(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆動作防止構造は、前記突出完了状態及び前記収納完了状態であるときに、前記原動端部から前記直動体への作用方向が、前記直動体の直線運動方向と直交又は略直交する幾何条件を満たす係合関係となる構成を有する、
請求項1又は2に記載の転落防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプラットホーム用の転落防止装置には、列車への乗降時に転落防止板がプラットホームから張り出した状態で乗降客が転落防止板を踏んだときの反力による転落防止板の移動を防止するためのブレーキ機構やロック機構が設けられている。そして、ロック機構は、特許文献1に記載されているように電磁力を利用して動作するのでロック状態を遷移させるためには電力を必要とする。また、電気制御関連の部品点数が増えて製造コストを押し上げる問題もあった。また、電気電子部品は機械部品に比べて一見して劣化の程度が判別しにくいため保守点検の作業工数が増えてしまう問題もあった。
【0005】
また、転落防止装置が設置されるプラットホームは、線路の直線区間のみならずカーブ区間に設けられることがある。カーブ区間に設けられたプラットホームに転落防止装置を設置する場合には、車両とホームとの間隔がドアの位置によって異なるため、転落防止板の突出量を設置位置ごとに定める必要がある。そのため、転落防止装置の製造にあたり、設置位置に合わせた転落防止装置を設計・製造する必要があった。この場合、固有の部品や装置の種類が増えて価格の増加を招く要因となる。また、誤発注や、現場での組み立てミスの要因ともなる。
【0006】
また、収納完了状態から突出完了状態への転落防止板の突出動作については、ゆっくり動き出して漸次速度を上げ、中間で最大速度となり、漸次速度を下げて突出完了状態に近づくにつれゆっくりと動くのが望ましいとされる。
【0007】
本発明は、こうした事情を鑑みてなされたものであり、第1の目的とするところは、転落防止装置のロック機構として、機械構造が簡素でありながら、転落防止板の突出量の調整が可能なロック機構を実現することである。また、収納完了状態から突出完了状態への転落防止板の突出動作をゆっくり動き出して漸次速度を上げ、中間で最大速度となり、漸次速度を下げて突出完了状態に近づくにつれゆっくりと動かすことができる転落防止装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、転落防止板を軌道側へ突出させてプラットホームからの転落を防止する転落防止装置であって、原動端部が駆動機構部により直線運動される直動体に係合され、所定の変位設置可能方向に設置位置を変更可能な従動端ローラ部が前記転落防止板に係合された揺動体と、前記従動端ローラ部が転動可能なガイド溝を有し、前記揺動体の揺動運動を直線運動へ変換して前記転落防止板を進退方向に移動させる従動スライダと、を備え、前記直動体と前記原動端部との係合関係が、前記転落防止板が突出完了状態及び収納完了状態であるときに、前記直動体から前記原動端部への順方向の運動伝達のみ有効となる逆動作防止構造を構成し、前記ガイド溝は、前記転落防止板の進退方向に対して直交又は略直交した方向に構成され、前記変位設置可能方向と、前記ガイド溝の方向とが、前記収納完了状態において平行となるように構成された、転落防止装置である。
【0009】
第2の発明は、前記変位設置可能方向が、前記揺動体の揺動軸の中心を避けて設定されている、第1の発明の転落防止装置である。
【0010】
第3の発明は、前記逆動作防止構造は、前記突出完了状態及び前記収納完了状態であるときに、前記原動端部から前記直動体への作用方向が、前記直動体の直線運動方向と直交又は略直交する幾何条件を満たす係合関係となる構成を有する、第1又は第2の発明の転落防止装置である。
【0011】
第4の発明は、前記直動体は、前記原動端部に係合するためのローラを有し、前記原動端部は、前記ローラの転動面として、前記突出完了状態及び前記収納完了状態であるときに前記ローラが接する鎖錠面であって法線方向が前記直線運動方向に対して直交又は略直交する2つの鎖錠面と、前記突出完了状態と前記収納完了状態との間の転換中に前記ローラが接する転換面であって前記2つの鎖錠面との間をつなぐ円弧状の転換面とを有する、第3の発明の転落防止装置である。
【0012】
