると、圧縮機速度をマッハ数に変換することができる。マッハ数は、システム内の特定点において羽根車の先端速度を音速で割ったものとして定めることができるパラメータである。特定点は羽根車の入口に位置し得るが、システム内の他の点も使用することができる。
【0022】
別の実施形態では、FRDを使用する場合、FRDアクチュエータの帰還信号を利用するFRDの開口度に対する速度増加の乗数(multiplier)を以下で論じるように使用することができる。
【0023】
別の実施形態では、実際の圧縮機ヘッドが実際の等エントロピヘッドであり得る。
【0024】
以下でより詳細に論じるように、圧縮機ヘッドは、圧縮機の上流及び下流で測定される冷媒特性から推定することができる。
【0025】
典型的な1組の曲線が、様々な回転速度(又はマッハ数)に関する単段圧縮機のヘッド係数(Ω)対流量係数(Θ)を与える。これらの曲線のそれぞれは、所与のマッハ数における圧縮機の「速度線」と呼ばれる。所与の速度又はマッハ数において、及び完全に開いたFRDにより、曲線の右側の点A(大流量及び低ヘッド)から開始し、ヘッドが増加するとき、サージ点Bに到達するまで流量は減少する。速度線が「サージ線」と交差する動作点Cにおいて、完全に開いたVGD(又は他のFRD)によって所与のマッハ数における最大ヘッド係数Ωsurgeが実現される。この1組の曲線は、任意の単段遠心圧縮機の性能を示すことができる。この曲線は圧縮機107又は109に適用することができる。以下の段落[0029]から[0034]の中で説明するアイテムを解説する参考として圧縮機109を利用する。
【0026】
所与の圧縮機について、ΩsurgeをMachに対して作図することができる。理論上は両方が比例する。現実の産業用圧縮機に関する例示的グラフを表す図3に見られるように、この理論は通常実際に非常に良く実証される。
【0027】
比例係数はMachRatio=Mach/Ωとして定められる。スケール係数を適用することによって同じ設計から補外される一連の圧縮機について、MachRatioは圧縮機の大きさに関係なくほぼ同じである。従って、VGD133が完全に開いた状態で圧縮機が動作している場合の圧縮機109内のサージ状態を回避するために、所与のヘッド係数Ωについて対応する最小マッハ数を計算することができる。別の実施形態では、所与のヘッド係数Ωについて、マッハ数の代わりに対応する最小RPM又は最小モータ回転数を使用することができる。
【0028】
上記で定めた比例係数に基づき、MachSurge=MachRatioΩ0.5が成立する。マッハ数は、圧縮機の吸込において計算される、羽根車の先端速度を音速で割った比率として定められることに留意されたい。マッハ数はRPM及び羽根車の外径に比例する。更に、MachRatioは、Ω=1においてVGD133が開いた状態で圧縮機が安定しながら(即ちサージ状態に突入することなしに)動作することができる最小マッハ数である。
【0029】
可変MachRatioの値は、サージに対する余裕を含むように調節することができる。より高いMachRatio値を選択することは、サージに対する安全域を増加させる。しかし、より高いMachRatio値は、部分負荷、即ちVGD133が閉じた状態のより高速のモータ速度において圧縮機効率の低下も引き起こす。
【0030】
VGD133が部分的に閉じた状態で圧縮機109を動作させ、且つ一定の圧縮機速度で動作させる場合、VGD133が閉じれば閉じるほど圧縮機109が与えることができるヘッド圧力が減少する。例えば、M=1.25の一例示的実施形態では、VGDの開口に対するヘッドの減少が以下の表によって表わされる。
【0031】
【表1】
【0032】
Ωsurge(%VGD)は、関連する%VGDに関するサージ前の最大ヘッド係数を示し、HeadReduction(%VGD)は、Ωsurge(%VGD)/Ωsurge(100%VGD)の比率として定められる。SpeedIncrease(%VGD)は、圧縮機をサージなしに保つのに必要な速度増加の比率を定める。
【0033】
最も簡単な実装形態では、HeadReduction(%VGD)の係数を圧縮機速度と無関係だと見なすことができる。一定のヘッド圧力における圧縮機のサージを回避するために、VGD133が閉じるにつれ圧縮機速度が増加する必要がある。
