特許第6543448号(P6543448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543448塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543448
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20190628BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190628BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/61
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-191485(P2014-191485)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-86368(P2015-86368A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201757(P2013-201757)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】池谷 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】南岡 寛充
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−112671(JP,A)
【文献】 特開平01−054070(JP,A)
【文献】 特開平11−116861(JP,A)
【文献】 特開平05−070719(JP,A)
【文献】 特開平11−080587(JP,A)
【文献】 特開2001−181575(JP,A)
【文献】 特開2011−162732(JP,A)
【文献】 特表2015−519433(JP,A)
【文献】 特表2011−527370(JP,A)
【文献】 米国特許第06366397(US,B1)
【文献】 国際公開第00/015351(WO,A1)
【文献】 特開昭61−281168(JP,A)
【文献】 特開2005−239801(JP,A)
【文献】 特開2009−275096(JP,A)
【文献】 特開2015−086368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含む塗料組成物であって、
前記アルミニウム顔料の含有量は、前記マイカ顔料の含有量と等しいかそれよりも大きく、
前記アルミニウム顔料は、BET法による比表面積が55000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.3μm以上であり、かつそのアスペクト比が50以下であり、
前記塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対するアルミニウム顔料とマイカ顔料との総含有量が、5質量部以上20質量部以下である、塗料組成物。
【請求項2】
前記アルミニウム顔料の含有量Aと前記マイカ顔料の含有量Bとの比A/Bは1以上5以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物に関し、より具体的には、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含む塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属顔料を配合した塗料組成物は、塗膜を形成した際に優れたメタリック感を発揮することから、自動車の外装をはじめ、プラスチックの飾、印刷インキ、化粧品などの多くの分野で使用されている。金属顔料のなかでも、アルミニウム顔料は、メタリック感に優れる上に安価でありかつ比重が小さく扱いやすいという特徴を有することから、広く使用されている。
【0003】
また、マイカ顔料を配合した塗料組成物は、塗膜を形成した際に、マイカ顔料に起因する優れた干渉感(干渉作用あるいはパール感とも表現される)を発揮することから、やはり、上記のような多くの分野で使用されている。マイカ顔料の原料としては天然マイカと合成マイカとがあるが、その高い品質安定性から、合成マイカが広く用いられている。
【0004】
さらに、近年、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含有する塗料組成物が検討されている(たとえば、特開2001−181575号公報(特許文献1)および特開2011−162732号公報(特許文献2))。両顔料を含有する塗料組成物によって形成された塗膜は、メタリック感および干渉感の両色調を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181575号公報
