(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した炭素部品(繊維強化セラミック複合材料)は、吸引成形で使用する型によって形状が賦与され、吸引成形の後に離型される。このため、乾燥、焼成、純化の過程で変形しやすく、表面に凹凸ができやすい。
また、そもそも基材自体はポーラス(多孔質)な材料であるので、炭素繊維に由来する細かな凹凸を表面に有している。
流体用整流部材などの流体と接触する部材は、表面にこのような凹凸を有しているとガスの流れを乱して、抵抗となる。
【0007】
本発明では、前記課題を鑑み、気流の乱れを生じさせにくい構造の流体用整流部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の流体用整流部材は、中心軸を包囲する筒状部を有する流体用整流部材であって、前記筒状部は、内層のセラミック繊維層と最表層のセラミック繊維層とからなる支持材と、前記支持材を覆うセラミックマトリックスと、からなり、前記内層のセラミック繊維層の外側および/または内側を覆う最表層のセラミック繊維層は、前記中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって構成される。
【0009】
流体用整流部材の最表層のセラミック繊維層は、中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって構成される。このため、流体の流れを阻害する起伏が出来にくく、流体に乱れが生じにくいので抵抗を小さくできる。
なお、流体の流れとは、流体用整流部材に対して相対的に流体が移動する場合をいい、流体用整流部材に対して流体が流れる場合および流体中を流体用整流部材が移動する場合を含む。
【0010】
本発明の流体用整流部材によれば、表面を加工することなく気流の抵抗となる凹凸を低減できるので、セラミック繊維を切断することがなく支持材の強度を充分に発揮することができ、高強度の繊維強化セラミック複合材料が得られる。
【0011】
さらに、本発明の流体用整流部材は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記最表層のセラミック繊維層を構成する前記セラミック繊維と、前記中心軸を含む平面と、のなす角度が0度〜20度である。
このため、本発明の流体用整流部材は、中心軸を含む平面とセラミック繊維とのなす角度が0度〜20度であると、セラミック繊維に沿って気流がスムーズに流れることができる。
また、セラミック繊維の太さに起因する凹凸は、1/sin20°倍(2.92倍)以上に中心軸方向に引き伸ばされるので、流体の乱れを小さくでき、抵抗を小さくできる。
【0012】
(2)前記筒状部は、前記中心軸に沿った両端部が開口している。
本発明の流体用整流部材は、筒状部の中心軸に沿った両端部が開口しているので、筒状部の外周面および内周面に沿って流体をスムーズに流すことができる。このため、本発明の流体用整流部材は、内部に流体を流す配管や、流体内を移動する飛翔体、推進体などとして使用することができる。
【0013】
(3)前記内層のセラミック繊維層の外側を覆う前記最表層のセラミック繊維層が、前記中心軸に沿って配向し、前記筒状部の、前記中心軸に沿った両端部の少なくとも一方に蓋部を有し閉口している。
本発明の流体用整流部材は、内層のセラミック繊維層の外側を覆う最表層のセラミック繊維層が、中心軸に沿って配向し、筒状部の、中心軸に沿った両端部の少なくとも一方に蓋部を有し閉口しているので、筒状部の外周面に沿って流体をスムーズに流すことができる。このため、本発明の流体用整流部材は、流体内を移動する飛翔体などとして使用することができる。
【0014】
(4)前記筒状部の、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい。
筒状部は、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい形状を呈しているので、本発明の流体用整流部材は、例えば円錐や円錐台、回転楕円体等に類似した形状となっている。このような形状は滑らかに断面積が変化するので、渦流の発生を抑え、流体の流れをスムーズすることができる。このように一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい形状に沿って流体が流れる場合には、筒状部の一方と他方の間で流体の流速が異なり、弾性流体においてはさらに密度も異なるようになる。このため、流体と接する筒状部の内側面または外側面は、流体との相互作用が強く、特に流体の乱れを生成させやすい。本発明の流体用整流部材における筒状部は、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きく、支持材の内層のセラミック繊維層の外側および/または内側を覆う最表層のセラミック繊維層は、前記中心軸に沿って配向しているので、流体の流れに乱れを生成させにくくすることができる。このため、本発明の流体用整流部材は、配管や流体内を移動する飛翔体、推進体などとして好適に利用することができる。
【0015】