第5の発明は、前記駆動機構部がラック&ピニオン機構を有する、第1〜第4の何れかの発明の転落防止装置である。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第5の何れかの発明によれば、転落防止板が突出完了状態及び収納完了状態であるときには、駆動機構部から揺動体への順方向の動力伝達はできるが、逆方向への動力伝達はできない機構を実現して、転落防止板を進退させることができる。つまり、転落防止板が突出完了状態や収納完了状態にあるときに、電源を必要とするブレーキを設けなくともロック状態とすることができ、より簡素な機械構造のロック機構を実現することができる。また簡素な構造であることから、劣化の程度を判別し易く、保守点検の正確性の向上及び作業工数の低減を図ることができる。
【0014】
また、従動端ローラの設置位置を変更可能である。つまり、揺動体による揺動運動から直線運動への変換比を変更し、同じ揺動角度でも従動スライダが移動される距離を変え、ひいては転落防止板の突出量を調整することが可能になる。
【0015】
しかも、ガイド溝が、転落防止板の進退方向に対して直交又は略直交した方向に構成され、更に変位設置可能方向とガイド溝の方向とが、収納完了状態において平行となるように構成されている。そのため、収納完了状態から突出完了状態までの転落防止板の移動速度は、ゆっくり動き出して漸次速度を上げ、中間で最大速度となり、漸次速度を下げて突出完了状態に近づくにつれゆっくりと動くようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用した一実施形態のプラットホーム用転落防止装置の概要を説明する。
図1は、設置状態にあるプラットホーム用転落防止装置10の(1)上面図、(2)側面図である。プラットホーム用転落防止装置10は、駅のプラットホーム2の側縁上部に凹設された設置空間に固定されている。
【0018】
プラットホーム用転落防止装置10は、設置空間に固定されるメインフレーム14と、その蓋に当たる天板12とで、軌道側に開口する薄型直方形の内部空間を画成し、当該内部空間に、転落防止板16をボールベアリング式のスライドレール18で略水平にスライド自在に支持している(
図2参照)。そして、転落防止板16を進退機構部11によって軌道側/ホーム側へ進退動することができる。
【0019】
列車4への乗降時以外では、転落防止板16は、その軌道側端が線路側に規程位置以上は突出しないように内部空間に収納された位置にあって、移動抑止状態で維持される。この状態を「収納完了状態」と呼ぶ。
【0020】
列車4への乗降時には、進退機構部11が作動するのに伴って転落防止板16は自動的に移動可能状態に遷移し、転落防止板16が軌道側へ突出されてプラットホームと列車4との隙間Dを狭くして乗降者がプラットホームと列車との間に転落するのを防止する。この状態を「突出完了状態」と呼ぶ。
図1(1)および
図1(2)は、何れもこの「突出完了状態」を示している。突出完了状態になると、転落防止板16は移動可能状態から移動抑止状態へ自動的に切り換えられ、転落防止板16側からの入力(例えば、乗降者が転落防止板16に踏み込んで乗り込もうとした時に生じる反力等)に抗して転落防止板16は現状位置を維持する。つまり、ロック状態となる。
【0021】
そして、乗降が終了すると、進退機構部11が反転動作する。転落防止板16が移動抑止状態にあっても、進退機構部11の作動から始まる駆動力の順方向への伝達が開始すると、自動的に転落防止板16は移動可能状態に切り換えられる。そして、伝達された動力によって転落防止板16がホーム側へ移動され「収納完了状態」に戻され、自動的に転落防止板16は移動抑止状態となる。
【0022】
では次に、プラットホーム用転落防止装置10の内部構造について詳細に説明する。
図2〜
図3は、プラットホーム用転落防止装置10の内部空間に収納されている本実施形態に係る内部構造を示す図であって、突出完了状態を示している。
図2では天板12、メインフレーム14、転落防止板16を透視して図示しており、
図2(1)は上面図、
図2(2)は進退機構部11の部分拡大図である。
図3は
図2のA−A断面図である。
【0023】
進退機構部11は、
1)図示されない制御装置により電気制御される電動モータ21と、
2)電動モータ21の出力軸の回転を適当に減速する減速機構22と、