【特許文献2】特開2011−162732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含有する塗料組成物において、アルミニウム顔料とマイカ顔料との含有量を比べると、通常はマイカ顔料が多く配合されている。これは、マイカ顔料の干渉作用を強く発現させるためである。特に、マイカ顔料によって発現される干渉感は、アルミニウム顔料をマイカ顔料と比して同程度または多く配合した場合には、アルミニウム顔料によって発揮されるメタリック感によって相殺され易い傾向にある。このため、特許文献1および特許文献2の実施例などに記載されるように、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含有する塗料組成物により形成される塗膜において干渉感を十分に示すためには、アルミニウム顔料の含有量に対しマイカ顔料の含有量を十分に大きくする必要があった。
【0007】
しかしながら、塗料組成物におけるこれらの顔料の総含有量が増加すると、塗料組成物の塗布性(塗布のし易さ)や乾燥後の塗膜性能が低下するという問題が生じる。さらに、アルミニウム顔料に対してマイカ顔料を多く配合した場合、干渉作用は発現するが、塗膜の明度(L値)が低下する場合がある。これは多く配合されたマイカ顔料がアルミニウム顔料のメタリック感を阻害することに起因すると思われる。また、マイカ顔料は比較的高価であるため、その使用量の低下が望まれる。
【0008】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含有する塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物であって、従来と比してマイカ顔料の含有量が低く、かつ十分なメタリック感および干渉感を示すことが可能な塗料組成物および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗料組成物は、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含む塗料組成物であって、アルミニウム顔料の含有量は、マイカ顔料の含有量と等しいかそれよりも大きく、アルミニウム顔料は、BET法による比表面積が55000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.3μm以上であり、そのアスペクト比が50以下である。
【0010】
本発明の塗料組成物において好ましくは、アルミニウム顔料の含有量(A)とマイカ顔料の含有量(B)との比(A)/(B)は1以上5以下である。
【0011】
また、本発明は、上記塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物、および該樹脂組成物により形成された塗膜を有する塗布物にも係わる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物および該樹脂組成物により形成された塗膜を有する塗布物は、従来と比してアルミニウム顔料の含有量に対するマイカ顔料の含有量が低く、かつ十分なメタリック感および干渉感を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の塗料組成物、および該塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物についてさらに詳細に説明する。
【0014】
≪塗料組成物≫
本発明の塗料組成物は、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含む。アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含むのは、当該塗料組成物が塗布されることによって形成される塗膜において、アルミニウム顔料により発揮されるメタリック感と、マイカ顔料により発揮される干渉感との両色調を示させるためである。
【0015】
なお、本明細書において「メタリック感」とは、きらきらとした、金属光沢のような輝度の高い色調であって視覚的に認識されるものである。また、「干渉感」とは、観察者が見る角度によって様々な色相が表現されることであって視覚的に認識されるものである。
【0016】
<アルミニウム顔料>
本発明の塗料組成物に含まれるアルミニウム顔料は、BET法による比表面積が55000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.3μm以上であり、かつそのアスペクト比(平均粒径μm/平均厚みμm)が50以下である。アルミニウム顔料の形状は特に限定されないが、塗料組成物がより優れたメタリック感を奏するためには、フレーク形状であることが好ましい。
【0017】
ここで、アルミニウム顔料の平均厚みは、次のようにして求めることができる。すなわち、アルミニウム顔料の水面拡散面積A(cm2/g)をJIS−K5906(1998)に従って測定し、さらに、アルミニウムの密度B(g/cm3)を測定する。そして、これらの値を以下の計算式(1)に導入することにより、アルミニウム顔料の平均厚みC(μm)を求めることができる。
