特許第6543441号(P6543441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543441
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】浸漬膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   G02B21/00
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-134462(P2014-134462)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2015-18237(P2015-18237A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】10 2013 011 544.2
(32)【優先日】2013年7月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シェプス
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ ヘルプスト
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ファールブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ルーヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ コンラーディ
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0164721(US,A1)
【文献】 特表2010−503030(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/135762(WO,A1)
【文献】 特開2004−070307(JP,A)
【文献】 特開2010−262306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立顕微鏡において、顕微鏡対物レンズ(1)の前部レンズ(6)とプレパラートとの間に浸漬膜を形成するための浸漬膜形成装置であって、
浸漬膜領域からの液漏れを回避する保護装置と、
弾性膜(4)を含む止水システムと、を備え、
前記保護装置が、顕微鏡スタンドの基体内に静的に配置され、
前記保護装置が、不動のベースプレート(2)から構成され、
前記ベースプレート(2)が、中心に光路に向けられた、前記弾性膜(4)を収容するための貫通部(3)を備え、
前記弾性膜(4)が、中央に光路に向けられた、前記顕微鏡対物レンズ(1)の前記前部レンズ(6)用の開口部(5)を有し、
前記弾性膜(4)が、二層に形成され、かつ2つの重ね合わされた単一膜(11、12)から構成され、
前記弾性膜(4)が、該2つの重ね合わされた単一膜(11、12)の間で、浸漬液を前記顕微鏡対物レンズ(1)の前部レンズ(6)へ供給および排出するように構成される、浸漬膜形成装置。
【請求項2】
前記弾性膜(4)が、前記弾性膜(4)が前記顕微鏡対物レンズ(1)の動作範囲において、前記前部レンズ(6)の形状に密接して閉鎖するように形成されている、請求項1に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項3】
前記ベースプレート(2)の前記貫通部(3)および前記弾性膜(4)の前記開口部(5)が、円形に形成されている、請求項1に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項4】
前記弾性膜(4)が、前記浸漬液を浸漬膜領域内に供給するための少なくとも1つの流路(10)を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項5】
前記浸漬液を浸漬膜領域内に供給するため少なくとも1つの流路(10)を、前記浸漬液の吸引にも使用する、請求項4に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項6】
前記弾性膜(4)が、前記浸漬液を吸引するための少なくとも1つの別個の要素を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項7】
前記弾性膜(4)が、少なくとも1つの組み込まれた供給用の流路と、少なくとも1つの排水用の流路とを備えた成形部品として形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項8】
前記弾性膜(4)の開口部(5)が、前記浸漬液を前記前部レンズ(6)上により効果的に保持するために封止縁(9)を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸漬膜形成装置。
【請求項9】
前記止水システムが、ベースプレート(2)の少なくとも1つの排水流路(8)を特徴とし、弾性膜(4)を介して流出する余剰の前記浸漬液を、該排水流路(8)を通して排水することができる、請求項1に記載の浸漬膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立顕微鏡において、顕微鏡対物レンズの前部レンズとプレパラートとの間に浸漬膜(immersionfilm)を形成するための装置に関する。この装置は、浸漬膜領域からの液漏れを回避するための保護装置を備えた、浸漬液を浸漬膜領域内に供給する(自動浸漬)ための設備とを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