(5)前記セラミック繊維層は、前記セラミック繊維を束ねたストランドが複数並べられて構成される。
本発明の流体用整流部材は、複数のセラミック繊維が束ねられたストランドの状態で使用されると、複数の繊維がまとまっているため、個々の繊維が突出する毛羽立ちを少なくすることができるので、より気流の乱れを抑えることができ、抵抗を少なくすることができる。
【0016】
(6)前記セラミックマトリックスは、SiCである。
SiCは、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、セラミックマトリックスにSiCを用いることにより、流体用整流部材を高温、腐食性雰囲気でも好適に利用できる。
【0017】
(7)前記セラミック繊維は、SiC繊維である。
SiC繊維は、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、支持材にSiCを用いることにより、高温、腐食性雰囲気でセラミックスマトリックスが損傷した場合でも、セラミック繊維がクラックの進展を止め、安全に使用することができる。
【0018】
(8)前記中心軸は、流体の流れ方向に配置される。
中心軸を流体の流れ方向に配置することにより、中心軸を包囲する筒状部も流体の流れ方向に配置されるので、流体の流れを乱さない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流体用整流部材の最表層のセラミック繊維層は、前記中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって構成される。
このため、本発明によれば、流体の流れを阻害する起伏ができにくく、流体に乱れが生じにくいので、気流の乱れを生じさせにくい構造の流体用整流部材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の流体用整流部材および流体用整流部材の製造方法について説明する。
【0022】
前記課題を解決するための本発明の流体用整流部材は、中心軸を包囲する筒状部を有する流体用整流部材であって、前記筒状部は、内層のセラミック繊維層と最表層のセラミック繊維層とからなる支持材と、前記支持材を覆うセラミックマトリックスと、からなり、前記内層のセラミック繊維層の外側および/または内側を覆う最表層のセラミック繊維層は、前記中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって構成される。
【0023】
流体用整流部材の最表層のセラミック繊維層は、中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって構成される。このため、流体の流れを阻害する起伏が出来にくく、流体に乱れが生じにくいので抵抗を小さくできる。
なお、流体の流れとは、流体用整流部材に対して相対的に流体が移動する場合をいい、流体用整流部材に対して流体が流れる場合および流体中を流体用整流部材が移動する場合を含む。
【0024】
本発明の流体用整流部材によれば、表面を加工することなく気流の抵抗となる凹凸を低減できるので、セラミック繊維を切断することがなく支持材の強度を充分に発揮することができ、高強度の繊維強化セラミック複合材料が得られる。
【0025】
さらに、本発明の流体用整流部材は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記最表層のセラミック繊維層を構成する前記セラミック繊維と、前記中心軸を含む平面と、のなす角度が0度〜20度である。
このため、本発明の流体用整流部材は、中心軸を含む平面とセラミック繊維とのなす角度が0度〜20度であると、セラミック繊維に沿って気流がスムーズに流れることができる。
また、セラミック繊維の太さに起因する凹凸は、1/sin20°倍(2.92倍)以上に中心軸方向に引き伸ばされるので、流体の乱れを小さくでき、抵抗を小さくできる。
最表層のセラミック繊維層を構成する前記セラミック繊維と、前記中心軸を含む平面と、のなす角度とは、中心軸とセラミック繊維との最短距離で結ぶ直線を含む平面を用いて定義する。
【0026】
(2)前記筒状部は、前記中心軸に沿った両端部が開口している。
筒状部は中心軸に沿った両端部が開口しているので、筒状部の外周面および内周面に沿って流体をスムーズに流すことができる。このため、本発明の流体用整流部材は、内部に流体を流す配管や、流体内を移動する飛翔体、推進体などとして使用することができる。
【0027】
(3)前記内層のセラミック繊維層の外側を覆う前記最表層のセラミック繊維層が、前記中心軸に沿って配向し、前記筒状部の、前記中心軸に沿った両端部の少なくとも一方に蓋部を有し閉口している。
本発明の流体用整流部材は、内層のセラミック繊維層の外側を覆う最表層のセラミック繊維層が、中心軸に沿って配向し、筒状部の、中心軸に沿った両端部の少なくとも一方に蓋部を有し閉口しているので、筒状部の外周面に沿って流体をスムーズに流すことができる。このため、本発明の流体用整流部材は、流体内を移動する飛翔体などとして使用することができる。
【0028】
