(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543422
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】通信用端子を備える雌型管継手部材
(51)【国際特許分類】
F16L 25/00 20060101AFI20190628BHJP
F16L 37/22 20060101ALI20190628BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
F16L25/00 Z
F16L37/22
H01R13/46 303C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-537679(P2018-537679)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2018012653
(87)【国際公開番号】WO2018186249
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-77050(P2017-77050)
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】上村 義斗
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−198944(JP,A)
【文献】
特開2010−236657(JP,A)
【文献】
特開2016−27280(JP,A)
【文献】
特開2013−167291(JP,A)
【文献】
特開2017−33862(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/150341(WO,A1)
【文献】
特表2004−537685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 25/00
F16L 25/01
F16L 37/22
H01R 13/46
F17C 5/00
F17C 5/06
B60K 15/04
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型管継手部材を前端から受け入れて連結し、後端に取り付けられるホースと流体連通させる雌型管継手本体と、
該雌型管継手本体の周囲に該雌型管継手本体の前端側から取り外し可能に嵌合された筒状の前部カバー部材であって、前端に設けられた通信用端子、該通信用端子から該雌型管継手本体の外側を後方に延びて該雌型管継手本体の後端から更に後方に延びる通信用ケーブル、及び該通信用ケーブルの後端に接続されたコネクタ端子からなる通信用材を備える前部カバー部材と、
該雌型管継手本体の周囲に該雌型管継手本体の後端側から取り外し可能に嵌合された筒状の後部カバー部材であって、該雌型管継手本体の後端に取り付けられたホース及び該通信用ケーブルを前後方向で通した状態で該雌型管継手本体から後方に変位した位置とされたときに、該コネクタ端子が該ホースに沿って該後部カバー部材内を前方に通されるのを許容するようにされている後部カバー部材と、
を有する、通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項2】
該通信用ケーブルが該通信用端子から該前部カバー部材内を後方に通って該前部カバー部材の後端から更に後方に延びるようにされている、請求項1に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項3】
該雌型管継手本体に嵌合された該前部カバー部材は該雌型管継手本体に係合することにより後方への変位が阻止されている、請求項1又は2に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項4】
該雌型管継手本体の前端部分の外周面に形成された環状溝に取外し可能に嵌合されて該前部カバー部材と係合するストップリングをさらに備え、該ストップリングを該環状溝から取り外すことにより、該前部カバー部材が該雌型管継手本体から前方に取り外せるようになっている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項5】
該後部カバー部材が、該雌型管継手本体と嵌合された位置で該雌型管継手本体に固定ネジによって前後方向で固定されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項6】
