(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力端部には、通しボルトを前記ローラ部及びローラ台座を介して挿通する前記変位設置可能方向に長い長孔と、前記長孔の周囲に設けられた前記ローラ台座と嵌合する嵌合凹凸部と、が設けられた、
請求項1〜3の何れか一項に記載の転落防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラットホーム用の転落防止装置には、列車への乗降時に転落防止板がプラットホームから張り出した状態で乗降客が転落防止板を踏んだときの反力による転落防止板の移動を防止するためのブレーキ機構やロック機構が設けられている。
そして、ロック機構は、特許文献1に記載されているように電磁力を利用して動作するのでロック状態を遷移させるためには電力を必要とする。また、転落防止板が突出完了或いは収納完了に至らない状態で電源が断たれると、電動駆動機構のブレーキが作動して手動駆動ができなくなる。転落防止板が突出或いは収納途中のままでは列車を運行させることはできないので、電源が復旧するまで列車の運行を再開できない。こうした事態を回避するためには、故障や電源断が発生した場合でもブレーキを解除する指令を出せるように解除動作を可能とさせるバックアップ電源が必要であった。
【0005】
更に、プラットホームは線路の直線区間のみならず、カーブ区間に設けられることがある。カーブ区間に設けられたプラットホームに転落防止装置を設置する場合には、車両とホームとの間隔がドアの位置によって異なるため、転落防止板の突出量を設置位置ごとに定める必要がある。そのため、転落防止装置の製造にあたり、設置位置に合わせた転落防止装置を設計・製造する必要があった。この場合、固有の部品や装置の種類が増えて価格の増加を招く要因となる。また、誤発注や、現場での組み立てミスの要因ともなる。特許文献1では、それを避けるために、突出完了位置でブレーキをかけ、制動力で転落防止板を固定する方法を取っていた。しかし、この場合、ブレーキの摩耗で制動力が低下すると固定が出来なくなることから、ブレーキの点検が必要となるという課題があった。
【0006】
また、収納完了状態から突出完了状態への転落防止板の突出動作については、動き始めを素早く効率的に行いつつ、突出完了状態へ近づくほど緩やかになるのが望ましいとされる。
【0007】
本発明は、こうした背景に基づいて考案されたものであり、第1の目的とするところは、転落防止装置のロック機構として、機械構造がより簡素で安価に作れて耐久性に優れた電力を必要としないロック機構を実現することである。また、転落防止板の突出量を変更することができるようにすること。そして、転落防止板の突出動作を素早く効率的に行うことができる転落防止装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、転落防止板を軌道側へ突出させてプラットホームからの転落を防止する転落防止装置であって、駆動機構部と、前記駆動機構部の駆動によって原動端が移動されることで、従動端が揺動する第1リンクレバー部と、前記従動端と接触する接触面を有する入力端部と、所定の変位設置可能方向に設置位置を変更可能なローラ部が設置され、前記入力端部が移動されることで揺動する出力端部とを有する第2リンクレバー部と、前記ローラ部が転動可能なガイド溝を有し、前記出力端部の揺動運動を直線運動へ変換して前記転落防止板を進退方向に移動させる従動スライダと、を備え、前記第1リンクレバー部と前記第2リンクレバー部との係合関係が、前記転落防止板が突出完了状態及び収納完了状態にあるときに、前記第1リンクレバー部から前記第2リンクレバー部への順方向の運動伝達のみ有効となる逆動作防止構造を構成し、前記ガイド溝は、前記転落防止板の進退方向に対して直交又は略直交した方向に構成され、前記変位設置可能方向と、前記ガイド溝の方向とが、前記収納完了状態において平行となるように構成された、転落防止装置である。
【0009】
第2の発明は、前記第2リンクレバー部の揺動軸の中心を起点に前記出力端部の中心軸と前記入力端部の中心軸との成す角度が鈍角である、第1の発明の転落防止装置である。
