特許第6543417号(P6543417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543417自律型ループ診断機能を備えたプロセス変数トランスミッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543417
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】自律型ループ診断機能を備えたプロセス変数トランスミッタ
(51)【国際特許分類】
   G08C 25/00 20060101AFI20190628BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G08C25/00 H
   G08C19/02 A
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-516571(P2018-516571)
(86)(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公表番号】特表2018-531456(P2018-531456A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】US2016051855
(87)【国際公開番号】WO2017058527
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】14/871,850
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ,スティーヴン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ローゾン,デビッド,リチャード
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−533121(JP,A)
【文献】 特開平05−259941(JP,A)
【文献】 特開2009−199380(JP,A)
【文献】 特表2008−537625(JP,A)
【文献】 米国特許第05481200(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0010120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 25/00
G08C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プロセスで使用する2線式プロセス変数トランスミッタであって、
産業プロセスにおけるプロセス流体のプロセス変数を検知するように構成されたプロセス変数センサと、
検知されたプロセス変数に関連する出力を2線式プロセス制御ループ上に供給するように構成された出力回路と、
前記2線式プロセス変数トランスミッタと前記2線式プロセス制御ループとの電気的接続の間で計測された電圧を含む前記2線式プロセス変数トランスミッタの端子電圧に関連する電圧を測定するように構成された端子電圧測定回路と、
決定されたループ電流および測定された端子電圧に基づいて前記2線式プロセス制御ループ上でループ診断を実行するように構成されたマイクロプロセッサとを含み、
前記マイクロプロセッサは、前記2線式プロセス制御ループが公称パラメータ内で動作している、前記2線式プロセス変数トランスミッタの通常動作中にループ電流と端子電圧とを関係付ける多項式の係数を決定し、これにより決定された係数の多項式をベースラインとして用いて後続の診断を実行する2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項2】
前記診断は、前記2線プロセス制御ループの抵抗の判断を含む請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項3】
前記診断は、前記2線プロセス制御ループの電源の電圧の判断を含む請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項4】
温度センサを含み、前記診断が検知された温度に基づいて補償される請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項5】
前記ループ電流および端子電圧の測定が同期して行われる請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項6】
前記マイクロプロセッサがさらに、診断を実行する際に使用する複数の多項式の係数を追加で決定する請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項7】
多項式の係数を決定するために端子電圧の少なくとも2つの測定値が得られる請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項8】
端子電圧がループ電流の所定の範囲にわたって測定され、多項式の係数は、ループ電流の範囲がループ電流の全範囲の所定のパーセンテージを超えたときに決定される請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項9】
前記パーセンテージが少なくとも約15%である請求項8に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項10】
前記ループ電流の範囲が、少なくとも約3.6mAと6mAとの間である請求項8に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項11】
前記マイクロプロセッサは、多項式の係数に基づいて前記2線式プロセス制御ループの変動を検知する請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項12】
前記マイクロプロセッサは、ループ電流と端子電圧との関係の変化に応答して多項式の新しい係数を生成する請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項13】
前記2線式プロセス変数トランスミッタの起動時に多項式の係数が決定される請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項14】
前記多項式が次式で表される請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
Vterminal voltage = Vpower supply - Iloop current × Rloop.