【0034】
次に図2を参照し、圧縮機の回転速度を計算し制御する新規の方法を示す。この方法の更なる詳細については、参照により本明細書に援用する、所有者が共通の特許出願PCT/US2012/043047号明細書の中で開示されている。方法200は、飽和状態における圧縮機の吸込圧力及び吐出圧力を測定することによってステップ202で始まる。次にこの方法はステップ204に進み、飽和状態における圧縮機の吸込圧力及び吐出圧力に対応する飽和温度を計算する。十分な相関関係を使用し、飽和温度から圧縮機ヘッドΩ及び音速も計算する。次にこの方法はステップ206に進み、ステップ206では、PRVアクチュエータの帰還を利用し、PRVのパーセンテージに基づいて速度増加の乗数を計算する。この方法は、PRVの代わりにVGD又は任意のFRDを使用する場合も同一であることに留意されたい。次いでこの方法はステップ208に進み、圧縮機が安定しながら且つサージなしに動作し得る最小マッハ数を以下のように等式(4)から計算する:
MachSurge=MachRatioSpeedIncrease(%VGD)Ω0.5 等式5
【0035】
次にステップ210で、この方法は可変MachSurgeに対応する羽根車の先端速度を計算する:
Tip Speed=MachSurgeSound Speed 等式6
【0036】
この方法はステップ212に進み、圧縮機が安定しながら且つサージなしに動作し得る最低回転速度(Hzactual−min)を計算する:
Hzactual_min=Tip Speed/(ImpellerODπ) 等式7
【0037】
各段において同じVGDの位置を有する2段圧縮機の制御
図4には、例示的な多段圧縮機システムが示されている。この多段圧縮機38は、第1の圧縮機段42及び第2の圧縮機段44を含む。第1の圧縮機段42及び第2の圧縮機段44は、圧縮機段42、44のそれぞれを同じ速度で駆動するモータ36の両端に配置される。蒸気冷媒が、冷媒配管50経由で第1の圧縮機段42内に引き入れられる。冷媒配管50は、蒸発器32の吐出管46によって供給される。蒸気冷媒が第1の圧縮機段42によって圧縮され、段間のクロスオーバ管48内に吐き出される。段間のクロスオーバ管48は、反対端で第2の圧縮機段44の吸込入力52に接続される。冷媒は、圧縮機の吐出管54に出力され凝縮器30に供給されるように第2の圧縮機段44内で更に圧縮され、凝縮器30では加圧された蒸気冷媒が液体へと凝縮される。図4に示す例示的実施形態では、中間圧力冷媒を第2の圧縮機段44に与えて冷房サイクルの効率を高めるために、任意選択的なエコノマイザ回路60が液体冷媒の戻り経路56、58内に挿入され、蒸気流配管62が吸込入口52に接続される。
【0038】
次に図5を参照し、2段遠心圧縮機108用のコントローラをプログラミングするための方法を開示する。2段遠心圧縮機108は、磁気軸受、及び速度制御用のVSDを有する高速モータを含み得る。
【0039】
ステップ600で、マッハ比(MachRatio)及び羽根車直径(ImpellerOD)を圧縮機段ごとに定める。ステップ602で、各段における実際のヘッド及びVGDの位置について、各圧縮機段がサージなしに動作するのに最低限必要なモータ周波数(Hzactual_min)をシステム制御が計算する。VGDの位置は2つの圧縮機段に関して同じである。ステップ604で、モータ周波数をその最低許容値(Hzactual_min)に保ちながらVGDの位置を調節することにより、排出冷水(LCW)温度の設定点がコントローラ150によってまず制御される。ステップ606で、VGDが完全に開くと、排水温度の設定点が実現されない場合、動力伝達系統の部品に関する最大周波数限度内でモータ速度をHzactual_minよりも上に上げる。
【0040】
ステップ608で、システムは、コントローラの飽和表を使用し、測定圧力から飽和吸込温度TSat_suct及び飽和吐出温度TSat_discを計算する。次にステップ610で、上記の等式5、6、7を使用して実際の最低モータ周波数Hzactual_minを計算する。
【0041】