該前部カバー部材は、該雌型管継手本体の周囲を囲む前部円筒状部分と、該前部円筒状部分から径方向外側に隆起し前後方向に延びる細長い前部隆起部分とを有し、該前部隆起部分は該通信用ケーブルを前後方向で通すケーブル用孔を有しており、
該後部カバー部材は、該前部カバー部材の該前部円筒状部分及び該前部隆起部分にそれぞれ対応する後部円筒状部分及び後部隆起部分を有しており、該後部隆起部分は半径方向内向きに開口した前後方向に延びるケーブル用溝を有しており、該ケーブル用溝は該前部隆起部分の後端から延びる該通信用ケーブルを通すようにされている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【請求項7】
該雌型管継手本体が、
前端から受け入れた雄型管継手部材を当該雌型管継手本体に固定連結する施錠部材と、
該施錠部材を施錠位置と解錠位置との間で変位させるための施錠操作部材であって、該前部カバー部材と該後部カバー部材との間から該前部カバー部材と該後部カバー部材との外側にまで延びるようにされている施錠操作部材と、
を有し
該前部隆起部分の後端部分は、該前部円筒状部分の後端よりも後方に延びて該後部隆起部分の前端と係合されるようになされており、
該前部隆起部分と該後部隆起部分とが係合された状態において、該前部円筒状部分と該後部円筒状部分との間に周方向に延びる開口が形成され、
該施錠操作部材は、該施錠部材に係合する前端部から該前部円筒状部分の内側を後方に延びる筒状部と、該筒状部から該開口を通って該後部円筒状部分の外側にまで延びる操作部とを有し、該操作部を前後方向で変位させることにより該施錠操作部材を該施錠位置及び該解錠位置とするようにされている、請求項6に記載の通信用端子を備える雌型管継手部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両タンクへの燃料供給において燃料供給側と車両側との間で一方向若しくは双方向の情報の通信を行って適正な燃料供給を行うようにする場合などに用いられる通信用端子を備える管継手部材、特に、その雌型管継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素ガスを使用する燃料電池を動力源とする車両が実用化されているが、ガソリン車両と同様に水素ステーションでの水素ガスの供給が必要となる。この場合、車両タンクの入口に取り付けられる雄型管継手部材に対して、水素ステーション側の水素ガス貯留タンク(ステーション側タンク)から延びるホースの先端に取り付けられた雌型管継手部材を連結し、水素ガスの供給が行われるのが一般的である。
【0003】
ステーション側タンクから車両タンクへ供給される水素ガスは、通常は70MPa程度に加圧されている。したがって、その供給においては事故が生じないよう万全の対策が求められる。そのような対策の1つとして相互に連結される雄型及び雌型管継手部材の相互に対向する面(前面)に赤外線などによる情報の送信・受信を行う通信用端子を設け、例えば、車両タンク内の水素量を雌型管継手部材側が受信して所要の供給量で水素供給を停止したり、車両タンク側の何らかの不具合をステーション側が受信して水素供給を停止したりできるようにする技術が開発されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
水素ステーションでは使用者が水素供給ホース先端の雌型管継手部材を取り出して車両タンクの雄型管継手部材に接続して水素ガス供給を行うが、取り出した雌型管継手部材を地上に落としてしまったり車両など周囲にあるものにぶつけたりして当該雌型管継手部材の前面にある通信用端子に損傷を生じ、その交換が必要になることがある。
【0005】
尚、以上においては極めて高圧とされる水素ガスを扱う管継手部材につき述べたが、そのような高圧の流体を扱うものに限らず相互に対向する前面に上述と同様の機能を有する通信用端子が設けられた管継手が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-27280号公報
【特許文献2】実開平1−53593号公報