【0018】
C(μm)=10000/[A(cm2/g)×B(g/cm3)]・・・(1)
(なお、上記計算式(1)は、水面拡散面積で形成された膜を単一膜として捉え、この面積と比重との関係から膜を構成するアルミニウム顔料の平均厚みを求めるものである)。
【0019】
このようなアルミニウム顔料は、たとえば、ボールミル、アトライターミルなどのミルの中で粉砕媒体の存在下、原料となるアルミニウム粉末を脂肪酸などの粉砕助剤を用いて粉砕もしくは磨砕することにより得られる。また、フィルム上にアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着箔を破砕することにより得られるものでもよい。上記粉砕媒体としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどの高引火点の鉱物油を使用することができる。
【0020】
アルミニウム顔料の組成としては、アルミニウムのみから構成されていてもよいし、またアルミニウム基合金から構成されていてもよく、アルミニウムの純度は特に限定されない。また、その表面には耐食性や意匠性を向上させるための金属酸化物被膜などの表面処理が施されていてもよい。
【0021】
また、アルミニウム顔料の平均粒径は特に限定されるものではないが、下限値としては、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、上限値としては、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。その平均粒径が1μm以上である場合、製造時の取り扱いが容易であり、また、凝集し難い傾向を示すため、塗料組成物中に均一に分散させることができる。また、その平均粒径が100μm以下である場合、塗膜表面が荒れるのを防止でき、好ましい意匠を実現できる。
【0022】
ここで、本明細書において、平均粒径とは体積平均粒子径であり、レーザ回折法によって測定された粒度分布より体積平均を算出することにより求めることができる。
【0023】
<マイカ顔料>
本発明の塗料組成物に含まれるマイカ顔料は、特に制限されず、天然マイカ、合成マイカのいずれかから構成されてもよく、これらが混合されていてもよい。マイカ顔料は、好ましくは、マイカ(雲母)の表面に二酸化チタン、酸化鉄、コバルト、錫、ジルコニウムなどの金属酸化物の薄膜をコーティングしたパールマイカである。また、マイカ顔料の形状は好ましくはフレーク形状である。この場合、塗料組成物中に上記マイカ顔料とアルミニウム顔料とを特定の配合比率および任意の添加量で含有させることにより、塗膜中において両顔料は比較的均一な配列をとることができるため、それぞれの特徴である干渉感と輝度感とを両立させた意匠を発現することができる。
【0024】
このようなマイカ顔料としては、たとえば、天然雲母から加工生産されたマイカ顔料を例示することができる。また、固相反応合成、溶融合成などで合成されたもの、さらには合成後、様々な処理が施された合成マイカを例示することもできる。このような人工的に合成されたマイカ顔料は現在広く用いられている。
【0025】
マイカ顔料の平均粒径は特に限定されるものではないが、下限値としては、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは8μm以上である。また、上限値としては、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下である。その平均粒径が5μm以上である場合、製造時の取り扱いが容易であり、また、凝集し難い傾向を示すため、塗料組成物中に均一に分散させることができる。また、その平均粒径が30μm以下である場合、塗膜表面が荒れるのを防止でき、好ましい意匠を実現できる。なお、マイカ顔料の平均粒径は、アルミニウム顔料と同様、レーザ回折法を用いることによって求めることができる。
【0026】
<その他の成分>
本発明の塗料組成物は、上記アルミニウム顔料と上記マイカ顔料とを含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の任意の成分としては、たとえば他の顔料、添加剤、樹脂および溶剤などを挙げることができる。
【0027】
上記他の顔料としては、たとえば、有機着色顔料、無機着色顔料、体質顔料、板状酸化鉄などの着色顔料を挙げることができる。上記添加剤としては、たとえば、顔料分散剤、消泡剤、沈降防止剤、硬化触媒などを挙げることができる。上記樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ビニル樹脂、ケイ素樹脂(無機系バインダー)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、合成樹脂エマルジョン、ボイル油、塩化ゴム、天然樹脂とアミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート樹脂などを挙げることができる。上記溶剤としては、アルコール系、グリコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、芳香族系、炭化水素系などの有機溶媒、水などを挙げることができる。