ステップ612で、サージ点からの所望の安全域を可能にするようにマッハ比を選択することができる。より高いマッハ比の値はサージ点に対する更なる安全域をもたらすが、部分負荷、即ちVGDが閉じた状態のより高速のモータ速度においては効率の低下を引き起こす。ステップ614で、幾つかの個別のVGDの開口に関して、速度増加値(SpeedIncrease(%VGD))を値の表の下でコントローラ内に保存することができる。次いで、コントローラによる線形補間によって中間値を計算することができる。
【0042】
2段圧縮機では、マッハ比及び羽根車の外径(ImpellerOD)が圧縮機段ごとに定められる。ヘッド係数Ω及び音速(SoundSpeed)を段ごとに計算する必要がある。圧縮機の実際の最低速度は、2つの圧縮機段の実際の最低速度の大きい方、即ちHzactual_min=max(Hzactual_min_1st;Hzactual_min_2nd)として定められ、Hzactual_min_1st及びHzactual_min_2ndは第1段及び第2段の最低速度である。速度増加(SpeedIncrease(%VGD))の表は両方の段に適用される。
【0043】
各段において異なるVGDの位置を有する2段圧縮機の制御
本明細書では、冷却機応用のための図4の構成内の2段遠心機に関して本発明の概念を説明する。正常な動作中、第1段のVGD及び第2段のVGDの位置は別々に制御される。冷却機によって必要とされる容量の需要は排水温度と対応する設定点との差によって決定される。この需要は、最大許容圧縮機速度と上記で定めたHzactual_min_1stとの間で圧縮機速度を変化させること、及び最大許容位置と最小許容位置との間で第1段のVGDの位置を変化させることによって満たされる。最適な効率を得るために、圧縮機速度は常にサージ前の最低許容値に保たれる。
【0044】
第1段のVGDが部分的に閉じた部分負荷の動作時は、安全に動作させるのに十分な余裕を伴い、遠心圧縮機の最適な効率がサージ点の近くで得られる。所与の圧縮機のMachRatioの目的は、これらの両方の条件を満たすことである。第1段のVGDが部分的に閉じた状態でHzactual_min_1stにおいて第1の圧縮機段を動作させることは、第1段の圧縮機から最適な効率を得ることを確実にする。この圧縮機制御及びその利益については、単段圧縮機に関する特許A2925619号明細書の中でより正確に説明されており、本明細書でも第1の圧縮機段に同一に適用される。
【0045】
圧縮機の動作中、第2段のヘッド係数Ω2nd stageが計算される。この値及びSpeedIncrease(%VGD2nd stage)はHzactual_min_2ndの計算を可能にする。現実的に、一定の圧縮機速度及び第2段の圧縮機の吸込における所与の体積流量を考慮し、Hzactual_min_2ndは第2段のVGDが開くとき増加する。逆に、同じ速度及び流量を保ち、Hzactual_min_2ndは第2段のVGDが閉じるとき減少する。第2段のVGDは、必要に応じてHzactual_min_2ndを修正するために使用することができる。
【0046】
本発明の原理は、Hzactual_min_1stに等しい又は近いHzactual_min_2ndを得るために第2段のVGDの位置を制御することである。この条件に到達すると、各圧縮機段は、十分なMachRatioを使用することによるサージに対する十分な安全域を伴い、自らの最適な効率において自らのサージ線の近くで動作する。どちらの圧縮機段もサージに近いので、各段のヘッドが最大化され速度は最小化され、このことは最適な効率を得るための条件である。
【0047】
本願は、以下の説明に記載の又は図中に示す詳細又は方法体系に限定されないことを理解すべきである。本明細書で使用した語法及び用語は説明目的に過ぎず、限定的なものだと解釈すべきではないことも理解すべきである。
【0048】
図中に示し本明細書に記載した例示的実施形態が現在好ましいが、これらの実施形態は例として与えたに過ぎないことを理解すべきである。従って、本願は特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲に依然として含まれる様々な修正形態に及ぶ。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は順番は、代替的実施形態に従って変える又は並べ直すことができる。
