特許第6543453号(P6543453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6543453-ブラックマトリックス用顔料分散組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543453
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20190628BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20190628BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190628BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20190628BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09C1/48
   G02B5/20
   G03F7/004 505
   G02F1/1335 505
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-210018(P2014-210018)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-79245(P2016-79245A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】大泊 研
(72)【発明者】
【氏名】戸田 光信
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−150428(JP,A)
【文献】 特開2005−275218(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/066100(WO,A1)
【文献】 特開2014−102346(JP,A)
【文献】 特開2008−304583(JP,A)
【文献】 特開2004−204175(JP,A)
【文献】 特開2015−161815(JP,A)
【文献】 特開2004−361875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09C 1/48
G02B 5/20
G02F 1/1335
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、シリカ、ポリエステル鎖を有する塩基性基含有高分子分散剤、スルホン酸基を有するフタロシアニン系誘導体、酸基含有樹脂、溶剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散組成物であって、カーボンブラックの平均一次粒子径が20〜60nmであり、且つカーボンブラック100質量部に対して平均一次粒子径が1〜20nmのシリカを1〜7質量部含有することを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項2】
カーボンブラックが平均一次粒子径20〜60nmの中性カーボンブラックと平均一次粒子径20〜60nmの酸性カーボンブラックとからなることを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記中性カーボンブラックと前記酸性カーボンブラックとの混合比率(質量比)が85/15〜15/85の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル鎖を有する塩基性基含有顔料分散剤がポリエステル鎖を有する塩基性基含有ウレタン系高分子分散剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項5】
シリカが疎水化表面処理したシリカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項6】
シリカがジメチルシリル化表面処理シリカであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物。
【請求項8】
カーボンブラック、シリカ、ポリエステル鎖を有する塩基性基含有高分子分散剤、スルホン酸基を有するフタロシアニン系誘導体、酸基含有樹脂を含有するブラックマトリックスであって、該カーボンブラックの平均一次粒子径は20〜60nmであり、さらに該カーボンブラック100質量部に対して平均一次粒子径が1〜20nmのシリカを1〜7質量部含有するブラックマトリックス。
【請求項9】
カーボンブラックを含有するブラックマトリックスの基板に対するテーパー角が60°以上である請求項8に記載のブラックマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルのブラックマトリックスの形成に使用されるブラックマトリックス用顔料分散組成物及びそれを含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、カラーテレビ、携帯電話、タブレット端末、ゲーム端末機等の画像表示素子に液晶方式が多用されている。液晶画像表示素子は、各色の画素を形成したカラーフィルターとシャッター作用を有する液晶とを利用して、画面に画像を表示する。
そして、カラーフィルターは、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に、ストライプ状或いはモザイク状等の開口部を有する黒色のマトリックス(ブラックマトリックス)を形成し、続いて、開口部に赤、緑、青等の3種以上の異なる色素の画素を順次、形成したものである。
【0003】
ここで、ブラックマトリックスは、各色間の混色抑制や光漏れ防止によるコントラスト向上の役割を果たすものである。したがって高い遮光性が要求され、かつては薄膜でも遮光性の高いクロム等の蒸着膜が用いられていた。しかしながら、形成する工程が複雑でしかも高価であるという理由から、最近では、顔料と感光性樹脂を含有したフォトリソグラフィー法(顔料法)が利用されている。
この顔料法では、カーボンブラック等の黒色顔料または数種の顔料を黒色となるように組み合わせて使用する。
さらに高遮光性を得るためには、顔料自体の含有量も多く配合する必要があるが、顔料濃度が高くなるほど、現像性、解像性、密着性、安定性といった他の必要性能が低下し、遮光性を高めるには限界があった。一方では、カラーフィルターを形成する皮膜については薄膜化が求められ、顔料の高濃度化で対応せざるを得ない状況となっている。
【0004】
ところで、最近、カラー液晶表示装置において表示が鮮明であることは装置自体の販売の増加に直結し、鮮明性向上の要望は非常に強いものがある。そこで、色のにじみなどの鮮明性を損なう原因となる、カラーフィルターやブラックマトリックスのパターンの形成不良をなくすことが非常に大きな課題になっている。
