(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重ね織物成型体が、前記樹脂難燃層を着色してなるコーテッドヤーンの複数色使い配置によって織編され、それによって織柄を成している請求項1に記載の吸音内装材。
前記樹脂難燃層が、塩化ビニル樹脂、及びシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルとを主体に含み、前記樹脂難燃層の比重1.3〜2.5とする請求項1または2に記載の吸音内装材。
前記気泡含有樹脂難燃層がスチレン系共重合体樹脂を主体に含み、前記スチレン系共重合体樹脂が、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロック)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(AとBは、上記と同義)、スチレンランダム共重合樹脂及び、これらのスチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂から選ばれた1種以上である請求項1に記載の吸音内装材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の吸音内装材は、マルチフィラメントヤーンの全周に樹脂難燃層が形成されたコーテッドヤーンを織編要素に含む二重織物構または三重織物構造の重ね織物成型体である。コーテッドヤーンを構成するマルチフィラメントヤーンとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維(アラミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維)などの合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が使用でき、特に吸音内装材に難燃性を必要とする場合は、ガラス繊維などの無機繊維を使用することが好ましいが、コーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層の難燃組成によってはポリエステル繊維などの合成繊維を使用することもできる。マルチフィラメントヤーンは、フィラメント直径が3〜10μm、繊度69〜2223dtex(62〜2000デニール)、特に138〜1112dtex(124〜1000デニール)のマルチフィラメントで、フィラメント数50〜500本、特に100〜300本で集束して10T/mの撚糸、または11〜200T/mの撚糸に束ね、その断面形状を円形、楕円形、及び扁平(横長に潰れた楕円形)とするヤーンであり、必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などの薬剤処理を施したものを用いる。
【0015】
特にガラス繊維によるマルチフィラメントヤーンの場合、ガラス繊維はE(無アルカリ)ガラス、C(アルカリ含)ガラス、Gガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、DEガラスなど何れのガラス組成であってもよく、シランカップリング剤による表面改質処理がガラス繊維に施されていることがコーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層との密着性向上の観点において好ましい。シランカップリング剤は具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどから選ばれた1種以上、の他、有機チタネート化合物を使用してもよい。
【0016】
コーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層は、熱可塑性樹脂及び難燃剤粒子とを主体に含み、樹脂難燃層の比重1.3以上、比重2.5以下とする。コーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層に用いる熱可塑性樹脂成分は、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤として、アジピン酸ジアルキルエステル類、セバシン酸ジアルキルエステル類、フタル酸ジアルキルエステル類、イソフタル酸ジアルキルエステル類、テレフタル酸ジアルキルエステル類,シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル類、芳香族リン酸エステル類、塩素化パラフィン類、ポリエステルオリゴマー類などを、塩化ビニル樹脂100質量部に対して30〜100質量部配合する)、塩化ビニル系共重合体樹脂(塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体の他、塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のモノマー類との共重合体、及びグラフト重合体を含む)、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体樹脂などが使用でき、樹脂難燃層の熱可塑性樹脂を異にする複数種のコーテッドヤーンを併用して重ね織物成型体を形成してもよい。
【0017】
樹脂難燃層に用いる難燃剤粒子は、a).金属リン酸塩、金属有機リン酸塩、リン酸誘導体、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸アンモニウム誘導体化合物などのリン原子含有化合物、b).(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、及び、これらの誘導体化合物などの窒素原子含有化合物(メラミンシアヌレート)、c).ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属硫酸塩化合物、ホウ酸化合物、及び無機系化合物複合体などの無機系化合物、d).有機臭素化物、有機塩素化物から選ばれた1種以上であり、特に好ましい難燃剤粒子は、酸化鉛(比重9.35)、三酸化アンチモン(比重5.7)、チタン酸バリウム(比重5.6)、酸化ジルコニウム(比重5.5)、酸化亜鉛(比重5.4)、酸化鉄(比重5.2)、炭酸バリウム(比重4.4)、硫酸バリウム(比重4.4)、二酸化チタン(比重4.0)、アルミナ(比重3.8)、チタン酸カリウム(比重3.3)、酸化マグネシウム(比重3.3)、マイカ(比重3.0)、タルク(比重2.8)、炭酸カルシウム(比重2.6)、水酸化アルミニウム(比重2.4)及び水酸化マグネシウム(比重2.4)などで、これらの配合によって樹脂難燃層の比重1.3以上、比重2.5以下とする。比重は2.5を超えるとコーテッドヤーンの製造が困難となり、得られる吸音内装材が質量超過となることで天井材が崩落した場合に重大な人的被害を生じる可能性を増す。