【非特許文献1】インターネット(URL:http://www.weh.com/refuelling-components-hydrogen/weh-fuelling-nozzle-tk17-h2-70-mpa-enr-with-nec-interface-for-fast-filling-of-cars-singlehanded-operation-selfservice.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された雌型管継手部材では、通信用端子はその後端から当該雌型管継手部材内を通り同雌型管継手部材の後端から後方に延びて(通信用端子間で送受信された信号に基づき所要の制御を行うステーション側の制御回路に接続される)コネクタ端子にまで至る通信用ケーブルが接続されいる。そのため、通信用端子を交換する場合には、通信用ケーブル及びコネクタ端子を通信用端子と一体的に交換する必要がある。このため、その交換の際には雌型管継手部材を全体的に分解する必要があり、分解・再組立の作業が煩雑である。また、非特許文献1に示された雌型管継手部材では、前端に通信用端子を有し後端に通信用端子に接続されているコネクタ端子を備える筒状の通信用端子部材を有する。この通信用端子部材は、雌型管継手部材としての機能を備える管継手本体部分の前方部分に同芯状にしてネジにより連結されている。これにより、コネクタ端子を管継手本体に設けられているコネクタ端子と接続するようにするとともに、そのようにして連結された通信用端子部材及び雌型管継手部材の周りに更に筒状の保護カバーを取り付けるようにしている。従って、このような通信用端子部材の交換作業(分解・再組立作業)も煩雑となる。上記した特許文献2に開示された管継手も、通信用端子はそれぞれの管継手部材内に組み込まれており、その交換作業は煩雑となる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み、前端に取り付けられた通信用端子が破損した場合などに、交換作業をより簡易にできるようにした、通信用端子を備える雌型管継手部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通信用端子を備える雌型管継手部材は、
雄型管継手部材を前端から受け入れて連結し、後端に取り付けられるホースと流体連通させる雌型管継手本体と、
該雌型管継手本体の周囲に該雌型管継手本体の前端側から取り外し可能に嵌合された筒状の前部カバー部材であって、前端に設けられた通信用端子、該通信用端子から該雌型管継手本体の外側を後方に延びて該雌型管継手本体の後端から更に後方に延びる通信用ケーブル、及び該通信用ケーブルの後端に接続されたコネクタ端子からなる通信用材を備える前部カバー部材と、
該雌型管継手本体の周囲に該雌型管継手本体の後端側から取り外し可能に嵌合された筒状の後部カバー部材であって、該雌型管継手本体の後端に取り付けられたホース及び該通信用ケーブルを前後方向で通した状態で該雌型管継手本体から後方に変位した位置とされたときに 、該コネクタ端子が該ホースに沿って該後部カバー部材内を前方に通されるのを許容するようにされている後部カバー部材と、
を有する。
【0010】
この雌型管継手部材において通信用端子、通信用ケーブル、及びコネクタ端子からなる通信用材を新たなものと交換するときは、後部カバー部材を雌型管継手本体から外してホースに沿って後方へ動かし雌型管継手本体の後方位置とする。コネクタ端子はそれが接続されていた対応コネクタ端子から外しておき、前部カバー部材を雌型管継手本体から外し前方に動かす。このようにすることにより通信用ケーブルの後端に接続されていたコネクタ端子はホースに沿って前方へ動かされ、後部カバー部材内を通る。これにより通信用材は前部カバー部材とともに雌型管継手本体から取り外される。次に新たな通信用材を備えた新たな前部カバー部材の通信用材の先端に付けられているコネクタ端子を雌型管継手本体から外されている後部カバー部材内に後方に通し、その状態で後部カバー部材及び前部カバー部材を雌型管継手本体に連結する。このように本発明に係る通信用端子を備える雌型管継手部材においては、通信用端子を含んだ通信用材を雌型管継手本体の分解なしに交換することができる。
【0011】
該通信用ケーブルは、具体的には、該通信用端子から該前部カバー部材内を後方に通って該前部カバー部材の後端から更に後方に延びるようにすることができる。通信用ケーブルは前部カバー部材の後端に至る前に当該前部カバー部材の内側に入るようにすることもできるが、前部カバー部材内を後端まで延ばしたものとすることにより上記交換作業がより容易になる。
【0012】
該雌型管継手本体に嵌合された該前部カバー部材は該雌型管継手本体に係合することにより後方への変位が阻止されるようにすることができる。
【0013】