【0028】
<成分組成>
本発明の塗料組成物において、アルミニウム顔料の含有量(A)は、マイカ顔料の含有量(B)と等しいかそれよりも大きい。ここで、塗料組成物における含有量とは、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対する各成分の質量部を意味する。
【0029】
さらに、塗料組成物におけるアルミニウム顔料の含有量(A)は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、マイカ顔料の含有量(B)は、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上15質量部以下である。また、塗料組成物において、アルミニウム顔料の含有量(A)とマイカ顔料の含有量(B)との比(A)/(B)は好ましくは1以上である。
【0030】
また、塗料組成物におけるアルミニウム顔料とマイカ顔料との総含有量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部であり、より好ましくは1〜30質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部である。塗料組成物における上記総含有量が1質量部以上である場合、塗膜において各顔料により発揮される色調を示させることができ、30質量部以下である場合、塗料組成物の塗膜表面が荒れるのを防止でき、目的とする意匠を実現できる。
【0031】
また、塗料組成物において、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、添加剤の含有量は好ましくは0.1〜10質量部であり、樹脂の含有量は好ましくは5〜50質量部であり、溶媒の含有量は好ましくは40〜80質量部である。なお、塗料組成物がアルミニウム顔料およびマイカ顔料以外に他の顔料を含む場合、これらの全ての顔料の総含有量は、塗料組成物において好ましくは0.2質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上35質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以上25質量部以下である。
【0032】
<作用効果>
本発明の塗料組成物は、上述のように、アルミニウム顔料とマイカ顔料とを含む塗料組成物であって、アルミニウム顔料の含有量(A)は、マイカ顔料の含有量(B)と等しいかそれよりも大きく、アルミニウム顔料は、BET法による比表面積が55000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.3μm以上であり、かつそのアスペクト比が50以下であり、アルミニウム顔料の含有量は、マイカ顔料の含有量と等しいかそれよりも大きい。
【0033】
従来の塗料組成物において、アルミニウム顔料のメタリック感とマイカ顔料の干渉感との両色調を十分に示させるためには、アルミニウム顔料の含有量を十分確保した上で、マイカ顔料の含有量をアルミニウム顔料の含有量よりもさらに大きくする必要があった。
【0034】
これに対し、本発明の塗料組成物は、アルミニウム顔料の含有量(A)は、マイカ顔料の含有量(B)と等しいかそれよりも大きい、すなわち、マイカ顔料の含有量(B)がアルミニウム顔料の含有量(A)と等しいかそれよりも小さい。このように、従来と比してアルミニウム顔料の含有量に対するマイカ顔料の含有量が低いにも関わらず、本発明の塗料組成物は、塗膜を形成した際に、十分なメタリック感および干渉感を示すことができる。
【0035】
したがって、本発明の塗料組成物は、従来の塗料組成物と比してマイカ顔料の含有量を低減させた状態で同等以上の意匠を実現することができる。このため、たとえば、目的とする色調を示すことができる上に、塗料組成物中の顔料の総含有量の増加に伴う塗布性の低下を抑制することができ、また、その製造コストの低下を実現することができる。
【0036】
なお、塗料組成物において、アルミニウム顔料の比表面積が55000cm2/gを超えた場合に、塗膜が示す干渉感が弱まることの理由は明確ではないが、比表面積が大きすぎると、相対的にアルミニウム顔料として含有されるアルミニウムフレークの数が増えることに起因して、マイカ顔料の干渉感が弱まるためと考えられる。また、アルミニウム顔料の平均厚みが0.3μmより小さく、アスペクト比が50を超える場合、すなわち、アルミニウムフレークの形状が薄く平坦である場合には、塗料組成物中においてアルミニウム顔料が浮き易くなり、この位置関係が塗膜中においても引き継がれるために、結果的にマイカ顔料の干渉感が弱められるものと考えられる。
【0037】