【請求項15】
診断を実行するために使用されるループ電流値は、検出されたプロセス変数の値に基づいて前記マイクロプロセッサが決定する請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項16】
前記2線式プロセス制御ループを流れるループ電流を測定するように構成されたループ電流測定回路を含む請求項1に記載の2線式プロセス変数トランスミッタ。
【請求項17】
産業プロセスの2線式プロセス変数トランスミッタにおいて診断を実行する方法であって、
産業プロセスにおけるプロセス流体のプロセス変数を検知するステップと、
検知されたプロセス変数に関連する出力を2線式プロセス制御ループ上に供給するステップと、
前記2線式プロセス制御ループを流れるループ電流を判断するステップと、
前記2線プロセス制御ループに結合するように構成されて端子間の端子電圧を測定するように構成された端子電圧測定回路を前記2線プロセス変数トランスミッタの端子に結合するステップと、
前記判断されたループ電流を前記測定された端子電圧に関連付ける多項式の係数を、前記2線式プロセス制御ループが公称パラメータ内で動作している、前記2線式プロセス変数トランスミッタの通常動作中に決定するステップと、
これにより決定された係数の多項式をベースラインとして用いて前記2線式プロセス制御ループに関する診断を実行するステップとを含む方法。
【請求項18】
前記診断を実行するステップが、前記2線プロセス制御ループの抵抗を判断するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記診断を実行するステップが、前記2線プロセス制御ループの電源電圧を判断するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記診断を実行するステップが、予備診断チェックを実行するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記診断を実行する際に使用する複数の多項式の係数を追加で決定することを含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記端子電圧がループ電流の所定の範囲にわたって測定され、多項式の係数は、監視されたループ電流の範囲がループ電流の全範囲の所定のパーセンテージを超えたときに決定される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記多項式の係数に基づいて前記2線式プロセス制御ループ内の変動を検出するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記多項式の係数が、前記2線式プロセス変数トランスミッタの起動時に決定される請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業プロセスにおけるプロセス変数を監視するために使用される2線式の産業プロセス制御トランスミッタに関する。特に、本発明は2線式プロセス制御ループ上で診断を実行できるプロセス変数トランスミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス変数トランスミッタは、産業プロセスにおいて「フィールド」内の遠隔地における1つ以上のプロセス変数を計測し、このプロセス変数に関連する情報を制御室などの中央部に送信するために用いられる。プロセス変数の例には、圧力、温度、流量、レベルなどが含まれる。
【0003】
1つの構成では、プロセス変数は2線式プロセス制御ループを介して伝送される。2線式プロセス制御ループは、プロセス変数トランスミッタを制御室に接続して情報を伝達することに加えて、プロセス変数トランスミッタに電力を供給するためにも使用できる。一例の2線式プロセス制御ループは、4〜20mAプロセス制御ループであり、電流レベルは4〜20mAの範囲であり、検知したプロセス変数を表すように制御することができる。
【0004】
別の例示的なプロセス制御ループは、HART(登録商標)通信プロトコルに従って動作する。HART(登録商標)通信技術を使用するプロセス制御ループでは、デジタル信号はループ上で伝送される実質的に直流電流のレベルに重畳される。これにより、プロセス制御ループはアナログ信号およびデジタル信号のいずれも伝送できる。デジタル信号は、プロセス変数トランスミッタから制御室に追加情報を送信するため、または制御室からプロセス変数トランスミッタへデータを送信するために使用できる。別の例では、2線式プロセス制御ループは、典型的には全てのデータがデジタルフォーマットで搬送されるフィールドバス通信プロトコルに従って動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,481,200号明細書