該雌型管継手本体の前端部分の外周面に形成された環状溝に取外し可能に嵌合されて該前部カバー部材と係合するストップリングをさらに備え、該ストップリングを該環状溝から取り外すことにより、該前部カバー部材が該雌型管継手本体から前方に取り外せるようにすることができる。前部カバー部材をより容易に取り外せるようにするためである。
【0014】
該後部カバー部材は該雌型管継手本体と嵌合された位置で該雌型管継手本体に固定ネジによって前後方向で固定されるようにすることができる。
【0015】
該前部カバー部材は、該雌型管継手本体の周囲を囲む前部円筒状部分と、該前部円筒状部分から径方向外側に隆起し前後方向に延びる細長い前部隆起部分とを有し、該前部隆起部分は該通信用ケーブルを前後方向で通すケーブル用孔を有しており、
該後部カバー部材は、該前部カバー部材の該前部円筒状部分及び該前部隆起部分にそれぞれ対応する後部円筒状部分及び後部隆起部分を有しており、該後部隆起部分は半径方向内向きに開口した前後方向に延びるケーブル用溝を有しており、該ケーブル用溝は該前部隆起部分の後端から延びる該通信用ケーブルを通すようにすることができる。
前部及び後部円筒状部分は雌型管継手本体を囲むだけのなるべく小さなサイズとしながら、通信用ケーブルを前部及び後部カバー部材内に通すようにするものである。
【0016】
該雌型管継手本体が、
前端から受け入れた雄型管継手部材を当該雌型管継手本体に固定連結する施錠部材と、
該施錠部材を施錠位置と解錠位置との間で変位させるための施錠操作部材であって、
該前部カバー部材と該後部カバー部材との間から該前部カバー部材と該後部カバー部材との外側にまで延びるようにされている施錠操作部材と、
を有し、
該前部隆起部分の後端部分は、該前部円筒状部分の後端よりも後方に延びて該後部隆起部分の前端と係合されるようになされており、
該前部隆起部分と該後部隆起部分とが係合された状態において、該前部円筒状部分と該後部円筒状部分との間に周方向に延びる開口が形成され、
該施錠操作部材は、該施錠部材に係合する前端部から該前部円筒状部分の内側を後方に延びる筒状部と、該筒状部から該開口を通って該後部円筒状部分の外側にまで延びる操作部とを有し、該操作部を前後方向で変位させることにより該施錠操作部材を該施錠位置及び該解錠位置とするようにすることができる。
【0017】
従来の管継手においてはこのような操作部はカバー部材に設けた開口を通して外側に延びるようにされていたが、上記のごとく施錠操作部を前部及び後部カバー部材との間から外側に延びるようにすることにより、これら前部及び後部カバー部材は施錠操作部に妨げられることなく雌型管継手本体からそれぞれ前方及び後方に引き抜くことが可能となる。
【0018】
以下、本発明に係る通信用端子を備える雌型管継手部材の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る雌型管継手部材の側面断面図である。
【
図2】
図1の雌型管継手部材の外観斜視図である。なお、通信用ケーブル及びコネクタ端子は省略されている。
【
図4】
図1のIV―IV線における断面図である。ただし、流体通路内の部材は省略されている。
【
図5】
図1のIV―IV線における断面図であり、筒状カバーが雌型管継手本体に対して時計回りに回動した状態を示す図である。
【
図6】
図1のIV―IV線における断面図であり、筒状カバーが雌型管継手本体に対して反時計回りに回動した状態を示す図である。
【
図7】筒状カバーの着脱操作を示す第1の図である。
【
図8】筒状カバーの着脱操作を示す第2の図である。
【
図9】筒状カバーの着脱操作を示す第3の図である。
【
図10】筒状カバーの着脱操作を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す雌型管継手部材10は、雌型管継手本体12と、この雌型管継手本体12の周囲に回転可能に取り付けられた筒状カバー30とからなる。当該雌型管継手部材10は、水素ステーションの水素供給用のホース(図示しない)に取り付けられる水素注入ノズルであり、燃料電池車の水素タンクに繋がるレセプタクルである雄型管継手部材(図示しない)に着脱可能に連結されて水素ステーションのホースと雄型管継手部材とを流体連通させることにより、水素ステーションから燃料電池車の水素タンクに高圧水素を充填するためのものである。当該雌型管継手部材10は、後述するように、筒状カバー30の前端に通信用端子が備えられており、対応する雄型管継手部材に連結されたときに該通信用端子が対応する雄型管継手部材に備えられた対応する通信用端子と対向した位置となり、通信用端子間で情報の送受信を行うことができるようにされている。
【0021】