また、本発明の塗料組成物において、好ましくはアルミニウム顔料は、BET法による比表面積が10000cm2/g以上であり、その平均厚みが1μm以下であり、そのアスペクト比が1以上である。この場合、塗料組成物は、十分なメタリック感および干渉感をより確実に示すことができる。アルミニウム顔料に関し、より好ましくは上記比表面積が20000cm2/g以上50000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.1μm以上1.0μm以下であり、そのアスペクト比が1以上50以下であり、さらに好ましくは上記比表面積が30000cm2/g以上50000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下であり、そのアスペクト比が15以上45以下である。
【0038】
また、本発明の塗料組成物において、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、アルミニウム顔料の含有量(A)は、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、マイカ顔料の含有量(B)は、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上15質量部以下である。この場合、十分なメタリック感と十分な干渉感とを示すことができるとともに、塗料組成物におけるアルミニウム顔料の含有量(A)およびマイカ顔料の含有量(B)とが十分に低いため、塗布性の低下をさらに抑制することができるとともに、製造コストのさらなる低下を実現することができる。
【0039】
また、本発明の塗料組成物において、アルミニウム顔料の含有量(A)とマイカ顔料の含有量(B)との比(A)/(B)は1以上であればよく、この場合に、十分なメタリック感と十分な干渉感とを奏することができる。ただし、アルミニウム顔料の含有量を一定とした場合、マイカ顔料の含有量が増加すればコストが高くなる。このようなコストの観点からは、干渉感の発現が阻害されない程度までマイカ顔料の含有量を減らすことが望ましい。したがって、コスト低減の観点からは、比(A)/(B)は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上である。一方、メタリック感と干渉感とをより効率的に奏するためには、比(A)/(B)は好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。また、両観点を踏まえれば、比(A)/(B)は、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらに好ましくは1以上2以下であり、特に好ましくは1.5以上2以下である。
【0040】
また、本発明の塗料組成物において、アルミニウム顔料の粒径ばらつきが小さいことが好ましい。具体的には、体積累積粒度分布の90%径(D90)から10%径(D10)を引いた値が25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。この場合、マイカ顔料の含有量を減らした場合でも、高いメタリック感および干渉感を示すことができる。
【0041】
≪塗布物≫
本発明は、上記塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物にもかかわる。上記塗料組成物は、上述のように、従来と比してアルミニウム顔料の含有量に対するマイカ顔料の含有量が低いにも関わらず、塗膜を形成した際に、十分なメタリック感と十分な干渉感を示すことができる。このため、この塗膜を有する塗布物は、十分なメタリック感と十分な干渉感とを示すことができる。
【0042】
塗膜が形成される基体に関し、金属、プラスティック、窯業製品、ガラス、木材、コンクリート、布、紙など、その素材は特に限定されない。また、その形状も、たとえば支柱、橋梁、ガードレール、締結部品(ボルト、ナット、リベット等)、摺動部品(シートベルト部品、工作機械部品など)、架台(太陽光発電パネル架台など)、タンク、車両、屋外用収納箱(キュービクルなど)などの立体構造物、プレコートメタル、板材、壁材、屋根材、シートなどの平面的なものを使用することができ、特に限定されない。なお、本発明の塗料組成物を基体上に塗布する方法は、従来公知の塗布方法を特に限定することなく採用することができ、いかなる方法も採用することができる。
【0043】
ここで、塗布物が有する塗膜が本発明の塗膜であるか否かは、塗膜におけるアルミニウム顔料の含有量とマイカ顔料の含有量とを算出し、かつアルミニウム顔料の特性を調べることによって確認することができる。すなわち、塗膜中のアルミニウム顔料の含有量が、マイカの含有量と等しいかそれよりも大きく、アルミニウム顔料に関し、BET法による比表面積が55000cm2/g以下であり、その平均厚みが0.3μm以上であり、そのアスペクト比が50以下である場合には、本発明の塗料組成物により形成された塗膜とみなすことができる。
【0044】