【特許文献2】米国公開第2011/0010120号明細書
【特許文献3】米国特許第7,018,800号明細書
【特許文献4】米国特許第7,321,846号明細書
【特許文献5】米国特許第7,280,048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロセス制御ループが最適動作していない場合、プロセス変数トランスミッタによる伝送がエラーとなる可能性があり、ループがプロセス変数トランスミッタの動作に十分な電力を提供できなくなる可能性がある。2線式プロセス制御ループに関する問題のために、部分的なエラーまたは全体的なエラーを含む他のエラーを発生する可能性もある。したがって、2線式プロセス制御ループの適切な動作を保証するためには、その診断を行うことが望ましい。
【0007】
このような診断および関連する態様の例は、1996年1月2日のVoegleらによる米国特許第5,481,200号、2011年1月13日に公開されたWehrsによる米国公開第2011/0010120号、2006年3月28日に発行されたHuisengaらによる米国特許第7,018,800号、2008年1月22日に発行されたHuisengaらによる米国特許第7,321,846号、2007年10月9日に発行されたLongsdorfらによる米国特許第7,280,048号に示されており、これらは全てRosemount社に譲渡されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
産業プロセスで使用される2線式プロセス変数トランスミッタは、産業プロセスにおけるプロセス流体のプロセス変数を検知するように構成されたプロセス変数センサを含む。出力回路は、検知されたプロセス変数に関連する出力を2線プロセス制御ループ上に供給する。端子電圧測定回路は、プロセス変数トランスミッタの端子における電圧を測定する。
【0009】
端子電圧は、2線プロセス制御ループが接続する2線プロセス変数トランスミッタの電気的接続部を横断する電圧である。マイクロプロセッサは、ループ電流および測定された端子電圧に基づいて、2線式プロセス制御ループ上でループ診断を実行する。マイクロプロセッサは、2線式プロセス変数トランスミッタの通常動作中にループ電流と端子電圧とを関係付ける多項式の係数を決定し、多項式の係数に基づいて後続の診断を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プロセス変数トランスミッタを含むプロセス制御システムを示す簡略ブロック図である。
図2図1のトランスミッタの構成要素のブロック図である。
図3図1のトランスミッタにおける診断回路の簡略化された概略図である。
図4A】端子電圧(V)とループ電流(mA)との関係を示したグラフである。
図4B】決定された多項式に対する上限及び下限を示すループ電流に対する端子電圧のグラフである。
図4C】端子電圧とループ電流との関係を示したグラフであり、次の多項式とベースライン多項式との比較を示している。
図5】プロセス制御ループの通常動作中に曲線適合係数を生成する手順を示した簡略ブロック図である。
図6図5の手順で生成された係数に基づいて診断を実行する手順を示した簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
2線式プロセス制御ループに接続された産業プロセス変数トランスミッタは、ループの端子電圧を測定し、測定された端子電圧およびループを流れるループ電流に基づいて診断を実行する。そのような診断には、端子ブロックまたは他の接続箱に水分または他の汚染物質が存在する場合に発生する可能性のある高い漏れ電流またはシャント電流の検出値が含まれる。加えて、大きな電源電圧偏差が検出され得る。
【0012】
図1は、産業プロセス制御または監視システム10の簡略図である。システム10は、プロセス流体のプロセス変数を検知するように構成されたプロセス変数センサ14を有するプロセス変数トランスミッタ12を含む。この例では、プロセス流体はプロセス配管16に含まれるものとして図示されている。プロセス変数は、流量、温度、圧力、レベル、pHなどのプロセス流体に関する任意の適切な特性とすることができる。プロセス変数トランスミッタ12は、ループ電流Iを搬送する2線式プロセス制御ループ18に結合する。