雌型管継手本体12は、前述した特許文献1に開示されたものと略同様の構成を有するので詳細は省略するが、対応する雄型管継手部材を受け入れて連結する前端14と、ホースが取り付けられる後端16と、前端14から後端16にまで長手軸線Lの方向に延びる流体通路18を有する。雌型管継手本体12はさらに、流体通路18内に受け入れた雄型管継手部材を固定連結するための施錠部材20と、施錠部材20を操作するための施錠操作部材22とを備える。施錠部材20は、その前端20aにおいて径方向内側に突出した係止突部20bが雄型管継手部材の外周面に形成されている係合溝に係合して雄型管継手部材を固定連結する施錠位置と、係止突部20bが施錠位置から径方向外側に変位して図示の位置となり雄型管継手部材との固定連結を解除する解錠位置との間で変位可能となっている。また、施錠操作部材22は、施錠部材20を施錠位置に保持する連結位置と、連結位置から長手軸線Lの方向で後方(図で見て左方)に変位して図示の位置となり施錠部材20が解錠位置となることを許容する着脱位置との間で長手軸線Lの方向で前後方向(図で見て左右方向)に変位可能となっている。雌型管継手本体12は、このような施錠部材20と施錠操作部材22とにより、雄型管継手部材を着脱可能に連結するチャック構造を構成している。
【0022】
筒状カバー30は、雌型管継手本体12の外周面12a上で周方向に摺動可能に取り付けられた環状摺動部材32を介して、雌型管継手本体12の周囲に回転可能に取り付けられている。また筒状カバー30は、それぞれ筒状の前部カバー部材34と後部カバー部材36とからなっている。
図2に示すように、前部カバー部材34は、雌型管継手本体12の周囲を囲む前部円筒状部分38と、前部円筒状部分38から径方向外側に隆起して前後方向に延びる細長い前部隆起部分40とを有する。同様に後部カバー部材36は、雌型管継手本体12の周囲を囲む後部円筒状部分42と、後部円筒状部分42から径方向外側に隆起して前後方向に延びる細長い後部隆起部分44とを有する。前部隆起部分40は前部円筒状部分38の後端38aよりもさらに後方にまで延びている。前部カバー部材34と後部カバー部材36とがそれぞれ雌型管継手本体12に取り付けられた状態においては、前部隆起部分40の後端部分40aが後部隆起部分44の内側に挿入されて係合される。これにより、前部カバー部材34と後部カバー部材36とは回動方向で互いに係合して、雌型管継手本体12に対して一体として回動するようになる。また、前部円筒状部分38の後端38aと後部円筒状部分42の前端42aとの間には周方向に延びる開口46が形成される。当該雌型管継手部材10は、筒状カバー30の主として後部カバー部材36を把持して操作を行なうようになっている。
【0023】
図1に示すように、前部カバー部材34は、前部カバー部材34の大部分を構成し後述する通信用端子72を外側から保持する前部カバー外側部材34−1と、前部カバー外側部材34−1の内側に固定され通信用端子72を内側から保持する前部カバー内側部材34−2とからなり、前部カバー内側部材34−2には径方向内側に突出した嵌合部48が設けられている。前部カバー部材34は、嵌合部48の内周面48aが雌型管継手本体12の前端部分の外周面12aと嵌合するようにして、雌型管継手本体12の周囲に前端14の側から取り付けられている。雌型管継手本体12の外周面12aには環状溝50が形成されており、この環状溝50に取り付けられたストップリング52によって前部カバー部材34は雌型管継手本体12に対して前方から保持されている。ストップリング52は、
図3に示すように、互いに平行に円弧状に曲げられた前部弧状部52a及び後部弧状部52b、並びにそれらを連結する連結部52cにより構成されている。ストップリング52は雌型管継手本体12の環状溝50に取り付けられたときに、環状溝50の前方側の側面50aと前部カバー部材34の嵌合部48の前方側の側面48bとの間で長手軸線Lの方向で圧縮された状態となり、嵌合部48を後方に押圧するようになっている。ストップリング52によって後方に押圧された前部カバー部材34は、その嵌合部48の後方側の側面48cが雌型管継手本体12の外周面12aにおける段部54に係止されることにより、それよりも後方への変位が阻止される。すなわち前部カバー部材34は、その嵌合部48が段部54とストップリング52とによって挟まれることによって雌型管継手本体12に対して長手軸線Lの方向で固定されている。
【0024】
