(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凸面累進屈折力レンズは、例えば、凸面に累進屈折作用を有するセミフィニッシュドレンズブランクの凹面を球面又はトーリック面に加工することによって形成される。凸面累進屈折力レンズは、累進屈折作用としての光学性能が凸面で決まる。特許文献1に例示されるように、累進屈折作用としての光学性能が凸面で決まるレンズは、アライメント基準マーク等の永久マークも凸面に施される。また、眼鏡店等において、凸面累進屈折力レンズを扱う作業者は、凸面に付されたレイアウトマークを用いて度数測定位置を特定してレンズメータによる度数測定を行ったり、玉形加工後にフィッティングポイントの確認を行ったりする。
【0006】
ところで、眼鏡レンズには、レンズの設計中心が凸面上に存在する。レンズの設計中心は、典型的には、レンズの幾何学中心であるが、仕様に応じて幾何学中心から偏芯させたい場合がある。しかし、凸面累進屈折力レンズは、凸面に累進屈折作用面が固定的に配置されていることから、凸面上に規定されるレンズの設計中心を偏芯させることが難しい。
【0007】
一方、累進屈折力眼鏡レンズには、凹面が累進面として形成されたレンズ(以下、便宜上「凹面累進屈折力レンズ」と記す。)も知られている。凹面累進屈折力レンズは、例えば、凸面が球面形状のセミフィニッシュドレンズブランクの凹面を累進面加工することによって形成される。この種のレンズでは、凸面上に規定されるレンズの設計中心を凹面の加工次第で任意に偏芯させることができる。製造業者は、このような利点を考慮して、累進屈折力レンズを凸面累進屈折力レンズでなく凹面累進屈折力レンズで設計・製造することがある。凹面累進屈折力レンズは、光学性能が被加工面である凹面で決まることから、アライメント基準マーク等の永久マークも通常は凹面に施される。
【0008】
ここで、眼鏡店等において、凹面累進屈折力レンズを扱う作業者は、例えば、凹面に施された永久マークが目視される凸面上の位置(凸面上に現れる永久マークの虚像の位置)にマーカ等でマークを付し、付されたマークを用いて度数測定位置を特定してレンズメータによる度数測定を行ったり、玉形加工後にフィッティングポイントの確認を行ったりする。
【0009】
しかし、凸面上に現れる永久マークの虚像の位置は、屈折等による視差や作業者が凸面を目視する角度等に応じて、本来現れるべき位置から変わってしまう。そのため、凹面累進屈折力レンズ等の一部の眼鏡レンズでは、作業者がレンズメータによる度数測定やフィッティングポイントの確認を精確に行うことが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る眼鏡レンズは、永久マークが凹面に配置されている眼鏡レンズであり、凸面上の所定の基準位置を示すレイアウトマークが該凸面に配置されている。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、作業者は、凸面上の所定の基準位置を、凹面側の情報(永久マーク)でなく凸面側の情報(レイアウトマーク)を用いて直接特定することができる。そのため、レンズメータによる度数測定やフィッティングポイントの確認等の精度が改善される。
【0012】
また、本発明の一実施形態において、永久マーク、レイアウトマークの各位置は、例えば、一方の位置に基づいて他方の位置が定められている。
【0013】
また、本発明の一実施形態において、永久マークに基づいて定められる凹面上の基準位置と、レイアウトマークが示す凸面上の基準位置は、一方の基準位置における法線上又は略法線をなす直線上の位置に他方の基準位置が配置されていてもよい。
【0014】
また、本発明の一実施形態において、永久マークは、一対配置されており、条件(1)又は(2)に示される凹面上の位置、
(1)凹面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、該凹面上又は凸面上の基準位置を挟んで位置する一対の凹面上の位置
(2)凸面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、該凹面上又は凸面上の基準位置を挟んで位置する一対の凹面上の位置
配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態において、永久マークは、例えば、凹面に一対配置されている。この場合、レイアウトマークは、所定の方向から凸面を見たときに該凸面上に現れる一対の永久マークの虚像を結ぶ線上の中点に位置していてもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る眼鏡レンズは、一対の永久マークが凹面に配置されている眼鏡レンズであり、所定の方向から凸面を見たときに該凸面上に現れる一対の永久マークの虚像を結ぶ線上の中点に該凸面上の所定の基準位置が位置するように、該凹面上での、該一対の永久マークの位置が決められている。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る眼鏡レンズは、凹面形状に対称性を持たない又は凹面形状に1つの対称面のみを持つ眼鏡レンズであり、凸面上の所定の基準位置を示すレイアウトマークが該凸面に配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、作業者は、凸面上の所定の基準位置を、凹面側の情報(永久マーク)でなく凸面側の情報(レイアウトマーク)を用いて直接特定することができる。