【0013】
例示的な設置では、プロセス変数トランスミッタは、産業プロセスの「フィールド」内の離れた場所に配置され、2線プロセス制御ループ18を介して中央の場所にある制御室20に結合する。この例では、制御室20が検出抵抗器22および電圧源24で表されている。トランスミッタ12は、検知されたプロセス変数をループ電流Iが表すように当該ループ電流Iを制御する。
【0014】
例えば、ループ電流は4mAから20mAの範囲であり得る。アナログ電流レベルに加えて、デジタル情報がHART(登録商標)通信プロトコルに従ってプロセス制御ループ18上で運ばれるようにしてもよい。これにより、プロセス変数トランスミッタ12と制御室20との間での任意の双方向通信が可能になる。
【0015】
電源/ループ抵抗に関するベースライン情報を生成し、記憶するように構成された自動/自己学習ループの特徴付け機能が提供される。ベースライン情報は、アラーム状態を示すために使用する、例えば最小および最大の出力レベルにおいて、トランスミッタ12が正しい電流値Iを出力できるように、電源、関連するループ配線、負荷抵抗および電気的接続の全てが適切に機能しているかどうかを判断するために使用できる。この機能により、トランスミッタは電流Iの所望範囲にわたって出力を提供できるようになる。
【0016】
図2は、プロセス変数トランスミッタ12を示す簡略ブロック図である。プロセス変数トランスミッタ12は、メモリ32に記憶された命令に従って動作するマイクロプロセッサ30を含む。マイクロプロセッサ30は、測定回路34を介してプロセス変数センサ14の出力を受け取る。
【0017】
測定回路34は、センサ14の出力を処理するためのアナログおよび/またはデジタルコンポーネントを含むことができる。センサ14は、トランスミッタハウジングから離れて配置されてもよいが、依然としてそのトランスミッタの一部を構成することが理解される。さらに、プロセス変数トランスミッタ12は、2線式プロセス制御ループ18に結合するI/O及び診断回路36を含む。
【0018】
マイクロプロセッサ30はI/O及び診断回路36に結合し、回路36を使用することで2線式プロセス制御ループ18を介して通信するように構成される。この通信は、アナログおよび/またはデジタルのいずれかであってもよく、オプションで双方向性であってもよい。
【0019】
通信技術の一例は、プロセス制御ループ18が4-20mAの範囲の信号を搬送してプロセス変数14の出力に関連する値を表す4-20mAの通信技術である。この範囲外の電流レベルを使用してアラーム状態を示すことができる。この通信プロトコルのバリエーションとしては、デジタル情報が2線式プロセス制御ループ18上で搬送されるアナログ電流レベルに重畳されるHART(登録商標)通信プロトコルがある。
【0020】
図3は、I/O及び診断回路のより詳細なブロック図である。I/O及び診断回路36は、端子40を介して2線式プロセス制御ループ18と接続される。これにより、2線式プロセス制御ループ18へのLoop+およびLoop-接続が提供される。マイクロプロセッサ30(図3には図示せず)は、ループ18に流れる電流Iを制御するために使用されるHART(登録商標)コントローラ42内のデジタル/アナログ変換器に結合する。
【0021】
デジタル/アナログ変換及びHART(登録商標)コントローラ42はアナログ制御信号を供給する。ループリードバック66およびセンス抵抗R64もまた、以下に詳細に説明するように、2線式プロセス制御ループ18と直列に結合される。センス抵抗R64は、ループ電流を設定するフィードバックをHARTコントローラ42に提供する。
【0022】
保護ダイオード70がループ端子40の間に接続されている。RMINAL_VOLTAGE測定回路80は端子40に結合し、端子40間の電圧を表すTERMINAL_VOLTAGE出力を提供するように構成される。回路80は、抵抗器82,84によって構成される抵抗分割器ネットワークを含む。構成要素86,88および70は、安全性およびフィルタリング用である。増幅器92は分周器ネットワークに接続し、フィードバックネットワーク96,94は、分圧された電圧を210へスケーリングする。動作中、差動増幅器92のTERMINAL_VOLTAGE出力は端子40間の電圧を表す。