後部カバー部材36は、雌型管継手本体12の周囲に後端16の側から嵌合されて取り付けられている。具体的には、後部カバー部材36は環状摺動部材32に嵌合されていて、径方向に貫通するように形成された係止貫通孔56を通して環状摺動部材32に螺合された固定ネジ58の頭部58aが係止貫通孔56の内周面56aと係合することにより、環状摺動部材32に対しては前後方向及び周方向で固定された状態となっている。なお、環状摺動部材32を介して雌型管継手本体12に固定されている後部カバー部材36は、雌型管継手本体12に対しては前後方向では固定されるが周方向では回動可能となっている。ネジによって部材を固定するときには、通常は、ネジが螺合される部材とネジの頭部との間に固定する部材を挟んで締め付けるようにするが、当該雌型管継手部材10においては、上述のように固定ネジ58の頭部58aを係止貫通孔56の内周面56aに係合させることにより後部カバー部材36を環状摺動部材32に対して固定している。このような固定方法とすることにより、後部カバー部材36は強い力で締め付けられないため、後部カバー部材36を樹脂などの比較的に剛性や耐摩耗性が低い材料で構成した際に、後部カバー部材36が固定ネジ58の締付力で破損したり、後部カバー部材36が磨耗又は変形することにより固定ネジ58が緩んだりすることを防止できる。また後部カバー部材36の壁厚を薄くしても固定ネジ58が外側には突出しないようにすることもできる。
【0025】
施錠操作部材22は、施錠部材20に係合する前端部60aを有する係合部材60と、係合部材60に長手軸線Lの周りで回動可能に取り付けられ、筒状カバー30の外側にまで延びる操作部材62とからなる。係合部材60は前部カバー部材34の前部円筒状部分38の内側を長手軸線Lの方向で前端部60aから後方に延びる筒状の部材であり、スプリング63によって前方に向かって付勢されている。操作部材62は、係合部材60の外周面60b上を周方向に摺動可能に取り付けられた筒状取付部62aと、筒状取付部62aから前部カバー部材34と後部カバー部材36との間の開口46を通って外側に延び、後部カバー部材36の周囲に位置する操作部62bとを有している。操作部62bは、
図2に示すように、後部円筒状部分42の外周面42bに沿って周方向に延び、後部隆起部分44に対応する位置には切欠きが形成されたC字状の形状を有している。係合部材60と操作部材62とは長手軸線Lの方向では固定されているため、操作部材62の操作部62bを長手軸線Lの方向に操作することにより係合部材60は操作部材62とともに長手軸線Lの方向は変位する。したがって、筒状カバー30の外側に位置する操作部62bを長手軸線Lの方向で操作することにより、筒状カバー30の内側に位置する施錠部材20を施錠位置と解錠位置との間で操作できるようになっている。一方で操作部材62は、係合部材60に対して回動可能となっており、筒状カバー30が雌型管継手本体12に対して長手軸線Lの周りで回動したときには後部隆起部分44によって周方向で係合されて、筒状カバー30とともに回動されるようになっている。係合部材60はスプリング63によって付勢されており、スプリング63や施錠部材20との接触部分において比較的に大きな摩擦抵抗を受けるため、係合部材60を回動させるには比較的に大きな力が必要となる。またそのような大きな摩擦抵抗が生じている状態で無理に回動させると部材間の磨耗も生じることとなる。しかしながら、上述のように操作部材62は係合部材60に対して回動可能とされていることにより、円滑な回動を実現すると共に、部材間の磨耗も防止することが可能となっている。なおこのような効果を奏することはできなくなるが構造を簡略化するために、施錠操作部材22の係合部材60と操作部材62とを一体の部材として形成してもよい。すなわち施錠操作部材22を、施錠部材20に係合する前端部60aから前部カバー部材34の前部円筒状部分38の内側を後方に延びる筒状部と、この筒状部から前部カバー部材34と後部カバー部材36との間の開口46を通って後部円筒状部分42の外側にまで延びる操作部62bとを有する単一部材とすることもできる。
【0026】
当該雌型管継手部材10は、筒状カバー30を雌型管継手本体12に対して回動可能に取り付けるためのスイベル機構を備えている。該スイベル機構は、