3)減速機構22の出力軸に連結されたピニオンギア23と、
4)ピニオンギア23と噛み合うラック24を有しピニオンギア23の回転によりスライドされる直動体である駆動スライダ25と、
5)駆動スライダ25を転落防止板16の進退動方向へスライド自在に支持する軌道側スライダガイド26k及びホーム側スライダガイド26hと、
6)駆動スライダ25の下面に設けられた垂直軸回りに回転する原動端ローラ27と、
7)揺動体40と、
を備える。
【0024】
電動モータ21は、例えばアブソリュート型エンコーダを内蔵し、絶対回転数(収納完了状態又は突出完了状態から何回転したか)をプラットホーム用転落防止装置10の制御装置へ向けて外部出力することができるものとする。また、駆動スライダ25は、転落防止板16の進退方向に沿って移動可能に設置されている。また、軌道側スライダガイド26kは、メインフレーム14の底面に立設されている。
【0025】
ピニオンギア23と駆動スライダ25は、電動モータ21を動力源とする直動機構として機能し、原動端ローラ27を直線運動させる。電動モータ21と、減速機構22と、ピニオンギア23とは、直動体である駆動スライダ25ひいては原動端ローラ27を直線運動させる駆動機構部20を構成する。
【0026】
なお、ピニオンギア23を傘歯車とし、ラックの24歯をピニオンにかみ合うようにすると駆動スライダ25の位置を更に低くできる。また、直動機構は、ボールねじ、チェーン、タイミングベルト等で実現することも可能であり、原動端ローラ27を同様に直線運動させることができる。
【0027】
図4は、揺動体40の構成例を示す上面視平面図である。
揺動体40は、上面視においてスパナに似た形状を成しており、メインフレーム14から略垂直に突設された揺動軸44(
図2,
図3参照)で回転自在に枢支されている。そして、進退機構部11の側の一端部(原動端部)に、原動端ローラ27と当接するローラ転動面45を有し、揺動軸44を挿通する揺動軸孔43を挟んで反対側の他端部(従動端部)に、垂直軸回りに回転する従動端ローラ46を有する。
【0028】
ローラ転動面45は、上面視円弧状の転換面45aと、当該転換面の両端から揺動体40の回転方向それぞれに向けて連なる突出完了状態鎖錠面45bおよび収納完了状態鎖錠面45cとを有する。
【0029】
突出完了状態鎖錠面45bは、突出完了状態の原動端ローラ27と揺動体40との位置関係において、その法線方向が原動端ローラ27の直線運動方向(すなわち駆動スライダ25の直線運動方向)に対して直交又は略直交する幾何条件を満たすように配置構成が決定されている。換言すると、突出完了状態鎖錠面45bは、突出完了状態において原動端ローラ27の移動方向に沿った又は略沿った平面又は略平面となるよう構成されている。
同様にして、収納完了状態鎖錠面45cは、収納完了状態の原動端ローラ27と揺動体40との位置関係において、収納完了状態鎖錠面45cの法線方向が原動端ローラ27の直線運動方向に対して直交又は略直交する幾何条件を満たすように配置構成が決定されている。
【0030】
従動端ローラ46は、従動スライダ62の下面に形成されたガイド溝66と係合する(
図2,
図3参照)。従動スライダ62は、転落防止板16の裏面に固定されたスライドレール18のレール裏面にボルト等で固定されており、ガイド溝66は転落防止板16の進退方向に対して直交又は略直交する方向に設けられている。従動端ローラ46は、このガイド溝66の溝内で係合する。
【0031】
また、揺動体40の他端部には、揺動軸孔43からの距離が異なる複数の従動端ローラ設置孔49が所定の変位設置可能方向Lに沿って設けられている。変位設置可能方向Lは、揺動体40の揺動軸44の中心を避けるように設定されている。従動端ローラ設置孔49の設置数は適宜設定可能である。そして、従動端ローラ46のローラピン47を何れかの従動端ローラ設置孔49に差し替えることで、従動端ローラ46の設置位置を変更することができる。つまり、揺動体40の揺動角当たりの従動端ローラ46の移動距離を変更可能であり、それはすなわち転落防止板16の突出量の調整が可能であることとなる。
【0032】
そして、転落防止板16の突出量の調整を可能にしたことに対応して、本実施形態では転落防止板16の進退動作が可能な範囲を制限する移動制限部も調整可能に構成されている。
【0033】
具体的には、