【0023】
回路36はまた、2線プロセス制御ループ18を流れる電流レベルIに関連するLOOP_READ_BACK出力を提供するように構成されたオプションのリードバック回路120を含む。LOOP_READ_BACK回路120は、リードバック検出抵抗66の両端に接続された差動増幅器122を含む。
【0024】
差動増幅器122は、抵抗126,132およびコンデンサ136で構成されるフィルタを介して演算増幅器124に出力を供給する。演算増幅器124のゲイン調整は抵抗器130により行われ、210に対して適切な値を達成する。別の例では、ループ電流は直接測定されず、マイクロプロセッサ30によって設定された所望の電流レベルに基づいて単純に決定される。
【0025】
一実施形態によれば、プロセス変数トランスミッタ12の温度も、温度測定回路160を用いて測定される。温度測定回路160は、抵抗が温度の関数として変化するRTD素子162を含む。素子162は抵抗器164を介して電圧源VDDに結合する。容量166が素子162の両端に接続される。素子162を横切る電圧降下は演算増幅器168によって測定される。
【0026】
抵抗170,172,176およびコンデンサ174は、演算増幅器168にフィルタリングおよびゲインを提供する。負のフィードバックは、抵抗170,172およびコンデンサ174を介して提供される。演算増幅器168の反転入力はまた、抵抗176を介して電気接地に結合する。回路160は、素子162の温度を示す出力TEMPを提供する。
【0027】
回路92,120の出力に結合する入力を有するマルチプレクサ200が提供される。マルチプレクサ200は、回線からのLOOP_READ_BACK、TERMINAL_VOLTAGEおよびTEMPの各出力の1つを選択するために使用される。マルチプレクサ200のチャネルは、図2に示すマイクロプロセッサ30に結合されたマルチプレクサ入力により制御される。マルチプレクサ200の出力202はアナログ/デジタル変換器210に接続される。
【0028】
アナログ/デジタル変換器は、出力202上のアナログ信号を、図2に示すマイクロプロセッサ30に供給されるデジタル形式に変換する。動作中、マイクロプロセッサ30は、様々な電圧が選択されてアナログ/デジタル変換器210に結合され、その出力をマイクロプロセッサ30が読み取れるようにマルチプレクサ200を制御する。
【0029】
動作中、マイクロプロセッサ30によって実行されるソフトウェアは3回の測定を実行するように構成されている。
【0030】
LOOP_READ_BACK:ループ電流を測定する(オプション)
【0031】
TERMINAL_VOLTAGE:トランスミッタ12のLoop+端子とLoop-端子との間の電圧を測定する。
【0032】
TEMP:温度補償に使用されるオプションの測定。
【0033】
4~20mAの電流ループ上の異常な電力状態を監視するために使用される様々な診断技術が知られている。診断プログラムは、トランスミッタの端子ブロック内の水分や湿気、接続不良や電源の変化による抵抗の変化を検出するために使用できる。例示的な従来技術は、閾値との比較またはベースラインの特徴付けを含む。例えば、ベースライン設定は通信中にオペレータが決定できる。端子電圧および/またはループ電流のレベルは、1つまたは複数の固定値に設定することができ、その結果として生じるループ電流/端子電圧が測定される。この特徴付けのために複数の固定値を選択することで一次多項式が得られる。
【0034】
しかし、この特性付けプロセスでは、特定の電流/電圧値を設定できるようにするため、トランスミッタをオフラインにする必要がある。ユーザは、どのプロセス変数トランスミッタが特徴付けを必要としているかを知ることができないので、ユーザにとっては困難である可能性がある。
【0035】
さらに、特徴付けの手順がスキップされると、診断機能は非アクティブのままとなる。さらに、システムを変更すると、各種の測定されたパラメータが古いベースラインと比較されることになるので診断エラーが発生する可能性がある。例えば、ループ負荷、コントローラ、電源、負荷抵抗器などの変更により、新しい特性の生成が必要になる場合がある。
【0036】
ここで説明する構成では、プロセス変数トランスミッタ12は、トランスミッタ12が適切な電圧範囲内で動作しているかどうかを判定するために端子電圧を測定する。周期的な測定により、電圧が高過ぎるか低過ぎるかをオペレータに知らせることができる。この動作モードでは、マイクロプロセッサ30は、ループ端子電圧を高い閾値および低い閾値と比較する。