【0010】
第3の発明は、前記転落防止板が進退動作可能な範囲を、前記ローラ部の設置位置に応じて突出限界位置を可変に制限する一方、収納限界位置を固定に制限する移動制限部、
を更に備えた第1又は第2の発明の転落防止装置である。
【0011】
第4の発明は、前記出力端部には、前記ローラ部の回転軸に挿通された通しボルトに螺合する複数のボルト孔が前記変位設置可能方向に配設された第1〜第3の何れかの発明の転落防止装置である
【0012】
第5の発明は、前記出力端部には、通しボルトを前記ローラ部及びローラ台座を介して挿通する前記変位設置可能方向に長い長孔と、前記長孔の周囲に設けられた前記ローラ台座と嵌合する嵌合凹凸部と、が設けられた、第1〜第3の何れかの発明の転落防止装置である。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第5の何れかの発明によれば、転落防止板が突出完了状態及び収納完了状態にあるときに、駆動機構部→第1リンクレバー部→第2リンクレバー部への順方向の動力伝達でのみ揺動運動を直線運動に変換して転落防止板を突出/収納させることができる転落防止装置を実現できる。つまり、電源を必要とするブレーキを設けなくとも、転落防止板を突出完了状態から無理に収納させようとしたり、収納完了状態から無理に突出させようとしてもロック状態となる。電気電子部品や電子制御を用いない分、ロック機構をより簡素で安価に作ることができ、また耐久性にも優れる。しかも、ローラ部の設置位置を変更することで、第1リンクレバー部及び第2リンクレバー部によるリンク機構に係る揺動運動から直線運動への変換率を変更できるため、転落防止板の突出量を簡単に変更することができる。よって、従来に比べて安価で耐久性に優れた電力を必要としないロック機構を備え、且つ転落防止板の突出量を簡単に変更することができる転落防止装置を提供することができる。
【0014】
また、ガイド溝が、転落防止板の進退方向に対して直交又は略直交した方向に構成されている。そのため、収納完了状態から突出完了状態までの転落防止板の移動速度は、突出量の設定にかかわらず、第1リンクレバー部の均等な回転角度に対し、ローラ部は不均等な回転角度で変化することになる。すなわち、転落防止板は、素早く動き出して突出完了状態に近づくにつれてゆっくりと動くようになる。収納完了状態におけるガイド溝の方向が、転落防止板の移動方向に対して傾斜している構成よりも突出動作を効率的に行うことができる。
【0015】
また、第3の発明によれば、転落防止板の移動可能な範囲を制限し、更に安全性を高めることができる。ローラ部の変位設置可能方向と、前記ガイド溝の方向とが、前記収納完了状態において平行となるように構成されているため、ローラ部の設置位置に関わらず収納限界位置を常に固定にすることができる。そのため、移動制限部の調整作業は突出限界位置側の調整だけで済む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用した一実施形態である、プラットホーム用転落防止装置の概要を説明する。
図1は、設置状態にあるプラットホーム用転落防止装置10の構成例を示す(1)上面図、(2)側面図である。プラットホーム用転落防止装置10は、駅のプラットホーム2の側縁上部に凹設された設置空間に固定される。
【0018】
プラットホーム用転落防止装置10は、設置空間に固定されるメインフレーム14と、その蓋に当たる天板12とで、軌道側に開口する薄型直方形の内部空間を画成し、当該内部空間に、転落防止板16をボールベアリング式のスライドレール18で略水平にスライド自在に支持している(
図2参照)。そして、転落防止板16を駆動機構部20によって軌道側/ホーム側へ進退動することができる。
【0019】
列車4への乗降時以外では、転落防止板16は、その軌道側端が線路側に規程位置以上は突出しないように内部空間に収納された位置にあって移動抑止状態で維持される。この状態を「収納完了状態」と呼ぶ。
【0020】
列車4への乗降時には、駆動機構部20が作動するのに伴って転落防止板16は自動的に移動可能状態に遷移し、転落防止板16が軌道側へ突出されてプラットホームと列車4との隙間Dを狭くして乗降者がプラットホームと列車との間に転落するのを防止する。この状態を「突出完了状態」と呼ぶ。