図2に示すように、移動制限部として、転落防止板16の下面には、転落防止板16の移動方向(進退動作方向)に沿って、軌道側係合突起76kとホーム側係合突起76hとが下向きに突設されている。また、メインフレーム14の底面には、突出完了状態において軌道側係合突起76kが突き当たる軌道側ストッパー72kと、収納完了状態においてホーム側係合突起76hが突き当たるホーム側ストッパー72hとが突設されている。これら両ストッパーに挟まれた距離が転落防止板16の移動制限距離となる。
【0034】
そして、軌道側ストッパー72kのホーム側の側面には、移動制限距離を調整するためのスペーサ73が着脱自在に装着される。具体的には、
図5(1)に示すように、軌道側ストッパー72kを上面視すると、そのホーム側側面には鉛直方向の係合溝721が設けられている。係合溝721は、スペーサ73の係合突起部731が鉛直方向に挿抜可能であるが、水平方向には挿抜不能にデザインされている。
【0035】
スペーサ73は、調整厚さW(転落防止板16の移動方向厚さ)が異なる複数種類が用意されており、軌道側ストッパー72kに装着するスペーサ73の種類(装着しない場合を含む)を、従動端ローラ46がどの従動端ローラ設置孔49に装着されるかに応じて選択することで、転落防止板16の移動制限距離を適当に調整することができる。
【0036】
なお、転落防止板16の突出量の調整作業は、手順[1]天板12を外し、手順[2]転落防止板16をスライドレール18から取り外し、手順[3]スライドレール18及び従動スライダ62を取り外し、手順[4]従動端ローラ46の装着位置を変更し、手順[4]スペーサ73を変更する、ことにより実現される。勿論、手順[1]から手順[3]を省力化するために、天板12や転落防止板16に、それぞれ従動端ローラ46の装着位置を変更作業するための第1開閉蓋部(調整窓、点検口などと呼んでも良い。)と、スペーサ73を変更するための第2開閉蓋部を設けるとしてもよい。
【0037】
では、プラットホーム用転落防止装置10の動作について説明する。
図6は、転落防止板16を移動させる原理機構の拡大図であって、(1)突出完了状態、(2)遷移過程、(3)収納完了状態をそれぞれ示している。
【0038】
図6(1)に示すように、突出完了状態にあるプラットホーム用転落防止装置10では、ローラ転動面45の突出完了状態鎖錠面45b(
図4参照)にて原動端ローラ27が当接している。
【0039】
突出完了状態にあるとき、進退機構部11は転落防止板16を移動抑止状態に鎖錠することができる。鎖錠状態を維持するための電力は不要であり、機械的・力学的な構造上、鎖錠状態を維持することができる。具体的には、転落防止板16を収納方向に移動させようとする作用力F1(白抜き矢印)が生じると、従動スライダ62が従動端ローラ46を収納方向(ホーム方向)へ押す。すると、揺動体40には反時計回りのトルクが生じ、ローラ転動面45が原動端ローラ27を作用力F2(黒色矢印)で押す。この時、原動端ローラ27は突出完了状態鎖錠面45b(
図4参照)と当接しているので、幾何的条件から作用力F2の方向は原動端ローラ27を駆動機構部20により直線運動される方向と直交又は略直交する方向となる。結果、作用力F2は原動端ローラ27で支持され、駆動スライダ25を動かすには至らず、揺動体40は回転しない。つまり、揺動体40から原動端ローラ27へ逆向きの動力伝達を阻害する逆動作防止構造を構成し、逆向きの動力伝達では揺動体40が回転せず、転落防止板16はロックされて収納方向には移動できない。
【0040】
また、突出完了状態にあるとき、転落防止板16を軌道側へ更に突出させようとしても、転落防止板16の下面に突設された軌道側係合突起76kが、軌道側ストッパー72kに突き当たっており、転落防止板16がそれ以上軌道側へ突出することはない。
【0041】
転落防止板16を収納するために、電動モータ21が所定方向へ回転駆動されると、駆動スライダ25は軌道側(
図6で言うところの左方向)へ移動され、原動端ローラ27も一緒に軌道側へ移動される。これにより、揺動体40は反時計回りに回転し、
図6(2)に示すように、原動端ローラ27が突出完了状態鎖錠面45bから転換面45aに移動する(
図4参照)。つまり、順方向の運動伝達の場合は、突出完了状態におけるロック状態が自動的に且つスムーズに解除される。
【0042】