そのため、レンズメータによる度数測定やフィッティングポイントの確認等の精度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンカットレンズを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの製造工程を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション1)を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション2)を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション3)を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション4)を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション5)を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るアンカットレンズの凹面に刻印される永久マークと凸面にペイントされるレイアウトマークLMとの位置関係(バリエーション6)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る眼鏡レンズについて説明する。
【0021】
[アンカットレンズ1の構成]
図1は、製造業者において製造されるアンカットレンズ1を示す図である。
図1(a)は、アンカットレンズ1を凸面側から正面視したときの図を示し、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図を示す。
【0022】
アンカットレンズ1は、例示的には、凸面が球面であり、凹面が対称性を持たない面形状である。対称性を持たない面形状とは、軸対称でも面対称でもない面形状であり、一例として累進面形状が挙げられる。
図1に示されるように、アンカットレンズ1は、凹面に一対の永久マークPMが刻印されており、凸面にレイアウトマークLMがペイントされている。なお、本実施形態において、累進面は、単に累進屈折力作用を有する面に限らず、例えば、累進屈折力作用とその他の屈折作用(例えば乱視屈折力)とを有する融合面であってもよい。
【0023】
永久マークPMは、例えば、JIS規格上定められたアライメント基準マークである。凸面上に現れる一対の永久マークPMの虚像を結ぶ仮想的な線(
図1(a)中、点線)は、レンズの水平方向を示す線であり、以下、便宜上「水平基準線HL」と記す。
【0024】
レイアウトマークLMは、度数測定位置等の所定の基準位置(より詳細には、1つの基準位置又は複数の基準位置のレイアウト)を示すマークであり、本実施形態では、凸面上のプリズム測定基準位置にペイントされている。レイアウトマークLMに使用されるインクは、簡単な作業で消去可能なものである。
【0025】
なお、アンカットレンズ1には、品質保証マークなど、永久マークPMやレイアウトマークLM以外にもマークが付けられている。ここでは、説明の便宜上、永久マークPM、レイアウトマークLM以外のマークについての説明は省略する。
【0026】
図1(a)に示されるように、レイアウトマークLMは、アンカットレンズ1を凸面側から正面視(球面である凸面の幾何学中心における法線方向から見た)したときに水平基準線HL上の中点と重なる位置に付されている。水平基準線HLにおいて、レイアウトマークLMと各永久マークPMとの距離は等しく、何れも17mmである。
【0027】
眼鏡店等の作業者は、製造業者から入荷したアンカットレンズ1について、凸面にペイントされたレイアウトマークLM(プリズム測定基準位置)やレイアウトマークLMから特定される他の度数測定位置にレンズメータを当てて度数測定を行ったり、玉形加工後にフィッティングポイントの確認を行ったりする。なお、レイアウトマークLMは、遠用、近用等の各度数測定位置に直接ペイントされていてもよい。レイアウトマークLMは、作業者による全ての検査が終わった後にエーテルなどで拭き取られる。
【0028】
ここで、永久マークPMが凹面に刻印されていることから、レイアウトマークも同じく凹面にペイントされることが考えられる。しかし、凹面上のレイアウトマークにレンズメータ等を当てて、凸面上の度数測定位置における度数を精確に割り出すのは難しい。また、フィッティングポイントは、凸面側からしか確認することができない。凸面上に現れるレイアウトマークの虚像の位置は、屈折等による視差や作業者が凸面を目視する角度等に応じて本来現れるべき位置から変化する。そのため、フィッティングポイントの確認を精確に行うことは難しい。なお、レイアウトマークの虚像の位置は、アンカットレンズ1の屈折率、カーブ、厚みのそれぞれが大きい値であるほど、本来現れるべき位置から大きく変化する。
【0029】