また、本発明の塗布物は上記塗膜を有する限り、他の層を有していてもよく、好ましくは上記塗膜をベースとし、その上にトップコートを有する。トップコートを有することにより、塗膜の損傷を抑制することができ、また、塗膜により発揮される意匠性を高めることができる。また、他の層としては、たとえば、塗膜と基体との間に下地処理層を有してもよい。下地処理層を有することにより、基体と上記塗膜との密着性を高めることができる。
【0045】
下地処理層としては、たとえば、溶融めっき層、溶射めっき層、電解めっき層、無電解めっき層、蒸着層、化成処理層、電着塗装層、有機系プライマー層、ジンクリッチプライマー層などを例示することができる。特に、溶融亜鉛めっき層、電解亜鉛めっき層、無機塩による化成処理層、有機系プライマー層が好ましい。特に好ましい下地処理層としては、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、無機塩による化成処理、有機系プライマー等が例示される。なお、下地処理層として各種めっき層を選択する場合は、有機系プライマー層を併用する事が望ましい。
【実施例】
【0046】
以下の実施例および比較例において、アルミニウム顔料およびマイカ顔料を準備し、これらを所定含有量含む塗料組成物を作製した。作製した塗料組成物を基体上に塗布し、さらにトップコート剤を塗布してこれらを焼き付けることにより、塗料組成物により形成された塗膜を有する塗布物を作製した。そして、各塗布物における各塗膜の色調を測定することにより、各塗膜が示すメタリック感および干渉感を確認した。
【0047】
<アルミニウム顔料の準備>
表1に示す特性を有するアルミニウム顔料A〜Dを準備した。表1において、D10、D50、D90は、体積累積粒度分布曲線における体積平均粒子径10%、50%、90%での粒子径(μm)を示す。なお、体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(商品名:「Microtrac HRA 9320−X100、ハネウェル(Honeywell)社製)を用いて測定した。たとえば、D90は、縦軸が累積頻度(%)であり、横軸が粒子径(μm)である体積累積粒度分布曲線において、累積度0%の粒子径(μm)を意味する。また、「(D90)−(D10)」は、D90の粒子径の値からD10の粒子径の値を引いた値を示し、この値が小さいほどアルミニウム顔料の粒径のばらつきが小さいことを意味する。また、比表面積はBET法により算出される比表面積を意味する。
【0048】
【表1】
【0049】
<マイカ顔料の準備>
マイカ顔料Eとして、金色干渉色のマイカ顔料(商品名:「Mearlin(R) Exterior CFS Super Gold 2303Z」、粒径:7〜30μm)、マイカ顔料Fとして、青色干渉色のマイカ顔料(商品名:「Mearlin(R) Exterior CFS Super Blue 6303Z」、粒径:9〜35μm)を準備した。なお、マイカ顔料Eは金色の干渉感を示し、マイカ顔料Fは青色の干渉感を示した。
【0050】
<トップコート剤の作製>
まず、アクリルクリヤー樹脂(商品名:「アクリディックA−322」、DIC社製)420質量部およびメラミンクリヤー樹脂(商品名:「スーパーベッカミンL117−60」、DIC社製)165質量部を、芳香族系溶剤(商品名:「ソルベッソ100」、エクソン化学(株)製)228質量部中に加え、ガラス棒で分散したのち、芳香族系溶剤をさらに加えて、フォードカップで20秒に粘度調整し、トップコート剤を作製した。
【0051】
参考例1>
アルミニウム顔料Aおよびマイカ顔料Eのそれぞれを、塗料組成物中において樹脂固形分100質量部に対して11質量部(顔料固形分量)となるように、シンナー200質量部およびキシレン60質量部に加えてガラス棒で分散させた後、アクリルクリヤー樹脂(商品名:「アクリディックA−322」、DIC社製)160質量部(樹脂固形分の80質量部を構成)およびメラミンクリヤー樹脂(商品名:「スーパーベッカミンL117−60」、DIC社製)33.3質量部(樹脂固形分の20質量部を構成)とともに、ディスパーにて、15分間1000rpmで撹拌分散させることにより、塗料組成物前駆体を得た。そして得られた塗料組成物前駆体にシンナーを加えてフォードカップで13.5秒に粘度調整し、塗料組成物を作製した。
【0052】
塗料組成物(ベース)およびトップコート剤(トップ)を、それぞれ基体となる鋼板上に自動スプレーガンにて、以下に示す塗布条件で塗布した。塗布後、温度140℃、時間20分間の条件で焼付けを行ない、鋼板上に各塗料組成物により形成された塗膜を得た。なお、各塗膜(トップコートを含む)の厚みは、40.0μm〜60.0μmであった。
【0053】
(塗布条件)
レシプロケーター速度 50m/分
レシプロケーターストローク 1250mm
コンベア移動速度 2m/分
吹き付け距離 30cm
吐出量(ベース) 400ml/分
吐出量(トップ) 420ml/分
同一塗料のパス回数(ベース) 3pass
同一塗料のパス回数(トップ) 2pass
1パス後のガンの待機時間 5分
同一ガンで1パスから2パスへの待機時間 2分。
【0054】