図1(1)および
図1(2)は、何れもこの「突出完了状態」を示している。
【0021】
突出完了状態になると、転落防止板16は移動可能状態から移動抑止状態へ自動的に切り換えられ、転落防止板16側からの入力(例えば、乗降者が転落防止板16に踏み込んで乗り込もうとした時に生じる反力等)に抗して転落防止板16は現状位置を維持する。つまり、ロック状態となる。
【0022】
そして、乗降が終了すると、駆動機構部20が反転動作する。転落防止板16が移動抑止状態にあっても、駆動機構部20の作動から始まる駆動力の順方向への伝達が開始されると、自動的に転落防止板16は移動可能状態に切り換えられる。そして、伝達された動力によって転落防止板16がホーム側へ移動され「収納完了状態」に戻され、自動的に転落防止板16は移動抑止状態となる。
【0023】
では次に、プラットホーム用転落防止装置10の内部構造について詳細に説明する。
図2及び
図3は、プラットホーム用転落防止装置10の内部空間に収納されている本実施形態に係る内部構造を示す図であって収納完了状態を示している。
図2では天板12、メインフレーム14、転落防止板16を透視して図示しており、
図2(1)は上面図、
図2(2)はその部分拡大図である。
図3は
図2のA−A断面図である。
【0024】
駆動機構部20は、図示されない制御装置により電気制御される電動モータ21と、電動モータ21の出力軸の回転を適当に減速する減速機構22と、減速機構22の出力軸に連結されたボールネジ部23と、ボールネジ部23の回転によりスライドされる駆動スライダ24と、ボールネジ部23の先端を枢支する軸受25とを備える。つまり、電動モータ21と減速機構22とは、ボールネジ部23を回転駆動させる駆動部として機能する。ボールネジ部23と駆動スライダ24とは、直動機構として機能する。なお、駆動スライダ24は、後述する第1リンク機構部40の一機能部でもある。また、直動機構はラックピニオン、チェーン、タイミングベルト等で構成してもよい。
【0025】
駆動機構部20に関連して、メインフレーム14には、ボールネジ部23に沿って駆動スライダ24の位置を検知するための検知センサーが適宜設けられる。本実施形態では、転落防止板16が突出完了状態にあるときの駆動スライダ24の位置を検出するための突出完了検知センサー30と、収納完了状態にあるときの駆動スライダ24の位置を検出するための収納完了検知センサー32とが設けられている。突出完了検知センサー30および収納完了検知センサー32は、例えばリミットスイッチで実現され、検知信号を電動モータ21の制御装置(図示略)に出力し、電動モータ21の回転制御に利用される。
【0026】
駆動機構部20と転落防止板16は、第1リンク機構部40及び第2リンク機構部60を介して連係する。
【0027】
第1リンク機構部40は、駆動機構部20により駆動される駆動スライダ24の直線状の運動を揺動運動に変換する機構部であって、駆動スライダ24に設けられたローラガイド42と、揺動体である第1リンクレバー部43とを有する。揺動体である第1リンクレバー部43が駆動機構部20の駆動によって動作し、これにより揺動運動が生じる。
【0028】
第1リンクレバー部43は、上面視すると直線状を成しており、メインフレーム14から略垂直に突設された揺動軸44で回転自在に枢支されている。そして、第1リンクレバー部43は、駆動機構部20の側の一端(原動端)にローラガイド42のガイド溝内で転動して連結接続する原動端ローラ45を有し、揺動軸44を挟んで反対側の他端(従動端)に揺動端ローラ46を有する。
【0029】
第2リンク機構部60は、駆動機構部20の駆動によって第1リンク機構部40が動作することで働く揺動運動を、転落防止板16を進退方向に移動させる従動スライダ62の直線運動に変換する機構であって、第2リンクレバー部61と従動スライダ62とを有する。
【0030】