ブラックマトリックスをフォトリソグラフィー法で形成するには、まず、ブラックマトリックス用レジスト組成物を基板に塗工する。その後、所望のパターンを有するマスクを通して紫外線で露光し、露光部の塗膜を硬化させる。そして、未露光部の塗膜を現像液で除去して、上記所望のパターン通りのブラックマトリックスを形成する。このとき、良好なパターンを得るためには、レジスト組成物に良好なパターン再現性が求められる。例えば、現像終了時に未露光部においては現像残渣がないこと、露光部は十分な細線再現性を有すること、シャープなエッジのパターンが形成できること等が要求される。
【0005】
しかし、ブラックマトリックスとして遮光性が高いということは、紫外線に対する遮光性も高いということである。したがって、露光部分において、塗膜表面は硬化しても、基板の近辺では紫外線が届かず、未硬化のまま残ることになる。そして未硬化で残った部分は徐々に現像液に侵されて細り、最終的には露光部分が全て除去されてブラックマトリックスが消失するという現象が発生する。
このように、まず未露光部が完全に除去されてから、露光部が細ってブラックマトリックスとしての規定の性能が得られなくなるまでの時間の長さは、現像マージン(Development Latitude)と呼ばれている。この現像マージンが少ないものは、未露光部分が除去された後、すぐに露光部の細りや消失が起こるため、現像を止めるタイミングの見極めが困難である。特に上記のような高顔料濃度化されたレジスト組成物は、露光部における未硬化の度合いが高くなり易いことから、現像マージンが十分に取れず、密着性も低下する。そのため、未露光部が完全に除去できなかったり、露光部が細って規定の性能が得られない等、工程管理の面で非常に大きな問題となっていた。
【0006】
この問題を解決するために、(1)着色剤として黒色顔料と体質顔料を使用したブラックマトリックス用顔料組成物(例えば、特許文献1参照)、(2)着色剤として吸油量10〜150ml/100g、pHが9より大きい範囲にあるカーボンブラックを使用したブラックマトリックス用顔料組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。これにより、上記問題点はある程度は解決する。
また、カーボンブラックの粒径等を制御することにより、ブラックマトリックス層形成時の硬化性等を向上させることや、アグリゲート径が異なる2種以上のカーボンブラックを併用する等することは、特許文献3及び4に記載されている。
【0007】
しかし、近年、携帯電話、タブレット端末、ゲーム端末機等が広まり、これらはコンピュータ用モニタやカラーテレビと比較して画面が小さいにもかかわらず、コンピュータ用モニタと同等の解像度が要求されている。したがって、前記シャープなエッジパターンの形成に対する要求は従来に増して高まっている。さらに上記の現像マージン(より大きいもの)と密着性(より高いもの)が要望されており、上記の提案されている方法では、まだ不十分である問題を有している。
【0008】
通常、ブラックマトリックスのパターンを形成させた場合、図1に示すように、当該パターンの幅方向の断面である断面が台形となることが一般的である。このとき、パターンの断面1が基板2との間でなす角θは、鋭角となる。
角θはテーパー角と呼ばれる。テーパー角は、ブラックマトリックス塗膜の熱特性に強く依存する。露光されたブラックマトリックスは加熱工程によって硬化されるが、硬化時の温度は通常200℃以上である。この温度下では、ブラックマトリックスの塗膜が軟化し、パターンのエッジが一部流動する事によって、パターン断面は長方形から台形へと変化する。流動が大きいと、エッジの直線性は良化するが、パターンの線幅が増大するために、テーパー角は小さくなる。そうすると、所望の線幅の細線パターンを形成しづらく、また、パターンのエッジ付近は膜厚が小さいために、遮光性が低下する。一方、流動が小さいと、テーパー角は大きくなり、所望の線幅の細線パターンを形成しやすいが、エッジの直線性が低下する。用途によって求められるテーパー角は様々であるが、タブレット端末等の小画面高解像度用途には、テーパー角の大きいものが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−149153号公報
【特許文献2】国際公開第2008/066100号
【特許文献3】特開2006−257110号公報
【特許文献4】特開2004−251946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、遮光性が良好で、且つテーパー角が大きく、現像マージンが大きく、密着性が高く、エッジの直線性に優れるブラックマトリックス用顔料分散組成物及びそれを含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の平均一次粒子径を有するカーボンブラックを採用し、且つ特定の平均一次粒子径を有するシリカを使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. カーボンブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、顔料誘導体、酸基含有樹脂、溶剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散組成物であって、カーボンブラックの平均一次粒子径が20〜60nmであり、且つカーボンブラック100質量部に対して平均一次粒子径が1〜20nmのシリカを1〜7質量部含有することを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物。
2.カーボンブラックが平均一次粒子径20〜60nmの中性カーボンブラックと平均一次粒子径20〜60nmの酸性カーボンブラックとからなることを特徴とする1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
3. 前記中性カーボンブラックと前記酸性カーボンブラックとの混合比率(質量比)が85/15〜15/85の範囲であることを特徴とする1又は2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
4.前記塩基性基含有顔料分散剤がポリエステル鎖を有する塩基性基含有ウレタン系高分子分散剤であり、前記顔料誘導体が、スルホン酸基を有するフタロシアニン系誘導体であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
5.シリカが疎水化表面処理したシリカであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
6.シリカがジメチルシリル化表面処理シリカであることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
7.1〜6のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物。
8.カーボンブラックを含有するブラックマトリックスであって、該カーボンブラックの平均一次粒子径は20〜60nmであり、さらに該カーボンブラック100質量部に対して平均一次粒子径が1〜20nmのシリカを1〜7質量部含有するブラックマトリックス。