【0049】
本願は、その操作を遂行するための方法、システム、及び任意の機械可読媒体上のプログラム製品を考察する。本願の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、この若しくは別の目的のために組み込まれる適切なシステム用の専用コンピュータプロセッサによって、又はハードワイヤードシステムによって実装することができる。
【0050】
様々な例示的実施形態の中で示した2段圧縮機制御システムの構造及び構成は例示に過ぎないことに留意することが重要である。本開示では幾つかの実施形態しか詳細に説明しなかったが、特許請求の範囲に記載する主題の新規の教示及び利点から著しく逸脱することなしに、多くの修正形態(例えば様々な要素の大きさ、寸法、構造、形状、及び比率、パラメータ値、取付方法、材料の使用法、色、向き等のバリエーション)があり得ることを本開示を検討する者なら容易に理解されよう。例えば、一体化して形成されるものとして示される要素は複数の部品又は要素で構築することができ、要素の位置を反転させ又は他の方法で変えることができ、個別の要素又は位置の性質又は数を変更し又は変えることができる。従って、そのような全ての修正形態が本願の範囲に含まれることを意図する。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は順番は、代替的実施形態に従って変える又は並べ直すことができる。特許請求の範囲では、如何なるミーンズプラスファンクション節も列挙した機能を実行するものとして本明細書に記載した構造、及び構造上の等価物だけでなく等価の構造も範囲に含むことを意図する。例示的実施形態の設計、動作条件、及び構成に関して、本願の範囲から逸脱することなしに他の置換、修正、変更、及び省略を加えることができる。
【0051】
上記のように、本願の範囲に含まれる実施形態は、記憶された機械実行可能命令又はデータ構造を運び又は有するための機械可読媒体を含む、プログラム製品を含む。かかる機械可読媒体は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又はプロセッサを有する他の機械によってアクセス可能な入手できる如何なる媒体でも良い。例として、かかる機械可読媒体はRAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROMや他の光ディスク記憶域、磁気ディスク記憶域や他の磁気記憶装置、又は所望のプログラムコードを機械実行可能命令若しくはデータ構造形式で運び若しくは記憶するために使用可能であり、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、若しくはプロセッサを有する他の機械によってアクセス可能な他の任意の媒体を含み得る。情報がネットワーク又は別の(ハードワイヤード、無線、又はハードワイヤード若しくは無線の組合せの)通信接続を介して機械に伝達され又は与えられる場合、その機械は接続を機械可読媒体と適切に見なす。従って、そのような如何なる接続も機械可読媒体と適切に呼ばれる。上記のものの組合せも機械可読媒体の範囲に含まれる。機械実行可能命令は、例えば汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機械に特定の機能又は機能群を実行させる命令及びデータを含む。
【0052】
本明細書の図面は方法ステップの特定の順序を示した可能性があるが、それらのステップの順序は図示したものと異なっても良いことが理解されよう。更に、2つ以上のステップを同時に又は部分的に同時に実行することもできる。かかる改変形態は、選択されるソフトウェア及びハードウェアシステム並びに設計者の選択次第である。そのような全ての改変形態が本願の範囲に含まれることが理解されよう。同様に、ソフトウェアの実装形態も、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び判定ステップを実現するための規則ベースのロジック及び他のロジックを伴う標準的なプログラミング技法を使って実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5