【0018】
樹脂難燃層の厚さは0.03mm〜0.6mm、特に0.05mm〜0.3mmが好ましい。特に本発明において好ましい樹脂難燃層は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤、難燃剤などを配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、スチレン系共重合体樹脂(難燃剤などを配合)、ウレタン系共重合体樹脂(難燃剤などを配合)、およびポリエステル系共重合体樹脂(難燃剤などを配合)である。これらの難燃性樹脂はマルチフィラメントヤーンを口金に芯通しした押出成型機を用い、難燃性樹脂をホットメルト状態として口金ノズル孔から押出すと同時に、繊維糸条を引き取ることでマルチフィラメントヤーンの表面に樹脂難燃層を連続的に被覆することでコーテッドヤーンを得る。また塩化ビニル樹脂ペーストゾルのような粘重液状物、有機溶剤に可溶化した難燃性樹脂溶液、エマルジョンやラテックスのような水性樹脂ベースの難燃剤組成物にマルチフィラメントヤーンをディッピングし、これを熱処理乾燥することでコーテッドヤーンを得ることもできる。樹脂難燃層には必要に応じて顔料、充填剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、接着剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、帯電防止剤、香料など公知の添加剤を含むことができる。
【0019】
特に重ね織物成型体を構成するコーテッドヤーンの着色を経ヤーンと緯ヤーン(または経ヤーンとバイアスヤーン)とで互いに異にすること、または複数の着色コーテッドヤーンを経ヤーンと緯ヤーン(または経ヤーンとバイアスヤーン)ともランダムに使用し、さらに織り組織をコントロールすることで織柄模様、絵柄模様などの意匠をに自在に表現することができる。着色剤はアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付けレーキ顔料、アントラキノン系顔料類、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料などの有機顔料、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、スピネル構造酸化物、ルチル型酸化物などの無機顔料の他、パール顔料、アルミ粉顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、染料などを自由に使用でき、その組み合わせに制限は無い。
【0020】
特にコーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層を軟質塩化ビニル樹脂で構成する場合、塩化ビニル樹脂(比重1.4)、及び可塑剤としてシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(比重0.95)を塩化ビニル樹脂100質量部に対して25〜80質量部を含む。また、樹脂難燃層の比重1.3以上、比重2.5以下とするには、上記組成物に、酸化鉛(比重9.35)、三酸化アンチモン(比重5.7)、チタン酸バリウム(比重5.6)、酸化ジルコニウム(比重5.5)、酸化亜鉛(比重5.4)、酸化鉄(比重5.2)、炭酸バリウム(比重4.4)、硫酸バリウム(比重4.4)、二酸化チタン(比重4.0)、アルミナ(比重3.8)、チタン酸カリウム(比重3.3)、酸化マグネシウム(比重3.3)、マイカ(比重3.0)、タルク(比重2.8)、炭酸カルシウム(比重2.6)、水酸化アルミニウム(比重2.4)及び水酸化マグネシウム(比重2.4)などの無機化合物粒子を配合すればよい。樹脂難燃層の比重が2.5を超えるとコーテッドヤーンの製造が困難となり、得られる吸音内装材が質量超過となることで天井材が崩落した場合に重大な人的被害を生じる可能性を増すことがある。
【0021】
シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の化合物を含む。ジアルキルエステルにおいてアルキル基は個々に同一又は異なって、炭素(C)数4〜13の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基、脂環族基などで、特にシクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(C8:MW393)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)が好ましい。これらはすべてシクロヘキサン環に対するジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、オルト位(1.2−位置)、メタ位(1.3−位置)、パラ位(1.4−位置)の3態様を全て包含するものである。
【0022】
また特にコーテッドヤーンを構成する樹脂難燃層をスチレン系共重合体樹脂で構成することで得られる吸音内装材に低周波領域での制振性を向上させる。スチレン系共重合体樹脂(A−B−A型ブロック共重合樹脂、A−B型ブロック共重合樹脂、及びこれらの水素添加樹脂)は具体的に、A−B−A型ブロック共重合樹脂として、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、スチレン−イソプレン−スチレン共重合樹脂、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合樹脂、A−B型ブロック共重合樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレン−イソプレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン共重合樹脂などの各種ブロック共重合樹脂が挙げられ、これらはポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)やポリプロピレン系樹脂(リアクターPP)とブレンドで用いることが好ましい。