(4)前記筒状部の、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい。
筒状部は、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい形状を呈しているので、本発明の流体用整流部材は、例えば円錐や円錐台、回転楕円体等に類似した形状となっている。このような形状は滑らかに断面積が変化するので、渦流の発生を抑え、流体の流れをスムーズすることができる。このように一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい形状に沿って流体が流れる場合には、筒状部の一方と他方の間で流体の流速が異なり、弾性流体においてはさらに密度も異なるようになる。このため、流体と接する筒状部の内側面または外側面は、流体との相互作用が強く、特に流体の乱れを生成させやすい。本発明の流体用整流部材における筒状部は、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きく、支持材の内層のセラミック繊維層の外側および/または内側を覆う最表層のセラミック繊維層は、前記中心軸に沿って配向しているので、流体の流れに乱れを生成させにくくすることができる。このため、本発明の流体用整流部材は、配管や流体内を移動する飛翔体、推進体などとして好適に利用することができる。
【0029】
(5)前記セラミック繊維層は、前記セラミック繊維を束ねたストランドが複数並べられて構成される。
本発明の流体用整流部材は、複数のセラミック繊維が束ねられたストランドの状態で使用されると、複数の繊維がまとまっているため、個々の繊維が突出する毛羽立ちを少なくすることができるので、より気流の乱れを抑えることができ、抵抗を少なくすることができる。
【0030】
(6)前記セラミックマトリックスは、SiCである。
SiCは、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、セラミックマトリックスにSiCを用いることにより、流体用整流部材を高温、腐食性雰囲気でも好適に利用できる。
【0031】
(7)前記セラミック繊維は、SiC繊維である。
SiC繊維は、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、支持材にSiCを用いることにより、高温、腐食性雰囲気でセラミックスマトリックスが損傷した場合でも、セラミック繊維がクラックの進展を止め、安全に使用することができる。
【0032】
(8)前記中心軸は、流体の流れ方向に配置される。
中心軸を流体の流れ方向に配置することにより、中心軸を包囲する筒状部も流体の流れ方向に配置されるので、流体の流れを乱さない。
【0033】
本発明の第1実施形態について以下説明する。
本発明の流体用整流部材の製造方法は、支持材形成工程と、マトリックス形成工程と、芯抜工程とからなる。最初に支持材を形成した後に、芯抜工程およびマトリックス形成工程とを行う。芯抜工程とマトリックス形成工程の順序は特に限定されず、芯抜工程の前後にマトリックス形成工程を行ってもよい。
図6(A)〜
図6(C)は本発明の第1実施形態の流体用整流部材の製造工程を示す。
図6(A)は支持材形成工程、マトリックス形成工程、芯抜工程の順に製造する製造工程、
図6(B)は支持材形成工程、芯抜工程、マトリックス形成工程の順に製造する製造工程、
図6(C)は支持材形成工程、マトリックス形成工程、芯抜工程、マトリックス形成工程の順に製造する製造工程を示す。
【0034】
次に、支持材形成工程について説明する。支持材形成工程は、芯材の周囲にセラミック繊維を巻回し、支持材を形成する。支持材形成工程はセラミック繊維の配置、巻き方などで細かく分類される。支持材形成工程は、巻回工程と、軸方向配置工程とからなる。巻回工程は、さらにヘリカル巻き工程と、フープ巻き工程とが含まれる。
図7(A)〜
図7(C)は、本発明の第1実施形態の流体用整流部材の支持材形成工程の詳細な製造工程を示す。
【0035】
図7(A)は、軸方向配置工程が最初と最後にある製造工程であり、この製造方法により、内層のセラミック繊維層の外側および内側を覆う最表層のセラミック繊維層が中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって流体用整流部材を構成することができる。
図7(B)は、軸方向配置工程が最初にあり、最後にはない製造工程であり、この製造方法により、内層のセラミック繊維層の内側面を覆う最表層のセラミック繊維層が中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって流体用整流部材を構成することができる。
図7(C)は、軸方向配置工程が最後にあり最初にはない製造工程であり、この製造方法により、内層のセラミック繊維層の外側を覆う最表層のセラミック繊維層が中心軸に沿って配向しているセラミック繊維によって流体用整流部材を構成することができる。最初または最後の軸方向配置工程の間は、セラミック繊維の配置、巻回方法、回数、順序は限定されず、自由に組み合わせることができる。
【0036】
次にマトリックス形成工程について説明する。マトリックス形成工程は、骨材であるセラミック繊維の周囲にセラミックマトリックスを充填する。