浸漬液とは、試料支持体およびレンズに使用されるガラスの屈折率に近い屈折率を有する液体である。対物レンズと試料支持体との間の空気の隙間をこのような浸漬液で満たせば、対物レンズの開口数が向上する。これにより、光強度が高まるとともに対物レンズの分解能が高まる。
【0003】
顕微鏡法におけるワークフローの自動化が進むにつれて、この浸漬液の自動添加に対する要求がますます頻繁に聞かれるようになった。この理由は、現代の顕微鏡、特に倒立顕微鏡では、システムがますます複雑になり、対物レンズ口径が一層大きくなることにより、対物レンズ前部へのアクセス性が著しく悪化するので、多くの場合、手動による浸漬がほとんど不可能であるということである。
【0004】
概して、液浸対物レンズを用いて動作する倒立顕微鏡には、流出する浸漬媒体およびその他の液体から顕微鏡を保護するための保護装置も装備されている。保護装置の形式で対物レンズに固定された要素を備えたこの種の装置が、例えば特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0005】
これらの解決法では、対物レンズに固定された要素によって、保護された浸漬膜領域が設けられるものの、システム全体においては浸漬液がなおも漏れ得るという欠点がある。また、各対物レンズに対して個別の保護装置が設けられるので、生産技術費用が非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10333326号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10050825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術の解決法の欠点に由来して、本発明の基礎となる課題は、最小の製造技術費用で、供給時だけでなく顕微鏡検査時にも浸漬液漏れがほぼ完全に排除されるという点で、倒立顕微鏡における浸漬膜形成装置を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題が、本発明によれば、冒頭で説明した種類の装置を用いて、請求項1の特徴によって解決される。有利な構成は、従属請求項2から14に挙げられている。
本発明によれば、保護装置が顕微鏡スタンドの基体に静的に配置されている。つまり、この保護装置は、顕微鏡対物レンズにしっかりと接続された要素ではない。また、浸漬膜領域内に浸漬液を供給するための設備が、止水システムを介して保護装置と直接接続されている。
【0009】
したがって、本発明による解決法は、自動浸漬、つまり浸漬液の自動供給と、保護装置を備えた止水システムとの間の連結を意味する。
対物レンズは、概して対物レンズ・レボルバ(対物レンズ交換装置)上に取り付けられている。
【0010】
従来技術の解決法によれば、つまり、浸漬液の供給設備が対物レンズと直接接続されている場合、浸漬液の自動浸漬および/または供給ならびに排出の制御を、対物レンズ・レボルバ(対物レンズ交換装置)の移動を補償するユニットを介して行わなければならない。これは、構造的に非常に費用がかかる。
【0011】
れにより、浸漬液の供給に障害が生じた場合に、対物レンズ全体を交換する必要がもはや無くなる。止水システムを交換するだけで済む。この場合にかかる費用は基本的により少ない。
【0012】
さらに、従来技術による解決法では、各対物レンズが専用の設備を使用しなければならなかったが、本発明では、対物レンズ・レボルバ(対物レンズ交換装置)に配置された複数の対物レンズに対して、浸漬液を浸漬膜領域内に供給するためのただ1つの設備が必要である。
【0013】
有利には、保護装置は、中心に光路に向けられた、弾性膜を収容するための貫通部を備えた不動のベースプレートから構成されている。この膜は、中心に光路に向けられた、顕微鏡対物レンズの前部レンズ用の開口部を有している。
【0014】
顕微鏡対物レンズが動作範囲内に位置している限り、膜が対物レンズの前部形状に密接して閉鎖するので、ベースプレートまたは顕微鏡ステージの下方に位置する光学系および機構が、漏洩する液体から保護される。
【0015】
有利な一構成において、ベースプレートの貫通部および膜の開口部が円形に形成されており、特にベースプレートの貫通部についてはその他の輪郭も考えられる。
実用的には、膜が、浸漬液を浸漬膜領域内へ供給するための少なくとも1つの要素(流路)を備えており、この1つまたは複数の要素は、浸漬液の吸引にも使用することができる。
【0016】
しかし、多くの場合、浸漬液の吸引用の別個の要素を膜が有していることもまた有効である。
また、有利な一構成では、膜が浸漬液の供給および吸引のための複数の要素を備えているので、これらの工程を同時に実行することも可能である。
【0017】
例えば、複数の組み込まれた流路を備えた成形部品として膜が形成されてもよい。
浸漬液の吸引は、とりわけ対物レンズの交換前が有効である。その際、対物レンズがZ方向に動作範囲から上昇されて膜との接触を失う。対物レンズと膜とが十分に離間するとすぐに、対物レンズ・レボルバの回転または交換装置のスイッチ切替によって、別の対物レンズを光路内に持ち込むことができる。この新たな対物レンズがその動作範囲へ移動すると、膜との接触が自動的に再び生じるので、それとともに、止水システムの機能もまた復旧する。