【0023】
コーテッドヤーンを織編要素に含む二重織物構の重ね織物成型体としては、2種(表経・裏経)の経ヤーン及び2種(表緯・裏緯)の緯ヤーンを用いて上下2枚に重なり合った織物で、上部の織物が表経ヤーンと表緯ヤーンから空隙率1〜15%で成り、下部の織物が裏経ヤーンと裏緯ヤーンから空隙率1〜15%で成り、質量0.8〜3.0kg/m
2、共有空隙率0.1〜7.5%、及び通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たすもので、経二重織物、緯二重織物、経緯二重織物が例示される。通気度が10cc/cm
2/秒未満だと反響抑止効果を悪くすることがあり、200cc/cm
2/秒を超えると吸音効果を悪くすることがある。共有空隙率は重ね織物成型体を水平に置き、これを垂直方向から観察したときに上部の織物の空隙部と下部の織物の空隙部とが互いに重なり合って、2枚の織物を貫通する共有空隙部の総和の単位面積当たりの占有率である。すなわち上部の織物の経緯ヤーンが下部の織物の空隙部に重なって配置され、さらに下部の織物の経緯ヤーンが上部の織物の空隙部に重なって配置されるほど、共有空隙率は小さいものとなる。これらの共有空隙部は本発明の吸音内装材において径が0.05〜3.0mmの貫通孔であり、この貫通孔が音波の共鳴吸音孔として機能する。経二重織物は1組の緯ヤーンに表経と裏経が組織して一重の織物の裏にも1つ余分の経ヤーンが織付いたもので表経と裏経の配列は1:1、2:1、3:1などで代表的なものにピケ、ひだ織、ふくれ織が挙げられる。緯二重織物は1組の経ヤーンに表緯と裏緯が組織して一重の織物に別の緯ヤーンが織付いたもので表緯と裏緯の配列は1:1、2:1、3:1など代表的なものにベットフォードコードが挙げられる。経緯二重織物は2枚の織物を同一織機で織り、その織ヤーンで上下2枚の織物(各々質量400〜1200g/m
2)を接結したもので、a)上部の織物を成すヤーンで下部の織物に接結したもの、b)下部の織物を成すヤーンで上部の織物に接結したもの、c)上部と下部の織物を成すヤーンが所々で逆転し、上下の織物が逆転した部分を含み全てのヤーンが接結に寄与する風通織、d)上下2枚の織物の耳部だけを接結した袋織が例示できる。
【0024】
同様に三重織物構の重ね織物成型体としては、3種(表経・中経・裏経)の経ヤーン及び3種(表緯・中緯・裏緯)の緯ヤーンを用いて上中下3枚に重なり合った織物で、上部の織物(質量270〜800g/m
2)が表経ヤーンと表緯ヤーンから空隙率1〜15%で成り、中部の織物(質量270〜800g/m
2)が中経ヤーンと中緯ヤーンから空隙率1〜15%で成り、下部の織物(質量270〜800g/m
2)が裏経ヤーンと裏緯ヤーンから空隙率1〜15%で成り、質量0.8〜3.0kg/m
2共有空隙率0.1〜7.5%、及び通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たすもので、同様に経三重織物(1組の緯ヤーンに表経・中経・裏経が組織)、緯三重織物(1組の経ヤーンに表緯・中緯・裏緯が組織)、経緯三重織物:a)3枚の織物を同一織機で織り、その織ヤーンで下部織物から中部織物に接結し、中部織物から上部織物に接結したもの、b)上部織物から中部織物に接結し、中部織物から下部織物に接結したもの、c)上部織物から中部織物に接結し、下部織物から中部織物に接結したもの、d)上中下3枚の織物の耳部だけを接結した袋織が例示される。通気度が10cc/cm
2/秒未満だと反響抑止効果を悪くすることがあり、200cc/cm
2/秒を超えると吸音効果を悪くすることがある。本発明の吸音内装材において共有空隙部は径が0.05〜3.0mmの貫通孔であり、この貫通孔が音波の共鳴吸音孔として機能する。
【0025】
二重織物構造は具体的にフライシャットル織機、エアージェット織機、スルーザー織機、レピア織機、ウォータージェット織機などを用い、経コーテッドヤーン(2−1)及び緯コーテッドヤーン(2−2)からなる右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物(2)と、経コーテッドヤーン(3−1)及び緯コーテッドヤーン(3−2)からなる左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物(3)とを、下部織物(3)の経コーテッドヤーン(3−1)が所定本数おきに上部織物(2)の緯コーテッドヤーン(2−2)に浮くようにして接結点(5)で繋ぎ合わせた2重織の織布で、上部織物(2)と下部織物(3)との接結点(5)は1平方インチ面積当たり8〜50ヶ所設けることが好ましい。このような二重織物を用いた吸音内装材においては、織布を右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物(2)と、左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物(3)とからなる二重織物とすることで、上部織物(2)と下部織物(3)の斜文(綾)織の組織が交差してそれぞれの織物の目開き同士が完全に重なることがないので共有空隙率0.1〜7.5%を満たす。この二重織物は共有空隙率0.1〜7.5%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たすことができる。これは上部織物(2)と下部織物(3)との界面において接結点(5)以外の部分が全て横方向の狭い通気部として、共有空隙率0.1〜7.5%に係る縦方向通気性以外の通気部として存在するためである。このような縦横の通気部は音響の拡散吸収の効果に寄与するものである。また、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点は熱癒着により互いに固定されたものは吸音内装材の形態安定性に優れ、特に織り交点に熱溶融固定が一切なされないか、熱癒着が軽微なものは吸音内装材を柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、二重織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。
【0026】