9.カーボンブラックを含有するブラックマトリックスの基板に対するテーパー角が60°以上である8に記載のブラックマトリックス。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、特定の組成からなるブラックマトリックス用顔料分散組成物及びそれを含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物とすることにより分散安定性に優れ、かつ、レジストパターン形成時において、光学濃度が高く遮光性に優れ、現像性、現像マージンが大きく、細線密着性が高く、テーパー角が大きく、及び直線性に優れるという顕著な効果を発揮することができる発明である。
また、特定のカーボンブラックと特定のシリカを特定量含有するブラックマトリックスによれば、さらに光学濃度が高く遮光性に優れ、現像性、現像マージンが大きく、細線密着性が高く、テーパー角が大きく、及び直線性に優れるという顕著な効果を発揮することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ブラックマトリックスのパターン断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物及びそれを含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物について、詳細に説明する。
[ブラックマトリックス用顔料分散組成物]
まず、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物について説明する。
ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、カーボンブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、顔料誘導体、酸基含有樹脂、溶剤を含有してなる組成物であり、この組成物を基にしてブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を得るものである。
【0016】
(カーボンブラック)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成するカーボンブラックは、平均一次粒子径20〜60nmのカーボンブラックであり、中でも平均一次粒子径20〜60nmの中性カーボンブラック及び/又は平均一次粒子径20〜60nmの酸性カーボンブラックを使用することが好ましい。
カーボンブラックの一次粒子径が20nmより小さい場合、又は60nmより大きい場合は、シリカを併用した場合の下記の効果が得られない問題を有する。
また、中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックを併用することが好ましく、中でも中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックとの混合比率(質量比)は85/15〜15/85が好ましく、さらに好ましくは75/25〜40/60の範囲である。使用するカーボンブラックの中性カーボンブラックの割合が85/15より多い場合は、シール強度が低下し、使用するカーボンブラックの酸性カーボンブラックの割合が40/60より多い場合は、現像マージンや細線密着性が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明における酸性カーボンブラックと中性カーボンブラックについて説明する。カーボンブラックは、表面の構造により、酸性カーボンと中性カーボンに大別できる。酸性カーボンとは、元々あるいは人工的に酸化した炭素質物質であり、蒸留水と混合煮沸した時に酸性を示す。一方、中性カーボンは、蒸留水と混合煮沸した時に中性またはそれより高いpHを示すことが知られている。
【0018】
中性カーボンブラックとしては、pHが8.0〜10.0の範囲が好ましく、具体的には、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のプリンテックス25(平均一次粒子径56nm、pH9.5)、プリンテックス35(平均一次粒子径31nm、pH9.5)、プリンテックス65(平均一次粒子径21nm、pH9.5)、三菱化学社製のMA#20(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#40(一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#30(平均一次粒子径30nm、pH8.0)等が挙げられる。
【0019】
酸性カーボンブラックとしては、pHが2.0〜4.0の範囲が好ましく、具体的には、コロンビアケミカルズ社製のRaven1080(平均一次粒子径28nm、pH2.4)、Raven1100(平均一次粒子径32nm、pH2.9)、三菱化学社製のMA−8(平均一次粒子径24nm、pH3.0)、MA−100(平均一次粒子径22nm、pH3.5)、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のスペシャルブラック250(平均一次粒子径56nm、pH3.0)、スペシャルブラック350(平均一次粒子径31nm、pH3.0)、スペシャルブラック550(平均一次粒子径25nm、pH4.0)が挙げられる。
【0020】
pHは、カーボンブラック1gを炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mlに添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定する(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。
平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値である。
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物におけるカーボンブラックの含有量は、好ましくは3〜70質量%が好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。カーボンブラックの含有量が前記範囲未満では、ブラックマトリックスを形成した場合の遮光性が低くなる傾向があり、一方前記範囲を超えると、顔料分散が困難となる傾向がある。
【0021】
(シリカ)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成するシリカは、単独又は2種類以上を混合して使用することができる。シリカを含有させることによってテーパー角が大きくなる。
このシリカの平均粒子径は、好ましくは1〜20nmである。シリカの平均粒子径が1nm未満であると、ブラックマトリックス用顔料分散組成物の粘度が高すぎて塗布に支障をきたす傾向があり、一方、20nmを超える場合は、細線密着性が低下する傾向がある。
このシリカは、好ましくは疎水化表面処理したシリカである表面疎水化処理シリカであり、より好ましくはジメチルシリル化表面処理シリカである。