第2リンクレバー部61は、上面視すると屈曲形(例えば略L字型や、略くの字型)を成しており、その屈曲部にて、メインフレーム14から略垂直に突設された揺動軸63で回転自在に枢支されている。そして、第2リンクレバー部61は、屈曲部よりも駆動機構部20の側の一端部(第1リンクレバー部43寄りの端部:入力端部)に、第1リンク機構部40の揺動端ローラ46が接触して転動するためのローラ接触面64を有する。また、第2リンクレバー部61は、他端部(出力端部)に、従動スライダ62の下面に設けられたガイド溝66のガイド溝内で転動する出力端ローラ67を有する。そして、この出力端ローラ67の取り付け位置は変更可能に構成されている。
【0031】
従動スライダ62は、転落防止板16の裏面に固定されたスライドレール18のレール裏面にボルト等で固定されており、ガイド溝66は転落防止板16の進退方向に対して直交又は略直交する方向の溝を形成している。
【0032】
図2(2)の拡大図に示すように、第2リンクレバー部61のローラ接触面64は、上面視略U字状の転換面64aと、当該転換面の両端から当該レバーの回転方向それぞれに向けて連なる突出完了状態鎖錠面64bおよび収納完了状態鎖錠面64cとを有する。
【0033】
収納完了状態鎖錠面64cは、収納完了状態の第1リンクレバー部43と第2リンクレバー部61の位置関係において、第1リンクレバー部43の揺動軸44を中心とする曲面を有している。そして、第1リンク機構部40と第2リンク機構部60との収納完了状態における所定の対偶関係の幾何的条件を満たすように設計されており、収納完了状態鎖錠面64cにおける揺動端ローラ46の接触位置が、揺動端ローラ46と揺動軸44とを結ぶ直線上(または略直線上)となる。
【0034】
この結果、収納完了状態にあるとき、転落防止板16を移動抑止状態にすることができる。具体的には、
図2に示すような収納状態にある転落防止板16に対して、突出方向に移動させようとする作用力F1(
図2(2)中の太白矢印)が生じると、従動スライダ62が出力端ローラ67を突出方向(軌道方向)へ押す。これに伴って第2リンクレバー部61には時計回りのトルクが生じ、ローラ接触面64が第1リンクレバー部43の揺動端ローラ46を作用力F2(
図2(2)中の太黒矢印)で押す。しかし、前述の幾何的関係により作用力F2の方向は、揺動端ローラ46と揺動軸44とを結ぶ直線方向となる。そのため、作用力F2は揺動軸44により支えられて第1リンクレバー部43を回転させることはない。すなわち、ロック状態となる。
【0035】
同様に、突出完了状態鎖錠面64bは、突出完了状態の第1リンクレバー部43と第2リンクレバー部61の位置関係において、第1リンクレバー部43の揺動軸44を中心とする曲面を有している。そして、第1リンク機構部40と第2リンク機構部60との突出完了状態における所定の対偶関係の幾何的条件を満たすように設計されており、突出完了状態鎖錠面64bにおける揺動端ローラ46との接触位置が、揺動端ローラ46と揺動軸44とを結ぶ直線上(または略直線上)となるように構成されている。すなわち、突出完了状態において転落防止板16を移動抑制状態に維持することができる。
【0036】
図4は、本実施形態における第2リンクレバー部61の構成例を示す図であって、(1)上面図、(2)ローラ接触面64側から見た側面視分解図である。
第2リンクレバー部61の出力端部には、揺動軸63の挿通孔611からの距離を違えた複数のボルト孔612が変位設置可能方向Lに沿って直列に設けられている。本実施形態では変位設置可能方向Lは、揺動軸63の挿通孔611、より具体的には揺動軸63の中心を通るように設定されている。また、本実施形態ではボルト孔612は3つであるが、その数は複数であれば幾つでもよい。ボルト孔612同士の間隔も適宜設定可能である。そして、複数のボルト孔612のうち何れかに出力端ローラ67が装着される。
【0037】
出力端ローラ67は、例えば、ベアリングの外周に樹脂環を嵌め込んだローラ本体671と、高さ調整用のローラ台座672とを通しボルト673で同軸に挿通してボルト孔612に螺合させて設置される。出力端ローラ67をどのボルト孔612に固定するかで、第2リンク機構部60によるレバー比(すなわち揺動運動から直線運動への変換率)を変更し、転落防止板16の突出量を変更することができる。