同様に、三重織物構造の各織物の斜文線が、隣接する織物の斜文線と交差するものは各織物の斜文線が隣接する織物の斜文線と交差するため、それぞれの織物の目開き同士が重なることがなく、共有空隙率0.1〜7.5%を満たす。この三重織物は共有空隙率0.1〜7.5%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たすことができる。これは上部織物(2)と下部織物(3)と中部織物(4)の2つの界面において接結点(5)以外の部分が全て横方向の狭い通気部として、共有空隙率0.1〜7.5%に係る縦方向通気性以外の通気部として存在するためで、このような縦横の通気部は反響抑止効果と共鳴吸音効果とに寄与する。また、二重織物構または三重織物構造を有する重ね織物成型体は、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物(2)と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する下部織物(3)とからなる二重織構造(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)、また、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物(2)及び下部織物(3)と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する中部織物(4)とからなる三重織構造(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)などが使用できる。同様に本発明の吸音内装材は四重織物構造、五重織物構造などであっても相応の吸音効果を得ることができる。
【0027】
同様に、平織物、模紗織、五枚朱子織(2飛び4/1朱子、3飛び4/1朱子、2飛び3/2朱子、3飛び3/2朱子)による重ね織物成型体の場合は織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の組織ズレ部分が互いに同一部分に重ならないように織組織の組織ズレ部分を表組織と裏組織で相反する場所に上下左右に1完全組織ずらして多重織組織とする。真正面からは隙間がずれているため共有空隙率0.1〜7.5%を満たすが、織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の1つまたは2つの界面において接結点(5)以外の部分が全て横方向の狭い通気部として、共有空隙率0.1〜7.5%に係る縦方向通気性以外の通気部として存在することで、通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たすため、このような縦横の通気部が反響抑止効果と共鳴吸音効果とに寄与する。また、重ね織物成型体としては、経ヤーン及びバイアスヤーンを用いた織物を2枚または3枚が重なり合った三軸重ね織物で、各部の織物の空隙率0〜10%で成り、質量0.8〜3.0kg/m
2、共有空隙率0.1〜7.5%、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たす三軸平織物、または三軸バスケット織物または三軸模紗織物など、さらに経ヤーン、緯ヤーン及びバイアスヤーンを用いた織物を2枚または3枚が重なり合った四軸重ね織物で、各部の織物の空隙率0〜10%で成り、質量0.8〜3.0kg/m
2、共有空隙率0.1〜7.5%、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を満たす四軸平織物、または四軸バスケット織物または四軸模紗織物などであってもよい。上述した織物においてコーテッドヤーン同士の織交点は熱癒着により互いに固定されたものは吸音内装材の形態安定性に優れ、織り交点に熱溶融固定が一切なされないものや熱癒着が軽微なものは吸音内装材のフレキシブル性をより柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。
【0028】
本発明の吸音内装材において重ね織物成型体の片面には、密度0.35〜0.75g/cm
3の気泡含有樹脂難燃層が形成され、かつ重ね織物成型体の内部に気泡含有樹脂難燃層の一部が含浸し、その含浸部の深さが重ね織物成型体の厚さに対して1〜35%である態様であってもよい。気泡含有樹脂難燃層は、気泡含有樹脂難燃層と、その一部である含浸部がフォーム状組成物のコーティングにより密度0.35〜0.75g/cm
3に形成された通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を有する気泡含有樹脂難燃層が、反響減衰効果向上の手段として好ましい。フォーム状組成物は可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用い、これに整泡剤としてシリコーンオイルを1〜5質量部含有する粘重なゾル組成物を攪拌機(ステンレスや金属を数本組み合わせて茶筅形にしたブレードを装着)により機械攪拌して気泡を強制的に巻き込んだホイップを、そのまま重ね織物成型体の片面にナイフコーティングすることで重ね織物成型体への含浸と被覆を同時に成し、これによって形成された気泡含有樹脂難燃層はその一部が重ね織物成型体内に含浸部を有し、この含浸部の最大深さを重ね織物成型体の厚さに対して1〜35%とすることで重ね織物成型体内部にも実質的に気泡を含有する構成を成すことで反響減衰効果による吸音特性をより向上させる。気泡含有樹脂難燃層の密度が0.75g/cm
3を超えると反響減衰効果による吸音特性が不十分となることがあり、密度が0.35g/cm
3より小さいと気泡含有樹脂難燃層の摩耗強度を悪くすることがある。
【0029】
本発明において気泡含有樹脂難燃層は、気泡含有樹脂難燃層と、その一部である含浸部が化学発泡剤含有組成物のコーティング、180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を含み、密度0.35〜0.75g/cm
3に形成された通気度(JIS L1096:フラジール法)10〜200cc/cm