図4に示すように、横断面円形の外周面12bを有する雌型管継手本体(内側部材)12と、雌型管継手本体12の周囲に配置され、横断面円形の内周面32aを有する環状摺動部材(外側部材)32と、雌型管継手本体12の外周面12bと環状摺動部材32の内周面32aとの間に配置された第1転がり部材64及び第2転がり部材66と、により構成される。雌型管継手本体12の外周面12bには径方向で対向する位置に2つの第1保持凹部68が形成され、同様に環状摺動部材32の内周面32aには径方向で対向する位置に2つの第2保持凹部70が形成されている。第1転がり部材64は、第1保持凹部68に部分的に受け入れられてその中で回転可能に保持されている。同様に第2転がり部材66は、第2保持凹部70に部分的に受け入れられてその中で回転可能に保持されている。第1転がり部材64及び第2転がり部材66は、ともに球状の部材であり、長手軸線Lの方向で互いに対して整合した位置に配置されている。なお、第1転がり部材64と第2転がり部材66は、例えば円柱や樽型などの横断面が円形である他の形状としてもよい。
【0027】
筒状カバー30が雌型管継手本体12に対して回動すると、第1転がり部材64は第1保持凹部68内に保持されてその位置が維持される一方で、第2転がり部材66は筒状カバー30とともに長手軸線Lの周りで周方向に変位される。このとき、第1転がり部材64及び第2転がり部材66は、雌型管継手本体12の外周面12bと環状摺動部材32の内周面32aとから受ける摩擦力に応じて第1保持凹部68及び第2保持凹部70の中でそれぞれ回転して、雌型管継手本体12に対する環状摺動部材32の回動を円滑にする。筒状カバー30が雌型管継手本体12に対して
図4で見て時計回りに回動されていくと、
図5に示すように第2転がり部材66が第1転がり部材64に対して時計回りの向きで当接する。したがって、筒状カバー30は
図5の位置からさらに時計回りに回動することが制限される。同様に筒状カバー30が雌型管継手本体12に対して
図4で見て反時計回りに回動されていくと、
図6に示すように第2転がり部材66が第1転がり部材64に対して反時計回りの向きで当接する。したがって、筒状カバー30は
図6の位置からさらに反時計回りに回動することが制限される。すなわち当該スイベル機構においては、第1転がり部材64と第2転がり部材66とが回動方向で当接することにより、外側部材である環状摺動部材32とそれに固定された筒状カバー30の回動範囲を制限するようになっている。当該スイベル機構においては、上述のように、内側部材である雌型管継手本体12と外側部材である環状摺動部材32のとの間の回動を円滑にする第1転がり部材64及び第2転がり部材66が周方向で当接することにより環状摺動部材32及びそれに固定された筒状カバー30の回動範囲を制限するようになっており、回動範囲を制限するためだけの構造を別途設ける必要がないため、従来のものに比べて構造を簡略できる。なお、当該実施形態においては、第1転がり部材64及び第2転がり部材66、並びに第1保持凹部68及び第2保持凹部70をそれぞれ2つずつ配置し、それにより筒状カバー30の回動範囲を180°弱としているが、例えば3つずつ等間隔に配置して回動範囲を120°弱としたり、1つだけ配置して360°弱としたりするなど、所望の回動範囲に合わせて適宜配置を変更することもできる。
【0028】
前部カバー部材34は、その前端部分34aに設けられた通信用端子72、通信用端子72から後方に延びる通信用ケーブル74、及び通信用ケーブル74の後端に接続されたコネクタ端子76からなる通信用材78を有している。コネクタ端子76には、水素ステーションのディスペンサの制御装置に繋がる通信用ケーブルに取り付けられた対応するコネクタ端子(図示しない)が接続される。通信用ケーブル74は、雌型管継手本体12の外側を、前部カバー部材34の前部隆起部分40に設けられたケーブル用孔80内を通って通信用端子72から後方に延び、さらに後部隆起部分44において径方向内向きに開口するように設けられたケーブル用溝82内を通って後部カバー部材36の内側を延び、後部カバー部材36の後端36aよりもさらに後方にまで至る。当該雌型管継手部材10が対応する雄型管継手部材に連結されたときに、通信用端子72は雄型管継手部材に同様に配置されている対応する通信用端子と対向した位置となり、その対応する通信用端子との間で赤外線による信号の送受信を行なうようになっている。なお、通信手段は赤外線に限られず、他の周波数帯の電磁波を利用した無線通信手段とすることもできる。
【0029】