セラミックマトリックスはどのようなものでもよく特に限定されない。例えば、SiC、アルミナ、Si
3N
4、B
4Cなどを利用できる。セラミックマトリックスはどのような方法で形成してもよい。例えば、有機物である前駆体(プレカーサ)を熱分解させセラミックスのマトリックスを得るプレカーサ法、原料ガスを熱分解させセラミックマトリックスを得るCVD法などが利用できる。またこれらを併用してもよい。
【0037】
以下プレカーサ法、CVD法について説明する。
プレカーサ法では、熱分解によりセラミックが得られる前駆体を適宜選定する。プレカーサ法では、液体の前駆体を支持体に塗布または含浸したのち、加熱処理し、最終的に焼成することによりセラミックマトリックスを得る。加熱処理では、前駆体の形態によってさまざまな処理が行われる。前駆体が溶液である場合には溶媒の乾燥、前駆体がモノマー、ダイマーまたはオリゴマーなどの場合には重合反応、前駆体がポリマーである場合には熱分解反応の処理が行われる。
【0038】
前駆体は、液体の形態で使用する。液体であるとは、前駆体を溶媒に溶かした溶液、液状の前駆体、固体の前駆体を加熱して溶融した液状の前駆体などが利用できる。なお、プレカーサ法では、最終的に前駆体を焼成し、セラミックマトリックスを生成させる。
前駆体は、例えば次のようなものが利用できる。前駆体が炭素の場合は、フェノール樹脂、フラン樹脂などが利用できる。前駆体がSiCの場合はポリカルボシラン(PCS:Polycarbosilane)などが利用できる。これらの樹脂をセラミック繊維間に浸透させて、熱分解することによりセラミックマトリックスを得ることができる。
また、プリカーサ法は支持材形成工程のなかで軸方向配置工程が最後にあり、軸方向に並んだセラミック繊維が最表層にある場合に、セラミック繊維の脱落や毛羽立ちを防止するためのバインダーとすることもできる。この場合には、前駆体が、乾燥、重合または熱分解する過程で、セラミック繊維同士を結合させた状態を維持することができるので、好適に利用することができる。
【0039】
CVD法では、CVD炉に支持材をいれ、加熱した状態で原料ガスを導入する。原料ガスは、CVD炉内で拡散するとともに、加熱された支持材に接触すると熱分解が起こり、原料ガスに対応するセラミックマトリックスが支持材を構成するセラミック繊維の表面に形成される。
CVD法で使用する原料ガスは、セラミックマトリックスの種類によって適宜選択する。
【0040】
目的とするセラミックマトリックスが炭素の場合は、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスが利用できる。
目的とするセラミックマトリックスがSiCの場合には、炭化水素ガスと、シラン系ガスの混合ガス、炭素と珪素を有する有機シラン系ガスなどが利用できる。これらの原料ガスは、水素がハロゲンで置換されたガスも利用することができる。シラン系ガスとしては、クロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、有機シラン系ガスの場合には、メチルトリクロロシラン(Methyltrichlorosilane)、メチルジクロロシラン(Methyldichlorosilane)、メチルクロロシラン(Methylchlorosilane)、ジメチルジクロロシラン(Dimethyldichlorosilane)、トリメチルジクロロシラン(Trimethyldichlorosilane)などが利用できる。またこれらの原料ガスを適宜混合して用いてもよく、さらに水素、アルゴンなどのキャリアガスとしても用いることもできる。キャリアガスとして水素を用いた場合には、平衡の調整に関与することができる。
【0041】
また、他のセラミック材料の場合には、目的のセラミックマトリックスにあわせて適宜原料ガスを選定することができる。
CVDの温度は、原料ガスの分解温度、分解速度に応じて適宜選定することができ、例えば800〜2000℃である。CVDの圧力は、セラミックマトリックスの沈着の状態に応じて適宜選択することができる。使用できる範囲は、例えば0.1〜100kPaの減圧CVD法、また圧力を制御しない常圧CVD法でもよい。
【0042】
次に、芯抜工程について説明する。
芯抜工程の位置によって3つのパターンが存在する。
芯抜工程が、マトリックス形成工程の後の場合、支持材形成工程、マトリックス形成工程、芯抜工程の順に製造する(
図6(A))。
芯抜工程が、マトリックス形成工程の前の場合、支持材形成工程、芯抜工程、マトリックス形成工程の順に製造する(
図6(B))。
芯抜工程が、マトリックス形成工程の中にある場合、支持材形成工程、マトリックス形成工程、芯抜工程、マトリックス形成工程の順に製造する(
図6(C))。
【0043】
図6(A)に示すように、芯抜工程が、マトリックス形成工程の後の場合、芯抜工程で分離される段階では、すでにセラミック繊維強化セラミック複合材料が形成され、本発明の流体用整流部材そのものである。この場合には、形状が固定された段階で芯抜きされるので、寸法精度の高い流体用整流部材を得ることができる。
【0044】