2/秒を有する気泡含有樹脂難燃層がより反響減衰効果を向上させる手段として好ましい。化学発泡剤含有組成物は可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルに化学発泡剤として、アゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリルなどから選ばれた1種以上を1〜10質量部含有する粘重なペーストゾル組成物を重ね織物成型体の片面にナイフコーティングすることで重ね織物成型体への含浸と被覆を同時に成し、これによって形成された気泡含有樹脂難燃層はその一部が重ね織物成型体内に含浸部を有し、この含浸部の最大深さを重ね織物成型体の厚さに対して1〜35%とする。そして180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を気泡含有樹脂難燃層と含浸部に含み、気泡含有樹脂難燃層の密度を0.35〜0.75g/cm
3とする。また気泡含有樹脂難燃層は軟質塩化ビニル樹脂、またはスチレン系共重合体樹脂に、上記化学発泡剤を1〜10質量部含有する組成物をカレンダー成型したフィルムとして重ね織物成型体上に150〜175℃で熱溶融積層して形成し、180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を気泡含有樹脂難燃層と含浸部に含み、気泡含有樹脂難燃層の密度を0.35〜0.75g/cm
3とする。気泡含有樹脂難燃層の密度が0.75g/cm
3を超えると反響減衰効果による吸音特性が不十分となることがあり、密度が0.35g/cm
3より小さいと気泡含有樹脂難燃層の摩耗強度を悪くすることがある。
【0030】
気泡含有樹脂難燃層に用いるスチレン系共重合体樹脂(A−B−A型ブロック共重合樹脂、A−B型ブロック共重合樹脂、及びこれらの水素添加樹脂)は具体的に、A−B−A型ブロック共重合樹脂として、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、スチレン−イソプレン−スチレン共重合樹脂、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合樹脂、A−B型ブロック共重合樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレン−イソプレン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブテン共重合樹脂などの各種ブロック共重合樹脂が挙げられ、これらはポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)やポリプロピレン系樹脂(リアクターPP)とブレンドで用いることが好ましい。また特にコーテッドヤーンの樹脂難燃層がスチレン系共重合体樹脂で形成された重ね織物成型体を使用する場合には、気泡含有樹脂難燃層にもスチレン系共重合体樹脂を用いることが互いの接着性の観点において好ましい。同様にコーテッドヤーンの樹脂難燃層が軟質塩化ビニル樹脂で形成された重ね織物成型体を使用する場合には、気泡含有樹脂難燃層にも軟質塩化ビニル樹脂を用いることが互いの接着性の観点において好ましい。
【0031】
気泡含有樹脂難燃層を重ね織物成型体上に形成する方法は具体的に、2液型シリコーンエラストマーペースト(有機溶剤を粘度調整剤に含むことができる)、シリコーン樹脂エマルジョンによる樹脂組成物(塗料)、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を主体とするペーストゾル、などを用いて、公知の塗工方法、例えばナイフコーティング(重ね織物成型体への片面加工)などの含浸(重ね織物成型体内部に樹脂組成物が含浸しているが、重ね織物成型体表面には樹脂組成物による被覆層が形成されていない状態)、及び含浸被覆(重ね織物成型体内部に樹脂組成物が含浸し、かつ、重ね織物成型体表面に樹脂組成物による被覆層が形成される状態)が例示でき、気泡含有樹脂難燃層はこのような含浸部を含め、30〜400g/m
2で、このような態様による本発明の吸音内装材の場合、気泡含有樹脂難燃層の質量を含めて質量0.8〜3.0kg/m
2とすることが好ましい。この含浸部は含浸の最大深さが重ね織物成型体の厚さに対して1〜35%とし、重ね織物成型体全体に浸透した含浸体であってはならない。また重ね織物成型体上に、カレンダー成型、Tダイス押出法により成形した0.01〜0.3mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、またはスチレン系共重合体樹脂フィルムを、熱ラミネートにより溶融積層する方法であってもよい。重ね織物成型体と気泡含有樹脂難燃層との積層界面において、重ね織物成型体内に気泡含有樹脂難燃層の一部が侵入した含浸部を有し、この含浸部の最大深さが重ね織物成型体の厚さに対して1〜35%であることが反響減衰効果向上のために好ましい。含浸部の最大深さが重ね織物成型体の厚さに対して35%を超えると反響減衰効果による吸音特性が不十分となることがある。
【0032】
本発明の吸音内装材の施工は、幅1m〜3mの任意、長さ1m〜50mの任意の規格シートを自在に組み合わせ、重ね織物成型体面側を音響の入射面として装着する。特に1).1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の吸音内装材は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態でアルミフレーム(押材)により吸音内装材全周を固定したパネル同士の組み合わせで、天井梁システムに固定することや、吊り下げることでフラット天井や幾何学立体天井に使用でき、2).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜10m程度の長尺吸音内装材(重ね織物成型体)は幅方向の2辺を天井梁やアルミ押材に固定し、張力を掛けずに重ね織物成型体を自重で弛んだ半円弧状態に懸垂し、多数の重ね織物成型体で半円弧の並びを表現したデザインアート天井に使用でき、3).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の重ね織物成型体は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態で重ね織物成型体の外周のポイント毎にハトメ、ターンバックル、取付金具、ジョイントナットなどを設け、ロープやバネを用いて天井梁システムにサスペンジョン固定することで張力をコントロールして得たドレープを利用するデザインアート天井に使用することができる。
【0033】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。先ずは本発明の吸音内装材の評価方法を述べる。