このような本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成するシリカの具体例としては、日本アエロジル社製のAEROSIL R976(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径7nm)、AEROSIL R974(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径12nm)、AEROSIL R972(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径16nm)が挙げられる。
シリカの使用量は、カーボンブラック100質量部に対して1〜7質量部の範囲であり、好ましくは2〜6重量部の範囲である。1質量部未満であると、テーパー角を大きくする効果が得られず、一方、7質量部より多い場合は、濃度(OD値)、分散安定性が低下する傾向がある。
【0022】
(塩基性基含有顔料分散剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成する塩基性基含有顔料分散剤としては、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤等を用いることができる。
これらの塩基性基含有顔料分散剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上の組み合わせを用いてもよい。中でも、良好な顔料分散性が得られる点から、塩基性基含有高分子顔料分散剤が好ましい。
【0023】
塩基性基を有する高分子顔料分散剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等の、ポリ(低級)アルキレンアミン等)のアミノ基及び/又はイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド及びポリエステルアミドからなる群より選択される少なくとも1種との反応生成物。
(2)分子内にポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖、及びポリアクリル側鎖からなる群より選択される少なくとも1種の側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(3)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物。
(4)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2〜3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族又は複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物。
(5)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物にポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた反応生成物。
(6)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物。
(7)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物。
(8)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマー及び2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物。
(9)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物。
(10)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合性モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体。
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等の塩基性基を有するブロックと塩基性官能基を有していないブロックとからなるアクリル系ブロック共重合体等。
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤。
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物。
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15〜85%である化合物。
【0024】
これら塩基性基含有高分子顔料分散剤の中でも、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤がより好ましく、アミノ基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、アミノ基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、アミノ基含有アクリル系高分子顔料分散剤がより好ましい。特に、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤が好ましく、なかんずく、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基(アミノ基)含有ウレタン系高分子顔料分散剤が好ましい。
塩基性基含有分散剤の使用量は、カーボンブラック100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは1〜60質量部である。
【0025】
(顔料誘導体)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成する顔料誘導体としては、酸基含有顔料誘導体、酸基含有色素誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有させることができる。
まず、酸基含有顔料誘導体、酸基含有色素誘導体としては、酸基を有するフタロシアニン系顔料誘導体、酸基を有するアントラキノン系顔料誘導体、酸基を有するナフタレン系顔料誘導体等が例示できる。この中でも、スルホン酸基を有するフタロシアニン系顔料誘導体がカーボンブラックの分散性の点から好ましい。
顔料誘導体の使用量は、カーボンブラック100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0026】
(酸基含有樹脂)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成する酸基含有樹脂としては、酸基含有共重合体樹脂、酸基含有ポリエステル樹脂、酸基含有ウレタン樹脂等を用いることができる。
上記酸基含有樹脂の酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