図6(B)に示すように、芯抜工程が、マトリックス形成工程の前の場合、芯抜工程で分離されるものは、セラミック繊維層からなる支持材そのものである。この場合には、支持材の内側面および外側面に同時にセラミックマトリックスを形成することができ、効率よく流体用整流部材を得ることができる。
【0045】
図6(C)に示すように、芯抜工程が、マトリックス形成工程の中にある場合、芯抜工程で分離される段階では、セラミック繊維強化セラミック複合材料の途中段階の製品である。この場合には、支持材の内側面および外側面に同時にセラミックマトリックスを形成することができ、寸法精度の高い流体用整流部材を効率よく得ることができる。
【0046】
いずれの方法をとってもよいが、芯抜工程が、マトリックス形成工程の中にある場合の製造方法を用いることが好ましい。
芯抜工程が、マトリックス形成工程の中にある場合には、支持体のセラミック繊維間にセラミックマトリックスが形成されセラミック繊維強化セラミック複合材料になった後に芯材が抜かれるので、芯材が抜かれた後に変形しにくくすることができる。
【0047】
また、この場合、芯材が抜かれた後、支持体の外側面と内側面の両側からセラミックマトリックスを形成することができるので、セラミック繊維を確実にセラミックマトリックスで覆うことができ、ほつれにくくより強固なセラミック繊維強化セラミック複合材料を得ることができる。
【0048】
また、マトリックス形成工程の中に芯抜き工程がある場合には、芯抜工程の前後のマトリックス形成工程は同一の方法を用いてもよいし、異なる方法を用いてもよい。なかでも、芯抜工程の前はプリカーサ法を用い、芯抜工程の後はCVD法を用いることが好ましい。プリカーサ法は、簡単な方法で支持体を固めることができ、変形を防止できるようになる。CVD法では、緻密で強固な膜が得られるので流体用整流部材の最表面を構成する膜として好適に利用することができる。
【0049】
(第1実施形態)
図1(A)〜
図1(D)および
図2(A)〜
図2(B)に基づいて、流体用整流部材の製造方法について説明する。
流体用整流部材10Aの製造方法は、柱状に形成された芯材11の中心軸CLに対する周方向に沿ってセラミック繊維21を巻回する巻回工程と、芯材11の中心軸CLに対して平行にセラミック繊維21を配置する軸方向配置工程を有する。
【0050】
巻回工程においては、
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)に示すように、中心軸CL回りに回転する芯材11の外周面にセラミック繊維21を巻回してセラミック繊維層22を形成する。
図1(A)はフープ巻きによるセラミック繊維21の巻回工程を示し、
図1(B)はヘリカル巻きによるセラミック繊維21の巻回工程の往路を示し、
図1(C)はヘリカル巻きによるセラミック繊維21の巻回工程の往路を示す。
【0051】
このとき、セラミック繊維21を収容するロール211を、芯材11の一端側(
図1(A)および
図1(B)において右端側)から他端側(
図1(A)および
図1(B)において左端側)へ移動(矢印A参照)させることにより、セラミック繊維21を芯材11の外側面に巻回することができる。
なお、
図1(C)に示すヘリカル巻きによるセラミック繊維21の巻回工程の往路では、セラミック繊維を収容するロール211を、芯材11の他端側(
図1(C)において左端側)から一端側(
図1(C)において右端側)へ移動させる(矢印B参照)。
【0052】
このとき、セラミック繊維21は、フープ巻きによるセラミック繊維21の巻回工程においても厳密には螺旋状に巻回される。ロール211の送り速度によって巻回されるセラミック繊維21の形態が変化する。セラミック繊維21で覆われた分だけロール211を送り、セラミック繊維21を輪のよう巻く巻回方法をフープ巻きといい、セラミック繊維21に間隔が空くようにロール211を送り、セラミック繊維21を螺旋のよう巻く巻回方法をヘリカル巻きという。
【0053】
フープ巻きでは、ロール211の送り速度がセラミック繊維21の太さと同等程度であり、一方向の送りで芯材11のほぼ全外周面をセラミック繊維21で覆ってセラミック繊維層22を形成することができる。
これに対して、ヘリカル巻きでは1回の送りでは芯材11の全外周面を覆うことができないので、ロール211を何往復も繰り返し送りながら芯材11の外周面にセラミック繊維層22を形成する。セラミック繊維21の一方向の送りを1単位とすると、フープ巻きを繰り返した場合、任意の単位のセラミック繊維21は前後それぞれ1単位のセラミック繊維21と接点を有する。
【0054】
これに対しヘリカル巻きでは、1単位のセラミック繊維21では、芯材11の全外周面を覆い尽くすことができないので、任意の単位のセラミック繊維21は前後それぞれ複数の単位のセラミック繊維21と接触する。
【0055】
また、セラミック繊維層22がフープ巻きとヘリカル巻きとの組み合わせである場合には、その界面は、互いに交差しあうセラミック繊維21の接点が多数存在し、高強度のセラミック繊維強化セラミック複合材料を得ることができる。
なお、図面においては、わかりやすくするために、隣接するセラミック繊維21同士の間隔を大きく表示している。