【0037】
電圧がこれらの閾値範囲外の場合はエラーが表示される。このエラーは、ローカル表示されるか、ハンドヘルド装置のようなローカルの較正装置に伝達されるか、または、例えばプロセス制御ループ18を介して遠隔地に伝送される。この診断は電源投入直後に使用できるが、ベースラインが未だ確立されていないため、出力電流が変化すると端子電圧がどのように変化するかは予測されない。
【0038】
端子電圧Vterminai_voitageおよびループ電流Iloop_currentを決定することによって、プロセス変数トランスミッタ12、ループ18および関連するコンポーネントの変化を測定するためのベースラインカーブの係数を確立できる。端子電圧は、ループ電流の所定範囲内にわたって測定されなければならない。この範囲は正確なベースラインを確立するのに十分な範囲でなければならない。
【0039】
プロセス変数トランスミッタ12の電源投入時に、デバイスは最小ループ電流値、例えば3.6mAで端子電圧を測定できる。デバイスの動作中に追加の測定値が蓄積され、検出されたプロセス変数の関数としてループ電流が制御される。これにより、デバイスは通常の動作中に「ライブ」のベースラインを生成できる。ベースラインは、ループ電流および端子電圧の各データの最小二乗カーブフィッティング手法を使用して作成できる。ベースラインは、例えば次式(1)に従う一次カーブフィットの形態であってもよい。
【0040】
V terminal voltage = V power supply - I loop current × Rloop …(1)
【0041】
図4Aは、端子電圧とループ電流との関係を示す式(1)のグラフの一例である。一次カーブフィットが使用される場合、特性決定に使用される範囲はループ電流の全範囲の少なくとも15%でなければならない。例えば、典型的な4〜20mAループの場合は3.6mA〜6mAである。図4Aは、22mAに拡張された最小二乗法を適合して得られた結果の線形端子電圧ベースラインを示す。
【0042】
2次または3次の曲線近似などのように、より高次の曲線近似が使用される場合、比較的小さな範囲でデータを近似しようとすると大きな誤差が生じる可能性がある。ループ電流は、検知されたプロセス変数に基づいて変化するため、ベースラインが迅速に確立されることを保証することはできない。
【0043】
したがって、「ライブ」ベースラインを確立するために必要な範囲を制限すると、最終的にこのベースラインが作成される可能性が高くなる。データポイントの数を増やし、カーブフィットに使用されるこれらのポイントの範囲を増やすと、個々の測定ポイントのノイズの影響を減らすことによってベースラインの精度が向上する。
【0044】
ベースラインを確立する前に、端子電圧を最小および最大の許容端子電圧と比較することができる。測定されたループ電流(トランスミッタ内部)を出力(マイクロ)電流と比較できる。これらは許容範囲内でなければならない。ループ電流と端子電圧との関係は不明である。ベースラインが存在するまで比較することはできない。
【0045】
マイクロプロセッサ30は、収集されたデータポイントの数および/またはそれらが収集された範囲に基づいて、ベースラインが確立されたときを判断できる。一旦確立されると、ベースラインは、予想される全てのループ電流値に対して、電源電圧がトランスミッタの動作範囲内にあるかどうかを評価するために使用できる。高過ぎるまたは低過ぎる端子電圧に対する警告は、2線式プロセス制御ループを介した伝送によって行われる。
【0046】
端子電圧の周期的な測定値を、一度に一つ、ベースライン多項式と比較することで、出力電圧またはループ電流がベースラインとの比較で変化しているかどうかを判断できる。例えば、端子電圧が不安定である場合には、警報を発することができる。
【0047】
不安定なプロセス制御ループ(例えば、濡れた端子ブロックが原因)のベースラインが確立された場合でも、端子電圧が高過ぎるか、低過ぎるか、または不安定であることを示す警告が表示される。プロセス制御ループの非線形な挙動は、一次リニアカーブフィットと比較するときに検出できる。例えば、このような状況では、図4Aに示したデータポイントが散乱し、直線的に配置されない。
【0048】