【0018】
つまり、顕微鏡使用時に浸漬液を調節するために、吸引機能を使用することができる。
ここでも止水システムの機能が有効であるので、顕微鏡使用時の吸引は必須ではない。液柱が保持可能な量より多くの浸漬液が供給される場合は、浸漬液が膜を介して流出点へ、または止水システムの流出点へ導かれる。
【0019】
対物レンズとプレパラートとの間に常に十分な液体が存在するように、またさらには、対物レンズとプレパラートとの間の領域に的確に液体を流すために、余剰の浸漬液を含んで動作することも有利であろう。このようにすれば、例えば埃粒子を除去することができる。
【0020】
これに加えて、有利な一構成では、顕微鏡対物レンズとプレパラートとの間の浸漬液の量を検出することが可能なセンサが設けられているので、変化が生じた際に自動浸漬を制御することができる。
【0021】
その場合、有利には、この変化を把握するために、膜の上面には接触面が蒸着されている。
さらに、有利な一構成では、重ね合わせられた2つの単一膜から膜が構成されており、これらの単一膜の間で、浸漬液を顕微鏡対物レンズの前部レンズへ供給および排出することができる。2つの膜は外径の領域で互いに封止する。膜間に送り込まれる浸漬液は、内径、つまり顕微鏡対物レンズの前部レンズの領域内でのみ漏出することができる。この変型においても、浸漬液を供給および吸引することができる。
【0022】
その際、ポンプとして、例えば蠕動ポンプ、マイクロ環状歯車ポンプ、膜ポンプ、または圧電ポンプが考えられる。これらのポンプの制御は、余剰原理に従って、または調節された流量を介して行うことができる。
【0023】
また、顕微鏡対物レンズの前部レンズ上に浸漬液をより効果的に保持するために、膜の開口部が封止縁を備えていれば有利である。
さらに、本発明による装置の有利な一構成では、止水システムが、ベースプレート内の少なくとも1つの排水流路を特徴としており、膜を介して流出する余剰の浸漬液を、この流路を通して排出することができる。
【0024】
の有利な構成では、顕微鏡対物レンズとプレパラートとの間の浸漬液の量を検出することが可能なセンサが設けられているので、変化が生じた際に自動浸漬を制御することができる。
【0025】
有利には、この変化を把握するために、膜の上面には接触面が蒸着されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】膜を備えた本発明による装置の概略図。
図2】浸漬液をより効果的に保持するための縁を備えた膜の配置の概略図。
図3図2による膜の拡大図。
図4】成形要素としての膜の概略図。
図5】二層膜の概略図。
図6】顕微鏡のベースプレート内の膜の位置の概略図。
図7図6による膜の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では本発明を、例に基づいてより詳細に説明する。
図1には倒立顕微鏡の対物レンズ1が示されている。この対物レンズは、顕微鏡スタンドの基体に配置された、不動のベースプレート2を有する走査ステージの下方の作動位置に配置されている。保護装置として形成されたベースプレート2は、中心に光路に向けられた、好適には円形である貫通部3を有している。貫通部3には、弾性膜4が位置しており、この弾性膜4は、中心に顕微鏡対物レンズ1の前部レンズ6の光通過のための円形の開口部5を備えており、固定要素7を介してベースプレート2と接続されている。
【0028】
対物レンズ1が作動位置にある限り、膜4が、顕微鏡対物レンズ1の前部形状に密接して閉鎖する。これにより、走査ステージの下方に位置する光学系および機構が液漏れから保護される(保護装置)。同時に、この位置では、止水システムの機能が利用可能である。余剰の浸漬液は、排水流路8を介して排出される。
【0029】
図2および図3は、図1の図示内容と比べて、追加的に、約2.5mmの直径を有する断面が円形の封止縁9を備えた膜4の図である。封止縁9の作用によって、浸漬液がより効果的に前部レンズ6上に保持される。
【0030】
また、膜4は浸漬液を浸漬膜領域内に供給するための要素10(流路)を有しており、この流路は、浸漬液の排水または吸引にも使用することができる。
図4は、厚さが約0.5mmの成形品としての膜4を示している。本実施例では、膜は、図2および図3に従って説明した、浸漬液の供給または排出のための要素10(流路)を有している。ここで、この流路を複数組み込むことも考えられる。
【0031】
図5は、二層膜4を備えた止水システムが示されている。この止水システムは、2つの薄い単一膜11および12から構成されており、これらの膜間では浸漬液が前部レンズ6へ供給される。2つの単一膜11および12は、その外径の領域で互いに封止している。単一膜11および12の間に送り込まれる浸漬液は、内径、つまり前部レンズ6の領域内でのみ漏出することができる。この例でも、浸漬液を供給および排出することができる。
【0032】
図6では、走査ステージのベースプレート2内の膜4の位置が見られる。余剰の浸漬液は、止水システムによって、排水流路8を介して排出され、または膜4を介して吸引される。
【0033】
図7には、浸漬液を浸漬膜領域内へ供給するための、組み込まれた要素10(流路)を備えた図6による膜4が示されている。
【符号の説明】
【0034】
1:顕微鏡対物レンズ、2:保護装置、6:前部レンズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7