【0056】
第1実施形態の流体用整流部材10Aは、筒状部20Aの内層のセラミック繊維層の外側を覆う最表層のセラミック繊維層22が、中心軸CLに沿って配向しているセラミック繊維21によって構成される。このような筒状部20Aを得るために、筒状部20Aの最上層を軸方向配置工程によってセラミック繊維層22を形成する。
【0057】
軸方向配置工程においては、例えば
図1(D)に示すように、芯材11の一端側および他端側に係止部212、213を設けておき、係止部212と係止部213とに交互にセラミック繊維21を引っ掛けることにより、セラミック繊維21を芯材11の中心軸CLに沿って配置してセラミック繊維層22を形成する。これを芯材11の外側面に沿って全周に実施する。このとき、セラミック繊維21は、係止部212、213の太さ、配置によっては、中心軸CLを含む平面に対し、斜めに配置されることもあるが、隣接するセラミック繊維21同士は非常に近接しているので、中心軸CLに対して平行に配置されると言える。なお、
図1(D)においては、わかりやすくするために、隣接するセラミック繊維21同士の間隔を大きく表示している。
【0058】
最上層を形成する前は、巻回工程と軸方向配置工程とを繰り返し実施して、セラミック繊維層22を積層する。巻回工程と軸方向配置工程との順番および実施回数は任意である。
例えば、巻回工程と軸方向配置工程とを1回ずつ交互に実施することができるが、巻回工程および軸方向配置工程を各々複数回ずつ実施して交互に実施することもできる。また、巻回工程には、ヘリカル巻き、フープ巻きがある。このため、ヘリカル巻きによる巻回工程(ヘリカル巻き工程)、フープ巻きによる巻回工程(フープ巻き工程)、軸方向配置工程の3つの工程を適宜選択しながらセラミック繊維層22を積層し、筒状部20Aを構成することができる。(
図7参照)
これにより、複数のセラミック繊維層22を堆積させて支持材が芯材の表面に形成された筒状の基材23を形成する(
図2(A)参照)。この際、基材23において芯材11の側面111から最も離れた最外側セラミック繊維層222において、中心軸CLを含む平面PL(
図3参照)にセラミック繊維21が沿うように基材23を製造する。
【0059】
次いで、支持体のセラミック繊維21間にセラミックマトリックスを形成させて、中心軸CLを包囲する筒状部20Aを形成する。第1実施形態では、セラミックマトリックスをCVD法により形成する。セラミック繊維層22を有する支持材をCVD炉に入れ、CVD炉にメチルトリクロロシランガスを導入し、SiCのセラミックマトリックスを形成する。
【0060】
そして、
図2(B)に示すように、分離する工程では、芯材11から筒状部20Aを脱型させて、筒状部20Aを焼成し、流体用整流部材10Aを製造する。
これに限定されず、筒状部20Aを芯材11から分離する工程は、セラミックマトリックスを形成する前、形成した後、セラミックマトリックスを形成する途中段階のいずれであってもよい(
図6参照)。
【0061】
なお、ここでは、筒状部20Aの中心軸CLに沿った両端面が開口している場合を示しているが、一方の端面が閉じている場合も同様に製造することができる。
一方の端面が閉じている場合には、例えば、筒状部20Aと、蓋部とを有する基材23を用い、セラミックマトリックスを沈着する方法、後から蓋部を組み合わせる方法などが利用できる。
【0062】
次に、流体用整流部材10Aについて説明する。
図3(A)に示すように、流体用整流部材10Aは、中心軸CLを包囲する筒状部20Aを有する。流体用整流部材10Aは、例えば、中心軸CLを流体の流れ方向(
図2(B)中矢印F参照)に配置することにより使用することができる。
筒状部20Aは、一方の端面203の輪郭形状よりも他方の端面204の輪郭形状の方を大きく形成することもできる。また、筒状部20Aは、一方の端面203および他方の端面204が開口している。なお、筒状部20Aを、両端が開口した円柱形状とすることもできる(図示省略)。
【0063】
筒状部20Aは、SiC繊維であるセラミック繊維21からなる支持材により形成されたセラミック繊維層(セラミック繊維)22を積層した基材23(
図2参照)を有しており、このセラミック繊維21にCVD法によってセラミックマトリックスを沈積させ繊維強化セラミック複合材料を得ることができる。セラミック繊維21は、セラミック繊維を束ねたストランドを用いることもできる。
【0064】
筒状部20Aの最外側セラミック繊維層(最表層)222は、セラミック繊維が中心軸CLを含む仮想の平面PLに沿うように形成されたセラミック繊維層22である。
【0065】
ここで、中心軸CLを含む仮想の平面PLと、セラミック繊維21(支持材)とのなす角度θは、0度〜20度である。
すなわち、
図3(A)に示すように、中心軸CLを含む仮想の平面PLによって切断される筒状部20Aの断面を、平面PLに沿って観ると(
図3(A)中矢印C参照)、
図3(B)に示すように平面PLに対してセラミック繊維21は、角度θで交差する。
【0066】
次に、第1実施形態の流体用整流部材10Aの作用、効果について説明する。