本実施形態に係るアンカットレンズ1は、このような事情に鑑みて、永久マークPMが凹面に刻印されているレンズでありながらも、度数測定位置等の基準位置を示すレイアウトマークLMが凹面とは異なる凸面にペイントされている。本実施形態に係るアンカットレンズ1によれば、作業者は、度数測定位置等の基準位置を凹面側の情報(永久マークPM)でなく凸面側の情報(レイアウトマークLM)を用いて直接特定することができる。そのため、屈折等による視差や目視角度によるマーク位置の変化による、度数測定やフィッティングポイント確認等の精度の低下が避けられる。
【0030】
別の観点によれば、一対の永久マークPMは、アンカットレンズ1を凸面側から正面視したときに水平基準線HL上の中点にレイアウトマークLM(プリズム測定基準位置)が位置するように、凹面上での位置が決められている。そのため、作業者は、レイアウトマークLMがアンカットレンズ1に付されていない場合であっても、アンカットレンズ1を凸面側から正面視することにより、プリズム測定基準位置を精確に特定することができる。すなわち、レイアウトマークLMが付されていないアンカットレンズであって、一対の永久マークPMが上記の位置に配置されているものも、本発明に係る眼鏡レンズの範疇に含まれる。
【0031】
[アンカットレンズ1の製造工程]
図2は、アンカットレンズ1の製造工程を模式的に示す図である。本実施形態では、例えば、凸面が球面形状となっているセミフィニッシュドレンズブランクを用いてアンカットレンズ1が製造される。
【0032】
本製造工程では、まず、レンズデータに基づいて最適なセミフィニッシュドレンズブランクが選択される。選択されたセミフィニッシュドレンズブランクは、加工機100にセットされる(
図2(a)参照)。
【0033】
加工機100は、セットされたセミフィニッシュドレンズブランクの凹面をレンズ設計データに従って切削・研磨する(
図2(b)参照)。加工機100による切削・研磨によって凹面形状が確定すると、
図2(b)に示されるように、レンズ設計データ上定められた凸面上の所定位置にプリズム測定基準位置P1が現れると共に、同じくレンズ設計データ上定められた凹面上の所定位置に永久マークPMを刻印すべき刻印予定位置P2が現れる。
【0034】
加工機100による切削・研磨の完了と共にアンカットレンズ1が加工機100から取り外されてしまうと、プリズム測定基準位置P1及び刻印予定位置P2の精確な位置が分からなくなってしまう。特に、プリズム測定基準位置P1については、アンカットレンズ1の凸面が球面であり、変曲点等の形状的な特徴が存在しないことから、作業者の目視による精確な特定が難しい。一方、加工機100は、アンカットレンズ1が加工機100から取り外されない限り(加工時の位置関係が保たれている限り)、レンズ設計データに基づいてプリズム測定基準位置P1及び刻印予定位置P2を精確に特定することができる。本製造工程では、アンカットレンズ1が加工機100から取り外される前に、レンズ設計データに基づいて一対の刻印予定位置P2のそれぞれに永久マークPMが刻印される(
図2(c)参照)。
【0035】
アンカットレンズ1は、永久マークPMが刻印された後、加工機100から取り外されて、染色加工、ハードコート加工、反射防止膜、紫外線カット等の各種コーティングが施される。プリズム測定基準位置P1と一対の永久マークPMとの位置関係は、設計上既知である。レイアウトマークLMは、例えばアンカットレンズ1の出荷時に、凹面に刻印された一対の永久マークPMとの位置関係によって特定されるプリズム測定基準位置P1にペイントされる(
図2(d)参照)。
【0036】
[永久マークPMとレイアウトマークLMとの位置関係]
永久マークPMとレイアウトマークLMとの位置関係には種々のバリエーションがある。
図3〜8はそれぞれ、アンカットレンズ1の側断面を示す図であり、永久マークPMとレイアウトマークLMとの位置関係のバリエーション1〜6が例示される。
【0037】
(
図3:バリエーション1)
バリエーション1における位置関係は、下記の条件A及びaにより規定される。
・条件A
凹面上の基準位置(例えば凹面上の設計基準位置)における法線上又は略法線をなす直線上の位置にレイアウトマークLM(凸面上の基準位置であって、プリズム測定基準位置P1)を配置。ここで、「基準位置における略法線をなす直線」とは、該基準位置と交わる直線であって、該基準位置における法線に対して±5°以内の傾きを持つ直線である。すなわち、レイアウトマークLMは、図中に示されるレイアウトマークLMを中心に±5°の半径を持つ円領域Rに収まる位置に配置される。傾きの値(±5°以内)は、眼鏡レンズの枠入れ公差等を考慮して計算されており、より好ましくは、±1°以内である。
・条件a
凹面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凹面上(又は凸面上)の基準位置を挟んで、凹面上(又は凸面上)の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0038】
(
図4:バリエーション2)
バリエーション2における位置関係は、条件A及び下記の条件bにより規定される。
・条件b
凸面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凸面上の基準位置を挟んで、凸面上の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0039】
(
図5:バリエーション3)
バリエーション3における位置関係は、条件A及び下記の条件cにより規定される。