<実施例2、3、5、6、参考例1、4、従来例1〜4、比較例1、2>
用いるアルミニウム顔料の種類およびその含有量、用いるマイカ顔料の種類およびその含有量を表2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、各実施例、各従来例および各比較例において塗膜を得た。なお、各含有量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対する各顔料の固形分量(質量部)(PHR)である。また、表2の「アルミニウム顔料/マイカ顔料(比率)」は、塗料組成物中におけるアルミニウム顔料の含有量(A)とマイカ顔料の含有量(B)との比率(A/B)を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
<色調の測定>
形成された塗膜に関し、JIS−Z8722(2009)(色の測定方法−反射および透過物体色)の条件aに記載の方法に従って測定したY値から、JIS−Z8729(2004)(色の表示方法−L表色系およびL表色系)に規定されるL15およびb15を得た。具体的には、マルチアングル分光測色計(商品名:「X-Rite MA-68II」、X-Rite社製)を用いて、入射角45°、正反射方向からのオフセット角15°におけるL値およびb値を測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
上記L値は明度を示し、塗料組成物に含有されるアルミニウム顔料により示されるメタリック感の程度を示す指標となり、その値が大きいほどメタリック感の色調が強いとみなすことができる。また、上記b値は干渉度合いを示し、その値がマイナス値でありかつ数値が大きいほど青色味の干渉感の色調が強いとみなすことができ、その値がプラス値でありかつ数値が大きいほど黄色味の干渉感の色調が強いとみなすことができる。つまり、b値の絶対値が大きいほど干渉度合いが高いことを示す。
【0058】
表2を参照し、参考例1および参考例4の塗料組成物に関し、アルミニウム顔料の含有量はマイカ顔料の含有量と同等であるのに対し、従来例1〜4で用いた各塗料組成物に関し、アルミニウム顔料の含有量はマイカ顔料の含有量よりも小さかった。また、参考例1と同じアルミニウム顔料を用いた従来例3に関し、マイカ顔料の含有量が参考例1よりも多いため、参考例1よりも干渉度合いが高かった。同様に、参考例4と同じアルミニウム顔料を用いた従来例4に関し、マイカ顔料の含有量が参考例4よりも多いため、参考例4よりも干渉度合いが高い結果となった。これらは当然の結果である。しかし、参考例1および参考例4と従来例1および従来2との対比に関し、参考例1おいては、明度は従来例1より高いにも関わらず干渉度合いにおいても十分に高く、参考例4においては、従来例2に比して明度、干渉度合いとも大きな差はなかった。
【0059】
したがって、参考例1および参考例4の塗料組成物は、従来例1および従来例2の塗料組成物と比して、少ないマイカ顔料の含有量であっても十分に高いメタリック感と干渉感とを示すことができることが確認された。また、参考例1および参考例4の塗料組成物は、従来例1および従来例2の塗料組成物と比して、含有する顔料の総含有量が小さかった。
【0060】
また、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6の塗料組成物に関し、実施例2、実施例3および実施例5のアルミニウム顔料の含有量はマイカ顔料の含有量の倍であり、実施例6のアルミニウム顔料の含有量はマイカ顔料の含有量の1.5倍であった。一方、比較例1および比較例2の各塗料組成物に関し、アルミニウム顔料の含有量はマイカ顔料の含有量と同程度であった。そして、実施例2、実施例3および実施例6において、明度は比較例1より高いにも関わらず干渉度合いに大きな差はないか若干高く、実施例5においても、比較例2と比して明度、干渉度合いに大きな差はなかった。
【0061】
したがって、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6の塗料組成物は、比較例1および比較例2の塗料組成物と比して、少ないマイカ顔料の含有量であっても、十分に高いメタリック感と干渉感とを示すことができることが確認された。また、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6の塗料組成物は、比較例1および比較例2の塗料組成物と比して、含有する顔料の総含有量が小さかった。
【0062】
また、参考例4および実施例5の塗料組成物を、それぞれ従来例2および比較例2の各塗料組成物と比較してみると、参考例4のほうが従来例2よりも少ないマイカ顔料の含有量であり、実施例5のほうが比較例2よりも少ないマイカ顔料の含有量であるにも関わらず、従来例2および比較例2と同程度の高い明度と高い干渉感とを示すことが出来ることが確認された。
【0063】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。