【0038】
なお、第2リンクレバー部61の揺動軸の挿通孔611の中心から出力端部の中心軸である変位設置可能方向Lと、挿通孔611の中心から入力端部のローラ接触面64の中心軸M(突出完了状態鎖錠面64b・転換面64a・収納完了状態鎖錠面64cの3つ面の連接方向の中心軸の意)とは鈍角を為している。
【0039】
第2リンク機構部60のレバー比変更により転落防止板16の突出量の調整を可能にしたことに対応して、本実施形態では転落防止板16の進退動作が可能な範囲を制限する移動制限部も調整可能に構成されている。
【0040】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、移動制限部として、メインフレーム14の底面には、転落防止板16の移動方向(進退動作方向)に沿って軌道側ストッパー72kとホーム側ストッパー72hとが突設されている。また、転落防止板16の下面には、転落防止板16の移動方向(進退動作方向)に沿って軌道側係合突起76kとホーム側係合突起76hとが下向きに設けられている。
【0041】
そして、転落防止板16が突出方向へ移動すると、やがて軌道側係合突起76kがその軌道側の側面で軌道側ストッパー72k(又はスペーサ73)と当接・係合して突出限界位置を規制する。反対に、転落防止板16が収納方向へ移動すると、やがてホーム側係合突起76hがそのホーム側の側面でホーム側ストッパー72hと当接・係合して収納限界位置を規制する。つまり、軌道側ストッパー72kとホーム側ストッパー72hとに挟まれた距離が転落防止板16の移動制限距離となる。
【0042】
そして、軌道側ストッパー72kのホーム側の側面には、移動制限距離を調整するためのスペーサ73が着脱自在に装着される。具体的には、
図5(1)に示すように、軌道側ストッパー72kを上面視すると、そのホーム側側面には鉛直方向の係合溝721が設けられている。係合溝721は、スペーサ73の係合突起部731が鉛直方向には挿抜可能であるが、水平方向には挿抜不能にデザインされている。
【0043】
スペーサ73は、調整厚さW(転落防止板16の移動方向厚さ)が異なる複数種類が用意されており、軌道側ストッパー72kに装着するスペーサ73の種類(装着しない場合を含む)を、第2リンク機構部60のレバー比の設定すなわち出力端ローラ67をどのボルト孔612に装着するかに応じて選択することで、転落防止板16の移動制限距離を適当に調整することができる。
【0044】
なお、転落防止板16の突出量の調整作業は、
手順[1]:天板12を外し、
手順[2]:転落防止板16をスライドレール18から取り外し、
手順[3]:スライドレール18及び従動スライダ62を取り外し、
手順[4]:出力端ローラ67の装着位置を変更し、
手順[5]スペーサ73を変更する、
ことにより実現される。
勿論、手順[1]から手順[3]を省力化するために、天板12や転落防止板16に、出力端ローラ67の装着位置を変更作業するための第1開閉蓋部(調整窓、点検口などと呼んでも良い。)と、スペーサ73を変更するための第2開閉蓋部をそれぞれ設けるとしてもよい。
【0045】
では次に、プラットホーム用転落防止装置10の動作について説明する。
図6は、転落防止板16を移動させる原理機構の拡大図であって、(1)突出完了状態、(2)収納完了状態をそれぞれ示している。
【0046】
図6(1)の例では、出力端ローラ67が第2リンクレバー部61の揺動軸63から最も離れたボルト孔612(
図4参照)に装着され、且つ、軌道側ストッパー72kにスペーサ73が装着されていないので、転落防止板16の突出量は最大となる。
そして、突出完了状態にあるプラットホーム用転落防止装置10では、ローラ接触面64の突出完了状態鎖錠面64bにて第1リンクレバー部43の揺動端ローラ46が当接している。前述の如く、この状態では第2リンクレバー部61から第1リンクレバー部43への逆方向の動力伝達によってリンク機構が作動することはない。つまり、転落防止板16と駆動機構部20を繋ぐリンク機構はロック状態にあり、転落防止板16は鎖錠されている。
【0047】