・条件c
凸面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凹面上の基準位置を挟んで、凹面上の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0040】
(
図6:バリエーション4)
バリエーション4における位置関係は、下記の条件B及びdにより規定される。
・条件B
凸面上の基準位置(プリズム測定基準位置P1であって、レイアウトマークLM)における法線上又は略法線をなす直線上の位置に凹面上の基準位置(例えば凹面上の設計基準位置)を配置。
・条件d
凹面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凹面上の基準位置を挟んで、凹面上の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0041】
(
図7:バリエーション5)
バリエーション5における位置関係は、条件B及び下記の条件eにより規定される。
・条件e
凹面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凸面上の基準位置を挟んで、凸面上の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0042】
(
図8:バリエーション6)
バリエーション6における位置関係は、条件B及び下記の条件fにより規定される。
・条件f
凸面上の基準位置における法線又は略法線をなす直線と平行な直線上であって、凸面上(又は凹面上)の基準位置を挟んで、凸面上(又は凹面上)の基準位置から同じ距離離れたところに位置する一対の直線上の位置に一対の永久マークPMを配置。
【0043】
(許容公差に関する説明の補足)
(
図3:バリエーション1)の項目において例示的に説明したように、レイアウトマークLM(凸面上の基準位置)は、誤差が完全にゼロの位置(バリエーション1では、凹面上の基準位置における法線上の位置)を中心に±5°(より好ましくは±1°)の半径を持つ円領域R(許容公差)に収まる位置に配置される。すなわち、レイアウトマークLMの位置を規定するための法線が多少の誤差を含む方向の直線(つまり上記の「基準位置における略法線をなす直線」)であってもよく、これに伴い、レイアウトマークLMの位置は、多少の誤差が許容される(つまり、レイアウトマークLMは、誤差がゼロの位置に対して多少偏心した位置に配置されてもよい。)。
【0044】
許容公差に関してより詳細な例を挙げると、プリズム屈折力が0〜2.00Δの処方で球面屈折力Sが8.0dptである場合、レイアウトマークLMの位置は、誤差がゼロの位置に対して±1.3mmの偏心量(位置ずれ量)まで許容(別の観点によれば、レイアウトマークLMの位置を規定するための法線方向は、上記偏心量が±1.3mmに収まる程度の誤差まで許容)される。また、プリズム屈折力が0〜2.00Δの処方で球面屈折力Sが4.0dptである場合、レイアウトマークLMの位置は、誤差がゼロの位置に対して±1.6mmの偏心量(位置ずれ量)まで許容(別の観点によれば、レイアウトマークLMの位置を規定するための法線方向は、上記偏心量が±1.6mmに収まる程度の誤差まで許容)される。また、プリズム屈折力が0〜2.00Δの処方で球面屈折力Sが1.0dptである場合、レイアウトマークLMの位置は、誤差がゼロの位置に対して±3.5mmの偏心量(位置ずれ量)まで許容(別の観点によれば、レイアウトマークLMの位置を規定するための法線方向は、上記偏心量が±3.5mmに収まる程度の誤差まで許容)される。許容可能な偏心量の数値範囲の根拠は、例えば「JIS T 7313:2000 屈折補正用単焦点眼鏡レンズ」の4.2.3の表3:プリズム屈折力の許容差(プリズム屈折力の表示値(Δ):0.00以上2.00以下、プリズム許容差(Δ):±(0.25+0.1×Smax)、但しSmaxは、水平方向、垂直方向の許容差の絶対値がより大きい方の主経線屈折力である。)である。なお、上記根拠は、単焦点レンズに限らず、累進屈折力レンズや二重焦点レンズなど、他の種類のレンズのレイアウトマークLMの許容公差についても類推適用される。
【0045】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例や変形例又は自明な実施例や変形例を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0046】
上記の実施形態では、凹面が対称性を持たない面形状のレンズが例示されているが、本発明はこれに限らない。例示的には、凹面が1つの対称面のみを持つ形状のレンズも本発明の範疇に含まれる。凹面が1つの対称面のみを持つ形状のレンズの一例として、上下に鏡面対称性を持つレンズ(例えばラップアラウンド型眼鏡フレームへの枠入れに適した一部のスポーツグラス)が挙げられる。この種の眼鏡レンズは、カーブが著しく大きいため、凸面上に現れる永久マークの虚像の位置が屈折等による視差や作業者が凸面を目視する角度等に応じて本来現れるべき位置からより大きく変化する。そのため、この種の眼鏡レンズにおいて、凸面上の基準位置にレイアウトマークLMがペイントされると、レンズメータによる度数の測定精度やフィッティングポイントの確認精度の改善効果がより一層大きくなる。