原動端ローラ27が転換面45aに移動すると、転換面45aが成す上面視円弧状の内側に原動端ローラ27が収まり、揺動体40は原動端ローラ27の直線運動に連れられて反時計回りに更に回転する。原動端ローラ27から揺動体40への順方向の動力伝達により揺動体40が反時計回りに回転すると、従動端ローラ46は相対的にホーム側へ移動し、従動スライダ62及び転落防止板16をホーム側へ移動させる。
【0043】
電動モータ21の回転駆動が続けられると、やがて
図6(3)の収納完了状態に至る。収納完了状態においては、原動端ローラ27が転換面45aから抜けて収納完了状態鎖錠面45c(
図4参照)へ移動する。駆動スライダ25が所定の収納完了位置まで移動するのに必要な所定回転を行うと電動モータ21は停止される。
【0044】
収納完了状態にあるとき、変位設置可能方向Lは、転落防止板16の進退方向(移動方向)と直交又は略直交となる。換言すると、収納完了状態にあるときの変位設置可能方向Lは、ガイド溝66に沿った方向であり、ガイド溝66と平行又は略平行となる。
【0045】
そして、転落防止板16は移動抑止状態となる。具体的には、転落防止板16を突出方向(軌道方向:
図6の左方)に移動させようとする作用力F3(白抜き矢印)が生じると、従動スライダ62が従動端ローラ46を突出方向へ押す。揺動体40には時計回りに回転させようとするトルクが生じ、収納完了状態鎖錠面45cが原動端ローラ27を作用力F4(黒色矢印)で押す。しかし、両者の幾何的関係により作用力F4の方向は、原動端ローラ27を駆動機構部20により直線運動される方向と直交又は略直交する方向となる。結果、作用力F4は原動端ローラ27で支持され、駆動スライダ25を動かすには至らず揺動体40は回転しない。つまり、揺動体40から原動端ローラ27へ逆向きの動力伝達を阻害する逆動作防止構造を構成し、逆向きの動力伝達では揺動体40が回転せず、転落防止板16はロックされて突出方向には移動できない。
【0046】
また、収納完了状態にあるとき、転落防止板16をホーム側へ更に押し込もうとしても、転落防止板16の下面に突設されたホーム側係合突起76hが、ホーム側ストッパー72hに突き当たっており、転落防止板16がそれ以上ホーム側へ移動することはない。
【0047】
転落防止板16を突出させるために、電動モータ21が先ほどとは逆向きに回転駆動されると、駆動スライダ25はホーム側(
図6で言うところの右方向)へ移動され、原動端ローラ27も同じ方向へ移動される。これにより、原動端ローラ27が収納完了状態鎖錠面45cから転換面45aに移動する。つまり、順方向の運動伝達の場合は、収納完了状態におけるリンク機構のロック状態が自動的に且つスムーズに解除されて
図6(2)の状態を経て、再び
図6(1)の突出完了状態に戻る。
【0048】
ここで、収納完了状態から突出完了状態までの転落防止板16の移動速度に着目すると、収納完了状態における従動スライダ62のガイド溝66の溝方向が、転落防止板16の移動方向に対して直交又は略直交となるため、転落防止板16の移動速度は、ゆっくり動き出して漸次速度を上げ、中間で最大速度となり、漸次速度を下げて突出完了状態に近づくにつれゆっくりと動くようになる。収納完了状態における従動スライダ62のガイド溝66のガイド溝方向が、転落防止板16の移動方向に対して傾斜している構成よりも突出動作を効率的に行うことができる。
【0049】
図7は、従動端ローラ46の取り付け位置を
図6の例から変更した場合、すなわち突出量を変更したときの、転落防止板16を移動させる原理機構の拡大図であって、(1)突出完了状態、(2)遷移過程、(3)収納完了状態をそれぞれ示している。
【0050】
図6(1)と
図7(1)とを比較すると、従動端ローラ46の取り付け位置を変更したことにより、
図7の方が転落防止板16の突出量が小さくなっている。また、これに伴って軌道側ストッパー72kにスペーサ73が装着されている。また、突出完了状態における揺動体40の姿勢は、
図6(1)と
図7(1)とで同じである。
【0051】
一方、
図6(3)と
図7(3)とを比較すると、収納完了状態における揺動体40の姿勢も両図において同じである。すなわち、前述のように収納完了状態にあるとき、揺動体40の複数の従動端ローラ設置孔49の配列方向(変位設置可能方向L)と、従動スライダ62のガイド溝66のガイド溝方向とが並行又は略並行となるため、従動端ローラ46の取り付け位置を変更しても、収納完了状態における従動スライダ62の収納位置は変わらない。よって、ホーム側係合突起76hは固定位置のままで、ホーム側ストッパー72hとともに、転落防止板16の収納限界位置を制限する。