上記酸基含有樹脂の中でも、好ましいものは、酸基を有する単量体の少なくとも1種を含有する単量体成分をラジカル重合して得られる、酸価10〜300mgKOH/g(好ましくは20〜300mgKOH/g)、重量平均分子量1,000〜100,000の酸基含有共重合体樹脂(特に酸基含有アクリル系共重合体樹脂)である。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、スルホエチルメタクリレート、ブチルアクリルアミドスルホン酸、ホスホエチルメタクリレート等の酸基含有不飽和単量体成分と、スチレン、メチルスチレン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分をラジカル重合して得られる酸基含有共重合体樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、上記酸基含有樹脂の重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。本発明においては、GPC装置として、Water 2690(ウオーターズ社製)、カラムとしてPLgel 5μ MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を用いる。
【0027】
酸基含有樹脂の使用量は、カーボンブラック100質量部に対して0.5〜100質量部である。
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、顔料誘導体、酸基含有樹脂、溶剤の混合物である。ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、これらの混合物をロールミル、ニーダー、高速攪拌機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散装置等を用いて、分散処理して得ることができる。
【0028】
(溶剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を構成する溶剤としては、従来から使用されている顔料を安定的に分散させることができ、かつ後述の塩基性基含有顔料分散剤、酸基含有樹脂を溶解させることができるものであり、好ましくは、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100〜250℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等である。
このような溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、δ−ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤類、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n−アミル等のエステル系有機溶剤類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤類等を例示でき、これら有機溶剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
[ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物]
次に、本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物について説明する。
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、上記ブラックマトリックス用顔料組成物に加えて、光重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じて溶剤から主として構成され、さらに重合禁止剤等の各種添加剤を適宜含有させて得られるものである。
なお、ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物中のカーボンブラックは、ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中の質量%で30〜80質量%であることが好ましい。
【0030】
(光重合性化合物)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を構成する光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー等が挙げられる。
具体的には、光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレートまたはアクリレート;グリセロールメタクリレートまたはアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアクリレート等を用いることができる。
光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとして、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることができる。
前記光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、前記モノマーを適宜重合させて得られたものを用いることができる。これらの光重合性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、前記光重合性化合物の使用量は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に基づいて、好ましくは3〜50質量%の範囲である。
【0031】
(光重合開始剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を構成する光重合開始剤としては特に限定されない。例えば、ベンゾフェノン、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
本発明において、上記光重合開始剤の使用量は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に基づいて、好ましくは1〜20質量%の範囲である。
【0032】
(溶剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を構成する溶剤としては、上記に挙げた溶剤と同様のものを用いることができる。特に、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100〜250℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等が好ましい。沸点が250℃を超える有機溶剤を多量に含んでいると、塗布形成された塗膜をプレベークする際に有機溶剤が十分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下する場合がある。また、沸点が100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなる場合がある。