〈吸音率〉
シートの不織布面側を音響の入射面として、JIS A1405(垂直入射法)によるNoise Reduction Coefficient(NRC値)を250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzの各吸音率の算術平均値を求めた。
〈含浸部深さ〉
シート幅なりに均等6分割する5つのポイントでの埋没部(含浸部)をシート断面の拡大画像から求め、シート厚さに対する百分率で求めた。
〈共有空隙率〉
重ね織物成型体を水平に置き、これを垂直方向から観察したときに上部の織物の空隙部と下部の織物の空隙部とが互いに重なり合って、2枚または3枚の織物を貫通する共有空隙部の総和の単位面積当たりの占有率とし、コピー機での拡大画像より光線透過部を共有空隙率と見做しコンピューターで計算した。
〈通気度〉
JIS L1096 8.27.1 A法に定めるフラジール形法により求めた。
〈防炎性〉
JIS A1322に従って測定し、防炎1級、防炎2級、防炎3級を判定した。
防炎1級:炭化長 5cm以下:残炎なし :1分後残塵なし
防炎2級:炭化長10cm以下:残炎5秒以下:1分後残塵なし
防炎3級:炭化長15cm以下:残炎5秒以下:1分後残塵なし
【0034】
〔
比較例1〕
〈コーテッドヤーン(1)〉
ポリエステルマルチフイラメントヤーン(833dtex/192フィラメント)に90t/mの撚りをかけて芯糸とし、下記配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメントヤーンの全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂難燃層(比重1.68)を形成してピンク色に着色したコーテッドヤーン(1)を得、これを経ヤーンとした。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
キナクリドンレッド(赤顔料:PigmentRed122) 1質量部
〈コーテッドヤーン(2)〉
コーテッドヤーン(1)で用いたポリエステルマルチフイラメントヤーンを芯糸とし、下記配合2の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物を用いてコーテッドヤーン(1)同様にしてイエロー色に着色した樹脂難燃層(比重1.68)を有するコーテッドヤーン(2)を得、これを緯ヤーンとした。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
イソインドリノンイエロー(黄顔料:PigmentYellow109) 1質量部
〈重ね織物成型体:二重織物構造〉
経コーテッドヤーン(1)の打ち込み本数が40本/インチ、緯コーテッドヤーン(2)の打ち込み本数が30本/インチである二重織の織布を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、130℃で熱処理(織交点の軽微な熱癒着)した、厚さ1.5mm、質量1300g/m
2の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は1.8%、通気度(JIS L1096:フラジール法)75cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされたことでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0035】
〔実施例2〕
〈気泡含有樹脂難燃層の形成〉
下記配合3の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を攪拌機(ステンレス線を8本組み合わせて茶筅形にしたブレードを装着)により機械攪拌して気泡を強制的に巻き込ませて形態保持したホイップ(2倍発泡)を、そのまま
比較例1の重ね織物成型体の下層織物面側にクリアランスコーティングし、ペーストによる濡塗膜フォームを均一に形成し、180℃×3分間電気炉加熱してゲル化処理を行い、重ね織物成型体の裏面に気泡含有樹脂難燃層(密度0.5g/cm
3)が225g/m
2設けられた質量1525g/m
2の吸音内装材を得た。気泡含有樹脂難燃層の一部が重ね織物成型体の内部に含浸部として存在し、重ね織物成型体の厚さに対して22%(深さ0.33mm)に形成され、これによって重ね織物成型体の含浸部にも気泡を含むものであった。この吸音内装材の重ね織物成型体の共有空隙率は1.8%、通気度(JIS L1096:フラジール法)16cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
〔配合3〕軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物
乳化重合塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 65質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
酸化アンチモン(難燃剤) 15質量部
酸化モリブデン(難燃剤) 5質量部
バリウム亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
ジメチルシリコーンオイル(整泡剤) 2質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
イソシアヌレート変性トリイソシアネート(TDIの3量体) 3質量部
ジエチレングリコール(ポリオール) 3質量部
※イソシアヌレート変性トリイソシアネートの付加反応により、重ね織物成型体(コーテッドヤーンの樹脂難燃層)との密着性を向上すると同時に、ジエチレングリコールとの重合により軟質塩化ビニル樹脂内部にポリウレタン架橋構造を生成することで、気泡含有樹脂難燃層の樹脂強度と形状保持性をより強固とする。
【0036】
〔
比較例3〕
〈重ね織物成型体:三重織物構造〉