【0052】
すなわち、従動端ローラ46の設置位置を変更しても、動作原理や収納完了状態から突出完了状態までの転落防止板16の移動速度の傾向は、基本的には変わらない。
【0053】
以上、本実施形態によれば、転落防止板16の移動抑止状態(ロック作動状態)の維持を簡易な機械的構造で実現した。これにより、電磁ブレーキ等を不要としてロック状態を維持させるための電力を不要とした。また、機構的にロック作動/解除を実現したため、部品の劣化の程度を一見して識別可能として保守点検の正確性の向上及び作業工数の低減を図ることができる。
【0054】
また、転落防止装置が設置されるプラットホームがカーブ区間で、車両とホームとの間隔がドアの位置によって異なるとしても、従動端ローラ46の設置位置とスペーサ73の選択(スペーサ73無しを含む)を適切に選択することで、プラットホーム用転落防止装置10毎の転落防止板16の適切な突出量を簡単に設定できる。しかも、突出量を設定変更する際、ホーム側ストッパー72hやホーム側係合突起76hに係る調整は不要である。
【0055】
また、収納完了状態から突出完了状態への転落防止板16の突出動作については、ゆっくり動き出して漸次速度を上げ、中間で最大速度となり、漸次速度を下げて突出完了状態に近づくにつれゆっくりと動くようになる。
【0056】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な形態は本実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0057】
[その1]
軌道側ストッパー72kとスペーサ73との係合形状は
図5の例に限らず、
図8に示すスペーサ73Bのような、その他の形状を採用することもできる。
【0058】
[その2]
また、従動端ローラ46の取り付け位置の調整構造は、従動端ローラ設置孔49の数と位置による方式に限らない。例えば
図9に示す揺動体40Bのように、従動端ローラ46の取り付け範囲に沿って従動端ローラ46の通しボルト461を挿通できる長孔42を、変位設置可能方向Lに沿って設ける。そして、その周囲に嵌合凹凸部48を設ける。通しボルト461は、ローラ本体462及びローラ台座463を介して長孔42に挿通される。そして、ローラ台座463にも嵌合凹凸部48の凹凸と嵌合する突起部464を設ける。当該構成によれば、嵌合凹凸部48の凹凸間隔に応じて、従動端ローラ46の位置を上記実施形態よりも微調整可能になる。
【0059】
そして、これに応じて軌道側ストッパー72kを微調整可能にすると好適である。
具体的には、
図10に示すように、軌道側ストッパー72kを、基部722と、係合体723とを有する構成とする。基部722はメインフレーム14の底面の上に固定されている。係合体723は、調整ボルト725を一体に備える。基部722及びスペーサ73には調整ボルト725の挿通孔が開けられている。そして、スペーサ73を基部722と係合体723との間に挟み、調整ボルト725とナット727とで一体に固定する。
或いは、
図11に示すように、
図10の構成からスペーサ73を省略して二つのナット727で係合体723を基部722に固定するとしてもよい。
【0060】
[その3]
例えば、
図12に示す進退機構部11Cのように、減速機構22に手回しハンドル90を装着して手動回転させることのできる歯車機構92を設けると更に好適である。プラットホーム用転落防止装置10への電源が遮断された時には、この手回しハンドル90を歯車機構92の連結孔94に差し込んで連結させることで、ピニオンギア23(
図2参照)を電力無しで回転させることができる。天板12(
図1)に、天板12全体を外さなくとも連結孔94へアクセスできる小型の扉部を設けておくと更に好適である。
【0061】
[その4]
また、上記実施形態におけるピニオンギア23とラック24とで構成される原動端ローラ27の直動機構は、
図12に示す進退機構部11Cのように、原動端ローラ27を取り付けたガイドブロック81をガイドレール82でスライド自在に支持し、減速機構22の出力軸から傘歯車83を介して回転力を得るボールネジ84でガイドブロック81を直動させるいわゆるボールネジタイプの直動機構とすることもできる。また、ベルト駆動による直動機構に置き換えることもできる。