転落防止板16を収納するために、電動モータ21が所定方向へ回転駆動されると、駆動スライダ24は(
図6で言うところの下方へ)移動され、駆動スライダ24のローラガイド42で係合する原動端ローラ45も移動される。これにより、第1リンクレバー部43は、時計回りに回転し、揺動端ローラ46が突出完了状態鎖錠面64bから転換面64aに移動する。つまり、突出完了状態におけるリンク機構のロック状態は自動的に且つスムーズに解除される。
【0048】
そして、揺動端ローラ46が転換面64aに移動すると、転換面64aが成す上面視略U字型の内側に揺動端ローラ46が収まり、第1リンクレバー部43の回転運動が第2リンクレバー部61を反時計回りに回転させる。第2リンクレバー部61が反時計回りに回転すると、出力端ローラ67は相対的にホーム側へ移動し、従動スライダ62及び転落防止板16をホーム側へ移動させる。
【0049】
電動モータ21の回転駆動が続けられると、やがて揺動端ローラ46が転換面64aから抜けて収納完了状態鎖錠面64cへ移動し、駆動スライダ24が所定の収納完了位置まで移動するに至ると電動モータ21が停止され、
図6(2)に示す状態となる。
【0050】
収納完了状態にあるプラットホーム用転落防止装置10では、ローラ接触面64の収納完了状態鎖錠面64cにて第1リンクレバー部43の揺動端ローラ46が当接している。前述の如く、この状態では第2リンクレバー部61から第1リンクレバー部43への逆方向の動力伝達によってリンク機構が作動することはない。つまり、転落防止板16と駆動機構部20を繋ぐリンク機構はロック状態にあり、転落防止板16は鎖錠されている。
【0051】
また、収納完了状態にあるとき、第2リンクレバー部61の複数のボルト孔612の配列方向(変位設置可能方向L)と、従動スライダ62のガイド溝66の溝方向とが、平行又は略平行となる。
【0052】
図6(2)の状態から、転落防止板16を突出させるために、電動モータ21が先ほどとは逆向きに回転駆動されると、駆動スライダ24は(
図6で言うところの上方へ)移動され、ローラガイド42と係合する原動端ローラ45も移動される。これにより、第1リンクレバー部43は反時計回りに回転し、揺動端ローラ46が収納完了状態鎖錠面64cから転換面64aに移動する。これにより、収納完了状態におけるリンク機構のロック状態が自動的に且つスムーズに解除されて、やがて
図6(1)の突出完了状態に戻る。
【0053】
図7は、出力端ローラ67の取り付け位置を
図6から変更した場合、すなわち突出量を変更したときの、転落防止板16を移動させる原理機構の拡大図であって、(1)突出完了状態、(2)収納完了状態をそれぞれ示している。
【0054】
図6(1)と
図7(1)とを比較すると、出力端ローラ67の取り付け位置を変更したことにより、
図7の方が従動スライダ62の突出量が小さくなっている。また、これに伴って軌道側ストッパー72kにスペーサ73が装着されている。
【0055】
一方、
図6(2)と
図7(2)とを比較すると、収納完了状態における第2リンクレバー部61の姿勢も両図において同じである。すなわち、前述のように収納完了状態にあるとき、第2リンクレバー部61の複数のボルト孔612の配列方向(変位設置可能方向L)と、従動スライダ62のガイド溝66のガイド溝方向とが平行又は略平行となるため、出力端ローラ67の取り付け位置を変更しても、収納完了状態における従動スライダ62の収納位置は変わらない。したがって、突出量を設定変更する際、ホーム側ストッパー72hやホーム側係合突起76hに係る調整は不要である。
【0056】
ここで、収納完了状態から突出完了状態までの転落防止板16の移動速度に着目すると、収納完了状態における従動スライダ62のガイド溝66のガイド溝方向が、転落防止板16の移動方向に対して直交又は略直交となるため、第1リンクレバー部43の均等な回転角度に対し、出力端ローラ67は不均等な回転角度で変化することになる。すなわち、素早く動き出して突出完了状態に近づくにつれてゆっくりと動くようになる。収納完了状態における従動スライダ62のガイド溝66のガイド溝方向が、転落防止板16の移動方向に対して傾斜している構成よりも突出動作を効率的に行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態のプラットホーム用転落防止装置10では、