比較例1で用いた経コーテッドヤーン(1)及び緯コーテッドヤーン(2)を用い、経コーテッドヤーン(1)の打ち込み本数が60本/インチ、緯コーテッドヤーン(2)の打ち込み本数が45本/インチである三重織の織布を、上層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、中層織物組織を左上がりの3/1の斜文織、下層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、上層織物と中層織物とを5本跨ぎの結線で結接し、中層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、130℃で熱処理(織交点の軽微な熱癒着)した、厚さ2.3mm、質量1960g/m
2の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は0.6%、通気度(JIS L1096:フラジール法)55cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0037】
〔実施例4〕
〈気泡含有樹脂難燃層の形成〉
下記の配合4のスチレン系共重合体樹脂組成物コンパウンドを180℃の熱ロールを備えるカレンダー成型機に掛け、厚さ0.2mmの圧延フィルムを得た。このフィルムと
比較例3の重ね織物成型体とを175℃の熱ロール及び電気ヒーターを備えたラミネーターに掛け、重ね織物成型体の下層織物面側にフィルムを熱ラミネートして積層体を得た。次いで210℃×1分間の加熱を行い、アゾジカルボアミドを熱分解、気化させることによってフィルムを2倍発泡させ、重ね織物成型体の裏面に気泡含有樹脂難燃層(密度0.5g/cm
3)が240g/m
2設けられた質量2200g/m
2の吸音内装材を得た。気泡含有樹脂難燃層の一部が重ね織物成型体の内部に含浸部として存在し、重ね織物成型体の厚さに対して16%(深さ0.37mm)に形成され、これによって重ね織物成型体の含浸部にも気泡を含むものであった。この吸音内装材の重ね織物成型体の共有空隙率は0.6%、通気度(JIS L1096:フラジール法)12cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
〔配合4〕スチレン系共重合体樹脂組成物
スチレン−水素添加ビニルイソプレン−スチレン共重合樹脂 100質量部
※MFR6g/10min/230℃:スチレン含有量20wt%
EPR−PPリアクター樹脂 50質量部
※MFR0.5g/10min/230℃、EPR60wt%、PP40wt%
ポリリン酸アンモニウム(難燃剤) 15質量部
メラミンシアヌレート(難燃剤) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 2質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
【0038】
〔
比較例5〕
比較例1で用いたコーテッドヤーン(1)をコーテッドヤーン(3)に変更した。
〈コーテッドヤーン(3)〉
ガラスマルチフイラメントヤーン(フィラメント径9μm、400フィラメント:75dtex)2本の双糸に30t/mの撚りをかけて芯糸とし、配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメントヤーンの全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂難燃層(比重1.68)を形成してピンク色に着色したコーテッドヤーン(3)を得、これを経ヤーンとした。
比較例1で用いたコーテッドヤーン(2)をコーテッドヤーン(4)に変更した。
〈コーテッドヤーン(4)〉
ガラスマルチフイラメントヤーン(フィラメント径9μm、400フィラメント:75dtex)2本の双糸に30t/mの撚りをかけて芯糸とし、配合2の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメントヤーンの全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂難燃層(比重1.68)を形成してイエロー色に着色したコーテッドヤーン(4)を得、これを経ヤーンとした。
〈重ね織物成型体:二重織物構造〉
比較例1と同様にして、経コーテッドヤーン(1)の打ち込み本数が40本/インチ、緯コーテッドヤーン(2)の打ち込み本数が30本/インチである二重織の織布を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、130℃で熱処理(織交点の軽微な熱癒着)した、厚さ1.0mm、質量1120g/m
2の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は3.1%、通気度(JIS L1096:フラジール法)125cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0039】
〔実施例6〕
〈気泡含有樹脂難燃層の形成〉
配合4のスチレン系共重合体樹脂組成物コンパウンドを180℃の熱ロールを備えるカレンダー成型機に掛け、厚さ0.2mmの圧延フィルムを得た。このフィルムと
比較例5の重ね織物成型体とを175℃の熱ロール及び電気ヒーターを備えたラミネーターに掛け、重ね織物成型体の下層織物面側にフィルムを熱ラミネートして積層体を得た。次いで210℃×1分間の加熱を行い、アゾジカルボアミドを熱分解、気化させることによってフィルムを2倍発泡させ、重ね織物成型体の裏面に気泡含有樹脂難燃層(密度0.5g/cm
3)が240g/m
2設けられた質量1360g/m
2の吸音内装材を得た。気泡含有樹脂難燃層の一部が重ね織物成型体の内部に含浸部として存在し、重ね織物成型体の厚さに対して25%(深さ0.25mm)に形成され、これによって重ね織物成型体の含浸部にも気泡を含むものであった。この吸音内装材の重ね織物成型体の共有空隙率は3.1%、通気度(JIS L1096:フラジール法)23cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0040】
〔
比較例7〕
〈重ね織物成型体:三重織物構造〉
比較例5で用いた経コーテッドヤーン(3)及び緯コーテッドヤーン(4)を用い、経コーテッドヤーン(3)の打ち込み本数が60本/インチ、緯コーテッドヤーン(4)の打ち込み本数が45本/インチである三重織の織布を、上層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、中層織物組織を左上がりの3/1の斜文織、下層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、上層織物と中層織物とを5本跨ぎの結線で結接し、中層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、130℃で熱処理(織交点の軽微な熱癒着)した、厚さ1.6mm、質量1680g/m