このような溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、δ−ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤類、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n−アミル等のエステル系有機溶剤類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤類等があり、これらを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
これらの有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n−アミル等が好ましい。特に好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
さらに、これらの有機溶剤は、上記顔料分散剤、酸基含有樹脂、皮膜形成樹脂の溶解性、顔料分散性、塗布性等の点から、上記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に使用される全有機溶剤中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上含有させることがより好ましい。
【0034】
(添加剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物には、必要に応じて、上述したもの以外の熱重合禁止剤、酸化防止剤などの各種添加剤を適宜使用することも可能である。
【0035】
以上の構成材料を用いて本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を製造する方法を説明する。
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を製造する方法は、本発明の好ましい実施形態の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に、光重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じて有機溶剤、その他添加剤を加え、公知の攪拌装置等を用いて攪拌混合する方法が利用できる。
【0036】
[ブラックマトリックスの形成]
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を使用してブラックマトリックスを形成する手段としては、ブラックマトリックス形成手段としての公知の手段を採用できる。
しかしながら、公知の形成手段を採用しても、本発明の、カーボンブラックの平均一次粒子径は20〜60nmであり、さらに該カーボンブラック100質量部に対して平均一次粒子径が1〜20nmのシリカを1〜7質量部含有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を採用することにより、本発明が意図する効果を発揮することができる。
そして本発明の組成物を採用してブラックマトリックスを形成させることによって、OD値が3.5以上、レジストパターンの現像性が65秒以下、好ましくは60秒以下、現像マージンが60秒以上、好ましくは65秒以上、細線密着性が8μm以下、テーパー角が60°以上、好ましくは65°以上、さらに好ましくは70°以上とすることができ、さらに直線性が好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0038】
(中性カーボンブラック)
プリンテックス45(平均一次粒子径26nm、pH9.5、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製)
【0039】
(酸性カーボンブラック)
Raven1080(平均一次粒子径28nm、pH2.4、コロンビアケミカルズ社製)
【0040】
(シリカ)
AEROSIL R976(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径7nm、日本アエロジル社製)
AEROSIL R974(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径12nm、日本アエロジル社製)
AEROSIL R972(ジメチルシリル化表面処理シリカ、平均粒子径16nm、日本アエロジル社製)
AEROSIL RX−50(ヘキサメチルジシラザン表面処理シリカ、平均粒子径40nm、日本アエロジル社製)
(塩基性基含有顔料分散剤)
BYK−161(ビックケミー社製、ポリエステル鎖を有するアミノ基含有ポリウレタン系高分子分散剤)
【0041】
(顔料誘導体)
ソルスパース5000(ルーブリゾール社製、フタロシアニンスルホン酸アミン塩)
(酸基含有樹脂)
BzMA(ベンジルメタクリレート)/MAA(メタクリル酸)共重合体、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量30000
(光重合性化合物)
DPEHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
(光重合開始剤)
イルガキュア907(2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製)
(溶剤)
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0042】
<実施例1〜5、比較例1〜3のブラックマトリックス用顔料分散組成物の調製>
表1の組成(表1における各材料の使用量は質量%である)となるように各種材料を混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、実施例1〜5、比較例1〜3のブラックマトリックス用顔料分散組成物を調製した。
【0043】
<実施例1〜5、比較例1〜3のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の調製>
高速攪拌機を用いて、実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散組成物と他の材料とを表1の組成(表1における各材料の使用量は質量%である)になるように均一に混合した後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を得た。
【0044】
<評価試験>
(分散安定性)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散組成物、および実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をそれぞれガラス瓶に採り、密栓して室温で7日間保存した後の状態を下記評価基準に従って評価した。
A:増粘、沈降物が共に認められない
B:軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められる
C:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる
【0045】