図8に示すように、減速機構22に手回しハンドル90を装着して歯車機構92を手動回転させることができる。具体的には、プラットホーム用転落防止装置10への電源が遮断された時には、手回しハンドル90を歯車機構92の連結孔94に差し込んで連結させることで、ボールネジ部23を電力無しで回転させることができる。天板12に、天板12全体を外さなくとも連結孔94へアクセスできる小型の扉部を設けておくと更に好適である。
【0058】
以上、本実施形態によれば、転落防止板16の移動抑止状態(ロック作動状態)と移動可能状態(ロック解除状態)とを機械的な構造で実現した。これにより、電磁ブレーキ等を不要としてロック状態を遷移させるための電力を不要とした。また、機構的にロック作動/解除を実現したため、部品の劣化の程度を一見して識別可能として保守点検の作業工数を低減し、プラットホーム用転落防止装置10の耐久性を向上させることができる。
【0059】
また、第2リンクレバー部61の出力端部における出力端ローラ67の位置を変更できるとともに、軌道側係合突起76kの位置を変更できるので、同じ仕様のプラットホーム用転落防止装置10であっても、転落防止板16の突出量を個々に調整できる。線路のカーブ区間にプラットホーム2が設けられている場合には、プラットホーム用転落防止装置10設置する設置場所と列車4との間隙は設置場所によって異なる。こういった場合に本実施形態は有用である。すなわち、転落防止板16の突出量調整を可能とする機構を備えていることで、設置場所に応じた異なる突出量のプラットホーム用転落防止装置10を、現場で構成することができ、プラットホーム用転落防止装置10の製造コストの低減に大きく寄与し得る。
【0060】
また、収納完了状態から突出完了状態への転落防止板16の突出動作については、動き始めを素早く効率的に行いつつ、突出完了へ近づくほど緩やかになるようにできる。
【0061】
〔変形例〕
なお、本発明の形態は本実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0062】
[その1]
例えば、上記実施形態におけるボールネジ部23と駆動スライダ24とで構成される直動機構は、ラック・アンド・ピニオンによる直動機構や、ベルト駆動による直動機構に置き換えることができる。
【0063】
[その2]
また、出力端ローラ67の取り付け位置の調整構造は、ボルト孔612の数と位置による方式に限らない。例えば
図9に示すように、出力端ローラ67の取り付け範囲に沿って通しボルト673を挿通できる長孔613を、その長手方向(変位設置可能方向L)が収納完了状態における従動スライダ62のガイド溝66の溝方向と平行又は略平行となるように設ける。そして、その周囲に嵌合凹凸部614を設ける。通しボルト673は、ローラ本体671及びローラ台座672を介して長孔613に挿通される。そして、ローラ台座672にもこの凹凸と嵌合する突起部674を設け、嵌合凹凸部614と突起部674とによる嵌合位置で調整するとしてもよい。この場合、嵌合凹凸部614の凹凸間隔に応じて、出力端ローラ67の位置を上記実施形態よりも微調整可能になる。
【0064】
そして、これに応じて軌道側ストッパー72kを微調整可能にすると好適である。具体的には、
図10に示すように、軌道側ストッパー72kを、基部722と、係合体723とを有する構成とする。
【0065】
基部722はメインフレーム14の底部の上面に固定されている。係合体723は、調整ボルト725を一体に備える。基部722及びスペーサ73には調整ボルト725の挿通孔が開けられている。そして、スペーサ73を基部722との間に挟み、調整ボルト725とナット727とで一体に固定する。或いは、
図11に示すように、
図10の構成からスペーサ73を省略して二つのナット727で係合体723を基部722に固定するとしてもよい。
[その3]
また、軌道側ストッパー72kとスペーサ73との係合形状は
図5の例に限らず、
図12に示すようにその他の形状を採用することもできる。