図4Bは、端子電圧とループ電流との関係を示したグラフであり、決定された多項式に基づく上限および下限または限界を示す。収集されたデータの領域は、図では「データセット」として識別され、多項式を決定するために使用される。測定された端子電圧が図示された境界の外にある場合、エラー状態を設定できる。別の構成例では、ここで論じたのと同じ技術を用いて、後続の多項式を作成することができる。
【0049】
この手法では、多項式のゲイン項(抵抗)とオフセット項(電源電圧)を別々に評価できる。図4Cは、この技術を説明するために使用される端子電圧とループ電流との関係を示したグラフである。この例では、2つのデータセットの全ての個々の点が、ベースラインデータから形成された端子電圧の閾値内にある(エラーは図示省略)。
【0050】
2つのデータセット間のゲインの差を用いて、図4Cに示すような変化を検知できる。端子電圧のゲインの変化は、図4Bに示した閾値技術を使用して、個々の測定が検知される前に検知できる。このように変数を分離すれば、ループ上での抵抗変化や電圧変化の追加的な洞察を提供する。ゲインまたは抵抗の変化は、出力信号に直接影響を及ぼす電流変化の指標となる。4/20mAシステムは電圧変化に対してほとんど影響を受けないので、多項式のオフセット項や電源電圧の変化はあまり重要ではない。
【0051】
抵抗変化や電圧変化などの変化する条件を取得するデータセットは、ゲインおよびオフセットの各パラメータに影響する。例えば、端子区画内の湿気によって抵抗が変化することでデータセットの値が徐々に変化するとゲイン項に影響する。電圧オフセット(定数)はオフセット項の変化とみなすことができる。
【0052】
別々の変数は、ユーザにとってより良いトラブルシューティング情報を提供できる。次の多項式を得るためのデータは、出力電流が正確なゲイン測定を得るために十分に広い範囲にわたって変化するならば、通常の動作中に得ることができる。
別の構成例では、ユーザが手動でループ電流を変更するためのテストシーケンスを開始するオフラインモードで次の多項式を得ることができる。このようなアプローチは、トラブルシューティングや機器の検証に使用できる。
【0053】
図5は、カーブフィットの係数を生成する手順を示した簡略ブロック図248である。手順248は開始ブロック252で開始する。ブロック254および256では、ループ電流および端子電圧がそれぞれ測定される。ブロック258および260は、カーブフィットモデルを生成するのに十分なデータが収集されたかどうかを判断するために使用される。線形カーブフィットが使用される場合、ブロック258に示すように、少なくとも2つのデータ点が必要とされる。
【0054】
さらに、十分かつ正確なカーブを得るために、データが得られる範囲は、ブロック260に示すように、範囲全体の少なくとも所定のパーセンテージでなければならない。これは、例えば全範囲の15%、すなわち3.6mAと6mAの間の範囲とすることができる。十分な数のデータポイントが得られると、ブロック260においてカーブフィット用の係数が生成される。例えば、これは線形カーブフィットのための2つの係数であってもよい。この手順は、係数が図2に示すマイクロプロセッサ30によってアクセス可能なメモリ32に格納された後、ブロック264で終了する。
【0055】
端子電圧のノイズに対する感度と測定範囲の限界の例が示される。ループ電流の全範囲で0.1Vppの誤差を有する端子電圧に基づいて作成されたベースラインの誤差は0.1Vppである。ループ電流の全範囲の15%で0.1Vppの誤差を有する端子電圧に基づいて作成されたベースラインの誤差は0.1Vpp/0.15または0.7Vである。ノイズフィルタリングによる端子電圧誤差の低減、またはより大きなループ電流範囲にわたるベースライン測定値の作成により、比較用のベースラインがより良くなる。
【0056】
図6は、図5に示す手順を用いて生成されたカーブフィット係数を用いてループ18の動作を診断する手順を示す簡略化したブロック図である。診断手順270は、ブロック272から始まる。ブロック274,276においてループ電流および端子電圧が測定される。これらの測定された値の1つが、ブロック278のカーブフィットモデルに適用される(ブロック278は、ループ電流を使用してカーブフィットモデルを解くものとして示されているが、端子電圧を使用してもよい)。
【0057】
次いで、計算されたパラメータが、ブロック280で測定されたパラメータと比較される。2つが許容可能な閾値、限度値、パーセンテージまたは固定値もしくはその両方の範囲内であれば、システムが名目上作動している旨の判断が行われてプロセスが繰り返される。しかしながら、値が選択された範囲外である場合、診断出力がブロック282で生成され、手順はブロック284で停止する。