2の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は1.3%、通気度(JIS L1096:フラジール法)90cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0041】
〔実施例8〕
〈気泡含有樹脂難燃層の形成〉
配合3の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を攪拌機(ステンレス線を8本組み合わせて茶筅形にしたブレードを装着)により機械攪拌して気泡を強制的に巻き込ませて形態保持したホイップ(2倍発泡)を、そのまま
比較例7の重ね織物成型体の下層織物面側にクリアランスコーティングし、ペーストによる濡塗膜フォームを均一に形成し、180℃×3分間電気炉加熱してゲル化処理を行い、重ね織物成型体の裏面に気泡含有樹脂難燃層(密度0.5g/cm
3)が225g/m
2設けられた質量1905g/m
2の吸音内装材を得た。気泡含有樹脂難燃層の一部が重ね織物成型体の内部に含浸部として存在し、重ね織物成型体の厚さに対して28%(深さ0.45mm)に形成され、これによって重ね織物成型体の含浸部にも気泡を含むものであった。この吸音内装材の重ね織物成型体の共有空隙率は1.3%、通気度(JIS L1096:フラジール法)19cc/cm
2/秒で、ピンク色とイエロー色の規則的な2色織柄模様を有し、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0042】
実施例1〜8の吸音内装材は、いずれも天井材に使用可能で、万が一地震で崩落した場合にも重大な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に
重ね織物成型体の共有空隙率0.1〜7.5%を満たすことで、これらの共有空隙部が0.05〜3.0mm径の貫通孔として存在し、この貫通孔が音波の共鳴孔として吸音性を発現することでJIS A1405 垂直入射法による良好なNRC値向上を示し、比較例1〜比較例3との対比においてもNRC値が向上しており、防炎性の吸音内装材が得られることが明らかとなった。
【0043】
〔
参考比較例1〕
比較例1の重ね織物成型体(二重織物構)において、経コーテッドヤーン(1)の打ち込み本数が33本/インチ、緯コーテッドヤーン(2)の打ち込み本数が25本/インチである二重織の織布を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織した、厚さ1.4mm、質量1080g/m
2の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は8.8%、通気度(JIS L1096:フラジール法)330cc/cm
2/秒で、経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点には軽微な熱癒着がなされていることでフレキシブル性を有し、さらに上層織物と下層織物との間にも通気性を有していた。
【0044】
〔
参考比較例2〕
〈重ね織物:二重織物構造〉
ポリエステルマルチフイラメントヤーン(833dtex/192フィラメント:90t/m)を経ヤーン及び緯ヤーンとして、経ヤーンの打ち込み本数40本/インチ、緯ヤーンの打ち込み本数30本/インチとする二重織の織布を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織した、厚さ0.84mm、質量440g/m
2の重ね織物を得た。配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴に重ね織物を浸漬し、これを引き上げると同時にゴムロール対で圧搾後、180℃でゲル化処理して重ね織物内部に配合1の軟質塩化ビニル系樹脂(比重1.68)が充填され、かつ重ね織物の表裏を軟質塩化ビニル系樹脂(比重1.68)で被覆してなる、厚さ1.13mm、質量1280g/m
2、ピンク色の重ね織物成型体を得た。この重ね織物成型体の共有空隙率は0%、通気度(JIS L1096:フラジール法)0cc/cm
2/秒であった。経コーテッドヤーンと緯コーテッドヤーンとの織交点や織物の空隙部には軟質塩化ビニル系樹脂が充填されていることでフレキシブル性を欠き、さらに上層織物と下層織物との間の通気性も封止されていた。
【0045】
〔
参考比較例3〕
〈織物成型体2枚を重ねた二重織物構造〉
ポリエステルマルチフイラメントヤーン(833dtex/192フィラメント:90t/m)を経ヤーン及び緯ヤーンとして、経ヤーンの打ち込み本数20本/インチ、緯ヤーンの打ち込み本数15本/インチとする右上がりの2/1の斜文織布(厚さ0.4mm、質量215g/m
2)を、配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴に浸漬し、これを引き上げると同時にゴムロール対で圧搾後、180℃でゲル化処理して斜文織布内部に配合1の軟質塩化ビニル系樹脂(比重1.68)が充填され、かつ斜文織布の表裏を軟質塩化ビニル系樹脂(比重1.68)で被覆してなる、厚さ0.62mm、質量550g/m
2、ピンク色の織物成型体(空隙率16%)を得た。この織物成型体2枚を非接着で重ねた二重織物構造(質量1100g/m
2)の共有空隙率は5〜15%、通気度(JIS L1096:フラジール法)100〜400cc/cm
2/秒で、2枚の織物成型体が上下左右にヤーン1本分ずれることで互いの空隙部の位置が合致したり、互いの空隙部を塞ぎ合うことで共有空隙率と通気度が不安定であった。
【0046】
〔
参考比較例4〕
〈織物5枚を重ねた五重織物構造〉
ポリエステルマルチフイラメントヤーン(833dtex/192フィラメント:90t/m)を経ヤーン及び緯ヤーンとして、経ヤーンの打ち込み本数20本/インチ、緯ヤーンの打ち込み本数15本/インチとする右上がりの2/1の斜文織布(厚さ0.4mm、質量215g/m
2、空隙率18%)5枚を非接着で重ね合わせ、厚さ2.2mm、質量1075g/m
2の織物重重体(共有空隙率1%)を得た。この織物重重体の通気度(JIS L1096:フラジール法)80〜120cc/cm
2/秒であった。