通信用ケーブル74の後方部分74aは、雌型管継手本体12の後端16に接続されているホースの周囲に巻かれているスパイラルチューブによって、ホースの外周面上に保持されている。従って筒状カバー30が雌型管継手本体12に対して回動すると、通信用ケーブル74は前部カバー部材34のケーブル用孔80に保持された前方部分74bとホースの外周面上に保持された後方部分74aとの間でねじれが生じることになる。筒状カバー30の回動範囲が制限されていない場合には、筒状カバー30が大きく回動して通信用ケーブル74に大きな負荷がかかり通信用ケーブル74が断線したり、通信用端子72やコネクタ端子76から外れたりしてしまう虞がある。しかしながら当該雌型管継手部材10においては、上述のスイベル機構によって筒状カバー30の回動範囲が制限されているため、通信用ケーブル74に大きな負荷を与えるほど筒状カバー30が回動することがないようにして筒状カバー30の回動に伴って通信用ケーブル74の断線等が生じることを防止することが可能となっている。
【0030】
筒状カバー30は、上述のように、雌型管継手本体12に対して取り外し可能に取り付けられており、特に前部カバー部材34は以下に述べるように通信用材78とともに容易に雌型管継手本体12から取り外すことができるようになっている。
【0031】
前部カバー部材34を取り外す際には、まず、後部カバー部材36を環状摺動部材32に固定している固定ネジ58を取り外す(
図7)。なお、図においては、固定ネジ58は1つだけ示されているが、図示の固定ネジ58から周方向両側に90°の位置にもそれぞれ同様な固定ネジ58が配置されている。次に、後部カバー部材36を雌型管継手本体12の後端16に取り付けられたホース(図示しない)及び前部カバー部材34から後方に延びる通信用ケーブル74を前後方向でその内側に通した状態で雌型管継手本体12から後方に変位させる(
図8)。このとき後部カバー部材36の内周面36bとホースとの間にはコネクタ端子76を通すのに十分な隙間が形成され、後部カバー部材36はその内側にコネクタ端子76を通しながら該コネクタ端子76よりもさらに後方の位置にまで変位させることができるようになっている。次に雌型管継手本体12の環状溝50に取り付けられているストップリング52を外して(
図9)、前部カバー部材34を前方に変位させる(
図10)。これにより、前部カバー部材34とともに通信用材78も雌型管継手本体12から取り外される。例えば通信用端子72が破損したり通信用ケーブル74が断線したりするなどして通信用材78が故障した際には、このようにして通信用材78を前部カバー部材34とともに取り外し、新しい通信用材78を有する前部カバー部材34を上述とは逆の手順により雌型管継手本体12に取り付けることにより、通信用材78の交換を行なうことができる。なお、上記交換作業において後部カバー部材36は、コネクタ端子76の後方にまで変位させる必要は必ずしも無く、例えば後部カバー部材36の前端36cが雌型管継手本体12の後端16のあたりとなる位置にまで後部カバー部材36を変位させてコネクタ端子76はまだ後部カバー部材36の後方にある状態としておき、前部カバー部材34を取り外す際に通信用ケーブル74とコネクタ端子76とをホースに沿って後部カバー部材36内を前方に向かって通すように引っ張るようにしてもよい。このように当該雌型管継手部材10においては、雌型管継手本体12を分解することなく、容易に通信用材78の交換を行なうことが可能となっている。
【0032】
本発明の一実施形態について説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、前部カバー部材が雌型管継手本体上で後方へ変位しないようにする方法としては、雌型管継手本体に取り付けられた後部カバー部材に係合するようにして行うことも可能である。
【符号の説明】
【0033】
雌型管継手部材10;雌型管継手本体12;外周面12a;外周面12b;前端14;後端16;流体通路18;施錠部材20;前端20a;係止突部20b;施錠操作部材22;筒状カバー30;環状摺動部材32;内周面32a;前部カバー部材34;前部カバー外側部材34−1;前部カバー内側部材34−2;前端部分34a;後部カバー部材36;後端36a;内周面36b;前端36c;前部円筒状部分38;後端38a;前部隆起部分40;後端部分40a;後部円筒状部分42;前端42a;外周面42b;後部隆起部分44;開口46;嵌合部48;内周面48a;前方側の側面48b;後方側の側面48c;環状溝50;前方側の側面50a;ストップリング52;前部弧状部52a;後部弧状部52b;連結部52c;段部54;係止貫通孔56;内周面56a;固定ネジ58;頭部58a;係合部材60;前端部60a;外周面60b;操作部材62;筒状取付部62a;操作部62b;スプリング63;第1転がり部材64;第2転がり部材66;第1保持凹部68;第2保持凹部70;通信用端子72;通信用ケーブル74;後方部分74a;前方部分74b;コネクタ端子76;通信用材78;ケーブル用孔80;ケーブル用溝82;
長手軸線L