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、流体用整流部材10Aの筒状部20Aを構成する最外側セラミック繊維層222は、筒状部20Aが包囲する中心軸CLを含む平面PLに沿った方向にセラミック繊維21が配向されている。
このため、流体の流れを阻害する起伏が出来にくく、流体に乱れが生じにくいので抵抗を小さくできる。
【0067】
また、流体用整流部材10Aの表面のセラミック繊維21を切断することなく気流の抵抗となる凹凸を低減できるので、セラミック繊維21の強度を充分に発揮することができ、高強度の繊維強化セラミック複合材料が得られる。
さらに、流体用整流部材10Aは、削り出しで形成されるのではないので、繊維の切断による強度低下が生じない。
【0068】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、中心軸CLを含む平面PLとセラミック繊維とのなす角θが0度〜20度であると、セラミック繊維21に沿って気流がスムーズに流れることができる。
また、セラミック繊維21の太さに起因する凹凸は、1/sin20°倍(2.92倍)以上に中心軸CL方向に引き伸ばされるので、流体の乱れを小さくでき、抵抗を小さくできる。
【0069】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、筒状部20Aは中心軸CLに沿った両端部が開口している場合には、筒状部20Aの外周面および内周面に沿って流体を流すことができ、流体を整流することができる。このため、配管や流体内を移動する飛翔体として使用することができる。
【0070】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、筒状部20Aは、一方の端面輪郭形状よりも他方の端面輪郭形状が大きい形状を呈しているので、例えば円錐や円錐台等に似ている形状となっている。
そして、端面輪郭形状が小さい一方の端面203が開口していない場合には、一方の端面203から相対的に流れてくる流体を、筒状部20Aの最外側セラミック繊維層222による抵抗を小さくすることができる。また、一方の端面203も開口している場合には、筒状部20Aの最外側セラミック繊維層222および最内側セラミック繊維層221に沿って流体を流すことができるので、外周面および内周面に沿って流れてくる流体の抵抗を小さくすることができる。このため、流体用整流部材10Aは、配管や流体内を移動する飛翔体として利用することができる。
【0071】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、セラミック繊維21が複数のセラミック繊維が束ねられたストランドの状態で使用されると、複数の繊維がまとまっているため、個々の繊維が突出する毛羽立ちを少なくすることができる。これにより、一層気流の乱れを抑えることができ、抵抗を少なくすることができる。
【0072】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、セラミックマトリックスは、SiCである。
SiCは、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、セラミックマトリックスにSiCを用いることにより、流体用整流部材を高温、腐食性雰囲気でも好適に利用できる。
【0073】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、セラミック繊維は、SiC繊維である。
SiC繊維は、耐蝕性、耐酸化性が優れ、高強度であるので、支持材にSiCを用いることにより、高温、腐食性雰囲気でセラミックスマトリックスが損傷した場合でも安全に使用することができる。
【0074】
第1実施形態の流体用整流部材10Aによれば、中心軸CLは、流体の流れ方向に配置される。
中心軸CLを流体の流れ方向に配置することにより、中心軸CLを包囲する筒状部20Aも流体の流れ方向に配置されるので、流体の抵抗を小さくすることができる。
【0075】
また、第1実施形態の流体用整流部材の製造方法によれば、巻回工程において柱状に形成された芯材11の中心軸CLに対する周方向に沿ってセラミック繊維21を巻回するとともに、軸方向配置工程において芯材11の中心軸CLに対して平行にセラミック繊維21を配置する。こうして、複数のセラミック繊維層22によって筒状部20Aの基材23を形成する。
【0076】
次いで、基材23のセラミック繊維21間に浸透するようにセラミックマトリックスを形成する。
セラミックマトリックスはどのようなものでもよく特に限定されない。例えば、SiC、アルミナ、Si
3N
4、B
4Cなど利用できる。セラミックマトリックスはどのような方法で形成してもよい。例えば、有機物である前駆体(プレカーサ)を熱分解させセラミックスのマトリックスを得るプレカーサ法、原料ガスを熱分解させセラミックマトリックスを得るCVD法などが利用できる。
【0077】
以下、プレカーサ法、CVD法について説明する。
プレカーサ法では、熱分解によりセラミックが得られる前駆体を適宜選定する。プレカーサ法では、液体の前駆体を支持体に塗布または含浸したのち、加熱処理しセラミックマトリックスを得る。加熱処理では、前駆体の形態によってさまざまな処理が行われる。