【0058】
図6では、データ点の単一セットのみが示されているが、複数の測定値に基づいて診断判定を行うことができる。例えば、複数の測定を使用して平均値を生成することができる。追加の構成では複数の測定値が使用され、これらの測定値のうちの2つ以上が所望の範囲外にある場合のみ診断条件が決定される。
【0059】
別の構成例では、複数のカーブフィットモデルの係数が端子電圧/ループ電流データのセットについて連続的に得られ、電源電圧が、例えば線形方程式からオフセットとして変化しているかどうかを判断するために使用される。これは、線形方程式のゲイン項を監視することによって負荷抵抗が変化しているかどうかを示すためにも使用できる。このような構成では、図5に示す手順が周期的に繰り返される。
【0060】
その後の測定における係数は、プロセス制御ループの通常動作中に生成された係数と比較される。診断は、これらの2組の係数を比較することによって実行される。さらに、そのような構成を使用して、ループが不安定な状態で動作しているかどうかを識別できる。この方法には複数のデータポイントが使用され、それによって高周波ノイズをフィルタリングするという利点を有する。再びデータを正確にカーブフィットさせるためには、ループ電流の十分な範囲(例えば、範囲全体の15%以上)を監視する必要がある。
【0061】
1つの構成では、マイクロプロセッサ30は、これらの値を周期的に、例えば毎秒1回測定し、これらの測定値をループ診断に使用する。電圧測定値を連続的に取得することにより、電圧が不安定であるかどうか、または電圧が大きなノイズ量を有するかどうかを判定するためにカーブフィットの係数が監視され、それに応じて診断出力を提供できる。
【0062】
電圧は、最小二乗適合アルゴリズムを使用して解析することができる。この方法はまた、電圧ノイズを低減して、DC電源電圧およびループ抵抗をより正確に測定できる。図3に関して説明したように、様々な測定値も温度に基づいて補償できる。正確性を保証するためには各測定を同期して実行する必要がある。
【0063】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。システムは、ループ抵抗およびループ電源を決定することによって、デバイスの通常の動作中に電気的特徴付けを実行することができる。1つの構成では、カーブフィットの係数が、プロセス制御ループの「通常の」動作中に生成される。通常動作とは、プロセス制御ループが公称パラメータ内で動作している状態を意味する。
【0064】
1つの構成では、装置が最初に起動されたか、または委託されたときに、「通常の」動作が想定される。別の構成では、ループ電流および端子電圧についての複数のデータ点を監視し、それらが実質的に線形に関連するかどうかを判定することによって、通常の動作が識別される。ループ電流/端子電圧の全範囲未満を使用してカーブフィットを行う技術が提供される。このカーブフィットに基づいて、その後の診断を行うことができる。1つの構成例では、カーブフィットの生成範囲は全動作範囲の約15%である。例えば、これはループ電流の約3.6mA〜6mAの範囲であってもよい。
【0065】
したがって、データポイントの範囲から、カーブフィットの係数を決定するのに十分なデータが収集されたかどうかを判断することができる。範囲に基づく判断の代わりに、または範囲に基づく判断に加えて、データ点の総数は、カーブフィットが実行され得るかどうかを判断するために使用できる。例えば、線形カーブフィットでは、少なくとも2組のデータ点を取得しなければならない。
【0066】
線形カーブフィットが具体的に図示されているが、他の次数の多項式も使用できる。追加のデータが収集されると、より正確な結果を得るためにカーブフィットの係数を再計算できる。シャント電流はまた、診断を実行するために使用されてもよい。カーブフィットは周期的に反復され、ループパラメータの許容可能な変化を考慮して新しい係数が得られる。
【符号の説明】
【0067】
10…産業プロセス制御/監視システム,12…プロセス変数トランスミッタ,14…プロセス変数センサ,16…プロセス配管,18…2線式プロセス制御ループ,20…制御室,30…マイクロプロセッサ,34…測定回路,36…診断回路,40…端子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6