<レジストパターンの光学濃度(OD値)>
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを得た。得られた各ベタ部のブラックレジストパターンの光学濃度(OD値)をマクベス濃度計(D−200II、商品名、マクベス社製)で測定した。
【0046】
(レジストパターンの現像性(BP))
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cmで露光した。23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、0.5kgf/cmのシャワー現像圧にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクポイント)を下記評価基準に従い評価した。
A:30秒以内に完全に除去できるもの
B:30秒を超えて60秒以内に完全に除去できるもの
C:60秒を超えても完全に除去できないもの
【0047】
(レジストパターンの現像マージン)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cmで露光した。23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、0.5kgf/cmのシャワー現像圧にて現像を行い、3.0kgf/cm圧のスプレー水洗を行った。20μmパターンについて、未露光部分のレジスト組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間を測定して、下記評価基準に従って現像マージンを評価した。
A:未露光部分のレジスト組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が60秒以上
B:未露光部分のレジスト組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が30秒以上、60秒未満
C:未露光部分のレジスト組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が30秒未満
【0048】
(レジストパターンの細線密着性)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cmで露光した。23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、0.5kgf/cmのシャワー現像圧にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクポイント)から+20秒間現像を行い、3.0kgf/cm圧のスプレー水洗を行った。基板上に残存する最小パターンのサイズを下記評価基準に従って評価した。
A:残存する最小パターンサイズが2μm、5μm、8μmである場合
B:残存する最小パターンサイズが10μm、15μmである場合
C:残存する最小パターンサイズが20μm、30μmである場合
【0049】
(テーパー角)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cmで露光した。23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、0.5kgf/cmのシャワー現像圧にて現像を行い、3.0kgf/cm圧のスプレー水洗を行った。その後、230℃で30分間ポストベークした。得られた基板を、ガラスカッターを用いてパターン幅方向に分割した。6μmパターンの分割面を、電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によってテーパー角を測定し、下記評価基準に従って評価した。
A:テーパー角が60°以上、90°未満
B:テーパー角が30°以上、60°未満
C:テーパー角が30°未満
【0050】
(表面平滑性)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを得た。得られた各ベタ部のブラックレジストパターンを、フナテック社製表面検査ランプFY−100Rにて観察し、下記評価基準に従って評価した。
○:検査ランプ照射下、塗膜が白くぼやけて観察されるもの
×:検査ランプ照射下、塗膜が白くぼやけずに観察されるもの
【0051】
(直線性)
実施例1〜5、比較例1〜3の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cmで露光した。23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、0.5kgf/cmのシャワー現像圧にて現像を行い、3.0kgf/cm圧のスプレー水洗を行った。その後、230℃で30分間ポストベークした。得られた基板の10μmパタ−ンの両端、および中央部の3箇所の線幅について、デジタルマイクロスコープにより測定し、下記評価基準に従って評価した。
A:線幅の最大値と最小値の差が0.1μm未満
B:線幅の最大値と最小値の差が0.1μm以上、0.2μm未満
C:線幅の最大値と最小値の差が0.2μm以上
【0052】
【表1】
【0053】
本発明に沿った例である実施例1〜5によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物はいずれも分散安定性に優れており、さらにこれらのブラックマトリックス用顔料分散組成物を基に得たブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物も分散安定性に優れることに加え、レジストパターン形成時において、高いOD値、優れたレジストパターンの現像性(BP)、長い現像マージン、優れた細線密着性、60°以上の高いテーパー角、及び優れた直線性のバランスがとれた優れた効果を発揮できる。
【0054】
しかしながら、本発明に沿った例ではない比較例1〜3によると、例えば、シリカの含有量が少ない比較例1では、テーパー角が劣ることに加え、現像マージン及び細線密着性に劣る結果となった。
シリカの含有量が過剰である比較例2によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物の分散安定性に劣っていた。また、レジストパターンの光学濃度(OD値)が低く、また、BPが劣るため、レジストパターンの濃度と現像性に劣る結果となり、さらに表面平滑性及び直線性にも劣る結果となった。
シリカの平均一次粒子径を過大とした場合には、比較例3に示すように現像マージンが短く、細線密着性、テーパー角、表面平滑性、及び直線性に劣る結果となった。
【0055】
これらの実施例及び比較例の結果を総合してみると、本発明は、特定の組成からなるブラックマトリックス用顔料分散組成物及びブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物とすることにより分散安定性に優れ、かつ、レジストパターン形成時において、光学濃度、現像性、現像マージン、細線密着性、テーパー角、表面平滑性、及び直線性に優れ、所望の線幅の細線パターンを形成しやすいという顕著な効果を発揮することができる発明である。
図1