前駆体が溶液である場合には溶媒の乾燥、前駆体がモノマー、ダイマーまたはオリゴマーなどの場合には重合反応の後に熱分解反応、前駆体がポリマーである場合には熱分解反応の処理が行われる。
前駆体は、液体の形態で使用する。液体であるとは、前駆体を溶媒に溶かした溶液、液状の前駆体、固体の前駆体を加熱して溶融した液状の前駆体などが利用できる。なお、プレカーサ法では、最終的に前駆体を焼成し、セラミックマトリックスを生成させる。
【0078】
CVD法では、CVD炉に支持材をいれ、加熱した状態で原料ガスを導入する。原料ガスは、CVD炉内で拡散するとともに、加熱された支持材に接触すると熱分解が起こり、原料ガスに対応するセラミックマトリックスが支持材を構成するセラミック繊維の表面に形成される。
次に、芯材11から筒状部20Aを脱型させる。これにより、流体用整流部材を製造することができる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
なお、前述した第1実施形態の流体用整流部材10Aと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図4に示すように、第2実施形態の流体用整流部材10Bでは、筒状部20Bの最内側セラミック繊維層221および最外側セラミック繊維層222は、セラミック繊維が中心軸CLを含む仮想の平面PL(
図3(A)参照)に沿うように形成されたセラミック繊維層22となっている。
【0080】
これにより、流体の流れを阻害する起伏が出来にくく、流体に乱れが生じにくいので抵抗を小さくできる。ここで、流体の流れとは、流体用整流部材10Bに対して相対的に流体が移動する場合をいい、流体用整流部材10Bに対して流体が流れる場合および流体中を流体用整流部材10Bが移動する場合を含む。
なお、流体用整流部材10Bの製造方法は、第1実施形態において説明した製造方法を用いることができる。これは、軸方向配置工程が支持材形成工程の最初と最後にあることにより得ることができる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
なお、前述した第1実施形態の流体用整流部材10Aおよび第2実施形態の流体用整流部材10Bと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図5(A)および
図5(B)に示すように、第3実施形態の流体用整流部材10Cでは、筒状部20Cの一方の端面203に蓋部を有しており、中心軸CL方向に貫通していない。このため、筒状部20Cでは、最外側セラミック繊維層222のセラミック繊維のみが中心軸CLを含む仮想の平面PL(
図3(A)参照)に沿うように形成されたセラミック繊維層22となっていれば良い。なお、最内側セラミック繊維層(最表層)221のセラミック繊維をも中心軸CLを含む仮想の平面PL(
図3(A)参照)に沿うように形成することも可能である。
【0082】
これにより、流体の流れを阻害する起伏が出来にくく、流体に乱れが生じにくいので抵抗を小さくできる。
なお、流体用整流部材10Cの製造方法は、第1実施形態において説明した製造方法を用いることができる。
【0083】
本発明の流体用整流部材は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
図8は、本発明の各実施形態において説明した流体用整流部材の適用例であり、具体的にはシリコン単結晶引上げ装置300のガス整流部材312への適用例である。
図8に示すシリコン単結晶引上げ装置300は、シリコン材料を加熱していったん溶融させた後、シリコンを単結晶として引き上げることにより、高純度のシリコンインゴットを得るためのものである。
【0084】
このシリコン単結晶引上げ装置300を構成する密閉本体302の上部には、その内部に不活性ガスを導入するための導入部303が設けられている。密閉本体302の内部には、石英るつぼ304、るつぼ305、回転軸306、ヒータ307、保温筒308、上部リング309、下部リング310、底部遮熱板311およびガス整流部材312(流体用整流部材)等が収容されている。
【0085】
シリコン材料が投入される石英るつぼ304は、その外側に配置されたるつぼ305に保持されている。るつぼ305の底面中央部は回転軸306によって下方から支持されている。図示しない駆動手段によって回転軸306が回転すると、それに伴ってるつぼ305が回転する。るつぼ305の側部の周囲に配置されたヒータ307によってるつぼ305が加熱され、シリコン材料が溶融するようになっている。ヒータ307の側部の周囲に設けられた保温筒308は、上部リング309と下部リング310との間に支持されている。密閉本体302の内底面には、底面から熱が逃げるのを防止するための底部遮熱板311が配設されている。
【0086】
ガス整流部材312は先細り形状のテーパ状部材であり、小径側の端部を下方に向けた状態で、大径側の端部が密閉本体302の上面内側に固定されている。
本発明の流体用整流部材は、このようなシリコン単結晶引上げ装置300のガス整流部材312への適用も可能である。